産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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[インタビュー]
・ドーム公演おめでとうございます。

[アイ]
・ありがとうございます

[インタビュー]
・今回出演する兄妹の御二人以外に末っ子さんがいるそうですが、いったいどんな方なんでしょうか?

[アイ]
・昔は怖がりな子で、今は優しい子……かな?

[インタビュー]
・末っ子さんは芸能界に入られることはありますか?

[アイ]
・演技は結構上手いみたいだけど、聞いてみないとわからないかな……私としては一緒に役者とか舞台とかやってみたいと思うよ。



第四話 愛別

 

 2006年 4月

 

 俺やアクア、ルビーは幼稚園に入園した。調べ物は順調に進んでいる。

 

 母さんのことだと……

 

 ・母さんのストーカーの存在

 名前 『篠原涼介』 大学生 今年で22歳 母さんの過激なファンだったが、現在はライブ・イベントには来ていない。ネットの投稿では、別名義で、過激なアンチになっている。母さんに明確に殺意を抱いているため、要監視中

 

 ・母さんが通っていた病院の担当医、行方不明

 名前 『雨宮五郎』 産婦人科医 母さんのファンであったが、俺達の出産の日に突如行方不明になる。病院周辺の監視カメラを漁ってみたが、母さんの出産の日の夜外に出て以降、確認が取れていない……死んでいる可能性あり 出産する数日間、篠原涼介と中学生ぐらいの男が母さんの入院している病院付近を彷徨いていた

 

 ・母さんの過去

 名前 『星野アイ』 片親 幼少期に母親(俺達の祖母)に虐待を受けていた 祖母が窃盗で捕まった後、養護施設に入所 祖母が釈放されても迎えに来なかったことがトラウマ 『愛』がわからない 嘘が上手い 『劇団 ララライ』で働く、後に所属団員の子を孕む アイドルとして売れはじめた頃に出産 俺達のおかげでバズる 子供の父親『不明』 『劇団ララライ』の監視カメラ捜査中 

 

 

 ……ストーカーは多分共犯がいると思う。というよりも、唆した奴がいる。そこをもう一度洗い出さないと、ちょっと危ないかもしれない。ただ、過激なストーカーがいるのがわかっただけありがたい。知っていれば先手が打てる。

 

 父親についてはまだ何もわかっていない。たぶん、母さんのことを監視できたら話は早そうだけど、それを行うにはまだ問題が山積みだから、優先度が低いので後回しにしている。

 

 おじさんには捜査してること、あえて見逃してることも伝えてある。ストーカーが母さんの家付近に現れたら、すぐに警察に連絡がいくようにお願いしてるから大丈夫そうだ。

 

 

 俺のことだと……

 

 ⭕️decode

 

 ・『GIGO』

 存在していない。カミシロがあるから注意。

 

 

 ⭕️サイスル・ハカメモ

 

 ・『カミシロ』

 カミシロ・コンポレーション 社長健在 政府主導のもと、EDEN計画が始まる。岸辺リエに注意 社長に俺と同年代の兄妹がいる

 

 ・岸辺リエ

 性格最悪の女 化け物 社長を殺す 

 

 ・末堂アケミ

 要注意人物 カミシロの根幹 聖人 チートキャラ 味方につければ最強 敵になってもなんだかんだ手伝ってくれる優しい人 できれば、味方につけたい 

 

 ・又吉五郎

 新宿マタギ刑事(デカ) 信頼できる 正直に話せば理解してくれるまともな人 暮海探偵事務所はまだない

 

 ・都立 井ノ電高校 

 最近できた神城が出資した学校 電脳科と呼ばれる新たな学科あり 主人公が通うことになる場所 偏差値普通ぐらい 進学する? 

 

 

 ⭕️サヴァイブ

 

 ・都立 水瀬中学

 課外キャンプで山梨県に向かう 偏差値は割と高め 進学すべきか? 

 

 ・水無瀬神社

 約40年前ぐらいに娘が行方不明になった。『デジモン』(ケモノガミ)に注意 子供なら贄として捧げられないように強い心を持つ 自力さえ強ければ大丈夫 水瀬中学の課外キャンプの場

 

 ・加山修

 政治家 野党 世間の評価は声が大きいだけ、足引っ張る暇があったら別の案を出せ等批判的なものが多い 政策は左翼的なものが多い 政治屋気質なことを誇りに思っている 思想を家族に押し付けている 俺と同い年の息子、弟と歳の離れた兄がいる

 

 

 カミシロ、水無瀬神社が存在するから、ムーンライト、リデジ・デコード、サイスル・ハカメモ、サヴァイブ*1は確定……それ以前、以降のストーリーシリーズ、ワールドは未定ということがわかった。

 

 末堂はできれば味方につけたい。あの知識と発想力、デジモンシリーズ内でもトップクラスの天才、しかも性格は個性的だがラスボスの癖に、デジモンシリーズ随一の人格者である。敵になるより、味方になったほうが完全に得だ。

 

 母さん達には又吉さんを味方につけたほうがいいだろう。末堂さんには及ばないが、警察の権限があるのは味方にいたほうがいい。

 

 サヴァイブ関連はどうすっかな……偏差値割と高めだし、小学生から勉強すればなんとかなるか? 進学できたら、課外キャンプは行くことになる。進学できなくても、中学生のうちに勝手に調査に行けばいい。

 

 デジヴァイスicの機能についてもわかったことがある。

 デジヴァイスの機能のなかに、『デジモンの進化・退化機能』・『デジモンの餌生成機能』を発見できた。ストーリーシリーズのデジヴァイスicの機能が主軸となって、他作品の機能も使えるって感じがする。ゲーム基準でいろんなことができそうだ。今は、現実世界のパソコン内の情報を食べるだけで充分だが。進化すればもっとたくさんのエネルギーを使うことになるので、『食事生成機能』はありがたい。

 

 未だに重要機能である『デジソウル』が発見できていないのが、デジヴァイス関連で最も不安な要素ではあるけど……どうやって出すんだ? 気合いってアニメで言ってたけど、何もわかんないからなこれだけは……まっ、デジヴァイス関連はゆっくりでいいんだけど……

 

 

 今、1番の問題は共犯者がどこにいるのかわからないことだ……そもそも、ストーカーはいつ星野アイがあんな辺鄙なところの産婦人科にいると知った? 共犯者もだ。どこからかリークしようにも、あの頃のアイはお世辞にも売れていたとは言えない。なら、情報が漏れるなら内部犯のほうが可能性が高いが……おっさんはアイを溺愛してるし、ミヤコさんはアイの出産時はおっさんと結婚どころか、会ってすらいなかった。他メンバーはアイが孕んでいたことを知らない……情報の出場所がない、というよりも、何か見落としがある気がする。

 

 クソッ、せめて……

 

「……雨宮五郎がいる場所がわかればいいんだけどな?」

 

 ガタンッ、と音が鳴った……アクアじゃん、聞かれてたのかな。別に聞かれても誰かわかんないだろうし、いいか。

 

「なあ、雨宮五郎って言ったか?」

 

 あれ、アクアってもしかして、前世で知り合いだったのかな? 

 

「ああ言ったけど……もしかして、知り合いかな?」

 

 

 アクアはちょっと言い出しづらそうにはしている……何だよ早く言えって。

 

 

 

「……俺だ、俺が雨宮五郎だ」

 

 

 

 ……ッ!!! 

 

 

 

「正確には……前世、担当医としてアイが出産予定日までのだがな」

 

 

「おい、どういうことだ? 星野アクアが雨宮五郎? こんな近くに情報があった? こいつを転生させたのは誰だ? 俺と同じ経緯で転生したんじゃないのか? 俺の生まれ変わりと何か違う? 出産予定日に死んで、なぜすぐに生まれ変わる? 雨宮五郎は死んでいる? 星野ルビーは誰だ? 雨宮五郎の関係性があるのか? イグドラシルは関係している? 星野アイから産まれることになにか意味がある? 俺達の他に転生者がいるのか? 何で死んだ? 誰かに殺されたのか?」

 

 

 

俺はどこからか生まれてきた? 

 

 

「おっ、おい、大丈夫か?」

 

 アクアの言葉で意識が戻ってくる。何で今まで疑問に思わなかったのかわからないぐらい。聞きたいことがある。それをまず聞いて……頭を落ち着かせろ。今大事なのは母さんの身の安全だ……自分のことなんて、後回しにしたほうがいい。

 

「ああ、大丈夫大丈夫……もーまんたい。もーまんたい」

 

 全然大丈夫じゃないけど、聞きたいことを頭の中でまとめる。

 

「……で、なんで雨宮五郎のことを調べてたんだ?」

 

「……ん、ああ。母さん……アイのことについて調べてたら、担当医が出産予定日に行方不明になっていることがわかった。それさえわかれば、なにか進展するかなって思ってだんだよ……でも本人が目の前にいるとは思わなかった」

 

 ここで聞きたかったことはなんだろう? 知られたからには情報共有が必要だな……手元にある資料をアクアに渡す。

 

「ええっと……3ページ目の、この写真の男。アクアは知らないだろうけど、この男が今母さんにストーカーしている男で、雨宮五郎が働いていた産婦人科の病院の近くで彷徨いているところが監視カメラに写っているんだ……行方不明になる前の雨宮五郎に接触している可能性がある……アクア?」

 

 アクアは写真を見た時に、表情が固まっていく。

 

「……この男だ」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 背筋が凍る……この男が雨宮五郎を殺した。つまり、殺人犯がアイを狙っている? ルビーも殺されてアイに生まれ変わったのか? じゃあ、あの性格はおかしい……ルビーの前世も確認する必要がある。

 

 情報が足りた気がする。経緯と死んだ場所さえわかれば、証拠が出る。警察はこいつをしょっぴける。

 

「アクアはどんな殺され方をしたんだ?」

 

「たぶん、バットを持っていたし、頭がいきなり真っ白になったから、バットで頭を思いっきり殴られたことによる撲殺だと思ってる」

 

「場所は?」

 

「産婦人科の近くの森の中に逃げたから、その付近には死体があると思う」

 

 ……誰かに調べに行ってもらう? おじさんに頼めば、行けるか? そんなことよりも、ルビーの方を確認するのが先だ。ルビーの前世も殺されているなら、証拠がまた増える。少なくとも、ルビーの前世は聞いておいたほうがいい……が、俺はルビーに嫌われてるからな。アクアに頼むか。

 

 

「アクアには悪いけど、ルビーに前世を聞いてきてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 2006年 10月末

 

 

 俺たち家族は『苺プロ』が東京に拠点を移すときに、一緒に東京へ引っ越した。

 

 あのあと、アクアのおかげでルビーの前世もわかった。雨宮五郎が小児科で働いていた頃の患者だったらしい。初恋だったらしく、今まで母親にベッタリだった娘が兄のアクアの後ろをついてまわるようになったことに、母さんは少し寂しそうだった。

 

 雨宮五郎の死体はおじさんの知り合いによって発見され、犯人は今も捜査中らしい。篠原涼介(ストーカー)が犯人の第一候補らしいが、まだ決定的な証拠がない為、警察の方もマークはしてるが捕まえられないみたいだ。

 

 母さんは、来週にドームでのライブを控えている。その前には捕まってほしいところだ。

 

 

「……できれば、母さんには少しでも幸せになってほしい」

 

 

 資料の中のとあるページを開く。

 

『カミキヒカル』

 

 推定、俺達の父親 劇団ララライにかつて所属しており、現在は俳優として活躍している 女性遍歴悪い 十代前半という若さで複数人孕ませて、放置している サイコパス アイがこの前連絡を入れていた 最近、托卵相手が亡くなった 監視カメラに托卵相手の夫に接触したのが写っている アクアに顔つきが似ている

 

 

 

 

 

アイの電話の後、篠原涼介に接触した
 

 

 

 

 

 

 調べるとたくさん粗が出てくる……とは言え、コロモンがいなきゃ俺は何一つ真実を手に入れることができなかっただろう。

 

 

「コロモン、ありがとう。君がいなかったら、何もわからなかった」

 

「ううん、いいよそんなことぐらい。パートナーとして、当然だよ……でも、あのことルビー達に言わなくていいの? ほんとにやるの?」

 

 

「やるさ、そうしなきゃ母さんは変えられない」

 

 

 

 

 

 

 

 2006年 11月1日 星野アイ ドーム公演

 

 

 14時

 

『タイト、確認できたよ。篠原涼介だ、僕もそっちに戻るね』

 

 デジヴァイスicにコロモンからの連絡が来る。監視カメラには花束の中にナイフを持った男が、うちの最寄駅から出てくるのが写っているのを確認できたみたいだ。

 

 警察はまだこの事実に気がついていない。母さんはアクアとルビーのお昼寝の時間に付き合っている。

 

「母さん、ちょっと外に行ってくる」

 

 俺はこの時間帯に寝ない習慣だと、母さんが覚えていたおかげで今は、フリーの時間だ。

 

「一人でだいじょーぶ?」

 

「ちょっと、マンションの庭を探検してるだけだから……全然、大丈夫だよー!」

 

 わざと、いつもより楽しそうな声を掛けて、外に出た。

 

 

「ただいま、タイト!!! ……間に合った?」

 

「大丈夫、まだきてないみたいだ」

 

 コロモンも戻ってきた。このマンションは、駅からだいたい10分ぐらい時間がかかる……篠原涼介はまだ来てない。

 俺とコロモンはは隣の家の室外機の裏に隠れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴はまだ来ない。

 

 

 

 

 

 

 奴はまだ来ない。

 

 

 

 

 

 

 奴はまだ……来たっ!!! 

 

 篠原涼介は我が家の呼び鈴を鳴らす……呼び鈴の音が消えて中から、足音が聞こえはじめると()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ドアから見てナイフが見えないように、花束を前に出す。

 

 

「やる?」

 

 

 ナイフを持つ手に力を入れ始めた。

 

 

「まだ、もう少し……」

 

 

 

 

 ドアが開いたっ!!! 

 

 

 

 

「……今だっ!!!」

 

「……くらえぇっ!!!」

 

 

 

「なんだお前っ!?」

 

「ボタちゃん!?」

 

 

 コロモンが篠原にタックルして、マンションの外廊下の柵から落とす。

 

「コロモン、やったかっ?」

 

「ダメっ! ……あいつまだ動いてる、気絶してない」

 

 ……っ、ここ二階だもんな。落ちても最悪骨折ですむ……今回相手は打ち身程度だけどな!!! 

 

「ボタちゃん!? タイトっ!?」

 

「タイト、ヤバいよ。あいつ相当怒ってる。立ち上がってこっち睨んでるよ!!!」

 

「母さんは大丈夫そう、ナイフは……あいつがまだ持ってるな」

 

 2階から見下ろすとやつがナイフを持っている。

 

「コロモン、俺たちも降りるよ!!!」

 

「わかった、タイト!!!」

 

「あっ、ちょっとどこに行くの!!!」

 

 母さんの呼び止める声を無視して、篠原の前に立つ。

 

「おまえおまえおまえ、おまえはアイの息子だなっ!!!」《

 

 篠原涼介は俺のことを血走った目で見つめてくる。ちっ、2階から突き落としたのに、全然ダメージが入ってない。

 

「ああ、そうだ。俺は星野ターフェアイト、星野アイの息子だ」

 

「僕はそのパートナーのコロモン」

 

 ナイフを持つ手が震えているものの、しっかりとこちらを見据える篠原涼介……もう、完全に犯罪者って面だ。

 

「やっぱり、やっぱりお前らは生きていたんだっ! あのとき……あのとき、医者を止めたのにっ……アイはやっぱり俺達を裏切っていたんだっ!!!」

 

 医者……つまり、雨宮五郎を……前世のアクアを殺したのはこいつだ。

 

 

「裏切った? ……バカにしてんのか、てめえ? 母さんは裏切ってなんかねえよ。てめえが勝手に母さんに幻想を抱いて、勝手に破れただけだろうがっ!!!」

 

 奴は俺に対して目を更に血走らせて、明らかに頭に血が昇っている。

 

「違う、アイは俺を裏切ったっ! ……アイドルなのに男とセックスして、子供なんか作りやがって……俺を、俺たちファンを裏切ったんだっ!!!」

 

 怖い……でも、後ろには母さんやアクア達がいる。ここで逃げたら、母さん達が狙われる。

 

「へえ、じゃあ……母さんが裏切ったからって、他人を殺していいのかよっ! ……雨宮五郎を、産婦人科医を殺したてめえみたいな犯罪者に言われたくねえよ!!!」

 

 

 

「……先生死んじゃったの?」

 

 

 母さんの声……振り返ると、母さんとアクアとルビーがいる。

 

 

「アイ? 、アイっ……アイ────っ!!!」

 

 

 しまった、母さんたちが後ろからついて来たのか!? ヤバイ、あいつ母さんに突っ込んでく……

 

「コロモンっ!!!」

 

「わかってるよっ、タイトっ!!!」

 

 母さんたちに向かって振り下ろされるナイフ。

 

「死ねっ、アイ!!!」

 

 篠原をコロモンが出した泡で攻撃する。篠原の背中に当たり、母さんたちから五メートルほど離れた位置まで吹っ飛ばされる。

 

 

 

「……だから、あんたの相手は」

 

 

「僕達だよ」

 

 

 

 母さんは雨宮五郎が死んだ話で放心してる。後ろには、アクアとルビーがいる。なら他に逃げ場はない。なんとか次の一撃で奴を気絶まで持っていかなきゃ行けない。

 

「おいっ、どういうことだよ!? なんで、ストーカーがここにいるっ、なんでおまえは戦ってるんだっ!!!」

 

 アクアが興奮気味に叫ぶ……篠原のやつは立ちあがろうとしている。幼年期レベルの攻撃じゃ、大人1人気絶させられないか……

 

「……悪い、アクア、俺はずっとこのタイミングを待っていたんだ」 

 

 ストーカーから目を離さない、やつは背中を押さえてる……奴の背骨が折れてるのか? 

 

「ねえ、なんでっ!? なんでママが危険だって知ってたのに、タイトはストーカーを放置してたの?」

 

 ルビーの叫び声が聞こえる……それでも奴からは目を離しちゃいけない。

 

 

「知っていた……から、こそだよ」

 

 

「「「……っ!?」」」

 

 

 三人の息を呑む音がする。篠原涼介はまだ立ち上がれてない。

 

 

「どうする?」

 

 

「やつがもう一度立ち上がったら、行くよ。コロモン」

 

 

()()()()()()()()……いや、上手くいきすぎてる。計画通り、俺は母さんに背を向けながら話しかける。

 

「母さん……母さんは誰にでも嘘をつくよね。でも、母さんは母さん自身の危機管理ができていなかった。そのせいで、彼みたいなストーカーが生まれることになった」

 

「……リョースケくん?」

 

 アイ……アイ……と声が聞こえて来る。正直に言えば、あそこまで執着しているのを見れば、気持ち悪いというよりも怖いという感情の方が強い。それでも、立ちあがろうとするのは、きっと……

 

「母さん……母さんって無責任だよね。俺たちを若いうちに産んだり、ファンの人に嘘をついてずっと子供がいることを黙ってたり……」

 

「でも、それはママがアイドルを続けるには必要なことでっ……!」

 

 ルビーの擁護する言葉が耳に入る。でも、それは……

 

「必要だからやっていいのか? ヤりたいからセックスしていいのか? 産みたいから、産んでいいのか? いいか? この国は『自由』に生きて暮らすことのできる『権利』が認められてるけど、それはこの国では果たすべき『義務』……つまり、『責任』が伴うんだ」

 

『権利』、『自由』、前世で腐る程言われた言葉だ。俺は考え無しか言うその言葉が大っ嫌いだ。

 

「俺たちはこの国、日本に暮らしている……だからこそ、法律を守らなきゃいけない。別に完全に守れとは言ってない。ある程度でだ。そのなかで俺たちは『自由』に生きることが保証されてる……だけどな、たまにこうやってわかっていても、法律を破ってくる奴がいる」

 

 篠原涼介を見る。 膝がついているもうすぐ立ち上がれそうだ。

 

「躊躇わないのはなんでだろうな? ……きっと、そう言う人たちは『愛』していたんだろうな。何かを……」

 

 自分だったり、他人だったり、故人だったり、物だったり……いろいろな物に人は愛を向ける……それは僕も同じで…………

 

 

「ただ自分の思いに全力で『愛』したからだと思う」

 

 

 母さんはそれがわかっていなかった…………いや、違う。母さんはわかっていたけど、軽く考えていたんだ。『愛してる』って言う意味を考えていなかったんだ。

 

「母さんは『愛してる』って言ってきたよね……そのことに『全力』を賭けてきたのかな? たぶん軽く考えていたんじゃないかな? 母さんは『愛してる』って言う意味をわかってなかったよね……だってさ、騙すんだったら、カミキヒカルに電話かけないし、母親になるんだったらファンに正直に言わなきゃいけなかった」

 

 はじめてドームに行った日、俺はあんたが初めて『本当』に笑ったのを見た。その笑顔が素晴らしく、とても美しかったから、あなたのファンになったんだ。守りたいって思ったんだ。自分のすべてを賭けてでも、この人に幸せに生きてほしいって思ったんだ。

 

 

「母さん……あなたは自分の嘘に、自分のすべてを賭けてなかった」

 

 

 俺は嫌われたって構わないくらいの、

 

 

「だから見ててほしい」

 

 

 この世界が滅んだってどうでもいいって思ってしまうぐらいの

 

 

 

「俺は貴女に『自分のすべてを賭けて守る』って、誓った」

 

 

 

 

 

 「俺の『勇気(あい)』を」

 

 

 

 

 [コロモン 進化]

 

 

 

 コロモンが光に包まれる……光の中心にいるのは、

 

 

 

クロアグモン*2

 

 

 

「コロモンが……」

 

 

「変態*3した?」

 

 

 

 アクアとルビーが驚いている。あの時は、2人とも寝ていたからいなかったんだよな。

 

 

 アグモンが進化したのか……そして俺も、 

 

 

「えっ、なんで……」

 

 

「……嘘だろ」

 

 

「タイトの手が……」

 

 

 

 

「「「光ってるのっ?」」」

 

 

 

 デジソウル……ようやく、できた……そして目の前にいる篠原涼介も立っている。

 

「なんなんだっ、なんなんだよっおまえは────っ!!!」

 

 ナイフを持って突っ走って来る。避けることはできない。後ろには三人がいる……でも、大丈夫。

 

「感動してる場合じゃないな……行くぞ、クロアグモン」

 

「OK、タイト」

 

俺たちは奴は向かって走っていく。

 

正直に言えば怖かった……だけど、隣にはクロアグモンがいる。君が一緒に立ち向かってくれる。

 

 

 

 君と立ち向かう。それができるから…………

 

 

 

奴が振り下ろすナイフに向かって、クロアグモンがベビーフレイムを撃って、

 

 

 

 だから、俺は『勇気』が持てた。

 

 

 

 

俺は、篠原涼介の顔面を思いっきり殴り飛ばした。

 

 

 

 

 

 目の前には気絶した篠原涼介……そして俺も、どうやら時間が来たみたいだ。俺の体が少しずつ光になって消えていく。

 

「……なんで、タイトが光ってるの」

 

 ルビーの声が聞こえる。少し、声が震えて聞こえたのは、気のせいだと思う。

 

「なんとなく、わかってたんだ。こんなことになるって」

 

 ただの子供にデジモンが渡されるわけがない……たぶん、成長期になったときに、デジヴァイスicにデジタルワールドに送る機能がついていたんだろう。

 

 

「母さん、アクア、ルビー……お別れのときだ」

 

 

 せめて、最後は笑顔で行きたかった……だから、『笑顔(うそ)』の練習をしたんだ……

 

「私まだ何も聞いてないっ! あんたに何も何も聞いてないよ」

 

 そりゃ、言わないようにしてたから……アクアと仲良く過ごしてたから、できる限り近づかなかったんだ。だって、邪魔だろ、俺。

 

「お前、なんで……」

 

 アクアなんでそんな顔すんだよ。別れくらい笑って行きたいんだよ。こっちは……泣きそうになるじゃないか。

 

「アクア、ごめん……うちのベッドの下、資料があるから、あとは頼んだ」

 

 念の為に『あれ』作っといてよかったな……別に死んだわけじゃないけど、必要だったみたいだ。

 

「あとは頼んだってお前っ……!?」

 

 アクアが掴んだ左手の形が光に置き換わる……その後に、デジヴァイスに吸収されたことから、俺にはもう触れられないみたいだ。

 

「だから、後は頼んだ……お前なら、きっと上手くやれる」

 

 すっと、母さんが立ち上がる。

 

 

「……ごめんねっ、ダメなお母さんで。タイトのこと守ってあげられなかった。約束守れなかったよ」

 

 

 ……ああ、そんな顔をしないでほしい。

 

 

「母さんのおかげで、俺はまともな母親に出会えた……全然ダメなお母さんじゃあないよ」

 

 

 前世の糞婆に比べたら、ずっとお母さんをやってたよ、あなたは……

 

 

「母さん泣いてなんかいないで、笑ってよ……折角ドームで公演するんだろ。アイドルなんだから、ファンのみんなに責任を果たさないといけないよ』

 

 

 体ももうほとんど吸い込まれた。あと少しで頭も消えると思う。ああ、いろんなことを思い出すな……卒園式や入学式に母さんとアクアとルビーの四人で写真を撮りたかった。アクアやルビーと学校通いたかったし、母さんと運動会とか大きな行事に出たかった。遠足や修学旅行でみんなで京都とか行って思い出作ったり、小学校の卒業式は学生服を着て参加したかったし、中学では必死になって受験に挑みたかった。高校生になってバイトとかやって、初めての給料は母さんにプレゼントとか送ったりとか、20歳超えたら家族みんなでお酒飲んだりとか……こうしてみると、やりたいことがたくさんあって、未練がましくなっちゃうな。

 

 

 でも、やらなきゃいけないことがたくさんあるから、

 

 

 

 必ず、必ず、帰って来るから、できる限り1番の笑顔で、

 

 

 

 

 

「必ず帰って来るから……行ってきます』

 

 

 

 

 

「そう言えば、ずっと言えないことがあった。今言わないと忘れちゃうよな……

 

 

 

 

 

みんなのことすっごく愛してる」

 

 

 

*1
デジモンのゲームシリーズ。

 デジモンストーリームーンライトはストーリーシリーズの二作目

 デジモンワールドre digitize decodeはデジモンワールドシリーズの十・十一作目

 サイバースルゥース・ハッカーズメモリーはストーリーシリーズの四・五作目

 デジモンサヴァイブはデジモンの最新作

*2
レベル:成長期 タイプ:爬虫類型 属性:ウィルス 必殺技:ベビーフレイム

 成長して二足歩行ができるようになった、野生の本能に目覚めた小型の恐竜の様な姿をした爬虫類型デジモン。性格はかなり獰猛で凶暴な性格の持ち主。両手足には硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。力ある偉大なデジモンへの進化を予測させる存在でもある。必殺技は口から火炎の息を吐き敵を攻撃する『ベビーフレイム』

*3
形態を変えること。

 動物が発育の途中で、発育段階に応じて形態を変えること。

 植物の茎・葉・根が変じて通常の形とは全く異なる形となっていること。……デジモンの用語では進化




デジヴァイス

デジモンを育てる為の携帯機器の総称。また、シリーズごとに名前が変わる。タイトは現在『デジヴァイスic』を使用している。
アニメ・ゲームでは基本的にデジモンの『進化』を補助する道具であり、機能は世代を追うごとに増えていく。(本作のデジヴァイスicの機能は第二話の脚注に書いてあります)

また、本作に出てくるデジタルモンスターサイバースルゥースにおいて、電脳空間『EDEN』にログインする道具も、デジヴァイスと呼ばれている。



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