【悲報】ワイら、呪術界に異世界転移する。   作:なんか変な色の翼

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なんでこうなるのー?



【解玉】届かない手

 

 

「夏油!着地任せた!!」

「─────ああ、分かった!!!」

 

 

頭上からの襲撃者に即座に反応し、ガラス張りの天井目がけて突っ込もうとする士郎。これ以上取りつかせてはマズイと判断し、強引にでもミゲルを押し退けようとする。

 

 

「ぶぅぅぅ!!!!」

「夏油ッ!!!」

 

 

その瞬間、ミゲルを囮に、ガイドレールを伝って並走していた陀艮の一撃が壁越しに放たれて夏油の頭部に命中した。見かけは只の水鉄砲だが、呪力を込めて打ち出せばウォーターカッター以上の破壊力を発揮する。これには流石の夏油もひとたまりもない。水流の重圧によろけて一回転し─────

 

 

「ハハッ、ドンマイ!」

 

 

完全に受け流した(・・・・・)

 

超一流のボクサーはガードのみならず、パンチの軌道を身体を巧みに操って反らして致命打を避けるという。夏油が発揮したのはその"飛び道具版"。水の刃とほぼ同じスピードで身体を回転させ、額に傷跡を作る程度にダメージを押し留めた。

 

 

「マジカヨ。ダゴン、モウ一発───」

構造因子、解析完了(さ せ る か)ッ!!!」

 

 

呪力で強化した脚力で天井を突き破り、ミゲルをシャフトの壁に叩き付け、投影した剣で壁ごと叩き切る士郎。呪霊相手であれば夏油の独壇場だと判断し、不安因子のミゲルを強制離脱させる事を優先したのだろう。

 

加えて、高専の地下の忌庫と薨星宮の間には空間が存在している。

その名は"空性結界"。天元が管理者となっている何の性質も持たない迷宮であり、結界術の心得が有る者であれば天元で無くとも設定を弄ることが出来る。領域展開に踏み込んでいる彼であれば、十二分に実力を発揮できる戦場だ。

 

 

「ヤラセナイヨ、特級!」

「こっちの台詞だ!!」

 

 

ミゲルが左腕に巻き付けていた縄を振るって来たが、難なく斬り返して受け止める。恐らく術式効果に対しての中和能力を持つ"黒縄"だろうが、術式のコントロールから離れた投影物には効果が薄いようだ。例え破壊されたとしても、何度でも創り直せる士郎に分がある。

 

小細工は有った。しかし、それを押し退けるだけの相性差が両者には有る。

 

 

 

「───いけるッ!押し切れる!!」

 

 

 

空性結界へと侵入し、互いに身構えるミゲルと士郎。

 

 

原作では五条悟を押し留めた呪具だが、一撃必殺よりも手数に長けた士郎には無意味。

 

術式勝負であれば射程(レンジ)で上回る士郎が有利。

 

近接戦闘でも体格差は有れど、殺傷力の高い呪具を扱える士郎に軍配が上がるだろう。

 

勝ち目は十二分に有るはずだった。

 

 

 

 

 

「.....お前、まさか」

 

 

 

 

 

 

ミゲルの結んだ印を見て、その全てが崩れ去るのを感じた。

 

小細工は有った。相性差も有った。

だが両者には、それでも埋まらぬ実力差が有ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

」...ここまでやるとは「

「一々駄弁らずに出てこい....よッ!!」

 

 

此処は花御の領域"朶頤光海"の中。無下限呪術すら無効化する必殺の空間。

そんな中で、五条悟は苦戦し───ているわけもなく、呪力の奔流を創り出していた。

 

 

」これなら!!「

「見え透いてんだっつーの」

 

 

四方八方から飛来する枝や木の根の攻撃を全てカウンターで破壊する。その技の名は"落花の情"、御三家にのみ伝えられる領域対策の秘技であり、五条悟クラスの規格外が使えば彌虚葛籠に匹敵する対領域の防御力を誇る。

 

 

」慢心しましたね、それは囮!「

 

 

しかし、その落花の情の保護膜を突き破る手段が一つだけ有る。それは"呪いの種子"。呪力を栄養分として成長する性質を持ち、呪力でガードすればするほどに威力を増す。

 

"呪力で受け止めなければ防げない"領域と"呪力で受け止めると成長する"種子。この相反する性質の多重攻撃に、これまで花御が相対した中で対応できた人間は存在しない。

 

 

 

「だーかーらー、無駄だってのが分かんねーのか?」

 

 

だから、人外の域に達している五条にその道理は通用しない。呪力を喰って勢いが増したはずの種子を手掴みし、そのまま握り潰したのだ。東堂は肉体の硬さのみで耐えて見せたが、上位になるほど呪術的な攻撃をフィジカルで解決したがる謎は深まるばかりである。

 

 

」よもやよもやですね「

 

 

攻撃が通らない事を見極め、領域の樹木と同化しながら隠密に徹する花御。そもそも彼女の仕事は五条悟を殺す事ではなく、一秒でも長く領域の中に閉じ込める事なのだ。ならば、わざわざ姿を晒して攻撃されるリスクを取る理由はない。

 

 

「クソッ、雑魚の癖に時間取らせやがって!!」

 

 

その行動が益々五条の癇に障る。一秒でも早く夏油と士郎の救援に行きたいのだろうが、自分より何段も格下の存在に足を引かれているという状況。最強を名乗る彼からすれば、人生の中で一二を争う失態だろう。

 

 

 

「頼むから無事でいろよ、死んだら呪うぞ....!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....ここまで来れば追って来られない筈だ。一度休みましょう」

「い、いえ!理子様の安全を確保するためなら─────」

「その"理子様"がお疲れなんです。察してあげてください」

「も、もうむりゅ.....むりぃ.....」

 

 

肩で息をする天内を見かねて足を止める夏油。

 

昇降機が最下層に降りると同時に"偽の"シャッフルする出入り口に何度も飛び込んで行方を眩ませ、五分近く全力で走り回って元の位置に戻って来たのだ、準備運動もしていない一般女子中学生には厳しいだろう。

 

 

「.....?」

「大丈夫、ここから先は天元様が守ってくれる....高専最下層、薨星宮の参道だ。招かれた者以外は出入りできないようになってて....理子ちゃん?」

「あっ...ううん、なんでもないよ」

 

 

床に染み付いた血痕のような汚れに気を取られるも、夏油に向かい直る天内。奥では神木と呼ぶに相応しい大樹が鎮座しており、そこに向かって仰々しい参道が備え付けられている。

 

そこを進み切れば、全てが終わる。

この長い旅路も、偽りの家族関係も、天内理子の生涯も幕を閉じるのだ。

 

 

「あの参道を進み切れば、君は天元様と同化する」

「う...いや、そうじゃな!今からでも武者震いが───」

「それか、ここで引き返して家に帰ろう」

「.......え?」

 

 

額に付いた血を拭いながら、さらりと言う夏油。まるで晩御飯の献立のような、当たり前の選択を聞くかの如くその声色は穏やかで、自然なものだった。

 

 

「ここに来る前に、士郎と悟との話し合いは済んでいる。私たち特級三人は、理子ちゃんがどんな選択を取ろうと尊重する事に決めた」

「ま、待って下さい!天元様と戦う事になるかも───」

「大丈夫、なんとかします。日本を三回転覆できるんですよ?」

 

 

黒井に向けて優しく微笑む夏油。それは慢心や若気の至りではない。どんな脅威だろうと跳ね返して見せる、という覚悟の現れ。天内を守り抜く、という決意である。

 

 

「私達は、最強なんだ。理子ちゃんがどんな選択をしようとも、君の未来は私達が保証する。どんな手を使ってでも、君を守り抜いて見せる」

 

 

幾度となく鍛錬を繰り返し、何度も銃を握りしめた事で出来た、反転術式でも治せないマメの有る優しい手が天内に差し出される。

 

 

 

その手を、天内は─────

 

 

 

「私は、わた、しは───」

「.....うん」

「小さい頃からオマエは星漿体だ、特別だって言われてて。私も自分は特別な存在で、特別だから周りの子より長く生きられないのも当然だって、本気で思ってたの」

 

 

 

制服のスカートをギュッと握りしめ、初めて自分の心の内を語る天内。誰も止めようとしない。天元との同化の障害でしか無いのに、黒井も夏油も何も言えない。

 

当然だ。今の彼らは、単なる護衛とお目付け役ではない。彼女の"味方"なのだ。

星漿体では無く、天内理子という一人の人間と向き合っているのだ。

 

 

 

「私の両親は小さい頃に死んだけど、今は寂しくも辛くもないの。だから、私が死んでも誰も困らないと思ったの。友達も、貴方達や黒井も、そして私も、きっといつかは辛くも何ともなくなるから」

「.....理子ちゃん」

「でも....やっぱり辛い。もっと色んな場所に行って、もっと色んな物を見て、もっと皆と一緒にいたい!それに、他の皆にはお別れも言えてない.....!!」

 

 

 

涙声になりながらも話し続ける天内。それを夏油は微笑みながら聞いている。やっぱりこうなるか、とも、任せて、とも言いたげな表情で聞いている。

 

 

しかし、天内は続ける。

 

 

 

「.....でも、それはダメ」

「え?」

「私が生きてたら、今までが全部無駄になっちゃうから」

 

 

 

数歩近づき、少し面食らったような彼の額を優しく撫でる天内。ほっそりとした彼女の指に、薄く鮮血のマニキュアが付着した。

 

 

 

「硝子さんが私を励ましてくれた事、五条と気晴らしに百円で買ったゲームをした事。夏油とも山登りしたよね、健全な精神は健全な肉体にって言って」

「ああ、でも私達の心配はしなくて良い」

「....また、誰かがいなくなっちゃうかもしれないのに?」

 

 

 

この場にいる全員が、十二月の悲劇を思い出す。

親しくなった同級生、あるいは家族同然だった人間の、死。

 

想像を絶する虚無と、取り返しの付かない喪失感。

 

 

 

「それは、ダメ。私が生きてたら皆に迷惑だよ」

「そんな事は──────」

「私が気にするの!!!」

 

 

 

悲鳴を上げるように答える天内。

 

そう。あの日から、彼女は人知れず罪悪感を抱えて生きて来た。士郎は勿論、五条や夏油に家入、家族同然の黒井にすらひた隠してここまで来た。

 

 

それが、逃げ道を与えられて決壊したのだ。

 

 

「だから、戻らない。私が......耐えられないから」

「それが君の選択なのかい?」

「..........うん。だから、行くね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

── ああ、やっぱりこうなってしまうのか ──

 

 

呪力を流し込む配線に繋がれた人間を見ながら、偽物の先生は呟く。まるで、こうなってしまう事が分かっているかのような嘆息だ。

 

 

── ごめん。また君に辛い思いをさせないといけない ──

 

 

視線の先にいる人間.....いや、人間と呼んで良いものか。老朽化はしていないものの、目は虚ろで呼び掛けにも反応しない。

 

それもそのはず。"それ"の魂は五百年前に七割五分を削られている。今の彼が意思疎通出来ているのは、切り取ったカエルの足に電気を流しているのと同じような現象に過ぎないのだ。

 

 

しかし、その眠りにも幕が降りる。

因果は廻り、長い夜が明ける時が来る。

 

 

 

── おはよう、管理人。五百年前の"六眼" ──

 

 

 

輪廻の目を与えられた怪物が目を覚ます。

 

五百十六年に渡り蜷局を巻いた殺意と共に。

 

 





目覚め。

・目が覚める事 
・ひそんでいたものが働き始めること


次回、「【壊玉】どけ!俺はお兄ちゃんだぞ!!」

管理人「羂索をブッ殺しますが、構いませんね!」

  • 早く殺せ。これ以上読者を待たせるな。
  • まだだ.....もっと苦しませろ!
  • おい、渋谷と死滅.....どこ行った?
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