第一話 邂逅、新たなデジタルモンスター
2007年 7月9日
「ありがとうございました。これでクエストクリアです! こちらが報酬になります」
デジヴァイスの中に入った金額……それを見てため息が出そうになる。
「ねえねえ、報酬はどれくらいもらえた? 今日は頑張ったから、きっとたくさんもらえたよね〜」
クロアグモンは俺のところに楽しそうに聞きにくる。
「嬉しそうなところ悪いが、今日も野宿だよ」
ええー、という大きな声が聞こえてくるが、今貯まっているお金はそこまで多くない。
俺のデジヴァイスの中には、200000bit*1程度貯蓄があるが……俺はまだ小さい子供だから、体の変化が起きたら、服や靴は買い替えないといけないし、アグモンの戦闘中のHP・MPの回復アイテムやアグモンの装備アイテムの補充ことを考えると、いくらあっても足りないからだ。
半年間毎日働いて、宿代、飯代を抜いても、これだけしかたまっていない……これだけたまらないと、デジヴァイスicの機能に人間でも食べられる食事が出てくる機能があるのは本当にありがたい。こう思うと、野宿しても安全な街で寝れるだけマシなんだよな。
……これだけしても、金が貯まっていないのには理由があった。
「僕を進化させてくれればもっといいクエストを受けられるのに、タイトはどうして進化させてくれないのーっ!?」
「そのほうが強くなれるんだよ」
クロアグモンを俺は進化させていない……正確に言えば、コロモンに退化させて、クロアグモンに進化させるのを繰り返している。一日2回は同じことを繰り返している……そのせいで、弱いデジモンしか相手できないから、お金が貯まらないのが大きな原因だ……だけど、
「理由は何度も教えたよな……デジモンストーリーのゲームシステム的に、何度も進化と退化を繰り返してんのは、強くなれるからだよ」
クロアグモンの頭をぺしんと叩く……そう、俺たちがいるこの世界は、初代デジモンストーリーの世界であった。
「デジモンには才能と素質という数値がある。デジモンの才能や素質を上げるには進化と退化を繰り返し行う……そうすれば、デジモン本来の能力が引き出される。1から99、もしくは100、ハカメモでは200……あげればあげるだけ、強くなれる。そう教えただろう、何言ってんだよクロアグモン?」
素質や才能の差は、素質が高い(カンスト)幼年期がそこらの究極体を簡単にぶっ倒せるぐらい、ゲームシステムの違いが生まれていた。現実にもそれが反映されている。
今のクロアグモンの素質は75……そこらのネームドキャラの成熟期、完全体ならワンパン……なんだが、
「それでも、ずっと成長期なのは辛いよ〜」
この世界は現実なんだ……ゲームじゃないんだ。
依頼料の高いクエストを受けるには見た目が強そうなデジモン……つまり、成熟期や完全体のようなデジモンが求められる。能力は高くとも、成長期レベルのクロアグモンは依頼料の高いクエストを受けさせてもらえない。
半年間も進化しない成長期デジモンはいなかったらしく、クエストを受けられる受付担当にも舐められて、仕事の斡旋では下っ端の依頼しかこないことも多い。
「……もう少し、もう少しだけ我慢してくれ」
素質が99になったら、グレイモン(黒)に進化させる……つもりだ。決して、進化させないわけじゃない……が、
俺たちが金がないのはそれだけじゃなかった。
俺たちはデジファームを使用できない……というよりも、金がないテイマーは使用させてもらえない。
デジファームというのは、デジモンたちにとっての休憩場……いわゆる家みたいなところだ。戦わないデジモンたちが一定の間、休息や戦うトレーニングを行えたり、今まで戦ったデジモンのデータを集めて、コンバート……デジモンのを生み出したりする場所だ。
主人公はその場所を拠点に、いろいろなクエストやトラブルを解決していくストーリーなのだが、俺たちにはそれがない。
そもそも主人公はクルモンに出会えたから、このデジモンストーリー世界の重要デジモンであるクラヴィスエンジェモンにファーム使用の許可がもらえた。
だが、普通のテイマーは違う。ファームを借りるには大きな金が必要だ。その金でこのデジタルワールドの施設運営をしているみたいだ。
そのため、基本的には、大きなクランやギルドに所属して、成長するまで仲間たちに出資してもらうのが基本的な流れになる……だが、それも身元が完全にわかっている人間だけだ……俺みたいに突然現れた幼稚園児ぐらいのガキ……しかも、最初からデジモンを連れているやつなんかに所属させてくれるギルドは存在しない。
「悔しいな、やっぱり」
ゲームじゃないから、1日に相手できるデジモンの数も少ない……しかも、初代のデジモンストーリーに出てくる幼年期は、倒して得られたお金でも一体あたり10bitぐらいしかもらえない。
だから、強くなって、信用を勝ち取って、個人の依頼主から高い依頼料を払ってもらうしか、フリーのテイマー……というよりも、フリーは俺しかいないから俺の稼ぎ手段はないんだ。
「……そうだね、僕がもっと強くなれればよかったんだけどね」
クロアグモンの悔しさの滲む声が聞こえる。
「……ごめんな」
クロアグモンはいつまで経っても進化しない、弱いデジモンとして有名になってしまった。俺はクロアグモンをずっと進化させない雑魚テイマー俺が進化させればこんなことにならないのに、バカにされてしまっているんだ。
「ううん、大丈夫だよ。こっちこそごめん。タイトのパートナーは強くならなきゃいけないのはわかってるから……」
それからは無言だった……街の外のエリアに最も近い廃ビルの影で、俺たちは野宿をしている。
いくら四歳児の体だからって、野宿を半年間もやっていれば慣れる。風呂に入れない、布団で寝れない、外だから冷えるなど、不満な点はたくさんあるが、デジヴァイスicから出てくるデジモンの餌は加工されてるものが出てくる。特にステーキとかケーキとか出てくるから食事に関しては飢えるどころかおおむね満足して食べられる。
「おいしいね、タイト」
クロアグモンは自分の手元にあるステーキを食べながらにっこりと笑った……でも、俺がさっさと進化させれば、クロアグモンにもっと裕福な生活をさせてやれた。強くならなきゃいけないのは、俺のエゴだ。自分を守りたい、家族を守りたいって思わなければ、もっと楽な道が選べるんだ。
「そうだな、クロアグモン」
それが、堪らなく嫌だった。
「────っ、────!!!」
時間が夜の0時をまわる頃、何かの叫び声が聞こえた気がした。気のせいかもしれないが、万が一エリアの外からデジモンがやってきた時のことを考えて、様子を見に行こうと体を起こす。
「ねえ、何か聞こえた?」
クロアグモンにも聞こえたらしく、声をかけてくれた。
「うん、聞こえた……向こうの方からだ」
「一緒に行こう」
一緒に行こう……そう言ってくれるのは、とても嬉しかった。
「────から、いいか? てめえらみたいな弱っちいやつらは俺のクラン『ブレイカーズ』にいらないんだよ」
そこにいたのはヌメモン*2とチューモン*3……そして、最近頭角を表してきたクランの下っ端らしき男が揉めている。
「……オイラたちはまだやれますっ!!!」
「そうです、ワイらだって進化すりゃ……強くなれますって!!!」
どうやら、チューモンとヌメモンを男が捨てようとしているのが見て取れる。コンバートしたときのトラブルとして、デジモンが思いの外弱いってのは聞いたことがある。そしてその後に、コンバートしたてのデジモンをすぐに捨てるということを噂には聞いたことがあった。だが、実際に現実でやる奴がいるとは思っていなかった。
「だから、てめえらなんていらねえって言ってんだろっ!!!」
「……ふべっ!!!」
「……ヌメモンっ!? ……何すんっぼへっ!!!」
鬱陶しく縋る2体に激昂した男が、ヌメモンを思いっきり殴り飛ばした後、そこに駆け寄ったチューモンを蹴飛ばした。
「ねえ、止めないのタイト? ……いくらなんでもヌメモンとチューモンが可哀想だよ」
クロアグモンはその様子を見て、可哀想だと言った。
「ああ、そうだな」
実際に現実でやる奴なんているのかってぐらい、蹴ってる。なんか、漫画の悪役ってあんな感じなんだな……って、二次元みたいな状況に見入ってしまっていた。
…………そして、それ以上にあのデジモン達が欲しいって思った。
「……なあ、いらないのか?」
「……はあ、はあ……ああ、なんだてめえは……?」
金髪の男はこちらを睨みつけてくる。the小さくなったチンピラって感じの中学生ぐらいの男子だ……肉体が四歳児俺からしてみれば、だいぶ大きく見えるが、こんなやつでもクランに所属できるんだなって思えてしまう。
「いらないっだったら、俺がそいつらを買おうかなって思ってな」
こういった輩には金銭で交渉するのが一番楽だと、前世の経験から学んだことだ。
「へえ、こんな雑魚どもでも欲しいのか? だが、俺の育てた奴らはたけえぞ……いったいいくら出せんだよ」
やっぱりバカだからふんだくろうとしてくる……こいつらの価値がわからないぐらいこの世界は腐ってる……くそったれた半生だったが、有用なことがあったのだな……と、ようやく前世の自分を認められた。
「一体10,000bitでいいか?」
バカはその言葉に笑みを浮かべた。
「……はあ!? 俺の育てたデジモンがそんな安いわけないだろっ!!! 一体10万だよ……10・ま・ん……出せねえんなら……帰りな!!!」
案の定ぼったくってきたが、丁度手元にある……クロアグモンが心配そうに目配せしてくる……大丈夫だって、ちゃんと渡すから。
「はい、200,000bit……これで文句言うなよっ…… クロアグモン!!! 」
「わかった、タイト!!!」
クロアグモンにまだ蹲っているヌメモンたちを背負ってもらって、街の外まで逃げる。
「……おっ、おい!!!」
奴は手元に残った200,000bitを持って叫ぶ……この時間帯は強力なデジモンたちが闊歩しているから、並のテイマーではついてこれない。少なくとも野良の完全体クラスを3体相手にできないと、話にならないレベルの強さが必要になる……クロアグモンはその強さがあったが、どうやらさっきの男はそのレベルに達してはいなかったみたいだ。
森の奥まで来れば安全……というよりも、奴らが仲間を引き連れてきても、完全体クラスが普通に闊歩する森の中まで侵入することは不可能だろう。
「ねえ、ホントによかったの?」
クロアグモンが心配そうにそんなことを言う……なんのことだ?
「……ん、なんのことだよ?」
「だってさ、手持ちの貯金ほとんど渡しちゃったんでしょ? あれって、未来のために取っとくって言ってた大事なお金なんでしょ……使っちゃってよかったの?」
…………?
「はあっ!? お前助けたかったんじゃなかったのかよ!?」
「もちろん助けたかったよ! でも、タイトが手持ちのお金全部使っちゃうとは思わないじゃん。そもそも、僕はタイトがあの子達を引っ張って森の中に逃げていくと思ったから、手伝ったんだ! なのにタイトは、あんなやつにお金渡すから心配だったんだよ!!!」
……頭が痛い。こいつ、こんなにも考えなしだったっけ? いや、今までその日暮らしが続いていたから疲れていたのかもしれない。
「あのなあ、あそこで他のテイマーを殴っていたら、クランが敵になって大変なことになるぞ。まだ強くないんだから、敵になったら倒されるに決まってるだろ。流石に俺だってもう少し慎重に動くさ、それに…………」
金も力も産み出す方法は思いついてる。
「……あの助けてくれてありがとうッス」
気絶してたチューモンが起き上がる。ヌメモンの方は、もう起きてるが……こいつがチューモンのほうを庇っていたから、ヌメモンのほうがだいぶ怪我が酷そうだ。
「……そう言えば忘れてたな、『デジヴァイスic:バンソウコウ』開始」
半年間の間に発覚したデジヴァイスicの新たな機能『バンソウコウ』……怪我をしているデジモンの治療を行うことができる。ただ、一体しか連れていない俺が、クロアグモンが怪我をしなかったら不自然だと思われるから使用しなかった機能の一つだ。この他に『クスリ』というデジモンの病気を治療する機能や『ショップ』……というbitかYEN*4 で買い物できる機能がついている。
それらは俺には使えない機能でしかなかったが、使う必要があったから今は使用した。
「……えっ、なんで?」
「……嘘だろ、怪我が……?」
……治療してくれる施設よりは治りが遅いものの、数日間大きな怪我をしなければ完全に治すことができるくらい『バンソウコウ』は優秀な機能だ。
「これなら、動けるようになるだろう……ん、どうしたんだよ?」
チューモンとヌメモンは顔を見合わせると、少し不安そうにしている。
「オイラたちをどうするつもりっすか?」
「ワイらなんてどうしようもないザコ育てても強くなりませんよ」
チューモンたちは、俺がなんでこんなザコ2体を助けたのか疑問に思っているみたいだ……まあ、捨てられたうえに、蹴られまくってたら自信なんてなくなるよなあ。
でも、こいつらが俺とクロアグモンには必要なんだよ。
「……少し、言葉を選ばせてくれ」
……どう言えば、こいつらの心に響くんだろう? 正直に言ってもいいんだが、信じてもらえないこいつらが仲間にならない可能性がある。それだと俺たちが困る。嘘をついてもいいが、嘘がバレたときが大変だ。
クロアグモンが俺の腕を心配そうに掴んだ。チューモンとヌメモンも不安そうにこちらを見ている……よし、決めた。正直に言おう。
「まず、俺達はお前達が必要だ……弱いとか強いとか関係なく、チューモンとヌメモンというデジモンが俺は欲しかった……他のデジモンでも、救っていたと思うが、どのみちお前らみたいな汚物系のデジモンに進化させる予定だった」
「……えっ、マジですか? そういう趣味の人すか?」
ヌメモンがドン引きした顔をしている……まあ、この世界では最も人気がない部類に入る汚物系デジモン……ウンチを投げることしかできない雑魚中の雑魚を育てるようなバカはいないって、俺みたいなはみ出しモンこの世界の常識だもんな…………
「……いや、そうじゃない。俺やクロアグモンにとっては、お前達は必要だ。どうせこの言葉だって信用できないだろ。この世界を知っていたら誰だってそう思う」
前世で攻略サイト見なかったサイスルの1周目は、俺だってウォーグレイモンやメタルガルルモン、デュークモンみたいなかっこいいデジモンを使っていた……だけど、また最初からやり直したときに、それよりも強いやつを作ろうとして3日か4日ぐらい時間をかけなければならなかった。ゲームでも、
……この世界では力がほしい。ゲームで時間がかかったことは、現実だったらもっと時間がかかる。力がほしいなら手段なんて選んでられない。
ゲームじゃないから、主人公が負けると俺が世界を救わなきゃいけない。
…………だから、
「俺にはお前達が必要だ。俺たちの仲間に入ってくれないか?」
2007年7月14日
「いらっしゃいませ、本日は……ああ、また来たんでの? ここはあなたみたいな万年ノーマルテイマーの雑魚が来る場所じゃあないわよ。ここは……」
受付担当のパルモン*5がなんか言ってやがる……俺達は早く次のエリアに行きたいのに……
「おい……俺は半年間クエストをクリアし続けた……なら、ブロンズに上がる資格は持っているはずだろう? とっとと、テイマーランクを上げろ……話ができないならクラヴィスエンジェモン*6を出せ」
「……はあ? あんたみたいな永遠に成長期から進化させない雑魚にクラヴィスエンジェモン様を出すわけないじゃない! とっとと、雑魚どもの依頼を受けてきたら? ……どかないなら…………!?」
「…………どかないなら、なんだ、パルモン?」
大きな灰色の巨体、メカメカした配線が血管のように浮き出る筋肉。機械と龍の爪が合わさったような両手足……それは、正しく完全体の雰囲気を纏った恐竜の様なデジモンがパルモンに向かって睨みを効かせる。
「……ヒェッ!?」
「落ち着け、メタルティラノモン*7 ……なあ、パルモン
めんどくさそうに、そしてできる限り怒気を込める。三下がヌメモンたちを蹴飛ばす前みたいな、何をやるかわからないという雰囲気を相手にイメージさせる。
「……っ!?」
息が詰まるパルモン……いいぞ、これは恐怖に怯えてる目だ。決して四歳児に向ける目にはなってない。
「おい、タイトがなんだってって聞いてんだぞ。答えろよっ!!!」
三下の子分ムーブの追撃感謝するよ、メタルティラノモン……これなら、
「はっ、はい申しわけありませんでした! すぐにランクをブロンズテイマーに上げさせてもらいます!!!」
世代の差は力の差……それがこの世界のルール。完全体相手にでかい顔はできない。特に、俺が五日間も森の中にいたのはクラヴィスエンジェモンがいない今のタイミングを狙ったからだ。そのおかげで、成長期相手に喧嘩を売っても誰も止めに来る気配がない。
「ブロンズテイマー……おい、俺たちが達成した依頼の数を本当に数えたのかよ?」
「パルモン、君はタイトの顔に泥を塗る気かな? データのカスになりたい様だな!!!」
俺が怒ったら、メタルティラノモンが唸る。そう決めてから、この場所まで来た。それだけで相手は怯える。
「シルバーテイマー……っ! シルバーテイマーまでテイマーランクを上げます!!!」
これだけ怯えてるなら、もう一ついけるな。メタルティラノモンをチラリと見る。
「…………生言ってんじゃあねぇぞっ!!!」
「もっ申しわけありません!!! 本当はゴールドテイマーまでランクが上がるくらいには、依頼は達成してます!!!」
ここまでどれだけ舐められた対応されてたんだよと思ってしまった。最低ランクの仕事でも、1日三つか四つ依頼を達成していれば、そのくらい半年もかからずにいけそうなものなんだけど…………
「なあ、タイト……こいつまだ、舐めてるよ。どうする、やっちゃう?」
「はあ……いやいいよ。それよりも、早く『天空パレス*8』に行こう。あいつらが待ってる」
メタルティラノモンはまだ脅せると思ってるようだが、他のデジモン達が騒ぎ出してる。俺達がパルモンを脅していることを伝えようとしているらしい。クラヴィスエンジェモンが来たら面倒だ。
「帰るよ、メタルティラノモン」
その一言で、パルモンを一瞥して、メタルティラノモンは俺と一緒に出口へと向かう。
「あんた達っ! このままだと思わないでよね!!! …………きっと、クラヴィス」
「おい」
メタルティラノモンがパルモンの鉄の指で首を締め付ける。
「行くよ、メタルティラノモン」
俺の言葉にメタルティラノモンはパルモンをカウンターに投げる。
「ああ、わかった……タイト」
メタルティラノモンが俺の横に来たとき、俺達は出口へと一歩進んだ。
「ああー、緊張したよ、タイト〜!」
「本当に疲れたな」
街の郊外付近にたどり着いたときに、俺達はようやく一息つけた…………四聖獣が現れなくてよかった、と心の底から思ってしまった。そこに、二体の白金と金色のデジモンが合流した。
「おお〜い、ちゃんとランク上げてきたっすか〜!!!」
「ワイらは次のエリアにいけんのか〜!?」
プラチナヌメモン*9とゴールドヌメモン*10である。メタルティラノモンと俺はは2体に向かって、いい笑顔で反応する。
「……ということは」
「……つまり?」
「「「「やった────っ!!!」」」」
俺達は全員でハイタッチをした。
半年間苦労してきた甲斐があり、俺達は今までの苦労を労いあった…………そんなときだった。
「……おや、君たちは?」
大きな白い翼と顔に赤い十字架が描かれたマスク、汚れのない真っ白な鎧を纏った天使……クラヴィスエンジェモン*11が姿を現した。
俺達は急いで戦闘体制へと動きを変える。相性は悪いが、メタルティラノモンの素質を考慮すると戦力的に七、八の割合で勝てる気がする……問題は後ろにいる2体だ。
戦闘するなら巻き込んだ方が得だが、死なれたら困る……どうすると、メタルティラノモンがこちらを向いたときに…………
「そう警戒しなくても大丈夫ですよ。私の方にも連絡は来ていますが、貴方達を罰するつもりはありません……むしろ、こちらの不手際を謝りたいとずっと思っていました。申しわけありませんでした」
クラヴィスエンジェモンがそう言った。
「……は?」
クラヴィスエンジェモンが頭を下げている。
「本来なら、他のテイマー達と同様に扱い、施設を使う権利を与え、テイマーランクも少しずつ上げてもらう予定でした……しかし、身元がわからないものに対する高ランクテイマー達の反発や施設管理を任せているデジモン達の暴動の発生の可能性により、断念しなければなりませんでした」
その言葉にメタルティラノモンはクラヴィスエンジェモンを睨みつけた。
「……ならタイトは」
「いいんだ、メタルティラノモン」
俺はメタルティラノモンを止めた。
「本当にいいのか、タイトっ!!! ……お前は、ほんとうにっ!!!」
俺は首を横に振る。終わったことを、いつまでも悔やんだって時間の無駄だと言うことは、ここ半年でずっと感じていたことだった。クラヴィスエンジェモンへと目線を向けてる。
「クラヴィスエンジェモン……俺の待遇はたとえランクが上がろうが変わりませんか?」
「私の力不足なことに、今までと変わることはないでしょう」
つまり、ファームが使えず、アイテムもショップ機能で購入するしかない。メタルティラノモン達の治療もまともに受けられない生活が続く……ということか…………
「なら我々は、貴方達に対する考え方を変えるつもりはありません……ただ、お願いがあります」
「本当によかったの?」
メタルティラノモンはクラヴィスエンジェモンへとお願いした内容に、疑問を持ったようだ。
「……そうっすね、だいぶ頭いかれてると思いますよ」
「ワイらのことも考えてくだせえ……いきなりあんなことをゆうなんて、びっくりですわぁ」
……まあ、責められて当然のことを言ったけどさ。
『一週間後ぐらいから噂を流してください。できる限り、良い悪いを問わずテイマー達に敵対されるようにしてください』……ってお願いは流石にやばかったかな?
「いいんだよ、俺達は力を求めてるって言っただろ。プラチナヌメモンとゴールドヌメモンもそれに同意してついてきたんだ。俺の好き勝手にしていいはずだ」
「でも、タイトがたくさんのテイマーに狙われちゃうよ?」
メタルティラノモンは心配そうにそう言った。
「それこそ願ったり叶ったりだ。プラチナヌメモンとゴールドヌメモンのSS*12を考えたらそれこそカモがネギを背負ってくるようなものだ」
プラチナヌメモンのSSはプラチナボーナス、デジモン一体あたりの経験値の量を2倍にしてくれる効果、ゴールドヌメモンのSSはミリオネア、こちらは金銭を1.5倍にしてくれるスキルだ。
このおかげで予想よりも早くメタルティラノモンは完全体に進化できたし、そして、これからもっと強くなるためにはこいつらの力が必要になった。
「俺達は強くなることが目的だ……そのために、早く天空パレスに行こう」
そう言った俺に、仲間達は大きくうなづいて天空パレスへと向かった。
『機能:デジモンLOAD』が追加されました。
ナメクジのような体を持った軟体型デジモン。暗くてジメジメした環境を好み、攻撃力も知性も無い。どんなデジモンも育て方を間違えるとヌメモンになってしまうが、実は隠された秘密があるらしい……。外敵から身を守るため、自分のウンチを投げつける最低の攻撃をする。
いつもスカモンにワル知恵を入れ込んでいるネズミのようなデジモン。スカモンとは固い友情で結ばれており(といっても思っているのはチューモンだけかも?)、以前ネットワーク上のトラップ「カーニボア(肉食獣)」に捕獲されそうになっていた所を、たまたま通りかかったスカモンに助けられてからの仲。基本的には小心者だが、ワル知恵だけは天下一で、危なくなるとスタコラサッサと逃げていく。必殺技はチーズの形をした爆弾を投げる『チーズ爆弾(ボム)』。誤って食べようとするとトンでもない事になってしまう』
頭にトロピカルな花を咲かせた植物型デジモン。タネモンから爬虫類的に進化したが、外見や特性上から植物型と分類される珍しいタイプ。昼間は花と葉の様な腕を広げ光合成をしている。普段は地中に根の様な足を埋め、養分を吸っているが、歩行することも可能。頭部の花は、楽しい時や嬉しい時は甘い香りを漂わせ、怒った時や危険を感じた時は大型デジモンも逃げ出すほどの臭い匂いを放出する。必殺技は強烈な毒性を帯びたツタを敵に絡ませる『ポイズンアイビー』。この攻撃を受けると体が麻痺してしまう。
強力なパワーを身につけるため体を改造したサイボーグデジモン。最初に対空戦力として改造された『メガドラモン』とは違い、メタルティラノモンは対地用迎撃デジモンとして改造された。強化されたボディーはあらゆる攻撃を跳ね返し、強靭な顎でどんなに硬い装甲でも砕いてしまう凄まじい攻撃力をもつ。必殺技は右腕から発射されるミサイル『ギガデストロイヤーⅡ』と左腕から発射されるエネルギー弾『ヌークリアレーザー』。
デジタルワールドで初めて“プラチィーナ鉱山”を発見し、その成分を取り込むことで進化した激レアなヌメモン。それ以来性格は一変し、成金の如くありとあらゆる宝飾品のデータをかき集めては着飾っている。容姿はともかく、とっても“ゴージャスなデジモン”ではある。黄金の翼と宝飾品で身を固めているため、防御力はかなり高いが、攻撃力はいまいち。必殺技は、“プラチィーナ”の精製過程で生み出されるカス(ウンチ)を、単発で投げつける『エクスクレメント』と、連続で投げつける『プラチナエクスクレメント』。また、ゲップと一緒に超悪臭を放つ『プラチナバープ』で敵の戦意を喪失させる。
全身が金色に輝くヌメモンの亜種で、翼を得たことで空からの攻撃も得意とする。デジタルワールドにある鉱山から金のデータを取り込み、ヌメモンよりは防御力が高まっている。黄金に輝き綺麗好きになっていると思いきや、必殺技は金色のウンチを連投する『ゴルドリアンラッシュ』。また『ゴールドエクスクレメント』では巨大なウンチを投げつける。
デジタルワールドと外界を隔てる「ゼニスゲート」を守護している力天使型デジモン。「ゼニスゲート」は360にも渡る扉によって封印されており、クラヴィスエンジェモンの持つ「ザ・キー」が全ての扉のマスターキーとなっている。「ザ・キー」はクラヴィスエンジェモンのみ扱うことの出来る特別な鍵であり、クラヴィスエンジェモン自身も鍵の一部であるともいえる。この鍵に込められたパワーによって、扉を破ろうとする敵にのみ、デジタルワールドを崩壊させることが可能なほどの攻撃力を行使することが出来ると言われている。
『属性』
属性とはデジモンの生息する環境への関わり方や、影響によって分類されるもの。
クロアグモンやチューモンであれば『ウィルス種』。周囲の環境を自分の住みやすい環境に変化させる種。結果としてさまざまな異常を発生させるため「ウィルス」と呼称される。
他の属性はクラヴィスエンジェモンであれば周囲の環境や自分の縄張りを守るように働きかける『ワクチン種』結果としてウィルス種と対抗する動きをとる。
パルモンは周囲の環境に自分を合わせて生息する『データ種』。ウィルス種やワクチン種に属さず、環境に働きかけるような動きはしない…………というように、三つの属性が存在する。ワクチンはウィルスに強く、ウィルスはデータに強く、データはワクチンに強いという三すくみが存在する。
幼年期デジモンはまだ幼く成長段階である為、属性は存在しません。
また、この三つに属さない属性が2つあります。
古代種やアーマー体に数多く見られる種で、属性を持っていない[フリー種』。これはまだデジモンが誕生したばかりの頃に「どのように生き抜くのか」が曖昧だった名残だと言われている。三すくみ相手に、同じ力で対応することができる。
現時点では、十闘士などのハイブリッド体に見られる『ヴァリアブル種』。その場に応じて変則的に属性が変化するらしいが、十闘士自体が情報が少ない為、よくわかっていない。