【悲報】ワイら、呪術界に異世界転移する。   作:なんか変な色の翼

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原作の動向でシナリオ壊れそうで怯える作者


【懐玉-弐拾-】夢の終わり─参─

 

 

「.....やられたな。どうしたもんかね」

 

 

高専襲撃が開始され、凡そ8分が経過。戦闘は取り留めもなく激化し、戦場は高専内の呪術師、外から来た呪詛師、改造人間、フィジギフのサラダボウルと化していた。

 

そんな中、戦場を上からの視点で把握できる2チャンネルは迅速に対応。上手く一部の呪詛師を高専側になすりつけて負担を減らし、一部の人間を士郎への援護へと送り込む事に成功していた。そして送り込まれた者が見たのは───

 

 

「なあ、爺さん。帳ってこんな風だったっけ?」

「誠に珍妙。これも新手の"縛り"なるものか」

 

 

通常のドーム状ではなく、"直線"で降ろされた帳であった。高さ二十メートル、全長は一キロほどだろうか。高専の結界を内側から突き破らんとするソレは、明らかに異質さを醸し出していた。

 

 

「なるほど、内部を完全に閉じ込めない事で帳の範囲を広げてるってわけね。既存の高専結界を一緒に使えばつっかえ棒みたいになるってか」

 

 

ポムっと手の内で愛用のバットを弾ませるのは、"金属バット"。フィジカルギフテッドの天与呪縛を持って転生した男であり、追い込まれる程に強くなる不屈の精神力で有名である。

 

 

「やはり"めろんぱん"の相手は一筋縄ではいかぬか。"みげる"とやらと違い、謀略に長ける相手は骨が折れるというもの。腕も備えられては尚の事」

 

 

キッと眉に皺を寄せつつも、帳を破る方法に頭を巡らせるのは"柳生宗矩"。同じくフィジカルギフテッドの天与呪縛を持って転生した男であり、二秒足らずで扇を三枚おろしに出来るハイスペックジジイである。

 

 

「そしてやっぱり──」

「対策されておるな」

 

 

コンコン、とバットで帳を打つと、スライムの水面に付けたように跳ね返ってきた。どうやらこの帳、呪術的な誓約による進入禁止のみならず、物理的な侵入も拒否しているようだ。

 

フィジカルギフテッドは呪術的な枠から外れた存在であり、千年以上続いてきた因果ですら破壊可能であるイレギュラー。しかし、それは呪術的な視点から彼らは"非生物"として認識されているからである。それを弁えた上であれば対策の仕様はあるのだ。

 

 

「こりゃ呪具じゃないとダメージは入らねーな。おい爺さん、俺と交代でお姫様呼んでくるから、その間見張りたn────」

おっと、ソイツは許さないぜ

 

 

強烈な呪力反応に気づき、咄嗟に飛び退く二人。

そのコンマ一秒後、二人のいた地点に無数の呪力の塊が掃射された。

 

 

「オイオイ、運命感じちまうじゃねーか。その髪型、最高にスイートだぜ」

「そりゃお前もな。グレートに似合ってんじゃねーか」

 

 

帳の呪符を巻かれた杭を見せびらかしながら降り立つバトルジャンキー、石流。

その行動が何を意味するかなど、もはや語るまでもあるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、早く乗って。ここから先は高専の最深部だ」

 

 

鬱蒼とした暗い森の中を歩く四人。

此処は、天元の鎮座する薨星宮へと繋がる高専地下。通称"忌庫"。

 

限られた人間しか入れず、人間の魂の感知に優れた真人でさえヒントが無ければ辿り着けなかった場所。そもそも、衛宮が作った作品や九相図が保管されているというだけで、呪術的な知識を少しでも齧った人間はどのような場所かを察するだろう。

 

 

 

「士郎?早く乗りなよ」

「.....ああ、すまない」

 

 

その為、本来であれば厳重な"隠す"結界が張られている。

 

シャッフルを繰り返される1000の扉に、その結界故の特殊な防壁。脹相のような特殊な術式で内部の気配を辿るか、羂索並の術師の工作が無ければ辿り着くのは困難。管理人ほどの腕前を持つ結界術の使い手でさえ、スペックを相当に落とさなければ通信を保つ事は不可能である。

 

 

 

 

141:偽物の先生

大丈夫かい?ちゃんと届いてる?

 

142:衛宮士郎

大丈夫。

 

143:偽物の先生

OK。健闘を祈るよ。

 

 

 

 

 

しかし、飛騨霊山を一部破壊してコントロールを奪う事により、現在天元の結界は弱まっている。この塩梅であれば、薨星宮に降りても通信はそのまま使用可能だろう。

 

案内人(ナビゲーター)、特級二名、特異点(フィジギフ)不在。外はてんやわんやだが、呪力放出が十八番の石流では忌庫の結界は突破できないだろう。残りも数だけの烏合の衆だ。

 

 

多少のアクシデントはあれど、万事順調。

薨星宮に辿り着く頃には、外もカタが付いているだろう。

 

 

 

「本当は、三人揃って護衛したかったんだけど」

「.....そうだな。五条も最後まで見送りはしたかったろうし」

「だろう?士郎も、そっち(・・・)の方が良いよね?」

 

 

少し含みの有る言い回し。これは"確認"だ。

士郎の脳内に、数日前の記憶が蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天内が同化を拒んだ時ィ?」

「ナシ寄りのアリだけどね。不測の事態には備えとかないと」

「それ結構有るじゃねーか」

 

 

天内家のリビングで寝転がる五条に、緑茶を啜って一服する夏油。ちなみに、五条は自分の体格を考慮せずにソファーに倒れ込んで壊した前科を持つ為、床に直で寝転がっている。

 

 

「.....そん時は、同化はナシ!」

「いいのかい?天元様と戦う事になるかもしれないよ?」

「夜蛾センとかクソ神父の方が怖いっつーの」

「それは言えてる」

 

 

五条と夏油は夜蛾から任務の話を聞く際、天内理子の"抹消"をしろと言われている。それは、それだけ罪の意識を持て、という彼なりのメッセージだったのだろう。

 

 

「で、問題は.....」

「士郎だな」

「ギャルゲーの主人公並のお人好しには参るよ、本当。あの調子だと、理子ちゃんの意思を尊重するというより、悔いなく同化できるように優しくしてる可能性とか有るんじゃないか?」

「いやいやいや、何でそうなるんだよ」

「だって、アイツは自己犠牲の体現だろ」

 

 

衛宮士郎という男は、夏油の言う通り"善人"の極みだ。誰だろうと手を差し伸べ、例え自分の身に危険が迫ろうとも他者を優先する。悪く言えば、自分と他人を推し量る天秤が壊れているのだ。

 

そんな彼に、人柱とも言える天内はどう映っているのだろう?

 

 

「まあ、どうにかなるっしょ。俺たち最強だし」

「実力行使は最後の手段にしなよ?」

「わーってるわーってる。大丈夫だよ」

 

 

「......それ、本人の前でやるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軋むような音を立てる昇降機に揺られながら、一年という長い月日を共にした、天内理子との記憶を回想する士郎。

 

 

初対面の印象は最悪だった。

護衛対象だという事も忘れかけ、本編で雑巾搾りにしていた五条と夏油の気持ちが分かったような気がした。

 

それでも、次第に距離は近くなっていった。

日常的に顔を合わせ、会話を重ねる内に"護衛"としてでなく、人と人としての関係を少しずつ、そして無意識的に築き上げていったのだろう。

 

そこに五条と夏油、家入が混ざって来た。

いつもの三馬鹿が加わり、食卓は一気に賑やかになった。五条が持って来た流行りのゲームをやったり、夏油とグルメ巡りをしたり、家入と恋愛相談をしたり。天内は、今までより何倍も良い笑顔をするようになった。

 

 

「......俺は、」

 

 

断っておくが、彼は彼女を抱きしめたいと考えた事は一度も無い。長い時間を共有して出来た情は有れど、それ以上の関係は望んだ事はない。

 

だからこそ、純粋に衛宮士郎として考えてしまう。

そんな単純なもしも(IF)が罷り通らないと考えてしまうのだ。

 

 

もしも、彼女が天元との同化を拒んだ事を後悔したら?罪悪感に押し潰されそうになった彼女を、自分は支え切れるのか?

 

もしも、五条がこの一件で呪術界での力を失ったら?乙骨や虎杖といった、後の時代の人間が救えなくなるのでは?

 

 

そもそも──天元と同化すれば、悲劇は始まらないのでは?

 

 

彼女に手を差し伸べるのは、数え切れない人々を見捨てるという事。それは、本来の衛宮士郎の信念と反する行いだ。

 

彼女が強がったままでいるだけで、全てが収まる。

彼女一人に目を瞑れば、全てが上手くいく。

彼女一人にさえ───────

 

 

 

 

 

"全員救ってくれ"

 

 

 

 

「そうだな。俺も、皆と一緒にいたい」

 

 

その言葉を聞き、嬉しげに微笑む夏油。賛同してくれた事に喜んだのか、天内の前で実力行使せずに済んだことへの安堵かは考えないでおこう。

 

 

これは衛宮士郎の否定だ。

今この瞬間、彼は何人もの人間を見捨てたのだ。

 

それは、前世の裏切り。何年も積み上げた自分を殺すも同義。

一つの命より、多くの命を取るのが"衛宮士郎"だったはずだ。

 

 

 

"勝手に幸せになっちまえ"

 

 

 

だが、今の士郎は衛宮士郎とは違う。

例え衛宮士郎(自分自身)を否定しようとも、衛宮(もう一人の自分)が肯定してくれる。

 

今、彼が救うべきは、"出来るだけ多く"では無い。"全員"なのだ。

それは、正義の味方を志すよりも何十倍も難しいのだろう。

 

 

しかし─────

 

 

 

 

245:名無しの呪術師

頑張れー!

 

246:名無しの呪術師

あとちょっと!!あとちょっと!!

 

247:名無しの補助監督

止まるんじゃねぇぞ.....

 

248:名無しの呪術師

遂にここまで来たか

 

249:偽物の先生

最後まで気は抜かずにね

 

250:名無しの呪術師

帰ろう....帰れるんだよ....

 

 

 

 

 

正義の味方は、此処にもいる。

 

 

自分の身を挺して人を守る事など、誰にも理解されない傲慢な偽善だとずっと思っていた。そして、誰かに馬鹿にされようとも突き通してやるという覚悟も決まっていた。

 

だが、それを肯定してくれる人が此処にいた。

幸せな結末を願う人間が、此処に集っていた。

 

救いの無い未来(鬱展開)を否定し、巫山戯るなと叫ぶ人間がいた。

 

 

「士郎、そろそろ着くよ。黒井さんはここで.....」

「いや、最後まで連れて行こう。どうせバレやしないさ」

 

 

予想外の反応にキョトンとしつつも、苦笑して返す夏油。普段は真面目でも、なんだかんだ二人とも情に流されやすいのだ。

 

 

「士郎がそう言うなんて、明日は槍でも─────ッ!?」

 

 

 

次の瞬間、ガシャンと大きな音を立てて昇降機が揺れる。

夏油は天内を庇い、士郎は黒井さんを支えつつ上を見て───

 

 

「ナンデ、オマエガ生キテンダヨ」

 

 

ガラス越しに、ミゲル(襲撃者)の姿を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────どんなに頑張っても

   もう、意識が保てなくなってきた。

 

 

──────完全に目が覚めるまで、残り六分 

   ここまで起き続けるのは、本当に、疲れる

 

 

──────行こう。最後の一仕事だ。

 

 





誰の夢が終わったんだか。


次回、「【解玉】届かない手」

もう後戻りは出来ない。俺は───

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