2015年 9月3日 PM02:16
遡ること、約2年前……、とある世界でクォーツモンが倒された日の数日後の別世界にて、
「……タイト?」
白き居城……、その主人であり、この世界に君臨する神であるイグドラシル/美樹原ノルン』の前に空間転移を行った。
「ノルン様、下がってくださいっ!?」
ホーリーエンジェモンがノルン様の前に陣取り、他のデジモン達が急速に集まってくる。
「星野タイト、いったいどのような要件でこちらへと参ったっ!? 返答次第ではその首を掻っ切ることを躊躇わんぞっ!!!」
ザンバモンが到着し、そう警告する。当然だと思った。
「ひさしぶりです、タイト。しかし、いきなりどうしたのですか? 約2年ぶりの再会だというのに、こんな唐突に私の前に現れてしまったら、みんな驚いてしまいますよ?」
俺は………いや、私はノルン様の前にすぐに跪いた。いくら、偉大なる神の僕であったとしても、テトによる空間転移によってこの玉座の間に不敬にも押し入った愚者であることは変わらなかった。
「宣言……、いったい何を?」
私の態度を見たノルン様は
(…………っ!?)
その威光と寛大なる意思に頭を下げて言葉を選ぶ。
「今までの私の勤めの不手際と、今後の方針に対する宣誓をしに『私』は参りました」
そう、私はあなたへの不忠と私自身の戒めの為に、……全てを捨てる覚悟で頭を下げている。
「……不手際? いったいなんの話でしょうか?」
「裁定者として認められながら、私自身私めの世界に対しての、砂糖を超える程の甘さを持ってしまったという不手際です」。
「……続けなさい」
ノルン様の促した言葉、寛大なる御心の許しを経て、私は正直に言葉を紡いだ
「『私』はこの2年の間、この世界を旅立ち、再び『私』めの世界を見てまわりました。そして、その成果もあり、見事1度目の世界の危機を乗り越えることができました」
この度の成果、まずはノルン様への報告。
「…………」
そして、その次は……、
「しかし、『私』はとある事件に巻き込まれ、以前ノルン様に送られた世界に迷い込んだのです」
「「ーーーーっ!?」」
我が身に起こったことの説明だ。ノルン様は…………トン、と指で玉座を叩き、
「……そこで、何を見たのですか?」
「ーーーーっ!?」
憂いを帯びた言葉で私に言葉を促した。
(……やはり、この方は)
その言葉に、憂いを帯びたその言葉に、あなたの私に対する『哀れみ』を感じる。
「
だから、私はあなたについていくのです。
「……そう、いうことなのですね」
ノルン様は私のその言葉に深く、深くため息を吐いた。
(きっとこのお方は全てを見抜かれているのだろう)
そう思いつつも、そう思ってはいても、私は頭を下げ続けて、言葉を選び、忠誠を捧げる。
「『私』はこの世界の『裁定者』として、彼の世界を見定めることを、ここに再び誓います」
『かつて』の宣言。
「そして、もし、彼の世界がこの世界の敵と、脅威となるならば……、『私』が彼の世界を滅ぼすと、貴女ここに誓います」
そして、『今』の覚悟だ。
「ーーーーテメェッ、ナニ言ってやがるっ!!!」
懐かしい声とともに、思いっきり胸ぐらを掴まれてしまった。
「アグモン?」
ツルギさんのアグモンが『俺』の胸ぐらを掴んでいる。
「テメェはテメェの世界を守る為にこの世界をでてったんじゃねぇのかよっ!? それなのに、テメェはこの世界の為にテメェの産まれた世界を壊すってのかよっ、ふざけんじゃねえっ!!!」
彼の怒りは当然だ。なんどもなんども『俺』は『私』の宣言を撤回し続けている。そんな男はやはり信用できないのだろう。しかし、
「……もう、疲れたんです」
しかし、『俺』はもう疲れたんだよ。
「疲れただとっ、ふざけてんじゃねえっ……、立てっ、立ってもう一度言ってみろっ、ぶん殴ってやるっ!!!」
「…………」
その言葉に救われた……、救われてしまった。
(悔しいな……、この人にそう言われてしまって、……認められていたというのに、こんなことになってしまって)
本当に悔しい。
悔しいからこそ、悔しかったからこそ、……自分の選択が間違いなような気がして……、でも、俺は選んでしまったんだ。
「……ははは」
「なに笑ってやがるっ!?」
本当に嗤えてくる。
「こんな時に笑いやがって……、なんとか言ったらーーーー、
振り上げられる拳をただボーッと見て、……その拳が振るわれたら……きっと、きっと胸が空くような思いになれるのだと、友を裏切った俺を叱ってくれるのだとただそう思えた。
「アグモン、やめなさい」
……ノルン、さま?
「ーーーーっ、ノルンっ、テメェ、本気で言ってんのか? 誰かがこいつの目を覚ましてやんねえといけねえんだよっ! こいつの目はな、こいつの目はっ!!!」
なんで、とめるんですか?
「わかっています」
なんで苦しそうな顔をしてるのですか?
「わかっているから、彼はここに来たのでしょう?」
「ーーーーッ!?」
やはり、あなたは俺のことをわかってくれている。わかってくれているからこそ……、
「下がりなさい」
「もう一度言います。アグモン、……他の皆も武器を下ろし、下がりなさい。神たるイグドラシルの名の下私は命じています」
神の命じられ、俺のそばからアグモンが、ザンバモンが、ホーリーエンジェモンがいなくなっていく。
「……タイト、顔を上げなさい」
「ーーーーはっ」
私は顔を上げる許しを得た。顔を上げて、ノルン様を見つめる。
「あなたの目はこの2年でだいぶ変わりましたね」
ノルン様の言葉を聞く。
「この2年、あなたがどんな苦しい目に、辛い目に遭っていたとしても、私はあなたの側にいませんでした。だから、そのことについて深く、深く謝罪したいと思っています」
ノルン様が深々と頭を下げた。…………下げてしまった!?
「あなた様が気にするようなことではありません。全ては『私』めの不手際によるものです」
これは、私の不手際で、私の甘さが招いてしまった罰だと思っていた。だからこそ、その姿に、その心を私は受け取れない。受け取れないんだ。
「それでも、です。私はあなたの『神様』ですから、あなたに寄り添い、支えることも仕事のうちなのですよ」
神、『神』……『
(神という存在はこんな存在じゃない)
『さあ、『✖️✖️』……、神様からの啓示よ。
もっと気持ち悪くて、
『神様の言うとおりにしなさいっ!!!』
もっと助けてくれなくて、
『神は私達を救ってくれるの。助けてくれるの……、きっと、きっと天罰が降るわ。そうよね?』
もっと都合のいい存在が『僕』の知る神だ。
「…………」
あの人のようなすばらしい存在ではない。
「あなたの目はかつて私を閉じ込めた者と同じ目をしています。そのことがどのようなことか理解はしていますか?」
彼女がおっしゃった、アグモンが怒った理由は……、きっとこの世界を滅ぼそうとした
「…………っ、理解しております!?」
咄嗟に、彼女の言葉に咄嗟に反応して、その言葉を同意する。
(正直言って、俺は『彼』の気持ちが理解できた)
頷きたくない……、頷きたくはなかったけれど、私はその言葉に深く深く同意する。
「私はあなたの選択を否定しません。しかし、できうる限り、あなたの幸せを願っていることも、あなたには理解してほしいのです」
「……は」
ノルン様の声はとても、とても慈悲深かった。
「アグモン、ガオモン」
「……なんだよ」/「はい」
アグモンが不貞腐れながら、ガオモンがアグモンが何かトラブルを起こさないように目をかけながら、ノルン様に返事をした。
「ツルギとユウを呼んできてください。タイトが帰ってきたと伝えて、皆でパーティーをしますよ」
なぜだか、トントン拍子にノルン様の思い通りの方向へと動かされるような、……そんな気がして思わず、
「……えっ、あの……、私はすぐに戻らなーーーー、」
「タイト」
「テトもシンもユイもいるのでしょう? ……2年間のおみやげ話を聞かせてくださいね」
「……ね」
微笑んだ
第一話 始める前の準備を始める
「……それが、あなたの選択なのですね」
「はい、……そして、私の計画は」
「では、そこまでどう持っていきますか?」
「ここで、こう説得します。人間を嫌う彼女ですが、人間が不幸な目に遭う姿を見ることに固執している面もあります。そこを────」
「……そうですか。それなら、彼女は説得できそうですね。現地の協力者はどうしますか? いた方がいいのでしょう?」
「協力者の方なのですが、心当たりがあります。しかし……」
「……しかし?」
「少しお力をいただきたく……」
2017/3/1 AM05:01
ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ!
「……んっ!」
デジヴァイスのアラームが鳴る音で目が覚める。時計は……、1分だけ遅れて目が覚めたことに今更ながらに気がついた。
(……にしても)
懐かしい夢を見た。
2年前にノルン様とした話を夢で見ていた。
「……まぶしっ!?」
カーテンを開けた時、テーブルの上に置いてあった『デジモンツイン』の画面が月に照らされ、光が反射して目の中に入ってくる。
「忘れるなってことか」
ふと、先ほど見た夢の内容を思い出し、『デジモンツイン』の中からノルン様が微笑んでる姿を幻視する。
「ノルン様も心配性だな」
テト達に作る朝食の準備に取り掛かった。
201/3/1/ AM09:34
「お前らぁっ、急いで仕事を終わらせろっ!!!」
「「「イエッサーッ!!!」」」
「この資料、今朝の6時までにまとめておいて……、と言いましたよねぇ? なぜ、ここの物品の欄の計上が間違っているのですか?」
「申し訳ありませんっ、すぐに取り掛かりますっ!?」
「こちらデータなのですが、『アヴァロン・サーバ』内の異常数値のデータの変動が強くなっていて……」
「それはナノモンに任せた仕事ですので、ナノモンに直接話を聞いてみてください」
「ノルマは終了っ! お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でしたっ!!!」」」
なんでこんなに忙しなくみんなが動いている?
(俺がいったい何かやったのか?)
ここ最近は落ち着いていると思っていたのに、みんながみんな必死な形相で今日の予定を終わらせようとしている。
(いったいなにが……って、もしかしてアレか?)
日付を見ればその理由がすぐにわかる。わかったのだが……、俺としては本当にどうでもいい。どうでもいいのに……、
(バカな奴らだ)
そんなことを思いながら彼らの下へと歩き始めると、ことんと音が鳴った。彼らのハードワークの下汚れ切った床に落ちていたたペンを蹴っていたのだ。
「……誰だよ、……っ、────タイト様っ!?」
1体が目に隈をこすりながら振り返って、そんな素っ頓狂な声をあげた瞬間、全員が『タイト殿?』、『マナト殿っ!?』、『テト様っ!?』と順々に声を上げ、片付け始め、ドタバタと5分ぐらい各々が慌てふためきながら動き……そして、
「────全員、整列っ!!!」
「「「タイト様、テト様、おはようございますッ!!!」」」
俺が到着してから10分経った後ぐらいだろうか……、ようやくこの場にいる全員の身だしなみがある程度整うことができた。
(……いつも思うのだが、こんなに畏まらなくてもいいんじゃないのか?)
そう思いながらナノモンお手製の椅子に着き、状況の確認を行う。
「全員、配置についたか?」
「本日のメンバーの配置完了いたしましたっ!!!」
……つまり、休暇の奴はいない……はずだろ? なんで、面々の中に、休日に出勤している幹部の奴らがいるんだよっ!?
(……って、ツッコミたいんだけどなぁ?)
正直、休みのはずのシキやカーラにそんなことを言っても、シキは休んでくれないし、ラーナモンはそれに対抗して仕事始めるから言ってもしかたないんだよなぁ。それに、他の面々も……、なにかしら理由をつけて休まないし……、いいや、そんなことを考えるのはやめよう。
「状況は?」
「我ら諜報部隊はそのまま『カミシロ』が疑念に持たれないように動きつつ、都庁の開発の進捗の推移を地方議員に報告」
ベツモンからの報告……、うん、うまく行っているようだ。
「了解、シールズドラモンの方はどうだ?」
「現在、『蛇の御元』にて育成部隊と合流。随時、迷い子達の保護に努めております」
リエさんから打診されたこの世界に迷い込んだデジモン達の保護も問題なし……っと、
「……わかった。次、広報部隊」
「デジモンカイザーの一件以降、労働者からのハッカーやデジモンに対する忌避感が強まっております。しかし、子供世代……、特に小学生や中学生のような10代前半の子供達の支持が大きく、表立って忌避感を出すことができないようです」
シキからの報告は……、うん、これも予想通りだ。
「その件はそのまま有耶無耶な状態を維持し続けろ。忌避感を持っている奴らはそのままにしておけ。『パラダイスロスト計画』の実行の後に、嫌でもデジモンと共に生活する日常がやってくる。その時に理解を示さざるおえないはずだ……、次、補給部隊」
「予想よりもお金がかかって大変ですぅ〜〜っ!?
タイトさまが喫茶店やレストラン、カラオケ店等々地下を『デジタルシフト化』して保管区域にしていますが、なにぶん物品の期限が切れかかるものもあって管理しきれません〜〜っ!!!」
バーガモンズ……、毎回この話が出るんだけさぁ。結論は既に出てるだろ?
「金は俺のポケットマネーから好きなだけ使えといくら言ったらわかる? 『パラダイスロスト計画』までに半分以上使い切るつもりで使っていい。それと、保管しきれないものはテトに直接伝えろ。賞味期限が切れかけた食べ物は『蛇の御元』の食堂に送れ……、優先的に処理させる。生活必需品や医療物品はダミー会社に卸して、安値で『カミシロ』の病院に送れるように手配しろっ! 次、スピリット部隊」
ラーナモンに頼んだスピリット部隊。
「こちらはは順調です。彼の水準は既に我らの中でも上位に食い込むレベ────」
「────『我ら』?」
(…………あちゃぁ)
膝から透き通るぐらい綺麗な……、そして、トゲを感じる声が聞こえてくる。
「マナコ様、失礼いたしました。正確には幹部を除く部隊長クラスにも引けをとりません」
「……だそうですよぉ、ご主人様?」
ラーナモンがすぐさま訂正……、膝の上にトグロを巻いていたマナコが笑顔でそんなことを宣っている。
「……、ラーナモン迷惑をかける」
「もったいなきお言葉」
ほんっとうに、すまない。
「次、研究部隊」
「ジェネラルの指示通り、補給部隊との連携によって地下施設の『デジタルシフト化』が完了いたしました。ならびに、我々の世界の技術であるターミナルの擬似的なモノが建設完了いたしまして、アプリドライブ内に記録してあるデータからデジモンのコピー体を完全に再現……、戦闘訓練の実地がスムーズに行えるようになりつつあります」
つまり、『秘匿サーバ』内に擬似的なターミナルの設営が完了した……と、うん……期間は長く設けたけれど、片手間とは言え僅か1年でそこまで持っていけるのは流石ナノモンだ。
「ナノモン、よくやった」
「……いえ、我らの仕事ですから」
「……ふんっ!」
おいやめろ、マナコ。ナノモンにはかなりフォローしてもらってるくせに、そんな顔で詰めようとするな。ナノモンがはっちゃけて、変なモノを作り始めたら、後々面倒な処理をするのは俺なんだぞ。仕事を増やすな。
「それと、お耳に入れたいことが……、マナコ様」
ナノモンが俺の膝の上にいるマナコに視線を向けている……これは、
「ナノモン、私のいる場所では話せないとでも言いたげな視線ですね。私とご主人様は一心同体だと言うのになんたる────」
「マナコ」
つまり、『あの件』だな。
「ご主人様?」
「ナノモンには後で俺が呼び出しをする。マナコは別の仕事を頼んだ」
「ご主人様?」
マナコには悪いが、俺も俺としてナノモンに秘密に頼んでいることがあるから……、少しだけどいておいてくれ。
「悪いがお前がいても話にならん。こういう専門筋に対してできることは、話を聞いてハンコを押すのが今の俺の仕事だ。話をするのに邪魔なら退かすのも仕事のうち……、いいから、こいつらの修行でも見てこい」
ポンっと、『蛇の御元』へのサーバを示し、マナコへと『お願い』をする。
「……むすぅ〜〜、わかりました、ご主人様」
怒りながら離れていくマナコの姿を見て、……ナノモン達の話を聞き、仕事の内容を一通り目を通して、ハンコを押して……と、今日のノルマがようやく終わったところで……、時間を見ると、
「……っと、時間は」
時間は10時過ぎ……、はぁ……。
「まだ、間に合いそうだな」
みんながくれた時間を無駄にしないように行ってくるか。
2017/3/1 AM11:25
「これにて卒業式を終了したいと思います」
今日は私立水無瀬中学の卒業式。
(いろいろなことがあったけど、……あった。あったんだよなぁ)
前世とは違って普通とは言い難い中学生活だった。まぁ、前世に関しては、プライベートなんてほぼトラウマに等しい生活だったので、振り返る余地すらなかったのだけれど……、
(振り返れるだけ幸せ……とは言い難いのが、難点なんだよ)
1番酷い記憶で、他校のレイ◯事件に関連し未遂行為にまで発展したイジメに教師陣の隠蔽工作、林間学校での50年前の行方不明者発見事件に、ルビー達の番組制作……濃い3年間だったよなぁ。
(でも、この学校に通ってなにが1番うれしかったと考えると……)
「タイトぉぉ〜〜っっ、これでお別れだなぁ────っ!!!」
「寂しくなんてありませんからねぇ〜〜っ!!!」
こいつらと出会えたこと……、だと今なら思える。
「止めろ、暑苦しい、うっとうしいっ!」
「卒業式に来れないなんて、ルビーちゃん達も祝ってあげてるんですっ!!!」
「寿の奴なんて、……『マナトくんの晴れ舞台に仕事だなんてっ、あんの鬼畜ババアッ、いい加減にしときぃ!!!』、『妹尾くんも、平田くんも……マナトくんの写真よろしくな?』ってめっちゃ怖い顔で脅してきたんだからなっ!!!」
ルビーは番組の都合で来れず、寿はリエさんに呼ばれて仕事の研修をしてる……んだったか?
(あいつらもこいつらとの連絡をしてるあたり仲はいいんだ。こいつらがあいつらと……?)
どんなに頭の中を引っ掻き回して、こいつらとの思い出を思い出しても俺と一緒にいる間ぐらいしか、この2人とあいつらが会話してる記憶がない。
(……まさか、な)
ルビーと寿という少女達の裏の顔が見えた気がした。
「……にしても、お前が進学の道を選ばなかったのは最後まで疑問だったよな?」
卒業式と書かれた看板の門の前で、2人がそんな話を始めた。
「そうですね。あの派手な白ブレザー学校に通ったらよかったんじゃないですか?」
番組が始まってから俺は高校入試を蹴って、『本業』に注力することに決めた。そのことをうまく誤魔化してはいたものの、いち一般人である彼らは心配だとなんども聞かされた。
(……は)
自分のやることを思い出して、自嘲の感情が浮かんでくるものの、この2人にとってはそれが『普通』なのだとも理解できた。
「いいんだよ、別に、さ」
「「いいわけないだろ」」
その答えに怒ってくれる2人には申し訳ないけれど……、
「
『最後』にするつもりだから、少しだけ『嘘』を吐かせてくれ。
「「やりたいことぉ(……ですか)?」」
「『こっち』が結構忙しくなりそうだったからな、お前達とも会える時間は少なくなりそうだ」
そう、……友を裏切った『あの日』俺は決めたんだ。
「……そうか」
「本当に寂しくなりますね」
こうやって笑い合う機会ももう2度と来ないだろう。
「暇な日があったら、連絡するさ」
だから、今日だけは嘘を吐かせてくれ。
「絶対だぞっ!」
「約束ですからねっ!」
「……約束だ」
守る気のない約束をした。
「「絶対だからなぁ(ですからね)────っっ!!!」」
それでも大声で手を振ってくる彼らに、『さよなら』と手を振った。
『いい友達を持ったね』
「バカな奴らだよ……、ホントにさ」
「……アミ」
「マナトくんっ!?」
「待たせた」
「……いこっ!」
2017/4/29 AM09:45
『楽しかったねっ! また、あそぼっ!!!』
卒業式が終わって、友人達と帰り、アミと遊んで……、そんな『普通』が染み入るような感覚を思い出しながら、彼女と最後に会った日のことを思い出す。
「…………」
この2ヶ月間、忙しくてなかなか会えていなかった彼女と最後に会った日のことを思い出しながら、少しだけ頬が緩むのを感じる。
「タイト、辛くない?」
テトが隣で聞いた。
「辛くないよ」
辛くないというのは嘘だ。だけど、その言葉は俺が言っちゃいけない言葉だ。
「そもそもお前達を俺のワガママに付き合わせてるんだから、そんなこと言ってられないだろ? ……それにさ、ノルン様にあんなことを言わせてしまったのだから」
俺がテト達を、ノルン様を巻き込み……、2年前のあの日にあんなことを言わせてしまった。
『いいですか、タイト』
パーティーが終わり、ノルン様への最後の謁見も済ませ、テト達を連れて元の世界へと戻る準備を進めていた時のことだった。ノルン様が部屋へとお越しになって、俺に声をかけてくださる。
『
違うと応えたかったが、ノルン様は俺の言葉を塞ぐようにこう続けられた。
『あなたが崇拝する神が、『あなたの世界を滅ぼしてもいい』と命じたのです』
私の両頬に手を添え、私の目を正面から見つめ、優しく微笑みながら彼女は私のことを『許して』くださった。
『だから、決して1人で抱え込まないでください』
1人で抱え込でいるつもりはなかった。
結果として、周りからそう見られたとしても、『私』はテトやシン達に頼り、『事』を起こす計画までノルン様は手伝ってくださったのだ。『私にはもうたくさん手を差し伸べてくれる仲間だっているのだ。
もう、そんなことは思ってはいなかったのだ。
『わかりましたか、私の裁定者さん?』
だけど、優しく抱きしめられたあの温もりは、優しく微笑まれたあの瞳は……、今も俺の心の中を救ってくださっている。
「ほんっと、お人好しな神様だよ。あんたは」
俺は目の前にある『ポット』の中を見る……、いいや、正確に言えば『ポット』の中にいるテトやシン、ユイ、マナコのデジコアのデータを使った特別な5体の『デジモン』。それも、今回『クーロン』に離す3体を見ていた。
デジラインにメッセージが届いた。
『彼女が『EDEN』に入った』
……、との連絡があった。
「テト」
「……うん」
機械を動かし、ポットの中身である3体を『蛇の御元』最奥部……、『シャンバラ・アップル』から出し、生存を確認……、
『……ここどこ?』
『我は、……っ!?』
『……ふへえ』
よしっ!
「始めるぞ」
テトへと指示を出す。
「タイトのお気に入りが『クーロン』に入ったところで、こいつらをクーロンに送ればいいんだね?」
「……そうだ」
事前にあった指示通り、テトは『クーロン』へとデジモン達を転移させた。
『わわわっ、なんだよ、これっ!?』
『……っ、全員一塊になるのですっ!!!』
『オレはどーしたらいいんだよっ!?』
そして、その3体が動き出すのを確認してから、『クーロン』の中にいるイーターを『クーロンLevel.1』へと誘導、彼女達がイーターと接触しないようにこちらで動きをコントロールした。
「わかったよ、タイト。僕はタイトの『1番』の味方だからね。ノルンなんか目じゃないくらい、がんばっちゃうぞっ!!!」
「そんなことは当たり前だろ? お前以外にこんなこと頼める奴はいないさ」
最後に、デジモン達が動き出した後、クーロンに隠していた『
「そーだよね、そーだよねっ! それじゃあ、いっくよぉ────っ!!!」
『……げっ、強そうなデジモンが追いかけてきやがったっ!?』
『逃げますよ、ルガモン、ルドモンっ!?』
『リュウダモン、勝手に命令しないでっ!?』
『ちょっ……、2体ともそんなこと言ってる場合じゃないってっ!?』
『『うるさいっ、お前が1番足が遅いんだよ(ですよ)っ!!!』』
『こんな時にケンカしないでくれよっ!!!』
「……行ったな」
「タイトの期待に応えてくれると嬉しいね」
そんなふうに喧嘩をしながら走り出す3体のデジモン達。完全体に追われているというのに喧嘩なんかしはじめるあたり、少しは余裕があるみたいだ。
(……これなら)
これなら彼女を任せられる……と、思いながらも、一歩、また一歩と歩き、ドアの前に差し掛かった。
「テト」
「それじゃ、俺は新宿に行ってくる。フォローの方は……、新入りに頼んでおけ」
彼に任せておけばなにも問題ないだろうと……、そんな事を考え俺は話も聞かずに走り出した。
「わかったよ、タイト」
……そして、
「こっちは確認できました」
「こちらも確認した」
2017/4/29 PM01:20
デジモン達の
(……いいや)
俺達で始めるんだ。
「クロッカスの花は芽吹く気配なし……、ただ腐ることなく、種は眠っている」
「ミレイちゃん、まーた変なこと言ってる」
「あなたほどではないわ……、リナ」
「……で、見つかったんでしょ?」
「見つかってはいないわよ。あの子と類似しているだけ……、彼はまだ芽吹いてすらいないわ」
「……ふーん、……まっ、アタシにはカンケーないけどねっ!」
「関係ないこともない……、けれど、『彼』には近づかないわよ」
「ーーーーッ、どーしてっ!?」
「『彼』には優秀なボディーガードがいるみたい……、私ですら近づけないほどの、ね」
「……ん、んんん!?」
「うっわぁ、カイナよりレベルたかっ……つーか、バリ『カイナ』じゃんっ!? メッチャ、きびしー……、てか、仲間の練度強すぎじゃない? 今のブイブイですらタイマンで戦ったら負けるレベルなのに、他のデジモンまでつよつよなんて、ありえねーっ!?」
「あの子に近づく為には……、どうするべきか……、まずは一手」
「
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