産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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第二話 プラチナ・ゴールド2体の願い

 

 2007年8月1日

 

 クラヴィスエンジェモンのおかげで、敵はたくさん現れた。

 

 

「終わりだ『♾️キャノン』」

 

 

 ……そして、現れた奴ら全員雑魚だった。

 

 叫び声すら上げずに敵対した者達のデジモンは倒されていく……今回は、ゴールドヌメモンと億万長者のUSBが9つ、そして完全体2体なのでだいたい90,000bit……か、200,000貯めるのに半年かかった俺らの努力っていったい…………って、敵がデジモンを置いて泣きながら逃げてった!? 

 

「はあ、自分のデジモンぐらい連れてってやれよ」

 

 気絶しているデジモン達の応急手当をしてから、その場を離れる。

 

「なあ、タイト。これでいくら貯まった?」

 

「だいたい1億……ぐらいかな?」

 

 ムゲンドラモン*1はメタルティラノモンが進化した姿だ。経験値(テイマー)達がたくさん来てくれるおかげでメタルティラノモンは究極体に進化することができた。究極体まで進化してるテイマーはそこまでいないのか、作業感覚で敵のテイマーを倒すことができる。

 

「なんだか、嬉しそうだね」

 

「そりゃ、1カ月前のことを考えると、楽しくもなってくるって」

 

 金も貯まってきたし、ショップで何を買おっかな〜♪ 

 まさか、デジヴァイスicの機能の中にサイスルのデジファームの機能が入っているとは思わなかった。『億万長者のUSB』や『軍師のUSB』が作れるとは思わなかった……というか、この中に入ってるのは『デジラボ』の機能がそのまま入ってるんじゃないか? 

 

「お金全然使えなかったからね〜、このおかげでお風呂もベッドも家も買えるようになったし、眠るときに体が痛くならなくて、とっても楽になったよね〜♪」

 

「ああ、そうだ、な?」

 

 ……なんか怪しい、うまくいきすぎてる気がする。やっぱり、このデジヴァイスicだけ機能が良すぎる…………というよりも俺が困ってることがあって、なんらかのステップアップがあるとゲームのランクが上がったときみたいに機能が開放されてる気がする……やっぱり、俺のデジヴァイスはおかしい。

 

 

「ねえ、いつになったらワイ達を進化させてくれるのか?」

 

「そうっす! いつになったら強くなるんすか!? これじゃあ、いつまで経っても、ヌメモンのままっす!!!」

 

 

 上記の2体、ワイって言ってる方がゴールドヌメモン、っすて言ってる方がプラチナヌメモンである。二体はゴールドヌメモンとプラチナヌメモンの進化退化を繰り返している。……が、

 

 

「お前らの素質がまだ99に達していないからダメ」

 

 

 2体のステータスを調べてみる。素質は2体とも55……正直に言ってまだまだ足りない。

 

「ダメって、いつになったら別のデジモンに進化させてくれるんすか?」

 

「具体的に言って、あと1カ月ぐらいそのまんまだな」

 

 長すぎるっす!? ……とへこむプラチナヌメモン。お前ら、だいぶ甘い考えだな。

 

「まあまあ、僕は半年間ずっと進化できなかったんだから、それに比べたらだいぶマシだと思うよ」

 

 ムゲンドラモンの顔が心なしか死んでるような気がする。流石に半年はやばかったかな? 

 でも、ムゲンドラモンもムゲンドラモンで素質が85ぐらいで、カンストしてないんだから、お前の方が優先的にやりたいんだよな。

 

 

「今、背中がゾクってきたよっ! また変なこと考えてるでしょ!!!」

 

ムゲンドラモンがこちらを見て、怯えた声を上げる。何も悪いことは考えてないのに変なやつだな。

 

「……ん、考えてないけど? ただ、ムゲンドラモンもまだ素質がカンストしてないから、退化させよっかなって…………」

 

 その言葉を聞いたムゲンドラモンが、こっちを見て悲鳴をあげた。

 

「ヒェっ……そんなこと考えてたのっ!? 僕もう嫌だよっ! あんな弱い奴らと同格になるのなんか…………」

 

 ムゲンドラモンは、この1カ月で他のテイマーのことを雑魚と言うぐらい強くなった。進化する前からそこらのテイマーが連れているデジモンよりも強かったが、進化しただけで自分よりも弱い奴らに怯えられることが増えた。

 だが、進化するのはともかく、退化するのを嫌がるようになった。退化しても強くなるはずなのに、退化するのは嫌っていうのははなんでだろう? 

 

 

「なあ、退化しようぜええ(ネットリボイス :少なくともムゲンドラモンにはそう聞こえた)」

 

 

「いやだああああーーーー!!!」

 

 

 前にそう言ったときに、自分より小さなプラチナヌメモンを盾にするような動きをした。究極体が自分より弱いやつの背中くれるなんて、かなりみっともないぞっ!

 

その姿を見て、みんなでムゲンドラモンを指を刺して笑った。そうしてるうちに陽が傾いてきた。

 

 

「それじゃ、家に帰るか」

 

 

 夕方の5時近くなったので、『トロピカル諸島*2』にある家に帰る。

 

 ゴールドテイマーになった時に、どこのエリアに住みたいかと聞いたら

 

「家なんて住みやすい場所一択だよね」

 

「早く強くなりたいっす」

 

「ワイは美味しいフルーツが食べたい」

 

 

 …………と言われた。

 

 他に、火山の地域や下水道や森だったり色々な場所があったんだが、条件に合ったのはここ以外なかった。精神の修行場として、他のエリアに行くことがあっても、ここより良い狩場はプラチナテイマーにならないと入れないので、ここを棲み家にすることになった。

 

 

 

 

 

 夜、寝静まる頃…………

 

 

「……にしても先輩、テイマーはなぜそんな強くなろうとするんか?」

 

 プラチナヌメモンにそんなことを聞かれた……強くなる……ううん? 

 

「……んあ、なあにいきなりそんなことを聞いて?」

 

 ゴールドヌメモンがガバッと起き上がって、話を聞きにきた。タイトってまだ話してないのかな? 

 

「それそれ、オイラもずっと聞きたかったっす……すぐに強そうな究極体を作れば、オイラ達だって簡単に強くなれるのに……他のテイマーがやってることをやろうとしないんすよ」

 

 ちょっと悩むなあ……本人話してないから話して良いのかなぁ? 

 

 ……でも、仲間にいつまで経っても話さないのはタイトが悪いし、ちょっとくらい話すことにしよう! 

 

 

「本人が話してないから、話して良いのかわかんないんだけど…………」

 

 

 プラチナヌメモン達がうんうんと聞き始める。

 

 

「タイトはね、家族がいるんだ」

 

 

「……家族?」

 

「なんですか、それ?」

 

 現実世界(リアルワールド)に行ったことのないプラチナヌメモン達は、ちょっとわからないみたいだ。

 

 ……ううん、なんて言えばいいんだろ? デジモンと人間の生まれ方って違うし、そもそも実際に見ていないプラチナヌメモン達が話がわかるのかどうか、僕にはわかんないんだよなぁ……とりあえず、ぼかしながら言ってみよう。

 

「よくわかんないんだけど、家族ってのはね……仲のいい人間が、おんなじ家に住んで、みんなで助け合って生きていくことがみたいだよ」

 

「でも、それってオイラ達の関係とあんまり変わんないっすよね」

 

「そもそもワイらはテイマーの家族を見たことないっす」

 

 うーん、難しいなぁ。タイトがデジタルワールドに突然連れて来られたことって、たぶん話しちゃいけないと思う。理由がわかってないのに、そう言ったら話がズレちゃうような気がする。

 

「タイトの家族の話は一旦置いておくよ、タイトから後で聞いといて……それに、タイトにとって家族っていうのは、僕達よりも『特別』っていうか…………僕達よりも人間って弱いから、タイトは家族が僕達デジモンに殺されちゃうのが怖いんだと思う」

 

 これは、ずっと感じてたことだ……たぶん話しちゃダメだろうけど、タイトは未来を知っている。そうじゃなきゃ、タイトと初めて会ったときに僕がタイトに怖がらなかったと思ったからだ。それに、調べ物って言って、アイのことを調べるんじゃなくて、他のことを調べてたのは未来のことを知っていたから調べてたんだなって、ここ半年くらいで思うようになった。

 

「それでね、タイトは家族を僕らとは違う悪くて強いデジモン達に壊されないように、回りくどくても、どんなデジモンにも負けないように僕らを強くしてるんだと思う」

 

 デジソウルがまだ使えないことが、怖がっている原因に近いんだけど、うまく伝えられないかな? きっとまだ僕達デジモンがアイやルビー、アクア達を倒しちゃうのを怖がっているのが、1番の理由だと思うんだけど……それは、あんまり言いたくないかな。

 

「タイトはさ……なんか、僕らのことを物みたいに扱ってくる事もあるんだけど、それは余裕がないからなんだ……自分は人間で弱いからデジモンの力を借りなきゃいけない。でも、守りたいものが壊されちゃったらどうしようって小さい頃はずっと考えてたんだ」

 

 タイトと僕が小さかった頃はずっとそんなことを、タイトは考えてた……タイトは僕のことを怖がってるのかな。こんなに一緒にいるのに、怖がっててほしくないな。

 

 

 

「……だから、タイトは力がほしいって言ってるんだ。プラチナヌメモンにゴールドヌメモン、タイトの『特別』を守るために……力を貸してほしいんだ」

 

 

 

 プラチナヌメモン達が静かになった……やっぱり、虫のいい話だったかな? 

 

「……ねぇ、どうっすか?」

 

「ワイはそれがいいと思う」

 

 小声で何か相談してる? 

 

 

 

「「────────」」

 

 

 

 プラチナヌメモン達が僕を見てニコって笑ってそう言った。

 

「そっか、そうだね……そうなれたら嬉しいね」

 

 僕は初めて仲間ができてよかったと思えた。

 

 

 

 

 

 …………あんなことが起きるまでは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 宵闇のなか、軍勢はトロピカル諸島へと向かう準備をしていた。

 

 

「だから、ここは完全体を一気に前に出して……」

 

 

「そうじゃない、成熟期はいくらでも作れるが完全体を作るのは難易度が高い……我々『ブルークロス』が────」

 

 

「…………成長期を肉盾にすれば良い」

 

 

「……それは、私たちの見栄えが悪い! あのガキが悪で私達が正義なの! ────だから────」

 

 

 

 男ははため息をつき、そのテントから音を立てずに出ていった。そして、黒の旗が立つテントの前にいる少年に声をかける。

 

 

「────はどうだ?」

 

 

「『ブレイカーズ』、全員います……あの統領、まだクラン同士の会合の途中だったと思いますが…………?」

 

 少年の言葉に首を振る男……少年はまだ意見が揃わないんですねと苦笑する。

 

 それでも男は、五つの旗を見ながら、自身に辛酸を舐めさせたセラフィモンの出した『依頼』を思い出して、怒りの声色を出しながら少年へと言った。

 

 

「クランの奴らにも伝えろ……他のクランとの連携を高めろ、奴を狩るぞ」

 

 

 黄、緑、赤、青、黒の五つの旗が海風に靡く。

 

 

 

 

「舐めた真似をした奴を壊すぞ」

 

 

 

 

 

 

「俺たち『ブレイカーズ』の名において」

 

 

 

 

 

*1
レベル:究極体 タイプ:マシーン型 属性ウィルス種 必殺技:♾️キャノン

 全身が100%フルメタルのデジタルワールド最強のデジモン。数々のサイボーグ系デジモンのパーツを組み合わせて造られており、今まで製造されてきたサイボーグ系デジモンはムゲンドラモンを完成させるための試作型だったと思われる。他のデジモンを圧倒するほどのパワーと、桁違いの処理能力を誇る頭脳を持つが、自らの意思は持ち合わせていない純粋な機械デジモンである。そのかわり本体中枢にある電脳核(デジコア)に、何者かによって悪の意思が宿ったプログラムを植えつけられており、悪意に満ちた電脳核からは無限のパワーが供給されている。必殺技は2砲のキャノンから発射される超弩級のエネルギー波『∞(ムゲン)キャノン』。

*2
ゴールドテイマーになったら行けるエリア。完全体がたくさん出る




『タイプ』

そのデジモンの分類。動物で言う「ネコ目ネコ科」などの、似ている特徴を持つデジモンたちを仕分けるための呼び名である。

たとえば、クロアグモンなら『恐竜型』、チューモンなら『獣型』というように、そのデジモンの見た目によって関わってくる。進化するにつれより強大な姿へと変わっていく為、究極体の中には『魔王型』や『聖騎士型』、『化身型』などの数が限られていたり、オンリーワンなデジモンも存在する。
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