2016/8/22/PM6:30
「ーーーーやられたっ!!!」
『EDEN』のとある一画、3人の少女と3体のデジモンは『カミシロ』のとある映像を見てそう叫んだ。
「アクア達の達成ポイントは30ポイント……、それに引き換え」
「私達は21ポイント……うーん、ヤバイねぇ」
「どうやって逆転すんのよっ、これっ!?」
今日行われた役者チームとハッカーチーム『スチームリーマン』とのテリトリー争奪戦。役者チームの勝利が勝利したことで元々あった点差がさらに広がってしまい、逆転不可能と言えるほど大きな差ができてしまった。
「…………」
そんなときでもリーダーは『デジヴァイス』を睨んで、対抗の案も出そうとはしていない。
「どーすんの、ルビーっ!? ……このままだと番組的にも白けるし、あと2、3回で1シーズン終わっちゃうよぉっ!?」
「…………」
カナが叫ぶ。だけど、やはり、リーダーは悩んだままだ。反応だってしていない。
「ルビーなんかにリーダーを任せるんじゃなかったっ!? こんなことなら無理言って私がリーダーをやればよかったっ!!!」
チームの先行きも、番組での立ち回りも、リーダーの言動も、カナにとって何もかもが不満であった。
(……リーダーは)
デジヴァイスで何を見ているのだろう? ただそれを見て、リーダーは大きくため息をついてーーーー、
「ーーーー
「「ーーーーッ!?」」
リーダーはブイモンと何かを話し始める。
「ブイモン、このままやって逆転できると思う?」
『……無理、だ。勝つんだったら、あっちがやったように、ハッカーと
「……それは、……それも『こみ』ならどう?」
「…………」
リーダーがデジヴァイスの中にあるホワイトボードを指さして、ブイモンはこちらを、というより…………、
(……私?)/(俺?)
俺の方を見て何か考えてる?
『ルビー』
あっ、すぐにリーダーの方に目を逸らした。
『やるんだったらオススメがあるんだけどさ……』
「「「オススメ?」」」
(……あれ?)
おずおずといった様子で、本当に、本当にやりたくないけど……しかたないとでもいうように、ブイモンは言う。
『ホワイトボードに掲示されてる『アレ』……、嫌がらずに受けた方がいいんじゃないか?』
「……『アレ』、かぁ」
((……『アレ』?))
リーダーとブイモンは『アレ』と呼ばれる依頼を受けるのが嫌みたいだ。
「子供の人気を狙うんだったら、『アレ』しかないよねぇ」
子供の人気があって?
『『ある意味』画面映えもするし……うん、うん』
画面映えもして?
「『……やるしかないよね(かぁ)』」
「「……ん?」」
それでも嫌がる理由はなんだろう?
2016/8/23/AM9:25
昨夜、嫌がるルビーをブイモンがなんとか説得して受けた依頼……、通称『アレ』。その依頼を受けてからあの2人は……、
「…………」/『…………』
私達の前をただずっと無言で歩き続けている。
「あいつらずっと黙ってるわね」
「依頼をやるって決めてから、……ずっとあんな感じだよねぇ」
「……不気味、だよな」
「……(なんども頷いている)」
苦虫を噛み潰したようなそんな鬱々とした表情。
目の前の依頼を早く終わらせようと早足で歩くその姿。
鬱屈とした気持ちをなんとかしようと無理やり伸ばした背筋。
昨日受けた依頼がどれだけ嫌なのか、側から見ている私達でもそれがわかってしまった。
「……にしても、なんでこの依頼を見て嫌がってるんだろう?」
MEMがルビーから送られてきた依頼のデータをデジヴァイスに表示した。
[依頼:『『EDEN』の底の異臭と子供』
『EDEN』のとあるサーバを中心に異臭が立ち込めている。子供らしき影が異臭の原因らしい……? その異臭の中心を調べると、緑とピンクの……うっぷ、これ以上は諸君らの活躍に期待しよう。報酬は他の依頼よりも増額しておくので、ぜひ詳細を調べてくれ。『カミシロ』の威信にかけて解決に奔走してほしい。
・異臭騒ぎの解決
・報酬
達成ポイント 15ポイント]
依頼の内容に比べて、ヤケに高い達成ポイントが少し気になるけど、それでもハッカーチームを相手にするような依頼ではない気がする。
(どこかの野良デジモンが、臭いを管理するシステムをハッキングした程度でしょ……それをヤケに嫌がってる)
ルビーの言動はどこかおかしい。
「達成ポイントは高いし、ハッカー達と戦うような危険もない。でも、ルビー達は嫌がってる……、謎だ」
「…………(両手を上げて首を振る)」
「ツチダルモンもそう思う? 理由がわかんないよね〜〜」
MEMやツチダルモンも同意見なようで……ん?
「MEM……あんた、いつのまにこいつと意思疎通が取れるようになったってのよ?」
MEMがツチダルモンとジェスチャーで会話をしていた。
「『ジェスチャーだけでもやって』ってお願いして、ジェスチャーの動画を見せたらなんとか意思疎通ができるようになったんだよぉ〜」
そんなことを言いながら、MEMとツチダルモンはえっへんと胸を張る。
(案外仲がいいわね)
マスコットのようなツチダルモンと、派手でポップなMEMは案外相性がいいのかもしれない。それに比べて、
「カナ、どうした?」
「なんでもないわよ」
黒川あかねとルナモンは私達よりも先に進化してしまった。私達はまだ成長期のまま……、それでいいのか、もっと努力できるのではないのかと、悶々と考えてしまう。
(こいつとは上手くいってるのかな?)
早く成熟期になるにはどうしたらいいのか……と、考えていると、
「ねぇ、そこの人達」
ルビーがとあるフードの男達に声をかけているところだった。
「……んぁ? なんだよ、嬢ちゃん達?」
「俺達が泣く子も黙る『ザクソン』のメンバーだって知ってて話しかけてんのかぁ? あ゛ぁっ!?」
明らかにチンピラっぽい見た目のハッカー達だ。
(ねえこんな人達に声をかけて大丈夫なの、ルビー?)
(こいつらが知ってるとは思えない。他を当たりましょ)
私とMEMがそう声をかけるが、ルビーはまた一歩フード頭の方へと前に出る。
「そんなのはいいから、『これ』知らない?」
デジヴァイスを開いて、たぶん中のデータを見せているんだけど……、
「あ゛ぁ? 俺達を誰だと思って嫌が……オイ」
「どーしたんだよ、マーちゃん……ァッ」
恫喝していたハッカー達の様子が変わった?
「……てめえ、本気で『ここ』にいきてぇのか?」
「……行きたくない。行きたくはないんだけど……」
「……やるしかねぇのか?」
────コクリ。
「
「アホだろてめぇら?」
「正直、そう思う」
((……?))
ルビー達の会話の意味がわからない。
今から行く場所はただ臭いだけの場所じゃないの? ハッカーがいるなら、依頼の時点で警告してるのは確認済みだし……、というか、目の前のハッカー達が恐れてるんだからそんなヤバイ場所っぽいなのだろうか?
「場所は教えてやる……、その後のことは俺達は知らねぇかんな」
ハッカー達がとあるトンネルの前まで連れてきてくれた。
「……ここをまっすぐ進めば、『例のアレ』がたくさんいる場所に着くぜ」
「ありがとね、マーちゃんさん!」
「……おう」
「がんばれよ、新米アイドル達っ!」
MEMは優しく挨拶してるみたいだけど、無言のルビーが横に立ってるから、余計に怖い。この先に何が、何が待ってるの!?
「……ここが」
着いた先は下水の処理施設のようなエリア。ところどころに『ピンク色の何か』がぶつけられたような跡があった。
「……にしても、とんでもなく臭いわね……いったいここはなんなのよ」
思ったよりも安全そうで胸が────、
(ピンクの汚れ……、やっぱり」
…………やっぱり?
「……ルビー、最初から思ってたんだけどさ。この依頼について何か知ってる?」
恐る恐る聞いてみる。
「…………」
あの無言だと怖いんだけどっ!? ……とりあえず、
「それに、このピンク色の、とっても臭い汚れは────」
ピンク色の何かに触ろうと────、
「────、触っちゃダメっっ!!!」
────びっくぅ!?
「「────ッ!?」」
突然そう怒鳴られて急いで立ち上がる。
やっぱり、『
「……この汚れはいったいなんなのよ?」
私達はルビー達に詰め寄りながら聞く。
「…………それは」
ルビー何しかめっつらでこちらを見たそのときだった。
「『×××バズーカ』ッッ!!!」
大きく飛来するピンクの塊。
「「────っ!?」」
私とMEMはそれを前にして動くことができない。
「────、避けてっ!!!」
ルビーの声が聞こえた時には既に遅く────、
「────、きゃあっ!?」
「……て、なにこれ……ただのよご……くっさっ!?」
お気に入り白い帽子にベッタリとつくピンク色の何か……、というかめっちゃ臭いんだけどっっ!?
「……うっわ」
ルビーが私達から距離を取る。
「……オイ、ルビー……なんで距離をとった?」
「ねえ、どーしてそんな顔をしてるのルビー? ものすっごく、近寄ってほしくなさそうな顔を……って、なんでさらに遠ざかったっ!?」
ピンク色の『これ』がそんなに嫌かっ!?
「……いや、だって」
「……なぁ?」
いつのまにかブイモンもルビーの隣に移動していた。
ブイモンの隣にいたMEMの頭にはピンクの塊が乗っかってて、金髪の上にピンク色のソフトクリームが乗っているようなそんな髪型になって────・
「……カナ、臭い」
「…………(MEMちょから少しずつ遠ざかる)」
コロナモンとツチダルモンが鼻をつまんで私達から離れたっ!?
「「────っ!?」」
MEMの頭から、私の帽子にベッタリとつくピンクの塊。それを落とそうとしてもベッタリついて帽子や頭から離れない。
「なんなのよ、これっ!?」
「髪が、アバターでも髪が汚くなっちゃってるんだけどっ!?」
ピンク色が取れず四苦八苦している……と、
「へっへ────んっ、命中だぜっ!!!」
「やったな、ア……しょーねんAッ!!!」
「「────っ!?」」
子供の声がピンクの塊が飛んできた方から聞こえてきた。
「……見つけた」
ルビーが『D-3』を取り出した。
「俺達の技が当たったみたいだなっ!!!」
「してやったりって、奴だっ!!!」
笑顔で歩く子供……というか、小学生ぐらいの男子が10人ぐらい笑いながら歩いてくる。
『×××バズーカッ!!!』
その声の中に、ルビーが『避けて』と言う前に聞こえた子供の声の男の子の声が聞こえてくる。
(……そーいうことっ!?)
つまりは、奴らが私のお気に入りの帽子や服にベッタリと臭い『ピンクの塊』をつけた犯人だと言うことだ。
「あんた達ねっ! 私達をピンクまみれにしたのはっ!!!」
私はクソガキどもに向かって怒鳴る。
「そーだよ、俺達だっ!!!」
「俺達のバズーカで当てたんだよっ!!!」
こんのっクソガキどもっ!!!
「こんな臭いの、人に向けて撃っていいわけないじゃん!!!」
MEMも負けじとそう叫ぶ……けど、
「おもしろいからいいじゃんっ!!!」
「その反応が見たくて、俺達は攻撃……のわぅと!?」
────『
突然背後からそんな声が聞こえてきて、オレンジ色のビームが少年達に向かって放たれる。
「────あっぶなぃっっ!?」
「なにすんだよっ!?」
「容赦しないで、エクスブイモン」
「塵1つ残さないから安心してくれ……、もし、もしもルビーに当たるようなことになれば……」
再び『エクスレーザー』の構えをとるエクスブイモン。
「あの姉ちゃん達怖いんだけどっ!!!」
クソガキの1人が怯えて隠れ始めた。
「あんた達は『アレ』がどんなものかわかってて、人にバズーカを向けたんだ……、それはやられる覚悟があるってことだよね?」
「しかたがない。我ら『下水戦隊 ウンチーズ』の『下水活動』を邪魔をする奴らだっ!!!」
……にしても、
「なんだとっ!? そんな邪悪は排除しないといけないなっ!!!」
下水
ピンク
とっても臭い頭に乗ったソフトクリームの形をした何か
「『ガーベモン*1』達、出動だっ!!!」
そして、『ガーベ』という単語。
「…………」
もしかして、
「……もしかして、なんだけど」
MEMと当たってほしくない単語が頭によぎる。
「……これって」
ルビーが私達から離れた理由……それは……、
「「「
リーダーらしき少年が私達に向かって、……というより、私達の頭についたピンク色に向かって指をさしながらそういった。
「────エクスブイモン、やれ」
「女の子にウンチを投げつけるとか、ありえないだろ」
「ぎゃぁあああああ────っっ!?」
「ゲレモンッッ!? *2」
『エクスレーザー』が黄色のナメクジに当たった。
そう、当たったのだ。
(やっぱ、これウンチだったんだ)
『ウンチーズ』を名乗る子供達が現れた時から、ルビーがカナ達から離れた時から不穏だった。
(それにしても)
「……ウンチ、……ウンチにあたった。このアバター……、結構お金がかかってるのよ。服とか化粧とか、アクセにバッグに、デジヴァイスも……それなりに高品質の、超有名ブランドで揃えてたのに……お気に入りだったのに……ウンチて……ウンチまみれになったって」
……パートナーがどんどんウンチまみれになっていく。
「カナ……、早く終わらせて、アバターを洗おう」
「鼻をつまみながら言わないでっ!?」
なんとか励まそうとしたけど、怒られてしまった。臭いの我慢して励ましたのに怒られてしまった。
「この汚れ……、小学生はウンチが好きなのは、……身をもって知っては、知ってはいるけどさ……なんでルビー教えてくれなかったのっ!?」
「…………(ぐるぐると腕を回しながら、ルビーへと近づく)」
「だって、見どころになると思ったんだもん────って、危ないっ!?」
MEMさんとツチダルモンがリーダーに近づいて折檻しようとしてたけど……、あっ!?
「『ウンチバズーカ』ッ!!!」
「『ウンチ投げ』っ!!!」
「「……避けられたぁっ!?」」
「いやっ、あっちには当たってる!?」
カナのバッグがウンチが当たってピンク色に染まった。
「油断も隙もない……、カナ先輩っ、MEMちょっ! 早くあいつら倒さないと、さらにウンチを投げつけられるよっ!!!」
────びくぅっ!?
リーダーの言葉にカナの肩が大きく揺れる。その声は聞こえるのに、なんで反撃の指示を出してくれないんだろう?
「ルビーへの折檻は後にするよっ! ……ツチダルモン、全力で戦ってっ!!!」
「…………っ!」
あっちは戦い始めた。俺も早く────、
「カナ、早く戦うよっ!」
ウンチで汚れても、必死になってカナの肩を揺らし始める。
(くっさっ!?)
ピンクの飛沫がこっちに飛んでくる。
(これは俺も体洗わないと……くっさっ!?)
周囲にウンチが飛び交う大激戦が始まった。
「ウンチ、……ウンチが投げつけられる。……ウンチ、ウンチ?」
それでもカナは現実に戻ってきてくれない。
「だめだ、リーダーっ、カナがこっちに戻ってこないっ!!!」
リーダーにこっちの状況を伝えた、急いでカナの手を引っ張って、この場から離れようと動き出す。
「しょうがないな……、エクスブイモンッ!!!
そのままガーベモンを相手にしてっ、私達は他のデジモンを相手にするっ!!!」
「────わかったっ!!!」
リーダーに声が聞こえたみたいでよかった。
「ガーベモン言われてるぞっ! 成熟期なんて早くやっつけちゃえっ!!!」
「ゲレモンの仇っ!!!」
「ツチダルモンやってっ!!!」
「────『グレートウェイト』ッ!!!」
「ぎゃあああああ────っっ!!!」
MEMさんも1体デジモンを倒せたみたいだ。
「スカモンがやられたっ!?」
「この人でなし!!!」
「人でなしは、あんたらだよっ!!!」
「『ウンチバズーカ』ッ!!!」
「『エクスレーザー』ッ!!!」
ピンクとオレンジ色が飛び交う戦場。
「……だめだっ、守りながらじゃ押し切られるっ!?」
「────うわっ!?」
「……ガーベモンは完全帯だっ! 成熟期なんかにやられるもんかっ!!!」
ガーベモンが徐々にエクスブイモンを押し始める。
「かなちゃん、しっかりしてよっ!!!」
MEMの声が聞こえてくる。
「このままだとエクスブイモンがやられるっ!!!」
「ルビー、どうしたらいいっ!?」
「策はある、……あるんだけどっ! まだそれはできないから、接近戦でバズーカの向きをこっちに向かないように変えながら戦ってっ!!!」
「オーケーっ!!!」
何かを守るようにエクスブイモンが戦って、その後ろにルビーがいる。
「……カナッ、カナァッ!!!」
「かなちゃん、かなちゃんっ!」
2人の体についている『ピンク色』が見えた。
見えて『しまった』。
「
────びっくぅっっ!?
今まで出したことのないようなドスの効いた声が口から溢れる。
「
コクッ、コクッ! と、MEMとコロナモンが急いで頷く。
(じゃあ、あいつらが犯人か)
ピンク色の汚い『ウンチ』を投げるデジモンと、それを指示をするクソガキを見て、頭に血が昇っていくのを感じる。
(……そういえば)
「黙ってたのは、ルビー?」
「うん、うんっ!」
ルビーはまだ『ピンク色』に染まってないよね?
「……コロナモン」
「────はっ、ハイッ!!!」
ズルい、ズルい、ズルいズルいズルいッ!!!
「
[
白とオレンジのD-3が光出す。
赤い体はより獣に近く、
額の兜は身に纏う鎧へ、
立髪は炎のように金色に光り照らす。
獣はケモノとして、より太陽のように『燃える炎』となって地をかける……コロナモンが進化したその姿は、
「『
紅蓮の獅子へと進化したのだった。
「ふーっ、ふーっ!」
息が荒立つ。目の前の『クソガキ』を倒せと怒りに燃える。
「……うっ、うん……かなちゃん。怒るのはいいんだけどさ。相手は子供なんだし、もう少し手加減してあげても……」
────ギンッ!
「────いっ、いえ、なんでもないですぅっっ!!!」
MEMは黙らせた。……あとは、
「ファイラモン」
「はっ、はいっ!」
「全部デリート、よろしくね?」
「いえすっ、まむっ!!!」
「それと……」
「あっ、あの姉ちゃん……デジモンを進化させたぞっ!?」
「じゃあ、あれがにいちゃんの言ってた『D-3』?」
「あいつらを倒せばアレが手に入るってことだろ?」
「早くあいつら倒そうぜ?」
「……というかあの姉ちゃん」
「めっちゃ怖いんだけど」
「なぁ、ア……しょーねんA。ガーベモンと一緒にあっちと戦ってくれない?」
「無理だよ、あの姉ちゃんのデジモン……すっげえ強えんだよっ!? 進化の違いなんてものともしないんだ、あのデジモンっ!?」
「うっそ、ア……しょーねんAとガーベモンでも倒せないのっ!?」
「リーダー達で倒せないなら、もう勝てないじゃんっ!?」
「しょーねんHなんとかしろよっ!!!」
「俺とスカモンはあんな奴らの相手なんて嫌だぞっ!?」
「俺だってゲレモン倒されちゃったんだぞっ!!!」
「俺のカラツキヌメモン*4怯えちゃってるし……」
「やだよ俺、あんな怖い姉ちゃん戦いたくないよっ!?」
「いいからさっさとかかってきなさいって言ってんのよ、このクソガキどもっ!!!」
「「「────ひえっ!?」」」
「あんたら全員、私とファイラモンでぶっ倒してやるっ!!!」
「『ファイラボム』ッ!!!」
ファイラモンの火炎がクソガキどもの足元に爆裂する。
「あの姉ちゃん、本気で撃ってきやがったっ!?」
「しょーがない、やって、スカモンっ!!!」
「いけ、スカモンキング*5っ!!!」
「カラツキヌメモン、早くそいつらをやっちゃってっ!!!」
動き出すウンチを投げるデジモン達。だが、もう遅い。
「『エクスレーザー』ッ!!!」
「ぐぎゃあああああ────っっ!!!」
「ガーベモンっ!?」
ルビーがあちらを片付けた。
「あっちゃんが……あのあっちゃんがやられた」
「どーしよう、俺達の最高戦力が負けちゃったよ〜〜っ!?」
「それで、あの姉ちゃんは?」
クソガキどもが嘆く。
「殺す、絶対に殺してやる」
「すぐに倒しちゃって、エクスブイモン」
私とルビーの指示によって戦線は瓦解した。
「うわぁあああああん、もう戦いたくないよ〜〜っ!」
「ごめんなさい、ごめんなさいっ! もうしないので、許してくださいっ!!!」
「助けて、カーチャンっ!!!」
────ズガァアアアンッッ!!!
[アイドルチームがハッカーチーム『下水戦隊ウンチーズ』のデジモンを全て戦闘不能にしたため、勝敗が決しました]
[『カミシロ』所属アイドルチームの勝利になります]
依頼達成のアナウンスが『D-3』から流れ始める。
「勝ったな、ルビー」
「うん、そうだね、エクスブイモン」
危うくウンチに当たるところだった……、そう思いながら、服のシミを確認していく。
(ウンチが当たってたら大問題だからね)
ようやく勝つことができたし、しばらくは達成ポイントのことを考えなくてよくなった……そして、
「とりあえず……、あっ」
「勝ったことでポイントが手に入ったし、さっそく『ミラクル肉』を────」
「
背後からドスが効いた恐ろしい声が聞こえてくる。
「ばいせん?」
振り返るとそこには花が舞うような笑顔のパイセンが……、いや、アレは間違いなくキレてる。頭に青筋が何本も立ってる。
「これはいったいどーいうことかしら?」
ところどころピンク色になった悪臭のする服を見せながら、『どういうことか』と聞かれた。
「なんのことでしょうか?」
思わず敬語になってしまった。
「私は『あんたは敵のこと知ってたくせに、なんで教えなかった』って聞いてんのよっ、このバカっ!!!」
あっ、この人、ウンチに当たったんだった。
「だって、パイセンのデジモンはいくら経っても進化しないし……パイセンもなんか感情にストッパーがかかってるみたいだし……、怒らせて進化できたら、それはそれで番組的にも見栄えが良くなるし、それでいいかなって────」
────だん!
「言いたいことはそれだけかしら?」
大きく足を鳴らす先輩。
「すみませんっしたぁ!!!」
私はすぐに謝った。
「殺す」
「謝ったじゃん、許してよっ!!!」
「それが人に謝る態度かぁっ!!!」
「……というわけで、あの様子を見て君達はどー思ったかなぁ?」
「人にウンチを投げちゃいけない」
「人にめーわくをかけないっ!」
「あやまるときはちゃんと『ごめんなさい』っていう!」
「そう! ……じゃあ、次に君達が何をするべきかはわかるよね?」
「「「ウンチは人に投げません。めーわくかけてごめんなさいっ!!!」」」
「よしっ、ちゃんと謝れてえらいっ!」
(……それに引き換え)
子供達に指導を行いながら、私は『彼女達』の方を見る。
「エクスブイモン、逃げるよっ!!!」
「おう!」
「ファイラモン、あいつを地の果てまで追いかけて」
「…………はい、わかりました」
(あの2人は何をやってるんだか)
デジモンまで自分達の追いかけっこに参加させて、『EDEN』の中を逃げ回る/追いかけ回す2人の様子に溜息が出てしまう。
「みんなはあのお姉ちゃん達みたいにならないように生きようね!」
「「「────はいっ!!!」」」
※この映像はのちにこの話のオチに使われました。
デスクトップ上にあるゴミ箱自体が生命を得て進化したミュータントデジモン。データのカスが突然変異をおこしたスカモンとは違い、ゴミ箱自体がこのデジモンである。今まで最弱と言われていた汚物系のデジモンではあるが、このガーベモンの出現により、その常識は一変するだろう。また、このゴミ箱はブラックホールのようになっており、このゴミ箱に吸い込まれたものは、デジタルワールドから跡形も無く消去されてしまう。必殺技は空き缶を繋げて作ったバズーカから発射される最悪の攻撃『ウンチバズーカ』。
ヌメモンと同種の軟体型デジモン。攻撃力は低いが、その割に凶暴で誰が相手でも襲い掛かる。当然のごとく返り討ちにあうが、すぐに忘れてしまい、その度に何度でも強敵にケンカをしかけるこりないヤツである。必殺技は、キョーレツなニオイを身体中から撒き散らす『ハイパースメル』
“空を翔る獅子”と異名をもつ獣型デジモン。デジタルワールドのとある遺跡を守護しており、面倒見の良いリーダー的な存在でもある。必殺技は、全身に炎をまとい、上空より急降下突撃をする『フレイムダイブ』と、炎をまとった強靭な前足で敵を引き裂く『ファイラクロー』。また、額に全身の力を集中させた火炎爆弾『ファイラボム』を放つ。
ヌメモンが身を守るために知恵を使って探し当て殻をかぶっている甲殻類型デジモン。そのためヌメモンよりも頭が少しだけ賢いが、ちょっとしたことでも驚き殻に閉じこもるほど臆病な性格にもなっている。殻に閉じこもった時の防御力は非常に高く、踏まれても蹴飛ばされても頑丈である。必殺技は、殻の中に体を隠して殻ごとぶつける「シェルズアタック」と、殻の中に溜め込んだウンチをこんもり投げる「熟成ウンチ」。
“ダストキングダム”と呼ばれるゴミ溜め場を治めるスカモンの王で、そのサイズはギガ盛りだ。王冠の様な物をかぶり知性が高く、ウンチを投げる以外にも力技で攻撃してくる。必殺技はお馴染みの卑怯技『ウンチ投げ』と、ハイジャンプ後に勢いよく落下してくる『キングスタンプ』。『キングスタンプ』を食らうと身体的にも精神的にもダメージは計り知れないと言われている。
「行かない方がいい」……って、
部長から聞いた。
「会っちゃだめだ」……って、
副部長から聞いた。
「彼の周りで行方不明者が何人も出てる」……って、
顧問から、部員のみんなから、あの大会にいたクラスメイトから、……『危ない人だよ』って聞いた。
なんどもなんども、なんども友人から会うのを止められた。母さんも会うのはやめておいたほうがいいって言った。
(……でも、)
市役所に行った。
『えっ、マナトくんのお友達なのっ!? マナトくんに関して、ボランティアでのこと聞きたいって!? いいわよ、聞いてきなさい。お姉さん休憩中で、ぜんっぜん暇だから話してあげるわっ!!!』
障害者支援施設に行った。
『あの子のこと、……うんとても良い子でした。最近は家の事情で当施設に来る機会は減りましたが、よくボランティアでマジックを利用者の皆様に見せてくれたことを覚えています』
介護施設に行った。
『今時の若い子には珍しく、あの子達はわざわざこんな施設にまできてくれてねえ……、いろいろと噂もあるみたいだけど、良い子達だったよ。お友達はちょっとスケベなのはだめだったけどねぇ』
◯◯駅に行った。
『あの中学校の子達だろ? 最近は見てないけど、事件の前からここらへんの掃除をやってくれてたんだよ。同級生があんな事件を起こすなんて、子供もピンキリだよ、本当に』
保育園に行った。
『お姉ちゃんっ! まなとお姉ちゃんの友達なの!?
次いつ来てくれるか知ってる? また遊びに来てって、お願いしてっ! 絶対だよっ!!!』
……最後に、
『……あいつの話か。
学力もいいし、運動だってできる。実際に飛び級制度があるんだったら、すぐに高校にあげたいぐらいの問題児だよ……本当に、やってることは正しい、正しいんだけどなぁ。少しは授業を聞いてくれとは思うけどなぁ』
彼の学校に行った。
全部、全部私が調べた。
私が調べて、私が実際に聞いて、私が彼のことを知りたいって思った……そして、
(私は彼を信じたい)
そう思えたんだ。
電話を鳴らす。
彼の着信音……、子供っぽい、アニメのような夢と希望に溢れた、どこか懐かしい歌が聞こえる。
「……ねえ」
私は言う。
「今日はどこで会える?」
だから、私は日常を歩むのだ。