「お疲れ様でした」
お姉ちゃんは疲れました。
「お願い通り、彼女達の型がつくまで待ちましたよ」
貴方の我儘をわざわざ聞いてあげたのですから、ちょっとは労って欲しいものです。
「はい、……フェイが……ですか?」
むっ、そこに気がつくとは、お姉ちゃんの努力伝わってますね!
「今回はついてくると言って聞きませんでしたから、私の方もかなり強く言明したおかげですね」
お姉ちゃんは『ザクソン』でものすっーーーーごくっ、がんばったんですよ!
下っ端はデジモンを奪われるし、メンツ潰されたのに動かないのはどーしてなんだと古参ぶるバカは突っ走ろうとするし、気に乗じてアカウント狩りを行おうとするバカを止めるのにも一苦労だし、フェイなんて暴れるわ暴れるわで……、思い出すのはやめましょう。愚痴が永遠に続きそうです……そういえば、
「……にしても、今回は彼女じゃありませんでしたね?」
今回来た下っ端風のコスプレをした伝令役は……みなみちゃんじゃなかった気がします……ん?
「新しい部下を雇った。プライベートは秘密……ですか? 奥の手という奴ですね! いずれお姉ちゃんとして、その正体を知ってみたいものです!」
弟の新しい部下とは驚きでした。
みなみちゃんじゃないのは……ちょっと、気が引けましたが、そこはなんとか、お姉ちゃんとして威厳を保たせていただきました。
「みなみちゃんは職場ではしばしば会うことがありますが……、この頃忙しいみたいでなかなか会うことができませんでしたしね。その話をするとなると……、健康そうで何よりです!!!」
お姉ちゃんとしては……弟には幸せになっていただきたい……というのが本音です。『カミシロ』の為に尽くしてくれるのはいいのですが、権力争いの為に、自分の結婚に無頓着なのはいただけません。
四宮や四条のご令嬢は……、私としてはちょっといただけないので、マナトのことがだーいすきな妹分を婚約者として紹介していただけると……むっ、この話をするには時間が足りませんね。別の話題といたしましょう。
「しかし、今回の場はフェイを抑えるのが大変でした」
本当に大変でした。
「初対面の相手にも関わらず、『ブサイク』と言わなかったのは、みなみちゃんと仲良くしてるおかげですかね。会うたびに喧嘩してるじゃないですか、あの2人」
以前、初対面のみなみちゃんに向かって、フェイは『ブサイク』と言ってしまった。
負けじとみなみちゃんもフェイに向かって、『初対面の相手にそないなこと言うなんて、
最終的にデジモン同士での抗争に……、その喧嘩のおかげか初対面では以前とは比べて落ち着いた対応をしてくれるようになったのは、喧嘩友達ができたから……なのでしょうね。
「悠子はんっ、ウチは仲良うしとらへんよっ!!!」
「おっと聞こえてたみたいです」
ソファーでゲームをしていたフェイに聞こえていたようです。
「悠子はん、誰と電話しとるんっ!? てか、絶対あいつやろっ! あいつと関わったらあかんって、前も言うたはずやろ? なんで電話しとるんやっ!!!」
フェイはあいかわらずマナトのことが嫌いですね。
お姉ちゃんとしては仲良くしていただきたいのですが……、無理なら無理でしょうがありません。こそっとまた会いに行くとしましょう。
「じゃあ、もう切りますね。また、お願いがあったら言ってくださいね。お姉ちゃんとして頑張りますから」
ふふふ、弟の我儘を聞くのもお姉ちゃんの特権ですから、……今度もちゃんと話してください。
だって、私はお姉ちゃんなんですから、ね。
頭が痛い。
「タイトひ〜ど〜い〜よ〜〜っ、僕にあんな役やらせるなんてっ!!!」
ここは現実の世界なのか? 自身の主人に向かって泣き叫ぶ黒い竜のデジモン。
「ウチも嫌やったんやからなあんな噛ませ犬みたいな役っ!!!」
頬を膨らませて怒りながらピンクの髪を揺らす少女。
「ごめんって言ってるだろ? テトじゃないとあの役はやらなかったんだ」
そして、今の自分の雇い主は笑いながらその2人を諌めて……、いや、デジモンしか諌めてないな、この人。少女の方には一切視線を向けていない。
「だとしてもひどいよっ!!! あんな消化不良耐えられるわけないってっ! それに僕はあんな弱くないっ!!!」
そんなふうに怒るデジモン……、否、テト……だったか?
「もう、いい加減、こっちむいてーなっ!」
「ごめんごめん」
そう言われ少女に雇い主は抱きつかれる。
(ああ、僕は何を見せられてるんだ)
一仕事終えたと思ったら、俺の歓迎会に呼ばれたはずなのに……、なぜか上司達のいちゃつきを見せつけられている。
「優、どうかしたのか?」
渦中の雇い主がこちらに声をかけてきた。
「…………」
来るな……、いや、来ないでほしい。
横の2人、ものすごい目でこちらを睨んできてるんだ。殺さんとばかりに睨んでくる2人を連れて来ないで……、いや、そうじゃない。今度は俺の手元を見て、……なんで、睨む視線が強くなるんだっ!? ものすごく怖いんだけどっ!?
「早く食べろ、新人。タイトのご飯が冷めちゃうともったいないだろ?」
スペアリブを齧り付きながら、睨むテト……さん。
「そーやで〜〜、はよ食わんと殺すで」
柔らかく煮てある大根を箸で持ちながら、笑顔で圧を与えてくるみなみさん。
「はっ、はいっ!?」
俺は2人に睨まれながら、急いで鯖の味噌煮をかっこ……、うまっ、なんでこんなに柔らかく煮えてるんだよっ!? 何時間も煮込んでないのに、なんでこんなに味が染みてるんだよっ!?
「2人とも……あまり、優を脅すな。あと、ユイ……例の件なんだけど、クリスマスは別の予定があるから無理って伝えといて」
こっちの鶏大根は……、大根が滲み出てこれもうまいし、こっちのスペアリブもうんっ! スパイスが効いててご飯が進む!
「ふんふーん、スペアリブ美味しいのです、ぞ〜〜…………、ハアッッ!?」
隣で上司である赤い鳥が叫んでるけど、無視だ無視……、サラダは………… やった、シーザーサラダだ! 油っぽかった口の中をレタスとトマトが口の中をサッパリさせてくれて、めっちゃうまいぞ!
「今回の件の報酬として、ウチと〜、ふ・た・り・で、『デぇートっ!』するんや。ルビーに伝えといてくれると助かるでぇっ!!!」
「…………、なんですとぉお────ッ!?」
また、上司がうるさい。
食事くらい静かに食べられないのか?
「デートじゃないって、マナトは買い物に付き合うだけだっ!」
「なんやとぉっ!」
「雑魚に睨みつけられても怖くないだよぉ」
「ミナミとギルモンは弱くないっ!!!」
「一回でも僕に勝ててから、その話はすることにしてよ」
「「ぐぎぎぎぎ」」
喧嘩もしないでくれ。
パンもうまそうだなぁ……、どれにしようかな? このパンにしよう! 中身は、マーマレードが入ってる!? てか、このパン、めっちゃバターの味がしてうまい。
「マナト殿、聞いておりませぬぞっ!!!」
「……ルビーには代わりに、正月は企画で旅行に行くからって伝えといてくれ。今回のメンバーで空いている人物にも声かけよろしく」
「正月……なら……ん? 今回のメンバー、で?」
雇い主であるマナ……タイトさんの言葉に、上司がフリーズした。
「……おい、大丈夫か?」
「だ、だだ、大丈夫、大丈夫……大丈夫なのでありますぞっ!?」
(本当に大丈夫なのか、これ?)
忘年会やら新年会の出席がどうこう……、『カミシロ』と子会社の新年の挨拶回りが……、パーティーがどうのこうのという聞いてはならない話が聞こえてきた。
(関わらないでおこう)
そう心に決め、周りを見渡す。
料理に戻るタイトさんに、こっそりチーズを忍ばせるネズミのデジモンのシンさん。
大喧嘩中のテトさんとみなみさん、ギルモン。
ワインを抱きながら寝ているマナコさん。
急いでタブレット型デジヴァイスを開いて方々に連絡を入れているユイさん。
(……にしても)
本当に俺はなんでこんな場所にいるんだ、と自問自答をしながら、一ヶ月前のことを思い出していた。
時は一ヶ月前に遡る。
「ジェネラル。件の者を捕縛しました」
「お疲れ」
「仕事が遅いですよ。ベツモン」
俺は依頼に来ていたはずだ。
「……なんだよ、これ?」
アカウント狩りを行うハッカーに仕事を依頼しにきて……、アカウント狩りで有名な保坂アキラに今、捕縛されている。
『……っ、は、ぁ゛?』
変な音が聞こえた気がするが、気のせいだろう。それよりも、周囲を見て、隙をついて逃げな、い……と?
(あれって、もしかして、裏で……、『EDEN』の、『カミシロ』のっ!?)
奴の顔には見覚えがあった。
曰く、最年少で『カミシロ』の幹部に上り詰めた謎の少年。
曰く、『EDEN』の最強ハッカーの1人として話題に上がる謎のハッカー。
曰く、『ザクソン』との繋がりがある『カミシロ』関係者。
曰く、曰く、曰く……、
曰く付き、噂になるレベルでハッカーから注目を集めている人物。
「やあ、初めまして、でいいかな? デモンズのハッカー『K』……いや、『乃木 優』くん?」
『末堂マナト』がそこにいた。
「────ッ!?」
てか、
(なんで、なんで俺のことがバレてるんだっ!?)
俺は保坂に捕まって身動きが取れない。でも、まだ、仮面はつけているはずだ。それなのに、なんで、なんで俺の正体を知っているんだっ!?
(第一、『デモンズ』を作ったのだって、まだ1週間も経ってないぞっ!? それが、バレるなんて……嘘だろっ!?)
未だに、現実とは信じられない。
俺はちゃんと逃げるルートも確認して、安全にアカウントを狩れる手段と金を用意してたはずだった。はずだったのに、バレるなんて────、
「……にしても、『友人の物がほしい』って理由で、友人のアカウントを狩ろうとするなんて、……お前、悪い奴だな」
なん、っ、で?
「ご主人様は、早くこいつをやっちゃってくださいっ!!!」
なんで、それを────、
「────っ、ちがっ!?」
俺のアカウントを破壊しようと、赤い馬のようなデジモン。
(というかっ、なんでデジモンがしゃべって……っ!?)
たしか、『カミシロ』がやっているテレビ番組のデジモン達はしゃべっていた。
(デジモンはただのウィルスじゃないのか? でも、他のハッカーのデジモン達はしゃべってないんだぞ!?)
俺はその状況についていけていなかった。だが、
「許してやれ、……この子は『唆された』だけだよ」
「────ッ!?」
俺の顔を見て、優しそうに微笑む……っ!?
(思わず目を逸らしたけど、こいつの顔めっちゃかわいいっ!?)
茶髪の髪に、翡翠に染まったくりくりの目、ぷるんと艶やかなリップ、透き通るような肌……本当に、本当に絵本の中から出てきたような美少女フェイスでこちらに優しく微笑んで……って、
────ギュオンッ!
顔に『何か』が当たった気が、気が、気が────、
「いっ、いきなり何するんだよっ!?」
末堂マナトの左足の位置がズレてる。こいつ俺の顔を蹴りやがった!?
「静かに」
しかも、俺の顔がなぜかスースーするし、てか、顔近づけてくんなっ!? ロリコンだと思われるだろうが、……しかも、
「……ハァッ!? 静かにって、お前……顔を俺は今けられ、た?」
「……は?」
「来るぞ」
俺は状況についていけてない。
いけるわけがない。
拾っただけの仮面が、黒いモヤが溢れ出し、1つの塊となって、人型のバケモノへと姿を変えた。
「
仮面は金髪の血のように赤い服を着たデジモンへと姿を変えた。
「……やれ」
瞬時に、俺を拘束している保坂の仲間である末堂マナトは冷酷な声でそう言った。
「『ビフロスト』」
「────ガハッ!?」
光の矢が仮面のデジモンの体を掠め……、掠めただけで、あのデジモンが吹っ飛んだ、だとっ!?
「……貴様ら、この俺に、こんなことをして、タダで済むと……」
なんどもなんども地面に叩きつけられながら、5回目ほどでようやく立ち上がった仮面のデジモン。
「ほらほら、逃げないと殺しますよ『ビフロスト』」
「────なに、をっ…………」
そのデジモンを追いかけ回すように、遊び始める赤い馬のデジモンに……訳がわからない。
「仮面が、仮面がしゃべって……てか、キモイ何かが仮面がデジモンになった?」
状況が飲み込めていない。
だけど、アカウント狩りを依頼しようとしてたのがバレたのはまずいっ! ……しかも、俺が狙ってる相手は、
「……で、どうするんですかこいつ?」
「ご主人様っ! こいつはなにも知らない一般人のアカウントを狩ろうなんてふてえ奴です。こいつのアカウントをこっちがデリートしちゃいましょうっ!!!」
「────ひぃっ!?」
デリート宣言された、デリート宣言された。まずいまずいまずい、逃げないとっ!?
「逃がすつもりはないから、動いても無駄、だよ」
ログアウトゾーンに行けば、それも問題……、
「この一帯のネットワークとサーバとの繋がりを遮断した。この先の逃げ場はない」
…………は?
サーバとの繋がりを遮断された?
逃げ道はない。
しかも、周囲は暴れる馬と必死に逃げ延びようとするデジモンとの戦いの途中。こいつらは、なんで、俺を逃さない。
「俺を、俺をっ、捕まえて、いったいどうするつもりだっ!!!」
思わず俺はそう叫んでしまった。
「さて、どうしましょうか、ご主人様?」
弓を動かしながら、そう言う馬のようなデジモン。
「マナコさん、……ここは俺が」
保坂が俺を捕まえる手を強める。今度は身動きが取れないように、逃げられないように、本気で捕まえにきた……これじゃ、もう、
「────待て」
子供らしいボーイソプラノボイスが響いた。
「「「────えっ?」」」
俺も、馬も、保坂も、末堂マナトの方に視線を向けた。
「乃木優くんだよね?」
末堂マナトは地面に伏せられている俺の顔に合うようにしゃがみ込む。
「────っ、そうだけど、俺に何か用なのかよっ!?」
今の俺は犯罪を依頼しようとしてきた悪人だ。それを、お前はどうし────、
「
「……は?」
突然何を言い出すんだ、こいつは?
「未来を、知ってるって……何かのジョーダンだよな?」
未来って、どういうことだよ。妄想も大概に、
「
────、
「────は?」
なんで知ってる?
「未来の君はね? 友人のアカウントを狩った後、……今度は友人の恩人に成り代わろうとした」
は?
「なに、を?」
…………こいつは何を言っている?
「罪悪感からなのか? 君の心に燻る友人への、『
「何を言っているっ!?」
こいつの妄言は、妄言は……、
「そして、果てはその信頼を裏切り」
なんで、なんで、
「
「────は?」
やめろ。
「天沢ケイスケのアカウントを乗っ取ろうとした」
俺はそんなことはしない。
「俺は、俺はそんなことしないっ!?」
あいつと俺は友達だ。アカウントを狩っても、そんなことは────、
「するさ……君は」
する訳ない。
「俺があいつの、あいつのアカウントをっ!?」
そんなことない。俺はしない。
「でも、奪おうとしたよね?」
しないはずだ。しないのに……なんで、
「ちが、……それは、あいつのあいつの持ってる物がただ、ただほしくてっ、……それでっ!?」
そう、俺はあいつのほしかった、あいつがほしかっただけで……、
「
俺は、あいつになる、なん、て?
「…………ぁ」
そういえばなんでこいつらはここにいる。
「アカウント狩りを依頼しにきた君を俺達は捕まえた」
「ぁぁ、ぁ」
「これ以上ない『証拠』じゃないかな?」
「…………」
「
「…………何を?」
「この手を取れ。誰よりも、何よりも輝ける
「なん、で……それを」
「それは」
「
「結局、あの一言に釣られて、着いてきたのはいいものの……」
唐突に言われたあの一言の手を取って、一ヶ月の修行で俺のデジモンのスカルサタモン*1はデビタマモン*2に進化したし、『ザクソン』のリーダーユーゴにも顔合わせはできた。
ハッカーのヒーロー『ヴァンガード』の一歩目としては上々なのは理解してる。理解してるのだが……、
「お願いいたします。お願いいたします! どうか、どーか、説明するのに着いてきてくだされっ! このままではルビー殿に殺されるのでありますぞっ!!!」
「ごめん、ちょっとシキから電話。たぶんベツモンと同じ話だと思う」
「みなみ殿っ!?」
「いやや、殺されれば、そのつまらんギャグもおもろくなるんやないか?」
「テト殿っ!?」
「会いたくない」
「シン殿っ!?」
「ほぼ初対面なのに何をすればいいっすか? マナコにでも頼んだ方が有意義っすよ」
「マナコ殿っ!?」
「ライバルの枠が減って、めでたいですね。今度は鯛でもご用意した方がいいでしょうか、ご主人様っ!!!」
「誰も助けてくれないのでありますっ!?」
上司が情けなく叫んでいるのが、とてつもなく騒がしくてうっとうしさを感じている。
(……あれ?)
こんなにうるさい時間はいつぶりだっただろうか?
(いつも遊ぶのはケイスケだけだし、デモンズはあのロックスターの悪魔的ファンしかいないから、話が通じないしな)
ケイスケといる時間は楽しいけれど、こうやってたくさんの人と一緒に集まって、飲んで、食べて、騒ぐ……俺は今までこんなことをやってきたんだろうか?
「優、楽しんでるか?」
マナトさんに声をかけられる。
「そうですね、とっても楽しいです」
俺は今とても楽しい。それだけははっきりと伝えられる。
「今後もよろしく頼むよ」
「わかりました。俺に任せてください」
俺はマナトさんに差し出された手を強く握りしめたのだった。
強さと破壊を追い求め、ダークエリアに堕ちた堕天使型デジモンの成れの果ての姿。しかし、より悪として洗練されており、その暗黒パワーは計り知れないものがある。強大な暗黒パワーが凝縮されたデジコアは悪魔系デジモン特有の「ダークコア」と呼ばれている。必殺技の「ネイルボーン」は杖の先についた宝玉から放たれる強力な光で、デジモンのデータに異常を起こし破壊してしまう恐ろしい技だ。
デジタマモンが暗黒進化したと言われる突然変異型の究極体デジモン。デジタルワールドにおける“邪悪”の定義は、非常に難しいものがあるが、このデビタマモンはこの世界の邪悪の全てを詰め込んだ「パンドラの箱」のような存在である。見るもの触れるもの全てを憎悪の対象とし、失われた古代の高等プログラム言語による魔法を詠唱し使いこなす。その魔法効果は「破壊」以外に使われることはない。必殺技は、相手の視界を奪い精神を蝕み、そして体表面からデジタル分解していく暗黒のガスを吐く『ブラックデスクラウド』。 ※バンダイタウンFAXサービスデジモンイラストコンテストで埼玉県の「金井一真」さんのデジモンが入賞し、採用されたものです。
「…………」
デジヴァイスを取り出して、とある番号に電話をかける。
「電話ありがとう」
彼女が電話に出る。
「悠子さん……、俺のわがままを聞いてくれてありがとう」
俺は悠子さんにとあることを頼んでいた。
『お願いがあるんです』
『彼女達の活躍が終わったら、デジモンカイザーのアカウントを破壊してください』
『なんでですか?』
『ハッカーと『EDEN』との立ち位置を明確にする為です』
『『ハッカーは『EDEN』の為に動くことはあっても、『正義』の為に動くことはない』ということを知らしめたいからです』
『……それは、どうして?』
『番組の中でデジモンとハッカーが、『EDEN』というつながりによって、より身近な存在へと一般の方々は認識していると思います……しかし、俺はハッカーの危険性も認識してしていただきたいと思っています』
『ハッカーの危険性』
『『ザクソン』でも危険なハッカー達が多くいるでしょう?』
『そんな人間を相手に一般人が友好的に接して、犯罪に巻き込まれたら現在のイメージ戦略は台無しです』
『『EDEN』で最も強いハッカーに危険性を知らしめてもらいたいのです』
『それを……、『ユーゴ』自らやれ、と?』
『もちろん、『ザクソン』のイメージが悪くなるのもコミの判断ではありますが、俺は』
『『
ルビー達がデジモンカイザーに出会う前にお嬢に詰問され、だいたいそのようなお願いをした。そして、お嬢はそのお願いを受け入れてくれた。だからこそ、あの終わりに繋げることができた。
(いや、しかし)
「フェイさん……、ずいぶんと落ち着いていた。何したの姉さん?」
フェイさんはがいつにも増して大人しかったように思える。その秘訣をぜひ『姉さん』に教えていただきたいものだ。
(…………むっ!)
優を『ザクソン』に出向させたのがバレていたみたいだ。
「バレてたんだ。できる限り似せた格好で向かわせたんだけどな」
正義のヴァンガードKの威光はどうやら隠し通せなかった……という奴だ。演技を鍛えてあげないといけないかな?
「新しい部下だよ。プライベートの方は……、ほぼ一般の出の奴だからね。流石の最強ハッカーでも話せることは少ないんだ」
最強ハッカーには話せないことが多いんだけどさ。いずれ話すよ……、いずれ、ね……というか、
「……無駄に健康だから、ちょっとだけ困るんだよね。もう少しアプローチを緩めてくれてもいいんだけどなぁ?」
ことぶ……ううん、みなみの話はしないでください。お願いします。身内からその話をされると、外堀を埋められているようで、本当に、本当に怖いんです。前世でのトラウマが蘇りそうで、マジで聞きたくないんで……、
(あっ、大変だったんだ)
姉さんの疲れた声が聞こえてきた。流石のサイキョーハッカーも、女には一苦労らしい。うん、気持ちはすごくわかるから、それには同意しかできない。でも、あの人のレベルなら、
(まあ、一時期のテトとシンよりかはマシ……ぐらいだろ。あの2人の関係は……っと、あの人の声が聞こえたってことは)
一瞬だけ、フェイさんの声が聞こえてきた。ということは、楽しい楽しい家族の会話は終わりの時間を迎えたみたいだ。
「はい、はい……こっちもわがままを聞いてもらってごめんなさい。それじゃあ、そっちもお元気で……さて」
名残惜しそうに電話を切った悠子さん。そして、反対に俺はーーーー、
「「我がジェネラル」」
跪く2体のデジモン。
「ありがとう」
「タイト、言われたとおり、こいつ以外全員気絶させたよ」
「こちらも制圧完了っす」
「テト殿達と右に同じですぞっ!」
「やりましたよっ、ご主人様っ!!!」
和式の内装の部屋が奇々怪界な世界へと変貌し、我がパートナー達が全ての人間の制圧の完了の雄叫びを上げた。
「ウチもう飽きちゃったんやけど」
「…………っ!?」
背後には新しい部下が目を見開き、飽き性の秘書があくびをしていた。
「……っ、ーーーーっ、……っ!!!」
丑三つ時、眠気に微睡みながら、目の前にある
「ネタバラシといこうか」
俺は指を1つ立てる。
「なぜ『『D-3』が盗まれた』のか?」
「『D-3』が盗まれる手筈だったからだよね?」
俺の言葉にテトが答える。
「そう、『D-3』が盗まれるのは既定路線だった。番組を盛り上げるためのスパイス程度にしてはちょうどいいお話だ」
ルビー達は危険性を理解し、一般人にとっては現実味がなく、ハッカー達は大混乱するちょうどいい『舞台装置』だ。そして、ルビー達は俺の目的どおりおもしろおかしく動いてくれた。
「なぜたまたま、その日だけ、『警備が手薄だった』のか?」
「警備を薄くすることで、『D-3』を盗ませ裏切り者を判別する為っす」
シンが俺の言葉に答える
「そうだ。四宮や四条が番組を始めた時に動くと予想はできていた。そして、『カミシロ』内に弱みにつけいられた者の判別には今回の『舞台装置』はいい擬似餌だった」
『カミシロ』の信用問題は今回の事件で確かに揺らいだ。しかし、犯人も捕まり、その犯人が『EDEN』を狙った財閥の手の者だったと世間に公表されれば、『カミシロ』の後手も許されるというもの……、わざとであったとしても、それを知るのは『俺達』だけだ。
「なぜ『四宮にデジモンカイザーが現れた』のか?」
「『カミシロ』が作ったユーゴに続く人工的なAIこそが、そのAIを動かしていた人物こそが、『カミシロ』の関係者だったからでありますな」
ユイが俺の言葉に答える。
「そうだ。『ユーゴ』に続く、人間の意識を維持しながら自動で動くAI。その実証実験の例の1つこそが『デジモンカイザー』。彼を模したAIだ」
もちろん、かなりスケールダウンしたAIだが……、俺のアプリドライブ内にあったデータどおりに動かすことができた。
「なぜ『デジモンカイザーは『D-3』の機能を十全に扱えた』のか?」
「AIに扱えるように『機能』をつけていたからであってますよね、ご主人様?」
マナコが俺の言葉に答える。
「そうだ。俺達はAIが『思い通り』に動くように使えるように
彼女は……『寿みなみ』は思うとおりに動いてくれた。依頼の代償はもちろん大きかったわけだが……、彼女の思考をベースにAIは自分がAIだということを認識することなく、人間らしく動くことができた。
これによって、世間はハッカーが危険な存在であることを認識してくれるだろう。
「なぜ『『カミシロ』がすぐに動かなかった』のか?」
最後の質問。
「『
それに答えるのは『
「そう……首謀者は『カミシロ』の上層部だ。うん、みんな合ってるね」
そして、俺はこの話を聞く……『
「さて、今回の『犯人役』の四宮の……誰だっけ?」
ああ、丑三つ時だから眠くて眠くて仕方ない。いつまでも
「ーーーーっ、ーーーーッ! ーーーーっ!!!」
ああ、もう、うるさいっ!
目の前
「四宮黄光です。我がジェネラル」
こっちのいらだちを気にしてか、はたまた記憶にないのを理解したのか、シキが倒れている男の名前を教えてくれた。ああ、そうだ。四宮黄光……、彼女に見せた写真の男だった。そうだそうだ……思い出した。
「ありがとう、シキ」
……でもさ、
「もう、誰が、どうとか興味がないんだよね」
テトに向かって
「邪魔だから消えろ。老害」
次元の穴から飛び出るは銀色の触手。
押し縮められた『マヨイガ』に既に逃げ場はなく。
悲鳴を上げる間も無く、蜚蠊は銀色に呑まれて消えた。
「テト、ベツモン、後処理は頼んだよ」
「任せてよ、タイトっ!」
「ーーーーはっ!」
マヨイガは消え、ハゲ親父に扮したベツモンと、成長期の姿のテトが胸を張って頷いた……そして、
「おぅ、ぅ゛ぇええええええーーーーっ!!!」
『何も知らない』少年がその場で嘔吐した。
「大丈夫かい、優?」
「軟弱者め」
俺の首に巻きつくクダモンが優を睨みつける。それは流石に酷くないか? ……と思わなくもないが、
「なんで」
ひとしきり吐いた優は俺を睨みつけ、
「なんでっ、なんでこんなことができるんだよっ!!!」
そう、叫んだ。
「…………」
俺はその答えに返す言葉を逡巡する。
(なんで、か)
たくさんの人が思い浮かぶ。
たくさんのものが思い浮かぶ。
たくさんの思い出が思い浮かぶ。
(そんなものは決まってる)
この世界に置いてきたアイやルビー、アクア、斎藤さんやミヤコさんといった家族。
今まで出会ってきたツルギさんやユウさん、ノルン様やアグモン、ガブモン、ザンバモン、ムルムクスモンといった俺の背を押してくれた先達。
グルスガンマモンとの約束。
俺の隣で戦ってくれたキリハやネネという戦友達。
俺の手を取ってくれたリエさんや末堂さん。
俺の姉貴分として笑ってくれるお嬢。
俺の我儘に付き合わせた教授やミユキさん。
……そして、
「未来の為だ」
みんなで笑える未来の為に、俺はここにいる。
「こんなことって、未来の為って、……本当にこんなことが未来のためになるのかよっ!!!」
きっと、話してもわかんないんだろう。
「…………っ、はっ」
俺にとって大切なのはこの世界じゃない。
「70億程度の人口で笑わせるな」
俺達の世界以外にもたくさんの世界を俺達は見てきた。
「幾億の星より程遠い、無限に等しい生命が生きる全ての世界の為に俺はここにいる」
そこに住む人、そこに住むデジモン、そこに住む全ての命の為に、
「さあ、もう一度手を取れ」
俺は何度でも彼へと手を差し出すだろう。
「俺がお前をヒーローにしてやるよ」
今度は俺達の『