[インタビュー]
・寿みなみさん、以前…………中学時代、彼とはご友人関係にあったそうですがいったいどのような方だったのでしょうか?
[寿みなみ]
・マナトちゃんのこと?んー、いろいろと破天荒な感じだったと思います。いつ見ても人助けしたりしてるのが当たり前って言うか、そんな自分を『演じてる』って感じでしたー。いっつも、友達を怒らせてましたねー。
[インタビュー]
・わかりました。ありがとうございます。そう言えば、林間学校の時に、彼等と行方不明に何かあったそうですが、何か痴情のもつれとかあったんですか?
[寿みなみ]
・そんな話はないですねー。マナトちゃんはやることが多いって言って、恋人をつくる時間がなかったと思いますぅ。そんなときに助けてほしいことがあってえ、それを手伝ってもらった感じですねえ。そのときに撮られたものだと思いますぅ。それで……
以降長々と話が続く。
ライブは大盛況になった……俺たちのせいで。
現場にいたオタクどもに映像を撮られていた……そのせいと言うより、そのおかげで、『オタ活をする赤子』と『赤子まで魅了するアイドル』として、アイの所属するアイドルグループ『B小町』はある程度バズっていた。……そのせいで、社長にミヤコさんが捕まっていたが、多少の問題でしかない……ただ、今後のことを考えると…………
「バズりが足りない」
確かにバズってはいる。世間的にも少しずつ人気が上がってきている。アイの仕事が少しずつ増えてきているのがその証拠だ……だが、もっとバズらせたい。そうすれば、アイはもっと仕事をもらえる。どうすればいいか考えると……
「斉藤さん、ちょっといい?」
2004年 10月上旬
あれから一年がたった。斉藤さんを説得してパソコンを貸してもらうことに成功した。説得方法はボタモンを使った一点突破しようとしたんだが…………
『はあ? 、お前にパソコンを貸す? 無理無理、大体そいつを表に出すつもりはねえんだろ?
『ボタモンならできるよ。パソコンさえ貸してくれれば、こんなふうに』
パソコンを使って、アイのアンチのサイトを検索して開く。あるのは罵詈雑言と……『俺達三つ子がアイの子供ではないか』という
『ボタモン、やって』
『……むきゅ』
躊躇うボタモン……お前が弱いからこんなことやってんだろ
『……いいから、やれ』
パソコンの中に入ったボタモンは、一気にサイトを食い荒らす。デジモンはただのデータの塊を喰うことだってできるから…………
『……おい、何やって……っ!?』
パソコンの表示が文字化けしていく。
[このサイトは表示できません]
『……ね、面白いでしょ』
これで、アイのことを疑うものが世界から一つ消えてなくなった。
『それに、こんなことだってできる』
別のサイト、アイのファンが立ててる掲示板スレを表示する。正直言って、自身の母親を性欲の捌け口にしてるような最低なサイトだけど……
[アイってやっぱ、可愛いよなっ!!! ]
『ボタモン、やってくれ』
ボタモンにこの言葉とこの前のライブ映像を、俺が開いた情報サイトに貼って、視聴者数、高評価数を多少弄れば……
『こんな簡単にトレンド一位だ』
『ねえ、こんなことができるんだったら、この世界で『アイ』はなんでもできるよね』
ドームが夢なんて小さくなるぐらい有名にしてやる。一日一時間これをやるれば、俺の世界よりネットが普及しているこの世界ならば、一般の人には簡単に認知することができる。
『こんなことやって、ただで済むと……』
『……ねえ、斉藤さんならわかるよね? これを使ってできること』
今は幼年期でも簡単にこんなことができる。完全体になれば先進国の首都圏だってゲームの片手間にぶっ壊すことができる。
だからこそこの力は、面白い。
『俺は『アイ』のやることを最短距離を作ってあげてるだけだよ。本当なら長い道のりで、10年かけて成功するかしないかわからないものだけど、俺は壁だろうが、家だろうが、川だろうが、山だろうが、簡単にぶっ壊して道を作ってあげてるだけだ』
あはは、この力を使えばボタモンだって強くなる。アイだって有名になる。まさにwin-winの考えだ。 斉藤さんの顔つきだって赤いぜ、こんなことできるってわかったら、やっぱり面白いよな。
『……アイだってこんな、こと……っ』
まだ余計な常識やら普通に取り憑かれてるな……折角の力なんだから、使わないと損だろ。まっ、俺は優しいからね。背中ぐらいは押してあげるよ。
『望んでるか、望んでないかじゃないんだ。『俺』がやりたいからやってるんだよっ!! そうだなあ……母さんにバレたら俺が勝手にパソコンをいじって遊んでいたくらいに言っといてくれればいいよ。その方が、面白いしっ!!!』
責任感とか罪悪感って大事だよね……でも、責任を擦り連れられる相手さえ、理由さえあれば人はそんなものを捨て去れる…………そうなるって知っている。
『……本当にやっていいのか?』
明らかにやってくれって顔してるぞ、おっさん。いいよなぁ、自分になんも責任負わずに利益貪るのって美味しいよなあ!!!
『やりたいんだったら、俺の手を取れよおっさん。それだけで、俺とボタモンは好き勝手やり始めるから』
手が震えてるぞ。でも少しずつ手が俺の方へと近づいてくる……やった!!! これで…………
『ダメだよ』
俺と斉藤さんの手が止まった。
明かりがついていない薄暗い闇の中に、一点だけ瞬く大きな星が現れる。胸には大きな黒饅頭が抱き抱えられている。
『ダメだよ、タイト……タイトは前に私に言ったよね。ボタちゃんの嫌がってることはやっちゃダメって……言った本人が、この子をいじめちゃいけないよ』
闇の中でも明るいと誤認するほどの存在感、どこからでも視界に入れてしまうぐらいの吸引力のカリスマ性、背筋が凍るぐらいの白い星が瞬く瞳……ああ、そうだ。この顔を見て俺は…………
『だって、もっと仕事が欲しいんじゃないの? この方法なら、簡単に有名になれる。犯罪に手を染めてない……いや違う、向こう10年は犯罪だなんて絶対にバレない。仮に犯罪だとバレたとしても、証拠なんて絶対に暴かせない。手段なんて選んでられない……母さんが時間をかける必要なんてないんだよ』
そうだ……俺はアイをもっと有名にする。俺には時間がない
アイが時間をかける必要なんてないんだ。俺達は守るために力を手にしなきゃいけない
そうなれば、ルビーやアクアだってもっと安定した暮らしをさせることができる。一分一秒だって惜しい。究極体がいきなり目の前に現れたらどうするんだ!!!
みんな幸せになるんだ。もし今目の前に現れたら、俺の守りたいものが全部なくなってしまう。嫌だ……そんなのは嫌だっ!!!
『正直に言えば、もっと有名になりたいし、お金だって仕事だってもっと欲しい。タイト達にもっと美味しいものを食べさせてあげたい』
『……でもね』
その瞬間、アイから太陽の光ような煌めきが視界いっぱいにに入ってくる。
『私は私自身の力で夢を叶えてみせる。手伝ってくれるのは構わないけど、犯罪スレスレで夢を叶えてもそんなのは嬉しくないっ!!!』
その光が俺に魔法をかけるように、心を揺り動かす。動揺するな。あの顔は嘘の顔つきだ。
『……でも、それでも、守らなきゃいけないんだ。俺達三つ子がいることが、母さんの1番の負担になる……もし、嘘がバレたときどうする? 母さんは自分の愛したファンから裏切り者扱いされる。きっと、悲しいし、苦しい……なら、少しでもその可能性を減らさなきゃいけないんだ!!!』
理由なんてどうでもいい。魅せられようが関係ない。力を、力を手に入れないと……力、力が欲しいんだ
『……? 何か怖いことでもあるの? 今、心配してるのはそんなことじゃないよね』
心の奥底を見つけられた気がした。
俺が一歩下がる。いやだ
アイが一歩進む。
俺が一歩下がる。来るな
アイが一歩進む。
俺が一歩下がる。助けて
アイが一歩進む。
俺が一歩下が、れない。玄関のドアに背中が当たった。もう逃げられない。
……気持ち悪い、ダメだ逃げないと、ドアを開けて逃げるんだ!!!
ふと体だが優しく包まれる。
『怖がってるの? 大丈夫だよ、ここにはあなたを傷つける人なんていない』
抱きしめられる……子供の体だと力がなくて、振り払えない。
『嘘だっ! 俺は知っている。あんたが俺達に嘘ついているってことをっ! あんたは決して俺達に本心を見せない。そんな人間をどう信じろって言うんだ!!!』
『ーーーーっ!?』
相手がきずつきそうな言葉を選んで言う。アイの体が揺れたのを感じる。
『…………嘘つきだってバレてたんだ』
背中が少し濡れたのを感じた…………アイは涙を流しているのか?
『でもね、タイト…………私の嘘は貴方を守る為にあるの。貴方が大きくなるまで、私の元から離れるまで…………ずっと、守り続ける為にあるの』
…………心臓が大きく揺れる。
『タイトは何を怖がってるの?』
優しく、強く抱きしめられながら言われる言葉は俺の心に響いていく。
『……ママは強いんだ。たとえタイトが怖がってても、どんなに怖いモノが来たって、ちゃんと守ってあげる』
その言葉に、アイの前にデジモンが現れるのを想像してしまう。もしも人間と敵対していたら、もしも変なモノを植え付けられたらと考えると恐ろしくて堪らなくなった。
『い、いやだっ、はやくボタモンを進化させないと……はやく力を手に入れないといけないんだ……時間なんて会ってないようなものなんだ!!』
この世界がどのデジタルワールドにつながっているかわからない以上、油断なんか絶対にできない。俺は
『そうだね、ないかもしれない……でもね、ママはきっとあなたを守るよ。だってこんなにも怖がってるタイトを見捨てることなんてできないし、タイトの為だったら無限に力が湧いてくるんだから』
その言葉に再び心が揺れるのを感じる…………それでも、
『うるさいっ!! ……俺を惑わせるなっ!!! 力が足りないんだ。自分を守るための、俺の居場所を守るための、俺の家族を守るための……圧倒的な力がっ! ……力が足りないんだよ』
どんなに抱きしめられても、どんなに大丈夫って言われても、不安はなんだよ。
守るためにはもっともっと力必要なんだよ。
優しくされたって変わんないんだよ。
怖くて怖くて仕方ないんだよ…………だから、
『大丈夫だよ』
『僕は君を守るため……君の力になりたくて来たんだ』
『……コロモン?』
『ボタちゃん……どこ行ったの?』
コロモン*1?
『……コロモンっ!? ……コロモン、お前やっと進化したのか!!!』
だいたい俺とおんなじぐらいの大きさになってしまったので、抱きしめることができなくなった。でも手を広げて抱きつく。
『重いよ、タイト……乗っからないでよ』
ずっと、ずっと進化するのを待っていた。アニメやゲームみたいにすぐに進化しなくてずっと怖かった。
『しょうがないだろ、俺とおんなじぐらいの大きさになったんだから、コロモン……俺は、お前、進化、しないんじゃないかって……ずっと、ずっと不安で、究極体がいきなり出て来たら怖くって……』
『……ああ、もう怖がりだなあ、大丈夫だよ……奴らは、まだ来ないよ。それに僕だってちゃんと進化するし、なんなら君やアイ、みんなみーんな僕が守ってみせるよ』
その言葉で俺はようやく安心できた。ああ、初代アニメのコロモンの声優さんの声とおんなじだ。主人公のパートナーに言われてるみたいで、本当に安心できる。
『……その子、ボタちゃんなの?』
『そうだよ、母さん。ボタモンが成長したしたんだ。もっともっと強くなってくれるって……』
『……おい、タイト……お前はいったい……?』
母さんと俺の言い合いに圧倒されていた斉藤さんがようやく戻って来た。この人にも迷惑かけたな。
『斉藤さん先程はすみませんでした。そして、すみませんが、俺の秘密はまだ言えないです』
赤子でまだ立てない俺は座ったまま頭を下げた。
『……お、おう、でさっきの話は……?』
『社長……、もちろんなしね。タイトもボタちゃんが止めたんだからやっちゃ駄目だよ』
……といった具合に、母さんに封殺されてしまった。それから一年は俺とコロモンは母さんやミヤコさんの監視下に置かれることになった。勝手にどこかいくことは許されず、母さんの仕事中はミヤコさんがつきっきりで俺の面倒を見てくれた。
今回はアクアが俳優としてデビューする日……俺はおっさんと留守番してるって言って、母さん達についていかないことにした。
母さん達が出発したのを見計らって、歩いておっさんの仕事部屋に直行した。
「なあ、おっさん……やっぱり、パソコン貸してくんない?」
俺は一年ぶりに交渉を仕掛ける。
「ダメだダメだ……大っ変魅力的なんだが、アイに止められてることはやらない……それに、今日出発前にアイから『私がいないからって、タイトにパソコンを貸しちゃダメだよ』って言われてるからな」
おっさん的にはやってほしそうだが、母さんに止められてるからやっちゃいけないって言われてる……やっぱり出発前に止められてるかぁ。
「そこをなんとか……というか、調べ物をするだけで他は何もしないって、なんなら俺達が使ってるところを監視しほしい」
「調べ物……裏工作でもするのかと思ったら、何すんだよ?」
「俺達の父親を調べる」
表面を覆っていた産毛が抜け、体も一回り大きくなった小型デジモン。活発に動き回れるようになったが、まだ戦うことはできない。口から泡を出して敵を威嚇する。
『進化』
進化とは……長い年月を経て姿を変えることが、一般的な進化である。しかし、デジモンの『進化』は昆虫の『変態』に近い。
進化することでより強く、より大きく、より賢い存在へと姿を変えていくことが、進化と呼ばれる。
デジモンの進化には段階があり、
『幼年期Ⅰ』→『幼年期II』→『成長期』→『成熟期』→『完全体』→『究極体』の順に強くなっていく。
『幼年期Ⅰ』『幼年期II』 人間の子供ぐらいの強さ
『成長期』 軍人でも制圧できるぐらいの強さ
『成熟期』 戦車レベルの強さ
『完全体』 必殺技が核兵器レベル
『究極体』 弱い奴でも数日あれば、世界を征服できる
育て方や進化先、特殊な個体、戦略、相性によって、上のレベル(例えば成長期が究極体)を圧倒することも可能である。
その他に、道具を使って進化する『アーマー体』や人間がデジモンの魂が宿った道具を使って進化する『ハイブリッド体』、デジクロスという『合体進化』を使った『ーー体(クロスウォーズ)』が存在する。
進化方法も多彩に存在し、闇の力を使う『暗黒進化』、2体のデジモンが合体し、進化する『ジョグレス進化』、人間がハイブリッド体に進化するために使う道具『スピリット』を使用した『スピリットエヴォリューション』……等多数の進化方法が存在する。