産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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2016/10/24 AM9:27


『お願いします!!!』


約一ヶ月前、デジモンカイザーとの戦いの後……、私は『カミシロエンタープライズ』社の前でとある人物に頭を下げていた。

『……MEMちょさん、困ります』

黒い長い髪の美女……、末堂愛人の側近であるシキさんに頭を下げ、懇願する。

『どうしても、どうしてもツチダル……、ララモンと番組をなんとかしたいんですっ! コロナモン達を助けたいんです! マナトさんに会わせてくださいっ!!!』

『お願いしますっ!!!』

私は何度も何度も頭を下げた。


『…………少し、お待ちください』


その結果が、何か悩むような、私の行動に折れたのか……、どこかへと電話をかけるシキさん。

『……マナト様、実は』

ーーーーッ!?

『はい、はいっ、そういうことがありまして……、はいっ、……そちらもですか?』

シキさんは本当にマナトさんに連絡をしてくれたみたいだ……、

(……そちらも?)

電話から聞こえてくる大きな音。マナトさんが言った言葉に『そちらも』と言ったシキさん。私と同じように頭を下げた人がいたのだろうかと思案する。

『……『おもしろい』ですか、この件に関しては……、はい、もちろん私に……っ、任せていただきありがとうございます!!!』

うーん、どういうことだろう? と考えていると……、

『…………』


()()()()()()M()E()M()


『ーーーーッ!?』

シキさんに突然声をかけられ、

『マナトさんに会わせていただけーーーー』

『自惚れるな、マナト様は来ない』

『ーーーーですがっ、』


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


この一ヶ月地獄だった。

『私はかつてとある軍の教官をしていた』

シキさんは倒れる私とフリルちゃんに向けて、話し始める。

『マナト様が来る前まで、訓練兵をある程度戦える『壁』を作るのが私の仕事だった』

『ーーーーッ!?』

『ら、ララモンっ、!?』

息絶え絶えで聞く中、ララモンが蹴られたのが見えた。

『立て、休憩は終わりだ。時間がないのだろう? 『ある程度』まで鍛えてやる。死ぬ気で抗え』

……その成果が、


「MEMッ!?」/「不知火ちゃんっ!?」

背後から2人の声が聞こえてくる。

(今ここにある)

驚いた声を聞いて、ムーチョモン博士の『最悪の予想』を上回ったことを確信した。


『本来であれば休む間もなく追撃をするのは必然……、一月も奴に猶予を与えるなぞ論外と言いたいでありますが、こちらの戦力も瓦解している』

『使える人材は皆無……、ルビー殿とアクア殿のお二方とそのパートナーで決着できれば幸いでありますが……、それは幸運に賭けすぎるのであります』

『であるならば、最善手は2の策、3の策と隠し札を用意しておくもの……、貴殿らには負担をかけるのでありますが、どうぞよろしくお願い致すのであります』


ここを出る前、教官に言われたことを思い出す。


『究極体になったとは言え、戦法を『逃げ』に特化したお前達のデジモンは時間稼ぎしかできない。背後にいる2体に期待しろ』


時間稼ぎしかできないのは理解している。だけど、今まで頑張ってくれた2人に更に期待をしなきゃいけないなんて、年長者として恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。

(MEMはやることはわかってる?)

(わかってる、わかってるよ。フリルちゃん)

そんな気持ちを察してか、フリルちゃんが私に釘を刺した。

(私達らしく、全力でいくよ)

(その通りだわ。メムッ!!!)

(…………)

……慣れない。


『アイドルのデジモンが無口だとっ!? ふざけるなっ!!! 声を出せ、演じろっ!!!』

『……っ!』

『声を出せっ!!!』

『……いっ!』

『もっとだっ!!!』

『はいっ!!!』

『騙せ、演じろ、生き残れっ!!! 
貴様程度、歯牙にも掛けぬ存在がこの世界には山程いるっ! そいつらを騙せる道化に成れ』

『他者を騙し、隙を作り、油断させ、首を狙えっ!!! それが貴様のパートナーの仕事だっ! 長い歴史の中、性的な魅力で有象無象を騙し、時代を越えるたびに踊り子やら道化やら名前を変え、他者の欲望を満たすと同時に他者の懐にある金を貪る蛆虫未満の職業それが『アイドル』だっ!!!』

『ーーーー違うッ、メムがしてるのは夢を与える仕事だっ! お前に好き勝手言われる筋合いはないっ!!!』

『……ふむ、では証明してみせろ。私に力を認めさせ、『違う』ということを見せつけてみろ』

『うぉおおおおおおーーーーッ!!!』

『怒りだ。それが、貴様のパートナーの命を守る手段になるっ! 甘えてる暇なぞ与えるつもりはない。何度も言おう。『死ぬ気でかかってこい』ッ!!!』


度重なる(人格矯正の)修行の末、無口だったララモンがオカマキャラになった。何を言っているのかはわからないが……、現実としてそこにキングエテモン*1が存在していた。

(慣れるはずがないよっ!?
なんで、なんで嬉々としてムーチョモン博士が人格矯正に参加してるのっ!? てか、このアイデアを採用したの誰っ!? ……どーしてこーなったっ!?)

アレ、誰? ……みたいな顔で、アクたんもルビーもキングエテモンのこと見てるし、いったいどーすりゃいいんだっ!?


「2人ともキングを冠するデジモンのデュオライブの引き立て役……、頼んだわよっ!!!」

「いきます、いきます、いきますぞぉおおおっ!!!」


2体はキメラモンに特攻していく。

「いくよっ、MEMっ!!!」

ナイスな笑顔で私を見るフリルちゃん。

(人格矯正に参加した甲斐があった。貴重なMEMの顔が見れて最高ーーーーっ!!!)

…………ん?

…………うん?

…………うーん。







「お前のせいかぁあああーーーーっっ!?」

*1
レベル:究極体 タイプ:パペット型 属性:ウィルス種 必殺技:『サルしばい』
自称、「キング・オブ・デジモン」のエテモンの中でも、更に頂点に位置する存在といわれている究極の形態。調子にのって「キング・オブ・キングス」を名乗っている。胸に"大王"の文字が入ったサルスーツを颯爽と着こなし、スターきどりで闊歩しているが、他のデジモンたちの冷笑を買っている。必殺技は、芝居をうって相手の戦闘意欲をそいでしまう『サルしばい』。




第七話 賭けろ 新たなる力 『D-3』決死のアップデート!

 

 

「お前のせいかぁあああ────っっ!?」

 

 

 そう、怒鳴りながら不知火の背中を追うMEM。

 

(……いったい、何があったんだ?)

 

 怒りの形相で追いかける背中を見て呆然とする……、とそんな場合じゃなかった。

 

「おい、ムーチョモン博士っ、いったいこれはどういうことだっ!? なんでMEM達がここにいるっ!? なんで、見たこともないデジモ……」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「────ッ!?」 

 

 背筋を凍らせるような怒りの声。

 

 元凶を睨みつける宝石のような紅色の瞳。

 

 ルビーはそのデジモン達を見て、怒りに打ち震える。

 

「私達にはミラクル肉をくれなかったのに、MEMちょ達にはあげたんだ……詳しく説明してよ」

 

「…………『強制進化(ワクチン)』」

 

「「……は?」」

 

「デジモンを強制的に進化させる薬なのであります。『カミシロ』の研究機関で採算が取れず、失敗作として扱われていたものでありますが、緊急用のストックとして2つ残しておいたのが幸いでありましたな」

 

 俺達を見ずただただ、MEMとキングエテモン、不知火とキングチェスモンを見て悲しげにムーチョモン博士は見つめていた。

 

「最初からそれを使えばよかったんじゃないのかっ!? そうすればキメラモンにだって勝てたんじゃ────」

 

「もちろんデメリットがあるのであります」

 

 ルビーの言葉に視線が俺達へと向く。だが、俺が気になったのはルビーに振り向いたムーチョモン博士じゃない。その人……いや、そのデジモンが言った言葉に気になる言葉があったのだ。

 

「……デメリット? 全てのデジメンタルを消費して生み出す奇跡のデジメンタルや運命のデジメンタルを越えるデメリット……それって、どんなものなんだ? ムーチョモン博士」

 

 奇跡と運命……、コンゴウモンやゴールドブイドラモンを生み出す程強力な力を秘めたデジメンタル。そして、それを生み出す過程で出た『時間制限』と『2つを除くデジメンタルの消費』という大きなデメリット。

 

 その2つを越えるデメリットとはいったいなんなのかと……俺達の代わりに戦ってくれているMEMたちを見て心配になった。

 

「…………」

 

「ムーチョモン博士」

 

 言い淀むムーチョモン博士に・スティングモンは聞かせてくれと言わんばかりに名前を呼んだ。

 

 

「……1つ目は2つのデジメンタルよりもエネルギー効率が最悪……、デジモンのエネルギーをバカほど消費することがデメリットなのであります」

 

 

『エネルギーを馬鹿ほど消費する』? ……それは、

 

「あのデジメンタルよりも酷い? まさか、時間制限でもあるのか?」

 

 全てのデジメンタルを消費するぐらい強烈なエネルギーを持つ『奇跡のデジメンタル』と『運命のデジメンタル』……、時間制限があるのかと思ったら……ムーチョモン博士が首を振った。

 

「時間制限はもちろん、一度進化すれば退化できない上、デジモン達のエネルギーを根こそぎ使い、進化のエネルギーへと変換する代物……、『本来なら』アレを使った時点で十数分以内に死亡が確定する薬物なのであります」

 

(────根こそぎだとっ!?)

 

「MEMちょ達に何を使わ────」

 

 いや違うっ、ムーチョモン博士が言っていた言葉をよく思い出せ!? 

 

「待て、ルビーっ。最後まで話を聞け。ムーチョモン博士は『本来なら』と言った。そのデメリットは解消されているわけですね」

 

 ムーチョモン博士は俺の言葉に首を振った。

 

「このデメリットを『幼年期Ⅰへの退化』まで緩和するのに一ヶ月かかったのであります……、しかもそれ以外にもデメリットは存在するのであります」

 

 緩和……だが、戦うことには問題はない。

 

「……他のデメリット?」

 

 ムーチョモン博士は白衣の中から、ポインターを取り出しキングエテモンとキングチェスモンを指した。

 

「あれを見てくだされ」

 

 そこにあったのは、キメラモンと2体が戦う光景……それに何の意味が? 

 

 

「どうした、当たってないぞ?」

 

 キメラモンの大ぶりの攻撃を避けるキングチェスモン。

 

「くそっ、早く当てろキメラモンッ!!!」

 

「────ッ、グルルァアッッ!!!」

 

 キメラモンはデジモンカイザーの言葉に従い腕を振るうも、

 

 

「『サルしばい』」

 

「────っ!?」

 

 

 その軌道はキングエテモンの『さるしばい』によって引き寄せられ、体が大きくよろけてしまう。

 

「周りをよく見ろっ!? 奴らはそんなところにいるわけないだろっ!!!」

 

 響く怒鳴り声。

 

 デジモンカイザーの罵声にキメラモンは青筋を立てながら立ち上がるも、

 

「……こっちだっ!!!」

 

 今度はキングチェスモンがキメラモンの腕を飛び跳ねるように移動していく。

 

「『ヒートバイパー』っ!!!」

 

「逃げるが勝ちという言葉を知らないのかっ! 『キングダッシュ』ッ!!!」

 

 キメラモンの怒りの一撃を嘲笑うかのように飛び回り、避け続けるキングチェスモン。

 

「何をやってるんだ、キメラモンっ!?」

 

「────ッる、ルゥオオッ!?」

 

 暴れ回り、必殺技を乱打するキメラモンを相手に避け続けるキング系デジモン2体がそこにいた。

 

 

 

「……敵を翻弄しているように見えるが?」

 

 その姿を見て、俺には優勢に思えて仕方がないのだが……、ムーチョモン博士は首を振る。

 

「よく見てくだされ。キメラモンはどうなっているでありますか?」

 

(よく見ろと言われてもな)

 

 焦るキメラモンと罵声を浴びせるデジモンカイザー、翻弄する2体のデジモン。それ以外は特に……、『特に』? 

 

 

「「……、────っ!?」」

 

 

 そういうことかっ!? 

 

「息は上がってるけど、それだけだっ!?」

 

 キメラモンの息は上がっている。上がっているのだが、動きの速さはそこまで変わっていない……むしろ、どんどん動きが良くなっている。

 

(……それに比べて)

 

 それに比べて2体の動きはどんどん悪くなっている。体力が切れてきたようにしか見えない。

 

「あのままじゃジリ貧だよっ!?」

 

 そこの見えないキメラモンに対し、そこが見え始めたキングチェスモンとキングエテモン。デジモンカイザーが焦って何も見えなくなっているから優勢ではあるものの……、ルビーの言うとおりこのままだとジリ貧だ。

 

「それに見てくだされ」

 

「「────ッ!?」」

 

 MEMと不知火は2体に向けて焦ったような、心配するような視線を向けている……それはまるで、

 

「MEMちょ殿や不知火殿はわかっているのであります。だから────」

 

 やはり、俺達がやらなければいけないのか。

 

 

「「…………」」

 

 

 ルビー、エクスブイモン? 

 

「ねえ、ムーチョモン博士。スポンサーに止められて戦えないのにここにいるってことは……、対策あるんだよね?」

 

 ルビーはムーチョモン博士に向けて『対策』を……、

 

「対策だとっ!?」

 

「もちろんであります」

 

「あるんだっ!?」

 

 俺とスティングモンが驚く。

 

「私達は何をすればいいの?」

 

 だけど、ルビーはその先を聞いた。そして、ムーチョモン博士が持ってきたスーツケースを取り出し、ケースの中身を開く。

 

(────なっ!?)

 

 ケースの中身は機械であり、丁度『D-3』が入るぐらいの大きさのスペースが用意されていた。

 

「『D-3』をここに」

 

「…………っ!?」

 

 即座に『D-3』を設置する俺とルビー。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 戦場でのアップデートが始まった。

 

 

 2016/10/24 AM9:00

 

 MEMちょがシキと話す30分前……、不知火フリルは、

 

 

『…………』

 

 

 あの戦いの後、私はマナトさんにお願いして『とある場所』に招待してもらっていた。

 

『本当にいいのか?』

 

 私はベツさんの言葉に頷く。

 

『ベツさん、お願いします』

 

『……わかった』

 

『シャンバラ』、……かつて、あかねちゃんと有馬かながコロナモンとルナモンと出会った場所。

 

『……にしても、マナト様も許可を出すとはねえ』

 

 おじいちゃんに頼んでマナトさんに繋いでもらい交渉をした。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その時のマナトさんの表情はわからなかった。だけど、おじいちゃんにガブモンを返すこと、仲間を助けたいこと、力がほしいことを伝えたときには笑っていた気がする……気がした。

 

『……ガブモンはいいのか?』

 

『いいんです。元はおじいちゃんのパートナーデジモンですから、私では力を引き出せなかった』

 

 ガブモンの全力を引き出せない時点で、私とガブモンの相性が悪かったのだ。それはもうしょうがないことだ。だっておじいちゃんのデジモンなんだから、しょうがないことなんだ。

 

『だから、新しいデジモンに頼ろうってか?』

 

『……はは』

 

 彼の刺々しい言葉に思わず笑いが出た。

 

 そうだ、私はわかってしまったのだ。

 ガルルモンが倒されたあの瞬間、おじいちゃんだったらあのデジモン達を倒せたんじゃないのかって、そう思ったんだ。

 

『……早く、お願いします』

 

 強くなりたい。

 

『……本当に?』

 

 仲間を助けたい。

 

『はい』

 

 私はその言葉に頷いてボタンを押した。

 

『……は?』

 

 そこにいたのは1体の苦悶の表情を浮かべた1体のデジモンだった。

 

『…………選ばれた以上、手は貸してやろう』

 

 渋い表情を浮かべて、嫌々ながらに手を出したデジモン。

 

『私は何をすればいい?』

 

『仲間を助けたい』

 

 私は即座にそう答えた。

 

『────っ、……っ、わかった』

 

 彼は腕を振り上げ、……そして、頷いた。

 

 

 そこからはメムとシキさんに連れられ、修行の日々が始まった。

 

『やるよ、ルークチェスモンっ!!!』

 

『……』

 

 走り込みに、筋トレ、戦闘訓練……、そして、

 

『ここは『削除部隊(コマンドメンツ)』。

 マナト様が独自に作り上げた軍事訓練部隊。貴様らにはここで『セレクション-D』に向けた訓練に参加してもらう』

 

『セレクション-D』

 

 本来、コマンドラモン達がシールズドラモンに進化するために受ける特殊選抜試験。そこで私達が訓練したのは『逃走』に特化した訓練だった。

 

 

『……はあ、はぁっ』

 

『────こっちだよっ!!!』

 

『遅いっ、もっと早く走れっ! 殺されたいのかっ!!!』

 

 

 走った。

 走って、走って走り尽くした。

 

 

『────っ!?』

 

『(静かに)』

 

 ドスン、ドスン、ドスン。

 

『……ん?』

 

『(……フリルちゃん、しーっ)』

 

『(んぐぐ)』

 

 

 隠れた。

 隠れて、隠れて、隠れ続けた。

 

 

『……どうした?』

 

『……っ、問題ないであります。サーッ!!!』

 

『では、防寒具を脱げ』

 

『……、イエッサーッ!!!』

 

『表情が隠せていない。プロだろ? 極寒だろうが耐えてみせろ。仲間が死ぬぞ?』

 

『イエス、サーッッ!!!』

 

 

 去勢を張ったよ

 暑ければ寒いといい、寒ければ暑い……上官の命令に従った。

 

 

 ……その結果が、

 

 

「そのまま走ってっ!!!」

 

「『キングダッシュ』ッ!!!」

 

 今に繋がっている。

 

「何をやっているっ、その蝿を叩き潰せっ!!!」

 

 走るキングチェスモン。それを追い詰めるように戦うキメラモン。力の差は歴然だった……だけど、

 

「そうはいかないよっ、キングエテモンっ!!!」

 

「わかっているわよ、メムっ!!!」

 

 私達には仲間がいる。

 

 

「『サルしばい』」

 

「────ッ!?」

 

 

 キングエテモンの『さるしばい』によって、キメラモンの注目が強制的にキングエテモンへと移される。

 

「どうしたんだっ、どうして、そんな動きに戸惑うっ、キメラモンッ!?」

 

 デジモンカイザーにはわからない。わかるはずもない。

 

「無駄、無駄、無駄……どー頑張ったって、(わ、たぁ〜〜し)の、必殺技である『さるしばい』からは逃れることができない。たとえ、サイッキョーのデジモンだって、この演技に魅せられてしまうの、だっ!!!」

 

「必殺技、だとっ!?」

 

 キングエテモンは『さるしばい』が特殊な能力ではなく、キングエテモンの『必殺技』であると明かす。

 

「『ヒートバイパー』ッ!!!」

 

 狙いはキングエテモン。しかし、

 

「遅い、遅ーいっ!!! やっておしまい、キングチェスモン」

 

 キングエテモンも気づいている。私のキングチェスモンが、

 

 

「『チェックメイト』ッ!!!」

 

 

 キメラモンの腕を弾いていること、

 

「────のぉおおお、わぁああああ────ッ、ちょ────っと危ないじゃないっ!? もっと強く弾きなさいよっ!!!」

 

 …………に? 

 

「────っ、どぅる、ぁ?」

 

 弾いてはいるものの、キングエテモンの顔面ギリギリに『ヒートバイパー』が炸裂。キメラモンの狙いは僅か誤差50cmしか動かせていなかった。

 

「……、キメラモン?」

 

「…………?」

 

 キメラモンもデジモンカイザーも戸惑っており、出た言葉が……、

 

 

「なんだ、その弱い技は?」

 

「……命を賭けた技であるが、何か?」

 

 

「「…………」」

 

「…………」

 

 

「やれ、キメラモンっ!!!」/「『ヒートバイパー』ッ!!!」

 

「『キングダッシュ』ッ!!!」

 

 

 逃走するキングチェスモン。

 

「…………まさか」

 

 それを追いかけながら灼熱の拳で追いかけるキメラモン……そして、

 

「ははは、奴らはまともに戦える技がないぞっ!!! そのまま、追い詰めろキメラモンっ!!!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「バレちゃった?」

 

 どーしよう? 

 

「どーすんの、フリルちゃん!?」

 

「とりあえず、走って逃げよう」

 

 キングチェスモンがこちらへと走ってきて、

 

「『キングダッシュ』!!!」

 

 キメラモンを連れてきた上、さらに早い速度で逃げ出した。

 

「あっ、ずるい逃げたッ!?」

 

「ずるくない。ずるくない……、戦略的撤退、ってだけなのだ。逃げるが勝ちという言葉があるのだからずるくない」

 

 なんか、私の言葉に変な標語で自己弁護……、奴め……っ、それよりっ!? 

 

 

「『ヒートバイパー』ッ!!!」

 

「どっひゃ────っ!?」/「────うわっ!?」

 

 

 私達の後ろに巨大な腕が振り下ろされた。やばい、キメラモンの狙いがこっちに変わったっ!? 

 

「逃げるなっ、戦えっ!!!」

 

 キングエテモンが私達2人を抱えながら、キングチェスモンに向けて叫ぶ。

 

「違うよ、逃げて、戦うんだよっ!?」

 

 キングエテモンに対してMEMのツッコミが入る。

 

「……逃げて、戦う?」

 

 …………あっ!? 

 

 

「────まさかっ!?」

 

 

()()()()()っ!? 

 

 

 

 

『アップデートまで、残り5分』

 

 アップデートを始めて15分。

 その間、キングエテモンとキングチェスが稼いでくれた時間は大きい……しかし、

 

「早く、早くしてっ、早くしないとやられちゃうよっ!!!」

 

「MEM達が頑張って耐えてくれている。もう少し早くできないのかっ!?」

 

 キングチェスモンとキングエテモンの2体の火力の無さがバレて、MEM達が追い詰められ始めた。

 

「これが最大スピードでありますっ!!! これ以上やると『D-3』にデータを入れるよりも、サーバの方が壊れちゃうのでありますっ!!!」

 

 ムーチョモン博士は『D-3』に何かデータを挿入しているが、処理している内容が複雑すぎてよくわからない。というより、『カミシロ』が運営するサーバを壊れるようなデータを入れて本当に大丈夫なのかっ!? 

 

『残り3分』

 

 カウントが始まった。『D-3』はものすごい速さでデータを更新していく。

 

「不知火、耐えろ。キングチェスモン。耐え続けてくれ」

 

 振り返ると、そこには『ヒートバイパー』を必死に避け続ける2人が……マズイッ!? パートナーの方が狙われ始めた!!! 

 

『残り2分』

 

「アーちゃん、……僕達は見てるだけしかできないのかっ!?」

 

「貴殿らもアップデートしないとこの『進化』は割と面倒な手順を踏むのであります。黙っててくだされっ!!!」

 

 ムーチョモン博士は俺達に新たな『進化』をさせる為緊急アップデートをしているみたいだが……、

 

「だから、その『進化』っていったいなんだっ!?」

 

 

『残り1分』

 

 

 画面にはそう表示されているが、エクスブイモンとスティングモンの体についていたコードを抜きはじめる。

 

「よしっ、最終確認が終わったのであります……、あとは頼んだでありますぞ、2人ともっ!!!」

 

「「────俺/私っ!?」」

 

 

 投げつけられた『D-3』……そこには、

 

 

『アップデートが完了しました』

 

 

 という、待望の文字が並んでいた。

 

 

「……この進化は、ルビー殿とエクスブイモンも遭遇したことのある『進化』……かつて、2体のデジモン1つとなり、究極を超える力を手にしたものであります」

 

 

 2体のデジモンが1つ……合体するということか? 

 

「「────まさかっ!?」」

 

「「…………?」」

 

 ルビーとエクスブイモンが驚くが、俺達は話についていけない……いったいどういうことだっ!? 

 

「そのデータを『D-3』の機能のみで再現し、可能にした奇跡の力……その名も」

 

 

「『()()()()()()()』」

 

 

「土壇場でありますが、やっていただくのでありま────」

 

 ビュゥゥウウ────、と大きな風が舞った。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 上を見上げると、

 

 

「「アーちゃん/ルビーっ!?」」

 

「『ヒートバイパー』ッ!!!」

 

 

 2体の咄嗟の判断で、俺達は上空へと逃げ延びていた。

 

 

「────、温いのであります」

 

 

 ムーチョモン博士が避けて……、あっ、スーツケースが壊れた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……機材が壊れたのでありますっ!?」

 

 

 …………そんなことより、

 

「ルビーっ!? その『ジョグレス進化』ってのはどうやってやればいいんのっ!?」

 

 スティングモンが聞く。

 

「どうやってって……それは」

 

 ルビーと合流しようとしたとき、

 

 

「させるとおもうかっ!!! 

 

「────『サルしばい』」

 

「『キングスティック』」

 

 

 キングエテモンの影と複数のキングチェスモンがキメラモンの動きを翻弄し、ふたたび戦闘を始める。

 

 

「不知火っ!?」/「MEMちょっ!?」

 

「ごめん、失敗したっ!?」

 

「……失敗した?」

 

「いや、時間稼ぎは成功したのであります」

 

「……あとは」

 

 

 下を見れば、合流が完了したようで……後は、

 

 

「また、お前らか────っ!!!」

 

「────ルゥゥウウウウ、『ヒートバイパー』っ!!!」

 

 

((めっちゃ怒ってるぅううう────っっ!?))

 

 ぶち切れたキメラモンとデジモンカイザーに狙われ始める2人。

 

「奴らを先に始末しろっ、キメラモンッ!!!」

 

「くっそ、『チェックメイト』ッ!!!」

 

 どうやらあっちも時間がなさそうだ……ここは、

 

 

「おい、ジョグレス進化ってのはどうすればいいんだっ!!!」

 

「このままだと、あの子達がやられるっ! エクスブイモン早く教えてくれっ!!!」

 

 経験者らしい2人に聞くしかない。

 

「「…………」」

 

 こんなときにも下では2人が追い詰められている。キングチェスモン達が翻弄しているが、時間稼ぎにもなっていない。

 

(早くしないと)

 

(MEMちょ達がやられちゃうっ!?)

 

「ルビー、はや────、

 

 

()()()()()()()()」/「()()()()()()()()()()()

 

 

 落ち着いている2人。

 

「…………ルビー?」/「エクスブイモン?」

 

 それを見て、戸惑い……、

 

「「アクア/スティングモンはあいつのことどう思う?」」

 

 キメラモンが下で暴れている。

 

「あいつら?」/「今はそんなこと言ってる場合じゃ────」

 

 なんであいつらのことを聞いて……、

 

 

「「答えて/答えろッ!!!」」

 

 

((────ッ!?))

 

 大きな声で、なんで、そんなことを……っ!? 

 

 

「「()()()()()」」

 

 

 許せない……、それが、……まさか、鍵になるのか? 

 

「……エクスブイモン、何を?」

 

 いや、そうだ。この2人はこんな状況で無駄なことを聞く奴じゃない。

 

「────っ、スティングモン答えるんだっ!!!」

 

「……アーちゃん?」

 

 俺はスティングモンに答えるように指示を出す。

 

「俺は許せない。あいつがしたことを、今、あいつがやろうとしていることを絶対に許すことができないっ!!!」

 

「……っ、僕もあいつを許せない、これでいいのか?」

 

 俺達は答える。

 戸惑いと怒りを持ってルビーに『応える』。

 

「そう、私達は許しちゃいけない」

 

「俺達は立ち向かわないといけない」

 

 ルビー達が言う。

 

 

「「戦うんだ」」

 

「「戦う?」」

 

 戦えと、抗えと言う。

 

「戦って、勝つんだ」

 

「一緒に、戦って勝つんだ」

 

「一緒に、戦う?」

 

 エクスブイモンが言う。勝てと一緒に戦って勝てと叫ぶ。

 

「気持ちを1つに」

 

「思いを1つに」

 

 そうだ、俺達は一丸となって戦わなければならない。目の前の敵を倒す為に……これ以上被害者を出さない為に……俺達は、

 

「「……あいつを倒したい」」

 

「「俺達は/私達は」」

 

 

 

「「「「あいつに勝つっ!!!」」」」

 

 

 

『D-3』はそれに応えた。

 





「……間に合ったか」

思えばあの時、頭を下げられたのが始まりだった。一ヶ月、休暇をいただき、2人と2体の修行を手伝った。

「シキ、2人の様子はどうだ?」

「ベツ、問題はないみたいだ」

サウンドバードモンに頼んで映像を送ってもらっているが……、

「あの2人が動き出したからな。もう大丈夫だろう?」

「そーかよ」

焼いた食パンにマスタードを塗りながら、ベツは映像を見る。

「……にしても」


「我がジェネラルは何をやってるんだろうな?」


護衛もつけず、

『何、彼女らに特訓をつけてあげるの? 休暇が溜まってただろ? 休暇を取れ、休暇』

派手な音を鳴らして、

『こっちは大丈夫かって? モーマンタイ、モーマンタイ。もう終わったからさ……、こっちもなんとかやってるから大丈夫だよ』

笑う彼は、

『……切るぞ』

何をしているのだろうか?
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