産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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2017/6/10 AM11:00


「は(・)ー(・)い(・)、『D(・)-(・)3(・)コ(・)ピ(・)ー(・)』の(・)ベ(・)ー(・)タ(・)テ(・)ス(・)ト(・)版(・)は(・)こ(・)ち(・)ら(・)で(・)ー(・)す(・)っ(・)!!!」


各種イベントの説明が終わり、次は私達の番。

流石天下の『カミシロ』。
今は珍しい現場(リアル)限定イベントのはずなのに、一般非公開イベントのはずなのに、説明会が終わった瞬間から全力でお客様達が私達の列に並び始めた。

大量のお客様を捌きながら、大声を張り上げる。


「ベータテストを受けたい方は、こちらに並んで下さーいっ!!!」


全力で、そしてアイドルらしく煌びやかに、声上げ、可愛く、今回の『カミシロ』史上最大イベントに力を入れる。


「はい、そこ……走らないっ! そこっ! 順番抜かししないでくださいっ……って、アイドル『B小町』のファンっ!? 私達のファンなら私達に迷惑かけんなっ!!! こっちは業務委託を受けてる側だぞ!!!」


…………むぅっ、って、パイセンっ!?


「ーーーーかなちゃんっ!?」

MEMちょが動いてるけど、隣のアホの頭を急いで下げさせる。

「ファンの方……、こちらは『カミシロ・エンタープライズ』本社のイベントの為、私達アイドル『B小町』の握手会イベントではございません。これ以上迷惑になるならお引き取りを……、パイセンもっ!」

「ルビーっ、アンタっ!?」

スタッフオンリーにパイセンを投げ入れ、再び接客開始っ!!!


「『D-3コピー』を受け取った方はこちらへ……、ご自身のパートナーデジモンの配布を行っております」

「こちらのヘルメット型デジヴァイスを装着し、電源をつけてください……、それではこれから始まる新世界……、デジモンとの新しい日常をお楽しみください!」

デジモン配布コーナーにはアクアとあかねちゃん、フリルちゃんが中でデジモンを配布してくれている。


「……何やってんだ、あいつら?」

「アクアくんっ! 次のお客さん来てるよッ!!!」


アクアがスタッフオンリーから出てきた私を見てるのに気がついた。でも、お客様達を待たせてるから、早く仕事に戻ってねっ!




「ーーーーはぁあああっ、……疲れたぁっ!!!」

『D-3コピー』が全部捌けるとは思ってなかった。立ちながらお客様捌いて、2時間弱、ようやく仕事がひと段落して休憩に入れた。

「めっちゃ疲れたねぇ」

MEMちょとアクアがなにか持ってーーーー冷たいっ!?

「ルビーもお疲れ」

首筋にヒヤリとした感覚。缶コーラが首に当てられていた。

「アクア、ありがとう」

アクアにイタズラされ、びっくりした。けれど、問題はそこじゃない。

「ルビー、あかねはどこにいる?」

かなパイセンとあかねちゃんを……あれ?


「あかねちゃん? ……さっき、パイセンと一緒にトイレに……っ、あ゛ぁーーーーっっ!?」


トイレ行ってくるぅ〜〜と、消えていった2人。

「逃げられた、な」

「逃げられた、ね」

「逃げられたかな?」

3方向から同時に攻められるような視線を向けられる。アクアの置き場のないジュースの数々から水滴が滴り落ちている。


「『逃げられた、な』……、じゃなぁーーーーいっ!!! アクアも今度あかねちゃんと会ったら、何をやってるか聞いてみるって言ってたでしょーーーーっ!!! それをまんまと逃げられて……、このスカポンターンッ!!!」


そうだ、これは私だけのせいじゃない。
アクアも私と同じように聞くと言っていた。だから、アクアも同罪。むしろ彼女以外とジュースを買いに行って彼女から目を離している分、そっちの方が最悪じゃない?

「まぁまぁ……、かなちゃん達にも秘密にしたいことがあるんだよ。……で、アクたんはこの後どーすんの?」

ナイスMEMちょ、このままうやむやに……、ん?

「どうする……とは?」

「かなちゃん達、……たぶん、結構ヤバイことしてると思う。アクたんが声かけないってんなら、私達も好きに動く……けど、」

そーだ、そーだとヤジを入れる。そのおかげか、アクアが一歩後退するけど一言、


「……今は様子を見たい」


そう言った。そう言っていた……、それって、

「それは『動かない』ってこと?」

動かないのと同じじゃん。

「『本人達から話を聞きたい』ってことだ。当事者として助けられる場面もあると思うが、第三者からの意見だって大事な場面もある。本人達が行き詰まった際に手伝ってやれるのも、大事ってだけだ」

「ふーん……、結局動かないってことでしょ? アクアは先輩やあかねちゃんが何やってるか知りたいとは思わないわけ? かな先輩とあかねちゃんはあんな状態だよ?」

「思ってはいる……、ただ、困っているなら本人がいずれ話に来るはずだ。それでも隠してるのは、余程危険なことに足を突っ込んでいて、話しづらいってことか、何か口止めをされているか……それとも、ーーーー、」

アクアと口論になる。不知火ちゃんとMEMちょが動き出す、その直前のことだった。


ーーーー、ゥ(・)ゥ(・)ウ(・)ウ(・)ウ(・)ウ(・)ウ(・)ウ(・)ッ(・)ッ(・)!!!


『カミシロ』社内に激しくなるサイレン。


「ーーーーッ!?」

「ーーーーなに、なにっ!?」 

急いで周囲を見まわし、地震の揺れが起きたのではないのかと、火災が起きたのではないかと見回っている……、


『『ア(・)ヴ(・)ァ(・)ロ(・)ン(・)・サ(・)ー(・)バ(・)』に(・)侵(・)入(・)者(・)ッ!!!』

『『ア(・)ヴ(・)ァ(・)ロ(・)ン(・)・サ(・)ー(・)バ(・)』に(・)侵(・)入(・)者(・)ッ!!!』

『『ア(・)ヴ(・)ァ(・)ロ(・)ン(・)・サ(・)ー(・)バ(・)』に(・)侵(・)入(・)者(・)ッ!!!』


そのときだった。
サイレンの理由がわかってしまった。


『当社にお越しのお客様は急いで避難をしてください!!!』


あんの、くそハッカーどもぉっっ!?

「……っ、休憩は終わりだ。イベントに参加している一般客を避難させろっ!!!」

「ーーーー、OKッ!」


「もぉおおおっ、なんでユーゴはこんな忙しい日に来てんのよぉおおおおおおーーーーっっ!!!」




第十話 謎のデジモン 落ちる雷 喫茶店の奥の『翡翠色』

 

 

銀色の触手……、オウムガイのような形をしたバケモノ。

 

『ニュルン』と音を立てて、私に迫る。

 

 

ーーーードンッ!

 

 

……音を立てたのは、かなちゃんだった。

 

私とオウムガイの間に割り込み、フレアモンの悲鳴が聞こえた。

 

クレシェモンの叫び声が響き渡る。

 

私はただそれを見るだけしかできなくて、

 

かなちゃんへと伸ばされた触手は、

 

何人も、何人も人を倒してきた触手は……、

 

 

 

 

 

 

 

 

『ス(・)ピ(・)ー(・)ド(・)ス(・)タ(・)ー(・)』

 

 

目の前の『剣』によって切り裂かれた。

 

『……っとと、……間に合った、のか?』

 

白い牙を持つオオカミのような、鉱物のような体を持つデジモンが言った。

 

『間に合ったようだな』

 

白いオオカミのようなデジモンの横に、ドンッ、と飛び降りた黒い獣人のようなデジモン。

 

(……助かった?)

 

2体は起きているの私達を見て、安心したかのようにため息を吐いた。

 

『誰だよ、『緊急事態さえなければ、ただ見守るだけの仕事だから、そこまで危険性はない』って言った奴……、バリバリ危険だらけじゃねぇかっ!?』

 

『子守りだけだと思っていたのだがな。こうも危険に突っ込んでいくとは……、少し肝が冷えた』

 

『少しどころじゃねぇーっ、つうのっ! ……こちとら『まだ』、この姿にしかなれねぇんだから、先輩であるアイツがやるべきだっつったのに……、あんのクソオカマ野郎っ! 今度会ったらただじゃおかねぇっ!!!』

 

『気持ちは理解できる……、しかし、……お前、あのバケモノを相手に、一度でも攻撃できると思っているのか?』

 

『言わないでくれよ、りゅ……っ、R(アール)ッ、それがいっちばん悔しいんじゃねえかっ!!!』

 

『…… T(トール)、名前で呼ぶな。仕事中だ、コードネームを使え……バレたらことだぞ』

 

デジモン達は軽口の叩き合い、誰かを罵るような言葉……、ただそれだけが耳の中へと聞こえてくる(はいってくる)。

 

 

『わかってるつーのっ! ……それでジョーちゃん達は大丈夫かい?』

 

 

オオカミのようなデジモンは『ニカッ』て笑いながら、私の方へと優しく笑いかけてきた。

 

(……っ、あっ、あかねっ!?)

 

(大丈夫だよ、クレシェモン)

 

ようやく頭が回ってきた。

今の状況と、目の前のデジモン……、私達を助けてくれたらしい2人のデジモン。白いオオカミのデジモンは私達を心配するように、黒い獣人のようなデジモンは周囲を警戒するように……、ううん、私達が追っていた2人組の方へと視線を向けていた。

 

『……あなた達は?』

 

……偶然、と言うには上手くいき過ぎている。

たぶん、『カミシロ』から送り込まれてきた監視兼護衛と考えるのが妥当だろう。

 

『ーーーーっ、ああ、わりぃんだけど、その質問には答えるられないんだ。強いてあげるとするなら、通りすがりのハッカーデジモンだよ』

 

キラン、とカッコつけているように、白いオオカミのデジモンが言った。

 

(んなわけないだろっ!)

 

(カナッ!?)

 

隣でかなちゃんが怒っているのにも関わらず、『決まったぜ』とでも言いたげなその顔つきに、黒い獣人のデジモンが頭を叩くのが見えた。

 

『あいたっ!?』

 

『カッコつけてる場合か? ……すぐに退散するぞ。お前達もこの場からすぐに離れろ、巻き込まれるぞ』

 

くぅうう〜〜と唸り声をあげるオオカミデジモン……、よりも、今黒い獣人のデジモンが真剣な表情で『巻き込まれる』と言った。

 

『巻き込まれる? ……てか、アンタ達いったーーーー、』

 

かなちゃんがそう聞こうとしたそのときだった。

 

 

『ーーーー来(・)る(・)ぞ(・)』

 

 

黒い獣人が私達の前に躍り出る。

 

 

 

『『武(・)電(・)破(・)弾(・)』ンッッ!!!』

 

 

 

空間に響き渡る閃光。

 

銀色のオウムガイ(バケモノ)を貫く極光。

 

私達の肌に触れて、『ビリビリ』と感じたその感覚によって、初めて『雷撃』だと感じ取れる『必殺』の一撃。

 

 

『ーーーーッ!?』/『ーーーーむぁッ!?』

 

 

桁違いの威力の『必殺技』が私達の目の前を……、『余波』だけで私達を警戒態勢に移させる……ううん、違う。

 

(余波だけで、……もしかしたら、余波だけでやられていた?)

 

黒い獣人のデジモンが私達の前に立って庇わなければ、私は……私達はやられていた?

そんな疑問が頭の中でよぎっていた。

 

『なんなのよいったいっ!?』

 

『『…………ッ!?』』

 

背後を見れば驚いて尻餅をついたかなちゃんが『雷撃』の方を見て怒っている。

 

(…………っ!?)

 

フレアモンとクレシェモンがただ、ずっと後ろに飛んでいる。顔には冷や汗をかいていて、あのデジモンの必殺技がどれほどの威力だったのかを表情で表していた。

 

『相変わらず、すげーな、あの嬢ちゃんは』

 

『この世界の中なら『人間以外』は問題ないとはいっても、被害が甚大すぎる……、腹が痛くなってきた』

 

その必殺技の影響は大きかった。

焼けこげた雷門に、境内の社が雷から発せられる熱波で燃え広がっている。木々は焦げつき、しめ縄はブツンとちぎれて見るも無惨な姿だった。

 

(……これが、デジモンの必殺技?)

 

私達が最も脅威と感じられたキメラモンの必殺技。その威力を遥かに超える脅威の雷は、あの戦いを越えた私にさえも背中に怖気すら感じさせる。

 

 

『……じゃ、俺達は帰らせてもらうってことで』

 

 

オオカミデジモンは白い背中を私達に向け、そんなことを言った。

 

『ーーーーえっ!?』

 

理解が追いつかない。

 

『言われたとおり、巻き込まれないように注意しろ。死にたくなければ、な』

 

黒い獣人のデジモンは大きな盾をどこかにしまいこみ、オオカミデジモンの白い背に乗っかった。

 

『……おっ、おいR。いきなり乗んなよ。重いんだからさっ!』

 

『乗りやすい背中があったからな。いろいろと口走った罰だ』

 

最後まで軽口を言い合いながら、彼らは私達から離れようとする……いや、

 

『ーーーーなっ、ちょっと待ちなさいよっ!? フレアモンッ!!!』

 

かなちゃんが声をかける間も無く、その姿はどこかへと消えて無くなっていた。

 

『おう、わかった……… 、ーーーーッ!?』

 

『だめっ、……あのデジモンの必殺技の被害がこっちにも広がってきてるっ!?』

 

ビリビリと弾ける感覚が背筋をなぞる。煌びやかな翠の光が天を揺らし始める。即座に何が起こるのか理解して、かなちゃんの腕を全力で引っ張った。

 

『追いかけるのは後、かなちゃん……逃げるよっ!!!』

 

『ーーーーッ、待ちなさ』

 

私達はそれぞれフレアモンとクレシェモンに体を強く引っ張られる。視界の端に映った閃光。

 

 

『ーーーー『雷撃踵(らいげきしょう)』ォッッ!!!』

 

 

それがあの事件の最後に見た真実だった。

 

 

 

2017/6/10 PM03:07

 

 

「……ねえ、これで本当によかったの?」

 

お客様の避難が終わって、アクアくん達が『EDEN』へと入っていく姿を見送った後、かなちゃんから不意にそんなことを聞かれる。

 

「ーーーーなにが?」

 

……と、私は聞くしかない。

 

「『なにが』、じゃあないでしょうがっ! アクアとルビーに話してないことがよかったのかって聞いてんのよっ!!!」

 

そんなことはわかってる。わかってはいるのだ。

 

「……よくないよ」

 

「なら、話せばいいでしょっ! ……、なんでーーーーッ!?」

 

わかってるんだよ。そんなことはっ!!!

 

 

 

『話(・)す(・)な(・)』

 

 

私はかなちゃんの目の前にデジヴァイスを突き出す。その中の1番上に書いてある文字列だ。

 

 

『誰かに伝えることは許さない。書き記すことも、逃げることさえも、許すつもりはない。仲間と談合しようものなら、どうなるかわかっているだろうな? 貴様の想定の100倍の苦痛を、貴様の大事な人間に与えることにする……、『だから、話そうとしない方がいい』』

 

 

これは『脅迫』だ。

 

 

「……なによ、これ?」

 

私の反応もそうだった。かなちゃんの思った通り、言葉の通り、この文章を見た時に思わず、『なにこれ』と呟いてしまった。

 

 

『指定の時間にこの場所に来い。現場にいた協力者も連れて来い。逃げることは許さない……、地獄を見たくなければ言うことを聞け』

 

 

私のデジヴァイスに送られてきたメッセージ(それ)は、

 

 

『これは警告ではない。ただの『業務命令』だ。それ以上でもそれ以下でもない』

 

 

このメッセージは『あくまでも』脅迫ではないと告げている。だが、

 

 

『違反したのならどうなるかは、わかっているな?』

 

 

そこに私の意思は存在していなかった。

 

 

「……浅草の後、これが送られてきたの?」

 

 

かなちゃんの言葉に私は無言で頷く。

 

「あのあと、に? ……バッカじゃないのっ!? なんですぐに私に話さないのよっ!?」

 

かなちゃんは怒った……、当たり前だと思う。

私はかなちゃんに『あの話を話さないようにして』とお願いはしたけれど、どうして話ちゃいけないのかを説明することは決してなかった。

 

「ここに書いてある『協力者』って私のことでしょ? だったら、私も知る義務があるじゃないっ! なんで、話さないのよっ!!!」

 

こうやって怒るから話したくはなかった。けれど、後回しにしていいことじゃない。

 

「かなちゃんに言ったら、すぐにアクアくんに話したがるでしょ? ……そうしたら、……人質を取られてるみたいだから、動けなかったんだよ」

 

かなちゃんは急いで誰かに……、アクアくんに話すのは予想ができていた。だから、説明自体当日になるまで話したくはなかったのだが……、

 

「…………っ、それはっ、そうかもしれないけどっ……、っ」

 

結果的に早く話せたので、ついでに、あの日のことも話しておこう。

 

「あのデジモン達は、……たぶん、私達の監視と護衛をやってくれてたんだと思う。でも、思った以上にイレギュラーが起きてしまったせいで、私達の前に姿を表さなくちゃいけなかったんだ」

 

「そうでしょうねっ! あんたが周りに話さないように何度も何度も私に牽制してくるもんだから、ずっとあの日のこと考えてんのよ。時間さえあればバカだってわかるわ、そんなことぐらいっ!」

 

かなちゃんはそんなことはわかってると怒鳴り散らしはじめた。

 

 

「だいたいねっ! 浅草に入る前なんか、あんなバケモノが出てくるなんて思ってなかったものっ! 他の奴にわかるわけなんかないっての!!!!」

 

あっ、これは長くなるな……、でも、かなちゃんの言うとおりだし、何も言わない方がいいんだよね?

 

「イレギュラーよ、イレギュラーぁっ! あんなの勝てっこないでしょうがぁっ!!!」

 

そうだね。

 

「そもそも、そう言うのは『最初に』言っておくべきでしょっ! なんで、わたしがっ、あんたなんかにっ、気を使わなきゃ、いけないわけぇ? ルビー達に睨まれたのは私なんですけどぉっ!?」

 

それはそうです、ごめんなさい。

 

「アクアも『余計なことはするな』とでも言いたげな目でこっちを見てくるし、メムも『また、かなちゃんやらかしたの?』とでも言ってるかのようなやれやれ顔してくるし、ルビーに至ってはアレよ?」

 

……ルビーちゃん?

 

 

「『まったくもぉ、先輩なんだからしっかりしてよねっ!』」

 

 

ーーーーぷっ!?

 

「なんて声かけてきたのよ、あんのバカはっ! こっちの気も知らないでっ!!!」

 

笑いかけた。

悲劇のヒロインぶってるかなちゃんは私が笑いかけたのには気づいていないようだ。

 

「だいたいねぇ、社会人なんだから報連相ぐらいしっかりしなさいよっ! コロナモン? なんで目を逸らしてるの? まさか、アンタ知ってたわねっ!!! なんでコロナモンには教えて私には教えないのよ、黒川あかねぇっ!!!」

 

……えっ、あっ、その……カナ、ごめん。

 

「『まーた、そういうところだよ。かなちゃん』とでも言いたげな顔しやがってっ! わたし、当事者っ! 当事者! アンタに巻き込まれた当事者なのっ!!! そこらへんわかってる?」

 

しょうがないでしょ。そういうところがあるのはかなちゃんが悪いんだから……って、バレてるっ!?

 

「もーいいわ、もういい、ここには常識てきーな? いわゆる人間らしい人間って、私しかいないってことはじゅーぶん、わかりました」

 

……いらっ、

 

 

「ですがぁ、私はまだ納得しておりませんんっっ!!!」

 

 

ううん、怒ってない。私は怒ってないよ。

 

「アンタはねぇ、あんたはいつもそうっ!」

 

かなちゃん『なんか』に怒ってたら、時間の無駄だもん。

 

「私の負担なんて考えないで突っ走るんだから、いっつも私が困っちゃうの」

 

こんな女に怒ってもしょうがないじゃん。

 

「私の気持ち考えたことあるぅ?」

 

はい、考えたことぐらいあります。

 

「黙ってないで話ぐらいしたらどーなの?」

 

はい、すみません。

 

「私だってねぇ、す・こ・し・はっ! 考えってモンがあんのよ」

 

そうなんですね。

 

「なぁにが、『かなちゃんに言ったら、すぐにアクアくんに話したがるでしょ? ……そうしたら、……人質を取られてるみたいだから、動けなかったんだよ』……、ふざけんじゃないわよッ!!!」

 

…………イライラッ!

 

「そりゃ、話すわ。話しますとも……、それで、家族に何かあった? 知らなかったんだからしょーがないでしょっ!!!」

 

それは、いらっ、しょうがないよねっ!

 

「私だってねぇ、知ってたら自重だってするぐらいの脳みそはありますぅ! でも、頭のいいあかねちゃーんにはわかんないぐらいの脳みそがねぇっっ!!!」

 

イライライライラッ!

 

「『でもね、でもね。かなちゃんわかってよ? かなちゃんなら私の気持ちわかってくれてるはず……』なぁ〜〜んて期待されたら、私も困るぅって言うかぁ〜〜、どーしようもありませんって言うか〜〜」

 

イライライライラッ!

 

「そんなメンヘラの相手なんかできるわけねぇーだろっ! 死ねッッ!!! ……が、私の答え」

 

イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ…………、

 

 

「わっかるぅ? くろかわ、あかねちゃーん?」

 

 

ーーーーぶっちぃっ!!!

 

 

「表でろ、敗北者」

 

「何よ、社会不適合者」

 

 

「「やってやろうじゃない(ねぇーか)っ!!!」」

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……で、どーすんの? そこ、行くの?」

 

「……うん、行く」

 

「日時は……、……えっ!?」

 

 

 

 

2017/6/12 AM08:00

 

 

「時間通り、……流石、芸能界で長年活躍してきた2人だ」

 

 

いらっしゃいませ〜〜、と笑顔が素敵な店員さんに声をかけられる。彼は時間を気にするように、私達を見た後時計に目を移した。

 

「…………」/「来てやったわよ」

 

チラリ、と、視線を向け、トントンと机を叩……、ドンッ!

 

 

「……で、調べていた相手が目の前にいるんだ。そこに座るといい」

 

 

机が指に……っ、どんな馬鹿力で叩けばこんなふうに割れるって言うの?

 

「座れよ」

 

「「…………」」

 

かなちゃんと頷きあって、割れた机の間、彼の正面に座る。

 

「邪魔だな」

 

「「ーーーーッ!?」」

 

指を鳴らした瞬間、割れた机が新品に変わった。どんなマジック……かは、わからない。しかし、あのときも思ったことだけど、いったいどんなふうに生きればこんな動きができるのだろう……と、そう思った。

 

「それで、コソコソ調べ回っていたみたいだが……結果は良かったのか?」

 

笑っている……だけど、『怒っている』。

旅行の時とは違う……、けれど、確実に私達に向けて彼は『怒っていた』。

 

「……弁明はしないんですね」

 

「しねぇよ。するわけないだろ? 俺の大事な時間を使ってやってるんだ。推理(はなし)ぐらい聞いてやる。話してみろよ」

 

しない……、ただ、それだけ。私達と彼の力の差は変わらない。だけど、私達は推理(はなさ)ないといけない。

 

「では、私達の推理をしましょう」

 

ここからは私の妄想、私の予想の入った推理の時間だ。

 

 

「星(・)野(・)タ(・)イ(・)ト(・)さ(・)ん(・)」

 

 

駆け引きを始めましょう?

 






『……『パラダイスロスト計画』』


『今回は君達のおかげで暗号化されたこの資料を手にすることができた。『カミシロ』の……いや、『岸辺リエ』の目的に一歩近づいたということかな?』

『…………』

『……で、岸辺が考えてるっつう、その計画……、あんたはなんかわかったことがあんのかよ?』

『……いえ、私もリエさんのことは何も』

『それはそうだろう。私だって初めて聞いた話だ。彼女ですら知らないのは当然……むしろ、知っていたら驚きだったよ』

『……何か、気になることでもあったのかな? 神城悠子さん。君ほどの人物が気になる』


『『美(・)樹(・)原(・)』』


『計画の主任責任者の横に、末堂アケミと並んで記入されている人物だな……、名前の記入もない。私自身の情報網にも『カミシロ』と『美樹原』という人物の関係はかかっていない。随分と興味深い人物だ』


『こ(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)苗(・)字(・)の(・)社(・)員(・)を(・)私(・)は(・)知(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)』


『『ーーーーッ!?』』

『それって本当っ!?』/『心当たりとかねぇのかよっ!?』

『はい……、私の身近……いえ、父が経営していた頃の『カミシロ・エンタープライズ』にもそのような人物の名がなかったことは記憶しています』

『……ふむ』

『事態は思ったよりも根深いみたいだね……、助手くん』


『……助手くん?』



2017/5/2↓ ↓M←:→8


「……で、君のパートナーデジモンであるルガモンとリュウダモンはプロトタイプデジモンと呼ばれる枠組みに属するデジモン達だ」

……マナトくん。

「この枠組みに属するデジモン達は他のデジモンに比べ強力な力を持ち、とある条件の下より、力強い進化へと辿り着く可能性に満ちている」

私の記憶が正しければ……、ううん間違っていることだってある。

「その可能性とはーーーー、」

私の記憶が正しい……、はずはない。ないはず……、マナトくんはそんなことしない。そんなことしないはず……だよね?

『スラムにいた頃、友人達と一緒に家を作ってた頃かな? 海辺の綺麗な砂浜付近、ヤシの木の下にみんなで住めるぐらいの小さな小屋を作ったんだよ……、今思えばあの頃が1番幸せだった』

……なぜだかその1場面が、頭の中でフラッシュバックした。

「……アミ、どうかしたのかな?」

ーーーーッ!?


「上の空みたいだったけど、仕事で何かあったのかな?」


マナトくんが覗き込むようにして机と私の間に入ってきた。

(あったよ。あったけれども……、というか、顔が、顔が近いっ!?)

私の顔を見上げるように女の子みたいな綺麗な顔が私を見上げてくる。ただ、ただそれだけで胸がドキドキしてくる。

(……ありましたっ! なんて、すぐに言えたら、どんなに楽か)

確信を突かれたのと、顔が近いことで頭が混乱してくる……けど、言い訳できるほど頭が回ってない。ええっと、とりあえず……、


「……ぅえでっ、うん、あ、その、……いえ、そんなことは…………? ありませんよ?」


否定しておけばなんとかなる、かな?


「何かあったんだね?」

「…………はい」


なんともなりませんでしたっ!?

「俺のこと……は、何かあったらあいつらが報告してくるだろうし……ってことは、『カミシロ』の件か?」

こわい、コワイ、怖いっ!? ……マナトくんの目が一瞬だけ怖い目になった。私に向ける眼差しは優しいけど、逃げる隙なんて一切ない。まるで、怒った杏子さんを相手にしてる気分だっ!?

「……まっ、話した方が楽になるって、話してごらん?」

「ーーーーっ!?」

あっ、優しい声……うん、私話す。話しちゃう……って、そんな簡単に……、

「さっ、さっ」

簡単に……、

「話してごらん」

「…………はい」

話します。話しますともっ!

「さあ、どうぞ!」

ええい、ままよッ!!!


「『パラダイスロスト計画』って知ってる?」



ーーーーゾ(・)ク(・)リ(・)ッ(・)ッ(・)!?



「……どこで知った? ……なんて言うつもりはないよ。入ったんだね、『ひみつのへや』に」


一瞬、時が止まった。

「ーーーーッ!?」

時が止まった気がしただけ?

あまりの恐怖に感じ取れなかった? 

……、でも、マナトくんは……うん、いつも通りだ。

「……どこまで知ってる?」

いつも通りじゃない。ただ、ただ哀しそうな感じがする。まるで、

「……名前だけ」

『知っちゃったのか』って言いたげなそんな雰囲気だった。

「……ああ、そうだね。あの計画書には『それだけ』しか書いてないからね。バレて困りそうな物は全部実物(リアル)に隠している。リエさんが余計なことをしていなければ、ね」

「……やっぱり、マナトくんが『美樹原』なの?」

「そう、かな? 一応、秘密にしておいてくれると助かるかな?」

『……そっか』と、腑に落ちる感覚と、『嘘だよね? 冗談だよね』と問い詰めたい気持ちがごちゃ混ぜになる……ただ、

『……こちら、美樹原』

マナトくんがそう名乗っていたことを思い出して、私はマナトくんのことで記憶違いなんてしないんだな……と、確信を持ってしまった達成感だけが、少しだけ心にゆとりを持たせた。

「……なんで、と言いたそうな顔をしてる。無理もないかな?」

うん、……ととりあえず頷いた。

「『私』と『末堂さん』と『岸辺リエ』の目的は違うよ……、社員に向けた『表向きの理由』は私の目的が採用されてはいるがね」

『私』……ああ、そっか。

『私』って、『美樹原マナト』として話すときの話し方なんだ。また、マナトくんのことを1つ覚えることができた。

「表向きの理由?」

それ以外にも、知りたいことはあるけれど……、マナトくんのことがまだ気になるかな?

「君の質問に答える前にアミに聞きたい。答えなければ君に説明することはできない」

そんなことは決まってる。

「……答えるよ」

私はマナトくんが知りたいから、マナトくんのことを聞きたいんだ。だからーーーー、


「『イ(・)ー(・)タ(・)ー(・)は(・)ど(・)こ(・)か(・)ら(・)来(・)た(・)と(・)思(・)う(・)?』」


…………いーたー?

「……どこから? どういうこと?」

イーターはイーターでしょ?
あの銀色のウネウネの、化石のオウムガイによく似た、銀色のバケモノ。

「そのままの意味だ。イーターはなぜ『EDEN』に現れ、人やデジモンを襲い、『EDEN症候群』なる病気を引き起こすのか? その原因はいったい何なのか、君は詳しく知る必要がある」

「…………」

それはまあ、確かに……でも、その答え?

(…………)

(…………うーん)

(うーんっ!)

「『わからない』が答えでいいかな?」

わからない。
マナトくんのその言葉に私は頷いた。

「それでは説明しよう」

そこから始まったのはイーターの歴史だ。


「今からだいたい10年前『EDEN』がまだ世界になかった頃……、『クローズドβテスト』を行った時の話だ」

…………、

「『クローズドβテスト』には当選した3人の少年少女と、神城悟の子供である神城兄妹の5人が参加することとなった」

…………、


「少(・)年(・)少(・)女(・)達(・)は(・)β(・)テ(・)ス(・)ト(・)が(・)終(・)わ(・)っ(・)た(・)後(・)、次(・)々(・)と(・)不(・)可(・)解(・)な(・)こ(・)と(・)を(・)話(・)し(・)出(・)し(・)た(・)」


…………ん、

「少女は事件に巻き込まれた」

「少年は見たこともない別の世界へと行った」

「少女は新しい友達ができた」

「神城妹は兄を置いてきてしまった」

「そして、4人は口々に揃えてこう言った」

…………キン、


「「「恐(・)ろ(・)し(・)い(・)も(・)の(・)に(・)神(・)城(・)兄(・)が(・)捕(・)ま(・)っ(・)た(・)」」」


ズキン、と、頭が痛くなった。

「……と、どうだったかな? この話をここまで聞いてみて」

マナトくんの声で頭がひいてくる。いったい、なんだったのだろうか?

「……その頃に、既にイーターは存在した?」

「その通り」

ただ、話は耳に入ってたから、ただただそう思えた。

「……というよりも、結構厄介な話になっていてね。『デジタルワールド』から来たデジモン達が言うには、ね」

…………ん? デジタルワールド?


「『人(・)間(・)達(・)が(・)イ(・)ー(・)タ(・)ー(・)を(・)連(・)れ(・)て(・)き(・)た(・)』」


デジタルワールドから来たデジモン達がそう言っている?

「……と、いうわけらしい」

そう言っている……、そう言ってーーーー、

『恐ろしいものに神城兄が捕まった』


恐(・)ろ(・)し(・)い(・)も(・)の(・)。

「ーーーーッ、それって、……まさかっ!?」

「そう、そのまさかだ」

人間の子供が来たから、イーターが現れた?

「『EDEN』を作った時に『EDEN』とデジモン達が暮らす世界『デジタルワールド』が繋がってしまって、その影響でイーター達がデジタルワールド現れたみたいなんだ」

そんな、そんなことってーーーー、っ、ならもしかして、

「……じゃあ、もしかして」

「デジタルワールドは今イーター達の狩場になってる」

(ーーーーッ!?)

それはそうだと思った。
『EDEN』の中で、デジタルシフトの中で、イーターのいる場所には、人もデジモンもどこにもいない。そこにあるのはイーターと中身の抜けた『EDEN症候群(ヒト)』だけ……、イーターから逃げるようにデジモン達は必死になって逃げ回っている。

「デジタルワールドの中で、デジモン達はイーターに食われ、戦線も疲弊し、至る所が戦場へと変わり、強者は今も戦い続けている……、人間のせいでね」

「…………そんな」

その事実だけで心が苦しくなってくる。

(ノキアの連れているアグモンやガブモン……、もしかしたら、ルガモン達まで)

『イーターが暴れ回る世界(そんなばしょ)』から来たのか……と、その事実に頭が再び痛くなってきた。

「まあ、これも本当かどうかは『私』達にはわからない。出会ったデジモンから話を聞いただけだから……ね」

「…………」

マナトくんはそう言って、私にフォローをしてくれる。優しい……けど、


「こ(・)こ(・)で(・)問(・)題(・)が(・)発(・)生(・)し(・)た(・)」


マナトくんの深刻な言葉(こえ)に現実が戻ってきた。

「ーーーーッ!?」

問題、問題ってなに?
イーターの存在? ……でも、デジモン達はデジタルワールドから逃げてこれてるし……、でも、それじゃ問題ってーーーー、

「イーターの対抗策はデジモン……ってのは知ってるよね?」

「うん」

す……いや、お義父さ……、末堂さんから教えてもらったことだ。
デジモンはイーターの攻撃に耐性があるから、ハッカーである君達がデジモンを使ってイーターと戦ってほしい……、そう教えられた。でも、それがなんなんだろう?

「もし……、もし万が一デジモン達が絶滅して」

それが、なにか関係があるの?

「……うん」

絶滅したとしてーーーー、


「イ(・)ー(・)タ(・)ー(・)が(・)次(・)に(・)狙(・)い(・)を(・)定(・)め(・)る(・)の(・)は(・)ど(・)う(・)い(・)う(・)存(・)在(・)か(・)な(・)?」
 

いーたーが、狙いを、さだ……、

「ーーーーッ!?」

それは、もしかしてーーーーっ!?

「……っ、でも、イーターは現実世界に出てこれないよっ!? 流石に『EDEN』を封鎖すればからリアルな存在として現れるとは思えないよっ!?」

そう、イーターはデジタルシフトから出てこれない。だから、現実の人達はイーターは遭遇しない。これが今の……、


「イーターが『人間(エサ)』を求めて、物体も摂取できるようになったらどうする?」

「…………っ」


それは……、そうだけどっ、


「『パラダイスロスト計画』とは、自由にデジタルウェイブを操り、好きな場所に『デジタルシフト』を発生させる計画だ」


ーーーー点と点が線で繋がった。


「デジタルワールドと人間界を繋ぎ、イーターの狩場となったデジタルワールドへと攻勢を賭け、イーターの世界を特定し、デジモンと協力してイーターという化け物を殲滅するのが私の目的だ」


マナトくんの……、ううん、『美樹原マナト』の目的。


「その為に、計画の第一段階として『D-3』を開発した」


マナトくんが親しくしていた金髪の少女のことを思い出した。


「第二段階は芸能界でかつて突出していたアイドル『星野アイ』という影響力の強い人間が所属している事務所『壱護プロ』へ依頼し、デジモン達は人間と同じ生き物であると理解を促した」


その少女達が戦ってるところを見て、私がハッカーになれたら、デジモンを上手く使えたら、マナトくんの手助けができるんじゃないかって思って、『あの日』、『クーロン』に行ったんだ。


「第三段階として……、次の『EDEN』のアップデートイベントにて、『D-3』の劣化コピーを参加者に配布、デジモン達との交流を進めるβテストを実行する」


次の……、次の『カミシロ』のイベント告知にあった、現地限定の『秘密の企画』っ!?


「こうすることでデジモンと人間は同等の立場であると人々に実感させ、……その上でデジモン達の現状を世界へと周知し、『D-3』を手に取った人間達と共戦う為」


…………、


「そのためのターニングポイントが『パラダイスロスト計画』」


…………そっか、


「君が探し当てた『ひみつのへや』の中にある『カミシロ』……いいや、岸辺リエ・末堂アケミ・美樹原マナトの3人の『カミシロ』史上最大の秘密計画の真相だ」


マナトくんはそこまで考えてたんだ。


「…………」

「ちょっとついてきてくれないかな?」

「……えっ!?」


マナトくんに連れてこられたのは、森の中に一際目立つ……、というより、悪目立ちしているコロシアムだった。

なんでこんなところに……、と思いながら、中に入っていくと……、舞台袖のような場所へと連れて行かれた。そこにいたのはーーーー、


「また、負けたぁっ!?」

「あのホエーモン*1強すぎですっ!?」

「……これで3回目ですね」


私のデジモン達だった。


「……ルガルモン達?」

「ここは君のデジモン達とシンが修行している場所だよ」
 

対岸にいるのは『シン』と、マナトくんが呼んでいたデジモンと巨大な鯨みたいなデジモン。コロシアムのアリーナはどことなく海を感じさせるような……、いや、潮の香りが漂ってくる。

ここ、本当に海みたいな場所だ。


「くっそ〜〜っ、悔しいぃぃ〜〜っ!!!」

「完全体同士なら勝てるのですが……、やはり、難しいですね」

「オレ達は完全体3体で究極体のデジモンに勝てたのだから、負けることはない……はずなんだ」


どうやら、ルガルモン達は反省会をしてるみたいだ……けど、あの様子からして、ホエーモンになんども負けてる? そんな感じがした。


「けど、やっぱりネックなのは時間制限だと思います。5分で自分達よりも強いデジモンを倒すというのは……、流石に無理がすぎると思うのですが……?」


……は?

成熟期3体で完全体を5分以内に倒せ?

あんな強そうなデジモンを?

それは無理なんじゃ……?


「オレ達がボルトモン達を倒した時は、デスメラモン達を先に倒した後に気絶した奴らを肉壁にしながら耐久するという外道作戦でなんとか倒した……って、だけなんだよな。アミを守る為にはそうするしかなかったってだけだけど……」


おい、ティアルドマン……、マナトくんの前で外道戦法の話をするのはやめてほしい。私だってやりたくなかったんだ。だけど、それでしか勝てなくて、しょうがなかったんだ。友達の身柄がかかってたから、みっともなくても戦わなくちゃいけなかったんだ。

「おい、シンッ! なんでルガルモンで勝てないっ!?」

……って、ルガルモンッ!? シンさんになにを聞いてるのっ!?


「そ(・)れ(・)は(・)お(・)前(・)達(・)が(・)弱(・)い(・)だ(・)け(・)っ(・)す(・)」


…………あっ、


「「「ーーーーなっ!?」」」


言っちゃいけないことを言った。


「ルガルモン達が弱いだとっ!?」

「それは納得できないっ!!!」

「オレ達が弱いだとっ!?」


だよねぇ〜〜、あの3体はそういうことを言う。そこは私にも言えなかったから、言ってくれるのはありがたいんだけど……、

「オレ達はアミを守れるように努力してきたんだ。それをーーーー」


「お前達は今まで格下と戦ってきたに過ぎない。
より強い敵と戦い、勝利してこそ真の力が手に入るというもの……、ホエーモンを見てみるっすっ!」

「「「ーーーーッ!?」」」


……ホエーモン?


「お前達は今までルガルモンとギンリュウモンが前に出て戦ってきた。しかし、今回の戦い誰が1番ホエーモンにダメージを与えられたか、まだわからないっすか?」


ホエーモンに誰がダメージを与えられた? なに、その話。詳しく教えてほしい。


「テ(・)ィ(・)ア(・)ル(・)ド(・)モ(・)ン(・)っ(・)す(・)」


「ーーーーん?」

「「ーーーーは?」」

「……、オレェッ!?」

…………まっさかぁ!?


「ルガルモン頑張って敵を戦ったんだよ!? ーーーーなんでこいつっ!?」

「そんなわけないでしょうっ!? こんなっ……、アミを守ってる『だけ』の壁しかできてない、ルドモンが……、ホエーモンにダメージ? ……ほんとうに?」

ほんとに? ほんっとうに、ティアルドモンが完全体のホエーモンに、ルガルモンやギンリュウモンを差し置いて、1番ダメージを与えたのっ!?


「……お前らの思ってることよくわかったよ」


……ごめんなさい。


「喧嘩するなら後っすよ。今回の戦いの説明に入るっす」


今回の試合の説明に入るらしい。聞く価値がありそうだ。


「ルガルモン、ティアルドモン、ギンリュウモンの3体とこちらのホエーモンとの試合。正確には300秒以内にホエーモンを戦闘不能にしろというミッションはそもそもお前達には無理だと踏んでいたっす」


……なに、その試合。鬼畜すぎじゃない?


「ーーーー嘘だッ!!!」

「そんなのずるいじゃないですかっ!?」

「そーだ、そーだっ!」


ルガルモン達が口々に文句を言い始める。ついでに、私も心の中で文句を言った。


「うるさいっす!」


ーーーーゴンッ!


「うがっ!?」/「ふぐっ!?」/「あだっ!?」


……うわっ、3体にゲンコツした。しかも、残像ができてるっ!? これ、某『ドラ◯ンボール』で見たやつだっ!?


「これだから脳筋のバカを相手にするのは本当に疲れるっす」

「「「……ぐぬぬ」」」


シンの妙に含蓄のある言葉に、思わず『ぐぬぬ』と声が出てしまった。


「お前らが負けたのは単純に相性の問題っすよ」

「「「……相性?」」」


……相性、……って、なんだっけ?


「ワクチン種はウィルス種に強く、データ種はワクチン種に強く、ウィルス種はデータ種に強い。この三すくみは頭に入ってるっすか?」


シンの言葉に、ああっと声が出た。

「当たり前でしょう」

「「……そうだったっ!?」」

私達の仲間内で理解していたのは、どうやらギンリュウモンただ1体だけだったらしい。

「「…………」」

なんか、ごめんなさい。

「バカが2体いたっすね」

いえ、バカはもう1人います。

「ウチのバカがすみません」

「「誰がバカだっ!?」」

「お前達のことっす!」

「「あいたぁっ!?」」

ほんと、何も考えずに戦ってすみません。


「それじゃあ話の続きっす」


そして、説明の続きが始まった。

「戦闘時、お前達はこの相性通りの戦い方をしていなかった……、これが1番の問題っす」

いつのまにか置かれていた黒板に描かれていたのは、ホエーモンに戦う3体の姿であった。

「ーーーーッ!?」/「そーいえばっ!?」

ルガルモンとギンリュウモンがホエーモンに突っ込み、ティアルドモンが2体の後ろでいつでも庇えられるように陣取っている。私達のいつもの戦闘方法だった。

「でも、今まではなんとかなってたっ!? なら問題ないじゃーーーー、いってぇっ!?」

ルガルモンが殴られた。めっちゃ痛そう。

「その『今までなんとかなってた』が1番の問題だっつってんだよ。こん
の大バカがっ!!!」

「ーーーーひえっ!?」

マジで怒られてる。めっちゃ怖い……、でも、怒られて当然だとも思った。だって、それを受け入れちゃったら、今回の戦いから何も学べないから……、シンの体育会系向けの教え方はルガルモン達には適任だと思えた。

「今まで勝てていたのは雑魚とばかり戦っていたってだけっす」

…………えっ!?
グラウモンにデビモン、イーターも強かったし、……究極体のボルトモンなんてとんでもなく強かったっ!!!

えっ、アレザコ? 

私弱い? 

ザクソンのNo.3がザコ?


…………まじでぇ?


「本来、ホエーモンと戦うならギンリュウモンがホエーモンからの攻撃をかばい、ルガルモンが敵の翻弄し、ギンリュウモンに守られたティアルドモンがここぞという場面で逆転の突撃を行うことこそがお前達にできる最低限の作戦っす……それを、」

ふむふむ。


「ルガルモンは相性を考えずに突撃し」

「……あがっ!?」


「ギンリュウモンはそのバカに競うように攻撃」

「……申し訳ありません」


「ティアルドモンに至っては、2体の攻撃が当たるようにフォロー?」

「……いや、オレの役目は仲間を守ることだから」


……なんか、すみません。私の教育が悪かったとーーーー、


「……バカか、お前ら?」

「「「ーーーーッ!?」」」

ーーーーッ!?


「仲(・)間(・)が(・)死(・)ん(・)だ(・)ら(・)取(・)り(・)返(・)し(・)が(・)つ(・)か(・)ね(・)え(・)っ(・)て(・)わ(・)か(・)っ(・)て(・)ね(・)え(・)み(・)た(・)い(・)だ(・)か(・)ら(・)聞(・)い(・)て(・)ん(・)だ(・)よ(・)っ(・)!!!」


ーーーーっ!? 


「このままだとお前達の主人は死ぬっすよ」


私が、死ぬ? ……なんで?

「「…………」」

なんで死ぬの?

「オレが守るっ!」

「守れるぐらい強ければ問題ねえっす。でも、ホエーモンに負けてるじゃないっすか」

「……ぐっ!?」

なんで、なんで私が死ぬの?


「お前達の主人はイーターみたいな危険な存在に足どころか、頭突っ込んで調べて、戦って、解決しようとする大バカっす」


「……っ」

…………あっ!?


「その大バカの道を切り開くのがお前達みたいな『デジモン(どうぐ)』の力じゃないっすか? お前達が弱かったら、お前達の主人みたいな不安定な存在はイーターに殺されて終わりっすよ」

「……、……っ」

そっか……、私、半電脳体って、変な体だってこと忘れてた。


「目の前で仲間や主人が死ぬ姿が見たいって言うなら、オイラは今のままでもいいって言うっす。でも、お前らは違うっすよね?」


普通に暮らしてて、忘れてて、……それで、都合のいい時だけ、この力使って、ルガルモン達に守ってもらってたんだ。


「「「……すみませんでした」」」

…………ごめんなさい。


「謝れたのなら続きをやるっすよ。まだ、お前達の主人は基礎段階にすら到達してないっす。その間にお前達の戦い方っていうのを矯正してやるって言ってんだから感謝してやるっすよ」

ごめんなさい。



「……どう思ったかな?」

マナトくんは優しく笑ってくれた。

「……みんな、がんばってる」

そう……、としか言えない。今の私にはそれしか言えなかった。


「そうだね。彼らは君の為にがんばってるんだよ」

「…………」 


そう、みんな、私の為に頑張ってくれてるんだ。


「君が、君の目的の為に、彼らは全力で強くなろうと努力してる。その理由はわかってるよね?」

「…………うん」


マナトくんの言葉が胸に突き刺さる。みんな、私を守る為に、私の為に強くなってくれてるんだ。そのことが、その言葉が痛いほど、理解させられた。
 

「シンが言ったとおり、君は強くならなきゃいけない。それは君の目的の為でもあるし、君の命を守る為でもある」

「……うん」


私は強くならなきゃいけない。
それは、誰のためでもなく自分の為に、ひいては仲間達の為に強くならなきゃいけなかったんだ。


「もし、もしもだけどさ」


……もしも?


「君が『私』を止めなくちゃいけなくなった時には、『私』を倒せるぐらいの力が必要ってことだ」


なんで、そんなこと、突然言うのっ!?

「倒すって、そんなこーーーー、っ」

唇に指が当てられる。


「君が納得できなかった時に、『私』に対して我を通す必要が出てくるかもしれないってだけだよ」


優しい、けど、どこか哀しそうに笑ってる。でも……、今までのマナトくんより、なんか……こう、違う気がする。

「……そんなこと、しないよ」

しない……、するわけがない。
あんな話をするマナトくんの邪魔なんて、私はしたくなかった。でも……、

「『もしも』の話だから……、深く考えない方がいいって……、でもさ、」

「その『もしも』がやってきた時には」


「『ち(・)ゃ(・)ん(・)と(・)』俺(・)を(・)止(・)め(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)っ(・)て(・)信(・)じ(・)て(・)る(・)」


「ーーーーッ!?」

強い、強い期待の言葉。

私が、私だけがマナトくんにそう頼まれている。そんなそんな気がして、胸が再び高鳴る。

(……絶対に、ぜっったいに、ないとは思うけど)

……そのときは、



「……それでいいかな?」

「……うんっ!」

「じゃあ、戻って……、いや、そうじゃない……か」

「……?」


「ついてきてくれ。会わせたい奴らがいる」

*1:
レベル:完全体 タイプ: 水棲哺乳類型 属性:ワクチン種 必殺技:『タイダルウェーブ』
ネットの深海に棲む、巨体デジモン。その巨大さはデジタルワールドでは最大クラス。その巨大さ故に、通常のコンピュータでは処理できないほどのデータ量を持っている。ファイル島近海でも、同様の種を確認することができるが、このフォルダ島沿岸に棲むホエーモンは、見ためこそ同じものの、攻撃力、生命力共に上回っており、完全体への進化を遂げている。必殺技は巨大な大津波を起こして、全てを破壊する『タイダルウェーブ』。

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