産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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「「来たぞっ、函館ぇ〜〜っ!!!」」


空港でルビーとMEMちょが叫ぶ。

「うっさいわよあんた達」

その背後で寒そうにする有馬かな。

「雪がすごーいっ!?」

雪に喜ぶ星野アイ。

「これは……、寒いな」

その横でアクアが驚く。


ーーーーパシャッ!


場所は打って変わって、空港近くの……、


「お寿司おいしぃ〜〜っ!」


イクラの手巻き寿司を頬張るルビー。

「こっちのお寿司って何でこんなに大きいのっ!?」

「トロも向こうじゃかなりの値段するってのに、この大きさでこのお値段……酒が進むねぇっ!」

「社長……、仕事中なんだからお酒はあまり呑まないでよ? 酔っ払ってる保護者を介抱する役者達なんて映像に残したら……また何と言われるか」

「そんなに呑まねえってのに……、まったく」

その横で保護者2人が和気藹々と話している。


ーーーーパシャッ!


時刻は午後の3時。
シルドの運転する車から出た一行は……、


「えっへへ〜〜っ、マナトと一緒ぉ〜〜」

「ルビーやめーや、マナトくんをもう一度炎上させたいんかっ!?」

「離れろ、2人とも抱きつくな……暑い」


駐車場に3人の友人達が年相応に戯れている。
男1人に少女が2人……傍から見れば、……いや、服装はともかく3人の容姿は間違いなく美少女。なんとも思われることはないだろう。

「ええいっ、私も抱きついちゃお〜〜っ!」

そんな中、星野アイは末堂マナトの背中に抱きついた。


「アイさんもっ!? 離れづらいんですけどっ!!!」

「えへへ、いいでしょ〜〜」



ーーーーパシャッ!


夕方に差し掛かり、気温が下がったのか雪が降り始める。

「……ここが赤レンガ倉庫」

そこに長い黒髪の少女と、金髪の少年が寄り添いあった。

「赤いレンガと、屋根に降り積もる雪がどことなく……、まるで絵本の中に入ってるみたい」

赤いレンガと降り積もる雪……、絵本の中から飛び出してきそうなその光景に、黒川あかねは感動し、

「あかね、手を出せ」

「アクアくん?」

星野アクアは微笑みながら手を差し出した。

「手、握ってやるよ……、雪が降ってて寒いだろ?」

あかねはアクアの手を両手でギュッと握りしめて、幸せそうに微笑む。

「……ふふ、本当に絵本の中に入ってるみたい」


「……ぐぎぎ」

その背には赤いレンガに隠れた嫉妬深く睨みつける女の影が映り込んでいた。

ーーーーパシャッ!


倉庫内にある店を散策する一行。

「うわ〜〜、きれぇ〜〜」

星野アイは星の様に煌めくとある一角見つめていた。

「ガラス細工……か」

コップやアクセサリー、日常的に使う雑貨……果ては、ステンドグラスでできたクマまで様々なもので彩られたガラス工房。

「マナト、綺麗だよ」

コップを手に取って微笑むアイ。値札にはそれなりの値段が書かれているのだが……、


「意外と安価ですね。アイさん、プレゼントしましょうか?」

「えっ、いいのっ!?」


金持ちは気にしないようだ。


ーーーーパシャッ!


倉庫の外、そこに立つ金髪の外人。

「花より団子、観光名所よりもコロッケってねぇ〜〜」

その男……シルズは車から離れて、出店のコロッケやらザンギやら、さまざまな食べ物を両手いっぱいに持ちながら、遊び呆けていた。

「マナトさん、シルズさんがコロッケ食べてる」

そこに通りかかる不知火フリルと末堂マナトの2人組。

「げっ、じ、……… マナト様っ!?」

「シルズ、サボるな」

「あいたっ!?」


背中を叩かれる金髪外人を見て、背中を叩いた美少年が笑っている。


ーーーーパシャッ!


「ハンバーガーおいしぃ〜〜っ!」

「シキさんありがとうっ!」

シルズ以外の部下に手渡されるハンバーガー。どうやら近くの店で買ったものらしい……シルズは? 遊んでいることがシキに知られ、待機命令が出た様子。

「いえいえ、マナト様にはこちらを……」

「うん」

シキが用意した皿に乗っていたのは、ビルのように建てられたハンバーガー。その正体はーーーー、


「ハッピークラウンの函館丘バーガーだっ!? サムネ用にしなければ……っ!」


函館発の巨大チェーン店。
ハッピークラウンの函館丘バーガー。あまりにも動画映えするハンバーガーに配信者魂が動かされた一配信者が動き出した。

「MEMっ、こんなときぐらい自分の配信のことは忘れろっ!?」

「MEMちょさん……、これもある意味職業病なのでは?」

必死な形相で写真を撮るMEMちょの様子に2人は呆れながらハンバーガーを食べた。


ーーーーパシャッ!


「「「…………」」」


「別荘……?」

「温泉宿の間違いでは?」

「おい、俺はこんな施設買った覚えはないぞっ!?」


「ここはいくつかあるセーフハウスのひとつです。今回の件でこの規模のものを15通り購入させていただきました」


「「「…………」」」


「金持ちの考えることなんざわかんねえよ」

「……俺にもわからん」


「「出資者がそんなこと言ってどうするっ!?」」


ーーーーパシャッ!



「いやぁ〜〜、いろいろいい写真が撮れたね〜〜」


私は胃の痛みを感じながら、今日撮った写真を視聴者のみんなと確認していた。


:それはそう

:ただの別荘だと思ってたのに、温泉旅館丸ごと買うとは……?

:お金を出した当人が驚いてて草なんだわ

:ルビーたそ。・゜・(ノД`)・゜・。

:ふっる

:いい加減諦めろん


(中には悲しんでる視聴者さん達もいるみたいだけど、案外平和に楽しめててよかったよかった)

函館にいるファンに凸られでもしたら、ちょっち困ったことになったかもしれないからね。

(……直近の問題は)


「…………」


今回のカメラにほとんど写ってない不知火フリル氏である。

「……ん?」

そのフリルちゃんが急に私が配信してる画面にやってきて、」

「……っ、ちょっ、何をする気っ、カメラ返してよ!?」

私からカメラを奪い取っただとっ!?
未だ、デジチューブの配信は続いている。この女、視聴者のみんなに何を呼びかけーーーー、

「……ねぇ、みんな」


:うっわ、不知火フリルだっ!?

:顔良すぎるっ!?

:ハイッ、何でしょうかっ!?

:おい、お前らフリルちゃんの話を聞けっ!!!

:イエッサーッ!!!


「1つ提案があるの」


(なんだがものすっごく、胃が痛くなってきたような……、嫌な予感がするぅ!?)



「もっとおもしろいこと聞いてみない?」




第二話 あれこれ、番組の裏側! 男の娘のひ・み・つ♡

 

(胃が痛い。胃が痛いよぉ〜)

 

 ふふ、相変わらず推しが不憫でかわいい。

 私が視聴者のみんなに質問した途端、パソコンの前で胃を痛め始めた。推しは不憫であればあるほど萌えるとはこのこと……と、なかなか策士なこと思いながら、MEMからカメラを奪い取る。

 

(せっかくリアル男の娘に来てもらってるんだから、聞きたいことはたくさんあるんだよねっ!)

 

 私はカメラを持って、この宿の主人のところへと歩き出し……、うん、下のロビーあたりでみんな集まってる。

 

(うん、ちょうどよかった)

 

 私の悪巧みをしてる顔に気がついたのか、はたまた嫌な予感を感じたのか、シキさんが怪訝な表情でこちらを見てきた。

 

(うん、あの美人さんにこうも嫌な顔をされるとそそるものがあるね)

 

 そんなことを考えながら、カメラを持った手でマナトさんに近づき、

 

 

「マナトさんにお願いありま────すっ!!!」

 

 

 マナトさんにカメラを近づける。

 

「……何でしょうか?」

 

 シキさんがボディガードのように彼を守ろうとする動き……、少女を大人の女性が守ろうとしているようにも見える。うん今の私はまるで不審者気分だ。

 

「今から配信のテコ入れとして、マナトさんへ『質問コーナー』をしたいと思っています……どうでしょうか?」

 

 マイクを持ちながら、マナトさんに質問……おっと、目を惹かれるような美少女が2人。

 

「動画を見てる人らにもマナトくんのこと知ってもらうええ機会やないかな?」

 

「勝手なこと言わないでよ。マナトは私達と違って一般人なんだよっ! 芸能界や配信者とは違うのっ! そんな迷惑かけたらいけない筈だよっ!!!」

 

「なんやとぉっ!!!」

 

「なんだって言うのっ!!!」

 

 BGMが美少女の罵声へと変わるなか、意味深に視線を交わす2人の影。

 

「……どうかな、シキ?」

 

「いいと思いますよ、マナトさん」

 

「許可も降りたことだし、やってみようか」

 

 どうやらあっちもテコ入れには賛成みたいで……うん、ここは派手に行こう。

 

「……では」

 

 タイトル名は────、

 

 

 

「『チキチキ、番組の裏側大質問! 男の娘のひ・み・つ♡』」

 

 

 

「────フリルゥゥッ!!!」

 

 あっ、推しが血反吐吐きそうな表情で叫んだ。

 

「「…………は?」」

 

 さっきまで喧嘩してたルビーちゃん達が表情が固まって、動かなくなってる。

 

「……マジか、嬢ちゃん」

 

「あのマナト様をそのような呼び名で……」

 

「やべえ、やべえよ」

 

 マナトさんの部下のみなさんも戦々恐々としてる。

 

(うん、イケメンや美少女達からこれだけ変な表情を見れて私はすでにお腹いっぱいになるぐらい幸せです)

 

 マナトさんの部下は誰も彼もが美男美女揃い……、そして、誰しもが戦々恐々とした表情をしていて……さらに萌える。萌えまくる。流石、私っ! 

 

 

「いいですよ、質問してください」

 

 

 その中で唯一冷静な少年が1人。

 なんだか、こんなことにも慣れてそうで……うーん、私はもう少し君の焦った表情が見てみたいんだけどなぁ。ちょっとだけ不満足。

 

「……へ?」

 

「は?」

 

「……うっそ!?」

 

 一部役者や保護者のみなさんと部下のみなさんも不満そうにしています。

 

「……へえ」

 

 質問を許可されたのだから、張り切って質問しちゃおっかなぁ〜〜。

 

「じゃあ、どんな質問しちゃお〜〜」

 

 たとえば、あんなことや〜〜、こんなこと〜〜、……いや、いっそBAN寸前、……そうだ、ここはMEMやB小町のチャンネル。いっそのことBANされても問題ないんだ。

 

「ぐへへ」

 

 思わずそんな笑みがこぼれ落ちた。

 

「────マナト様、本当にこの娘に質問させてもよろしいのですかっ!?」

 

 必死な形相でマナトさんに質問するシキさん。やはり、美人が焦った様子が1番おもしろい。

 

「いいんじゃない? 知りたいことがありましたたら、できる限り答えるつもりだからよろしくお願いいたします」

 

 逆に冷静なマナトさん。

 うーん、その冷静そうな仮面……ぶち壊したいなぁ。どんな質問を────、

 

「……ただし」

 

 …………『ただし』? 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その笑顔の裏には完全に『バケモノ』のような姿の圧力を感じた。

 

「笑顔の圧こわーい」

 

「チャチャ入れてる場合じゃないでしょっ!」

 

「あいたっ!?」

 

 とうとうMEMに殴られてしまった。

 

(あいかわらず推しの愛が痛い)

 

 いててと頭を撫でる。

 

 

「……で、何を質問するのかな?」

 

 

 …………むっ!? 

 

「口調が変わった」

 

 丁寧な口調からルビーちゃんや寿ちゃんに向けるような男の子っぽい口調に変わった。ちょっとだけ男の子感が増した気がする。

 

「こっちの方が親しみやすいだろう?」

 

 ソファーに座って足を組む姿勢はどことなく見栄を張った子供のようで……、でも、どこか様になってる美男子っぽい。うん、生意気盛りのおぼっちゃまに見えて……えへへ、供給ありがとうございます。

 

「そうだね……、じゃあまずは」

 

 そんなことはお首にも出さず、視聴者からの質問を厳選する。

 

 

 :好きな男性のタイプは? 

 

 :スリーサイズは? 

 

 :お金どれくらいもってるの? 

 

 :自己紹介をお願いします。

 

 :部下ってどれくらいいる? 

 

 :許嫁っていますか? 

 

 

 どれもこれも質問したいものばかりだが……まずはジャブからいってみよう。

 

「自己紹介からお願いします」

 

 自己紹介……最初に聞くのはこれがいいだろう。

 私はおじいちゃん経由でいろいろと『彼』の事情を知ってはいるが、知らない人達(役者のみんな)がいる以上、やっぱり1番はこれでしょ! 

 

末堂(すえどう) 愛人(まなと)。『カミシロ』の重役末堂アケミの義理の息子にして、この企画(プロジェクト)のスポンサーの1人……でいいのかな?」

 

 むっ、あまりにも簡素な自己紹介。ここは合いの手を入れてみよう。

 

「もっと、……こう趣味とか、なにかありませんか?」

 

 趣味、そこからいろんなことを聞いてみよう。

 たとえば、えっちなこととか、スケベなこととか……、

 

「趣味……か。料理かな?」

 

 うん、なんとなく想像はできた。

 おじいちゃんが『あっち』にいた時、最初に料理やら何やらをやっててくれたのはこの人だって聞いたから……、ちなみにこの人のご飯が美味しいのも私は聞いている。うらやましい。

 

「……ほう、料理ですか?」

 

 素知らぬ顔で彼に聞く。

 

「うちにはやたらと肉が好きなバカとチーズに執着するアホと揚げ物に依存するデブと甘いものに依存する糖尿予備軍がいるからね。日々レシピに悩まされてるよ」

 

 うん、つまり美味しいもの量産しているわけですね。

 

「……へえ、親近感が湧く話ですね。私とぉ────っても気になります!!!」

 

 とっても気になります。

 たとえば、私の自宅に住んで、裸エプロンでお出迎えとか……ぐふふ、やばい想像したら鼻血が出てきた。

 

「本当によろしいのですかっ!?」

 

 私が鼻血を出したのを見たシキさんがマナトさんに驚愕の視線を向ける。いけないいけない。これ以上妄想していたら、質問できなくなるところだった。

 

 ズビー! 

 

 

「最近作った料理は?」

 

 

 私は話を広げるために質問を続ける。

 

「プルドポーク」

 

「ぷるどぽーく?」

 

 名前の知らない料理が出てきた。ポークと名の付いていることから、豚さん関連の料理みたいだけど……、

 

「肉を長時間低温で焼くめんどくささの代表みたいな料理……、配信者以外でやる人いたんだ」

 

 むっ、推しが驚く料理、だとっ!? 

 そんなにすごい料理なのか『ぷるどぽーく』って奴はっ!? 

 

「手間がかかり過ぎて有給を1日潰して作ったんだよな。時間をかけた割には味も対して美味くなかったし……、肉が好きな人以外にはオススメはできない」

 

 おいしくない、だとっ!? 

 

「……お前、部下の為に有給を1日潰したのか」

 

「別に驚くことでもないだろ? 休みなんて碌に取れないし、職場で時間が空いてることなんて滅多にないし、俺味見なんてできないから、味見役必須だしなぁ」

 

 マナトさんとアクアくんの男の子同士の絡みだが違和感がある。そして────、

 

 

「「…………」」

 

「「「…………?」」」

 

 

 事情を知る2人(ルビーちゃんと寿ちゃん)事情を知らない人達(あかねちゃんやかなさん、MEMみたいな人達)は表情が違っている。

 

(うーむ、シキさんがこっちを睨みつけてる)

 

 なんとかしろってことっぽいけど……、どー声を掛ければいいのか……どーしよっかなぁ。

 

(いっそのこと、この場を破壊するような衝撃的な質問でも────、おや?)

 

 静まり返った部屋の中、マナトさんに近づく影が1人……、

 

 

「じゃあ、今度は私が味見役してあげよっか?」

 

「「────アイ(ママ)ッッ!?」」

 

 

 星野アイその人であった。

 

「…………」

 

「へへーん」

 

 驚くような顔のマナトさんにイタズラっ子のように笑いかける星野アイさん。

 

(……そっか)

 

 そうだよなと納得と……少しだけ、ほんの少しだけの嫉妬が混じる。私が驚かせるつもりだったのにと思ってしまったが、この人の意表をつくにはこれぐらいのインパクトが必要なのだと勉強になった。

 

「却下で……、休みの日に大物女優をわざわざ連れて歩くなんて真似しようものなら、またルビーの時と同じように炎上騒ぎになる」

 

「いいじゃーん、もっと仲良くしようよ〜〜っ!」

 

 アイさんがソファーの後ろからマナトさんに抱きつく。

 

(…………むっ!?)

 

 その女の子(?)同士の様子に心がときめくのを感じ────、

 

(髪の色とか、目の色とかのパーツは違うけど、顔つきはどことなく…………)

 

 

「次の質問は?」

 

 

 シキさんがそう声をかけた。

 

「むっ!?」

 

 やばい、今、……うん、もしかしなくともこれは、

 

「なければここで締め切ります」

 

 シキさんが怒っている。

 

(締め切られたら困るなぁ)

 

『なぜか』はわかってしまった。

 

(…………)

 

 視線を泳がせれば、あかねちゃんがちょっと厳しめな視線を2人へと送っている。

 

(ちょっとこれはマズイ、かな?)

 

 シキさんの視線は、余計なことを勘付かれると困る……と、暗に伝えているものだ。

 

 

(……シキ)

 

(これ以上余計なことを聞かれ出ましたら困ります。ただでさえ聞かれてはいけないことを話してしまっているのですから、もう少し言葉を選んで話してくださいっ!!!)

 

 

 こっそりとアイさんを引き剥がして、マナトさんに小声で注意もしている。相当やり手の動き方だ。

 

(あかねちゃんもちょっと怪しげだし……)

 

「じゃあ、次の質問にいきましょう」

 

 ここらで一発、インパクトの大きい奴をいっちゃおうか。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ!!!」

 

 

 

「……は?」

 

「へ?」

 

「「ぶっふぉっ!?」」

 

「へえ」

 

「ひゅー」

 

「ちょっ、お前ぇええ゛────っっ!?」

 

 

 マナトさんの驚いた顔……、ついでに、シルズさん(金髪外人イケメン)の『ひゅー』いただきました。

 

(MEMは予想度の反応ありがとうございます)

 

 ちょっとだけ惜しかったのは、アイさんのあの表情……。

 

(妙にニヤニヤしてるのは、いただけないかなあ)

 

 アイさんにも『きゃー』とか、女の子っぽい表現を期待していたのに……『へえ』の一言だけだもの。ちょっとだけ予想外。うん、もう少し踏み込めばよかった。

 

「フリルさん」

 

 マナトさんのことをすっかり忘れてた。すぐにマナトさんの方に視線を向ける。

 

「……この中で?」

 

 おずおずと聞く彼の様子に、さらに萌える。

 

「そう、この中で、ですっ!!!」

 

 なので、私もハッキリそう言ってあげた。

 

 

(まじか────っ!)

 

 

 頭を悩ませ始める姿を見て、『今回の目的達成!!!』とクエストクリアの表示が始まった。次は、『ボーナスポイント』を狙って頑張るだけだ。

 

「……シキ?」

 

「これならいいんじゃないでしょうか?」

 

 困ったように聞くマナトさんにそっけないシキさん。うん、さっきの件怒ってるみたいで、メッチャいい顔してるぅっ! 

 

「これはいいのかっ!?」

 

「「「いいのっ!?」」」

 

 マナトさん以外にまず、反応したのは恋に恋する2人組。うんうん、こーいうのを2人は待っていたんでしょっ! 

 

「別に問題ないと思いますが? ……そこのところ、斎藤社長はどう思われますか?」

 

「……まあ、いいんじゃねえの?」

 

「ほら」

 

「『ほら』じゃないんだが(ですけど)っ!?」」

 

 マナトさんとルビーちゃんの声が重なった。やはり顔のいい人選の焦った様子はなかなか肌にいい気がする。いや、間違いなくいい!!! 

 

「……くっそ」

 

 そう困った顔をしながら、周囲の面々の様子を見始めるマナトさん。

 

(わくわく、わくわく)

 

 楽しみながらその様子を見ていると……、

 

 

(えっ、ちょっと……これは、これはもしかすると……もしかせずとも!?)

 

(まさか、ウチッ!? そうやろな、そうやろなぁ……あれだけアピールしとったら、マナトくんもウチを見てくれるに違いない)

 

(……まさか、私っ!? 今でも高級取りだけど、アイドル兼女優なんだけど、まさかの玉の輿成功っ!? ……んー、でも、アクアがいるし……この性格だしなぁ)

 

(胃がっ、胃が痛い……、ルビーの思い人らしき人からの視線……普段なら玉の輿ラッキー……って、思えるけど、ここで選ばれたらあの2人にどー思われるか……想像しただけで胃が……胃が溶けるっ!?)

 

(ルビーちゃん、寿さんに次はかなちゃん……その次はMEM……次は私を見た? ……でも、マナトさんの顔つき……、目の動き……、この反応まさかっ!?)

 

(へえ、私を見るんだ。呆れたような……うん、そんな顔もかわいくてそそるなぁ)

 

(あははっ、みんなおもしろい顔してるぅっ!? あっでも、ここでマナトの恋人決まっちゃうかもしれないし……うーんそれは私も困っちゃうかも……)

 

 

 三者三様とでも言うべきか、ここにいる独身の女性達の表情をゆっくり見ながら、マナトさんが出した答えとは……、

 

 

「……シキで」

 

 

「「「……は?」」」

 

「……あはっ! そこ選ぶんだっ!!!」

 

 

 予想どーりの反応……ちょっとだけ残念。

 

 

「「ねえ、なんでシキ(さん)なの(なんや)っ!?」」

 

「なんで私なんですかっ!?」

 

 

 突然渦中に放り込まれたシキさんと怒る2人組。うんうん、予想通りすぎてあくびがでそうだよ。理由を早く言ってくれないかなぁ? 

 

「……いやだって」

 

 

「まず、ルビーはないだろ?」

 

「────がはっ!?」

 

 

「みなみはなんか怖いし」

 

「ウチ怖くないもんっ!!!」

 

 

「有馬さんは……、ちょっと、なぁ」

 

「ちょっと、ちょっとって何よっ!?」

 

 

「MEMちょさんは……言わない方がいいか」

 

「言わない方がいいってどーいうことっ!?」

 

 

「黒川さんはアクアが彼氏にいるから、浮気なんて論外だろ」

 

「ものすっごく理性的な理由だった」

 

 

「フリルさんは……、理由わかるよね?」

 

「わかんなーい」

 

 

「アイさんは……、うん、アイドル時代に現役で子供作ってる女性は……ちょっと遠慮願いたい。信用問題に関わるし、ね」

 

「今はフリーだからそんなの関係ないよ〜〜っ!!!」

 

 

 それぞれへの反応は良くも悪くも普通な感じ……、でも、どこかしら引け目……みたいなものを感じる。

 

「……で、私ですか」

 

「うん、お前なら全部信頼して任せられる」

 

 シキさんと他のメンバーじゃ雰囲気が違うのは全幅の信頼を置いているせいか……もしくは、

 

「────っ、それは彼の方達に言ってあげてくださいっ! ……私などが言われる資格なんて……」

 

 

「そんなことより私が『ない』ってどーいうことだっ、説明しろ────っ!!!」

 

「マナトくん、ウチが怖いってどーいうことや? こんなに『かわいい』女の子芸能界にだって滅多におらんで」

 

 

 顔を真っ赤にした(残り2人は別の意味)人達に問い詰められるマナトさん。

 

「……そーいうところだろうが」

 

 そして、その反応に対してでた発言が……、

 

 

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 呆れながらトンデモ発言をするのはやめていただけないでしょうか? 

 

 

「「「…………は?」」」

 

「「「あちゃー」」」

 

 

 何も知らない人達が呆然としています。知っている人らしきみなさまは頭を抱えておられる。

 

「ん、何か変なこと言ったか?」

 

 もしかして1番情報リテラシーがないのはこの人なのではないのかと……疑いたくもなってしまった。

 

「マナトくん、……あなた、ルビーと本当に同い年なのよね?」

 

 保護者B(ミヤコさん)が動き出した。

 

「やだなぁ、ミヤコさん……、同い年に決まってるじゃないですか。

 そもそも、……肉体的に言えば、8歳で肉体年齢が止まってる体ですよ。それをまあ誰が魅力的かなんて聞かれても、色気で落とされない年齢の体に求められる答えなんてないでしょ」

 

 そういう発言を求めたわけではないと思うのは、私だけではないはず……、

 

「8歳……その体でっ!?」

 

 かなさんがいち早く反応した。

 

「もともと成長は早かったんですがね……、まあ、いろいろ頑張ったんで、成長しなかったというか……」

 

「マナト様っ!!!」

 

「ごめん、これオフレコで頼む。あと、この件に関しては『カミシロ』が関わる前の出来事だから、末堂さんがマッドで人体実験したとかそういう噂を流したら、マジで怒るから……具体的には、無限に裁判するから、よろしく頼む」

 

 シキさんに怒られ、LIVE中なのに視聴者に向かってオフレコを頼むマナトさん。もう全国放送済みだから言えないのだが……、やけに恐ろしい言葉を言っていた為、視聴者も余計なことを口ずさむことはしないだろう。

 

「……マナト様」

 

 頭を抱えるシキさん……だが、やはりさっきの言葉の意味がその通りなら、

 

 

「永遠のショタロリボディ……人類の理想……、これは本当にそそる」

 

「あんたはもう少し自重しろぉっ!!!」

 

「あいたぁっ!?」

 

 

 不老は人類の夢……だというのに、

 

「フリルさん」

 

「……推しからの愛が痛い……へ?」

 

 マナトさんに声をかけられた。

 ちょっと申し訳なさそうなその表情……何か、あるのか? 

 

「シキからの視線が怖いので、質問を変えていただいてもよろしいでしょうか?」

 

 やはり、質問を変えてと言われたか……なら、

 

「……じゃあ、この中で」

 

「『この中で』禁止で」

 

「むぅ〜〜」

 

「次、『この中で』とか言ったら、その質問で最後にするから」

 

「…………」

 

『この中で』を禁止にされてしまった。

 

(せっかくおもしろい反応がたくさんあって楽しめてたのに……、あと一回しか楽しめないなんて、つまらなさすぎる)

 

 さて、それならどーしよっかなぁ? 

 

(……あっ、そーだ)

 

 ルビーちゃんと寿ちゃんが反応するおもしろい質問を思いついた。これにしよう。

 

「じゃあ、結婚してみたいと思った異性は?」

 

「「────は?」」

 

 やはり2人は反応した。

 マナトさんもおもしろい反応を期待────、

 

 

「…………まあ、いい……か」

 

 

 ……えっ? 

 

「「……いるの?」」

 

 ハイライトの消えた2人組。

 マズイ……、この質問はおもしろいことを予感させる。頬がどんどん緩くなってくる。

 

「こんな人と結婚したいなぁと思った人でいいかな?」

 

「そうですね」 

 

 

「「ねえ、マナト(くん)本当にいるってこと?」」

 

 

 2人組がハイライトを消して迫ってくる。本当に本当におもしろっ!? ……しかし、途中で話を遮られても困る。ならここは、

 

(御二方、これなら事実上の好きなタイプも聞けるってことでいいでしょ)

 

(……まあ、それなら)

 

(ナイスや、不知火フリルッ!)

 

 咄嗟に思いついた適当な答えで乗り切ることができた。

 

 

「……俺がそう思うような異性は6人いる」

 

 

「「────6人もっ!?」」

 

 ────ガタッ!? 

 

 あら、思ったよりも恋多き人なんですね。さっきの淡白な回答からは想像もできなかった。せいぜい1人か2人だけだと思ってしまった。

 

(……しかし)

 

 ルビーや寿さん以外に、────ガタッとさせた人物がいる。

 

(アイさんと斎藤社長は表情に出過ぎでは?)

 

 事情を知ってる身からすれば、ちょっとだけ怖いのですが……、

 

「実際には恋人がいたり、好きな異性がいる人や俺が絶対に結婚できない相手だ。恋愛対象ではない」

 

「振り向かせて見せるとか思ったことはないの?」

 

「そんなことは一度でも思ったことはないよ」

 

「俺なんかには釣り合わないほど素晴らしい女性達……、それに見合う程の相手がいるのがわかってて、告白するなんてバカみたいなことするわけないだろ? そもそも彼らが幸せなら俺は幸せなんだ」

 

「……うっわ」

 

「純愛だ」

 

「むしろ、俺なんかに振り向いてもらっては困る。両方同じぐらい推していることこそ、俺の最高の幸せなんだからさ」

 

「……うーっわ」

 

「それは引くな」

 

 ……と、ルビーちゃんが気になる質問をしてた気がします。後で絶対にアーカイブで確認するから、絶対にするから……、私は進行役に徹するけれどもしますからねッ! 

 

「……で、その6人の詳細は?」

 

「名前は明かさないからな」

 

「OK」

 

 プライベートの配慮は大事……、芸能人だからそれは1番大事なのは理解してるので、必要以上に聞かないつもりだ。

 

「1人目は4歳の頃にあった女性だ」

 

 ────ガタッ!? 

 

「早熟だぁ!?」

 

 思ったよりも早い年齢で初恋の人がいたみたいだっ!? 

 

「その頃に既にライバルがおったなんて……」

 

 横にいる2人の気配に鬼が混ざっていくのを感じる。それに比べて、マナトさんはかなさんの方を見つめ────、

 

 

「見た目や性格は……、性格が良くて背の高い有馬かなだな」

 

 

 ────えっ!? 

 

 

「────ハァッ!?」

 

 

 思わず私も驚いてしまった……、いけないいけない。

 

(かなちゃん、唐突に背中を刺されてる)

 

「パイセン?」/「有馬、かな?」

 

 ハイライトが消えた2人組がかなさんの方を鬼の形相で睨みつける。

 

「ちょっ────、似てるだけ、似てるだけの別人っ!?」

 

 焦った美少女(被害者)は思わぬ殺意にしどろもどろに弁明を行い。

 

「俺が苦しかった時に助けてくれた人で……、警察に似た仕事をしてる人だったよ」

 

 マナトさんの懐かしむようなその言葉に、表情に、釣られて反応する2人組は────、

 

「……けい、さつかん?」

 

「警官フェチ、やと?」

 

 うん、フェチが知れるのは良いこと。

 

 

「────そこ、失礼なこと言わないっ!!!」

 

「「…………はーい」」

 

 

 シキさんに注意される2人。

 

(わかる、気持ちはわかるよ)

 

 好きな人の嗜好(フェチ)は特に気になるよね……そして、

 

「歳上の女性に萌えたってこと……、推せる」

 

「2人目に言ってもいいか?」

 

「……うん、いいよ」

 

 萌えの供給がまだ続くことに神に感謝。

 

 

「2人目は5歳の頃から付き合いのある知り合いだ」

 

 

 意味深な言い方……むっ!? 

 

「……付き合いのある知り合い?」

 

 まるで現在でも付き合いがあるようなそんな言葉に、萌えポイントがグングン上昇中.

 

「なん、やと?」

 

「────ッ、見た目はっ!!!」

 

 2人組がすぐに反応……、流石だぁ。

 

 

「この世の全てを集めたような絶世の美少女と呼べる人でさ。少なくともこの中にいる誰よりも美人だよ……あの人は」

 

 

 …………。

 

「…………まじか」

 

「ママより……、うっそだぁっ!」

 

「嘘じゃないさ……、俺の主観だけだけどな」

 

 …………はっ!? まさか、この人にそこまで言われる人物がいるとは思ってなかった。メッチャ、メッチャ気になる……けれども、

 

 

「……15歳の私より?」

 

 

 私より気になってる人が一名……、星野アイその人である。

 

「…………」

 

「…………」

 

 睨み合うような視線。

 自身の持つ絶対的な魅力を知る当人だからこそ、今の……、ううん、マナトさんのことだからこそ、彼女は1番を求めている。

 

「星野アイ……あんたより、あの人の方が美人だよ」

 

 だけど、言葉を告げた本人はその姿を見ても、首を振って魅力的なのは彼女だと声を大にして発してしまった。

 

「…………」

 

 アイさんはじっとマナトさんを見つめる。

 

「俺はあの人のことを神と慕うぐらい心の底から尊敬している。見た目や中身だけじゃない。植物状態になった自身を想う人間まで心の底から愛しているあの人を、だ」

 

 その想いが、その感情が、その人こそが……、マナトさんにとって『1番』大切だというように、抱きしめるように想いを込めて言う姿は、1枚の絵にしたらどれだけの価値になるだろうと考えさせられるような、……それほど美しいものになっただろう。

 

「……へえ」

 

 対して、アイさんのその言葉は氷点下の如く冷たく、冷徹な響きを感じる。自身の所有物を奪われた熊のように、自身のナワバリを荒らされたライオンのようにその声には怒りすら通らない激情を初めて感じた。

 

「それはあんたのファンを見たらわかるだろ? あんたを信仰してると言っても過言じゃない程の絶対的な熱量。俺はそれをあの人に捧げてるだけだ」

 

 そして、マナトさんがアイさんの想い(それ)を理解していながらも、激情(それ)がわかっていながらも、それでもと発する言葉の重さに私は感動すら覚えた。

 

 

「……じゃあ、その視線奪っちゃってもいいかな?」

 

 

 本人を前にした宣戦布告。

 多くの信者(ファン)からはアイドルの頂点とさえ言わしめたその妖艶な微笑みは、きっと見る者全てを魅了すること間違いなしだ。

 

「やれるもんならやってみろ。たとえ奪われたとしてもあの人なら……」

 

 そして、その例外は、

 

 

「『ふふふ、奪われちゃいました』……と笑って許してくれるはずだけどな」

 

 

『そこ』にたしかに存在していた。

 

「……むぅ」

 

 ここにアイドル『アイ』の完全な敗北を現場にいる人間は理解して────、

 

 

「あと、白ゴスを常に着てる金髪碧眼の美少女ってだけだから気にしなくていい」

 

 

 ────ガタッ!? 

 

 情報の暴力が私の頭を叩き割った.

 

 

「ねえ、会わせてくれない? その美人さんメッチャ気になるんですけどっ!」

 

「駄目だ。絶対に会わせない」

 

「チクショォ────ッッ!!!」

 

 

 なんだそれは、なんだその美少女は……絶対に見つけて見せるからな。血涙飲み干して、絶対に会ってみ見せると心の中で誓ってみせた。

 

 

「3人目は……俺の初めてできた対等な友人だ」

 

 

 3人目は案外どこにでもあるような(あっさりとした)話だった。

 

「友人……、それって身内補正が入ってない?」

 

 ルビーちゃんが笑顔でそう聞いた。

 

(……むっ)

 

 目の付近の筋肉がピクピク動いている。あと少しで血の涙が噴き出そうなほど、顔が怒りに染まりかけてる。ちょっとヤバ目だ。

 

「……在り方が美しい人だった。弟が行方不明になっていて、自ら探しに旅に出るような人でさ。そんな中でも、困ってる人がいたらほっとけない性質(たち)で困ってる人がいるとすぐに助けに行く人だ」

 

 

「……それは」

 

「俺はその在り方に惚れた。そこにいたどんな人間よりも美しく見えたんだ」

 対するマナトさんは気づいていないのか、その話をゆっくりと懐かしんでいる。

 

「…………」

 

 きづけ、気づけってばッ、ルビーちゃんヤバイことになってるってっ!? 

 

「4人目は……、これはまあいいか」

 

 何が『まあいいんだよ』……、ルビーちゃんメッチャクソヤバイ表情に気づいてないのですか、この人はっ!? 

 

 

「岸辺リエだ」

 

 

 …………ん? 

 

 

「……、────おいっ!?」

 

「マナト様?」

 

 さらにヤバイ人達が反応した────ッ!? 

 

(ヤバイ、ヤバすぎる……ものすっごくおもしろい)

 

 マナトさんの鈍感さもそうだが、爆弾発言率の高さに驚愕してしまった。

 

「岸辺、……岸辺リエって言ったのかマナト?」

 

 アクアさんの表情にルビーちゃんがドン引きしてる。

 ヤバイ、ヤバイ……この人岸辺リエさんにいったい何をされたんだ? コメント欄も結構ざわついてる。

 

「そんな怖い顔をするなよ。あの人はただ真面目なだけだよ。その在り方に対して常に誠実なだけだ」

 

 マナトさんの表情はずっと、ずーっと穏やかなままだ。

 

「アクアは……言わなくてもいいか。少なくとも俺と姉さんはあの人が身元を保証してくれてるおかげで何とか生きていけてるんだ。そこにどんな打算があったとしてもね」

 

 優しげに言う彼の言葉から、想像もできない話が聞こえてきて────、

 

 

「あの化粧の濃いおば────」

 

「はいはーい、雇い主の幹部になんてことを言うのかなぁこの口はっ!?」

 

 

 思わずでそうになった言葉を、MEMに口を塞がれ事なきを得た。

 

「……むぐっ、ぷはぁ……MEM、復活してたんだ」

 

「なにさぁっ、今まで空気だったみたいにゆうなぁっ!?」

 

 うん、たしかに空気だったよ。私の推しは間違いなく空気になっておりましたとも……、なんかのの字を書き始めそうだったので、次の質問にうつろうと思う。

 

「5人目は?」

 

 5人目はいったいどんな人なんだろう? 胸が最高にわくわくしてきたぞっ! 

 

 

「5人目は……、いちおう俺の義姉の神城悠子だよ」

 

 

 なんだとぉっ!? 

 義理の姉弟の恋愛ものはR-15指定ですよ、これぇっ!? 

 

「義姉……義理の姉ぇっ!?」

 

「……あの人も……かいな」

 

 ほら、さっきの2人組の目のハイライトがさらに消え……、あれ? ルビーちゃんの目の奥に黒い星が見え始めたんだが、……ちょっとヤバイのでは? 

 

「実際には俺はあの人と結婚できないんだけどな」

 

「……どうして?」

 

「第二次性徴が来てないって言ってるだろ? 跡取りを産めない体の男が、次の『カミシロ』の未来を担う存在と結婚できるわけないだろ?」

 

「「……あっ」」

 

 あっ、消えた。

 安心したみたいで、すぐに消えてるんだけど……まさかの闇堕ち寸前だったっ!? 

 

(……しかし)

 

 美味しい話には裏があると言いますか? 話せることが少なくて……ちょっとだけフリルちゃんは悲しみを感じます。

 

 

「はい、この話は終了。次の質問に行くぞ」

 

 

 ……あれれ? 

 

「……待って」

 

「……ん?」

 

 1番大事なトリを聞いてない。

 話のオチは最後までとっていたというのに、このままスルーされては困る。

 

「6人目は? 6人目は誰なの?」

 

 私は6人目が知りたいのだ。

 

 ものすっごく気になる6人目が……。

 

「……6人目、か」

 

 彼は思案するように顎に指を当て、

 

 

 

()()()

 

 

 

 微笑みながら、唇に人差し指を当ててそう笑ってみせた。

 





こたつで配信を見ながら、みかんを食べてるんだけど、

「……むぅ」

私はそれを不満に感じていた。


『むっ、秘密……ですか?』

『答えられない……かな?』

『……気になります』

『『私達も気になるかな?』』

「ぅ、ぅぅ、ううっ!」

『……じゃあ、ヒントを出そうか』

『1人目2人目3人目、あと6人目までは性格に共通点がある』

『共通点?』

『俺の好みのタイプって話だ』


ーーーーガタッ!?


『どんな人がタイプなんですかっ!?』


()()()()()()()()()()()()()()()()()


『どんな立場とか関係なく、どんな状況とか考えず、どんなに苦しくても、迷わずに目の前の人を助けられる……、そんな女性が好みだ』


『6人目は俺を助けてくれた。迷いを晴らしてくれた……、それだけで紛れもなく俺の胸を撃ち抜いた女の子だよ』


『『…………』』


『……うっわ、やりやがった』

『大丈夫か、2人とも?』

『……うん、撃沈してるね』



「……好きな人、か」

マナトくんの好きな人。

『秘密だ』

マナトくんの結婚したい人。

「むぅぅうーーーーっ!」

こたつの中でうだうだと暴れる私。

「う、ぅ、う……、」

泣き喚きたくて必死な私。

「気になる」

気になってしかたない私。

「気になるんだけど」

…………そして、


「私もマナトくんの好きなタイプに当てはまるのかな?」


私はどうなのか……って、寂しくて、知りたくて、もどかしくて……、どーしようもなくて、顔が赤くて悩ましい。

配信を見ながら、そんな私は不釣り合いなのではないかと、そう思えてしかたなかった。
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