産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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『このアカウントは現在ログインできません』

『このアカウントは現在ログインできません』

『このアカウントは現在ログインできません』


「くそっ、こいつも駄目かっ!?」

最初は上手くいっていた。

『このアカウントは現在ログインできません』

『アヴァロン・サーバ』への道筋を、不完全な『ジュード(チーム)』であったものの、そこにいる全員でハッキングして乗り越えられた。

「何がっ、何が起こってるっ!?」

序盤、中盤、終盤……どんな場面であっても、俺達は隙を見せず、神城のサーバをハッキングして、『アヴァロン・サーバ』の最奥まで辿り着くことができた。

『このアカウントは現在ログインできません』


辿()()()()()()()()()()()()


「やっと、『アヴァロン・サーバ』に入れたんだっ!!!」

みんなで辿り着いた『アヴァロン・サーバ』。その最奥で俺達はとある『存在』に出会った。

『このアカウントは現在ログインできません』


()()()()()()()()


「タイトの手がかりがそこにあるんだっ!!!」

突如として、俺のアカウントだけが『強制的にログアウト』された。

『このアカウントは現在ログインできません』

仲間があの場にいるのに、俺だけあの場にいることができなかった。

「アイが待ってるんだっ!!!」

仲間の安否が心配だった。

『このアカウントは現在ログインできません』

仲間がどうなってるのか知りたかった。

「アラタ達があそこにいるんだっ!!!」

焦燥感だけが俺の心を支配していた。

『このアカウントは現在ログインできません』

デジヴァイスのログインボタンは何度やっても、何度やっても動かない。

「……っ、開けよっ!!!」

いつもなら簡単に開く癖に、どうして『今』動かないんだよっ!!!

『このアカウントは現在ログインできません』

別のデジヴァイスでも『ログイン』できない。

「開け、開けよっ、開けっ!!!」

開かなくて、ただ開かなくて、

『このアカウントは現在ログインできません』

アヴァロン・サーバ(あの場所)』に行かなければいけないのにっ!!!

「『EDEN』に早くっ!!!」

入れないことはわかっていた。

『このアカウントは現在ログインできません』

でも、それでも、

「入れっ!!!」

仲間があそこにいて、

『このアカウントは現在ログインできません』

アイの大切な人の情報があそこにあって、

「入れ、入れっ、入れっ!!!」

『俺』は……、俺が『あの提案』に乗って(して)しまって、

『このアカウントは現在ログインできません』

だから、俺がっ!!!

「入れぇっ!!!」

だから俺が行かないとっ!!!


『このアカウントはーーーー、


「ーーーーッ!?」

ログイン画面に切り替わる。


『ログインに……now loading……』


「いった?」

半信半疑ではあるが、ログインしようとアカウントが動いているのが見てとれた。

『ログインに……、

今までにない反応だ。

「行けっ!!!」

早く、早く入れるように、ログインできるように祈る。

「行け、行けっ!!!」

焦燥感が自分の身を焼き焦がしているのを感じながら、ただ祈り続ける。

「行け、行け、行けっ!!!」

……そして、



()()()()()()()()()()

「いったっ!!!」

そのアナウンスが聞こえた時、






()()()()♡』



4.1章 結 失墜

 

 

 2015/8/1

 

 

「…………っ、アラタっ!!!」

 

 

 扉が開く。

 

「……龍司か」

 

 そこにいたのは、今回の作戦に『唯一』参加参加しなかった龍司だった。

 

「千歳、何があったっ!?」

 

「牧瀬や竜胆、加藤まで……っ、『アヴァロン・サーバ』で何かあったのかっ!?」

 

 龍司は千歳に駆け寄り、その隣にいる……いや、『この場』にかれるだけの、『あの後』にリアルで会えるだけのメンタルを保てた面子に声をかけていた。

 

「…………」

 

「…………」 

 

 二人は龍司の顔を見て、涙が溢れる。

 

「ちくしょう」

 

「あいつら、変なプログラムで俺達のアカウントをぶっ壊しやがったっ!!!」

 

 …………、ああ、そうだよな。

 

『悔しいよな』。

 ここにいる奴らは『悔しい』から、出てこれたんだ。

 

「……壊し? ……いったいどういうことだ?」

 

 龍司は一人だけついてこれない。

 

(こいつは、いなかったから理解ができないんだ)

 

 あの場に、……いいや、『アレ』を見なかった龍司だけが、このことについて知らないんだ。

 

「『アヴァロン・サーバ』を守ってたプログラムがいたんだよ」

 

 竜胆が言う。

 

「そいつは中身のない騎士みたいな姿をしていて、俺達が『アヴァロン・サーバ』に辿り着いた途端、持っていた剣でアカウント、……ごと────うぷっ!?」

 

 竜胆は思わず口に手を当てた。

 

「竜胆っ!?」

 

「無理に思い出さなくていい。思い出すだけで、……あれは、……くそっ!!!」

 

 龍司と千歳が竜胆を支えるが……、涙と抑えた口元からツンとした臭いが、部屋いっぱいに立ち込めた。

 

 

 

 なんとかビニル袋に、『ソレ』を掃除することができた。ファブ◯ーズで臭いもなんとかすることができた。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……マリンは、マリンの奴はどこにいるっ!?」

 

 その空気をなんとかするように、……この場にいない『賛同』した少年にあたるように叫ぶ龍司。

 

「……マリン、は」

 

 ……そういえば、マリンが斬られたところは見ていない。

 

「マリンは」

 

 俺のように逃げたわけじゃない。

 

「マリン……は?」

 

 マリンはどこに……、

 

 

「『()()()()()()()()()()()

 

 

 PCからそんな音声が聞こえてきた。

 

「……メッセージ?」

 

 こんなタイミングで……いったい、誰か、……ら? 

 

 

()()()()()?」

 

 

 差出人の名前を見て呟く。

 

「マリンからっ!?」

 

「本物かっ!?」

 

 その場にいた龍司と千歳がこちらへとやってくる。

 

 

「『リアルで会いたい。明日、昼の12時、服装は黒のトレーナーにジーパン、黒の野球帽。秋葉で待ってる』」

 

 

 その場にいた全員は顔を見合わせ、頷いた。

 

 

 2015年 8月2日 PM 12:00

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 マリンを探す。

 

 新宿で、『マリン』らしき人物が見つかる。

 

 ……見たかったの、だが────、

 

 

 

「……お前、マリンか?」

 

()()()()()()()()()()()()

 

(……マジか)

 

 もともと、(ツラ)がいい……とは思っていたが、リアルで金髪青眼の見た目の少年だったことで、完全に『王子様系』といっても過言じゃないぐらいの美形の少年がそこに立っていた。

 

 

「俺の名前は『星野アクア』。マリンは、えっと……あー、その」

 

 

 自己紹介をしながら周囲を……、いや、衆目を気にしている? 

 

(なんで、こいつは周囲の人混みを気にし────

 

 

「……、って星野、アクア?」

 

「────っ」

 

「あ────ッ!!!」

 

 

 千歳、竜胆、加藤の順にマ……アクアを指差して驚いた。

 

(────まっず!?)

 

 周囲の目がこちらを向いた。

 

「────千歳、それに、お前らいったいどうしたっ!?」

 

 龍司の声がさらに衆目を集める。

 

 

「こいつ、あの『星野アクア』だっ!!!」

 

 

 千歳の大声に、地味な服装でも際立つアクアの顔を見るのが見えた。ビクリと肩を振るわすアクアの姿も────っ、

 

「────、声が大きいっ!!!」

 

「────ってえっ!?」

 

 俺は千歳の頭を叩いて、周囲を見る。

 

 

「……えっ、星野アクア?」

 

「あの有名子役の?」

 

「数年前に『アクかな』で有名だった!?」

 

 

(……やべえ、なんか知らねえけど、やばいことになったっ!?)

 

 俺は人混みの少ないところを必死になって探す。

 

「……まさか、やっちまった?」

 

「……そう、みたいだな」

 

 龍司のため息……もう少し、早く気づいてくれよっ!!! 

 

(────見つけたっ!?)

 

 そこの書店の裏路地……たしか、その先が結構入り組んでたはずだっ!!! 

 

「……お前ら、こっちだっ!!!」

 

「────走れっっ!!!」

 

 

 

 

「……で、『星野アクア』……だったか?」

 

 裏路地の先、アキバの奥の奥を彷徨って、ようやく入り込んだカラオケ店。その先で、俺はゼー、ハー……と肩を荒げるアラタに話を聞かれる。

 

「お前は俺達を裏切ったのか?」

 

 

「「「────ッ!?」」」

 

 その質問に俺は首を振る。 

 

「俺は『ジュード』を裏切っていない」

 

 俺は、あの時の……あの後のことを思い出した。

 

「……あの後」

 

 

(なんだ、これは?)

 

 俺のアバター(アカウント)は透明になって『アヴァロン・サーバ』の上に浮いていた。

 

(体が動かない!?)

 

 指一本動かせず、もがいても、もがいても、目の前の光景をなんとかできない。

 

『ようこそ♡』

 

 そんな時だった。

 

 

『うふふ、オ・イ・タしちゃったおバカさん♡』

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(────っ!?)

 

『あの子があんなに頑張ってるのに、欲張っちゃったのは……、ほんっとうに、おばかよねぇ♡』

 

 俺の頬を撫で、そう微笑む(笑う)女。ただその容姿に心当たりがあった……いや、それよりもっ!? 

 

 

(────、あの子、だとっ!?)

 

 

 俺の頬を粘りつくように撫でる『岸辺リエ』。その様子は確かにタイトが気にしていた

 

 

『岸辺リエ

 性格最悪の女 化け物 社長を殺す』

 

 

 その言葉通りの邪悪さが滲み出ている。

 

 

()()()()()

 

(────っ!?)

 

 

 頬を撫でていた岸辺の手が、俺の顔を無理矢理『アヴァロン・サーバ』の方へと向けさせる。

 

 

(────アラタっ、それにみんなもっ!?)

 

 

 悲鳴が聞こえる。

 

 やめろ、やめてくれ……死にたくない。

 

 そんな声が聞こえてくる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『お前が油断をしていたから、あのガキどもは壊れるんだ』

 

 加藤がやられた。

 

(やめろ)

 

 竜胆が刺される。

 

『リアルで剣を向けられたことのない生き物が、デジタルで剣に突き殺されるって、どんな感覚なのかしらね♡』

 

 千歳が転んだ。

 

(やめてくれ)

 

 首が刎ねられる。

 

『仲間が次々に刺されていく……、貴方はそれを見ている……だ・け♡』

 

 アラタが逃げ出したのが見えた。

 

(────ッ!?)

 

 みんなを置いていくアラタ。

 

『あら、泣いちゃったかしら? ……でも、しょうがないわよね?』

 

 仲間が斬られていく。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(……あっ)

 

 

 岸辺リエ(悪魔のような女)の声だけが、俺に刻まれていく。

 

『ふはは、……あら、いけない。この『姿』で、この口調はちょっと傲慢すぎるわ♡』

 

(ああっ!?)

 

 最後の一人になってしまった。

 

『さあ、よく見なさい』

 

 逃げろと、逃げてくれと頼んでも、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 最後の一人に『剣』が振り下ろされてしまった。

 

 

(あ゛ぁ゛ああああああ────ッッ!!!)

 

 

 

 

 

「俺はお前達が殺されて……いや、アカウントが壊されていくところを、ただ見てることしかできなかった」

 

「……そうか」

 

 話せることは話した。

 

 強制的に『EDEN』がログアウトになったこと、

 

 なんとかログインできたけど、それは『岸辺リエ』の罠だったこと、

 

 仲間が斬り殺されたこと、

 

(……言えないこともある)

 

『あの子』……、あの子というのは……もしかして、いや、たぶん、きっと……、

 

 

「……にしても、『岸辺リエ』……か」

 

「偉い大物がこの件の裏にいたのかよ……くそっ!!!」

 

「どこからバレたんだっ!?」

 

 

 ここにいる全員が信じてくれている。

 俺だけ逃げたような、裏切ったような状態だったというのに、アラタも千歳も龍司も加藤も竜胆も……ここにいる全員が信じてくれている。

 

「…………」

 

 話せていないことがあるだけ……後ろめたくなってしまった。

 

(……そういえばっ!?)

 

 

「みんなデジヴァイスを開いてくれ」

 

「……これはっ!?」

 

 俺はデジヴァイスを起動して、全員のデジラインにデータを送る。

 

 

「『アカウントは返してあ・げ・る♡ おもしろいものを見せてもらったサービスよ♡ 今後はもう少し『賢く』してね♡』……っ、と言われた」

 

 

 岸辺の言葉だ。

 

『『あの子』みたいに、ね? わかるでしょ、『星野アクア』ちゃん♡』

 

 あいつには全部、俺の全部がバレていたみたいだが……、

 

 

「アラタ、マリ……アクア……お前らこれからどうする?」

 

 

 龍司が言った。

 

「…………」

 

「…………」

 

「俺は、……いや、俺達は」

 

 

 

「『()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 2015年 8月2日 PM04:00

 

 

「……誰に頼ればいい?」

 

 アラタのあの発言により、大変なことになった。

 

 

『ふざけんなっ、お前が始めたことだろうがっ……勝手にやめてんじゃねえっ!!!』

 

 

 カラオケの小さな部屋の中、龍司がアラタの顔をぶん殴ったことから始まった。

 

『確かに、ここで決めることじゃねえな』

 

『岸辺リエが渡してきたアカウントに罠が仕掛けられてないか全部確認した後、俺は全員のデジラインに解散することを言い渡す』

 

『────なっ!?』

 

『アラタ、お前本当にそれでいいのかよっ!!!』

 

 解散することに決めたアラタと、『ジュード』を続けたい龍司が喧嘩になって、千歳と竜胆が間に入って、俺と加藤はただ見てるだけ……、

 

 アラタはアカウントを調べ始めたが……、

 

『知るか、俺達は勝手にやる』

 

『わりい、アラタ……、龍司も混乱してるみたいだからよ。俺は龍司の方を落ち着かせてから連絡するわっ!!!』

 

 龍司は千歳とまだハッカーを続けるみたいだ。

 

『俺は、……アラタさんの言うとおりに、ハッキングから足を洗うよ』

 

『俺も、だ……少なくとも、『アレ』が夢に出てこなくなるまでは……『クーロン』に行くのも無理だ』

 

 加藤も竜胆も流石に今回のことは堪えたみたいで、すぐに元みたいになるのは難しいみたいだ……そして、

 

 

『アクアはどうする?』

 

 

 俺もアラタにそう聞かれた……その答えに俺は、

 

 

 

 

「『俺にはやることがある』……」

 

 そう、アラタに啖呵を切ったはいいものの……、何も見通しが立っていなかった。

 

「誰に頼ればいい?」

 

 アイや壱護さんには頼れない。

 世間体というものがあるし、そもそも『カミシロ』に対決できるほど、うちには資金がない。

 

 警察はどうだ? 

 それも頼りにはならない……むしろ、『カミシロ』の手勢がいる可能性が高く、下手に手を出せば、アラタが調べてくれた無害化したこのアカウントにも、『カミシロ』にいいようにやられてしまうかもしれない。

 

 逆に、アラタや龍司、千歳に手を貸して……これは、できない。

 

『星野タイト』

 

 彼のことを隠したまま、あいつらとつるむのは間違っている。今ならそう思えて……、

 

 結局、この二日間何もできずにいた。

 

 

「……どうすればいい?」

 

 

 どうすれば、タイトを……

 

 

()()()()()()()()()()? 

 

 

 

 

 ────You got a mail ! 

 

 ────You got a mail ! 

 

 PCからメールが届いた。

 

「……なんだ?」

 

 

『???』

 

 

(件名のないメール? ……今の時代に?)

 

 いつもならすぐに迷惑メール機能へと放り込む非通知のメール。

 

 ただ、今の俺はそんな気持ちにはならなかった。

 

 俺の指はそのメールに引き寄せられるように、カーソルを動かし、メールを開いた。

 

 

 

p()r()e()s()e()n()t() f()o()r() y()o()u()

 

 

 

 ────PONッッ!!! 

 

「────なっ!?」

 

 

 

 大きな音と、強烈な光。

 爆風のような風がPCのモニターから溢れる。

 

(────何が起きたっ!?)

 

 驚愕と警戒、……『既視感』を感じたその時だった。

 

 

 

()()()()()()!!!」

 

 

 目の前に『緑色』が映った。 

 

 

()()、『()()()()()*1』!!!」

 

 

 緑の体にピンクの爪、『蒼』色の瞳。

 

 

()()()()()()()()()!!!」

 

 

 大きな芋虫が目の前で笑った。

 

 

*1
レベル:成長期 タイプ:幼虫型 属性:フリー種 必殺技:『ネバネバネット』 『シルクスレッド』

 気弱で臆病な性格の幼虫型デジモン。ブイモン等と同じ古代種族の末裔で、特殊なアーマー進化をすることができるが、単体でのワームモンは非力で、大型のデジモンには到底かなわない。しかし、デジメンタルの力でアーマー進化することで、信じられないようなパワーを発揮することができる。また、脆弱な幼虫が力強い成虫に成長するように、ワームモンもいつの日かパワー溢れる成熟期へと進化すると言われている。まさに未来への可能性を秘めているデジモンなのである。必殺技は粘着力の強い網状の糸を吐出し相手の動きを封じこめてしまう「ネバネバネット」と、絹糸のように細いが先端が尖った針の様に硬質な糸を吐出す『シルクスレッド』。





2015年 8月2日 PM20:56

「……ふぅ」

時間は夜の9時。
ドラマの撮影が終わって、帰宅した後……私は風呂に入り、……そして、

「……この後は」

デジヴァイスを起動して、スケジュール帳の機能を見ると……、『理科の自由研究!!』と自分でタイトルをつけたページが開かれる。

「…………」

撮影で疲れた体。
正直言って、もうベッドに寝転がりたい気分だ。
でも、そんな時間は今の私には存在しない。

「…………」

口に出そうになる不満を飲み込む。
『あいつ』と別れてから、仕事だって年々……、いや、目に見えて減ってきてる。

売れっ子だったあの頃は、『仕事なんてやりたくない』ってそう思ってたけど……、それは私の正当な評価じゃなかった。

『あいつ』とペアでようやく『一人前』だった私。

『あいつ』がいなくなって、初めて『一人前』じゃなくなった私。

『あいつ』といるだけで……『幸せ』だった私。


「……っ、あっ!?」

そんなことを考えてると、足の小指にタンスの角をぶつけてしまった。

「……っうっ」

誰もいない部屋で、私は何をやってるのだろうと一人そう思った。

ーーーーピロンっ!

「…………ん?」

デジラインから通知が来たのが見える。

(……っ、こんな時に誰よっ!!!)

痛む小指を抑えながら、デジラインのアプリを起動すると……、


「ーーーーッ!?」


()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()

ぶっきらぼうな少年のメッセージ。

「……何よっ!」

それが懐かしくて、つい、頬が緩み、熱を帯びる。

あんなに酷い別れ方をしたというのに、こんなにも『あいつ』のメッセージが嬉しいのだ。

自分のチョロさに情けなく思うが……それ以上に、


()()()()()()()()()()()()


(『お前にしか』、『お前にしか』ですってっ!?)

星野アイでも、斎藤壱護でも、監督でもなく、『私』にしか頼めないって……そう言われて、陰鬱だった気持ちが天にも昇るように跳ね上がった。

「……っ、どう返信しようかしら?」

何よ、仕事に復帰したいの?

いい仕事、探してあげようか?

……いまさら私ともう一度ペアを組みたいって、話?


(正直、どれでもいいっ!!!)


緩んだ頬が、口角が吊り上がる。
ぶっきらぼうに聞いてもいいし、親切に寄り添ってあげても可……、あんたに不満持ってますよって、引いてみるのもアリよりのアリ……むしろその方が、私もこの四年間の不満もぶつけられるし、言うことを聞かせられて、上下関係を植え付けられるかもしれない。

(うん、その方がいいっ、絶対にそれがいいっ!!!)

だって、『私にしか頼めない』んだもんね!!!



……ピロンっ!


何が返信されたのか……な?



()()()()()()()()()()()()?』



「……は?」

8/1に向けた番外編のif√再アンケート (if√ハッピーエンドに、if√ネタバレ含む情報開示あり)

  • 『√アポカリモン その手で掴む為』
  • 『√カオスドラモン 星に寄り添う月世界』
  • 『√??? 失望の果て』
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