2017/5/11
ヴォルクドラモンとの修行から1週間。
ようやくパイルドラモンが彼の動きを読むことができるようになってきて、ブイモンとアクアとワームモンと一緒に準備と準備を重ねて、何時間も、何時間も戦って、ヴォルクドラモンを追い詰めた……、そう思ったのに、
「……だっ、ぁああああああーーーー、負けたぁーーーー!!!」
「……クソッ!!!」
私達はヴォルクドラモンに敗北した。
「…………」
ヴォルクドラモンは身体中に傷がついているものの呼吸は粗くない。まだ、本気じゃないって……感じ。
(……あと少し、だと思ったのに)
悔しい。
ただ、悔しかった。
「次だよ、次っ、もう一回っ!!!」
次は負けない。次こそ勝つ。そう思いながら、ヴォルクドラモンとシキさんに向けて、もう一度戦ってとお願いする。
「…………」
ヴォルクドラモンは困ったようにシキさんの方を向いた。
「もういっかい、もう一回やれば、今度こそーーーー」
「……待て」
シキさんが首を振った。
「シキさん?」
「5分の休憩だ。少し体力を回復させろ」
私はシキさんの言葉が理解できなかった。
「……でもっ、!?」
「でもも何もない。休憩を取るんだ」
私はシキさんの言葉に食い下がる。
あと少し、あと少しでヴォルクドラモンに勝てそうな気がする。気がするだけだけど、でも、パイルドラモンはもっともっと上手く動ける気がしていた。だから……、
「ルビー、休憩しろ」
アクアにも止められた。……でも、
「でも、あと少し、……あともうちょっとで勝てるんですっ! あと少し、もう少し、やらせてくださいっ!!!」
あと少しだと思って……、
「勝てる勝てないの話じゃない。デジモン達を見てみろ」
シキさんの言葉を聞いて、『ようやく』私は気がついた。
「……っ!?」
ブイモンとワームモン……ううん、チコモンとリーフモン
「大丈夫、俺ならまだ……、戦えるぞ」
「……アーちゃん、僕もまだいけるよっ!」
まだ、2人は頑張って戦ってくれる。
(……違う)
私達が、私が言えばもっと無理をして戦ってくれるだけなんだ。そんな基礎的なことさえ見えなくなってたことにようやく気づけたんだ。
「……どうする?」
シキさんにそう聞かれる。
「……休憩します」
私の答えは決まっていた。
「わかったのならいい。アクア、お前もそれでいいな?」
アクアもその言葉に無言で頷いた。
「…………フッ」
(……えっ?)
しぶしぶ頷いた私と私の肩を抱きながら無言で頷いたアクアを見て、にシキさんが笑った。
「ルビーもアクアも終わったんだ?」
「ふひー、疲れたよ……って、あれ、シキさん、どったんですか?」
あっちも修行を終えたのかMEMちょと不知火ちゃんがやってきて、変な様子のシキさんを見てそう聞いた。
「ふふふ、いや、昔の……、マナト殿を思い出してな」
シキさんは懐かしそうにそう呟いた。
「「……マナトを?」」
私を見てマナトを思い出した?
「マナト殿は無茶ばかりする人だった」
無茶……、いったい何をしたんだ。彼女が言うほどの無茶とはいったいどんな話だったのか気になって、私もアクアも……ここにきた2人やデジモン達も静かに話を聞いていた。
「ルビーと同じように休憩なぞ取らずに、これ以上のトレーニングと執務だけで1日を過ごすことが多い人だった。『彼の方』達に止められて初めて休憩……いや、休憩時間に私達へと料理を振る舞い、実質的な休憩なぞとっていない日なぞざらにあった」
「……マナトさんが?」
「うへえ、あの人どんだけスタミナがあるんだよ〜〜?」
ケモノガミの世界でほとんど寝ずの番組をしながら、周囲の警戒と料理とかしている光景を思い出した。後々思い出してみると、ありがたかったなぁとは思っていたけど、割と無茶をしていたことに今気づいてしまった。
「そうそう、そんなこともあらましたね。そういったところを見つけられるたびに、『彼の方』達に捕まり、縄に縛られ、休みを取らされるのは日常だったよ」
「懐かしいな」
『彼の方』というのは誰を指しているのかわからない。タイトが話していた友人達なのか、別の人やデジモンなのか……でも、少しだけモヤっとした。タイトとして仲良くしてくれているのはわかるけど……、私達が踏み越えられない一線を越えて仲良くしてるのを想像するだけで、胸の奥がざわめいている気がする。
「……そうなのか?」
アクアが驚きながらそう聞くと、シキさんとヴォルクドラモンは2人して笑い始めた。
「私も初めて見た時は驚いた」
「あれのおかげでQOLが上がったのも事実なのだが……」
「頭が痛いのもまた事実ではあるだろうな」
うんうんと頷きながら笑い合う2人。その姿を見て、楽しそうな2人を見て、モヤモヤがさらに膨れ上がって、
「だから、ああいったところはルビーに似ているな。特にデジモンのことに関しては頑固で融通が効かん。お前達はやはり家族だよ」
だから、この一言で不意を突かれた。
「「ーーーーッ!?」」
不意を突かれた気がして、戸惑って、
「珍しいですね。シキさんがそんな話をするなんて……」
それでも、2人は楽しそうだから、胸がモヤモヤしてるけど、認められたそんな気がして、
「……ふふ、我らが……いや、貴様らを見て、私も少しだけ興が乗ったのかもしれないな……ん?」
だから、シキさん達も、こんな近くに迫ってるのを『気づけなかった』のだろう。
「ーーーー
シキさんのその怒号に合わせて、ヴォルクドラモンが私達の盾になる形で『ソレ』から私達を庇う。
「「「ーーーーッ!?」」」
私達は『いつのまにか』後方へと下がっていた。
「……
私達の目の前には『黒い影』が落ちている。その声はそのあと、聞こえてきたのだとようやく気づくことができた。
「随分なご挨拶だな?」
「『ちゃんとやってる』みたいじゃない……、まあ、『
「……カーラ」
小柄な青色の髪の女性と紫色のフードを被った仮面の人物がこのサーバの中に突然現れた。
「シキさん?」
「この人達は誰ですか?」
仮面の人物の横にいるデジモン。あれが私達を狙って攻撃してきた存在だろう。
でも、シキさんの知り合いらしい人達……なんでよね? しかも、このサーバにはマナトの関係者しか立ち入りできないって言ってたのに、どうして私達を攻撃してきたんだろう?
「あいつは私と同じマナト殿の部下で……」
「
シキさんは苦々しく顔で私達に向けてそう言った。
2017/5/3 PM20:18
「なんなのよっ、これはっ!!!」
チェックインを済ませたビジネスホテルの部屋の中、ダンッ! とかなちゃんポーチをベッドに叩きつけた。
「……落ち着きなよ、かなちゃん」
かなちゃんははぁはぁ、と息を荒げる。しかし、私がかけた声にかなちゃんは睨みつけた。
「落ち着いてられるわけないでしょっ!!!」
……無理もない……、ううん、私が無理を言ってしまった。
「2年前、ルビー達が星野タイトの手を借りて世界を救ったっ! だから、報酬として今の番組が与えられてる? そりゃそうね。世界を救った人間には報酬が与えられるべきよっ! でも、そんなことおかしいじゃないっ!!!」
私達の番組ができた理由。
「でも、なんで、私が、私達が巻き込まれてるわけ? そもそも世界があと2回滅びかけるってなに? 世界滅亡の危機が何度も何度もやってくるこの世界ってなんなのよっ!?」
なんで、こんなわけのわからない事情に巻き込まれたことのいらだち。
「それに対抗する為に、星野タイトは末堂マナトとして動いてる? ふざけんじゃないわよっ! なんで、なんでそんな大事なことを私達に……、ううん、そんなに世界が危険なら世界中の人に教えないわけっ!? 世界が滅ぶのよっ!!! あと少しで、あと少しで……アクアが、みんなが消えてなくなっちゃうの。そんなの納得できるわけないじゃないっ!!!」
末堂マナト……、星野タイトの暗躍。
「そもそもデジモンがケモノガミで、ケモノガミがデジモン? そんな昔から世界にデジモンがいたってことがわかってるなら、もう少し世間の人間も賢く動くことはできないわけ? それで世界が一回滅びかけてんのよっ!!!」
デジモンとケモノガミと呼ばれた太古の存在との因果関係。
「あと、『イグドラシル』って神様はなんなのよっ! 星野タイトを作った? 世界を救う為に? 自分の失敗も暗喩して? バッカじゃないのっ!!! アイツは、……星野タイトはどうしてまだそんなこと続けてんのよっ!!!」
イグドラシルと呼ばれる『全能』の神の存在……そして、
「世界を救う為に生まれて、世界を救う為に戦ってる。しかも、そんな世界の人間は大っ嫌いで、それでも世界を救う為にがんばってる? ふざけんじゃないわよっ! それが世界を救おうとしてる奴の思考? 私達をバカにするのも大概にしろっ!!!」
他者から見た星野タイトの本当の
「なんなのよ、ほんっとなんなのよいったいっ!!!」
納得できるわけない。
「いい加減にしてよっ、誰か夢だって教えてよっ!!!」
私だって納得してるわけない。
「ふざけんじゃないわよっ!!!」
その気持ちだけは強く、強く理解できた。
「……ハァ、ハァ」
怒鳴り散らし、喚き散らしたかなちゃん。息継ぎをするその声はアイドルとは思えないほど枯れてしまった。
「……落ち着いた?」
私はそんな彼女に蜂蜜入りのジュースを手渡す。
「落ち着いてなんかいないわよ。疲れただけ……」
かなちゃんは受け取りながら、ソファーに座り込んだ。疲れ切ったのかソファーの背にもたれかかって天井を見つめている。
「黒川あかね……、あんたはいいわよね。頭が良くってさ……、どーせ、こんなことも予想がついてて、納得だっしてるんでしょ」
いつもの憎まれ口。だけど、いつもよりも言葉に鋭さはない……、チューチューとジュースを飲む彼女の姿は、どことなく仕事の終わった後のアクアくんを連想させた。
でも、これだけは言わなきゃいけない。
「ううん、納得なんてしてないよ」
私だって納得してない。
「納得なんてできるわけがない」
手を強く握りしめたのか、手のひらに爪の跡がついてしまっていた。
「……そ」
私の言葉にかなちゃんはどうでも良さげに、……それでいて、私に視線を向けて話しかけてくる。
「それでどーすんの? 刑事さんやあの胡散臭げな探偵にでもそーだんするの?」
刑事さんは又吉刑事のことで、胡散臭げな探偵とは杏子さんのことだろうか?
「相談はしないよ。まだ少し……、本当に少しだけ引っかかってることがあるの」
まだ、あの2人には話すつもりはない……、というよりも、あの2人に相談する動きを見せたら、たぶん握りつぶされるのがオチだ。かなちゃんには意味深なことを言って誤魔化したほうがいい気がする。この人は口は軽い方だ。
「引っかかってること? いったいどんなことが引っ掛かってるのよ。私達にデジモンを与えたこと?」
かなちゃんが引っかかってる点は確かに気になる。でも私の気になったのはそんなことじゃない。
「そんなことじゃない。そんなことじゃないよ、かなちゃん。私が引っ掛かってるのは……、たった1つ」
そう、私が気になったのは────、
「
『今私達が番組でやっているアレ』だ。
「……は?」
『白い少年の幽霊』。
デジモンカイザーを倒した後、私達の番組のメインコンテンツ。その全容は未だ掴めず、デジモンカイザーとの戦いから何ヶ月が経った今でも私達はその正体を探し続けている。そして、その理由が今、見えた気がした。
「たぶん、これは星野……ううん、末堂マナトからの挑戦状」
「────ッ!?」
そう思う他ない。
「末堂マナトは今の時点で私達の動きを察知した上で、情報をばら撒いている」
「ちょっ、あんた何言ってるのよっ!?」
かなちゃんがジュースを持ってソファーから立ち上がる。その目は動揺していて、私の話を聞く状態じゃない。だからこそ、その状態のかなちゃんを追い詰めるように話さなくちゃいけない。
「じゃなきゃ、おかしい。おかしいんだよ。なんで、末堂マナトは私達の……ううん、そうじゃない。あのときの質問コーナーで視聴者のツッコミどころの多い質問にたくさん答えていたの? わかる人にはわかるように具体的な自分の過去を話してまで……、その理由は……うん、絶対にそうだよ。『私達に気づかれるように』質問に答えていたんだ」
昨年の12月の大晦日。
私達の番組『『僕達』『私達』のEDEN探索記』の慰安旅行で放ったあの言葉の数々。間違いなく話してはいけない内容であった。
「……っ、なんでそんなことをしてるのよっ!? 気づかれたらマズイこと、たくさんあったんじゃないのっ!?」
かなちゃんもそれには気づいていたはず、気づいていたはずなのだ。しかし、あの旅行以降、末堂マナトの過去を話す人物はいない。いなかった。
「マズイことだらけ……、うん、そうだね。絶対に知られちゃいけないことはたくさん……たくさんあったはず……でも、なんで答えたのかと言えば、私、かなちゃん、MEMにフリルちゃんの誰かに、星野タイトのことについて調べさせたかったからだと思う」
アクアくんやルビーちゃんとの関係を調べさせたかった。そして、その証拠が『ない』ことを理解させたかった。
「でも、それはなぜ? なんで彼は調べさせたかった?」
でも、それはなぜ?
なぜ、彼は理解させたかった?
世界を救おうと旅立った少年。
苦しみ、苦しみ抜いた少年の答えとはなんだ?
家族だと話せず、そばに侍ることすらやめ、その身を嘘で隠した少年の意図は?
「…………」
わからない。
「…………」
わかるはずもない。
「…………」
わかるはずも……、
「わかんないなら考えないほうがいいわよ。相手のことなんてわかるわけ────」
『
『
『
「
たった一言、たった一言。
私ややかなちゃん、ルビーちゃんやアクアくん、あの旅館にいたすべての人達の前で彼が歌ったその歌に『真実』が全て込められていることに気がついた。
「────ハァッ!? それっていったいどういうことよっ!?」
「うん、そう……そうに決まってる。そうじゃなきゃおかしい」
そうだ。
そうじゃないと、絶対におかしいんだ。
「いや、おかしいことだらけでしょ? あんたのとびとびの妄想に私を付き合わせないでくれる?」
おかしくない。まずは、最初から……私やかなちゃん達がルナモン達と出会った時のことから考えないといけない。
「かなちゃん、なんで彼は私達にデジモンを預けた?」
そう、あの日、私達が苺プロに呼ばれたあの日に、……彼はなぜ私達にデジモンを……、ルナモンとコロナモンを預けた?
「そんなの決まってるでしょ。ルビーが番組をやるにはアイドルグループ『B小町』として出演した方が世間から疑いの目を向けられないってだけでしょ」
かなちゃんの言った理由もある。
アイドルにすらなってないただの一般人を『EDEN』の広告塔にするには、世間からの目は……ううん、芸能界や政界、『カミシロ』内部からの突き上げは必ず起こった筈だ。
「それもあると思うけど、私の考えは違う」
けど、主たる理由にはならない。
なぜなら、ほぼ無名の2世アイドル『星野ルビー』を番組を動かす中心人物へと置き、芸能界の上の方々からの突き上げはないはずがない。ううん、実際に芸能界からの突き上げは必ずあったはず……それを封殺できるほどの力を彼は持っていた。それなのに、なぜ私達を巻き込んだ?
「……なんなのよ、それは?」
その理由はたぶん、もう1人の中心人物……、『星野アクア』が関わってるって私は考えてる。そして、今考えられる証拠だけで導き出せる答えは……、
「それはきっとアクアくんとその家族を……、自分の大切な人達を遠くからでも守れるように『アクアくんに好意を持つ私達を利用した』んだと私は考えてる」
それが、導き出せる私の答えだ。
「ぶっふぉっ……、アクアに好意!? 私がぁっ!? ……ハアッッ!? そんなわけないじゃないっ!?」
…………そっちに反応するんだ。
「取り繕わないで、話がまとまらない」
そっちはどうでもいいから、話をまとめるとかなちゃんに告げる。
「────っ!? 黒川あかね……、もし仮に、本当に仮に私がアクアのことが好きだったとして、それが何の関係につながるのよっ!?」
顔を真っ赤に染め上げながらも、先程の話を蒸し返されるのが嫌なのかかなちゃんは私
「……意図はわからない。でも、『選ばれた理由』はわかる」
「選ばれた理由?」
そう、私達が選ばれたのは理由があった。
「あの人は『星野アクア』を……、無条件に世界から『星野家』を守ってくれる壁役として、恋愛感情や劣情を抱いてると『推定』される人物を選んだんだよ」
そう……、彼は私達と初めて出会ったあの日。
あの喫茶店で彼はアクアくんへと向ける私達の『
「ハア? 私とMEMと黒川あかねが選ばれたのはそれが理由ってわけ? ……随分とお花畑な脳みそね。そんなことで私がアクアを守るわけないじゃない」
かなちゃんは鈍感だから理解できないかもしれない。
「一定の人格面も考慮したと思うよ。ううん、でもそれ以上に……」
ただ、あの日、彼は『私達』とは話すらしなかった。視線一つ向けなかった。そうあの時の彼の感情は間違いなく、
「
「────ッ!?」
『
「それしか思いつかない」
そうとしか思えない。
「ちょっ、ちょっと待ってよっ!? そんなどうでもいい相手に……しかも、わざわざ素人にハッカー達がウィルス扱いしてる奇天烈な存在のデジモンや『D-3』なんて『カミシロ』の重要な機密を渡すっ!? そんなの普通じゃないでしょっ!?」
「普通の考え持ってる『人間』だったら、あんな『化け物』になってないよ」
「────ッ」
そう、普通の人間に銃弾は避けられない。彼は間違いなく人外のバケモノだ。
「それにルナモンとコロナモン、『D-3』を渡した理由も説明がつく」
「理由?」
「私達にルナモンやコロナモンを渡したのは、アクアくんやルビーちゃんの肉壁としての役割を果たさせる為……、弱いデジモンなんか渡したら、その役割が果たせなくなるから、わざと「
「デジモンを簡単に進化させられる『
「────っ、なんなのよ、それっ!?」
でないと、『ザクソン』のユーゴが番組が始まった頃に現れた説明がつかない。『ザクソン』のユーゴが裏で繋がってることを、[EDEN』の奥底にいる強者達に見せつけたって考えるのが通りだ。
「それじゃ、全てあいつの計算通りだったってわけ? ふざけんじゃないわよっ!!!」
かなちゃんの荒れようが増す。でも、納得できるはず……はずなのに、
「納得がいくんだけど……」
『なにか』を見落としてる気がする。
「『白い少年の幽霊』ってなに?」
その答えはわかってる。
「彼がそこまで重要視する『ソレ』はなんなの?」
彼が私達に見つけ出させようとしてる『ソレ』はいったいなんなのだろう?
「……世界を救う英雄様が考えることでしょ? そんなの私達にはわかんないって」
そう、世界を救おうとしてる……ううん、世界を救わせようとしてる存在の考えがわからない。
「『わかんない』言うだけなら簡単だよ。でも、彼の言った滅びは近づいてる。そして、私達の誰かへのメッセージが目の前にある」
でも、わからないで済ませたらとんでもないことになる気がする。
「知らなきゃいけない。探さなくちゃいけない……でも、それをするには情報が足りない? ううん、もっと近くに『情報』はあるはず……『それ』はどこにある?」
それはどこだ?
「どこにある?」
『カミシロ』?
「どこにある?」
『EDEN』?
「どこにある?」
それとも……、
────ピピビッ!
突如、大きな音がホテルの部屋に鳴り響いた。その中心にあったのは、かなちゃんのデジヴァイス。
「デジヴァイスの通知?」
「……あっ、ゴメンっ……って、なんなのよいったいっ!?」
デジヴァイスの通知がうつされたホーム画面には、
「ネットニュース一覧?」
『
……と、書かれたタイトルが映し出されていた。
「「…………」」
私とかなちゃんは顔を見合わせ、胡散臭げなニュースの内容と、あり得ない新宿の地下鉄の入り口の写真を見つけ……、
「「────これだっ!!!」」
そう、私達は『新宿』のとある事件と、星野タイトとの繋がりを見つけるのであった。
それでね、メフィストさんって呼ばれてるハッカーと戦ったんだ。まるで、自分のデジモンに操られてるみたいな感じで……、とっても怖かったんだよ。ルガモン達が進化してなかったら、勝てなかったかも……、
『……へえ、そんなことがあったんだ』
それでね、それでねっ!
メフィストさんを操ってるデジモン……、グラウモンが放った炎をね! 私に向かってきたその攻撃を、ティアルドモンが守ってくれたんだよっ!
『データ種のデジモンでウィルス種の攻撃をっ!?』
そうなんだよっ!
マナトくんからもらったファイル以上に、みんながんばってくれたおかげでねっ! すぐにみんな成熟期に進化することができたのっ!!!
『…………』
……マナトくん?
『……が、出会って数日でよくそこまで……、』
マナトくん?
『……ううん、なんでもないよ』
なんでもない……? また、話せないことでもあるの?
『話せない……、そうだね。グラウモンを相手にそこまで戦えるなんて思ってなかったからさ。デジモンに関して検証不足を実感しただけだよ……それで、その後の話はなんだったのかな?』
…………。
『……アミ?』
ねえ、マナトくん?
『何かな?』
あのあと、……戦いの後、ふと思ったことなんだけど、ね。
『…………』
グラウモンが少しずつ消えていったんだ。まるで、死んじゃったみたいに消えてったんだ。
『……うん』
私達に向かって、メフィストさんに向かって手を伸ばすそんな感じが……、
『そんな感じが?』
……そんな姿がまるで、
『『
ーーーーッ!?
『……って、思ってる?』
なんでわかったのっ!?
『わかるって……、それに、デジモンは生きてるよ』
……っ、アグモン達もそう言ってたっ!?
あと、……デジモン達の暮らしてる世界…………『デジタルワールド』って世界があるって……、マナトくん?
『……『デジタルワールド』。どこでその名前を聞いた?』
どうしたの?
なんか……、ううん、声が怖い気がする。
『……ごめん、……その世界の名前はどこで聞いたんだ?』
さっき言った『アグモン』達が教えてくれたんだよ。デジモン達はデジモン達の世界……、『デジタルワールド』から来てる……って、
『…………』
マナトくん?
『うんうん、……そっか。教えてくれてありがとう』
どうかしたの?
『…………』
マナト、くん?
『
ーーーーッ!? なんで、秘密にしないといけないの?
『なんで……、そう思う気持ちはわかる。だけど……、絶対に秘密にしてくれ』
絶対って……、まさか、『カミシロ』は『デジタルワールド』のことを隠しているの?
『
ーーーーッ!?
『理由は簡単だ。『多くの人間は君が思うよりも愚か』だからだ』
……愚か?
『デジモン達の世界が『仮に』あったと、『世界中の人に信じられた』……としよう』
ルガモン達の世界のことを、世界の人達に知られたりしたら……、
『
すくい、が……ない?
『少し社会の授業の話をしようか』
…………。
『戦争って、どうして起こったと思う?』
どうしてって、……それは、
『…………』
宗教……とか?
『うん』
あと、土地とか、国同士の問題もある……って、世界史で習った気がする。
『そうだね』
他には……昔の、……第二次世界大戦より前の話だと……労働力で奴隷とか……うん、人を使い潰してたみたいに、『資源』としてほしかったから……だと、思う。
『それもあるね』
うん、あとは……、あれ……もう思いつかない。
『……そっか』
でも、こんなものな気がする……けど、
『でも、1番の理由はそうじゃない』
…………。
『
ーーーーッ!?
『たとえば、家族を殺された』
『たとえば、裏切られたから』
『たとえば、自分よりも豊かな暮らしをしてたから』
『…………』
『……そう、たとえば、』
『
『……から、かな?』
……マナト、くん?
『人は差別をする生き物だ』
そんなこと言わないでよ。
『見た目や思想、……自分と相手を比較して、自分が少しでも『許せない』相手が少しでも豊かな暮らしをしていれば、人は簡単に殺してしまう』
人は……、私はそんなことはしないっ!!!
『君はキミのパートナーのルガルモン達を同じ命だと思えるのかな?』
ルガルモンも私も同じ命だよっ!
それはどんな世界だって変わらない。私が困ってたらきっと、ルガルモンやディアルドモン、ギンリュウモンは私を助けてくれたはずだよっ!!!
『……そっか。そう思ってくれるだけで『私』はうれしい』
マナトくん?
『だけど多くの人間は違う』
ーーーーマナトくんっ!!!
『君達が助け合う中で、虐げるモノもいる』
そんなことないよ。
『君達が支え合う中で、奪い合うモノもいる』
アラタだって、ノキアだってそんなことしないっ!!!
杏子さんだって、ミレイさんだって私を助けてくれたんだよ。
『それが『大多数の人間』だ』
そんなの、そんなのおかしいよっ!!!
『納得はできないかもしれない』
納得なんてできないっ!!!
『でも、考えてみてほしい』
考えるって、何をっ!?
『今、君は70億を超える人数がこの世界で暮らしている』
……うん。
『豊かな暮らしができる人もいれば、貧しい世界で暮らさなければならない人もいる』
そうだね。
『『みんなが望む豊かさ』というモノは、みんなに配るにはあまりにも難しいことだ』
それは……ニュースを見たら、なんとなくだけど……わかる気がする。
『人は卑劣で苛烈で強欲で傲慢だ』
…………、それだけじゃないと思う。
『少しでも自分と違えば、多くの数を持ってその命を殲滅するだろう』
わかりあうことだってできるよ。
『歴史が証明している』
だったら、私達が変えればいい。
『そして、人は『愚か』だ』
それだけじゃないよ。
『すべての人間が『世界は豊かになれる』と信じきっている』
……うん、未来はきっと良くなるって、そう信じてるから……。
『難しいことなのにね』
難しくなんかないっ!!!
ルガモンやルドモン、リュウダモンとわかりあえたように、全てのデジモンとわかりあえれば、きっと世界は良くなると思うよっ!
ううん、違う。
思うだけじゃない。私達が手を取り合えば、世界をもっとすばらしくできるはずだよっ!
『きひひ……っ、……そう思えれば、みんな『豊か』になれるはずだね』
そうするんだ。
そうできるはずなんだよ。
『……そうできたらいいね』
……信じてないの?
『仮に、……仮にの話だ。君が『デジモン達の世界』をバラしてしまったとしよう』
…………。
『
ーーーーそんなのっ!?
『……おかしいって? 君もわかってると思うはずだ』
……わかんないよ。
『
わかりたくないっ!!!
『デジモンは人よりも
いやっ!
『デジモンは人よりも
いやだっ!!!
『デジモンは人よりも
やめてっ!!!
『……そんな世界があったのならきっと、』
言わないでっ!!!
『
そんな話聞きたくないっ!!!
『そうだね。俺も言いたくない』
……?
『信じたいよ』
マナトくん?
『でも、『私』達はそれが起こると思っている』
待ってよ。
『
待ってってばっ!!!
『ごめんね』
ーーーーブツリ、と耳元で音が鳴った。
「…………そんなの、間違ってるよ」
光の消えたデジヴァイスに、無音が響くだけだった。