許せなかった。
許せるとは思えなかった。
許そうとは思わなかった。
許さなかった。
許すつもりはない。
私はもう、こいつを許さない。
(なんだ、これ?)/(うん、そうだよ)
眩い光が2体を……いや、私達を包み込んでくる。
(これ、エクスブイモンなの?)/(ルビーこの感覚は)
そうだ、懐かしい……この感覚は……、
(ルビーの鼓動が聞こえてくる)/(懐かしい、あのときもそうだったよね?)
あのとき、そうファンロンモンと戦った……あのときに近い、……むしろ、
(エクスブイモンの気持ちが混ざり合ってる)/(初めて合体したあのとき……あの時のことだ)
むしろ、溶け合うようなこの感覚は、あの時よりももっと……もっと、……うん、
((そうだ、今))/((そう、今))
俺達は/私達は
((((戦うんだ))))
「エクスブイモン」
エクスブイモンが纏う紅の光と、
「スティングモン」
スティングモンが纏う蒼の光が交差する。
2体の光は輝き、交差し、混じり合う。
[[
竜と昆虫……2つの光が溶け合い混ざり合った。
かつて、少年が至った不完全な騎士とは違う。
かつて少女達が至った武器へと変じた騎士達とは違う。
『完全な融合』
竜の体に、昆虫を模した武装。
翼は竜でもあり方はまさしく
竜の緑力に見合う、強力な武器を身につけ、最強の甲虫を思わせる兜を冠り、戦場へと現れたそのものの名はーーーー、
「『
古き竜の戦士が降り立った。
「……パイルドラモン*1、だと?」
私達の目の前にエクスブイモンとスティングモンが合体したデジモン……、パイルドラモンが立っている。
「…………」/「…………」
パイルドラモンと目線が合う。
「やれるか?」
アクアの口から溢れた一言……、それはただの確認だった。
「ルビー、アーちゃん」
2人の声が重なって……、ううん、重なってなんていない。完全に同じタイミングで、同じ声が聞こえてくる。
「行ってくる」
そう言って、竜の羽のような翅をはためかせる……、そんな時だった。
「パイルドラモン、だと? 笑わせるなっ!!!」
耳障りな声が聞こえてきた。
「たかだか2体で合体しただけのデジモンごとき、このキメラモンに負けるわけが────」
「「
アクアと声が重なる。
聞くに耐えないその言葉を、見るに耐えないそのバケモノを、私達のパイルドラモンをよく見るべきだ。
「状況わかってる?」
「よく、キメラモンを見てみろよ?」
私とパイルドラモンがキメラモンを指差した。
「……は?」
「……る、あ?」
そこにいたのは冷や汗をかいている1体のデジモンだけだった。
(……きっと、キメラモンはわかっている)
パイルドラモンの実力を。
「ここにいる
「…………っ!?」
パイルドラモンの宣言にデジモンカイザーはみじろぐ……が、
「そんなわけないだろ。いくぞ、キメラモン…………、ここからが本当の最終決戦だっ! ────やれっっ、キメラモンっ!!!」
頭を振って、キメラモンに突撃するように指示を出した。
「…………っ」
キメラモンが少しだけ迷ったような動きを見せた後、パイルドラモンを睨みつけ突撃してくる。
「「パイルドラモンッ!!!」」
「────わかったっ!!!」
私とアクアの声が重なり、その声に応えるようにパイルがキメラモンに向かって飛んでいく。
2体の影が迫る。
ものすごいスピードで互いに向かい合い、飛んでいく2体……そして、
「『ヒートバイパー』ッ!!!」
「『エスグリーマ』ッ!!!」
キメラモンの炎を纏った腕が、パイルドラモンの腕に装着された剣が交差した。
「「────っ!?」」
2体の影が交差し、再び向かい合う。
「キメラモンと互角だとっ!?」
パッと見た感じ、どちらもその体に傷がついてないように思えた。デジモンカイザーもそう思ったんだと思う……でも、
「……違う、互角なんかじゃない」
……だけど、
「────ッ!?」
キメラモンが赤い腕の表面に大きな擦り傷ができている。
「キメラモンの腕に傷、だと……っ!?」
そこは『ヒートバイパー』の炎で強化していたはずの腕だった。
「キメラモンの『ヒートバイパー』の上から傷をつけたのかっ!?」
デジモンカイザーは驚愕の表情でパイルドラモンを見つめる。
(ああ、ようやく)
ようやくこいつの本当の恐怖を刻みつけられた。
他のハッカー達のデジモンを操ったときも、
コロナモンとルナモンを奪ったときも、
操られたコロナモン達と戦ったときも、
……全部、全部嘘だったはずだ。
「「私/俺達は負けない」」
だから、今ここで宣言する。
「「絶対に負けるつもりなんかない」」
私とアクアはこいつを倒すって、決めたんだっ!!!
「キメラモンッ!!!」/「「パイルドラモンッ!!!」」
デジモンカイザーと私達の声が再び重なった。
「────ッッ、ァッ!!!」/「いくぞっ!!!」
キメラモンは戸惑い、それを見たパイルドラモンは先手を取って動き始める。
「キメラモン、距離を空けろっ! 奴の腕に注意するんだっ!!!」
デジモンカイザーの指示が聞こえてくる。
(……なんで、距離を空けた?)
アクアが首を傾げ、小さく呟いた。
「────キキキ、ッッァ!!!」
キメラモンがその指示を聞いて、デジモンカイザーよりも後ろ……遥か後方へと飛んでいく。
「フハハッ、パイルドラモンご自慢の武器は封じたっ!!! お前らに僕を攻撃する手段なんかないんだっ!!!」
デジモンカイザーの視線の先にはパイルドラモンの腕、そこについている武器『エスグリーマ』。
(……ああ、そういう)
『エスグリーマ』を警戒して距離を空けたんだ。
「岩でも地面でも壊して、投げつけろっ! 奴に遠距離攻撃の手段なんかないっ!!!」
デジモンカイザーの得意げな声が聞こえてくる。
「……シャアッ!!!」
キメラモンが
「シャア、シャアッ、シャアアッ!!!」
何度も何度も岩が投げつけられる。
「────ハァッ!」
パイルドラモンがそれを半身をずらして避けて、翅をたたんで前に飛んで避けて、翅を使い左に旋回して避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避けて、避け続ける。
「────パイルドラモンッ!?」
背後から聞こえてくるMEMちょの声。
(……大丈夫)
心の中でそう思う。
「「パイルドラモンッ!!!」」
「わかったっ!!!」
私とアクアの声を聞き、パイルドラモンは『避けるのを辞めた』。
「ハハハっ、とうとう避けるのを辞めたぞキメラモン。追撃しろっ!!!」
「────ッ!?」
デジモンカイザーが得意げに叫ぶ。
「ルビー、何やってんのッ!?」
「大丈夫、大丈夫だよ。MEMちょ」
私はMEMちょに引っ張られるが、大丈夫。
「……勘違いしてるんじゃないか?」
「────は?」
パイルドラモンは迫る巨大な岩に向かって、『腰に手を当てた』。
「俺の名前は『パイル』ドラモンだ。自慢の武器は武器はもちろん……、こいつだッ!!!」
その腰についているのは『大砲』だと言うことを。
「『デスペラードブラスター』ッ!!!」
岩を砕く強力な弾丸。
パイルドラモンの肉体に直接取り付けられた大砲から放たれる『デスペラードブラスター』は巨大な岩を安安と貫通し、キメラモンへと迫っていく。
「────キメラモンッ!?」
「シャ、シャ、シャ、……シャアァァァァッ!?」
デジモンカイザーが避けるよう叫ぶが、キメラモンには既に弾丸の雨が当たった後だ。
「……あの2人」/「息がぴったり、だね?」
MEMちょと不知火ちゃんのそんな声が聞こえてきた。
「────くっ!?」
『デスペラードブラスター』がキメラモンに当たったことで舞い上がった砂煙から顔を隠すデジモンカイザー。
「飛べ、キメラモンっ、上に逃げて、隙を窺うんだっ!!!」
「…………」
デジモンカイザーの指示に頷くキメラモン。
「何をしている、早く飛ぶんだっ!!!」
だが、デジモンカイザーはその動きを無視して、早く、早くと急かすように命令した。
「…………」
しぶしぶと言った様子で飛ぶキメラモン。
(……あれ?)
デジモンカイザーを一瞬だけ睨んだ気がした。
「────待てっ!!!」
キメラモンに続いてパイルドラモンも空へと飛んでいく。
「ハハハ、制空権は取ったっ……これならっ!」
キメラモンは既に天井ギリギリまで飛んでいて、デジモンカイザーはその姿に喜んでいる……でも、さ、
「……で、誰の、何を取ったって?」
キメラモンの背後から聞こえる声。
「────しゃあっ?」
「……なん、で?」
キメラモンの背後にはパイルドラモンがそこにいた。
呆然とするデジモンカイザーとキメラモン。だけど、それは当然の結果だって私とアクアには思えてしかたなかった。
「あのさ、デジモンカイザー」
「なんだっ!?」
「本当に私達のこと調べたの?」
だから、その『呆然』とした理由を知りたくなった。
「調べたに決まってるだろっ!!!」
私の言葉にいらだったのか、怒鳴ってくるデジモンカイザー。
「ユーゴと戦ったときも、ハッカー達との戦いも、僕の手下にしてやったデジモン達との戦いも全部データを取ったっ! それなのになんでキメラモンのスピードがお前たちのパイルドラモンに負けているっ!?」
(……データを取った、ね)
デジモンカイザーは言った。
『ユーゴと戦ったときも、ハッカー達との戦いも、僕の手下にしてやったデジモン達との戦いも全部データを取ったっ!』……と、
(本当にわかってないんだね)
データを取っただけで、この人は本当にわかってなかった。
「ユーゴの『究極体』のムゲンドラモン相手に『成熟期』のエクスブイモンがあれだけ時間が稼げたんだよ? パイルドラモンでこれぐらい『動ける』なら、あんた達よりも早く動けないわけないでしょ?」
「────っ!?」
空を飛んで戦えるエアロブイドラモンや、ものすごい速さで空間を移動するデュナスモンに進化できていたブイモン。その経験にパイルドラモンがものすごく影響を受けている。
「…………」
キメラモンと睨み合うパイルドラモン。
「ただ上に向かって飛んでても仕方ないはずだ。純粋な速さ勝負なら俺の方が────
「『ヒートバイパー』ッ!!!」
キメラモン言葉を遮るように攻撃をした。
「────キメラモンッ!?」
もちろんそれはデジモンカイザーの指示じゃない。
(キメラモンがデジモンカイザーの指示もないのに、自分の意思で攻撃したっ!?)
パイルドラモンはキメラモンの攻撃から離れるみたいに大きく後ろへと下がって、避けてみせた。
「────っと、指示がなくても動けるんだな?」
「…………」
その姿に私やアクア、デジモンカイザーでさえも驚いていた。
「キメラモン何をやってるっ!? 僕の言うことを聞くんだっ!!!」
デジモンカイザーがそう叫ぶ。
「…………」
キメラモンはその声が聞こえないこちらにも見えるように、デジモンカイザーの方から離れるように顔を晒した。
「キメラモン、いいから僕の言うことを聞けっ!!!」
大声で怒鳴るデジモンカイザー。
(アクア)
(わかってる)
パイルドラモンがこちらへと手を振った。
(あとは任せてほしいってことだろう)
パイルドラモンがキメラモンの方へと向き直る。
「目を逸らしてるみたいだから言っておく……、あいつの指示よりもお前の動きの方が良かったぜ」
パイルドラモンは羽を開き、キメラモンへと構えをとる。
「…………ァッ」
キメラモンもその想いに応えるように、静かに4本の腕全てに火を灯した。
「決着をつけよう」
「…………」
2体の覚悟が完全に決まった。
「おい、キメラモン。何をやってるっ!? 早く敵に攻撃するんだっ!!! おい、早く、早くしろっ! キメラモンッ!!!」
サーバ内にデジモンカイザーの声が響く。
((パイルドラモン))
私は、私達はパイルドラモンに願う。
「フルパワーまで、3、2……」
「……ルゥ」
『キメラモンに勝て』って、
「『ヒートバイパー』ッ!!!」
「1」
「『デスペラードブラスター』ッ!!!」
エクスブイモンとスティングモンがジョグレスして進化した竜人型デジモン。竜型をベースにその要素を色濃く残しており、竜の持つパワーと昆虫の持つ甲殻で鉄壁の防御能力を身につけている。パワーもさることながら、俊敏な動きで敵にとどめを刺す。忠誠心が強く、主人のためには命を落とすこともいとわない。得意技は両腕の甲から伸びるスパイクでラッシュを繰り出す『エスグリーマ』。必殺技は腰から伸びている2本の生体砲から放たれるエネルギー波『デスペラードブラスター』。
「……キメラモンが負けた?」
大きな煙が舞う。
『ヒートバイパー』と『デスペラードブラスター』がぶつかりあい、……いや、『デスペラードブラスター』の弾丸に呑まれ、キメラモンは煙に覆われて悲鳴すらあげず消えてなくなった。
煙の中にいたキメラモンはその大きな巨体のデータの一片すら残らなかったらしい。『塵1つない』という言葉が似合う終わりだった。
「「パイルドラモンッ!!!」」
降りてきたパイルドラモンに向かって、俺達は走る。
「やったっ! やったよ、ルビーっ!!!」
「アクアもよく頑張ったね」
寝ている2体の幼年期を連れて、近くにいた2人も走ってきた。
「……デジモンカイザー」
デジモンカイザーの近くにわざと降りたパイルドラモン。
「ーーーーひっ!?」
怯えるような視線を向け、デジモンカイザーは後ずさる。
「ーーーーなっ!?」
「絶対に逃さないっ!」
ルビーがデジモンカイザーの後ろに立つ。
「どけよっ!」
「絶対にどかない!」
「あんたは警察に捕まってもらうんだからっ!」
ルビーに続いて、フリルが、MEMが、ログアウトを封じるため、デジモンカイザーを囲んだ。
(……そこにあったのか)
そうしている間に俺は目的のものを見つけ、デジモンカイザーへと近づいていく。
「今度こそお前も終わりだ」
逃げられないようにパイルドラモンが首に『エスグリーマ』を突きつけた。デジモンカイザーも逃げる手段がないのか、諦めて項垂れている。
「デジモンカイザー、13:09、クーロン付近の10-4区画サーバにて確保」
俺はデジモンカイザーがいつのまにか外していた又吉さんの手錠をもう一度付け直した。