産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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[インタビュー]
・末っ子として産まれてどうでしたか? 御家族がご活躍されていますが、貴方は芸能界に入りたいとは思いませんでしたか?

[タイト]
・俺自身はしばらく行方不明になっていたので、仕事のことはなんとも言えません……ですが、あの人達の家族で良かったと思っています。

[インタビュー]
・行方不明になっていたとはいったい?

[タイト]
・それに関しては言うつもりがありません。調べてもらっても構いません。ただ俺が頼りにした人に迷惑をかけるのはやめてください。少なくとも、俺を救ってくれた人達なので、迷惑はかけたくないんです。





After story  其々

 

『拝啓……と言うのもおかしい気がする。家族に書く手紙をわざわざ難しい言葉で誤魔化すのは、やめます。

 

 きっと、この手紙が届いている頃には俺はそこにはいないのでしょう。俺が母さん達の近くにいたら、まあ処分してるだろうから……安心してほしい。付属していた資料の件なんだけど、詳しくはおっさんに聞いてください。おっさんには、資料のことをほぼ話してあります。俺からは何もいうことはないです。

 

 本題はここから、俺がいなくなった後に注意してほしいことがあります。『カミシロ』が国家主導の大々的な動きを見せると思う。その中にいる『岸辺リエ』という女に注意してほしい。できれば、関わらない方が得で、『EDEN』の大々的なイベントにも参加しない方がいいと思います。

 

 もし『EDEN』で大変なことが起きて困ったら、警視庁の『又吉刑事』、もしくは『暮海探偵事務所』に依頼してください。人情に熱い信用できる人なので、話せば味方になってくれます。

 

 後、俺は言っていないことがたくさんあります。それについては、必ず帰って来るので、それまで待っていてください。

 

 最後に、俺は母さんやアクア、ルビー、おっさんやミヤコさん、貴方達家族と一緒に過ごせて幸せでした。もっともっと一緒にいたかったけど、やらなきゃいけないことがたくさんあるので、それが終わったら絶対に帰ってきます。俺の帰る場所は貴方達の居場所だからです。それでは、行ってきます。 

星野ターフェアイトより』

 

 

 ……こんな、感じか? 

 結構、うまく書けた気がする。よしこれを資料と一緒にベッドの下にはっつけてみる。

 

『本当にいいの?』

 

 コロモンが聞いてくる……

 

『いいんだよ、第一もしかしたら捨てるかもしれない物だぞ。いなくなる前に、見つけられたら恥ずかしいだろ』

 

『まあ、それもそうだね』

 

 

 

 

 

 

 2006年 12月1日

 

 

 

 ストーカーが捕まって、数週間たって、俳優カミキヒカルは警察に捕まり、カミキヒカルは裁判にかけられた。

 資料の方は書いてある内容は、『カミキヒカル』がクズ野郎ってことと、アイの命を狙っていること、カミキヒカルと篠原涼介が東京で何度も繰り返し会っていることとその映像……証拠が揃ったことで警察も動いてくれたため、なんとか捕まえることができた。

 世論は死刑判決を望む声が大きいが、アイはそんなニュースを見てもなんとも思っていない様子だ……カミキヒカルに関しては特に情といったものは持っていないみたいだった。

 

 ……ドームでの公演が終わった後、アイはアイドルを辞めることを決意した。俺とルビー、ターフェアイトという三人の子供がいることを発表し、子供できてしまったこと、それをファンに伝えずにアイドル活動をしていたこと、その理由について、真摯にできる限り自分の言葉でファンに謝罪した。

 

 アイがアイドルを辞めるに至ったのは、タイトがいなくなったことが原因だと思うが……なぜか憑き物が落ちたような顔つきになり、最後に『許していただけるのであれば、今後は役者、タレントとして頑張っていきます。よろしくお願い致します』という言葉で締め括った。

 

 ほとんどのファンは、アイが子供をつくったことよりも、死刑囚カミキヒカルに殺されなかったことを安堵していた。それは、カミキヒカルが何人も女性を騙し、孕ませて、産ませた後に殺していたことや、アイ自身がストーカーに狙われ、殺されかけたのが許される一因だと考えている。

 

 ごく少数はアイが子供をつくったことを怒っていたが、ネット上でそのことを口に出せば篠原涼介扱いを受けるというネットミームが生まれ、犯罪者扱いされることを嫌がったファンはその声を上げるのを次第に辞めていった。

 

 俺はアイと一緒に役者、ルビーはアイドルを目指す方向でそれぞれの道を進んでる。子供のうちは、外科医になる夢を追いかけず、母と一緒に役者をやっていきたいと思っている。

 

 …………ただ、

 

「水無瀬神社なんだと思う?」

 

「……だから、ネットにもほとんど載ってない山梨の廃れた神社だよ。なんであいつが、警戒してんのかわかんねえな……」

 

「ママっ……贄って書いてあるよ! めっちゃ危ない場所じゃん!!!」

 

「それよりも、最近のネット関連で頭一つ抜きん出てるカミシロのほうがよっぽどやばいわよ……政府主導で始まるってことは、テレビにも関わってくるってことでしょ!? ……ああ、もう関わるなって書かれてるけど、どうすればいいのよっ!!!」

 

 

 ……お前、秘密の資料ぐらいちゃんと処分してってくれ。アイがお前の部屋を漁ってるときに、ゴミ箱にそのまま入ってるのは、流石にアイのことを強く言えないと思うぞっ!!! お前も危機管理がなってないからっ!!! 

 

 ……お前がいなくなった後、うちのマンションが広くなった気がする。アイはお前の部屋1日に一回はに行くようになった。俺もルビーも家族としての関わりがあったものの、お前が抱えていた『恐怖』の正体については、結局わからずじまいだった。

 

 そんなときに、アイがお前がカミキヒカル以外のことを調べていた資料を見つけた。資料に書かれていたのは、会社に学校、警察官や探偵事務所の名前、人物像危険な相手か信頼できる相手について書かれたメモのような内容だった。それを、みんなで集まって考えるのが、仕事終わりの楽しみになっている……これを知ることで、お前の苦しみを共有できるんじゃないかって、そう信じてる。

 

 

「アクア……あんたも一緒に考えなさいよー、わかんないとこたくさんあるんだから……」

 

 

「ああ、今行く」

 

 

 P.S.帰ってきたら、俺とルビーに一発殴らせろ。少なくとも、俺とルビーは母さんを危険な目に合わせたことを許していない。だから、早く帰ってこい。お前の部屋はそのままにして、待っているから。

 

 

 日記を仕舞って、ルビーの元へ行く。この気持ちを忘れないように……しっかりと記録をした。

 

 

 

 

 

 私はあんたのことが嫌いだった。

 私たちが赤ちゃんの頃は、ママのこと応援してなかったし、ママの仕事に何も興味を持ってなかった。テレビ番組だってつまんない顔で見るから……なおさら嫌いだった。

 

 ある日、私たちのコロちゃんが来た……その日は、ママが寝てる間にスマホをいじろうと思ったら、あんたに先にスマホをいじられていた。私はずっとスマホをいじってるから、いい加減貸してほしかったのにあんたにまたスマホを奪われた。

 

 そんなときに、コロちゃん……ううん、あの時はボタちゃんがやってきて、部屋中が真っ白くなって、それ以降スマホは触れなくなっちゃった。だから、さらに嫌いになった。

 

 コロちゃんとはよく遊んだ……でも、タイトとは遊んだことはなかった。ただ、コロちゃんが来て、はじめてライブに行ったときに、あんたはママに魅せられた。どんなに無関心な相手でも魅了できるんだって、ママはすごいんだって思ったら、どんどんあんたの性格は暗くなっていった。

 

 ある日お兄ちゃんに前世を聞かれた……答えたくなかったけど、ママの命に関わると言われて、前世『天童寺さりな』のことを話した。そのおかげで、お兄ちゃんが『先生』だって知ることができた。お兄ちゃんはあんたに聞いてきてほしいって、言われたらしい。斉藤さんと一緒に調べ物してるのは知ってたけど、なんで前世が関わってくるのかわからなかった。

 

 

 ……ますます、あんたがなんなのかわからなくなった。

 

 

 あんたは少しずつ私を避けるようになった。コロちゃんとは話すけど、あんたとは話す回数が減っていった……私はあんたにお礼を言いたかった。先生と再会できたのは、あんたのおかげだって、ありがとうって言いたかった。

 

 そんなときだった。

 昼寝をしているときに、外から大きな音が鳴った。何かが落ちた大きな音だった。お兄ちゃんと玄関まで行くとママがいて、下を見たらナイフを持った人とコロちゃんとあんたが戦っていた。急いで下に向かったときに、ママが刺されそうになって、怖かった。コロちゃんが私を守ってくれなきゃ、ママは刺されていたかもしれなかった。あんたとコロちゃんは私達を守るように立ってくれた。

 

 コロちゃんは恐竜に姿が変わった。

 

 あんたの腕から紫色の光が出た。

 

 犯人を殴って止めてくれた時は安心した……その前にママにボロクソ言ったのは、ちょっと許せなかったけど、それでも守ってくれたのは嬉しかった。

 

 ……でも、あんたは消えた。

 どこにいったのかわからない。あのとき、あんたのこともっと知りたいって思った。いなくなったから、何もわからなくなった。

 

 今はあんたが残してった資料を調べてる。中学校とか高校とかの情報も載ってる……芸能系ではないけど、あんたのことをもっと知れるんだったら、行ってみるのもありかなって……

 

 

 だから、はやく帰ってきてほしい。

 また家族4人で一緒に暮らしたいから…………

 

 

 

 

 

 今考えても、不思議な子だった。

 抜け殻のように産まれてきて、ある日突然命が宿ったみたいに、目がパッチリ開いたのを覚えている。

 

 一度もあの子の名前を間違えなかったのは、ずっと何かを怖がっていたから……心配だったから、いつのまにかどこかにいってしまいそうな感じがしたから、忘れないように気をつけていた。

 

 あの子は私のことを見る目が変わった。

 最初はライブの日……私のライブをつまらなさそうに見てたあの子を、アクアとルビーが変えてくれた。私のファンになってくれた。それが嬉しかった。

 

 ライブの後……さらにあの子は怖がりになった。私のことを心配すると同時に、守らなきゃいけないって強い気持ちを話してくれた。

 

 正直、嬉しかったなあ……あれだけ、私に無関心だった子の瞳に、私達が一番映ってるのがたまらなく嬉しかった。それと同時に、この子の苦しみを少しでも分かち合いたいって思った。この子達の一番であり続けたいって思えた。

 

 はじめての入園式はよかったな……あの子達が、とっても可愛かった。お遊戯会のダンスはルビーがとっても可愛かった。アクアはいつも私が読めなさそうな分厚い本を読んでいたし、タイトは佐藤社長と一緒にいることが多かった。とても仲が良さそうでちょっともやっとした。それでも、こんな楽しい日がずっと続けばいいなって思えた。

 

 

 

 ……そんなことはなかった。

 

 

 

 ある日、リョースケ君がうちに来て、私を刺そうと襲ってきた。ボタちゃんとタイトがいなきゃ、私死んでたんだ。

 

 私のせいで先生が死んだって言われて、怖くなった。その場で動けなくなった。

 

 タイトに言われた……『母さんは無責任だ』って……私は無責任なりに、責任を果たそうって思ってたけど、それだけじゃ足りないって、『愛』って……大事な言葉だけど、本当は怖い言葉なんだなって、そのときはじめて知ることができた。

 

 リョースケ君は私を見て、ものすっごく睨んでた。怖かった……本当に怖かった。足がすくんで動きたくても、タイトの前に出たくてもうまく立ち上がれなかった。

 

 リョースケ君に立ち向かって行くあの子を止めることができなかった……怖がりだったあの子を守れなかった私は、『守る』って約束したのに守れなかった私は、本当にダメな母親なんだなって思ってしまった。

 

 

 それでも、そんな私でもタイトは『愛してる』って言ってくれた。『ダメな母親じゃないって言ってくれた』。

 

 

 そんなタイトが『ドーム公演頑張れ』って言ってくれた。だから、挫けそうでも、泣きそうでも、公演は完済した。

 

 アクアやルビーが危ないから、『カミキヒカル』を警察に捕まえてもらった。

 

『責任を取れ』って言われたから、アクアやルビー、タイトのことも発表した。

 

 もうアイドルは続けられないと思って、『B小町』を辞めた。

 

 ファンのみんながまだアイをテレビで見たいって言ってくれたから、役者をやることに決めた。

 

 佐藤社長やミヤコさんがタイトがどこにいったのか聞いてきたけど、ボタちゃんが一緒にいなくなってるのを見て、佐藤社長は察してくれたと思う。

 

 

 ……すべて、終わったときに、ふと部屋が広い気がした。

 あの子がいない、私の大事な息子がいない……そう、ようやく私の息子は消えてなくなったということを実感できた。

 

 あの日から、あの子達の部屋に行くことが増えた。あの子の着ていた服を見ることあの子がいたのだと実感できた。あの子が書いてくれた手紙を読むことで、私はあの子のことを愛していることを実感できた。あの子が作ってくれた資料を見ることであの子は私のことを愛してくれてるって実感できた。

 

 

 そうして私はあの子達に『愛してる』と伝えていないことに気づいた。

 

 

 ……やっぱり私はダメなお母さんだよ、タイト…………こんなにも私のことを愛してくれてるのに、私はタイトに何も返してあげられなかった。

 

 その日、私はアクアとルビーに『愛してる』って伝えた。『嘘』にならないように、自分の全てを賭けて『愛してる』って伝えた。

 

 

 これは本当に『嘘』にならなかった。

 

 

 私は私自身がアクアとルビー……そして、タイトを愛してることを信じることができた。

 

 

 今は、タイトの残していった資料をみんなで調べてる。タイトが考えていたこと、怖がっていたこと、それをみんなで共有したいから。危ないって書いてあることはやらないつもりだ。きっとこの中に書いてあるのは、ボタちゃん関連の危ないことだと思う。

 

 それでも、貴方の怖がっている気持ちを本当に分かち合いたいって思ったから……

 

 貴方が帰って来れる場所を残したいから……

 

 

 私は貴方に『愛してる』って、言いたいから……

 

 

 私は今日もテレビに出る。

 

 

 貴方達の一番星として、タイトに伝わるように頑張るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……デジタルワールドのとある草原エリア

 

 

 

「金が、金がないってクロアグモン!!!」

 

 

 そこに1人と一体の黒いアグモンがいた。

 

 

「そうは言ったってまだ僕ら下っぱだよっ! クエストたくさんクリアしないと、お金なんてたまらないんだからね!!!」

 

 

 この2人の物語はここから始まる。

 

 

 




[星野 他亜平愛人(ターフェアイト)] 3歳と半年(現在)

見た目 母親の譲りの夜空色の髪と目を持った少年 顔つきは父親似でアクアと瓜二つ 健康優良三歳児

性格  秘密主義 演じるのは苦手のつもり 三歳児にしては身体能力が高い 

あだ名 タイト(マナト)
ターフェアイトでは長い為、そう言われる。


[クロアグモン] レベル8 調査型 素質/才能6

タイトのパートナーデジモン。
普通のクロアグモンと違い、性格は温厚。よく笑い、よく食べる。肉とフルーツが好き ヤサイモドキが嫌い 星野家に暮らしてた頃は、パソコン内の不要となった機密データを食べていた。


デジヴァイス デジヴァイスic(至極色/濃浅葱)

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