「あ゛ーーっ、疲れたーーーーっ!!!」
少女が叫ぶ。
時刻は夜の11時、場所は羽田空港……近くの、駐車場である。
「お疲れ、ルビー」
俺はルビーを労いながら、現時刻から時間を逆算する。
「……事件の取り調べだけで2時間、安全の確保の為にって言われて、諸々の準備と戻るだけで3時間?」
頭おかしいだろ……、と、言われてもおかしくないようなハードスケジュールだ。
(戦闘は3分も立たずに叩きのめしたんだけどな)
テーブルに置いてあったコップを、学生2人の顔面に当てて気絶。
その危険極まりない行動に警察とヤクザが反応して俺に注意が向いたところを、シキとシルズが近場の
『警察なんか知るか』とヤクザは動こうとするが、仲間優先の警察と仲間割れを起こし……、あとは、倒れた
たったこれだけで終わったというのに、『こっちの安全がーーーーっ!』 『市民の命がーーーー』という説教を本物の警察官からたらたらと受け、函館旅行は中止。急遽出戻りすることになった。
「流石の私でも疲れちゃったよ〜〜っ!」
「巻き込まれただけだから取り調べだけで済んでいるけど……、被害者の方は大変ね」
「後日、北海道まで行ってきますよ……それより」
アイさんとミヤコさんとの会話をしているとーーーー、
「みなさま、大変申し訳ありませんでしたっ!!!」
「慰安目的の旅行が、『カミシロ』の事情に巻き込む形になったのは私どもの不得が致すところです」
シキとシルズが謝罪し始めた。あー、やってんなぁと思いつつ……、
「そうだ、そうだっ! 慰安はどうなってるんだ。慰安はっ!」
「ルビーうっさい……、今疲れとるから、そんなテンションやないから」
ここぞとばかりに不満を持つルビーが追撃するも、みなみに止められている。
「今後、このようなことがないように務めます!!!」
うん、いつ見ても違和感がある。
「うわ、シルズが謝っとる」
みなみもそう思ってるみたいで、驚いていた。
「もう少しでお正月ですが……、こちらとしてもみなさまに慰安を提供するつもりではありますので……」
「こちら我々が今現在用意できる最高級ホテルのチケットとなっておりまーーーー」
「うわっ、これ東京でも屈指の名ホテルじゃんっ!?」
「芸能界のお偉いさんでも3ヶ月待ちの『あの』っ!?」
「某政治家御用達のチケットがこんなにもっ!!!」
「喜んでいただけたようで何よりです」
「……今夜から1週間、無理を言って部屋を開けていただいたので、良ければそちらに泊まってください。問題があれば当ホテルに泊まっているシキに……」
うんうん、チケットは準備してあったし、話もいい方向に進んだ。あとは俺は家に帰って寝るだーーーー、
「ねえ?」
目に黒い星を宿した女性が1人。
「……アイ、さん?」
星野アイがこちらを見ていた。
「歌が歌いたいんだよね?」
『歌が歌いたい』と確かに俺は言ったが、本当はそういう気分で言ったわけじゃない。
「えっ、ああ……それは、言葉の綾と言いますかーーーー」
ーーーーぐいっ!
腕が引っ張られるのを感じる。
「歌いにいこっかっ!」
いつのまにか担ぎ上げられて、星野アイは走り出していた。
「ーーーーアイさん!?」
「マナト様!?」
「ママッ!?」
「アイっ!?」
「マナトくんっ!?」
みんなの声が聞こえてくる。しかし、100メートルほど離れてしまっている。
「シキはいつも使ってる店をっ、ルビーはいつも使ってるところに行くから、あとは頼んだっ!!!」
俺は大声を出して、みんなに声が届くように叫んだ。その声が聞こえているかはわからない……だけど、
「早く歌いにいくよっ!!!」
2016/12/31 PM11:35
「ねえ、アクア、どれ歌うの?」
「俺はB小町の────」
「しょうがないから、デュエットしてあげるわよ」
「……ねえ、かなちゃん? 何がしょうがないの? 人の彼氏に唾つけないでくれないかな?」
「げっ、黒川あかねっ!? いつから聞いてっ!?」
「最初からだよ?」
「はいはーいっ! 数時間ぶりだねっ、MEMちょだよっ!!!」
「みんなが心配してくれたとーり、大変だった。ほんっとうにっ、大変だったけど……、こっちはなんとかだいじょーぶ! メンバー限定だけど、カラオケの生放送をしちゃいまーす! 今は東京にあるとあるお店にやってきてるんだけどさ、今度は『あんなの』に特定されないように、場所はひ・み・つ・です!」
「こんな時でも配信とは……、MEMちょも大変だね」
「あんたも出るのっ!」
「マナト〜〜、歌おうよ〜〜っ!」
「ママの言うとーり、歌おうよ〜〜っ!」
「はいはい、俺はみんなが選んだあとで俺は決めますよ」
スポンサー1名、アイドル3名、役者3名、保護者(現役女優1名)……がカラオケ店に集まっていた。あの後、俺はアイに引っ張られながらタクシーに乗せられた。それから馴染みの店に連れて行かれるように誘導、現場には既にここにいる全員が揃っていたのには驚いたが……、
(これで、だいたい予定通り……か?)
実体化させたベツモンを使って省庁をを乗っ取った時に得た情報で、元警視総監とヤクザの犯罪行為について、当時の現警視総監を脅した。
『この情報を世間に公表する』……と、
俺は無断で公表してもいいと思っていたのだが、リエさんの『警察に借りを作りたい』という意思を汲んで、現警視総監を脅すことにしたのだ。
その後の結果は、先程話したとおり、現警視総監の隠蔽工作を手伝い、今回の騒動が『起こるように』仕組んだ。
そして、この件がニュースにならないのなら、四宮や元警視総監やその部下達、捕まえたヤクザの親分の関係者が暴走するのは目に見えていた。
旅行先へと案が上がったのは、沖縄と北海道の2択。その中でも、沖縄ほど
北海道警察には悪いことをしたとは思っている。しかし、
アメリカに中国、ドイツ、ロシア、フランス……その他諸々、他の国の軍隊も動いていたみたいだけど、そちらは動き出した時点で制圧は完了。罠にかかったのは
(どうでもいいんだけどさ)
今日は本当にいろいろあったが……、ノルン様のところにいた頃よりかは、忙しくないので実際はそこまで疲れていない。疲れてはいないのだが……、
(……ねむい)
今の時間は夜中の0時前……、いくら飛行機内で仮眠をしたとはいえ、お子様ボディのこの体は少しずつ眠気が襲ってきても仕方がないのだ。
(それにしても……?)
自分の正面に座っている人物に視線を合わせる。
「君は歌わなくていいのですか?」
「はい、私は歌が好きではなくて……、えへへ」
青みがかった長く黒い髪に、少しだけ大人びたその表情……、星野アクアの恋人である黒川あかねが目の前に座っていた。
「あーっ、MEMちょずるいっ!?」
「へっへーんっ、だっ! 早い者勝ちだもんね────っ!!!」
ルビーはMEMちょさんに取られたマイクに注意がいっている。アクアと有馬かなは曲を選んでいて、その横で不知火フリルがジュースを黙って飲んでいる。
(好きではないのに、なぜ……む?)
アクアと有馬かながマイクをとり、デュエットを歌い始めた。
「彼氏は向こうでアイドルとデュエットしているけれど……、いいのですか?」
恋人がいるのにいいの……いや、
「良くはありませんが、それ以上にマナトさんのことで知りたいことがあったので」
額に青筋を立てながらも冷静にこちらを見る姿に、とあるデジモン1体と1人の人間を思い浮かべて背筋を凍らせる。
(知りたいこと?)
しかし、それ以上に俺に聞きたいことがあると言った彼女の言葉が気になった。
「なぁーにぃ? あかねちゃんもマナトと一緒にお話ししたいのっ!? 私も参加していいかなぁ?」
俺を背後から抱きしめる保護者()。しかし、この匂いは────、
「アイさん、お酒クサイです。ビール飲みましたねっ!?」
周囲を見ればビールの缶が3つほど開けられており、顔にヒヤッとする感覚があることから、4本目の缶ビールを開けたことに気がついた。
「いいじゃん、いいジャーンっ! もっと盛り上がっていこうよっ!!!」
「「「おーっ!!!」」」
元アイドルの掛け声に、そのファン達が大声で答える。
「ギャラリーがうるさいっ!?」
アクアとルビー、MEMちょさん、……あとメンクイの不知火フリルが歓声を上げながら、叫び始める。この空間には酒飲みしかいないのかっ!?
「あはは、……すみませんが、真剣な話なので2人で話させていただけませんか?」
「真剣な話ぃ……むぅ、ちょっとだけだよっ!」
「はい、5分で終わらせます」
俺を挟んで会話をしないでいただきたい。くっそ、あんなこと言わなきゃよかったっ! ……というより、
「……5分でいいのですか?」
黒川あかね。
星野アクアの恋人にして、俺の、『星野タイト』の足取りを追う人物。夕方に行った質問コーナーで質問してくると思っていたが、質問してこず……わざわざ、今のタイミングで話しかけてくるとは思っていなかった。しかし、それ以上に、疑問に思うのは話をする時間の短さだ。
「はい、私が知りたいのは3つだけなので」
質問は3つだと黒川あかねは言った。
(……3つ、ね)
それで情報を集め切る……、つもりらしい。夕方の質問コーナーで話しきったと思っていたが、それ以上に何を知りたいというのか……彼女の心理がわからない。
「私と話すときは視聴者の時よ質問みたいに砕けた口調で結構です」
「いいのかい?」
「ええ、そうでないとこちらが困ります。スポンサーなんですから……もっと威張ってくれないと、こっちが気を遣って思うように話せませんよ」
「そっか……、なら、あいつらと話す時みたいに話させてもらうよ」
こちらにとっては都合のいい話だ。しかし、緊張は解くつもりはない。緊張を解きすぎて話しすぎてしまったら問題だからな。
「それで何が知りたい?」
俺は1つ目の質問を聞いてみる。
「1つ目なのですが……、『好きな食べ物と嫌いな食べ物は何ですか?』」
彼女は思案するように悩んだかと思ったら、思ったより普通の、一般的な質問が飛んできた。
「そんなことでいいのか?」
「はい、まずはそれくらいから聞きたいですね」
微笑みながら言う彼女に少しだけ警戒心を抱きながらも、笑顔で自然体を意識して……、正直に話すか。
「なら……、好きな食べ物はハンバーガー。嫌いな食べ物……というか、ハイビスカスが使われてる、もしくは、モチーフになってるものが嫌いだね」
キリハとネネと食べたあの夜。それ以前もみんなで食べることが多かったハンバーガーだが、あの夜以降ハンバーガーが好きになった。そして……、
「ハイビスカスにトラウマが?」
ハイビスカスが俺は苦手だ。
「友人をイジメ殺した奴の主導者がハイビスカスに似たの花を髪飾りにしてつけていた。それ以来ハイビスカスが苦手なんだよ」
ハイビスカスは……、俺達を苦しめ、俺の友を殺したあのデジモンを彷彿とさせる。別個体自体は嫌いじゃないが、その見た目はあれ以来好きにはなれない。
「……そうですか」
俺の苦い表情を見たのか、彼女はその質問を区切らせた。
「では、2つ目の質問です」
彼女が切り替えたのを感じ、2つ目の質問を待つ。
「『幼馴染と聞きましたが、ルビーちゃんやアイさん、アクアくんとはいつ頃出会いましたか?』」
ルビー達との出会いは……、当然赤子の頃からの付き合いだが……今求められているのは、『末堂マナト』としての意見だ。なら、用意されたとおりの答えを話せばいい。
「幼少期の頃に母の知り合いに連れられて、ミヤコさんに会ったのがきっかけかな? 俺の実の両親と共に死んだ人だが、両親がワーカーホリックだったせいで、何かと面倒を見てくれた人でさ。両親も知り合いの人も忙しい時に共通の知り合いであるミヤコさん預けられたんだよ。朧げな記憶だけどな」
実際、俺は事務所にいたミヤコさんや壱護さんと一緒に過ごす時間の方が長かった……、というより、当時コロモンだったテトを表には出すことができず、零細事務所に匿うことしかできなかったという話でしかない。
「アイさんには優しくしてもらって、ルビーやアクアとも遊んでたかな? でも、ルビーと一緒にいることの方が多かったと思う。アイさんやアクアは仕事で忙しくしててさ、次第に遊べなくなっちゃったからなぁ」
当時の俺はルビーと一緒にいた時間は少なかった。
「……そうですか」
彼女は思案するようにメモをとっている。しかし、言っている言葉は質問コーナーと違って嘘ばかりだ。参考にすらならない。
「では、最後の質問です」
来た、多分これが本命の────、
「『
「ないな」
本命の質問だ。
「幼少期、2人と遊んでいたのにも関わらず……ですか?」
(本人なので会ったことは)ない。事実である。
「彼の行動範囲は特殊でね。彼は星野家に常に監視されていた」
そう、『あの』事件以降大人2人に警戒されていた。
「……監視ですか?」
壱護さんを甘言で誘惑し、星野アイを表面に出しつつ、将来のために『EDEN』を牽制をしかけようとしていたのだが……、失敗した。星野アイに止められたのだ。そのおかげで彼女は俺の母になったのだが……、
「何かやらかしていたみたいで、外の人間と話す機会を隔離されていたと言っても過言じゃない」
「それほど過保護に扱われていた……と」
やらかしたのは事実だが、過保護だったわけでもない。というか、今の扱いの方がだいぶ過保護なのは、テトの前ではいえない……かな?
「そもそも俺が星野タイトが実在することを知ったのは、
星野タイトが実在するのは知っていた……、本人だからな。だが、『行方不明者』になってることは知らなかった。だから、ほとんど嘘だが、
「その言葉に嘘はありませんか?」
「ないよ」
だから、『嘘』じゃない。真実を言っていないだけだ。
「……何かな?」
「……いえ」
黒川あかねにジッと見つめられている。
(……もしかして、勘づかれたか?)
嘘は言ってはいるが、事実も言っている。だから嘘をついているわけじゃない。しかし、それを判断する材料もないは────、
「あかねちゃんと話してないで、マナトも歌ってよ〜〜っ!」
────ドンッ! と、背中を押される。
「────ッ!?」
酒と女性の華やかな匂いが混じったような、そんな匂いに体が包まれる。
「……アイ、さん?」
「えへへ、もう5分たったんだよ。歌ってくれるよね?」
時間を見てみれば彼女が指定した5分はとうに終わっていた。
「あかねちゃん、いいよね?」
「はい、聞きたいことは聞けたので問題ありません」
そう言いながら、今度は
「今度はぁ、私の番だぞぉ〜〜っ!」
そう言いながら、カラオケ用のタブレットを渡してくる。
(……にしても歌、ね?)
歌は……、うん、あのとき歌を歌いたかった理由は、『あのとき』のような気分になりたかったからだ。
バカな
「歌……うん、そうだな」
今の自分が歌いたいわけではない……が、
「ねえ、あの曲、あの歌がいいっ!」
「……あの歌ですか?」
「繋がる空眺めホッと一息吐いたって奴っ!」
「……あの歌、ですか」
せっかくのアイドルからのリクエスト答えないわけには……いや、『今』の俺にあの歌を歌う資格はあるのだろうか? あの未来の希望に満ちたあの歌を歌う資格は……、
「…………あの歌じゃないですけど、俺の好きな歌を歌います」
いやない。ないからこその歌を思い出した。
「えぇ〜〜っ!」
リクエストした彼女からの文句の声が聞こえ、
「そうだっ! アイが指定した歌を歌えぇ〜〜っ!」
「ママの言うことを聞けぇっ!!!」
「アイドルからのリクエストを答えんとはどういうことじゃいっ!!!」
ファンどもが叫び始める。
「いいだろ? 俺の好きな歌なんだからさ」
さっきも言ったように、これは俺のベスト10に入るぐらいかなり好きな歌だ。
「好きな歌?」
「どんな歌っ、どんな歌なのっ!?」
その言葉にルビーとアイさんが目を輝かせながら聞いてくる。
「…………」
アイドルみたいなポジティブそうな歌じゃないんだけどなぁ。
「とある少年に憧れた友人の歌ですよ」
『友人』のような主人公に憧れた少年と、『少年』に憧れた友人の胸中を歌った歌だ。
「眩い光に手を伸ばすように歌うので」
そう、これは手の届かない『光』に手を伸ばす『愚者』の歌。今の俺にはピッタリの……、
「聞いてください」
声のトーンを変え、熱血そうなロボット系アニメのOPに流れてそうな声へと声を変える。
(今の俺が歌える全力の……)
彼女は聞いているのだろうか?
もし聞いているのならば……、未来の『
「『BE MY LIGHT』」
歌の終わった瞬間、時計の針は十二を回った。
ーーーーァ、……ハッ.ハッ、ハッ!
息が切れる。
「アラタ達は逃げたっ、あともう少しだっ!!!」
緊張から焦って思うように走れない。
「君が守ってくれたように、オレたちが君を守ってみせるっ!!!」
あとほんの10メートルほど先のログアウト地点が、何十分も走るような持久走よりも遥か遠くに感じる。
「あと少しですっ、ここは我らの踏ん張り時……、さあ、お前達持ち堪えなさいっ!!!」
みんなの声が聞こえてくる。
『あと少しだ』、『がんばって』、『逃げるんだ』って……、でも、どうしてもその1メートルが、その一歩が遠く、とっても遠くに感じられた。
ーーーーュルン
『
「危ないっ!? 『ウォルレぇーーーー、がはっ!?」
緑色の影がその触手を……違うっ、触手が緑色の影を弾き飛ばした。
「ーーーー『ルドモン』*1ッ!?」
振り返るとルドモンが緑色の光になってデジヴァイスへと吸い込まれていった。
「くっ、……よくもルドモンをっ!!!」
「ルドモンがやられましたっ! ……ですが、あと、数メートルですっ! 頑張りなさいっ!!!」
残る2体が私を狙う『銀色の化け物』に向かって走り出した。
「後は頼みましたよ……、うぉおおおおーーーーっ!!!」
「ーーーーぐはぁっ!!!」
「『リュウダモン』*2ッ!?」
「…………っ!?」
黄色の……、リュウダモンのデータがデジヴァイスに入るのも構わず、走って、走って、走り続ける。
あと少し、あと少しだけ……、早くっ!
「よくもみんなを、……舐めるなぁっっ!!!」
「『ハウリングファイア』ッ!!!」
「『
最後に、『ルガモン』*3の青色の光がポケットの中のデジヴァイスへと吸い込まれた。
(悔しいっ、悔しい悔しい悔しいっ!!!)
頭の中が悔しさと情けなさでいっぱいになる。
(もし、……本当にもしも、彼ぐらい力があったのなら……)
さっき出会ったユーゴみたいに強いデジモンがいたのなら……、
私の友人の彼のように力があったら……、
私はきっとこの子達と戦えたはずなのに……、
「みんな、ごめんっ!」
でも、今はそのことは考えないようにしよう。みんなががんばってくれたおかげで、みんなが戦ってくれたおかげで、ログアウト地点までーーーー、
ーーーー
ーーーーログアウトに失敗しました。
ーーーーログアウトに失敗しました。
ーーーーログアウトに……、
ログアウトに成功しました。
その影にピンク色の影が1つ。
「こっちは確認できました」
卵のようなデジモンと首長竜を模したデジモンを従え、彼は少女を襲った『銀色の化け物』を叩きのめした。
……そして、同時刻、
ーーーープーッ、プーッ、プーッ!
ーーーーピヨピヨ、ピヨピヨッ!
ーーーーカッコーッ、カッコーッ!
ざわざわ、ザワザワと突然の非常事態に群集がざわめき出す。
「おいおい、なんだあれ?」
「何かのイベント?」
「また、『カミシロ』案件かっ!?」
騒ぐ人混みの中、大きな声を上げながら走ってくる警察官。
「おいおい、どけどけっ! 警察だっ! どかないと逮捕すっぞーーーーっ!」
走り出す女性警察官。
近頃の事件で警察の印象は悪くなっているのを知ってか知らずか、女性警察官は公務執行妨害を盾に現場へと急行しているのだが……、
「「「あーっ、伊達ちゃんっ!」」」
いや、どうやら彼女は
「伊達ちゃんじゃねえっ、伊達刑事だっ! 警察官にその口調は逮捕すっぞっ、オラァっ!!!」
「そんなことより……、あれなんだけど……?」
群集の視線の先、横断歩道の真ん中に……、そこに立っているのは……、
「なんだあのバケモノはっ!? おい、お前ぇっ、そんなとこにいると逮捕すっぞーーーーっ!!!」
伊達と呼ばれた女性警察官は手錠を振り回し、その人型へと近づこうとしたそのときだ。
キキーーーッ!!!
突然現れた車が人型を連れ去っていく。
「おい、待てっ、またお前らっ、……止まらないと逮捕すっぞーーーーっ!!!」
大声で叫ぶ伊達女性警察官。
しかし、その車は昼の渋谷の街へと消えていってしまったのであった。
「ああ、こちらも確認した。よくやった」
それを傍観する影が群集から離れ、電話の送り主と数分会話をした後、電話機能を閉じた。
2017/4/29 PM13:20
自身を武器に変えることができる「Legend-Arms」の1体。「Legend-Arms」の中では唯一盾に自身を変える。頭と両手に固い鋼の盾を持ち、どこから攻撃を受けても身を守ることができる。防衛を目的としているデジモンで、「D-ブリガード」に狙われたエリアを守り切ったと記録が残っている。
必殺技は防御と攻撃を担う両手の『ウォルレーキ』。さらにルドモン自身が盾の姿となった時に防御力は最大限に発揮される。
額に旧式なインターフェースをもつ為、デジモンが発見される以前の実験用の“プロトタイプデジモン”ではないかと推測されている獣型デジモン。防御力の高い和風の鎧を身にまとっているが、動きは軽快で、敵の懐に果敢に飛び込んで戦う。戦うほどに戦いの業を修め、強大な敵デジモンをも恐れない魂と潔さ、武士気質(ぶしかたぎ)を持っている。実験の時、デジコア(電脳核)の最も深い部分に隠されたといわれるデータは、日本の神話における“竜”や“武将”などの猛々しい戦闘データであり、強大なデジモンに成長する可能性をもつといわれている。得意技は敵の攻撃を鎧兜で受けて反撃する『兜返し』。必殺技は敵の懐に飛び込み鉄の刃を口から放つ『居合刃(いあいじん)』。
額に旧式なインターフェースをもつ為、デジモンが発見される以前の実験用の“プロトタイプデジモン”ではないかと推測されている魔獣型デジモン。デジコアの最も深い部分に現実世界の神話に登場する魔狼のデータが埋め込まれているといわれており、成長期には見合わないほどの狂暴なふるまいを見せることがある。一見すると可愛い仔犬のようであるが不用意に接すると手痛い反撃を喰らうことになるだろう。自身を御すことができる存在を主として認識する性質があり、手懐けるのは難しいが信頼関係を結ぶことができれば頼もしい相棒にすることができる。必殺技は口から魔力を込めた火炎を撃ち出す「ハウリングファイア」と鋭い牙で噛みついて回転する「スパイラルバイト」。