産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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2016/8/22/PM08:00


『カミシロ』の運営するとあるホテルにて……。


「…………」

「マナト」

私は弟に声をかけていた。

「…………」

ここ数週間、弟の様子がおかしい。
どんなときでも上の空で、空をぼーっと見つめている回数が増えている。そう思ったら、溜め息を吐いて、仕事をし始める。仕事を抜け出す頻度も減った……どこか体調が悪いのだろうか?
そんなふうに思っていると……、先日頼まれごとをされたり……、普段とは違うことが多すぎる。

「マナト?」

「…………」

なんども声をかけているが、いまだに反応がない。いつもならすぐに反応してくれるというのに、様子がおかしい。

(…………)

……しょうがない。やはりここは思い切ってーーーー、


「マナトッッ!!!」


大きな声で弟に声をかけた。

「ーーーーうわっ、……なんだお嬢か」

……むっ、反応してくれたのはいいのですが……、

「それ、やめて下さいって言いましたよね?」

お嬢ではなく、私は彼のお姉ちゃんなのである。そこを間違えないでいただきたい。

「……すみません」

形だけの謝罪……そして、


「…………」

「…………」


再び、あのいたたまれない空気が流れ始める。

(このままではまずい)

そう思って、彼の目が私の目に合うように顔を両手で掴んで引っ張った。

「……えっと・何か用事ですか。悠子さん?」

戸惑ったようにこちらを見るマナト……、よく見ると目に隈ができている。何か悩み事があるようだ。

「どうかしたんですか?」

「……何が?」

「最近、貴方の様子がおかしいです」

「……っ、何もないですよ?」

大きく肩が揺れた。目が逸れて、嘘をついているのがバレバレである。

「…………」

じっと、ただじっと目を見つめていると……、観念したみたいで、マナトは大きくため息を吐いた。

「そんなことよりも……、この間はありがとうございました」

…………、うん。

「何がですか?」

「番組の件です」

「あの時のことですか」

先日、マナトから頼まれていた『あの件』の話ですね。
アイドルと役者を集めて、デジモンプログラム……いえ、デジタルモンスターを一般に普及させようという番組に『ユーゴ』として出てほしいというお願いでした……そして、


「『身の程をわからせてやってほしい』……なんて、突然言われたので驚きました。番組のあの内容を見たら納得はしましたが……」


マナトは友人である星野ルビーの番組内の言動を危険視して、『身の程をわからせてほしい』……と私に頼み込んだ。あの様子では、デジモンの普及にはつながらないという確信をしたという話でしたが……、

「番組のアイドル……、友人が浮き足だっていたものですから、この先にあるハッカー達との戦いの布石を打っておきたかったんです」

ハッカー達との戦いについて……ですか。

(たしかにあの戦法のままでは、この先多勢に無勢になる可能性が出てきますね)

マナトの友人の少女のことを思い出して、……とあることを思い出した。

「ルビーちゃんとブイモン……でしたっけ?」

「ルビーが何かしましたか?」

「おもしろい子達でした」

「……おもしろい?」

はい、とても……私はそう言って先日の戦いのことを思い出した。

「戦闘経験が少ないにも関わらず、進化したて……それも、初見のエクスブイモンの力を全て引き出してムゲンドラモンに抗ってきました。並のハッカー……ううん、ザクソンの幹部でもあんなことはできません」

ユーゴとしても『ザクソンの幹部に推薦したい』ぐらいの逸材……今は多少レベルが足りていないが、私がザクソンを引退するような事態になれば、彼女のような人材に任せたいとすら思えるほどの潜在能力。
あの子とブイモンは間違いなく逸材と言っても過言ではないでしょう。

「…………」

それを見つけてきてくれたマナトと、番組に出る前に確保できなかった私に多少後悔と羨望の念を抱きつつも、

「とても、……とてつもなく才能のある2人です。大事にしたほうがいいですよ」

私は弟の良き出会いを心から喜んだのであった。

「ありがとうございます」

マナトは頭を下げる。
そして、監視員から見せられたマナトに対する彼女が見せていた表情を思い出して……もしや、とそう思ってしまった。

「貴方の友人はすばらしい人ですね」

ここ一年での彼女の動きは目に見張るものがある。あの少女にも引を取らないぐらいで・

「…………?」

いずれどちらかは選ばなければならないと思いますが、あの2人であれば私も安心して任せられる気がします。

「お姉ちゃんは安心です」


「……だから、なんの話ですか?」


マナトの方を向けば、そこにいるのは『何を言っているのかわからない』とでも言いたげな『鈍感』な男の表情であった.

「…………、ああ、そういうことですか」

つまり、彼は彼女らの好意に気づいていないのでしょう。

「だからなんの話かって聞いてるんです」

「つーん」

「お嬢っ!」

「知りません。知りませんったら、知りません!!!」

「……、なんの話だよ。ほんと」

それは、こちらのセリフです!


第八話 役者チームVSハッカーチーム テリトリー争奪戦!

 

 2016/8/22/AM09:45

 

 場所は『カミシロ』のオフィス…………から、『EDEN』内のネットワークに接続して、アンダークーロンLevel.1の入り口付近。待ち合わせした2人が来たのを確認する。

 

「全員揃ったな」

 

 待ち合わせの15分前、……仕事だからか、それとも『カミシロ』の仕事だからかはわからないが、周囲を飛び回るサンダーバードモンを無視して、手元のデジヴァイスをいじって、『カミシロ』のホワイトボードがあるサーバを開いた。

 

「アーちゃ────」

 

「アクアくん、次の依頼は何に決めたの?」

 

「……むぅ」

 

 左肩に乗っているワームモンが口を開いたのと同じぐらいに、あかねが近くに寄ってきて俺のデジヴァイスを覗き込んだ。

 

「アーちゃんの邪魔だよ」

 

「そっちこそ、重たい幼虫なんだからどいたほうがいいんじゃないのかな?」

 

 首元で争う2人から目を逸らして、デジヴァイスにある依頼内容を2人のデジヴァイスへと送った。

 

「次の依頼は」

 

 

 [依頼:『ハッカー達を倒せ』

 

『EDEN』のとあるサーバ。ガスマスクをつけたハッカー達がデジモン達を使い何かを企んでいる。どうやらそのサーバでなにか怪しげな取り引きをするみたいだ。ハッカー達を倒して、怪しげな取り引き現場を押さえ、取り引きの詳細を暴けっ!!! 

 

 ・ハッカー達を倒す

 ・取り引きの内容を暴く

 

 ・報酬 

 達成ポイント 5ポイント]

 

 

「……ようやくハッカーと戦うんだ」

 

「腕がなるぜ」

 

 依頼を見て、不知火とガブモンに気合いが入ったのが見える。

 

「今までは力不足を考慮して、俺達のデジモンよりも弱い相手と戦ってきた」

 

「幼年期や成長期のデジモン達だね」

 

 そう、今までは野良の雑魚デジモンを狩る依頼ばかり受けてきた。実戦に慣れていないガブモン以外のメンツを慣れさせるつもりだった。

 

(だが、状況が変わった)

 

 先日のザクソンのリーダー『ユーゴ』との戦い。

 ルビーとエクスブイモンの戦いを思い出す。

 

 遥か上空からムゲンドラモンに食いついていく実力。

 

 チームでの作戦の立案と実行、……作戦を見抜かれたときの切り替えの速さ。

 

 ユーゴとムゲンドラモンの奥の手を引き出す胆力。

 

 最後にユーゴに認められるほどの戦闘センス。

 

 ルビーとブイモンが俺達とは比べ物にならないほど実力と経験を積み重ねている。そして、今のままではルビー達にいずれ追い付かれることを懸念し、俺とワームモンは作戦の変更を行なったのだ。

 

「だけど、ルビー達との達成ポイントとの差が思った以上に広がっていない。逆転の可能性も考慮に入れた結果……」

 

「アーちゃんは僕と相談して・強いハッカーやデジモン達と戦うことに決めたんだ」

 

 ワームモンとの相談の結果、より強いデジモンとの戦いで、戦闘の雰囲気に強制的に慣れる……これしか、ルビー達との得点の差を広げる手段はない。

 

「……ふふん!」

 

「…………っ」

 

 あかねを見て胸を張るワームモンとそれを見て、あかねの方向から少し雰囲気にトゲが見える……というか、……うん、何をやっているんだこの2人は? 

 

「俺の力だけで十分だと思うけどな」

 

「ガブモンうるさい」

 

「あいてっ!?」

 

 ガブモンと不知火は相変わらず……のようだな。俺はその光景を見て、険悪なのは2人だけなのだとそう思って……、

 

「……で、どうやってそのハッカー達のサーバを見つけるの?」

 

 不知火にそう聞かれた。

 

「それはこうやってやるんだよ」

 

 D-3を取り出して、『黄色』のデジメンタルを掲げる。

 

 

「デジメンタルアップっ!!!」

 

 [ワームモン アーマー進化ッ!!! ]

 

 

 俺の叫びと共に、ワームモンの姿が変化していく。

 

 姿勢はより鈍重になり、姿はより大きく、硬く、丸く移り変わる。

 

 背には大きな円盤が、幼虫は蛹よりも硬い鉱石の体へと姿を変える。

 

 昆虫らしく、機械らしく……SF映画から飛び出してきたようなそのデジモンの名は、

 

 

「鋼の叡智 『サーチモン*1』ッ!!!」

 

 

 機械の甲虫が姿を現した。

 

「……機械の」

 

「……てんとう虫?」

 

 あかねとルナモンが首を傾げる。

 

「こいつはワームモンが『知識のデジメンタル』でアーマー進化した姿だ」

 

 2人が指摘した通り、サーチモンはテントウムシのようなデジモン……そして、その能力はサポート特化型。

 

 

「背中のレドームで認識したデータを探して回るんだよっ!」

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 そう、背中のレドームの能力で見つけ出すことができるのだ。

 

「…………と、いうわけで、俺達はサーチモンのレドームを使って、ハッカー達を探し出す。依頼者にある『ガスマスクをつけたハッカー達』。これを『EDEN』ネットワークにアクセスして、ハッカー達の情報網から抜き出してほしい」

 

「わかったっ! ……うーん」

 

 サーチモンは唸りながら探し始める。

 

「うーん」

 

 円盤……いや、レドームが点滅するが、サーチモンの唸り声は止まらない。

 

「うーんっ!」

 

 力を入れても、何かを探しても、……まだ探して続けている。

 

「……うーん?」

 

(……これは、失敗したのか?)

 

 サーチモンの頭に疑問符がつき始めた。

 サーチモンはたしかに探してはくれているが、俺の見込みが甘かったのだろうか? 

 

 すぐに見つかるものだと思っていたのだが……、

 

 

「…………できるの?」

 

「────できたっ!!!」

 

 

 不知火が心配そうに聞いた途端、レドームが緑色の大きく光を放った。

 

「「「────ッ!?」」」

 

 ものすごい光量がアンダークーロンの中を照らしてしまう。……これは、まずいな? 

 サーチモン以外の全員がこの場で頷く。

 

「よくやった、サーチモンっ!」

 

「えへへ」

 

「それでどこにあるのかな、サーチモン?」

 

「クーロンの裏側……の近くの……、なんで言えばいいんだろう? ついてきて!!!」

 

「…………」

 

 カサカサと動き出すサーチモン。その姿はまるで……、

 

「……ねえ、あれって」

 

「てんとう虫っていうより……」

 

「いや、いい……言わなくていい」

 

「ゴキ────」

 

 

「言わないでくれっ!!!」

 

 

『黒いアレ』は思い出したくもない。思い出したくないのだ。

 

 

 

「アーちゃん、遅いよ〜〜!!!」

 

 アンダークーロンLevel.2の裏側、とあるエリアの突き当たり。そこにワームモンが立って爪を振っていた。

 

「それで、ここが?」

 

「うんそうだよ」

 

「見た感じ、どこもおかしくなさそうだけど……」

 

 ガブモンとルナモンがワームモンに聞く。

 

「ちっちっちっ、ルナモンもガブモンもそーいうところが甘いんだから……」

 

「なんだとっ!?」

 

「アーちゃんならわかるよね?」

 

 ワームモンが俺に期待した眼差しで見ている……、しかたない。壁を調べ始める……すると、

 

「…………」

 

 壁の奥の方に違和感を感じる。

 どこかの写真をペーストしたような、壁の裏側にセキュリティがしてあるようなそんな気が……試してみるか。

 

「ここ、だな」

 

『ウォールクラックLevel.2』

 

 アラタ直伝のファイアーウォール突破システム。それを壁に向かって作動させる……すると、

 

「……っ、開いた!?」

 

 違和感の正体が姿を現した。

 

「「────おおっ!?」」

 

 壁は白く光り輝いて、扉のような形に変わる。ハッカーが用意したセキュリティを突破し、本当のバックドアを見つけることができたのだ。

 

「……アクアくん、何をしたの?」

 

「セキュリティウォールが偽装されていた。そこの偽装を剥がして、ファイアーウォールをハックした」

 

(このレベルで助かった)

 

 正直に言えば、これ以上のレベルのセキュリティは簡単には俺には突破することはできないところだったので、ワームモンの期待に応えられないところだった。

 

(……しかし)

 

 どこかのサーバへと繋がる道すがら、疑問に思ったことがある。

 

(なんでサーチモンは気づくことができたんだ?)

 

 俺でも探すのに難のあるセキュリティをすぐに見つけ出したサーチモン(ワームモン)。その実力の不透明さに悩みつつも、意識を切り替える。

 

「さあ、行こう」

 

 俺達は扉の中へと入っていったのだった。

 

 

「シュコー、シュコー……、ようやく来たみたいだな」

 

 扉の先にはガスマスクをつけた変な集団が俺達を睨みつける……、しかし、どういうことだ? 

 

「……依頼にあったガスマスク集団?」

 

「我々は、……シュコー、ハッカーチーム『スチームリーマン』。この地域で商売をしている……シュコー、ハッカーチームだ」

 

 ガスマスク集団……いや、ハッカーチーム『スチームリーマン』は俺達に言った言葉を思い出す。

 

 

「『ようやく来たみたいだな』……とは、どういう意味ですか?」

 

 

 あかねが聞く。

 

(そう、俺はそこに引っかかりを感じたんだ)

 

 奴らはまるで……、

 

「我々は貴君らを……シュコー、……待っていた」

 

()()()()()()()()()()

 

「シュコー……、『カミシロ』の生放送を、シュコー……見た。我々ハッカーはあの内容に……シュコー、納得していない」

 

 スチームリーマンのリーダーらしき男が話し始める。

 

「我らはあの記者会見を……シュコー、……認めるわけにはいかない」

 

 あの生放送……それを、スチームリーマン達は納得できていない。その内容を聞いて、俺は疑問に思った。

 

(……どういうことだ?)

 

 ハッカー達が有利になるような内容であったはずなのに、なぜ彼らは────、

 

「これを見ろっ!!!」

 

 奴らは背後にある何か……、

 

 

「「「────っっ!?」」」

 

(────あれはっ!?)

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(デジモンがっ!?)/(売られているっ!?)

 

 ハッカーがデジモンを売っていた。スチームリーマンは言った。

 

「我々の商材である『デジモンプログラム』……シュコー、……それが、『人間』だったとなったら、……シュコー、我らは『人身売買』をしていることになるではないか」

 

 奴らはデジモンを売買しているのかっ!? 

 

「シュコー、『カミシロの幹部』は言った」

 

「『『カミシロ』から依頼を受けた人間が……シュコー・やってくる。とある条件に従ってそいつらを倒すことができれば撤回してやろう』と……シュコー」

 

(……余計なことを言ってくれるっ!?)

 

『カミシロの幹部』とは十中八九、マナト(タイト)のことだろう。俺達がここに来ることを見越して、トラブルを押し付けやがったっ!? 

 

(あかね)

 

(大丈夫だよ、ルナモン)

 

 檻の中に入れられたデジモンを見て気分が悪そうにしているあかねが見えた。

 

(このままだとまずい)

 

 俺は隣にいるワームモンと頷き────、

 

 

「へえ、つまりお前らを倒せばいいってわけだ」

 

 

 ガブモンが挑発的なことを口ずさむ。

 

 

「「「────ッ!?」」」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(────っ、奴らは何を驚いているんだっ!?)

 

 奴らは集まって話し始める。

 

 

「デジモンが、しゃべった?」

 

「シュコー、あのハッカーと同じ」

 

「我々の……シュコー、デジモンはしゃべらないのに」

 

「やはり、デジモンプログラムは、シュコー、人間なのでは?」

 

「それを言ったらおしまいだろうがっ!?」

 

「ただでさえ本気が出せないのに、そんなこと認められるわけないだろっ!?」

 

「……でも」

 

 

 内容はデジモンに対しての会議…………やはり、一枚岩ではないみたいだ。しかし、

 

「……落ち着け、当初の作戦通りに行くぞ」

 

 リーダーのその一言で集まっていた『スチームリーマン』達は統制し直し、いきなり走り始める。

 

(予定、だと?)

 

 リーダーの言った予定それを考えたときだった。

 

「────散開っ!!!」

 

「────っ!?」

 

 リーダーの指示のもと、リーダーを含めたハッカー達がエリア内に散らばり始める。

 

(────なんだっ!?)

 

 散らばった先、そこにあるのは何かを投射……、

 

 

(このサーバにガスマスクのホログラムが投影されたっ!?)

 

 

 ガスマスクのマークがエリア全域に投射され始める。

 

「そこのガブモンが言うように、我々を倒すことができれば、その内容にも納得しよう……しかし」

 

 どこからともなくリーダーの声が聞こえてくる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!」

 

 

(────テリトリー争奪戦っ!?)

 

 聞いたことのない言葉に、

 

 

「全員配置につけっ!!!」

 

「配置完了しましたっ!!!」

 

 

 エリア全域に動いているハッカー達の奇妙な動きに、俺達は動けないでいた。

 

「『テリトリー争奪戦』とはその名の通り、このサーバにある我らのテリトリーを、侵入者である貴君らをと奪い合う争奪戦だ」

 

「貴君らが勝利をすることで、我々ハッカーの象徴が貴君らのマークに書き換えられる」

 

「貴君らは我らのテリトリーを全部奪い取ることで勝利、我らは1つでも守り切ることができたら勝利だ」

 

 リーダーの説明となる轟音。

 

 

「さあ、始めようではないか。このテリトリー争奪戦をっ!!!」

 

 

 俺達の初めてのテリトリー争奪戦が始まってしまったのだった。

 

 

「やるぞっ!」/「────うんっ!」

 

 俺とワームモンはどんどん敵を倒していく。

 

「デジメンタルアップッ!!!」

 

 [ワームモン アーマー進化]

 

「燃え上がる勇気、シェイドラモンッ!!!」

 

 シェイドラモンへの進化……、倒されていくハッカーのデジモン達。

 

「……それが、アーマー進化かっ!?」

 

 ハッカーの隣にいるデジモンを調べる。

 

 [トイアグモン(黒)*2

 

 黒いレゴブロックのようなデジモン。それを相手に詳細な情報を引き摺り出し、答えを手に入れた。

 

(敵は成長期……ならっ!)

 

「早速倒させてもらうっ、シェイドラモンッ!!!」

 

「『フレアバスター』ッ!!!」

 

「────っ!?」

 

 俺達はエリアを次々と奪っていく。

 

 

「……この程度では、……くっ!?」

 

「エリアは奪えたようだな」

 

「あっちは大丈夫かな?」

 

 

「こいつで止めだっ、『フォックスファイアー』ッ!!!」

 

「ぐぁあああああっっ!?」

 

 ガルルモンの一撃が、色の違う歯車のデジモン達にトドメを刺した。

 

「ソーラーモン*3ッ!?」

 

 焼けこげたオレンジ色の歯車は、『スチームリーマン』の元に戻っていく。

 

「よしっ!」

 

 マークが『役者チーム』と書かれた旗に変わったことで、こちらのエリアも突破できたわけだ……ううん、

 

 

「……ちょっと強かったかな?」

 

 

 ガルルモン相手に粘られたのは痛かった。今度からは力押しはやめよう。

 

「この程度ならすぐに倒せる……けどな」

 

 どこかを心配そうに見つめるガブモン、……そこには、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ぼろぼろのルナモンが膝をついていた。

 

 

「いくよ、ルナモンっ!!!」

 

「────うんっ!」

 

 最初は倒せると思った。

 

「……うわぁああああっっ!?」

 

「……うそっ!?」

 

「残念だ」

 

 目の前に立つドロドロのモンスター。

 

「私とレアモン*4は『スチームリーマン』の中で、最も強いハッカーでね。当たるとしたら、星野アクアか不知火フリルだと思っていたんだが……役者チームの中で、最も弱い君達に当たるとは思っていなかった」 

 

「……くっ」

 

 レアモンと呼ばれたデジモン。

 それは大きなドロドロのヘドロのような姿をしたデジモンで……、その巨体にルナモンは跳ね除けられてしまった。

 

「君も災難だ。私とに当たるとは……、成長期のデジモンで相手になるわけがない」

 

 このままだと私達は負ける。

 

「デリートはしない。『カミシロ』に目をつけられたら厄介だからな……、だが、そこはどいていただこう」

 

 カツカツと音を立てながら歩くガスマスク男。その後ろに追従するレアモン。

 

(たしかに、私達はアクアくんとワームモンやフリルちゃんとガブモンよりも弱い)

 

 でも、……それでも負けたくなかった。

 

 

「私もエリアを取り戻さなくてはいけない……」

 

「……ぅうう」

 

 

()()()()()()()()

 

 

(あかねが負ける?)

 

 私のそばで震えるあかね。

 

(私が弱いせいで?)

 

 スチームリーマンのリーダーは言った。

 

 

『成長期のデジモンで相手になるわけがない』

 

 

 私は戦いが嫌いだ。だから、この戦いなんて負けたっていい。

 

(ここで負けても、削除されない……でも)

 

 削除されない……、削除されないからこそ、1つだけ1つだけ思うことがあるのだ。

 

 

「『ヘドロ』」 

 

 

 私/私とルナモン/あかねに向かって飛んでくる『ヘドロ』攻撃。

 

 

「────あかねっっ!!!」

 

「────ルナモンッ!!!」

 

 

 私達は負けたくなかった。

 

 

(負けたくない)/(負けられない)

 

 私は思い出していた。あの暗い夜の日のことを。

 

(勝ちたい)/(アクアくんの迷惑になりたくない)

 

 雪が積もるような寂しいあの日のことを思い出していだ。

 

(あかねと一緒に戦う)/(もう、2度とあんな思いは……)

 

 もうあんな思いはしたくない。逃げたくない、負けたくない、……そして、

 

 

((────勝ちたいっっ!!!))

 

 

 そう願ったそのときだった。

 

 

 [()()()() ()()

 

 

 D-3が突然光出した。

 

 ルナモンは光を放ちながら、成人女性より大きいぐらいの見た目に変わる。

 

 顔にあるのは銀の仮面、両手の拳には次の印のグローブが拳を握りしめている。

 

 ルナモンは成長し、より強く、より正しい……その姿は、

 

 

「『()()()()()*5』ッッ!!!」

 

 

 レアモンの『ヘドロ』を弾き飛ばすのであった。

 

 

「────なにぃっっ!?」

 

「この土壇場で進化しただと!?」

 

 

 スチームリーマン達が驚いている……そして、

 

 

「……ルナモンが、進化した?」

 

「……あかね、下がってて」

 

「ここからは私が戦う」 

 

 

 レキスモンはレアモンに立ち向かっていった。

 

「やれ、っ……奴を倒すんだっ!!!」

 

「ゥゥウウ、……ゥオオオオオンッッ!!!」

 

 リーダーの指示を聞き、叫びながらレアモンは『ヘドロ』の連続攻撃を喰らわせようとしてくる……してくるのだけど、

 

「……遅い」

 

 レアモンの周囲を飛び回り、紙一重でレアモンの必殺技を避けていく。

 

(すごい、あんなに早く動く巨体を……全部避け切ってる)

 

 私に当たりそうな攻撃は弾き飛ばし、あとは全部『跳ねる(よけている)』んだ。

 

「避けられる……、ならばっ!!!」

 

 

「『ムーンナイトボム』ッ!!!」

 

「『ヘドロ』ッ!!!」

 

 

「……うそだろ?」

 

 レキスモンの『ムーンナイトボム』の泡の爆発がが、レアモンの『ヘドロ』を粉々に砕いていた。

 

「レアモンはウィルス種……、データ種のデジモンにダメージが与えやすいはず……それなのにっ!!!」

 

 怒りに打ち震えるリーダー…………うん、集中が乱れたことを確認……これならって!? 

 

 

「レキスモンっ!!!」

 

「大丈夫っ!!!」

 

「跳んでっ!!!」

 

 

 レキスモンが大きく飛び跳ねる。

 

 高く、高く、高く、

 

 大きく飛び跳ねた『月のウサギ』はやがて────・

 

 

「『ムーンナイトキック』ッ!!!」

 

「────ッアっ!?」

 

 

 遥か上空から振り下ろされるレキスモンの蹴り攻撃に、レアモンを完全に貫いていた。

 

 

「「これで、終わり(だよ)っ!!!」」

 

 

 ────ずどぉおおんっっ!!! 

 

 大きな音が鳴り響いて……そして、

 

 

 [役者チームがハッカーチーム『スチームリーマン』の全エリアを取得した為、勝敗が決しました]

 

 [『カミシロ』所属役者チームので勝利になります]

 

 

 エリア全域に広がる『D-3』からの決着伝達。

 

「勝った……、勝ったんだよ、あかねっ!!!」

 

「やった、……やったよ、ルナモンっ!!!」

 

 私達はようやく進化することができた。ようやく2人に追いつくことができたんだ。

 

「よくやったな、あかね」

 

「あかねちゃん、がんばったじゃん」

 

「アクアくん、……フリルちゃんもっ!?」

 

 2人が駆け寄ってきてくれて……褒めてくれた。

 

「へえ、まさか進化するとは思わなかったな」

 

「レキスモンに進化おめでとう!」

 

「これであなた達に並ぶことができた。今度は私達が追い越す番だよっ!」

 

「……いってろ」

 

「楽しみにしてるねっ!」

 

 ルナモンも他の2人と同じように笑っている。

 

 

「私が、……私達が負けた?」

 

「……リーダー」

 

「……あれが、『カミシロ』の少年が言っていた『D-3』の力?」

 

「あれが一般に流通すれば我々の商材……いえ、負けた時点でその話は無かったことになりますね」

 

「デジモンプログラム……いや、『デジタルモンスター』、か」

 

「我らの認識は間違っていたのでしょうか?」

 

「それはまだわからない……しかし」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「依頼を達成したことで、ポイントが振り込まれた」

 

 達成ポイントの確認する。

 

「合計15ポイント……、累計25ポイント。次は何を買うべき、か」

 

 達成ポイントを何に使うのか考える。ルビー達は相変わらずデジメンタルを買っていないようなので、まだ選びたい放題だ……しかし、

 

「新しいデジメンタルを勝った方がいいって!」

 

 あかねが突然そんなことを言った。

 

「……いいのか?」

 

 2人に利点があるものを買った方が……、

 

「テコ入れにもつながる。それに新しい進化は……、イケメンの『デジメンタルアップ』はテレビで映える」

 

「……そう、なのか?」

 

「勇気と知識、……次は誠実なんていいんじゃないかな?」

 

「希望の方がぜぇ──ーったいいいと、思うなっ!」

 

「光……、他の感情みたいなデジメンタルとの違いが私は気になるかな」

 

 みんなの意見を聞いて、ワクワクとデジモン達がデジメンタルを選び始める。

 

「……それじゃあ俺は」

 

 俺はその中から1つだけ、デジメンタルを選ぶのだった。

*1
レベル:アーマー体 タイプ:昆虫型 属性:フリー種 必殺技:『ジャミングヘルツ』

 “知識のデジメンタル”のパワーによって進化したアーマー体の昆虫型デジモン。“知識のデジメンタル”の影響で“知りたがる”習性を持っており、背部に付いているレドーム(レーダー)で情報の収集と、索敵を行う。サーチモンにかかればどんな小さな物音や振動でも敵の存在を感知し、また情報を収集されてしまう。必殺技は背部のレドームより相手を錯乱させる電波を放ち、錯乱状態にさせてしまう『ジャミングヘルツ』。

*2
レベル:成長期 タイプ:パペット型 属性:ウィルス種 必殺技:『トイフレイム』

 黒く染まったトイアグモン。ネットワーク上でコンピュータウィルスに侵され、子どもをイジメるオモチャになってしまった。必殺技は、炎型のミニミサイルを発射する『トイフレイム』。レベル:成長期 タイプ:パペット型 属性:ウィルス種 必殺技:『トイフレイム』

*3
レベル:成長期 タイプ:マシーン型 属性:ワクチン必殺技:『シャイニーリング』

 機械系デジモンの珍種らしいマシーン型デジモン。研究者の間では突然変異のハグルモンではないかと言われているが、真相は謎である。「電脳核」が発熱しているせいで、ヤケドするほどボディが熱くなっている。必殺技は、高熱を発する歯車を投げつけて敵を焦がす『シャイニーリング』

*4
レベル:成熟期 タイプ:アンデット型 属性:ウィルス種 必殺技:『ヘドロ』

 全身の筋肉が腐り落ちたアンデッドデジモン。体を機械化することで生き長らえようとしたが体が安定せず、体を構成するデータが崩壊し始めている。しかし、機械による生命を与えられているので、死ぬことはなく醜い姿のまま生き長らえている。体が崩壊しているため攻撃力や知力はなく、本能のまま行動している。全身からは悪臭を放ち、幼年期のデジモンなどは逃げ出すほどだが、成熟期まで成長したデジモンの敵ではない。

*5
レベル:成熟期 タイプ:獣人型 属性:データ種 必殺技:『ムーンナイトボム』『ティアーアロー』『ムーンナイトキック』

 驚異的なジャンプ力を身に付け、素早い動きで敵を翻弄する獣人型デジモン。月の満ち欠けのように、つかみどころのない性格をしてるが、その佇まいはどこか神秘的である。必殺技は、両手の“ムーングローブ”から発生させた催眠効果のある水の泡を投げつけ、敵を眠らせる『ムーンナイトボム』と、背中の突起から美しい氷の矢を引き抜きいて放つ『ティアーアロー』。また、空高く跳躍し、急降下キックを繰り出す『ムーンナイトキック』も強力である。





2016/8/3 AM07:00


大きな鳩の鳴き声と一緒に自然と目が覚めていく。

「……んっ、んぅんっ」

ベットから起きて、背筋を伸ばす。カーテンを開けて、朝の日差しが目に入る。
そうして私は、昨日あったことを思い出した。

(大会、楽しかったなぁ)

全国大会で優勝したこと。

彼が会いにきてくれたこと。

彼に優勝したことを見せてあげられたこと……そして、


(あの出来事)


四宮と四条、秀知院学園の生徒会が来てからのことを思い出した。

(ものすごく怒ってた、……よね?)

聞いたことのない彼の罵声と何かを壊す音……、その姿に急いで『止めないと』って思ってたけど……、あれってもしかして……?

「あれ、ラインが届いてる?」

たくさんデジラインが届いていることに気がついた。

(……部長から、他にも部員のみんな……あれ? 顧問の◯◯先生からも? お母さんからも珍しい?)

内容を確認し……えっ?

「…………、なに、これ?」


『全国大会で会った人、やめておいた方がいい』

『昨日会ったあの人たぶん怖い人だよ』

『あの人はやめた方がいいって』

『相羽さん。カミシロエンタープライズの社員を名乗る人物から学校に連絡が来ました。××部長、△△副部長並びに、バレー部員の安否を確認するもの、また、その日に貴女の友人として出会った人物から、その人物と出会ったことを他言することのないように、口止めとして各家庭に法外な金額が送られてきているようです。他言した場合の脅迫とも取れる文章が付属されており、バレー部の一部メンバーから怯えた声も聞こえてきました。
あの日、あなたはその人物……少年と帰りましたね。いったいなにがあったのか説明をしていただいてもよろしいでしょうか?』

『……カミシロの幹部……、末堂の少年からあなたの安否を確認する連絡がありました。
あなたいったいなにをやらかしたのっ!?
四宮や四条に目をつけられる可能性があるってなに? 早く説明してっ!!!』


とんでもない数の未読の内容を見て頭が真っ白になった。

「……えっ、えっ?」

昨日の夕方、彼が言っていたことを思い出して、……『カミシロ』として彼が動いたのだとすぐに気がついた。

『38回だ』

『四宮がこの5年間、政略結婚や裏切り、会社の乗っ取りに殺害計画、……果ては植物状態の青年に『行為』に及ぼうとした回数だッ!!!』

『政略結婚が俺を含めて5回。会社の乗っ取りを画策したのが10回。親しいクラスメイトを金で言うことを聞かせたのが5回。レイ◯未遂………、お嬢様が4回、俺が2回、お嬢様の兄上が13回。俺は『救い』があると信じたかったよ』


もしも、……もしもあの発言が本当だとしたら、彼は『カミシロ』として、情報の規制をして……それで、もしも私を守るために動いたのだとしたら……、それはーーーー、


(……わた、……私は) 


急いでマナトのデジヴァイスへのデジラインを開く…


(どーしたらいいの?)


どう言えばいいのかわからない。

どう返信すればいいのかわからない。

どう聞けばいいのかわからない。

私は……私は、ただーーーー、


「答えてよ、マナト」


返信ができず、ただデジヴァイスの画面を見ることしかできなかった。
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