産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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『おい、警備員っ! 何してんだっ!!!』

『申し訳ありませんっ! 現在捜索中なのですが……』

『早く探して来いっ……、あの、小僧……』

ざわめく会場。
それもそうだ……、今回の主賓である『企画(プロジェクト)WIFD』最初の企画担当者の『末堂愛人』が姿を消したからである。
あの後、『カミシロ』は事態の急変をすぐさま発表、『カミシロ』所属の主賓の騒動が明るみになり、その場にいる警備員が総動員され、捜索にまわっている。もちろん『四宮』・『四条』のボディガードも捜索に参加。パーティーは一時中止となり、会場の来賓達も混乱をしている。


「……で、あいつはこの会場から『なんらか』の方法で出てった訳だけど、……あんたはどーする、かぐや?」

「かぐや様、どうしますか?」

眞妃さんと早坂に聞かれる。

「……わかってる」

いや、そんなことは決まっている。
『カミシロ』の、末堂アケミの、……私の許嫁を探さなきゃいけない。

これ以上、この場を混乱させない為にも、

これ以上、好き勝手する彼に忠告する為にも、

これ以上、『四宮』の失態を増やさない為にも、


「探しましょう、彼の行き先を」


私達が絶対に見つけなきゃいけない。



第六話 撮影本番 挑めっ! 最初の戦い

 

 開始の宣言とともに、俺はサイトの中のホワイトボードを開く。

 

(……えっ!?)

 

 そこにあるのは先程とは違い、一枚の依頼が張り出されているだけだった。

 

(あんなに大量に張り出されていたのに、依頼は一枚しかない!? ……いったい、どういうことなんだっ!?)

 

 

「あっ、最初はチュートリアルだけなので、同じ依頼を受けてくだされ」

 

 

 

「「────そう言うことは早く言えっ!!!」」

 

 俺と有馬が同時にムーチョモン博士へとツッコミを入れる。

 

(────ッ、くっそっ!!!)

 

 出鼻がくじかれた。

 撮影は始まっている。早く依頼をこなして、確実にデジモンを……、

 

 

『デジモンがどーやったら強くなるって?』

 

『そんなの決まってるよ!』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

『それができたら、デジモンは進化するんだよ!』

 

 

 ワームモンを早く進化させないと! 

 

 

 [依頼:『野良デジモンを倒せ』

『クーロンLevel.1』にて、発生した幼年期I〜成長期のデジモンが大量発生している。今は弱いデジモン達だが、強くなるのも時間の問題……、強いデジモンになる前に倒してしまえっ!!! 

 

 ・幼年期I〜成長期のデジモン×10

 

 ・報酬

 達成ポイント 2ポイント

 

 ・倒したデジモンの数・レベルに応じて報酬増加]

 

 

 張り出された依頼の内容を確認する。

 

(ポイントというのはこれか)

 

 

 ・報酬

 達成ポイント 2ポイント

 

 

 そう簡素に書かれたその内容を見て考える。

 

(この『達成ポイント』を集めることが目的で、ポイントの量が多い方が勝利する……、ただ、デジモンを強化するアイテムを購入する時にも『達成ポイント』を消費する……と、いうことは)

 

「アクアくんどうする?」

 

 背後で依頼を見ていたあかねに声をかけられる。

 

「まずはポイントを集める。貯めるか、強化するかは後で考えた方がいい」

 

(貯めるにしても、強化するにしても、どのみち依頼は達成しなければいけない。だったら、チームで依頼を効率良く解決していけばいい)

 

 そんなことを考えながら、ふと、隣のチームの動きが気になった。

 

(ルビーの方は?)

 

 ルビーが今、何をしてるのかと横を見ると……、

 

 

「ルビーッ、何やってのよっ! 早く行くわよっ!!!」

 

「カナの言うとおりだっ! 早く行こうぜっ!!!」

 

「ブイモン、見つかった?」

 

「まだだ……、くっそ、デジメンタルなんてどーでもいいから、早くっ、早くアレをっ!?」

 

 

 有馬とコロナモンに引っ張られてるにも関わらず、D-3に接続したデジヴァイスをじっと……いや、買い物のメニューで何かを探している。撮影のことなど関係ないと言わんばかりに、何かを必死の形相で調べ始めていた。

 

(……あの様子ならっ!)

 

 ルビー達よりも先にスタートダッシュが決められる。

 

 所詮、これは撮影だ。

 デジモンとの戦いやデジモンを強化するのも大切だが、視聴者の反応も気にしないといけない。

 

 変なことを意識しすぎて視聴者の反感をくらい、自身のモチベーションの低下につながるような行動は避けた方がいい。

 

「あかね、行こう」

 

「うん!」

 

 俺はその隣にいるチームメイトの少女にも声をかける。

 

「不知火もそれでいいか?」

 

「いいよ」

 

 

(よしっ、これで依頼を進められる!)

 

 

 俺達は『EDEN』の外れ『クーロン』への道を開いた。

 

 

「どうしたの、ルビーっ!? アクたんもフリルちゃんも動き出しちゃったよっ!?」

 

「ブイモン、どう?」

 

「まだ、まだ見つかってないっ!」

 

「ちょっと、MEMっ!!!」

 

「ツチダルモンッ!!!」

 

「MEMちょ、ちょっとなにすんのっ!?」

 

「ツチダルモンも離せよっ!?」

 

「早く『アンダークーロン』に行くわよっ!」

 

「はー、なー、しー、てーっ! まだ、まだ確認したいことがっ!!!」

 

「ミラクル肉、ミラクル肉ぅぅううううっっ!?」

 

 

 背後で叫び声のような何かが聞こえたが、それを俺たち3人は無視して進んでいった。

 

 

 

「ここが『クーロンLevel.1』」

 

 不知火は巨大なクマのぬいぐるみを模した遊具に目を輝かせている。

 

「正確にはハッカー達が集う『クーロン』の入り口、『ガラクタ公園』だけどね」

 

 あかねが苦笑しながら笑っている。

 

「…………」

 

 

『ここが、『クーロン』!?』

 

『正確に言えば『クーロン』の『ガラクタ公園』……アンダーな世界への出入り口っつう訳だな』

 

『ここから先はカタギの世界じゃなくなる』

 

『龍司みたいなスジモンの世界つぅー訳だな』

 

『俺はヤクザじゃねえっ!!!』

 

 

 俺も最初に来た時には驚いて、アラタや千歳、龍司に笑われたことを思い出した。

 

(ここは何も変わらないな)

 

 不知火の様子を見て、妙な懐かしさを思い出し、つい笑みが溢れた。

 

「どうしたの?」

 

 あかねが俺の変化に気がついたのかこちらへと近づいてくる。

 

「なんでもない。早く行こう」

 

 俺は見られたことが照れ臭くて、『クーロン』の入り口へと入っていった。

 

 

 [クーロンLevel.1]

 

 

 

「……ねえ、アクアくん?」

 

「なんだ、あかね?」

 

「もしかして、私達……」

 

 

 モキュ。

 

 モキュ、モキュ。

 

 モキュ、モキュ、モキュ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ!?」

 

 

 モキュッ! 

 

 跳ね回る一頭身の紫色のぬいぐるみのような小さなデジモン。それが至る所で跳ね回っている。

 

 

 [『パグモン*1』ですな]

 

 

 背後からいきなりそんな声が聞こえてきた。

 

「────ッ!?」

 

 急いで背後を振り返ると、あかねや不知火も振り返っていて……、でもそこには誰もいない。だが、確かにさっきの声は……、

 

「ムーチョモン博士かっ!?」

 

 大声で背後へと声をかける……、すると、

 

 

 [サンダーバードモンを通じて、連絡させていただいてるのであります……、ありますが、]×サンダーバードモン○サウンドバードモン

 

 

 バサバサと羽を鳴らしながら.黒い1つ目のデジモンが飛んでいるのが飛んでいるのが見える。

 

(あそこかっ!?)

 

 そんなことを思いながら、俺は撮影中であることを思い出した。

 

 

 [()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 モキュキュッ!!! 

 

 紫色のぬいぐるみデジモン……、パグモンの1匹が大きな鳴き声を出した途端、

 

「……えっ?」

 

 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! モキュ! モキュ! モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 

 

 [()()()()()()()()()()()! ]

 

 

「なに、あの量?」

 

『EDEN』の外れ、『クーロン』特有の青色のキューブから、たくさんのパグモンが飛び出してきた。

 

「物陰からたくさんのパグモンが……」

 

「あかね、どうしようっ!?」

 

 あかねは動けないが、ルナモンが無理矢理引っ張ってこちらへと連れてくる。

 

「あの量はヤベェッ!? フリル、逃げるぞっ!!!」

 

「ガブモンッ!?」

 

 ガブモンが咄嗟の判断で後ろを向こうと……、いやっ!? 

 

 

「……っ、いや、無理だっ!!!」

 

 

 俺は大声でそれを静止する。

 

「────なんでだよっ!?」

 

「後ろをよく見てみろっ!!!」

 

「…………あれは」

 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 

 前にいる数より少ないものの、たくさんのパグモンが背後の道で跳ね回っている。

 

「……戦うしか、ないか。ワームモン!」

 

「わかってるよ、アーちゃんっ!」

 

 俺はD-3を取り出し、アーマー進化の準備をする。 

 

 

「────だめだよっ!!!」

 

 

 ただ、この場でたった1人納得できていない人間がいた。

 

「あかねっ!?」

 

 俺は咄嗟に納得できていない人物……、俺の彼女だある黒川あかねの方を向く。

 

「あれって幼年期IIのデジモンなんだよね?」

 

 [そうだありますな]

 

 ムーチョモン博士はその答えに肯定する。

 

 

「じゃあ、あれは幼年期の……、ううんっ、デジモンの子供なんでしょっ!? 絶対に戦っちゃダメっ!!!」

 

 

「……こどもッ!?」

 

 あかねの言葉に思考が止まる。

 

(子供……、確かに未成熟なデジモンは子供のデジモンといっても過言じゃない。だが、依頼には『幼年期〜成長期のデジモンを10体倒せ』と書いてある)

 

 モキュ? 

 

 かわいらしく一頭身の体を揺らすパグモンに、ワームモンへの指示が止まる。 

 

「……っ、それはっ!?」

 

 隣にいる不知火もそんな様子で、困ったようにこちらを見る。

 

 

「フリル、容赦すんなっ!?」

 

「アーちゃん、見た目に騙されちゃだめっ!?」

 

「あかね、よく相手を見てっ!!!」

 

 

 デジモン達の声が聞こえたその時だった。

 

 

「「「『毒の泡(ぷぷぷっ〜〜)』っ!!!」」」

 

 

「────きゃあっ!?」

 

 あかねの足下に向かって紫色の泡が飛んでき────っ!? 

 

「……、溶けて、る?」

 

 あかねの足下の床が、何か酸性の液体に触れたかのように溶けてなくなってる。

 

「吸っちゃダメッ!!!」

 

 ルナモンが急いであかねの口を塞いだ。

 

(────まさかっ!?)

 

 俺は近くにいるワームモンと不知火の手を引っ張って、あかねを連れたルナモンと一緒にパグモンが攻撃した場所から離れる。

 

 [忠告でありますが、アクア殿、D-3とデジヴァイスを繋げるのでありますぞ]

 

「わかった!」

 

 急いでデジヴァイスとD-3をコードで繋ぐ……すると、画面からデジモンの図鑑がホログラムのように現れた。

 

 

 [レベル:幼年期 タイプ:レッサー型 属性:ー]

 

 レッサー? 劣化……、まだ詳細が……、

 

 

 [頭部から生えた耳のようなもので低空を飛ぶことができる小型デジモン。この耳を器用に動かし手のように扱うことができ、「あっかんベー」や「おしりペンペン」などの相手を小バカにするような態度をとる。性格は結構イジワル。コロモンやツノモンなどを追い掛け回してはイジメている。口から『毒の泡』を吐いてイジワルをすることもある]

 

 

「……毒の、あわ?」

 

 あかねの足下にの床が溶けているのが見えた。

 

(もし……、もしもあれに当たったら)

 

『EDEN』のアバターとはいえ、ただ事じゃ済まない。そのことに身体が恐怖ですくんでしまう。

 

 

「モッキュッキュッ!!!」

 

 

 そんな時、子供が笑うような高い声で、あかねを狙ったパグモンが笑った。

 

「……舐められてる」

 

 パグモン博士子供が浮かべるような『意地悪』な笑みでこちらを嘲笑っていたのだ。

 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! モキュ! モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 モキュ! 、モキュ! 、モキュ! 

 

 

「「「モッキュッキュッ!!!」」」

 

 

(……笑われ、見下され……、仲間が傷つけられた)

 

 

 そんな時、アラタ達ならどうするだろうか? 

 

 あの頃の俺ならどうするだろうか? 

 

 

(……、そんなのは決まっている)

 

 

「ワームモン、戦うぞっ!」

 

「OKだよ、アーちゃん!」

 

 

 D-3を掲げて、パグモン達へと戦いにいく。

 

 

「ガブモン、頼んだっ!!!」

 

「本当にわがままだよ、孫って奴はっ!!!」

 

 

 ガブモンも不知火と一緒に戦ってくれるらしい。

 

 

「『プチファイヤー』ッ!!!」

 

「モキュ────ッ!?」

 

 

 いや、一切の容赦なく、パグモンを燃やしている。

 

 

 [……で、あかね殿はどうされますかな? ]

 

 

「あかね?」

 

「やるよ」

 

 あかねもどうやら覚悟が決まったみたいだ。

 

「ルナモンっ!」

 

「────うんっ!」

 

 ルナモンに指示を出し、一番目の前にいる……、あかねを狙ったパグモンへとルナモンが接近、

 

 

「『ルナクロー』ッ!!!」

 

「ぷぷ──ーッ!!!」

 

 

 ルナモンの光輝く爪が、パグモンを切り裂いた。

 

「ぷぅ、ぅ……」

 

「なるほど、データみたいに消えるってことか」

 

 炎に燃えるパグモンを見て、データのカケラへと変わっていくパグモンをガブモンはぼーっと空を眺めていて、……あっ!? 

 

 

「ガブモン、危ないっ!!!」

 

 

 咄嗟にそんな大声を出した。

 

「ん、……おっと、あぶねえっ……って!?」

 

 

 ──ーパチィン!!! 

 

 

「……」

 

 ガブモンの横を通り過ぎる『毒の泡』。

 

「ぷっ、ぷぅうっ?」

 

 ガブモンに技を当てられなかったのか、パグモンはかわいい顔をして、『やってない』とでも言うように、ガブモンから目を離す。

 

「『プチファイアー』!!!」

 

 ガブモンに焼却されるのであった。

 

 

 

「────多いっ!!!」

 

 倒しても倒しても現れるパグモン達。

 

(倒し始めてから、15分以上経ってるぞっ!?)

 

 倒しても倒しても無限のように湧き出てくるパグモン達は、

 

 

「「「モッキュッキュッ!!!」」」

 

 

 こちらを見て嘲笑っている。

 

 [なるほど]

 

 ムーチョモン博士の納得したような声を上げた。

 

「ムーチョモン博士っ、何かわかったのかっ!? ]

 

 [……ふむ]

 

 まあ、しょうがないだありますな。と、前置きをして、ムーチョモンが話し出した。

 

 [本来『クーロンLevel.1』にはパグモンは現れないのでありますが……、アクア殿]

 

「……ッ!?」

 

 [()()()()()()()()()()()

 

 ────本命? 

 

 そんなことを考えたその時だった。

 

 

 ────ドッシィ──ーン!!! 

 

 

 そんな大きな音がパグモンの中心で砂埃をあげた。

 

「────なっ、なんだ!?」

 

 煙の中から、パグモンにしては黒い巨体が現れる。

 

 

「ゲェーッ、ギャッギャギャッ!」

 

 

「……あれは」

 

 黒い悪魔のようなデジモンが現れた。

 急いでデジヴァイスとD-3を繋げて、奴の正体を探る。

 

 [イビルモン*2

 

 [レベル:成熟期 タイプ: 小悪魔型 属性:ウィルス種]

 

 悪魔の翼ような耳に、モヒカンのような髪型、人よりも猿を思わせるような言動……[イビルモンが目の前に現れた!!! ]

 

 

「成熟期だとっ!?」

 

 

 ワームモンより強いデジモン。それが目の前に現れたのだ。

 

 

「『ナイトメアっ……、ショック』ッ!!!」

 

 

 イビルモンが大きな口、巨大な音を鳴り響かせた。

 

 

「……うぐっ!?」/「────ぐあっ!?」

 

「ルナモンッ!?」/「ガブモンッ!?」

 

 

 ワームモンには遠くて当たらなかったが、イビルモンの攻撃をルナモンととガブモンが同時に受けてしまった。倒れたデジモン達にあかねと不知火が解放しようと近づいた時、

 

 

「ゲェー、ギャッギャッギャッ!!!」

 

「モッー、キュッキュッキュッ!!!」

 

 

「……笑ってる」

 

 イビルモンとパグモン達が倒れたガブモン達を笑い者にしたように、みっともないとでも言うように、指を刺しながら笑って……、笑っている。

 

「────ッ!」

 

「だめっ、ガブモン!!!」

 

「うっせえっ!!!」

 

 不知火の静止を振り切り、ガブモンは立ち上がった。

 

(……というより、頭に血が昇ってるな。アレは)

 

 ルナモンの方は、

 

 

「ルナモンッ!? ルナモンッ!?」

 

「……あか、ね」

 

 

 イビルモンの攻撃のダメージが通り過ぎて、立つことすらままならない。

 

「アーちゃん」

 

「……やろう」

 

 

 

「クソが、そんなに笑ってんならやってやるよ、……?」

 

「アクアさん?」

 

 俺は不知火達の前に出る。

 

「ゲギャ?」

 

 俺はD-3から、赤い球体……『勇気のデジメンタル』を取り出した。

 

「ワームモン」

 

「わかってるよ、アーちゃん!」

 

 

「デジメンタルアップッ!!!」

 

 [ワームモン アーマー進化]

 

 

「『シェイドラモン』ッ!!!」

 

 

 ワームモンがアーマー進化。

 赤い鎧に、巨大なハチのような翼を持つ、シェイドラモンにアーマー進化して、イビルモンの前に立ちはだかった。

 

「げきゃっ!?」

 

 イビルモンは突然の進化に驚いている。

 

 

「やれ、シェイドラモンっ!」

 

「ああっ、アクアッ!!!」

 

 

 シェイドラモンへ突っ込むように指示を出した。

 

「ゲキャッ!!!」

 

「「「モキュキュ!!!」」」

 

 イビルモンの指示で、イビルモンの前にパグモン達が盾のように壁になった。

 

(パグモン達を盾にするつもりかっ!?)

 

 最初のあかねや俺の動揺を目にしていたのか、パグモンへの直接的な行動を嫌がってる俺達に、幼年期のパグモンを使って人質のような作戦をとった。

 

「止まれ、シェイドラモンっ!?」

 

 これでは本気で攻撃ができないと思い、止まるように指示を出したが……、

 

「大丈夫だよ、アクアッ!!!」

 

 シェイドラモンは羽を使って、上空へと飛んでいく。

 

「残念だけど、今の僕に甘さはないっ!!!」

 

 イビルモン達の真上から、両腕の大砲をイビルモン達へと向けて……、

 

 

「『フレアバスター』ッ!!!」

 

 

 炎弾の雨がイビルモン達に降り注いだ。

 

「げきゃ!?」

 

「モキュ、キュ──ーッ!?」

 

 パグモン達が次々にデータのカケラになって消えていく。これで、パグモン達の壁が消えたっ!!! 

 

「よしっ、そのまま接近しろっ!!!」

 

「OK、アクアッ!!!」

 

 イビルモンへと接近の指示をシェイドラモンへと出す。

 

「ゲキャギャッ!!!」

 

「「「『毒の泡(ぷぷぷっ〜〜)』っ!!!」」」

 

「────遅いっ!」

 

「今のシェイドラモンにはワームモンにはない羽があるんだよっ!!!」

 

 シェイドラモンは急降下しながら、『毒の泡』を避け続け、接近していく。

 

「ゲキャァっ!?」

 

 まさか避けられるとは思ってなかったのか、イビルモンの動きが硬直する。  

 

 パグモン達とイビルモンに接近して、全力の威力が当たる位置まで接近したことを確認。

 

 

「────今だっ! 、距離からの散弾攻撃っ!!!」

 

「『フレアバスター』、3連だぁっ!!!」

 

 

 連続の『フレアバスター』。

 

「ゲギャ────ッッ!?」

 

「モキュキュ────ッ!?」

 

 壁となっていたパグモン達が、どんどん倒されていく。響き渡るのは、イビルモン達の悲鳴。

 

 ────パリィンッ! 

 

 最後に一際大きな破砕音が鳴り響いて、大きなデータのカケラのか砂煙が『クーロンLevel.1』へと広がっていく。

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 物音はしない。

 

 敵の気配も感じない。

 

 砂煙が動く気配はない。

 

 

「……終わった、の?」

 

 そんな様子を見て、あかねがそんなことを言ってしまった。

 

「あかねちゃん、それ、フラグ……」

 

「────えっ?」

 

 不知火の声と共に、砂煙が爆発した。

 

 

「『ナイトメアショック』ッ!!!」

 

「……うっ、ぐぐぐっ!?」

 

 

 近距離からの『ナイトメアショック』。

 

「シェイドラモンッ!?」

 

「大丈夫、……だよ、アーちゃん」

 

 思わず声を上げてしまうが、シェイドラモンはまだ諦めていない。諦めるはずがなかった。

 

「ゲッ、ゲッ、ゲッ!」

 

 嘲笑う悪魔、倒したパグモン達……、そして、今背中の後ろにいる自分のパートナーの姿を見て、シェイドラモンは完全に奮起する。

 

 

「『フレア、バスター』ッ!!!」

 

「『ナイトメア、ショック』ッ!!!」

 

 

 近々距離での技と技のぶつかりあい。……だけど、

 

「うっ、うぐぐぐぐ……っ」

 

「シェイドラモンッ!」

 

 イビルモンの方が力は上なのか、シェイドラモンが少しずつ押され始める。

 

「うがぁっ!?」

 

 そして、『フレアバスター』が掻き消され、今度はシェイドラモンの周りに砂埃が舞ってしまう。

 

「「「シェイドラモンッ!?」」」

 

「ゲーッ、ゲッゲッゲッ!!!」

 

 シェイドラモンに向けて、2人の声とルナモンの声。

 

 

「ルナモン!」/「ガブモンッ!」

 

「わかってるよ、あかねっ!」/「…………」

 

 

 動き出すルナモンと指示も聞かないガブモン。

 

「…………」

 

 だけど、だけど……俺は、

 

「「アクアくん(さん)?」」

 

 

 ────ビュゥゥウウンッッ!!! 

 

 

「……げ?」

 

 ────来た! 

 

 

 

「今度はお前の番だ」

 

 

 超近距離、イビルモンの攻撃の発生源である『口』にシェイドラモンは『左腕』を突っ込んだ。

 

「げっ、げっ、げげっ!?」

 

 口が塞がれ、必死になって逃げようとするイビルモン。だが、シェイドラモンの右腕がイビルモンのモヒカンを掴んで離さない。

 

「げっ、げぇ────っ!!!」

 

 イビルモンは大きな声でパグモンを呼ぶが、パグモン達は一向に現れない。

 

(それもそうだ)

 

 シェイドラモンとイビルモンの戦いに巻き込まれ、あれだけ多くいたパグモン達も『全て』倒されてしまっていたからだ。

 

「やれ、シェイドラモン」

 

「ああ、アクア」

 

 だから、俺は、俺達は、

 

「げっ? げげげ……げむっ!?」

 

 命乞いのように胡麻をするように手を動かすイビルモン。だが、その口がだんだん赤く光っていく。

 

「やれ」

 

 俺はシェイドラモンに向かって、最後の指示を出した。

 

 

「『フレアバスター』ッ!!!」

 

 

 シェイドラモンがイビルモンの口の中で、『必殺技』を繰り出した。

 

「げぇぇえええええ──ーッ!?」

 

 イビルモンが悲鳴を上げながら、どんどん膨らんでいく。熱を持った風船のように膨らみ、……そして、

 

 

 ────ズガァアアアンッッ!!! 

 

 

 花火のように破裂した。

 

 

「……俺達の」/「勝利だよ」

 

 

 イビルモン、パグモンとの戦いがここに終了……、

 

 

 ────ピロリンッ! 

 

 

 デジヴァイスから大きな音が鳴り響いて、その中から、1つのメッセージが届いている。

 

 [依頼 達成!!! ]

 

 [役者チームに3ポイント贈呈されます!!! ]

 

 

 たった、これだけ……たったこれだけのセリフが、俺達へと贈られていた。俺はすぐに買い物のメニューヲ開いて、『デジメンタル』の購入画面を検索する……すると、そこには、×メニューヲ○メニューを

 

 

『優しさのデジメンタル 10ポイント』

 

 

 見たことがないデジメンタルが表示されているが……、それ以上に、

 

 

「……これで、3ポイントかよ」

 

「……うん、先は長いね」

 

 

 先の長さに辟易としてしまった。

 

*1
レベル:幼年期II タイプ:レッサー型 属性:ー 必殺技:『毒の泡』

 頭部から生えた耳のようなもので低空を飛ぶことができる小型デジモン。この耳を器用に動かし手のように扱うことができ、「あっかんベー」や「おしりペンペン」などの相手を小バカにするような態度をとる。性格は結構イジワル。コロモンやツノモンなどを追い掛け回してはイジメている。口から『毒の泡』を吐いてイジワルをすることもある。

*2
レベル:成熟期 タイプ:小悪魔型 属性ウィルス種 必殺技:『ナイトメアショック』

 気が強く負けずぎらいの小悪魔型デジモン。そのため直接戦わず、チクチクと弱いものをいたぶるひきょうものだ。ダークエリアに住む暗黒系デジモンの源とされているらしいが、まだナゾは多い。必殺技は、口から出す超音波で覚めない悪夢を見続けさせる『ナイトメアショック』。





「それじゃ、私達は帰るねぇ〜〜っ!」

「バイバーイッ!!!」

渋谷駅でバスを降りて、部長達とは違う道で帰る。

いつもとは違う帰り道、

いつもと同じ向かう先、

いつもと違って……、


「優勝おめでとう」

「うん!」


彼と向かってる。

「試合、どうだったかな?」

私は今日の試合について聞いてみる。

「…………」

……すると、彼は少し黙り込んでしまった。その様子に少しだけ不安になる。

「おもしろくなかったかな?」

私は全力で動けて、チームも全力で動いて、相手も頑張って戦ってくれて、私としては今までで……ううん、『中学最後』のバレーで一番楽しかった試合だった。

(……でも、)

彼は難しい顔をしてるから、おもしろくなかったのかと、……そう思ってしまった。

「おもしろかったよ」

彼は首を振ってそう言った。

「ーーーー、なら、どうしてそんな顔をしてるの?」

けど、その顔はどことなく悲しそうに見えた……だから、私は聞かずにはいられなかった。


「……初めて見たんだ」 


「……はじめて?」

彼は夕陽へと視線を向けて、笑って私に振り返った。

「スポーツの観戦に興味なかったからさ。見たことあるのは、戦……、剣道の試合ぐらいだったんだ」

「知り合いの剣術家がやってる道場でさ、俺の……部下も習いに行ってたんだ」

「……そうなんだ」

お金持ちの家に住んでいるのに、剣道以外の試合を見たことない……だなんて、変だと思った。

「娯楽なんて一切ない実践剣術を主流とする流派だったから、こうやってスポーツとして見るのは初めてだったんだよ」

娯楽……私は全力でやってたんだけど、そう思ってたんだけど……、彼にとってはそう見えた。少しだけーーーー、


「今日は誘ってくれて、ありがとう。とても貴重な経験になった」


夕陽を背にした彼の笑顔が、どことなく綺麗に見えて……ううん、とっても綺麗だったから、

(ううんっ!)

一瞬だけ、……一瞬だけ思ってしまったことを、今、たった今この場で忘れて、その笑顔に私は、


「ーーーーうんっ!」


大きく頷いた。

「また誘ってくれると嬉しいかな」

「また、また絶対にーーーー、」


「ーーーーッ!?」


……あれ?

「どうしたの?」

彼の様子が変わった。
遠くを見つめる彼は、その『何か』を強く睨みつけて、片手でデジヴァイスを弄りながら、ーーーーあっ? 


「ーーーーっ、静かにっ! この物陰に隠れて!」

「ーーーーえっ、むぐっ!?」


ーーーー、ちょっと、なにっ!?


渋谷の細道、仄暗いその細い細い道の、建物の間……、大通りのハズレから、彼は何かを『警戒』するように視線を向ける。

「…………」

少しずつ、少しずつ……口に当たる手の匂いが口の中に広がっていく。

(甘い、甘い和菓子の香りがする)

自宅近くの和菓子の……、餡子の香りが少し状況を落ち着かせる。

(彼は私の方を見て『何か』に驚いた。その『何か』は彼が気をつけないといけない人……、だとおもう。でも、……彼が警戒しなくちゃいけない人なんてーーーー)



「……おかしいな、こっちに似たような人がいたって連絡があったのに」

片目を髪で隠した少年が通る。

「しかたないさ、……プロが探していても見つからないんだ。素人の俺達が探してたってしょうがない」

地毛が金髪の男の人……、ううん、学生服を着た高校生が通っていく。

「会長っ! 諦めないでくださいっ!!!」

(ーーーーッ!?)

ピンク髪の少女が見えたとき、……その姿を見て思い出した。

(あのセーラー服は『秀知院学園』の物だ!?)

確か、高校見学のパンフレットを見た時に、『少しかわいい……、けどレイプ事件が起きるような学園なんだよね』って印象に残ってたのを覚えている。

(学生服を見た時には気づかなかったのは、学生服はバッヂ以外ほぼ他の学校と変わらなかったからで、セーラー服が他の学校と違って、被写体の女子高生がかわいかったから印象に残ってた……だけど、)

どうして彼は、彼女達から姿を隠してるの?


「あの、にっくき恋敵の許嫁野郎に一泡吹かせないでどうするんですかっ!!!」

(ーーーーッ!?)


ピンク髪の少女が金髪の男の人をひっぱりながらこっちにやって来た。

(……こっち)

彼は急いで私の手を引っ張って、奥の……裏通りのとある店の中へと入れる。
店の中はBARになっていて、店内に『とある着ぐるみ』が鎮座している。

(だいぶ暑いけどこれとこれを被って、隠れるんだっ!)

その着ぐるみを渡され、着替えるように指示をされる。

(ねぇ、あの人達って……、秀知院の学生だよね?)

それを持って、『えっ、これを着るの?』……と、そんなことを考えながら、さっきの高校生の人達に聞こうと思ったけど……、


(しぃーっ、……静かに、絶対にしゃべらないで。声が聞こえたら、厄介なことになるっ!!!)

(……ん?)

彼の様子が焦っているように見えた。

(いいか、『四宮』と『四条』は平気で下衆な行為をしてくるクズどもだ。奴らは奴らの手駒を使って、『カミシロ』にいる俺のことを探りに来た)

『四宮』?

『四条』……っ、テレビで有名な『あの』四宮と四条!?

それの手先が追ってきてるのっ!?

(静かにしてないと、背後関係を洗われて……最悪、俺に対しての人質にされる)

(ーーーーッ!?)

彼の言葉に強く頷く。
焦ってる理由がわかったた。私がここにいるせいで、私のことが四宮にバレることを彼は恐れているんだッ!?

(静かに、静かに待っててくれよ)

彼はそう言って、BARから飛び出して行った。



「いやあ、見つかりませんね」

「もう少し探そう。四宮の助けになるかもしれない」

「そう言っておいて、恋人の許嫁の正体が気になってるんじゃないんですかぁ〜〜?」

「ーーーーうぐっ、……それは、」


外の声を聞くとBARの外に3人の男女が現れた。とうとう現れてしまった。


「なんのようだ?」

「「「ーーーーッ!?」」」


外の様子がわからない。
彼が今、どんな状況で、どんなふうに相手をしてるのか、わかんない……わかんないけど、


「俺を探しているみたいだが、『あの』学校の学生が何か用事か?」

(……あれ?)


いつもと様子が違う?
声色が、いつもの……月夜が照らすような優しい温かみが消えた『ドス黒い』闇夜のようなそんな声だった。
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