産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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聞こえたのは悲鳴だった。
公園の中心で大きく、とても大きく聞こえた悲鳴の中心……、その場所にいたのはただ1人の少年。

「……り、く?」

悲鳴が終わり、泣き声が消え、倒れた少年へとブラックウォーグレイモンが近づいていく。

「すまない、……悪いが、お前を、俺は、置いて……っ」

体に穴が空いているにも関わらず、ブラックウォーグレイモンは跪き、起きあがろうと蹲る少年に向けて、最後の言葉を……、


()()()()()()()()


少年らしくない声で、少年はしゃべった。

「……誰だ、お前は?」

後ずさろうとするブラックウォーグレイモン。掲げられる『黒と翠』のゴテゴテとした装飾のデジヴァイス。


()()()()()()()()()()()()


その一言を皮切りに、ブラックウォーグレイモンの足下に魔法陣が浮かび上がった。

「ーーーーなっ!?」

ブラックウォーグレイモンの姿が消える。

「ーーーー、ブラックウォーグレイモンッ!!!」

ウォーグレイモンが叫んだ。

「ブラックウォーグレイモンが消えたっ!?」

「どういうことだっ!?」

「お前のパートナーじゃなかったのかよっ!?」

口々と叫ぶ少年少女らは気づかない。


「ブラックウォーグレイモン」

()()()()()


黒く掲げられた『ソレ』がデジヴァイスではないということに、


()()()()()()()


かつて、魔王を撃ち倒す為に暗闇の騎士が創り出したモノを神が再現(もほう)したソレは、

「……なに、なんなのこの空気っ!?」


かつて、神を超えた魔王を産み下ろしたソレは、


「全身からイヤな気配がかけずり回っていくみたいだ」


かつて、世界を変えようとした魔王が使ったソレは、


「……これ、はっ!?」


今、この世の暗雲をスベテ奪い尽くしたソレは、


「黒い、……オメガモン?」


白く輝く髪と赤い目をした少年(カミ)の手の中に強く握りしめられていた。



if √ バッドエンドの黒の騎士 ??→↑↓

 

 馴染む、……実に馴染むな、愛し子(この体)は。なんてくだらないことを考えて、『彼』を探し……、そばに侍る『彼』の腕……いや、包帯に巻かれた『グレイアーム』を優しく撫でる。

 

「ごめんね、……このままいなくなるとタイト……ううん、リクの心が壊れてしまうからさ。君を手放すわけにはいかないんだ」

 

 手の中に収まるのは『ダークネスローダー』。

 かつて、2つの世界を混乱に陥れた魔王により産まれた『神』の力が伴わないデジヴァイスとは似ていても確かに違う力。

 

(……遅れて、ごめんね)

 

 この姿は『最悪』が起こった時用の、星野タイトに……武之内リクの心が壊れかけたときに起こるセーフティモードだ。本来ならそれ以前の状態で僕が目覚める『はずだった』。

 

()()()()()()()

 

 

「『()()()()()()()()()D()E()F()E()A()T()』」*1

 

「────はっ!」

 

 

 黒いオメガモン……、オメガモンズワルトDEFEATは隣に跪き、僕へと首部を垂れる。

 

(……さて)

 

 ここはどこだ? 

 

 僕の大事な愛しい子を傷つけた世界はどんな世界だ? 

 

 

「……たけ、のうち?」

 

「ブラックウォーグレイモン、なんで……?」

 

「及川はっ、及川はどこにいっ────」

 

 

 なぜだ? 

 

「…………」

 

 なぜ? 

 

「……おかしいな」

 

「……武之内さんでよかったよね? 怪我は……?」

 

 

 近づいてくる高石タケル(帽子を被った子供)

 

 おかしすぎる……、笑えない話だ。

 状況が理解できない。

 僕は『この世界』に連れてくる予定はなかったはずだ。

 ふざけるな。

 どうしてこんなことになっている!? ……どうして、こんなことになっているんだ? 

 

 

「なんで、リクはこの世界に来ているんだ?」

 

 

 この世界はどうしてこうなっているんだっ!? 

 

「…………お前っ!?」

 

 高石タケルが大きく後ろへと下がった。僕の言葉から『武之内リク』の異変に気が付いたか……、だが────、

 

「……今はどうでもいい、かな?」

 

 僕はディフィートと共に歩き────、

 

 

「あなたは、……いったい何者なの?」

 

 

 お前はなぜここにいる? 

 

「…………」

 

 どういうことだ。

 なぜ、なぜ、なぜ貴様はここにいる。貴様がここにさえいるのであれば、簡単にリクを助け────、いや、僕の見間違いかもしれない。他にやらねばならないことがあるだろ。

 

(……こんな感じかな?)

 

 あーあーと、声を出して、この体の動かし方を理解する。

 

 

「はじめまして、……僕の名前は『イグドラシル』。この体の持ち主の……父親、でいいのかな? この少年を作った存在にして、別の世界の『デジタルワールド』の神だ」

 

 

 彼を産んだあの子が母親なら、彼を造った僕は父親だ……、愛しい子はきっとソレを認めないだろうけどね。

 

(さて、反応は?)

 

 

「デジタルワールドの?」

 

「神様、だぁ?」

 

 

 まず、反応したのは本宮大輔と一乗寺賢か。予想どう────、

 

 

「大輔っ、今、どうなって……っ、武之内陸っ!?」

 

 

()()()()()()()? 

 

 

「太一さん、どうやら違うみたいですよ。奴は……」

 

「別の世界のデジタルワールドの神様だぁっ!?」

 

「陸の本当の父親……っ!? いったいどういうことっ!?」

 

 

 彼はもっと輝いていたはずだ。

 彼はもっとすばらしい資質を持っていたはずだ。

 彼はもっと美しかった。

 

 なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、……ああ、そういうこと、か。

 

「…………そういうこと、か」

 

 理解した、……これは、

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 僕の怒りに同調し、ディフィートが『奴』へと振るう。

 

「────ヒカリッ!?」

 

 奴のパートナーが『奴』を守ったことで、僕と彼らとの間に大きな距離がうまれた。

 

「僕に近づくな、ホメオスタシスの傀儡」

 

 僕は見抜いた。

 

 僕は見抜いているぞ。

 

 その中にあるドス黒い情念を理解している。貴様のくだらない欲求のために、ここはこんなにも醜い場所へと変わってしまった。

 

「ホメオスタシス……の?」

 

「……何を言っているっ!?」

 

 惚けたって無駄だ。

 僕は知ってる。僕は知っているのだ……、貴様は『そこ』から見ているのだろう? 

 

「ははは、……本当に世界って奴はクソッタレだ。今までは半信半疑だったわけだが、本体を見たらすぐに気づけたよ。こんなにも……こんなにも、八神太一が堕落しているとはなっ!!!」

 

 こんなにも、こんなにも堕落しているとは思わなかった。

 

「太一さんが……堕落、しているだと?」

 

 怒りに打ち震えてるな、少年。

 だが、しかし……、僕は、僕こそがこの世で唯一理解できる。

 

 

 この世界は『ブレイブテイマー』の世界であったはずなのだ。

 

 

「本来であれば世界を救えるほどの救世主であったはずなのに、その力が他の存在に分けられている。僕が送り出した世界がこんなにも腐った環境になっていたなんて、信じられるわけなかったんだっ!!!」

 

 ゼロ丸がいない。

 ゼロ丸が産まれないというだけで、ここまで、……いいや、だからこそ、こんなにも世界は狂ってしまった。

 

「何を、……何を言っている?」

 

 本来1つに集い、うつろわないその存在が、……彼の、彼の最も特徴的であった彼の『勇気』が、

 

「彼の勇気が分たれている。見た瞬間ハッキリとわかったよ。この世界はホメオスタシスによって汚染されているってっ!?」

 

 この世界はホメオスタシスに都合よく動いている(汚染されている)

 

「デジモンが深く関わる世界だったはずなのに、ここまで、ここまでするのか貴様らはっ!!!」

 

 日常にあるはずであった。

 僕の知る日常にあるはずであったデジモン達との繋がりが、この世界から……、たった1人の傀儡を産む為に消え去ってしまった。

 

「どうしようもない。どうにもできない……、ああ、そうか。あのクソッタレはそういう愛し方をしたというわけだ」

 

 僕もそうした……、それは理解しよう。しかし、ここまで、ここまで影響が出るとは理解しなかったのか? 

 

「昔はわからなかったが、今ならわかる。僕がしたことはクソッタレ未満の外道だが、この世界はそれ以上に腐っているっ!?」

 

 理解しなかったのだろう。いや、理解したとしても、将来的に『上手くいけば問題ない』と判断したのか? 

 だが、それは……だが、しかし、それは『失敗』に終わるとなぜシュミレートしなかったのか。ああ、今なら理解できる。『私』以上の愚者の手によって理解させられる。

 

「この先に未来はない。この世界に明日はない……そして」

 

 そして、私は、

 

 

 女の声が聞こえる。

 加虐に満ちた、支配欲に満ちた、愉悦に満ちた、残虐に染まった、性欲に濡れた、歪で、歪んで、呪い、呪いに満ちた……この世界の我が愛し子の苦しみの記憶(こえ)が聞こえる。

 

 

(そう、私は)

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 私の身は愛し子の為にある。

 

「り……、イグドラシル、あなたはいったい何を言って……っ!?」

 

 ホメオスタシスの気配を感じる傀儡(こむすめ)よ。

 

「黙れ」

 

 私を見つめてくれるな。

 見つめられるだけで、我が愛しい子を見殺した貴様に見つめられるだけで、腹が立って仕方がないのだ。

 

「武之内春彦に伝えろ。『君には感謝している』……と、ここまで私の愛し子を生かしてくれたこと、育ててくれたことに感謝している。それはタイト……ううん、リクも同じだ」

 

 礼儀だけはくれてやる。

 だから、我らに付き纏うことは許さない。これ以上我が愛し子の苦しみを癒す手段はこの世界にはない。

 

「……そして」

 

 聞こえているのだろう? 

 

 

「聞こえているのだろう、クソッタレのホメオスタシスッ!!!」

 

 

 クソッタレのホメオスタシス。

 

「よくも我が子の心を弄んでくれたなっ! 必ず、必ず貴様の思惑通りにさせてなるものかっ!!! 

 

 この世界の存在を許すことはできない。

 

「ディフィートッ!!!」

 

「────はっ!」

 

「まずは封印されたこの世界の我が身を探す。力を取り戻し次第、奴らに報復を…………奴らの全てに報復をするぞ」

 

「……御身の思うままに」

 

 やはり、傷ついたブラックウォーグレイモンよりも、逃げ延びた『ワニャモン』の気配が強い。違うな、傷ついたブラックウォーグレイモンの意識は完全に埋没している。

 今は愛し子のデジモンとしての側面よりも、『我が騎士』としての忠義がまさってしまっているな。

 

 

「────待てっ!!!」

 

 

 八神太一……、やはり、君か。

 

「イグドラシル、お前達はいったい何をしようとしているんだっ!!!」

 

「ブラックウォーグレイモンと武之内陸を返せっ! 僕らはお前の思い通りには────」

 

 ウォーグレイモン……、本来であれば『この世界』に産まれることはなかったデジモンよ。やはり、その姿は、

 

 

()()()()

 

 

 哀れとしか言いようがない。

 

「……あわれ、だと?」

 

『選ばれし子供』であったか? ……自らで選ぶことなく始まった冒険譚(アドベンチャー)。そしてその末路は、ふっ。

 

「使い捨ての鉄砲玉として扱われているとも気づかずに……、本当に哀れだよ」

 

 来るべき別れとも知らずに弄ばれてるなど……つゆほども理解しておらんのは、僕には理解できないんだよ。

 

「使い捨て……?」

 

「それって、いったい?」

 

 だが、しかし、恩義を返すというのも事実。我が愛し子も彼への恩義を返す為に、『記憶』を取り戻そうとしていたのだったな。ならば、ヒントぐらいはくれてやろう。

 

「武之内春彦に恩義もある……、君達にヒントをあげよう」

 

 僕は愛し子よりも優しくはないのでな。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 ヒントはこれだけだ。

 

「「「────ッ!?」」」

 

 全員が驚き、慄いたのを感じる。

 

「イグドラシル、────それはいったい、どういうことだっ!?」

 

 一乗寺賢が叫んだ。『封印』されていなければ、救いに行けたというのに、かわいそうに……、せめてもの礼だ。

 

「ゲンナイをあまり信じない方がいいっ! 君達の望む未来を掴みたいのならば、なっ!!!」

 

「……消えた?」

 

 ディフィートに抱かれ、彼らは姿を消した。

 

 

「くそ、くそっ、くそぉっ! いったい、どーなってんだよぉ────ッ!!!」

 

 

 本宮大輔の声が冬の寒空の下、響き渡っていた。

 

「……ごめんね」

 

 

 

 

 

「1つ」

 

 及川達を殺した。

 

「2つ」

 

 メイクーモンを完全に消滅させた。

 

「3つ」

 

 弄ばれた別世界の自分(この身)を糧にした。

 

「4つ」

 

 叛逆者(ジエスモン)に落とし前をつけた。

 

「……そして」

 

 夕焼け空に、白い『異物』。

 

「……何なんだ、何なんだよ君達はっ!?」

 

 そうだ。そうだこいつが始まりだったんだ。

 

 

()()()

 

 

 ディフィートと共に、パートナーのそばから離れた『異物』の処理をしよう。

 

「ディフィート、覚えてるか? こいつがお前達を……」

 

 

 2年前、タイトがリクになる直前の記憶。

 

 

『タイト様、……何か、来ます』

 

 

 次元の狭間にて『奴』と出会った。

 

『……お前ら、なに?』

 

 魔王型デジモンへと進化したワニャモンを前に、突然現れて警戒した様子のデジモンのような、デジノームのような何かが、次元の裂け目から現れたのだ。

 

『……僕の知らないデジモン? いや、デジモンではない何かか?』

 

 クリオネのような体に、白く、白い……君の悪いぬいぐるみのようなデジモンは、テイマーを、アスタモンをジロジロジロジロと見ながら、我らの周囲を飛び回った。

 

『何、ジロジロ見ているっ!? テイマーに失礼でしょうっ!!!』

 

 失礼だと思った。

 

 不愉快であった。

 

 心の広い、私のテイマーでも……、いいや、我がテイマーが低く見られているような気がしてさらに許せなくなった。

 

 

『変な気配がしたと思ったらそういうことだったんだ』

 

 

 クリオネが大きく、大きく口を開けるように、その何かが口を開けた。

 

『『────ッ!?』』

 

 触手を広げ私達を捕まえる。

 

『あの子達の気配がするけど、『ルイ』がいないんだね』

 

 触手に触れた瞬間、力が出なくなって、戦えなくなって、

 

『邪魔だなぁ』

 

 その声が最後まで気に入らなくって、

 

『偽物なんかいらない』

 

 私はテイマーを守れなくて、

 

『お前なんかいらない』

 

 守れなくて、

 

 

『いなくなっちゃえっ!!!』

 

 

 私達は……、

 

 

「ええ、覚えておりますとも」

 

 

 テイマーの記憶を、私をデジモンミニに封印した。

 

 

「この白いゴミのことはっ!!!」

 

 

 黒い包帯で巻かれた右腕を振るう。

 

「『ガルルキャノン』」

 

 白いゴミに向かって、放たれた強烈な一撃。

 

「────あぶないっ!? いきなり、何するんだっ!?」

 

 なんとか紙一重で避ける奴。その様子を見て、今の私であれば奴を傷つけられると理解した。

 

「ホメオスタシスの残り香の強いデジモン。きっと特別性のデジモンなんだろう」

 

 御身の宣言に合わせて私は武器を振るう。

 

「殺してやる、奪ってやる、糧にしてやる。全て、スベテ、すべてっ!!!」

 

 私の力へと、供物へと、奪い尽くしてやる。

 

 

「……やれ」

 

「『グレイソード』」

 

 

 奴を縦に真っ二つに切り分ける。

 

「……は、あっ」

 

 気づいていなかったのか? 

 奴の目は驚いたまま、その体を治そうと、左半身と右半身から触手が伸びて体を繋ぎ始める。

 

「まさか、勝てるとでも思ったのか?」

 

 技を繰り出そうと動き始めた。だが、それは間違いだ。

 

 

「ブラックウォーグレイモンだけじゃない」

 

 

 御身は私の体に力をくれた。御身は宣言する。

 

「オメガモンも」

 

「マグナモンも」

 

「デュークモンも」

 

「デュナスモンも」

 

「ロードナイトモンも」

 

「アルフォースブイドラモンも」

 

「スレイプモンも」

 

「ガンクゥモンも」

 

「ジエスモンも」

 

「エグザモンも」

 

「クレニアムモンも」

 

「ドゥフトモンも」

 

「アルファモンも」

 

 

 そのすべての力が、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 御身が私に与えてくれた力だ。

 

「────ひっ!?」

 

 奪え、奪え、奪い尽くせ。

 

「さあ、やれ……ディフィート。奴の全てを奪い尽くすんだ」

 

 怯える奴からすべて奪い尽くせ。

 

「やめて、助けて、ルイ……、助けてよっ!?」

 

 私達は2年前、そう願っていたはずだ。

 

「助けてなんて言葉は聞かない」

 

 御身よ。

 

「お前のせいで、……貴様のせいでどれだけ苦しみを生んだか教えてやる」

 

 我が忠誠を、テイマーに捧ぐ忠誠をあなたに託します。

 

「ごめん、ごめんなさい。許して、お願いします」

 

 聞き飽きた。

 

「やれ、ディフィート」

 

「ルイ、……たすけ────

 

 ……だから、御身はテイマーを救ってください。

 

 

「『ガルルキャノン』」

 

 

 私の大事なリク(テイマー)を。

 

 

 

「……ごめん、ごめんね」

 

 闇夜は揺らぐ。

 

「僕の愛し子」

 

 神は自身の体(愛し子)を抱き、黒の騎士は侍る。

 

「君の傷はどうやったら癒えるのかな?」

 

 傷だらけの体。傷だらけの記憶……、そして、傷だらけの魂は、神ですら目覚めさせることは2度とできないのであろう。

 

「どうしたら君は笑って生きられる?」

 

 神は初めて『奇跡』を願った。

 

 

「君の願いを叶えよう」

 

 叶えられなかった『愛しい』『愛しい』我が子へと、

 

「君の望みを叶えよう」

 

 共にあることを望めなかった『愛しい』『愛しい』我が子へと、

 

「奪われたのなら報復しよう」

 

 奪われてしまった大切な時間をたくさん、たくさん捧げましょう。

 

「悲しませたなら、救いあげよう」

 

 救われなかった、救えなかった『愛しい』この子は誰に救われるのであろう? 

 

「……だから、だから……どうすれば君は元に戻れる?」

 

 神は初めて涙を溢した。

 

「僕の最愛の子よ」

 

 最愛の子へと涙を流した。

 

「僕は……僕は、……」

 

 そして、

 

「…………」

 

 そして、

 

 

()()()

 

 

『辿り着いてしまった』。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 不幸にも辿り着いてしまったのだ。

 

「君はどうしたいかな? 『────ー』」

 

 侍る黒は姿を変えた。

 大きく、大きく姿を変え、神すら喰らい尽くした果ての『黒』は、本来の姿とも程遠い何かへと作り変わった。

 

「リクが癒せるのなら、私は御身に従う所存です」

 

 そして、御身へと忠義を尽くす。本来のテイマーを取り戻す為に。

 

「ふふふ、いいね!」

 

 神はそれに応えている。

 全力で楽しみながら、嬉しいと忠誠が自身に寄らないことにとてつもない歓喜を得ながら、未来へと歩み始める。

 

「それで……次はどちらに?」

 

「決まってるよ」

 

 神と『黒』の行き先は決まっている。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

*1
レベル:究極体 タイプ:聖騎士型 属性:ウィルス種 必殺技:『ガルルキャノン』 『グレイソード』

 オメガモンズワルトが、何者かにウィルスプログラムを注入されて狂戦士とされた姿。視界に移るデジモンは全て禍々しい敵として映り、近づく者は誰であれ容赦なく襲いかかる。

 体内で猛威を奮うウィルスプログラムと微かに残るワクチンプログラムが体内で反発しあって不安定となり、傷ついた身体は癒えることなく疲弊、暴走を繰り返す。時としてワクチンプログラムが押し返し自我を取り戻した一瞬に、被害を抑えるため両武器を拘束した。





ボロボロになったマンションの部屋の一室。

「…………」

女性……、『星野アイ』はただ1人座り込んでいた。

「アクアもいない」

数年前、星野アクアは星野アイを狙ったストーカーによって殺された。母親を守ろうとしての犠牲であった。

「ルビーも」

兄と同様に母親を守ろうとして、ストーカーによって殺された。その最後は悲しみに満ちたものであった。

「佐藤さんも」

斎藤壱護は姿を消した。
星野兄妹の死亡の数年後、100年ぶりの世界恐慌の発生、……それに伴い、経済が破綻し、アイドルどころか………、世界から娯楽産業自体に金を注ぎ込む余裕が消えた。そのせいで、未来に絶望し行方をくらませたのだ。

「ミエコさんも」

自殺であった。
最後の希望であった夫が消えたことによりこの世界に絶望した。手を伸ばす先すらそこにはなかった。

「……タイトも」

世界恐慌が起こる前日、その姿を消した。星野アイの最後の子供であったが、彼女は最後の最後まで彼のことを救えなかった。


「みんな、みんなみんな……みんな、いなくなっちゃったっ!!!」


星は嘆く。


「会いたいよ」


黒でも白でもなく明滅する。


「誰か、誰か私を見つけてよ」


そこに誰もいなかった。


「何が駄目だった? 私はどうしたら良かった?」


彼女にとって大切な何かはそこにはなかった。


「くるしい、クルシイ、苦しいよっ!」


苦しみを叫んだとしても、救う存在はそこにはいない。


「私は、私は……ただっ!」


そう、彼女はただ、


「愛したかっただけ、……なのに」


愛してくれる『誰か』を愛したかっただけなのだと……してーーーー、




「ーーーー()()()()()()()()()()()!」



『オレンジ色のタマゴ』が割れた。

「……だれ?」

声の先にいたのはピンクのまんまる。

「僕はコロモン」

その周辺には割れたオレンジ色のタマゴの破片。そこから彼が……『コロモン』が産まれたことに気がついた。

「……その、タマゴは?」

彼女はそのタマゴがなぜあるのかを知らない。

「僕は目が覚めたけど、僕のパートナーが見つからないんだ」

キョロキョロと寂しそうに周りを見て、誰かを探すコロモン。しかし、彼の探している存在はここにはいない。

「君は『タイト』の居場所を知ってる?」

「ーーーーッ!?」

産まれたばかりのコロモンから、自身の息子の名前を聞かれたことに彼女は驚いた。しかし、コロモンはそれを見て、


「そうだよね。君は僕と同じで置いてかれたんだもんね」


彼女を『置いて行かれた』と残念そうに言った。

「ーーーーっ、私は置いてかれてなんかっ!」

条件反射で出た言葉は、……少し考えると、すぐにわかることで……、

「……なんか、なんかいないもん」

彼女は置いて行かれたことなんてわかっていた。見捨てられたことなんてずっと、ずっと前からわかっていたのだ。気づかないふりをしていただけ……、

(それでも)

それでも、ずっとずっと一緒にいたかったんだ。彼女の愛したかった子供達と……、

「……じゃあ、探しに行こう!」

「……へ?」

コロモンは突拍子もないことを告げ、

「君は僕の仮のパートナーとして!」

ピンク色の耳? 手? 触手を私の前に差し出して、

「君は僕の仮の相棒として!」

私の手を強く、強く握りしめて、


()()()()()()()()()()!!!」


私達は光の中へと飛び込んでいったのだ。

これは長い長い旅の始まり。
私達が本当に大切な『君』を取り戻すための、本当に長い長い旅へと向かう第一歩だった。


サブタイトル:『無限大の夢を探して』
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