「いい加減にしろよ、龍司っ!!!」
春の陽気が薄れ、燦々と照りつける太陽の季節の訪れを感じる5月の上旬……、とある2人の少年がの夜中の水族館の前で怒鳴りあっている。
「あの女はこれで『最後』だと言った。だから、俺は従った……、それ以外に妹を救う方法はなかったんだっ!!!」
「それでも……っ、それでもおかしいだろうがっ!」
互いに互いの胸ぐらを掴み合い、殴り合い、周りの人並みを気にせず大声で怒鳴り合っている。
「……依頼人の個人情報を『カミシロ』に流して、それで『フーディエ』の信頼はどうなるっ!? それがバレたら……、いいや違う。そもそも、そんな事を続けたら、信用がなくなるになるに決まってんじゃねーかっ! そんなことがわからないお前じゃねぇーだろっ!!!」
茶色がかった金髪の少年……、今井千歳は起き上がりながら相手を睨む。
「わかっているさ……、わかってるんだよ、そんなことは……、でも、それでも妹を……、エリカの命を繋ぐにはこれしか方法はないんだよっ!!!」
タンクトップの少年……、御島龍司は『そんなことはわかってる』と声を荒げ、自身の行動に対して怒りと悔しさ……、そして、どうしようもない現実への憎しみが籠った視線で千歳を睨みつけた。
「別の方法はねぇのかよ? ……たとえば、あの『カミシロ』のお嬢さんや末堂のところの息子さんはどーなんだよ? アイツたしかマリンの番組のスポンサーじゃねえか。マリンからの口添えでよ? できねえのかよ」
「俺は岸辺に見張られている。その2人に『できない』とでも言われてみろ? そんなところを岸辺に見つかったことのことを考えろよっ! エリカがどーなんのかわかんねぇじゃねえかっ!!!」
「やってみねぇとわかんねぇだろーがっ! お前の置かれてる状況や岸辺の悪事を知ってもらえたら、お嬢さんならまだしもあの末堂マナトなら理解を示してくれるだろっ!」
再び立ち上がった千歳の諭すような言葉に徐々にヒートアップしていく龍司……、深夜の道の真ん中で少年達はどんどん声を荒げていく。
「番組で四宮やら、元警視総監の息子やら、ヤクザの娘に言ってたじゃねぇか。『お前達は法も守れない犯罪者』とか『犯罪者に付き合ってる暇はない』……って、テメェの言う筋を通さねえヤツを許さないのはアイツも同じだろ? だったらーーー」
……そして、
「だったら、なんだって言うんだよっ!!!」
とうとう、龍司の心が限界を迎えた。
「俺はな、エリカの命を人質に取られてるんだよっ! そんなことできるわけねぇだろうがっ!!!」
龍司の心中に思い出されるのは、病床に臥す妹の姿と自身の裏にいる悪逆の限りを尽くす女の顔。
「末堂マナトってヤツが、岸辺と繋がってたらどうする? それこそ、エリカの命がなくなったらどうすればいい? お前になんとかできるのかよ?」
自身のも不安と妹の命が懸った苦渋の選択を、自身を心配する友へと投げかける。
「…………っ」
千歳はその言葉に、言葉が詰まった……、いいや、『詰まってしまった。
「お前になんとかできるのかって聞いてんだろうがっ!!!」
詰まってしまったからこそ、友人の言葉だったからこそ、龍司は甘えからそんな言葉をかけてしまう。
「…………」
「…………」
少年達は片方は睨み、片方は戸惑う。しかし、2人の中にある感情はもう止められない。なにか『こと』が起これば起爆してしまう程の一触即発の空気がその場に流れ出す。
「…………」
「…………」
ゆっくり、ゆっくりと2人が拳を上げた。
「
その瞬間、目の前に小柄な少女が姿を現した。
「「ーーーーッ!?」」
戸惑い、半歩後ろへと下がる2人。
「ーーーーお前はっ!?」
戸惑ったのも束の間、間に入った『少年』へと龍司は即座に拳を向けた。
「末堂マナトッ!?」
千歳も負けてはいられない。『少年』へと手を……、
「「…………ッ!?」」
少年の後ろから『満月』が照らし出された。
「君達に条件を出そう」
アニメやゲームから出てきた『物語の存在』のように、絶世の美少女とも取れる容姿に見惚れ……、神秘的な光景に彼らは息を呑んだ。
「このまま岸辺リエに従い、妹の命を散らすか」
透き通るような白い人差し指を1つ立てる。
「当てもなく妹の障害の解決方法のつてを探して回るか」
2つ……、と中指を
「
そして、最後の言葉は、
「「ーーーーッ!?」」
2人にとって『最もほしい』一言であった。
「どうする? ……話だけでも聞いてみる気はないかな?」
「俺は君達の力を借りたいんだ」
囁くように『悪魔』は少年達に手を差し伸べた。
俺達が『末堂マナト』から連れてこられたのは、東京の郊外……、その中でも一際異彩を放つ街並みに、郊外と言えど都会の活気を深夜の中でも感じさせられる場所であった。
(おい、龍司……着いてきちまったけど、どうすんだよ、これ?)
(どうするもなにも話だけでも聞くしかないだろ? ……俺が岸辺の悪事を手伝っていたことは知られてるはずだ)
(……でもよ、龍司)
龍司と話している途中、ふと、気づけば『臨時休業』と札が立てかけられたとある飲み屋の前に俺達は立っていた。
「入ってくれ」
「「…………」」
末堂マナトがガラガラと古臭い引き戸の扉を開けば、若者が入るには少々尻込みをするような、そんな『一見さんお断り』という文言を感じさせる高級そうな家具が目に入ってくる。
「そこに座ってくれ」
「…………」
(────おいっ!?)
カウンターに設けられた食事席、……アンティークな椅子に座ろうとした時に、龍司に肩を掴まれる。
「なんだよっ!?」
(これを見てみろ)
龍司の視線の先、俺の手が掴んでいるところを指を指す。そこにあるのは『金色』の意匠。
(これ、『金』だぞ)
(────うぇっ!? マジかよッ!?)
(大マジだ……、この手の物は岸辺の行きつけの店で見たことがある。値段が書かれていないが、岸辺が会計する時にとんでもない価格の料理を出された記憶がある)
……っ、妙に和風でアンティークな椅子だと思ったら、とんでもねえ高級品じゃねぇーかっ!?
「早く座ってくれ。『ここ』ならリエさんに話を聞かれることもない」
「「……は?」」
唐突なその言葉に呆けていると、俺達は突然『トン』と両肩に体重をかけられ椅子に座らされる。
「「────ッ!?」」
急いで背後を振り返っても誰もいない。
(なんだよ、ここ……、ホラーハウスじゃねぇんだからさ…………っ!?)
自分の体に起こった不可思議な現象に冷や汗を感じる。しかし、座ったのを確認したのか、末堂マナトは笑って俺達に話しかけた。
「ここは俺の店兼、セーフティハウスの1つだ。岸辺リエの部下が入らないように監視も……っと、ありがとう、『テト』」
────『
「「────ッ!?」」
「おい、龍司……今の見たかよ?」
目の前の光景が信じられなくて、龍司に見間違いなんじゃないかと聞いてみるが……、
「流石に夢……、だよな。今、バケモノみたいな腕が宙に浮かんでいて……」
冷や汗をかいた龍司の表情……これってもしかして────、
「「────っ!?」」
目の前にあったのは確かな『
「その目は確かだ。テトは存在しているし、なんなら一部のデジモンは
「「…………」」
末堂マナトの衝撃的な言葉に呆気に取られ、背後から『ドン』と椅子になにかの重いモノが乗って────、
「そーいうことだぜ、少年達よ」
「「────ひっ(ぶっふぉ)っ!?」」
白塗りコスプレの変態が俺達の椅子に体重をかけているっ!?
「ベツモン……、いきなり現れるなよ。お客様がびっくりしてるだろうが」
「そーは言ってもですぜ、我らがジェネラル? テト殿を見られた時点でタダで逃す訳にはいかないんでござんしょう? だったら、早く仲間にする為にも『見せといた方が』得ってモンでしょう?」
「ベツモンさん、ダメじゃないですか、……我らがジェネラルが狙った獲物を逃す訳ないのは理解していますが、順序ってヤツがねぇ?」
今度はノソノソとお冷を持ったピンクの妖精らしきデジモンが現れ……、
(…………おい、龍司)
(なんだ、千歳)
(俺達、本当にここに来てよかったのかよ?)
(今更だが、後悔してる)
とんだ
「さて、話の続きをしようか?」
連れてきた当の本人はカウンターの先でコーヒーを淹れている。俺は話し始めるその姿に見惚れながら、ぼーっとお冷に口をつけた。
「まずはこの世界の説明から……」
「……マジかよ」
「…………」
話して聞かされた内容は衝撃的以前の問題であった。
この世界がデジモンと密接に関係していること、その中心にいるのが目の前の人物であること、龍司は……、俺達はその手のひらで踊らされていたということ……、『アイツ』が少なくとも関わって『いた』ということ……、
「どうかな、理解できたかな?」
『星野タイト』の透き通ったその声は混乱した頭の中でも『
「理解できたさ……、痛いほどにな」
龍司の沈むような暗い声に、俺も深々と頷いた。
「それで……、アンタの目的はだいたいわかった。俺達になにをさせたい?」
「簡単に言えばボディガードをさせたい、かな?」
末堂マナトはこれ以上ない素っ頓狂な言葉を口に出した。
「ボディガードだぁっ!? ……テメェの横にいるじゃねぇかっ!? そこにも、あそこにも、ここにもっ!?」
あそこには星野タイトの手伝いをしているリリモンが、俺達の横でテレビの漫才を見ながら酒を呑んでるベツモンが、ふよふよと浮かびながら俺達を睨んでいる『テト』と呼ばれたデジモンがいる。
(それなのになんでこいつは俺達に護衛を依頼するっ!?)
デジモン達が実体化できるのなら、俺達に護衛を任せるなんてメンドーなことするわけねぇ……、それなのになんで……、
「契約の本当の目的は『パラダイスロスト計画』の後……、と言いたいところだが、まずは報酬の話だ」
『なんで』その言葉は星野タイトの『報酬』という一言で掻き消された。
「報酬?」
「報酬っ、そうだよっ!? エリカはお嬢の障害は治るのかよっ!?」
そう、俺達がコイツについて来た目的……、お嬢の障害を治すというコイツの言葉に藁をも縋る気持ちで来たはずだった。その目的を思い出してつい身を乗り出して聞いてしまった。
「
……が、カウンター越しに彼は笑って見せる。
「……本当に治療できるのか?」
「契約してくれたら、報酬として『どんな方法を使っても』必ず治す」
その『どんな』にはどれだけの思いがあったのだろう? しかし、星野タイトは確実にお嬢を……、『御島エリカ』を治すという覚悟が彼の言葉の中に籠っている。
「方法は?」
俺は龍司が『治る』という言葉に戸惑っているのに気がついて、すぐさまお嬢を治す手段を聞く。
「まずは、君の妹の体力を戻すところからだ」
「……エリカの体力を?」
「君の妹ことはある程度調べはついている」
そりゃあ……、条件に出すぐらいだ。『カミシロ』の病院で面倒も見てもらっている。調べれば出てくるはずだ。
「数年前とある事故の結果、脳の障害が発生……、異常とも呼べる脳機能の活動能力とそれに伴う対価による肉体に多大な負荷を背負いながら生きている……そうですね?」
思い出したのは1年前……、デジヴァイスからの連絡を受け取った龍司が、冷や汗と深刻そうな顔で俺の家から飛び出していく姿。
追いかけた先にあった赤く点滅している『手術中』と書かれたランプ。
白い顔で檜の箱の中にあるボロボロの肉塊を見つめる龍司。
命だけは取り留めたものの途方もない大金がかかるようになってしまった唯一の肉親。
親戚から白い目で見られ、高校を中退し、両親の店を継ぐ龍司。
(……ああ、そうだ……俺は)
アイツを力無く見つめることしかできなかった。
「……そうだ。あの事故のせいで親父とお袋が死に、エリカは未知の障害を負った。そのせいで俺は岸辺の言うことを聞くしかエリカの命を守れなくなり、……俺は」
苦々しく頷いた龍司を憐れむように星野タイトは沈痛そうな面持ちで、病院のカルテのコピーを俺達に渡した。
「『EDEN』での応急処置をするも、近年では少しずつ軽減できなくなってきている。これが今の彼女の現状だ」
「「────ッ!?」」
その中にあったのはこのまま治療を続けたとしても『余命が半年しかない』という……残酷すぎる事実であった。
「その障害を治療する為にまずは……」
「……と、こんなところでどうかな?」
最初は俺達は目の前の絶望に打ちひしがれながら、ただただ話を聞いているだけであった……しかし、
「おいおい、いいのかよ……これ?」
「……貰いすぎではないのか?」
星野タイト……、いいや『俺達の真の雇用主』はとんでもない条件を俺達に提示した。
お嬢の治療兼、リハビリはもちろん、給料はハッカーチーム『フーディエ』と龍司所有の漫画喫茶が不定期の営業になる慰謝料も含め、月々だいたい『────万円』、大企業の幹部や国会議員の年収でも見ない給料の桁数に驚きを隠せない。
さらにさらに、俺達のデジモン達のバックアップや漫画喫茶のデジヴァイスやらパソコンやらの機器のリプレースに、週休3日制……etc、etc……、とんでもない好条件に俺達は目が飛び出ていた。
最も重要な『パラダイスロスト計画』のその後についても、俺達は『保障』されている。
「なに、俺の目的の為に『世界を捨てて』貰うんだ。これぐらいの報酬は妥当どころか安いと思っている」
「「…………」」
話は聞いたけどよ……、まだ、実感が湧かないというか……、
(…………龍司)
(なんだ?)
(本当にコイツ、このままでいいのかよ?)
(…………)
ただ、ただ、……話を聞いてそう思ってしまった。こいつの過去になにがあったかは詳しくは聞かない……聞かないけれど、
(だって、こいつは…………)
(言うな)
(…………)
(俺達は目の前の契約書に名前を書くかどうかだけ考えればいい)
目の前にあるのは、先程の契約内容が書かれた契約書。そこに俺達の名前と血判を押せば契約できると目の前の少年は言った。
(……でも────)
「……どうする? 手を取るのも、手を引くのも君達の自由だ」
俺が二の足を踏んでいるとわかっていて、目の前の少年は『自由』だと話す。
「……ここで俺達が手を取らずに、お前の計画を警察にバラすという考えはないのか?」
ここでは『俺達』は逃げることはできない。逃げることはできないが、契約書に名前だけ書いて、契約だけして逃げることだってあるってぇのに、目の前の少年は龍司の言葉に深く頷くだけだ。
「警察……、ああ、又吉刑事のことか……、それなら、問題ない。ここで手を取らないのならば、君達の記憶を消すだけだ」
『記憶を消す』……、その言葉に俺達の前のリーダーのことを思い出させられる。
(アラタと同じように、俺達も記憶を消されるだけ?)
アラタを含め、岸辺リエと末堂アケミ、星野タイトは多くの人々の記憶を操ってきた。それは、計画に賛同できなかった者、計画についていけなかった者、情報を流そうとした裏切り者、『カミシロ』に仇なす者、使い捨てられた手駒など……、さまざまな被害者いるとこいつは言った。その中には、『真田アラタ』の名前もあった。
「……消す……か」
思うところはある。思うところはあるのだが……、こいつは岸辺のようにあからさまな行動をとることはないだろう。
(……それに、お嬢の命もかかっている)
その事実だけが、俺の胸の中を燻っている。
「こっちの思惑通りに動かない駒はいらないからさ……、君達の記憶ぐらいすぐに消してあげるよ」
簡単そうに言ってくれやがる。こっちはこんなにも悩んでいると言うのに……、
「「…………」」
俺も龍司も名前は書けた。名前を書くことはできたのだが、指を傷つけることが……契約することに二の足を踏んでいる。
「もちろん、ここで即決してくれ。そうしなければ君達の記憶を即座に消す」
ここが俺達の『ターニングポイント』だと言うように、俺達はジリジリと崖っぷちまで追い詰められていく……、そんな言葉の、契約の重みに手の震えが止まらなくなる。
「……さあ、どうしようか?」
俺は、……俺は────、
彼らは結局『私』と契約を結んだ。
「……これで、手駒が揃ったな」
これまでの苦労を思い出して一息吐いた。
(これで、ようやく一歩進んだ)
目的の……、『パラダイスロスト計画』の先、計画の第一段階が済んだことに安堵と、気を引き締めなければいけないという使命感が同時に襲ってくる。
『……タイト』
「テト、どうした?」
『お気に入りのあの子が『イーター』と戦ったよ』
「……結果は?」
『タイトのお気に入りの勝ち……、流石主人公だね』
「ここまでお膳立てしたのなら当然だけどな」
どうやら、あちらも計画通りに『こと』が進んだらしい。
こっちも上手く彼らを動かすことができたという感謝をリエさんに連絡した。
『なぁに、マナトちゃん?』
『リエさん、あの2人……俺にくれませんか?』
リエさんに私は事前にアポを取って、『フーディエ』を都合よく動かしたいと話を通していた。
『あの2人っていうと……、りゅーじちゃんとちとせちゃんのこと? 別にいいけど……、珍しいな、貴様がそんな事を言うとはな』
毛先で遊ぶのをやめて、『
『『私』に『いい考え』がありまして』
『……『いい考え』?』
『リエさんならきっと興味を持つだろう』と、とあることを私が考えた。
『おもしろい『見せ物』をしようと思っています』
『……話を聞こう』
それは『パラダイスロスト計画』の後の話。取らぬ狸の皮算用ではないかという話でしかないと切り捨てられる可能性すらあった。しかし、結果は……、
『ハーッ、ハッハッハッ!!!』
リエさん大喜びである。
『おもしろい見せ物だ。いいだろう……、貴様に『あれら』をくれてやる』
リエさんはその場で許可をくれた。これで、フーディエかんれんでリエさんの周りをコソコソしていたとしても怪しまれないはずだ。
『…………』
『リエさん、どうかしましたか?』
リエさんが少しだけ意外そうに私を見つめていた。
『……しかし、良いのか? 貴様はーーーー』
ああ、そのことか。
『いいんですよ』
リエさんの言葉を遮り、私は『いい』と言った。
『私だけ『傍観者』というのも、あなたにとってはおもしろくないでしょう?』
私だけがただ側から見ているというのは、リエさんも気に入らないはずだし、『俺』も気に食わなかった。だから、こういうことはやっておいても損はないのだ。
『それは……、そうだが……』
なにやら言葉に詰まっているようだ。言いたい言葉があるが、私の顔を見て上手く言えずに困っているのだろうか? ……もしかしたら、なにか言いづらい言葉なのかもしれない。
(それなら、言わないほうがいいよな)
『俺』のためにも、リエさんのためにも……、少しだけ背中を押してあげよう。
『それに』
私は言葉を付け足した。
『それに?』
リエさんはそれに聞き返した。
(ねえ、リエさん知っていますか?)
かつて、『俺』の母が『
『『
『僕』流に言ってあげますよ。
『……ね』
「あのときのリエさんの表情はおもしろかったなぁ」
リエさんがとっても驚いた表情をしていて、その顔はとってもおもしろかった。だって、普段周りにさせている表情をリエさんがしてるんだ。おもしろくったって、しょうがない。
『……それで、タイトはこの後はどうするの?』
「第二段階に入る。テトはこのままアミの護衛をしつつ、イーターの捕獲を頼む」
『オッケー、暇つぶしくらいにはがんばってやるよ』
「頼んだ」
テトに次の指示を出して、ふと今までのことを思い出す。
この世界に産まれてから、
この世界を旅立ってから、
この世界に戻ってきてから、
この世界を救ってから、
この世界を…………、
「これで……、第二段階」
喉奥に詰まった言葉を飲み込んで……、茜色の彼女の顔を思い出しながら自嘲を繰り返した。
「さあ、計画を進めよう」
目の前にある画面の中には『灰色のデジタマ』がポットの中に沈んでいた。
1/1の番外編アンケート
-
if√タイムストレンジャー 前編
-
ツルギやユウと遊園地
-
クロスウォーズでの一息回