2016/8/15
「……で、なんなのよ、これ?」
それは真夏のとある日、……撮影から2週間近く経つ8月の中旬、壱護プロと役者、いわゆる『カミシロ』のバラエティ番組の出演者達はその映像を見て固まっていた。
ーーーーlalala……、lalala ……、
流れる音楽と黒の背景、そこに一筋の赤色の光が差し込む。
『デジメンタル、アップ!!!』
少年……、星野アクアの叫ぶ様子と、勇気のデジメンタルが映像に流れ、
『ワームモン アーマー進化!』
ワームモンのその声と共に、ワームモンを中心に火柱が立ち上る。
火柱はワームモンへと集まって、人型に姿を変える。炎は足、肩、腕にその名の通り、『
『燃え上がる勇気!』
炎の蜂は夜空を一回転飛んで地面に降り立ち、
『シェイドラモン!!!』
名乗りと共に、シェイドラモンの背後にいくつもの火柱が噴き出した。
ーーーー負けたくないと叫んだ胸の声が聞こえただろ?
ーーーー強がって立ち向かうしかないんだ。
音楽が流れながら、シェイドラモンとイビルモンの戦いが始まる。
「本当にニチアサじゃないっ!?」
「ニチアサだな」
「だよね」
その映像を見て、背後の双子の私はマネージャーとして頭を抱えてしまった。
「ここまで凝る? 普通っ!!!」
デジモン同士の緊迫とした接近戦に、火の玉が敵に命中する角度、敵と味方との間合いにアクアや黒川あかね、不知火フリルのリアルな表情の変化……、それら全てに効果音や演出、最後のイビルモンの爆発まで、リアルで撮影した物のはずなのに、現実感が限りなく0に近い映像が目の前に存在していた。
「進化バンクに挿入歌……、本当にアニメみたいだな」
アクアがシェイドラモンの進化シーンを再び再生する。
「BGMだってかっこいいし、アクアとシェイドラモンがかっこよかった」
目を輝かせているところを見れば、アクアもやはり男の子なのだと実感が湧く。……そして、
「僕、かっこよかった?」
「ああ、かっこいいさ」
「わぁ!」
デジヴァイスの中にいる映像に映っている当人達は、互いの映像に見入っていた。そんな様子を見て微笑みつつも、その後に流れた映像にさらに頭を抱え、悩み……そして、
「……それに引き換え、ーーーールビーッ!!!」
「ーーーーッ!?」
『問題児』に声をかけた。
「何よ、これ?」
映像を2分巻き戻す。
『ちょっと、ちょっとっ!? 罠を張りすぎじゃないッ!?』
B小町リーダー有馬かながその光景を見て、驚愕に顔を染めたところから映像が始まった。
『『…………?』』
エッサホイサと穴を埋めるルビーとブイモン。その周辺には大きな落とし穴がいくつも作られている。中には小さなデジモン達がピギャーピギャーと泣いているのだが……、
『負ける方が悪いんだよ? ねえ?』
『ルビーの言うとおりだ』
ルビーとブイモンは素知らぬ顔でデジモン達を埋めていく。石を投げ悲鳴を上げる幼年期のデジモン達をいともたやすく絶命させているのだ。
『それにしたって、かわいそうだよ』
映像の中の少女2人とデジモン達は、そのパートナー達の言動にドン引きしているのだが……、
『…………』
『……かわいそう?』
『こんな小さなデジモンをいじめて……、悪いとは思わないのっ!?』
『『思わない』』
映像の中のルビーとブイモンは冷淡にそう返した。
((断言しちゃった(しやがった、こいつ))
ルビーとブイモン以外のメンバーが、当人達パートナー2人から一歩足を下がってしまう。
『ピギャー!、ピギャー!』
『ほいっ!』
『岩を落とせっ! 岩を投げるんだっ!!!』
『『『ーーーーあ゛ぁああああっっ!?』』』
『依頼完了!』
全国で放送される『カミシロ』のバラエティ番組にあるまじき姿に、私は頭を抱えた。
「なんでデジモンを落とし穴に落としてるのっ!!!」
「簡単に勝てるから」
「これ絶対に放送しちゃいけない奴になってるわよっ!?」
「負けた方が悪いし」
「同情とか、躊躇いってないのっ!?」
「…………?」
「ミラクル肉の為なら手段は選ばない、でいい気がする?」
「……そうだよね、ブイモン?」
駄目だ、こいつら……、情けとか容赦とか、対人で必要な感情を一切合財捨ててしまっている。この子どうするべきか……と考えていると、
『あなたのアイドル、サインはB!』
B小町リーダーの有馬ちゃんとアクアの彼女であるあかねちゃんが、止めていた映像を流し始めていた。
最後のデジモンが倒され、ルビーとブイモンが『勝ったぞーーーー!』とポーズをとっているシーンで映像が引いていき、小さくなったところで、エンディングが流れ始めた。流れ始めたのだけれど……、
「……最後まで、見せ場たっぷりなんだけど」
「まさかEDがアニメ……しかも、B小町がステージの上で踊ってる映像を流すなんて、どれだけお金がかかってるのかな?」
「デフォルメされたルビーが1人で踊ってる中、合いの手を入れる観客席でアクたんとワームモン、ブイモンがサイリウム振ってんのが凝ってるんだよねえ」
有馬ちゃん、あかねちゃん、MEMちょは映像を見ながら、その膨大な仕事量に圧巻されていた。
映像はアニメーションにデフォルメされたルビーが、たった1人ステージの中心で歌っていて、合いの手のタイミングやサビになるとデフォルメされたアクア達が、思い思いの姿で応援すると言う物なんだけど……、
「EDの違いでかなは『STAR☆T☆RAIN』で、メムは『HEART’s♡KISS』を……アニメで作ってる奴何者だよ、これ」
『カミシロ』は『B小町』全員分のアニメーションED を作成していたのであった。
「『サインはB』のアクアの頭にはワームモンが乗ってて、ワームモンの鉢巻には『アーちゃん✖️全推し♡』って書かれてる。
『STAR☆T☆RAIN』は黒川あかねが膨れっ面でそっぽを向いてるけど、有馬かなに向かってサイリウムを振ってて、コロナモンとルナモンが肩を組んで踊ってる。
『HEART’s♡KISS』ではツチダルモンが『I LOVE MEM♡』って書かれた看板を持ってて、ガブモンはつまらなさそうにお菓子を食べてる。私は目を輝かせながら、MEMちょを……私を見てる……と、すごい作業量だよね、これって!?」
MEMは興奮気味に2人にそう問いかける。
「なんで私のEDで、膨れっ面のこの女が出てくんのよっ!?」
「何、私が出たら聞けないの?」
(…………あの2人は)
顔を突き合わせるたびに喧嘩をし始め、MEMが仲裁に入って……と、そんなことを考えてる場合じゃなかった。ルビーが部屋の外に逃げようとしてるのが見える。
「ルビー、まだ、説教は終わってないわよっ!!!」
「ーーーーひぇっ!?」
私はルビー首根っこを掴んで、ふたたび説教をしはじめる。
「…………、」
そんな様子を、誰かが遠くで隠れて見ていた。
「
誰かのその視線の先には、金髪の少女の姿がそこにあった。カミシロを見つめ、その誰かは暗がりへと姿を消した。
2016/8/20
「今日はゲスト回なのですぞっ!!!」
いつものように依頼を受けようとD-3を開いたら、ユイ……じゃなくて、ムーチョモン博士から『カミシロ』のサーバに来いって言われて……そして、来た結果が────、
「急に集められたと思ったら、何? ゲスト回? こっちに丸投げするんじゃなかったの?」
急なゲスト回である。
「いやぁ、……それなのですが、1つ問題が発覚しまいまして…………」
────チラッ!
(((ああ、そういうこと)))
なぜだか私とブイモンを見るムーチョモン博士に、それを見て納得した表情のみんな……、何を納得してるのかと頬を膨らませる。
「約2名の暴走が今後の番組に影響すると思いまして、彼女達の暴走を抑える為にも、ゲスト回を挟みたいと思っております」
やはり、何のことだかわからない。
((暴走、誰のことだろう(だ)?))
ブイモンと一緒に首を傾げる.
撮り溜めしてる映像の中にある私とブイモン行動は間違ってないはず……なので、きっとパイセンとあかねちゃんのことなんだろうとなんとなくそう思った。
「それでは、ゲストに登場していただきますぞっ!!!」
デン、デデデデンッ、デンッ! デーンッ!!!
たくさんのカラフルなスポットライトが、頭の上を通り過ぎたり、回ったり、交差しながら、1つの場所に集まっていく。
バン!
そんな大きな音が鳴り響いた。
スポットライトの色が全部白に変わって、集中して照らしてる場所に1人の少年が姿を現した。
透き通るような銀髪に季節外れの白いコート、全てを見透かすような銀色の瞳の少年。それがサーバに入って、……ゲストとしてムーチョモン博士に呼ばれていた。
「……やあ、初めましてだね」
気取ったような挨拶に、柔らかく微笑美少年。
「全身、真っ白!?」
「すっごい、美少年」
パイセンはそのファッションに驚いて、MEMちょは容姿に驚いてる。……だけど、
「こいつはっ!?」
「なんで、この人がここにいるのっ!?」
私達の中で2人……、その人のことを知っている人達がいた。
「約2名の、僕のことを知っている人物がいるみたいだね。星野アクアくんは当然として……、黒川あかね、君が知っていたのは驚いた」
「────ッ!?」
白い少年が顎に手を当てながら…………、アクアが当然? と言った。 いったいどーしてそう思うのかわからないけど、とりあえず何か知ってる兄に聞いてみる。
「────アクア知ってるのっ!?」
「黒川あかね、早く教えなさいよっ!」
私と先輩がほぼ同時に振り返って2人に聞いた。
「ルビー、……現在『EDEN』で最も強いハッカーを知ってるか?」
「かなちゃん、『EDEN』で最も大きな影響力を持つハッカー集団って知ってるかな?」
2人はしんみょーな顔をしながらそう聞いてくる。そんなのとーぜん、……あっ!?
(…………タイト、って言えないし……、でも、一番強い? 『EDEN』で秘書やってるみなみ達は? ハッカーをやってるなんて、そんな話は聞いたことない……、じゃあ、カミシロの関係者、なのかな?)
そんなことを考えてると、アクアが目の前の少年に指を差した。
「
そこには『白い少年』が立っている……ん?
「目の前って……、この人っ!?」
この人がハッカー?
「「「────っ!?」」」
私、パイセン、MEMちょが急いで後ろに下がった。
『EDEN』の悪名の名高きハッカー、……しかも、アクアの言うとおりなら、最強のハッカーが目の前にいて、驚いたからだ。
「……へえ」
彼は私達がD-3をすぐに取り出したのを見て、興味深そうにD-3を見た。
(…………)
この後はどうするのか、と考えていると、アクアが最後に一言、
「『EDEN』のハッカー達の中でも最大派閥『ザクソン』……そのリーダーが目の前にいるその人、『ユーゴ』だ」
ハッカー?
最大派閥?
そのリーダー?
目の前にいる人が、そんな有名人? ……で、最強のハッカー?
「「「ええぇ────ッ!?」」」
B小町の驚きの声がサーバの中に響き渡った。
「言われてしまいましたな」
「言われてしまったね」
「この後の自己紹介はどうなされるのでありますか?」
「まあ、無難に行こう」
ムーチョモン博士と白い少年、ユーゴが楽しそうに会話をして、私達の前にユーゴが一歩前に出た。
「彼が説明してくれたとおり、僕の名前は『ユーゴ』。この『EDEN』において最も『自由』なハッカーだと自負している。よろしく頼む」
私とアクアの目の前に出される右手……、握手を求められてるんだ。……なんとなくそう思って、ユーゴの手を握る。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
挨拶されてしまった。
『EDENサイキョー』のハッカーに挨拶されてしまった。これは実はすごいことなのでは……そんなことを考えていると、
「貴殿らにはこの方、……ユーゴ殿と戦っていただくのであります」
ムーチョモン博士にそんなことを言われる。
「「「戦う?」」」
私達がムーチョモン博士のそんな言葉に戸惑う。
「全員で来てくれ。3分以上立っていられたら、君達の勝ちでいいよ」
「勝ったら、……そうですな、1人につき『100ポイント』贈呈……ってところでどうでありますか?」
「いいんじゃないかな、ムーチョモン博士」
「「────ッ!?」」
気軽に、気安く、さも当たり前のように話しているムーチョモン博士とユーゴのそんな会話が頭の中で巡る。
────ブォンッ!
「舐められてる?」
「舐められてるな」
私の隣にブイモンが現れた。
当たり前だ。
私達は弱くなったとはいっても、少しずつ『前』に進んでいる。それなのに、初めて会った人にそんなことを……、舐めたことを言われたら……、みなみだったら、どーするだろう?
「ブイモン、『アレ』やるよ」
「OK、ルビー」
D-3を掲げて、ブイモンの今持てる『全力』を『全霊』を全て引き出す。
[
D-3からブイモンに集まる懐かしい……ううん、私にとって見慣れた一番の光。
世界を救う一助になった光は、私の知る最強には程遠く……、それでも、ブイモンの実力を全力で引き出してくれる。
その力、その光はブイモンの姿を変えていき……、
「『
青の巨体を持つ、翼の戦士がそこに降り立った。
「────アーマー進化じゃないっ!?」
「ブイモンが進化した!?」
「……むむっ!?」
アーマー進化しか知らない
進化したことに驚く
興味深く見る
どれも私の求める物ではない。
「ふふっ、おもしろいね。じゃあ、やろうか」
目の前にいるこいつに、『最強』に一泡吹かせる手段でしかない。
「
「グギァァアアアア────ッッ!!!」
力強く、そして大きな雄叫びを上げる機械の竜……、目の前にいる存在を私は知ってる。
タイトの初めての究極体『ムゲンドラモン』。
確かに今の実力に見合わないかもしれない。だけど、私達にはあの戦いで、あの世界で手に入れた経験がある。だから、
「初進化成功……って、あれ?」
「そうだ、この『ブイドラモン』なら……はっ!?」
なんか細くない?
細いよね?
細いっ!?
(ブイドラモンじゃない!?)
(こんなヒョロイ体で戦えるのかよ)
確かブイモンが進化した時に言ったセリフは……、
『エクスブイモンッ!!!』
((違う進化だっ!?))
聖なるデヴァイス、初代デジヴァイスではこんなことにはならなかったのに、どーしてっ!!!
「さあ、来いエクスブイモン! 君の力を見せてくれっ!!!」
ムゲンドラモンを背に、今か今かと待ち侘びるユーゴ。
(行くしか)/(ないよな?)
エクスブイモンとどーするか考え、考え、考えて……うーん、なんとなるでしょ!
「パイセンっ、MEMちょっ、先いくよっ!!!」
エクスブイモンと一緒に前に出る。
「ああ、ちょっと待ちなさいっ!?」
「準備はできてるよ、カナッ!」
「やるしかない……、いくよ、ツチダルモン!」
「…………っ!」
背中からの仲間の声に胸を高鳴らせる。
懐かしい。
みなみやタイト、教授、ミユキちゃんと戦ったあの世界を思い出した。
「アクアくん、どうする?」
「相手は……、これはっ!?」
「……何かわかった?」
[ムゲンドラモン レベル:究極体]
「「「究極体っ!?」」」
「ルビーっ!!!」
遙か上空、エクスブイモンはルビーに指示を仰ぐ。
「相手は究極体、────上空へと散開、遠距離攻撃で牽制してっ!!!」
「わかったっ! 『エクスレーザー』ッ!!!」
ルビーの指示を聞いて、上空から『エクスレーザー』がムゲンドラモンを襲う。
「……?」
ムゲンドラモンはぴくりとも動かない。
「成熟期レベル……、やはりその程度、……やれ、ムゲンドラモン」
「グギァァアッッ!!!」
ムゲンドラモンはユーゴの指示を聞いて、のっそりと走り出す。
「うるさっ……って、危ないっ!!!」
「間一髪だったぜ……」
のっそりとした動きだけど、スピードは段違いだ。走り出しただけで、エクスブイモンの攻撃が当たってない。
(相手は究極体……手加減してるみたいだけど、……どうする?)
格上と戦うのは慣れている。
だけど、今回は前回みたいな一発逆転の一手はない……と思う。才能も素質も戦闘経験もない仲間達。手を抜いているムゲンドラモン。その状況をどう扱うかが私の作戦の肝になってる。
「ルビー、私達はどうする?」
パイセンとMEMに聞かれる。
ぶっちゃけ、私とエクスブイモンを含め戦力になれるとは、到底思えない。なんて言うのは論外だ。
「…………」
……と、無言でも圧を感じる泥でできた巨体を見て1つの作戦を思いついた。
「ツチダルモンは前回とおんなじよう手で、コロナモンは……、エクスブイモンと一緒に牽制をっ!!!」
「「わかった」」/「「うん! (……っ!)」
「『フレアバスター』ッ!!!」
「────ッ!?」
ムゲンドラモンの腕に火の玉が当たった。その先を見ると……、
「……アクア?」
アクアとシェイドラモンがムゲンドラモンに向かって『』を放ったのだと気がついた。
「なるほど、そちらも動き始めたようだ」
「グルッ!」
ユーゴとムゲンドラモンの視線がアクア達に向かう。その間に、
「ルナモンはコロナモンと鏡合わせになるように動け、ガブモンは……」
[ガブモン 進化]
「『ガルルモン』ッ!!!」
「フリル、下がってろ」
「わかった」
「ウワォオオオオンッ!!!」
「指示を出す必要はない……か」
(……あっちも準備ができたみたい、うん!)
パイセン、MEMちょ、コロナモン、ツチダルモン……、そして、エクスブイモンに向けて視線を投げかけ、頷き合い、
「いくよっ!」
「「「おう(……っ)!」」」
決戦の火蓋を私の手で切る。
「『エクスレーザー』!」
「『フレアバスター』!」
「『コロナフレイム』ッ!」
「『ティアーシュート』ッ!」
「『グレートウェイト』」
5体のデジモンからの一斉攻撃。どれもムゲンドラモンに命中する。
(いくら究極体とはいっても、これだけの攻撃……、『上手く』戦うことはできないはず……っ!?)
鬱陶しそうに体を震わせるムゲンドラモン。
(流石にこれ以上攻撃が増えるのは、鬱陶しいな)
相手の表情のの動きから、効果があるのは実感できた。……それなら、
「ムゲンドラモン!」
目眩しは済んだ。後は準備を整えるだけ、……やれることを────、
「
ユーゴの指示が響き渡った。
「「────ッ!?」」
(……バレたっ!?)
以前、カミシロの一番最初の依頼。
幼年期デジモン達を落とし穴にハメ、岩や土、必殺技で倒していく作戦……それを改良して、ムゲンドラモンをツチダルモンが作った落とし穴に嵌めて時間稼ぎをする作戦がすぐに見破られた。
「パイセンッ、コロナモンッ!!!」
「わかってるっ!」
巨大な音を立てて地面を掘っているツチダルモンに指示は通らない。その音をデジモン達の技やムゲンドラモンの戦闘音で掻き消す予定だったのに、それも通じなかった。
ううん、それなら、落とし穴自体を利用すればいいっ!
「『エクスレーザー』ッ!!!」
「『コロナフレイム』ッ!!!」
「『ティアーシュート』ッ!!!」
エクスブイモン、コロナモン、ルナモンの同時攻撃を受けたムゲンドラモン。
「……グル?」
首を傾げるだけ。
「こいつ俺の攻撃が効いてないっ!?」
「────なっ!?」
2人とも驚いてるけど、
「そーだよね、無理だよねっ!!!」
無理なのはわかってたよっ!!!
「ルビー、あんたっ!?」
「目眩しついでに逃げる時間を稼ぐつもりだったのっ!!!」
落とし穴付近まで逃げて、土の中から奇襲作戦、失敗だよ〜〜っ!!!
「
パイセンにどーすんのよと肩を揺らされた途端、視界の端にある茶色の巨体にムゲンドラモンが近づいたのが見えた。
「グルァッ!!!」
「…………ッ!?」
自分よりも大きな巨体に向かって、拳を振り上げるツチダルモン。ただ、その一撃よりも早く、ムゲンドラモンの爪がツチダルモンの首を掴み上げ、
「グルアッッ!!!」
「…………っ、あっ」
地面に叩きつけられた。
「ツチダルモンッ!?」
…………ツチダルモンがやられた。
「まずは1体」
ユーゴのカウント。
「残り、2分」
「「「────ッ!?」」」
そして、ムーチョモン博士のカウントが聞こえてくる。
「時間がない、手早くやろうか」
次にムゲンドラモンの視線が向いたのは、
「コロナモン!?」
「────ッ!?」
コロナモンだった。
「かなちゃんっ!? ────ルナモン、お願いっ!!!」
「うん!」
その様子を見て、黒川あかねが思わずルナモンに声をかけてしまう。ルナモンはその指示通り、コロナモンの加勢に行く。
「────おい、待てっ!?」
「『プチプロミネンス』ッ!!!」/「『ロップイヤーリップル』ッ!!!」
────べちんっ!
「────うっ!?」/「────きゃっ!?」
「コロナモンッ!?」/「ルナモンッ!?」
必殺技をなんとも思ってないのかムゲンドラモンはハエを叩くようにコロナモン達を一瞬で倒してしまった。
「これで残り、3体」
「残り1分40秒」
でも、それで時間が稼げた。
「ガルルモン」
「しょうがねぇな」
私とガルルモンの視線が合う。
「さて、誰に────」
「ぐるるる?」
「『フォックスファイアー』ッ!!!」
ムゲンドラモンの腕に飛びついたガルルモン。その腕は赤く光り始める。
「飛んで火に入る夏の虫、だね」
(悪いけど、時間稼いできて)
ガルルモンはアイコンタクトでそれが理解できている。フリルちゃんよりも私の指示を優先し、フリルちゃんもガルルモンの言うとおりに、下がって様子を見ていた。
「舐めるなぁっ、『フォックスファイアー』ッ!!!」
腕に噛み付いた状態での『フォックスファイアー』。私達のように弱体化してるかと思ったら、そうでもないみたいだ。
ムゲンドラモンの腕を真っ赤に染め上げる。
(超々近距離からの『フォックスファイアー』……これなら、少しは……っ!?)
確実にダメージは入ってる……だけど、
「ムゲンドラモン……叩きつけろ」
「グルアッ!!!」
「────がはっ!?」
そこはムゲンドラモンの間合いだ。
「ガルルモン……、ガブモンッ!?」
「……わりぃ」
フリルちゃんが退化したガブモンを回収したのを見て、
(…………やっぱり)
弱くなったのは私達なのだとわかってしまった。
「残り2体」
「残り1分」
2人のカウントが重くのしかかる。
「…………」/「…………」
でも、私とエクスブイモンの考えは一致していた。2人で頷き合い、……そして、
「アクア」/「シェイドラモン」
「……ルビー?」/「エクスブイモン?」
「「下がってて(ろ)」」
「「これは私達/俺の
「エクスブイモンッ!!!」
「ルビーッ!!!」
声を震わせ、怒鳴り、緊張して……そして、それ以上に、それ以上にに焦がれた。
「火力、スピード、戦闘経験……私達は全てにおいて相手に劣ってるっ……だからっ!!!」
「「容赦はしないっ!!!」」
「残り50秒」
残り1分のカウントが始まった。
「飛び回って中距離で『エクスレーザー』を連打っ! 相手の間合いを見極めて、ギリギリで避け続けてっ!!!」
エクスブイモンの身軽さを利用した、対巨体相手の作戦の1つ。バイフーモンよりも小さいけど、それでもエクスブイモンより大きいことには変わりない。
「無茶だけど……、それしかないよなっ!!!」
デュナスモンに指示を出すように、ヒットアンドアウェイをエクスブイモンに指示。そして、渾身の、
「『エクスレーザー』ァッ!!!」
ムゲンドラモンの足にヒット。
「……るぅ、っ?」
エクスブイモンの動きに翻弄されたのか、少しだけバランスを崩してよろける。
「あの子達、なかなかやるね」
「……グル!」
ムゲンドラモンとユーゴが頷き合った────、まずいっ!?
「避けてっ!!!」
大きな声で逃げるように指示。
「ムゲンドラモン」
「グルァァッッ!!!」
「────っぶなっ!?」
すんでのところで間に合って、上空へと逃げ延びるエクスブイモン。
「残り30秒」
ユイのカウントが30を切った。
「しかたがない。これは使うつもりはなかったんだが……、ムゲンドラモンッ!!!」
「……グルア」
ムゲンドラモンの砲台が光り始める。
「技のチャージが始まったっ!?」
あの光の正体に気づいて、すぐにエクスブイモンを見る。
「中距離から近距離に変更、『あの頃』を思い出してっ!!!」
「────っ!?」
「残り25秒」
エクスブイモンはすぐにムゲンドラモンに接近、なんどもなんども、ムゲンドラモンの周りを、飛び回り、攻撃する。ムゲンドラモンの集中力を削ぐ作戦だ。
「溜めに入ったと判断すれば急接近……、流石、『彼』が褒めていただけはある……だけど」
「…………ルゥ」
ガチャン……と、砲台がかたむく。
『
ユーゴのその指示が聞こえ、ムゲンドラモンの目が赤く光った。
「
「残り20秒」
ユイのカウントはどんどん短く、短くなるけど……、
「……そのまま近距離で避け続けてっ!!!」
私は時間が遅く感じていた。
「もっと、もっと速くっ!!!」
ムゲンドラモンの動きが完全に止まって、砲台は白く、白く光り始める。
「もっと、もっとっ!」
集中力を削ぐ為にも、もっと、もっと速く動いて、もっともっと早く攻撃しないと、
(
エクスブイモンの動きはどんどん、どんどん、どんどん速くなる。
「────もっとぉっっ!!!」
その姿はかつての力を思い出すように……、
「残り10秒」
ユイのカウントは、
「撃て」
「『♾️キャノン』ッ!!!」
ムゲンドラモンの必殺技、『♾️キャノン』が天を貫いた……あれ?
「どこを狙って、────ッ!?」
私は思わず、天を見上げる……いや、違う。あそこには、
「────シェイドラモンッ!?」
「……ぼ、く……狙われた?」
「シェイドラモン……って、────なっ!?」
倒れたワームモンのその姿に、エクスブイモンは一瞬動きを止めてしまった。
(あっ、これは────)
その失策に、急いで……、
「逃げて、エクスブイモンっ!!!」
声よりも、考えよりも、思考よりも、早く指示を、……指示を出せたはずだった。
「────っ、あぁっ!?」
「エクスブイモンッ!?」
だけどそれでは『遅かった』んだ。
「君達は……、いや、君は確かに強かった」
ユーゴは
「今日、初めて進化したエクスブイモンとの連携に、そのスペックに合った戦い方……そして何よりも君の指示。間違いなく『ザクソン』のハッカー達の中でも、上澄みに入る程だ……だけど」
ハッカー達の上澄み、上澄に入る力を持っている……だけど、
「
「「────っ!?」」
力の差を実感してしまった。
「究極体同士の戦い方が、指示ができているはずなのに、デジモンのレベルが成熟期? ……ありえない。彼らのレベルは間違いなくある一定のレベルに到達している。それなのにどうして、こんなに弱い? ……いったい、どうして?」
私を見てるのではない。私に話しかけたのではない。自身の経験との違いに混乱している……ただ、それだけ。
強者に『それだけ』しか私達は与えられなかったんだ。
「ユーゴ殿、お疲れ様であります」
ムーチョモン博士が声をかける。
「……、ムーチョモン博士?」
「そうであります。『ムーチョモン博士』でありますぞ」
「────彼女はいった」
「それは後で話すのであります」
「お疲れ様であります」
「「「お疲れ様でした」」」
「────っ、お疲れ様でした!」
…………っ、ムーチョモン博士にそう言われて、ようやく自分が座ってることを思い出して、急いで立ち上がって挨拶する。
「…………」
「…………」
ユーゴは私達から離れて、どこかに連絡をし始める。
「『初めて』の格上との戦い。どうでありましたか?」
そして、私達もムゲンドラモンとの戦いをムーチョモン博士に聞かれていた。
「とても、とてつもなく強かったです」
「そうでありますか」
「あの、時間は……」
「残念ながら……」
『0:01』
「────ッ、あっ」
「残念でありますな」
「負けたぁぁあああっっ!!!」
「あんなん勝てるわけないじゃんっ!!!」
みんなが時間を見て嘆いている中で、私達は……、
「今の『私達』じゃ勝てるはずもない」
「……うん」
今の戦いを振り返っていた。
(勝てなかった)
それは事実だ……でも、
(勝てなかった?)
去年の、ファンロンモンルインモードと戦った私達なら、どうだったのかな?
(デュナスモンだったら……、勝てたのかな?)
手数はあるけど、ダメージは……ファンロンモンルインモードとおんなじぐらいの硬さだったら、みなみの力が必要に……ううん、あれは一回限りの奇跡、かもしれないし。
(わからない)
実践でも、過去でも、ムゲンドラモンに勝てたかわからなかった。
(確かにファンロンモンルインモードよりかは弱かった。だけど、ピエモン達よりはずっと、ずっと強いデジモンだった)
動きの速さ、力が、抑えていたとはいえ、ファンロンモンルインモードに比べたら、弱いとしか言いようがない。言いようがない……けど、
(もし、もしも……、もしも……あのレベルの)
(あの進化を)
あのデジモンに勝つ為には、
((強くならないと))
再びブイモンとそう決意したのだった。
ブイモンが本来の力を得て進化した成熟期の幻竜型デジモン。エクスブイモンはブイドラモンの原種であり、その派生系の一種がブイドラモンであると言われている。その発達した腕力と脚力から繰り出される攻撃力は凄まじく、山ほどもある岩石など跡形も無く破壊できるほどである。その破壊力を持つために恐れられているが、実際は正義感が強くむやみにその力を使うことは無い。得意技は、強烈な噛み付き技『ストロングクランチ』。必殺技は胸のX字の模様から放射されるエネルギー波『エクスレイザー』。
夕陽が雲に隠れる。
「秀知院学園の……、現生徒会の面々であってるよな?」
「……ああ」
扉越しに聞こえる彼の『初めて聞く声色』が背筋を凍らせる。
彼の目の前にいるのは、やっぱり『あの』学園の生徒会の人達……、でも、なんであんなに……、
「なんのようだ? 俺とお前らに関係はなかったはずだが……」
「「ーーーーッ!?」」
思わず息を呑んだ。
関係ないはずの人が、彼を探していた……そして、彼曰く、四宮や四条の手駒……?
(でも、えっ、あれ?)
さっきの制服を着ていた少女はなんて言ってーーーー、
「『あなたがいなくて会場が混乱してる』って、かぐやさんが言ってましたっ!!!」
「「ーーーーッ!?」」
かぐや、さん?
突然な名前も知らない女の人が彼を探してるって聞いて、胸が少しだけざわめいてしまう。
((おい、藤原(先輩)っ!?))
……あれ?
「……へえ」
(あれ、どう見たって怒ってるよ)
(そりゃそうだ! 会った時から機嫌がかなり悪かったですもんっ!?)
彼の声は聞こえてくるけど、彼らが何を言ってるのかよく聞こえない。もう少し、もう少しだけ……っ、彼が用意した着ぐるみをどけてドアに耳を当てる。
「なんで、途中で会場遠抜け出しちゃったんですかっ!?」
(ーーーーッ!?)
((聞きやがったぁーーーーっっ!?))
会場を、ぬけだ……えっ?
「用事があったから、……『無駄な時間』は取りたくないんだ」
ーーーーッ、もしかして、私の為に大事な用事を抜け出して来てくれたのっ!?
(うれしい、うれしいんだけど……、なんか、何か、何かおかしーーー)
「無駄な時間? 《《かぐやさんと眞妃ちゃんの許嫁なのに》》』?」
(ーーーーえっ?)
いいなずけ?
(マナト、いいなず……け、がいた?)
頭が混乱してる。
大好きな、目の前にいる大好きな友人に許嫁がいることをはじめて、はじめて知った。
「許嫁? なんの冗談だ?」
彼には許嫁がいて、
((ーーーーあっ!?))
彼は将来の相手がいて、
「でも、かぐやさんも言ってましたし……」
それなのに、私と、あんなーーーー、
「
「「「ーーーーひっ!?」」」
(ーーーーッ!?)
初めて聞く本気の罵声。
怒りの憎しみ、……いや、一般人の理解の範疇まで下げられた高純度の殺意は、私に向けられている訳でもないのに、思わず膝が震えてしまう。
「さっさと出てこいよ、ムシケラ……、殺してやろうか?」
「「「…………」」」
彼のその言葉が聞こえた時、ドア越しに誰かの歩く音が聞こえる。
(((なんなのこの人達っ!?)))
(なんか、足音が増えた?)
数は……3人? 彼の、彼らを囲うように人の足音が止まった。
「どーせ3人の後をつけてきたんだろ? 四宮の犬共々、さっさと消えてくれないか?」
「末堂様、早く会場へとお戻りください。皆様がお待ちです」
「知るか。さっさと失せろ、未来のゴミが」
ーーーードンッ!
ーーーーバギッ、ボキッ、ボカンッ!!!
ーーーーパァンッ! ……ゴキリ!
ーーーーグシャ、ガガガガガッ!!!
ーーーーメキョリ………ぐっ、ちゃ。
(……なんの音?)
悲鳴と息を呑む声、……あと、銃声、ドラマで聞いたような銃声みたいな音が聞こえた。
……パンッ、パン……Pi、prrrr、ピッ!
音が止んだしばらく後に、電話の着信音が聞こえてくる。
「監視カメラは? ああ、もう既にデータの改竄は最初からやってる。ありがとう、助かってるよ。あいつらだけじゃ人員不足だからな……、休暇に関しては追加で……おい、休め。お前だけで何連勤してると思ってんだ。無休どころか無給でいい? バカ言ってんじゃねぇよ。おい、……おい、……休めっつってんだよっ!!! ……切られた」
どうやら電話は彼がかけたみたいだ。部下の人に連絡を取ってるみたい……、でも、
「……で、『許嫁が』、なんだって?」
「「「ーーーーッ!?」」」
彼の頭はまだ沸騰している。
「言いたいことがないなら、そいつら連れて帰ってくれないか? 俺はこの後に大事な用事があるんだ」
「その人達って……」
ーーーーガンッ!
「
彼が普段使わないような罵倒と一緒に、何かがぶつかるような大きな音が聞こえた。彼はいったい何をしたのかな?
「ゴミって、そんな言い方酷くないですかっ!?」
「酷い、ね……何も知らない癖によく言える」
「……藤原センパイ黙っててください」
「でも、石上くんっ!!!」
「藤原も黙っててくれ」
秀知院学園の生徒会の人達は彼と話せている……話せているみたいだから、さっきの音はなっだったのだろう?
ドア越しに外の音を聞いても、よくわからないことが多すぎて……どうしようもない。
「なぜ、この方々のことを『生きる価値のない人間』だと言うのですか?」
「四宮かぐやと付き合ってるんだろ? 知らないのか?」
「俺達は知りません」
四宮かぐや?
さっき聞こえてきた女の子が言ってた『かぐやさん』? 彼の許嫁? ……らしいけど、でも、彼の言うとおりなら、四宮や四条って……、とっても悪い人達、なんだよね?
今話してる男とその人と付き合ってる……、けど、彼の許嫁? 腹が立ってきた。
四宮や四条の家の人は誠実さのカケラもない人間だということだけは、彼の話からわかってしまった。わかってしまったからこそ、ドア越しの生徒会の人達を許せないと思った。
「…………」
「…………」
「……はぁ、知らないならしょうがない」
彼が大きくため息を吐いた……、その後に何かが転がる音が聞こえる。
「こいつらは『四宮』と『四条』の私兵だ」
「……私兵?」
「ドラマとかアニメみたいな創作物で言うところの、財閥の言うことを聞くだけの『犬』って奴だ」
そんな人がなんで生徒会の人達を……、違う、彼を見つける為に彼らの跡をつけてきたんだ。
「…………」
「こいつらはなぁっ、お嬢様にっ、姉さんにっ、……とんでもないことをしてくれたんだよっ!!!」
「ーーーーっぁ!?」
何かがぶつかる音が聞こえる。
ぶつかった後に、息を吐いたようなそんな声が聞こえてきた。たぶん、彼が四宮の私兵に何かしたんだと、そう思った。
「こいつらがお嬢様を付け狙った回数を知ってるか?」
「お嬢様を『レ◯プ』しようとした回数は?」
「『EDEN症候群』になってしまったお嬢様の兄上を殺そうとした回数は?」
「銃で狙われたこともあった」
「車の運転手が殺し屋だったことも、性的に襲われそうになったことも、友人だと言った少女に裏切られたことも」
「
「「「ーーーーっ!?」」」
(ーーーーッ!?)
彼の言葉を聞いて、思わず息を呑んだ。
「なあ、なんであの『
信じられるはずがない。
彼の、彼の家族とも呼べる人物を狙った人間達を、その家族を……、彼はいったい、いったいどれだけ苦しんだ?
「38回だ」
(ーーーーぅっ!?)
それだけでわかってしまう。
「四宮がこの5年間、政略結婚や裏切り、会社の乗っ取りに殺害計画、……果ては植物状態の青年に『行為』に及ぼうとした回数だッ!!!」
「かぐやさんがそんなことするはずないですっ!!!」
「ヤッたのは両家の家族だっ!!!」
「家族だってっ!? ……それじゃあ、四宮先輩は関係ないじゃないですかっ!?」
「四宮と四条は家族を止めなかったッ!!!」
「ーーーーっ、くっ!?」
怒りに任せ、怒鳴り散らす彼の声……普段とは違う憎悪に呑まれたその声は、間違いなく、四宮かぐやの友人に向かってる。
「政略結婚が俺を含めて5回」
「会社の乗っ取りを画策したのが10回」
「親しいクラスメイトを金で言うことを聞かせたのが5回」
「レイ◯未遂………、お嬢様が4回、俺が2回、お嬢様の兄上が13回」
「俺は『救い』があると信じたかったよ」
私だって、あなたを助けたい。
「『ここ』に救いがあって、優しい世界であって、報われていて、誰かの助けを請える……そんな世界を」
でも、どうすればいい?
「『僕』は何を信じればいい?」
どうしたらいい?
「なあ、お前、……『今』、あの女が関係ないと言ったな」
「…………言いましたけど、それが何か?」
「お前、確か……、あの『連続強姦事件』の共犯者だったよな」
「……共、犯者?」
「何、シラをきってんだよ。お前が黙ってたせいで、俺達の学園にまで『被害』が広がったんだろうがっ!!!」
「ーーーーっ!?」
彼と彼らの言い争いが聞こえて、耳を塞ぎたくなるような話が続いていた。
「石上は好きで黙ってたわけじゃないっ!!!」
「
「『
「ーーーーっ、うぐっ!?」
彼をどうしたら助けられる……、そう考えて、BARの中を必死になって探す。
「俺が止めなかったら、あいつは襲われていた」
「違うっ、……僕はっ」
「なあ、俺が今なんで怒ってるかわかるか?」
「もしも、……本当にもしも『今』、『この瞬間』に俺が『カミシロ』にすら話せていない四宮や四条にとっての『大事な人物』と会っていたら……『こいつら』見ていたらどうなる?」
「
「「ーーーーッ!?」」
ーーーー見つけた。
「なあ、そこにいるんだろ。ゴキブリ共」
「……えっ?」
「「…………」」
「かぐや?」
「眞妃、ちゃん?」
突然の急展開に頭が追いつかないけど、今はこうしたほうがいい。こうしないと、彼は止められない!
「……全て聞いていました」
「……それで?」
彼の用意した『着ぐるみ』を着る。
「我が家の不始末、本当に申し訳ありません」
「知るか、謝ってもらったところで改善がなければ意味がないだろう?」
着ぐるみなんて初めて着るから、上手く着れない。
「黄光様には申し立てを行いますっ! 行いますので、どうかっ、……どうかお怒りをお納めしてくださいませっ!!!」
重い、体中に着ぐるみの重量がのしかかる。
「自分の縄張りすら『掃除』できない奴らに信用なんてあると思うか?」
エアコンが効いてた部屋が、一気に暑くなったような……ううん、着ぐるみを着ちゃったから、エアコンの風が当たってない。だから、体温がこもって体が熱くなってるんだ!
「それでもっ、それでも頭を下げることに意味は……っ」
唯一、腕と足だけは妙に『スッキリ』生足のような黒いストッキングで涼しいのに、それ以外が暑くてたまらない。速く脱ぎたい。……だけど、
「なら、質問しよう」
「『
「…………っ、それは」
あとは頭を被るだけだ。
「さあ、もう一度聞こうか」
よし、被ることができた。
外の声も、ちゃんと聞けてるから、聞けてるからーーーー、
「『
「ーーーーっ、誰だっ!?」
彼が
「ナビットくん?」
彼が首を傾げたのを見計らって、BARの中に来るように強く腕を引っ張る。
「…………」
(こっちに来て!)
(大丈夫!)
(私は大丈夫だよ!)
私は彼にだけ聞こえるように、小さな声で彼へと伝える。
(…………)
彼がそれを見て、私の手を握り返した。
「それじゃあ、次までの宿題にしておこうか」
彼は『ナビットくん』の着ぐるみを着た私に笑顔を向けた……えっ?
「
彼の朗らかな声と裏腹に、私の手は震えることしかできなかった。
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8月1日以降に出す話のアンケートについて。
7/28の20時に締め切る予定なので、よろしくお願いします。また、アンケートの票数が同じになった場合には、新規アンケートを制作して30日の夜までに締め切るのでよろしくお願いします。