『ーーーーで、刑事さんはなんでアクアくんと知り合いなんですか?』
私は刑事と名乗ったその男性に、彼氏との関係について聞いた。
『まあ、いわゆるこいつが俺の相棒って奴でな』
『ただの『民間協力者』と『刑事』ってだけだ。お互いがお互いの目的の為に、こうやって協力しあってるなすぎない』
刑事と彼は仲が良さげに会話をしている。一朝一夕の関係でないことはたしか……、彼の知らない一面をまた一つ発見できたかもしれない。
『おいおい、釣れないじゃねえか? 俺にとってはあの『カミシロ』を追い詰める切り札だってのによぉ』
『無茶言わないでください。俺にはもう手段を選んでいる余裕がないんですから』
アクアくんの事前の会話に、末堂マナトとの会話と彼ら2人の会話、ここから察するにアクアくんは何かしら『カミシロ』と因果関係が発生していて……刑事さんとも、それ関係でつるんでいる?
いったいなんのーーーー、
『『カミシロ』を追い詰めるってどういうことよッ!?』
あっ、かなちゃんが大きな声で叫んだ。
『『しぃーっ、声がでかい(ぞ、嬢ちゃん)』』
『ーーーーっ!?』
2人に諌められるかなちゃんかわいいっ!? ……じゃなかった。彼とアクアくんの関係を知らなければ。
『……で、又吉刑事とアクアくんの関係は、どんな関係なんですか?』
(BでLな関係でなければいいんだけど……)
おじさん責められ、アクアくんが受けるのを想像してしまい、少しだけ吐き気が……、脳が破壊されかけた。
『俺と『マリン』の関係はだな』
刑事さんがアクアくんを『マリン』って呼んだ? ……、たしか末堂マナトも『マリン』って、呼んでいた気がーーーー、
『違法捜査をした『ハッカー』とそれを追い詰める『
タバコを吹かせて、ダンディに決める刑事さん。
『『ーーーー違法捜査ぁっ!?』』
『……はぁ』
その言葉にかなちゃんと私の声が重なってしまった。
『俺は、俺達家族はとある人物を『探している』』
知っている。
アクアくんの過去はがんばって調べた。わからないこともあったけど、でも……『星野アイ』の目的だけは『ちゃんと』調べ上げた。
『その人物は見つかっていて、その人物も俺達を家族だと認識している』
アクアくんから聞いている。
星野アクアの実の弟……、わずか3歳という年齢で、母親である星野アイを狙ったストーカーを対処し、その後『消えてなくなる』ように姿を消した少年。
『11年前、俺達の前から姿を消し、俺達の母親である『アイ』が11年の歳月、芸能界で情報を発信し続けた人物』
星野アイは既に失踪宣告を受けている。
それでもなお探し続け、見つける為に奔走した結果……、最終的に彼は星野家に接触してきた。その人物の名はーーーー、
『『星野タイト』……たった1人の、俺の弟だ』
『末堂マナト』、私がアクアくんと助けなければならない。たった1人の少年だ。
(……だからこそ、ここはアクアくんと共に、あちら側に行きたかったんだけどなぁ)
緊張して体を震わせながら、事務所のソファーに座るMEMちょ。
デジヴァイスをいじりながら、『何か』と話し続けている不知火フリル。
お茶の準備をすると言い、車から何かを取ってきている別府さん。
周囲を見回す
……そして、
「むっすぅーーーー」
いかにも『不機嫌ですよ』と言わんばかりの表情をしている『有馬かな』がそこにいた。
「何ムスッとした顔してるのかなちゃん」
「……MEMにもわかるでしょ。あんなこと言われたんだから」
「……ルビー、すごいコネ持ってたよね」
「あんなの出されちゃ世話ないわよ」
かなちゃんとMEMちょは同じグループ同士、何か話しているみたいだけど、
(どうやら2人は末堂マナトが『星野タイト』だとは知らないみたいだ)
あの様子から察して、彼女らの緊張の仕方や態度は、普段と変わらないと言ってもいい。ならば、私が知るべきなのはーーーー、
「……で、不知火フリル、あんたはなんでここにいるのよ」
「……ん?」
ーーーーあっ!?
「私も気になってた! 不知火ちゃんはどうしてこの仕事を引き受けたの?」
かなちゃんに先に質問されてしまった。聞き耳を立てるのは不自然だろうし……ここは、
「それは私も気になる。フリルちゃんは『どうやって』この仕事を引き受けられたの?」
私が話になるべきだろう。
(あの『末堂マナト』が依頼した人物。不知火フリルはどうやってこの仕事をーーーー)
「私は引き受けてないよ?」
「「「ーーーーえっ!?」」」
「
「「「ーーーーハァッ!?」」」
思ったよりも衝撃的な言葉がフリルちゃんの口から出てきていた。
「ちょっとそれ、どういうことよっ!? あんたまさかあの『カミシロ』に直談判したってことっ!?」
「……うん」
かなちゃんの言葉に同意するフリルちゃん。
(元々、突拍子のない人物だとは思っていたけど……、ここまでだったとはっ!?)
フリルちゃんの言動に驚きつつも、頭を回す。
(つまり、フリルちゃんは『末堂マナト』や『カミシロ』に対して、直談判できるぐらいの情報を握っている?)
彼女の言動から、そんなことが思い浮かんだけど……、
「そんな、大企業の中でも一流の『あの』カミシロにっ!? ……ふらっ」
ーーーーあっ!?
「MEMっ!?」
「MEMちゃんが倒れたっ!?」
『カミシロ』という大企業に、『直談判』なんてできたフリルちゃんに、MEMちゃんはオーバーヒートを起こしてしまった。
「……そういう反応になるよね、うん」
フリルちゃんは冷静に分析してるみたいだけど、
「ーーーーあんたが原因なんですけどッ!?」
かなちゃんの言うとおり、原因はフリルちゃん……ん?
「そっちが聞いたのが原因……、私は悪くない」
あっ、私達が聞いたのが悪かったのかな?
なんとなくそう思って……うん、MEMちゃんには後で謝っておこう。
「やっていいことと、悪いことの区別ができないのっ!?」
「…………ん?」
「できてなかったっ!!!」
2人はまだ何か話しているみたいだけど……、あれ? フリルちゃんがこっちを向いてる?
「……えっと、次はあかねちゃんの質問だよね」
あっ、さっきの質問覚えてたんだ。かなちゃんやMEMちゃんとは違う意味で聞いていたのがわかって……、
(もしかして、ものすごーく嫌な予感がする)
もしかして、今一番聞いちゃいけなかったのはーーーー、
「
「ーーーーっ、どういうことよっ、それっ!?」
この質問だったかぁっ!?
しかも、かなちゃん深掘りしはじめてるし……、別府さんはいないみたいだから、聞いてもいいのかもしれないけど、……うーん、でも聞いておこう。
「……今からだいたい一年くらい前になるかな?」
フリルちゃんはデジヴァイスをいじりながら、話しはじめた。
(((一年前?)))
一年前、……というと、一時期『カミシロ』の株価が揺らいだ時期があった。もしかして、それがーーーー、
「私の行方不明だった大叔母……、『水瀬ミユキ』が発見された」
(ーーーーッ!?)
私は『とある事件』のことを思い出した。
「……水無瀬?」
「ミユキ?」
2人は気づいていない。
なら、今聞くしか方法はないけれど……、
「本当に、水無瀬ミユキ……で、いいのかな?」
ほんとに今聞いていいのだろうか?
「ーーーーえっ、何、知ってるのっ!?」
そんなことを考えていても、やっぱり知りたいと思って聞いてしまった自分がいた。
「……でも、あれは」
あれと本当に関係があるのか……?
そう思いたい、そう思えたらいい……そう考えていたけれど、でも辻褄が合ってしまっている。
「黒川あかね、知ってるなら教えなさいよっ!!!」
「かなちゃん……ちょっと待ってて」
かなちゃんに聞かれながらも、デジヴァイスを動かして過去にスクラップしていた新聞のデータを取り出し始める。
地方紙の内容、
ネットの掲示板、
気になって開いたことで、……一年前に『カミシロ』の陰謀だと噂されていた事件。ファイリングしているそのデータを開いてみた。
「……これだっ!?」
開いたデータのその中には……、
「……『50年間、行方不明になってた少女。現代の神隠しっ、当時の姿のまま見つかるっ!?』。なんなのよ、この胡散臭いニュース?」
やけに胡散臭い内容の地方紙が、ネットの掲示板に投稿されているのをスクショしたものが、ファイルから出てきていた。
「50年前って……、どういうことっ!?」
MEMちゃんが驚く。
そりゃそうだよね、女の子なら誰でも気になるニュース……、しかも、長年の失踪していた行方不明者が、50年前の姿のままで当時の服装のまま見つかった。そんなニュースがあったのなら、マスコミが報道しないなんておかしい。それでも、放送していなかった龍司は……、
「一時期、『EDEN』で有名になってた奴だよ。『カミシロ』の『EDEN』の大規模アップデートのニュースで風化しちゃったたけど」
一年ぶりになる『EDEN』の大規模アップデート。
基本的には、バグのリカバリーやハッカーのウィルスに対するワクチンの挿入……その他もろもろのネットイベントぐらいの内容だったけど、問題はそこじゃない。
「…………ふーん」
かなちゃんは既に興味をなくしてるけど、ここからが本番だ。
「気になって調べたらこの事件は本当のことだったんだ」
「えっ、ホントにあったことなのっ!?」
MEMちゃんの横でフリルちゃんが頷く。
「……で、そのニュースが何の関係があるって言うのよ」
それが何か関係があるからーーーー、
「それ、私の大叔母さん」
そう、フリルちゃんの大叔母さんみたいな発見がーーーー、ヘ?
「「「えぇーーーーッ!?」」」
3人でフリルちゃんの唐突な発表に驚いてしまった。
「ミユキちゃんを見つけたのは、当時林間学校に来ていたのはアイドルになる前の『星野ルビー』と、現在カミシロで『末堂マナト』の秘書をやっている『寿みなみ』……そして、」
「「『
「「ーーーーッ!?」」
2人は驚いてるみたいだけど、
「……やっぱり」
当時の事件のことを思い返せば当然のことだった。
「やっぱり?」
「あかねちゃん、……やっぱりって、どゆこと?」
2人に聞かれ、私は当時のことを話しはじめた。
「末堂マナトはその林間学校から一ヶ月半、行方がわからなくなってる。知り合いの芸能関係者が、政治家や一部大企業、ボランティア活動家……果ては、あの『四宮』や『四条』が探してるってぼやいているって噂が飛び交ってた。半月経つ頃にはカミシロの上層部が隠しているだけで、死亡した……なんて噂が立ってたけど」
「……で、あの姿があるってことは」
MEMちゃんの言葉に頷く。
「死んでなかったってことだよね。四宮や四条は半月が経つ頃には娘の許嫁を解消していたから、企業間で大混乱が発生して、財閥関係者がてんやわんや……最終的には両家がカミシロに謝罪することで、元サヤに戻ったみたいだけど……」
「アレが許嫁?」
「絶対にありえないんですけど」
私達に対して、『コネ』をわざわざ強調するような……、本当に身勝手な少年のことを思い出して、MEMちゃんとかなちゃんが苦い顔をしている。私も同意したいところだけど……、
「ーーーーこっほん!」
「「「ーーーーッ!?」」」
背後で大きな咳払いをされてしまった。
「あまり俺達の『ジェネラル』の陰口を言うのはやめてもらえないか?」
別府さんが事務所のドアに入っていることに、私達はようやく気が付いた。
「……いたんですね」
「お茶の準備をしてたんですよ」
そう言いながら、彼は手元のクーラーボックスの中から、冷えたペットボトルを取り出した。
「俺達の『ジェネラル』は心が広いんで、あんたらの陰口はどうってことないけど……」
「黒猫みたいに『ジェネラル達』を狂信してる奴らが聞いたら……」
「「……聞いたら?」」
「こうだ」
別府さんが指で首を切る動作が目に入った。
「「ーーーーヒエッ!?」」
「殺されないように気をつけろよ」
そう言いながらも、別府さんの目には怒りがこもっている。私達の言動が聞かれていたみたい……あっ!?
「
「ーーーーあがっ!?」
別府さんの後ろに綺麗な黒髪の女性が立っていた。
「『こんなふう』になりたくなければ、ね?」
「「「「ーーーーッ!?」」」」
黒猫さんはアイアンクローで別府さんを持ち上げ、部屋の外まで歩いていく。
「く、くろねこッ!?」
「口が軽いバカへの懲罰だ。とりあえず気絶してろ」
「ーーーーっあ?」
ドゴンっ!!!
「「ーーーーひっ!?」」/「「…………」」
大きな音にかなちゃんとMEMちゃんが反応している……、うん。私も怖くて動けなかったし……驚いていないのは、フリルちゃんだけかな?
「……では、商談といきましょうか?」
黒猫さんは戻ってきつつ、別府さんの首根っこを掴んで笑っているのでした。
AM09:45
「ひさしぶりだな、ワームモン」
「マナトさん、ひさしぶりっ!」
「……元気にしてたか?」
「元気です!」
岸辺リエの部下を倒してから5分後……、タイトはそれらとの戦いの後始末をしていた。
「……タイトっち、終わったっすよ」
「ありがとう、シン」
タイトの横に学ランの獅子の獣人……、バンチョーレオモンのシンが立っている。全部終わったみたいだ。キングチェスモン達は捕縛され、タイト達が作ったと思われるプログラムの中に収容されていた。
(…………)
そんなタイトに壱護さんが近づいた。
「……タイト、あいつらはいったいなんなんだ? なんで、俺達のことを狙ってきたんだよ」
正直に言って、俺もそれは知りたい。
タイトがどんな動きをして、あんなに警戒していたはずの岸辺リエに動きが気取られたのか……話だけでも聞いておきたい。
「…………」
タイト少し思案した後、
「そのへんも話すので、まずは……」
パチンっと、タイトは指を鳴らした。
────ドンっ!
「────っ!?」
指を鳴らしたと同時に、大きな音が鳴る。
「座りましょうか?」
そこにあったのは、『テーブル』と『ソファー』であった。
「とりあえず、一息つけたようなんで、俺から質問があります」
全員がソファーに座って、タイトは話を切り出した。
「母さん達は『
────ぶっ!?
「「「────っ!?」」」
ルビーとブイモン、ワームモンが反応する
「……共通の?」
「秘密?」
「……ルビー、アクア……どういうこと?」
話を知らない3人、興味がないのか電脳世界にも関わらず、テーブルに置かれたコーヒーと茶菓子をつまんでいる
(……どうする?)
この状況で話さざる得ない……、だが、アイが俺達がアイの子供として転生したことを知ったとき、アイの心象にどれぐらいの負荷がかかる?
(ここは話すべきなのか?)
そんなことを考えながら、頭を巡らせていると……、
「おい、ルビー?」
「はっ、ハイッ!?」
タイトがルビーを睨みつけた。
(……なぜルビーを睨みつけた?)
ルビーに話すことを期待していた? ……いや、それ以上に、
そんな一抹の不安が過ぎる。
「ルビー、……どこまで話した?」
「えっと、デジモンの話でしょ、教授達と一緒に戦った話にママや私達の命を狙ってた敵の話、ケモノガミの世界をどうやって救ったのか、タイトからの報酬……あとは」
タイトの詰問にルビーが指折りをしながら答えていくが……、途中で止まった。
「…………」
「…………」
「「……ルビー?」」
タイトがルビーを見つめる目がキツくなる。
アイも壱護さんも、ミヤコさんも、猜疑心を抱いて、ルビーのことを不安そうに身始める。
(このままだと、アイに転生した子供ってことが────っ)
シンが俺を睨みつけた。
「────っ!?」
タイトの邪魔はさせないとでもいうように、シンは俺がやろうとしたことに対して、警戒をしている。
「『
タイトはルビーにそのことを聞いた。
「……言ってないです」
俺は邪魔をしようと考えるが、……でも、
「タイトやアクア」
「ルビーの秘密?」
そんなことをすれば、アイ達の疑心は晴れないだろう。
(……いったいどうしたらいいんだっ!?)
アイには、……アイだけにはバレたくなかった。でも、タイトはこの秘密をバラすつもりだ。
「「「いったいどういうことっ、説明して(しろ)っ!?」」」
アイ達は俺へと視線を向ける。
……嘘をつく?
嘘が得意なアイにはすぐにバレる。
誤魔化す?
壱護さんの疑心は晴れない。
逃げる?
逃げたその後の展開……、というより、ここはタイトが作り出した『EDEN』の電脳空間だ。タイトから逃げることなんて不可能。それ以上に、シンが逃げることを許さないだろう。
(……終わった)
頭を悩ませたが、どうしても解決策が思いつかず、正直に話すしかないと肩を落とす。
「……はぁ、アクア、なんで話さなかった?」
そんな俺をみて、『失望した』……とでも言いたげにタイトが呆れて聞いてきた。
(…………)
ここは正直に話すしかない。
「話さないほうがいいと思っていた」
「……アクア?」
俺達の保身もあった。
前世の俺との関係もあった。
俺がファンだったことも知られていて、それが自分の子供になってるという『気持ち悪い』生き物にもなりたく、『思われ』たくなかった。
……でも、でもそれ以上に、
「『
これが『俺』の本音だった。
「普通の親でいてほしかった?」
アイは首を傾げる。
(こんな言い方じゃ伝わらないのはわかってる……、でも)
これ以上話したくなかった。
「ねえ、それってどういう、────っ!?」
タイトがいつのまにか俺の目の前に立っていた。
「……馬鹿が」
────バギィッ!!!
顔に『衝撃』が走った。
「────タイトっ!?」
……あれ?
顔が痛い、鼻から冷たい何かが……、ああ、そうだ。これは『血』だ。
「────おい、それはやりすぎだっ!?」
タイトは俺の目の前に立って、
「アクア、大丈夫?」
「アクア、ちょっと顔を見せなさいッ!!!」
アイとミヤコさんが俺の側に駆け寄って、
「タイトさん、殴っちゃだめっ!!!」
「タイト、何やってるのっ!?」
壱護さんとルビー、ワームモンはタイトを止めている。
(……ああ、でもタイトは)
タイトの手は開いている。座っているからこそ、タイトの手の動きがよく見えていた。
「一発は、一発だ。あとは3人に殴られろ、このタコっ!!!」
俺に対してそう言われたことで、殴られたことで、
(……あれ?)
胸が軽くなったようなそんな気がした。
(……、今なら言える気がする)
胸が軽くなった今なら言える気がした。
「母さん、おじさん、ミヤコさん……大事な話がある」
鼻に詰まったティッシュが、どこかかっこつかない……、そんなことを考えながら、俺は再び立ち上がる。
「……大事な、話」
俺はアイに聞かれ、話をする覚悟を決めた。
「俺達の出生についてだ」
「……ははは、嘘だよな?」
「アクアが先生で、ルビーが死んだ先生の言ってた私のファンの患者?」
「……おかしいと思ったのよ」
俺が雨宮五郎、ルビーが天童寺さりな……その2人の前世の記憶を持つ、転生した子供だと言うこと聞いて、3人は驚いていた。
「「…………」」
俺とルビーはタイトによって正座で座らされている。
「夢、なのよね?」
「残念ながら嘘でも夢でもない。現実です」
ミヤコさんが現実逃避をしようとしたが、……タイトは現実だと否定した。
「「「────ッ!?」」」
3人がタイトのほうを向く。
「ただ、納得はしなくても、理解してほしいことがある」
「まず、『俺達』は『
「そして、こいつらは星野アイ。あんたに目をつけたこの世界の『ケモノガミ』によって、死んだ奴の記憶を植え付けられた『被害者』だ。そして、前世の記憶があるからといって、人格はその年齢に付随……、前世で作られたものとは『違う人間』だってことを理解してほしい」
タイトが話したのは、驚くことに俺達のフォローだった。
「違う人間?」
アイが首を傾げる。
「『あの2人は死んだ人間の記憶を持ってただけのただのガキ』だってことだよ。その2人は」
俺達は自分の認識を『雨宮五郎』、もしくは『天童寺さりな』だと思っている……、だけど、タイトはそれを否定した。
星野アイの子供である『星野アクア』と『星野ルビー』に前世の記憶があるだけで、雨宮五郎と天童寺さりなとは違う人間だ。タイトはそう言ったのだ……そして、
「その2人はって、……じゃあ、タイトはどうなの?」
タイトは『違う』のだと、はっきりと3人に伝えて印象を変えたのだ。
(簡単にやってくれる)
自分のことはどうでもよくて、他人の印象を自身に挿げ替えた。今のアイ達の疑念は────、
「…………」
「…………」
「…………」
「俺は……うん」
タイトは迷い、悩んで……それでも、
「
タイトは決して『嘘』はつかなかった。
「この世界を」
「救う為に」
「作られた人間?」
3人は首を傾げ、
「…………」
グルスガンマモンは静かに目を閉じていた。
「まあ、ここらの説明は後でルビーにでも聞いてほしい。その説明だけで、納得できる部分はあると思うし」
「……まあ」
「あんなことがあったわけ、だしねえ?」
タイトは一年前のことを暗に伝えながら、ルビーへと意識を────、
「
アイがタイトに近づいていた。
「「「────ッ!?」」」
俺も壱護さんも、ミヤコさんも近づけない。
「……なんで、って……それは」
「……それは?」
タイトはアイに聞かれている。
「世界を救う為の力を手に入れる必要があったから」
タイトの答えは変わらない。
「なんで戻ってこなかったの?」
「あの時の自分じゃできない手段がたくさんあったから……かな?」
タイト自身の『本音』に、アイは真剣に何かを考えている。
(……これは?)
どっちだ?
アイが聞いているのは、『タイト』のこと……、でも、アイが考えていることは、俺達にはわからない。
「…………」
「…………」
2人とも黙って見つめあっている。
さっきまでアイはタイトを抱きしめていたが、俺とルビーの話を聞いて、アイがどんな動きを見せるか俺には到底理解できなかった。
「…………」
アイが一歩、また一歩と近づいていく。
「────っ」
タイトはその行為にプレッシャーを感じたのか、左足を一歩だけ後ろへと下げてしまった。
「…………」
「…………」
……そして、
「────タイト」
「どれだけ心配したと思ってるのっ!!!」
アイはタイトの額を指で弾いた。
「…………?」
タイトは呆気に取られ……、頬を膨らませた『
「それは……、ごめん」
「みんなっ、みんな心配したんだよっ!!!」
自分が心配されていたということに……、
「「……タイト」」
その光景を見て、俺とルビーが声をかける。
前世の話をされたことへの『怒り』か、それともアイに対しての感情を暴露された『悲しみ』か……それとも、今の言動への『同情』かは、わからなかった……でも、
「お前らには謝らないから」
タイトは『怒り』だと判断したみたいだった。
「それは別にいい。俺達が話せば済んだことだからな……それより」
俺達にはやらなきゃいけないことがある。
「ルビー」/「アクア」
「「「────ッ!?」」」
俺達は3人の前に立ち上がった。
「ごめんない!!!」/「すみませんでしたっ!!!」
俺達がやらなきゃいけないのは、3人への謝罪だった。
「私達はママの……いえ、星野アイさんの娘として、貴女達を騙していましたっ!!!」
「俺達は産まれてからの14年間貴方達を騙していました」
俺達が費やしてきた14年間……、それは確かに嘘ではなかった。嘘ではなかったのだけど……、
「「申し訳ありませんでしたっ!!!」」
彼女達に謝らなければいけない、と
「そんなこといいよ、別に?」
思っていたのだけれど、
「えっ?」/「へ?」
アイは『どうでもいい』と言わんばかりに、こちらへとやってきて、
「ルビーもアクアも何言ってるの?」
俺とルビーに指を差して、
「騙してたも何も、タイトが言ってたじゃん」
「『
「────っ、ママっ!?」
……あっ、
「大丈夫、あなたは私の大切な娘だよ。ルビー」
「……っぁああ」
────、俺は、
「星野アイ、さん」
……俺は、雨宮、五郎……で、
「アクアもっ、ほらっ、来てっ!!!」
星野アクアで、
「
誰よりも貴女の息子だった。
「……かあ、さん」
「…………」
「…………」
アイが俺達から視線を離す。その先には、
「タイトっち」
「行く必要はない」
シンに手を引っ張られているタイトがそこにいた。
「タイト、ほらっ、来てっ!!!」
アイが手を広げる。
(ああ、この人にとって)
この人にとって、俺もルビーも『星野タイト』も自分の子供でしかないのだ。
「タイト」/「タイトっ!!!」
俺もルビーも手を広げる。
だって、そうだろう?
タイトだって、俺たちと同じ星野アイの子供なのだから、手を広げて同じなのだと、言わなくちゃ……あれ?
「…………」
タイトが来ない。
「タイトっち、早く行ってこいっす」
シンに押され、引っ張られ、掴まれてもタイトは微動だにしない。
「俺は、俺には『まだ』いけない」
「……まだ?」
タイトは、何を考えている?
まさか、この期に及んで、自分が星野アイの子供じゃないとでもいうつもりなの────
「
────か?
そんな疑念が頭に浮かび上がりそうになったとき、タイトの口からそんな理由がでていたのだった。
「……テト?」
「なんで、テト?」
「なして、先輩の名前が……?」
わからない……、わからない、が、
「……ぷっ、……そこは『テトがいないからこそ』できるんじゃないのかよ?」
グルスガンマモンが笑って、
「テトだけ仲間外れにはできないっ!」
タイトが怒っているのはわかってしまった。
「…………っ」
「────くっ」
「────ぷっ」
しまったのだが、
「「「あははははははは────っ!!!」」」
そんな理由だとは思えなかった。
「────たしかにっ!?」
「たしかに、コロモンもあの場にいたっ!!!」
ルビーも俺も、あの『ピンク玉』の姿を思い出して、……あの頃の俺達を思い出して笑ってしまった。
「そーだね、ボタちゃんも家族だもんね!」
アイも笑ってタイトの言葉に頷いて、
「……壱護さん達もそれでいいですか?」
タイトはそれが恥ずかしいのか、赤くなった顔で壱護さんに声をかけていた。
「俺はアイがいいなら別にいいよ……、ミヤコは?」
「私には何が何だか……」
壱護さんは納得してるようだが、ミヤコさんは違う……、まだ頭が混乱してるみたい……ルビー?
(当時の『アレ』!)
この場にいる子供3人に伝わるように、口パクで話された『アレ』。
(……『アレ』か)
(『アレ』だな)
ひさしぶりに揃った3人
「……イケメン」
「俳優と結婚」
「□□さんとデート」
ミヤコさんの黒歴史の暴露である。
「やめてっ、それは黒歴史なのっ!!!」
2人が呆気に取られる中、ミヤコさんが発狂した。
「……でも、あのとき」
「それ、それだけは言わないでっ!!!」
ルビーのその発言に、アイと壱護さんが察してしまった。
「ミヤコさん、何それっ!?」
「お前、そんなこと考えてたのかよっ!?」
ミヤコさんを笑っている。
「やめてぇえええ────っっ!!!」
「……と、これで家庭内の不和の原因は取り除けた、かと思います」
俺達家族の一騒動、……その話を終え、時間はAM10:35……、タイトはアイが他の質問をしようとしたことから、話を遮り、元の話に戻し始めた。
「……で、さっきの話はどういう意味だよ?」
「……さっきの話?」
「ルビーとアクアの前世の記憶についてだっ、なんで今更話させたっ!!!」
だが、納得がいかないのが人の心情である。
壱護さんは納得ができず、タイトにその話を蒸し返してしまった。
「さっきも話したように、『家庭内の不和』を取り除く為、だよ」
ただ、タイトも壱護さんに聞かれたことに関しては折り込み済みなのか、質問に答えている……というより、
「家庭内の不和?」
俺達家族の事情は家庭内の不和だが……、それがなんの関係になるんだ?
「そこにつけいられると、『弱み』になるかもしれないから」
『弱い』?
『つけいられる』?
不穏な言葉を耳にする。
「弱みって、……どういうことだよ?」
代表して壱護さんがタイトの意図に聞いてみるが……、
「
タイトの言葉は衝撃的だった。
「世界がっ!?」
「滅ぶっ!?」
俺達の家庭内不和が世界が滅ぶ要因になる? そんな壮大な話────、
「そんな妄想みたいな話────」
……タイトはルビーに指を差した。
(あったな)
(あったわ)
(あった)
(……そういえば)
ルビーを見て納得してしまった。
「でも、私達は一年前に『主』達の陰謀を止めたはずだよね? それなのにまだ世界が滅ぶ原因があるっていうの!?」
ルビーは自分が世界を救ったという自覚があった。だからこそ、タイトへと世界滅亡の危機に対して疑問があって……、俺にはまだ実感が湧かない。
「あのとき説明したと思うんだけどな……」
(……あれ、もしかして)
(もしかして、こいつ)
((忘れてる?))
グルスガンマモンとタイトがアイコンタクトをしている……、だけど、どんなことを考えているかは……ルビーへの批難するような視線でなんとなくわかってしまった。
「ルビー、忘れてたな」
「……あれ? そんなこと言ってたっけ?」
この場にいる全員がルビーへと呆れたため息をついた。
「アレは同じ時期に来られると厄介だから、先に倒したんだって言ったはずだけど……、ついでに、ルビーに先頭の経験を積ませる為に連れてきたってだけだ。本来だったら、テトだけであんな事件終わらせられる」
「そんなことも言ってたような……ってか、あれ、そんな軽い事件じゃないんだけど」
「テトだけで解決できるなら、テトを連れてきてよっ!!!」
ルビーはぷんぷんと怒りながら、タイトの肩を叩き始めた。
「……これから話すことのほうがかなり厄介だから、前提……として聞いてほしい」
ルビーに叩かれて、タイトの体が揺れている。言葉が震えて聞こえてくるせいで、内容が聞き取りづらい。
(ルビーっ!)
(……わかってる)
怒ってはいるものの、ルビーが肩を叩くのをやめたことを確認し、タイトはその言葉を口にしていた。
「まず、『この世界は滅びの危機に瀕している』」
「……まじか」
先程タイトが口にしてように、この世界は危機に瀕してるのだろう。それが『どうして』かは知らないんだけれど。
「理由は、……グルスガンマモン、母さん達って、『デジタルワールド』って知ってる?」
「ちゃんと教えたはずだ」
「デジモン達が生まれた世界なんだよね?」
「そう、デジモンが生まれた世界だ」
軽くタイトとアイの確認が入る。壱護さんもミヤコさんも、俺もそれには納得……、おい、ルビーは大丈夫なのだろうか? 頭から煙が出ているように見える。
「この世界に隣接している、その『デジタルワールド』がとある『侵略者』によって、滅びに向かってる」
ルビーが言っていた『ケモノガミ』の世界とは違う……みたいだな。そうであれば、わざわざ『デジタルワールド』とは言わないはずだ。……じゃあ、聞くべきなのは、
「とある侵略者? ……具体的には」
具体的に知りたい。
『ジュード』を軽く壊滅させたあのデジモン達が暮らすデジタルワールドが、それを滅ぼしたという『侵略者』について、対策を打たないといけないからだ。
「それは話すつもりはない。こっちとしても順序がある」
タイトは順序と言った。
「順序、だと?」
「その侵略者は、人間によってデジタルワールドへと入ってきてしまったが故に、『データを捕食する存在』へと食性が変わってしまったんだ」
なんだか生物学のような話に変わってきたのだが……、納得もできた。
「食性が変わった? ……まさかっ!?」
壱護さんも気が付いたようで、タイトの言葉に大きく反応し、タイトはその言葉に頷いて話し出した。
「デジモンが生まれた世界は『データでできた世界』。その世界にデータを捕食するような生き物が現れたら……」
……どうなる、と聞かれた気がした。
「「「『世界が滅ぶ』」」」
そして、それはこの場の全員でその言葉を口にした。
「どうやって……は、みんなはもうわかると思う」
『どうやって』……そこに意味する答えは、
「わかるって……まさかっ!?」/「『EDEN』かっ!?」
壱護さんと俺が同時に気づいてしまった。
「えっ、なんでそこで『EDEN』が出てくるのっ!?」
アイにそう聞かれ、
「アーちゃん、話についていけない」
ワームマンに袖を引っ張られるが……、
「ワームモンには後で教えてやるよ」
わからないやつには後で教えるつもりだ。まだ、知らなくちゃいけないことがたくさんある。
「『EDEN』と『デジタルワールド』がどんな因果か『事故』で繋がってしまった」
タイトはその言葉を口にしている。
「そんなときに、『デジタルワールド』に侵略者が来てしまった」
タイトに言われ、突如現れたホワイトボードには、『
「侵略者はどんどんデータを食い荒らしていき……、最終的には」
侵略者の絵がドンドン増えていきホワイトボードに描かれた、『デジタルワールド』を黒く染め上げていく……そして、
────バンッ!!!
ホワイトボードが裏返って、
「『デジタルワールド』を滅ぼしちゃいました」
漆黒く染まったデジタルワールドの絵がそこにあった。
「……タイトはどうにかできなかったの?」
ルビーが聞く。
「それができたのは『EDEN』ができる前の話だよ。『EDEN』のプロジェクトのデータや出資者の会社のデータ軒並み
「────っ、まじかよ」
思い当たる節があるのか壱護さんは頭を悩ませているが、
「世界経済はおじゃんになってたかもしれないけどね?」
「……まじか」
タイトのとんでもないフォローに、さらに頭を悩ませ始めた。
「そんなわけで、俺は……いや、『俺達3人』はそれぞれの目的のためにとあることをしようとしています」
『この状況を変える為』……じゃないんだ。……ってら
「……3人って、誰なんだよ」
タイトと他2人は誰なんだ?
「末堂マナト、末堂アケミ」
タイトとその保護者……うん、わかっ────、
「
緑髪の女を思い出した。
「「岸辺リエッ!?」」
タイトが警戒してる相手……、さらには、『ジュード』を壊滅させた張本人。
(……でも、なんで?)
あいつは世界を救いたいなんて、経験上あの手の女には、殊勝な願いはない気がする。
「それぞれの目的のために、ね」
目的、……タイトのは目的を聞くべきか?
それとも、胡散臭そうなあの男の目的を……いや、違う。今聞くべきなのは、
「岸辺の目的はなんだ?」
その質問にタイトは……、
「末堂アケミ……、『現在』の俺の保護者は『人類の未来』の為」
「岸辺リエの目的は、『
2人の目的を話し……、って、
「
「滅ぼす?」
「そんなのどうやってやるんだよッ!?」
思った以上に壮大な答えが返ってきた!?
(末堂の目的と岸辺の目的は相反してる……だが、タイトの目的も一致していて……いったい何を)
どうする、次は何を────、
「それは『とあること』に関係してくる」
『とあること』……ルビーから話は聞いていたが、タイトの口が軽いのか、わざとなのかは知らないが、思った以上に心臓に悪い秘密ばかり明かしてくる。
(この場合は────)
「その『とあること』って?」
アイが質問してしまった!?
(もっと慎重に、もっと考えてから質問をしないといけないのにっ!?)
アイの質問を聞いて、タイトの顔が『悪い笑み』を浮かべる。
「俺達の計画」
タイトは意味深な笑い方をして……、
「『
そう言った。
「その『パラダイスロスト計画』ってのはなんなんだよ?」
壱護さんが、その『いかにも』不穏そうな名前の計画について聞いてしまった。
(いや、ここはどうするべきだ?)
聞く一択しかないのだが、正直に言って聞きたくない。聞きたくないのだ。
「この世界を全て『EDEN』みたいな電脳世界に書き換えて、隣接しているデジタルワールドとの世界の壁をぶち壊し、デジタルワールドと
「この世界の『EDEN』みたいにする、だと?」
聞いてしまったっ!?
「ちなみに実証実験は完了済み……、あとは膨大なエネルギーと時間がかかるってところかな?」
しかも、実験済みなのかよっ!!!
「この世界のデータ化するってことは……、────まさかっ!?」
……あっ、
「
ミヤコさんが驚きの声をあげる……、はぁ。
「ミヤコさん……、正解!」
タイトは笑顔で指を差した……うん、もう────、
「そんなの駄目だよっ!!!」
「やめて、タイトっ、────その侵略者がこの世界にやってきたら、私達の世界は……っ、みんなが死んじゃうっ!?」
「待て、アイ……なあ、タイト。お前には何か考えがあるんだろ。教えてくれよ? なんでそんなことをしようとしたのかを」
みんながその答えに辿り着いて、感情が決壊する。
(ただ、俺が思うに)
『パラダイスロスト計画』は、タイトも賛成していることから、
「
必要なことなのだとわかってしまっていた。
「────は?」
彼の考えは理解できない。
「お前、今……いや、なんで『それ』が救うことに繋がるんだ?」
できないのだが……、この先は聞く必要がある。
「……たとえばの話なんだけどさ」
「もし、『パラダイスロスト計画』を未然に防いだとしよう」
「それによって、デジモン達の世界はその侵略者に確実に滅ぼされることが決定する」
「『EDEN』のデジタルワールドと繋がってしまった部分もなんとか修繕して世界はもう2度とつながらない……、そして、俺達は平和になったバンザイっ……そんなハッピーエンドが来たとしよう」
「
彼の言葉を聞いて……、ワームモンを見る。
「……ん?」
こいつが産まれた世界。それが、俺達の行動でなくなってしまう……、それの意味することは、
「……ハッピーエンドではないだろうが、バッドエンドではないんじゃねえのか?」
「私達の世界は守られるし、侵略者も来ないし、ね」
「平和になるんじゃないの?」
壱護さんもアイもミヤコさんも……誰一人として、気づいていない。
「────本当に、そう思う?」
タイトの目が鋭くなっていることに、
「……違うのか?」
壱護さんはタイトに聞いて、
「じゃあ、シン……お前はどうなると思う? この世界に隣接しているデジタルワールドが食い尽くされたら、……『この世界はどうなる』?」
タイトはその横のシンに質問を返した。
(……俺にはわからないが)
……この話の先を予想するならば、
「
(侵略者はこっちにやってくる……と思う)
シンと俺の意見が一致した。
「「「「────えっ!?」」」」
4人が驚いているが、理屈を通せばこうなるはずだ。
「『EDEN』と『デジタルワールド』が繋がってるから、続々とやって来るんだろ?」
俺はシンにフォローするように考えを述べる。
「……確かに、じゃねえっ!?」
「デジタルワールドに繋げたら、デジモン達でも倒せなかった敵がやってくるんでしょっ!? どうすればいいのっ!!!」
斎藤夫妻は驚いているが、俺には疑問が残っている。
「……質問がある」
「アクア、何かな?」
「侵略者は『EDEN』から出られないんだろ? 『パラダイスロスト計画』が実行されなければ、最悪データが全部喰われるだけで、人類は生き残るんじゃないのか?」
俺の疑念はそこにある。
タイトが『わざわざ』『パラダイスロスト計画』をしなければならないのかわからないのだ。
(『パラダイスロスト計画』をしなければ問題はない……と思うのだが、……きっと)
何か見落としがあるのだろう。
「そう、『そこ』なんだよ大事なのは」
タイトはホワイトボードを思いっきり叩く。
漆黒に染まったデジタルワールドから、『EDEN』へと侵攻する侵略者。
『EDEN』を食い尽くした侵略者。
『EDEN』から『
「侵略者は『今』は『
でも、『
「だけど、『
────あ、
「『
侵略者が無抵抗の人間達を『食い尽くして』しまった。
「じゃあ、俺達はどうすればいいっ!?」
デジモン達がやられた相手にどう戦えばいい?
俺達『ジュード』を壊滅させたあの『化け物』が負けてしまった相手にどう戦えばいい?
「そんなのは決まってるだろ?」
タイトは自信満々にホワイトボードを叩いた……そこには、
「
デジモンと人間が手を取り合って戦う……いや、違う。
ルビーとブイモン、
「末堂マナト……、つまり、俺の目的は『デジモンを
「「「────ッ!?」」」
タイトはもう一度、自分の目的を発した。
「それで、世界は守れるの?」
アイが聞く。
「人間がデジモンと共生できれば、な?」
「でも、共生ってどうやって?」
「ルビーやアイがやってるだろ?」
「どうすんだよタイト、人間と釣るみたいって奴は奇特な奴しかいねぇぞっ!」
「ママが奇特だって言いたいのっ!?」
「……いや、そんなわけじゃ」
みんながタイトへと集まる。
ただ、俺は頭の片隅に『何か』が引っかかったのを感じていた。
「アーちゃん?」
ワームモンが心配そうにこっちを見るが、それどころではない
(俺は、……俺は何を忘れている?)
タイトの目的? /違う。
タイトが話した家族と前世/違う!
タイトがやってきた理由/……ん?
(1つだけ、本当に1つだけ、思い出したことがある)
「……壱護、謝りなさい」
「ママに謝って!」
「……でもよぉ」
「……あはは、私、別にいいんだけどなぁ」
みんなは気づいていなかったが、……まさか!?
タイトは俺の気づいた様子を見て、『悪い笑み』を浮かべた。
「────っ!?」
こいつっ、本当にっ!?
「
「おい、まさかっ!?」
「……どうやって?」
ルビーが聞いてしまった。
「アクアとワームモン、ルビーとブイモン……他数名とそのパートナーデジモンには────」
「日曜朝9時から始まる……、通称『ニチアサ』でデジモンとのテレビ番組を行なってもらうっ!!!」
ホワイトボードには『プロジェクト/『僕らの』『私達の』『『EDEN探索記』』と書かれていた。
PM6:00
日は沈み始め、ポップなデザインに『臨時休業』と書かれた札が、喫茶店の部屋の内部からの光に照らされている。
喫茶店の中にいるのは、少年と少女……それと、喫茶店のマスターだけ。
そんな喫茶店で、少年が冷蔵庫から取り出したワンホールのケーキが、ケーキ箱から少女の目の前に置かれたのだった。
「何、このケーキっ!?」
私は目の前の綺麗な層になってるケーキに目を光らせる。ひとくち食べれば目が見開き、ふたくち食べれば頬が落ちて、いつのまにか、フォークが次へ次へと食べ進めていた。
「ほんのり酸味のあるゼリーが、暴力的に甘いマスカットの後味をスッキリさせてるっ!!!」
フォークで削り取られた目の前のケーキ……その四つの層の一番上、とてつもなく甘いマスカットが、酸味のあるゼリー……、これは、ライム果汁かな? 後味をスッキリさせていた。
「しかも、スポンジの上にある切られている三層目のマスカットと二層目のチーズクリームは、さっき食べた2つとは味が全然違う……マスカルポーネチーズのクリームととっても甘いマスカットが、相性抜群っ!!! こんなに甘いケーキを食べたの、私はじめてっ!!!」
上から二層目にあるチーズクリームは、ほんのり酸味のあった一層目とは違って、チーズ特有の酸味がドカンとやってきた。
次に三層目のマスカットと生クリームの層では、一層目とは比べ物にならないぐらいの甘さがあるマスカットが二層目のチーズクリームに負けない……ううん、それ以上のインパクトで私の口の中に果汁の爆発を引き起こしている。そして、その暴力的な甘さのマスカットを生クリームと四層目のスポンジが優しく包み込んでいて……、
ーーーーハッ!?
いつのまにか、目の前にはケーキがあったはずの空の皿と、生クリームと果汁に濡れたフォークが紅茶の入ったカップの横に置かれていた。
「……それで、感想は?」
食べ終わった私の顔をニコニコと笑って見ている彼は、私にそんなことを聞いてきた。そんな彼の様子に意地悪だな……と思いつつ、少しだけ頬を染めて、
「具体的に言って、とってもおいしいっ!!!」
目の前のとってもおいしかったケーキに対してのありきたりな感想を述べるのだった。
「それはよかった」
そう言われたことがとてもうれしかったのだろうか?
彼は私の顔を見て『にっこり』と笑って、テーブルの上に置いてあるカップに紅茶を並々と……ん?
『彼』の目の前には、『ひとくちも食べられていないケーキ』がそこに置いてあった。
「……マナトはケーキ、食べないの?」
とてもおいしいケーキだった。
彼が試作品だと笑って言ったケーキはとてもおいしくて、とっても甘いケーキなのにも関わらず、彼はひとくちも食べていない。それはなんだか変な感じだ。
私が食べている間、あのケーキをひとくちも食べなかったのが、同じものを食べなかったのが『ちょっとだけ』悲しかった。
「ああ、食べるよ……ただ」
……ただ?
彼はケーキをフォークを……刺さなかった。
「ケーキ、あんまり好きじゃないんだよね」
「……へ?」
彼はケーキからフォークを離して、顔の前でぷらぷらとフォークの先を振ってみせる。
「昔……本当に昔の話なんだけどさ。小さい頃に、毎日ケーキを食べてた時期があってさ」
「……うん」
……どれくらい前の頃だろう?
毎日ケーキを食べれるなんて幸せだと思うけど……、なんで、そんな時期があったのかな?
「ケーキ自体はおいしいんだけど、少量で大量にカロリーを摂取できる手段としか見てなかったから……、あんまり好きじゃないんだよね」
もったいないって思った……、だけど、
「……そっか」
その言葉で、『私』の思いは飲み込んだほうがいいって、そう思えた。悲しそうに、とても『哀しそうに』彼は笑った。
(どれくらい前のことなのかな?)
実験体だった頃?
末堂に入ってから?
お母さんはなんて言ってたんだっけ?
『『カミシロ』の子と付き合うんだったら、『身の回りのこと』、『話しちゃいけないこと』、『相手のこと』……しっかり考えないといけないよ』
そう言ってた気がする。
(……、ここは)
ここは踏み込むべきなのか?
それとも止まるべきなのか?
私は、私は何をーーーー、
「まっ、『君』と食べるぶんには、おいしいんだけどさ」
彼はケーキにフォークを刺して、マスカットを食べた。
「ーーーーっ、なにそれっ!?」
ドキリ、と胸が高鳴った。
あまりにも臭いセリフに、さっき考えていた不安が解消されて、頭の中でどこかに行ってしまったような、そんな感じがした。
「大切な『誰か』と時間を共有しながら食べる食事ほどおいしいものはないよ……、これ、実体験だから」
そんなセリフを言って、私の頬に彼は人差し指を当てる。
「ーーーーっ、ーーーーッ!?」
彼の人差し指についたチーズクリーム……、私の頬についていたそれを、彼は舐めとった。その動作がどこか艶かしくて、顔がさらに熱くなった。
「あれ? 顔が赤いけど、大丈夫?」
首を傾け、心配そうに聞く彼。
間違いなく、無意識にそんなことをやっている……、この『
「うっ、うん……大丈夫だよっ!?」
赤くなった頬を隠すように私は何か考える。
今の自分は、とても恥ずかしくて、相手に知られたくない……、そんな気持ちで、私は話題を変えるためにさっきの話のことを思い出した。
「そんなことより、さっ! ……得意なことって何かないの?」
「得意なこと?」
「さっきは苦手なことを聞いたでしょ? だったら、得意なことは何かないのかなって、ふと思いついたんだ」
正直に言って、話題なんてどうでもよかった。
今赤くなっている頬が冷めるまで、別の話題でなんとかしようって思っているだけ……、それだけ。
「……得意なこと、か」
でも、彼は真剣にこの話題について考えてくれている。
「君も知ってるとおり、『ケーキ作り』と『運動』は得意だ」
「うん、知ってる……このケーキも君が作ったんだよね?」
この『試作品』も彼が作ったもの……、とってもおいしいケーキだった。
運動も……、うん、はじめて会った時の動きを見れば、得意だってことも納得できる。……『アレ』はすごかった。
本当にすごかった。
「俺の手作りだよ。運動だって、かなり得意だと言っても過言じゃない」
「それもそうだよね。……私も驚いたから」
男の子でケーキが上手な人なんて私の身近にはいなかった。だから、彼が初めてケーキを持ってきてくれた時、すごく驚いたのを今でも覚えている。
そのケーキがとてもおいしくて、……しかもそれが、喫茶店の『試作品』だって知ったことのほうが、とっても驚いたのが、あのとき一番びっくりしたことだ。
「自分でも驚いたのは、『歌』と『ダンス』と『演技』かな?」
彼の言葉から、女の子っぽい特技が聞こえてきた。
「歌とダンスと演技? ……まるで、役者みたい」
アイドルや役者……、彼の容姿も相まって芸能人みたいな特技だと思った。
「歌は理由もなく上手くなるし、武道は苦手なのに『演舞』はなんでも上手くいくし、あまり好きじゃない演技に限っていえば、担当の教官から1時間で『教えることはなくなった』って笑われるぐらいにはかなり得意だ」
「……へえ、そうなんだ」
『演舞』……は、たしか武道の踊り……、みたいな感じだっけ? カラオケとか連れてったら、ものすっごくうまいのかな?
「使い道はほとんどなかったんだけど……さ」
使い道……うーん?
「じゃあ、『役者』とかやってみたら?」
歌も踊りも演技も得意なら、きっと役者になった時に、すごく有名になると思う!
(お母さんに言ったら、きっと手伝ってくれるし、……でも、『カミシロ』が手伝うから必要ないのかな?)
うーん、と頭を悩ませていると、
「……役者、か」
彼は苦い顔で頭を悩ませていた。
(……あっ!?)
「何か嫌なことでも思い出した?」
『カミシロ』の幹部の息子である彼にとって、芸能界とは身近な存在だ。きっと嫌な相手だってたくさん出会ってきたはず……、そこまで頭がまわなかったことに少しだけ後悔する。
「俺は演劇は好きじゃないかな……、『嘘』は好きじゃないし」
彼が言った言葉は、私の考えたことが早とちりであることを証明してくれた……けど、
「……どうして?」
『演技』がどうして嫌いなのかが、わからなかっーーーー、
「
あっけらかんと、彼は笑ってそう言った。
「……っっ、なにそれ」
彼の口から出た、あまりにもクサイセリフに思わず笑ってしまった。
「たとえ嘘でも、俺は『愛してる』……だなんて、もう2度と見ず知らずの他人に言いたくないんだよ」
ムッとした表情の彼、どことなく可愛らしい容貌に……さっきの言葉が似合わなさすぎて、もう一度頬が緩んでしまった。
「知ってる人だったら?」
「2人だけで、……ムードがあったら言うかもしれないね」
ーーーーむにっ!
「今みたいにさ」
私の頬に指を当て、ニヤリと『してやったり』……とでも言いたげに、笑う彼。
「……ふーんだ」
確かに、『してやられた』かもしれないけど、……でも、私は気にしてないし、……うん、気にしてないから、どーでもいいしね。
「…………」
「…………」
それから無言の時間が続いた。
私は、耐えきれず……ううん、言わなくちゃいけないことを、バッグから取り出さなきゃいけない『モノ』を取り出した。
「……ねえ、」
「なにかな?」
私は彼に聞く。
「もう少ししたら、バレー部の都大会があるんだけどさ」
「うん」
私の中学最後の部活……、この間の大会で都大会への出場が決まった。
「観にきてくれないかな?」
私は彼に見に来てほしかった。
「いつある?」
彼はデジヴァイスから予定長を開いた。
「都大会はこの日で……、」
「……この日は無理だね。その次も、その次も駄目だ」
都大会の日程、予選、準決勝、決勝……その三日間の日程に、彼は首を振った。
「…………そっか」
忙しいのはわかってる。
でも、私の為に今日この日を空けられるというのなら、できれば……都大会の日に私の活躍を見てほしかっーーーー、
「
「ーーーーッ!?」
彼は『最後の日程』を指差した。
「……そこまで勝ち進められるか?」
彼が『できるか?』……と言いたげに、質問してくる。そんなの、答えは決まってるというのに。
「ーーーー、去年も優勝したからっ、今年もがんばるっ!!!」
去年の先輩はもう卒業してしまったけど、私達は『2度』全国に行ったチームだ。一昨年は全国にしかいけなかったけど、去年、同じチームで優勝できた子達が、部の仲間にたくさんいる。
全国大会でスタメンで出られるかどうかわかんないけど、都大会を勝てば全国に行ける。
彼に会えるっ!!!
「わかった。時間を空けておくよ……、その日は……」
私は全国に行くっ!!!