ストックが少なくなってきたので、明日の投稿はお休みします。その代わり、活動報告の方に今作に出てきたデジモンのキャラの詳細などを挙げていきます。
「オラッ、腰に力入れろッ!!! そんな拳じゃ何も守れねえぞ!!!」
俺は目の前のピンクのデジモン……チューモンに喝を入れた。根性の入ってねえ、へなちょこなパンチで殴ってくるこいつを手加減をしながら殴ってやる。
「立てっ! テメエには守りてえものがあるんだろっ!!!」
五メートルぐらい吹っ飛んだ先で、チューモンは気合を入れて立ち上がってくる。
「──オスッ!!!」
殴られても、真っ直ぐ純粋な目で俺を見つめて、走ってくる。いい度胸じゃねえか。
「もういっぺん行くぞ!!!」
「──オスッ!!!」
なぜこうなったかと言えば…………
俺たちはテイマーキングからの依頼で、タイト、クロアグモン、チューモンの1人と2体を預かることになった。元々の目的である七大魔王との戦いはテイマーキング側がなんとかするというふうにトーマが話をつけたのだ。
『ふざけんな、テメエっ!!!』
まだ見ぬ強敵に心を躍らせていた俺とアグモンは、
『完全体にしかなれない今の我々が、七大魔王という究極体デジモンを相手にできるわけないだろっ! いい加減にしろマサルっ!!!』
……てな感じでケンカしてふてくされていた。
そんなときに、
『オイラを弟子にしてください!!!』
監視していたチューモンが頭を下げてきたのだ。
最初は断っていたんだが、土下座してまで俺の弟子になりたいって言ってきたやつを無碍にすることはできなかった。修行をつけているうちに、根性があるこいつのことを気に入っちまったんだ。
「……はあ、はあ」
俺とのスパーリングを終えて、寝転がるチューモンにペットボトルに入った水を渡す。
「バテてんじゃねえぞ、五分間の休憩が終わったら次はアグモン*1とのスパーリングだ」
「……はあ、はあ、オスッ!!!」
そう言って、ごくごくと水を飲んでいるチューモン。そんななか、修行風景を横でじっと見つめていたアグモンが近づいてきた。
「……なあ、なんでオマエは強くなりたいんだ? タイトはオマエのパートナーなんだろ? だったら、アイツと一緒に強くなればいいんじゃないか」
アグモンは不思議そうにチューモンに質問した……なんだかんだ俺も聞き忘れてた。たしかに気になるな。
「────ゴホッ、ゴホゴホ……なんすか急に……?」
チューモンは急に聞かれたことでびっくりした様子で、水をうまく飲まずにむせこんでしまう。
「そういや聞いてなかったな……なんで、俺のところに来た? 順当に強くなるんだったら、俺じゃなくてもいいだろうに」
チューモンは空のペットボトルを見つめて少し考えた後、俯きながら声を出した。
「オイラたちははじめはただ強くなりたかっただけっした」
……オイラたち、たくさんのテイマーと戦って死んだ仲間がいたと、クラヴィスエンジェモンから聞いた気がするな。
「一カ月前に前のご主人に捨てられたオイラを引き取ってくれたタイトっちは、強くなる手段を教えてくれたっす」
……コンポートだったか? デジモンを生み出す機械があるって聞いたな……それでこいつは生まれたのか? でも、こいつらの主人であるタイトはその機械が使えなかったってクラヴィスエンジェモンが言ってたな……てことは、
「オマエはもともと違う主人がいたのか?」
アグモンが聞きづらいことを率直に聞いた。聞くなよそんなこと……まあ、こっちとしては無神経に聞いてくれたおかげで、ありがてえけど。
「そうっす、コンバートしたてのオイラを戦わせて、弱かったら捨てた主人がいたっす。そんな弱かったオイラたちをテイマーは金を使って買ってくれたんすよ。だからこの一カ月、テイマーを信じて従って修行してきたっす」
チューモンは他の成長期デジモン……いや、戦ってきた成熟期と比べてもかなり強い。初めてアグモンと会った時のコカトリモンだったら完封できるぐらい強いんだよこいつ。だったら、今まで通りタイトについてきゃいいだろ。
「強くなることはできたんだろ。だったら、テイマーを信じて強くなりゃいいじゃねえか。わざわざ、俺に師事する必要がねえだろ」
「たしかに強くなることはできたっす」
そう言った時、からのペットボトルをチューモンが握り潰した。震えていた手が握りしめられる。
「……だけど、ゴールドヌメモンは死んだっす」
もともと知ってたが、チューモン自身が辛そうにしてると、向こうで淑乃と一緒にいるアイツに何やってたんだって気持ちになるな。
チューモンは力を入れた拳に更に力を入れる。
「それはテイマーがオイラたちをもっと強いデジモンに進化させなかったこともそうだし」
「オイラたちが弱かったから、足手纏いだったこともわかったんす」
力を入れた拳から力が抜けていく。気持ちをぶつける場所が見当たらないように、腕から力が抜けていった。
「オイラはテイマーのデジヴァイスに入れられたっす」
ぽつぽつと話しだすチューモン。その雰囲気に飲み込まれた。
「それはオイラたちが弱くて、クロアグモンが強かったから足手纏いになっちまったことを理解したっす」
「デジヴァイスに入れられたとき、ふざけんなって思ったっす」
わずかに怒りが滲んだその言葉は、すぐに気の抜けた声に変わる。
「……だけど、ゴールドヌメモンが死んだときのテイマーの表情が……テイマーの歌が忘れられないっす」
力が抜けたその声には、寂しそうな声が混じっていた。
「オイラたちと一緒にいたかった、もっともっと一緒にいたかったと歌詞が感情がオイラたちに訴えてきたっす」
そこから、チューモンの言葉に力が入っていく。
「テイマーはきっと孤独な人で、オイラたちと一緒いられて楽しかったんだって、嬉しかったんだって、そう感じたっす」
「だから、オイラはアイツの分までテイマーと一緒に戦っていく決意をしたっす」
そう言って、俺を、そしてアグモンをまっすぐと見つめながら、師事をした理由を言う。
「その為に、デジモンを素手で殴り飛ばせる人間である師匠に、大門大にお願いしたっす」
「オイラは仲間を死なせない強さが欲しいっす」
悔しそうに言う。誰かを思い浮かべながら。
「クロアグモンのようにテイマーを守れる強さが欲しいっす」
憧れるように言う。クロアグモンを見つめながら。
「もう2度とテイマーの隣に立てないなんてことはないぐらいの力が欲しいっす」
俺を見つめて真っ直ぐに言う。強くなる決意を固めて、
「────だから」
ピピピピビ、と鳴る音が聞こえた。5分の休憩が終わる音を鳴らしたアラームだった。
チューモンはそこでハッとしたようにアラームを見つめた。
「ふふ、だから、オイラを強くしてほしいっす」
そう言ってアラームを止めた。会話に熱が入った為、少し恥ずかしそうに、それでも俺に意思を伝えた。
正直、そんなふうにチューモンに見入っちまったから、俺も5分が経ったなんて気づかなかったけど……こいつの話を聞いたら更に気に入っちまった。
アグモンを見つめると俺にうなづいた。きっとアグモンもこいつのことを気に入ったんだろう。
「だったら、スパーリングを始めねえとな」
そうして、俺は拳に力を入れる。アラームが鳴ったんだ、はやくこいつを強くしてやりてえ。
「今度は、俺……だろ、アニキ」
アグモンはそう言って、俺の前に出る……あ゛?
「はあ? 俺がスパーリングするって今そう決めたんだ。だったら、俺がスパーリングしてやんだよ、アグモンは引っ込んでろ」
俺はアグモンにメンチを切った。
「いーや、俺がやるって決まってたんだ。アニキこそ引っ込んででろよ」
アグモンは俺にメンチを切った。
「あ゛?」
「ア゛?」
その瞬間に俺とアグモンは殴り始めた。チューモンのスパーリング相手を決める為に、ケンカを始めたんだ。
「デジソウルチャージ」
[クロアグモン:進化]
クロアグモンの体に闇色のデジソウルがまとわりだす。
「ダークティラノモン*2」
それは黒い竜だった。力強く、そして恐ろしい恐竜は明らかに私のライラモンを優に超える力を持っていた。
……だけど、
「ダメよ」
悪意が乗りすぎたデジソウルでは『暗黒進化』しかできない。いつ暴走するかわからない進化を認めるわけにはいかない。
「……今日はここで終わりね」
息絶え絶えに座り込む少年……タイトくんに向かってそう言う。修練を始めて一週間、毎日約二時間の訓練だけど、善のデジソウルの発現はまだできていない。
「はあ、はあ、ありがとうございました」
立ち上がって礼をするタイトくん……礼儀は正しいんだけどね。結果が残せていないのが、ちょっと不安かな。
「ありがとうございました……次はトーマのところに行くんでしょ。はやく行ってきなさい」
「淑乃さん、ありがとうございました。それでは行ってきます」
そう頭を下げてから、よろよろとトーマのいる部屋へと向かっていく。
……で、
「あんたはいつまでいんのよ」
「……ん、僕のこと?」
タイトについていかなかった黒トカゲは、不思議そうに首を傾げる……こいつ鬱陶しいんだけど。
「タイトくんについていかなくていいの?」
「うーん、だってタイトが勉強してる間は暇なんだもん! ……そもそも、タイトに迷惑かかるし行かないよ」
そう寂しそうに笑うクロアグモン。ちょっと悪いことしたかな?
「ねえ、なんでタイトくんは強くなろうとしてるの?」
ずっと不思議だった。こいつはなんであんな子についていくのか。
あの子は……タイトくんは不思議な子だ。
初めて会った時はデジモンたちの死体の海の上だった。その中で、クロアグモンと歌を歌っている気味の悪い子供だった。
私たちを監視役にしてからは、悲惨な子だと思った。クラヴィスエンジェモンさんからは渡された資料には、この半年間クロアグモンと一緒に野宿をしていたこと、ヌメモンとチューモンを仲間にしたこと、あの日クランとパルモンによって、仲間のゴールドヌメモンが殺されたことがわかった。
仲間が殺されたから、クロアグモンが暗黒進化してミレニアモンになったのはわかる。だけど、マサルがアグモンを暗黒進化させたときには、戦いが終わった後にデジタマまで退化した。
そんな危険な力を完全にコントロールしている彼は、明らかに異常だった。
……そんなパートナーを連れているこのクロアグモンも。
「……また、その質問か……なんでみんなそんなこと聞きたがるのかな〜?」
クロアグモンはめんどくさそうにそう言った……また?
「待って、『また』ってことは他の誰かにも質問されたってこと?」
「うん、そうだよ……だいたい一カ月ぐらい前にチューモンとゴールドヌメモンにされたっけ……懐かしいなあ」
そう懐かしそうに、『あの頃は楽しかった』と漏らすクロアグモン。一カ月前ってそんな前じゃ……ああ、ゴールドヌメモンが死んでなかった頃のこと……ちょっと無神経ね、私。
「まあ、あの頃と回答は変わらないからいいよ」
クロアグモンは呆れたように、
「僕はタイトとタイトの家族を守るために戦う……たとえタイトに嫌われていようが、怖がられていようが関係ない。僕はタイトの守りたいものを守るために戦うんだ」
そして、覚悟が決まった目で私を見てそう言った。
「なんで……そこまで、して?」
私にはわからなかった。この呑気なデジモンをここまで突き動かす彼のことが……
「一つ、タイトが怖がりだから」
握った手のひらの指を一本立てた。
「一つ、タイトが弱いから」
2本目の指を立てた。
「一つ、タイトが僕を必要としてくれるから」
最後の指を立てて、
「僕にとってそれ以外の理由はいらないよ」
「だって、そんなタイトでも、僕の1番のパートナーだから。他に理由はいらないでしょ」
それでも笑顔でそう言った。
……その目は狂気を帯びていた。
きっと、この子には彼の気持ちがずっとわからないのだろう。
「ここは『〜である』だから……」
タイト……彼の勉強を見て一週間ほど経つ。
「ここの答えが『x=3』だから」
実年齢が4歳児とは思えないほど、勉強量・スピードが速い。
「藤原氏の娘が……」
小学生にも満たない少年が中学生の問題を解いている。
「炎色反応の違いは……」
たしかに、科目によっては習熟速度に差はあるが、
「ここの英文は過去形とは違い……」
この集中力は普通の家庭の子供ではありえない。
「古代ローマでは……」
部屋の外ではチューモンやマサルが殴り合っている。戦いの音は部屋の中まで響いているが、それを無視して勉強しているのは異常であった。
「女性の体は……」
普通の子供ならいくら頼み込んだとしても、勉強に飽きて途中で寝てしまったり、外を見てしまうことだってある。それが一切ないのだ。
「だから、音楽の父である……」
それに、質問だって一切しない。
「洗濯する温度の違いによって……」
そんな、異常な子供に勉強を教えている。
「今日の授業はここまで」
昼前から始めて約6時間半が経った。
「ありがとうございました」
時間は夜の夕闇が迫ろうとしているなか、それほど疲れていないタイト……その姿が不気味に思えた。
「……ん? どうかしたんですか?」
片付けをしているところをじっと見つめていたのがわかったのか、彼はこちらへと視線を向けた。
「……いや、小さいのによく頑張ると思ってな」
午前6時起床、七時食事、身支度を整えたらヨシノとの訓練、11時から食堂で食事、12時から休憩5分の1コマ45分×8回の授業・勉強会、夜の七時から夕食、その後は自由時間で自身のデジモンたちと交流をはかり、夜10時に就寝をしている……そして、今日はヨシノとの訓練が長引いてしまって、食事はサンドイッチだけだったはずだ。
屈強な大人でも嫌がりそうな内容を、一週間やり通してみせたタイトは同年代の子供と比べて、やはり異常に思える。
「時間がありませんから」
彼はそうそっけなく言った。
「時間がないって────」
「俺の記憶や経験は摩耗しています」
「記憶や経験とはいったいなんのことだ? 君みたいな子供に経験する時間なんてないはずだ。それに摩耗するっていったい?」
彼自身は今の質問を聞いてキョトンとした。
「あれ? 気づいてたから聞いたんじゃないんですか?」
いやーまいったな。あんまり、言いたかないんだけどな……そう言って頭を掻き、少し悩んだふりをしたあと、話し始めた。
「俺には前世の記憶があります」
そうなんでもないように話す彼に対して、妙に納得ができた。
「……あれ、驚かないんですか?」
僕の知る限り、初めてまともな質問を受けた……小さな子供にそんなふうに質問を受けるのは初めてだったが、天才ともてはやされた小さい頃の僕もそうだったのだろうか?
「いや、前世のある人間なら何人か歴史に残っている……それに、デジモンや神や魔王のいる世界だ。転生した人間がいてもおかしくない」
前世の記憶がある子供の話や、最新の心理学の論文には、転生に関するものがいくつかあったのを僕は思い出した。
……それに、思い出すのは『イグドラシル』や『オリンポス十二神』などといった、超常的な力を持ったデジモンたち……彼らのような存在がいるこの世界だからこそ、転生する人間だっていてもおかしくない。
「へえ、驚かれるとか気味悪がられる思ったんだけどさ……そんなことないんだね」
彼は驚いている……と言うよりは、むしろ話しやすそうに僕を見つめていた。
「転生者なんて存在より、超常的な存在ならたくさん見てきたからね……むしろ納得したぐらいさ。他の子供とまったく違うのに、勉強についていった君が前世の記憶がないって聞いたほうが余程気味が悪かったよ」
その言葉に少し悩んだようにするタイト。
「ふーん、『ギフテッド』って可能性はなかったのかな?」
「それも考えたけど、『ギフテッド』って呼ばれる子供達とは性格が違う……得てしてそう言う子供は精神的な障害があったり、人から注目をされたがったりするが……半年間もクロアグモンと2人で野宿をやっているような子供とはかけ離れているからね」
彼自身が目立ちたがり屋ではなかったこと、他人から貶されても揺るがない精神性は子供のギフテッドには現れない兆候だ……それだけ、彼は子供らしくないとも言える……そして、そんなことよりも聞きたいことがある。
「……それよりも、知識や記憶が摩耗しているってどう言うことだい?」
彼は少し口元に手を当てて、考え出した。
「ああ、それは……」
数巡、躊躇ったように口元を撫でて、
「俺自身の前世の記憶が少しずつ削られるようになくなってるってことかな?」
そう言った。
「……赤子になった時は、前世のことを考えなかった日はなかった。『前世の父親は元気でいるのか』とか、『ゲームをもっとやりたかった』とか考えていた」
彼は無表情でそう語る。
「3ヶ月経つ頃には、前世での記憶が色褪せていった。『前世の好きな芸能人』とか『趣味』、『好きだったテレビ番組』、色々なものが色褪せて、今見てる景色がカラフルになって見えた」
まるで、自分のことではないように。
「一歳になる頃には、自分の死因なんて考えなくなった。『どうして死んだのか?』『どんな死因だったのか?』『死んだ後はどんなふうに処理したのか?』……自分の死を考えなくなった」
実体験のはずなのに、他人事のように彼は話している。
「二歳の誕生日には、過去に対する思いがどうでもよくなった。『母はどうして俺を嫌いになったのか?』『父は俺を愛してくれたのか?』『3人でまた仲良く暮らすことはできないのか?』……割り切れなかった思いが全部過去になるのを感じた」
声の抑揚がどんどん薄れている。こんな話をするならば、怒りや憎しみという気持ちが表面化してくるはずなのに、ただ無感情に彼は話し続ける。
「三歳になるころに、前世の自分が一生懸命やったことがうまくできなくなったことに気づいた。『受験のために必死になって覚えた公式』、『部活で大会に出るために覚えた体の動き』、『社会で通用するために学んだマナー』、『なりたい仕事のために参加したボランティア』……前世で培った技術が全部抜け落ちていた」
そんな彼は無表情にこちらを向いてそう言った。
「四歳、五歳……そうやって俺の歳が重なるごとに、前世の自分が消えていくのを感じていく」
手のひらを開いて掴む。きっと彼の中にある前世の記憶は今でも削られていくのを感じているのだろう。僕にはその感覚はわからない……だが、その立場になった時の恐ろしさは計り知れないと思った。
「それでも、前に進まないと……行かなきゃいけない場所があるから、
そんな恐怖とは裏腹に、彼は無表情の顔を無理矢理にこやかに変えて僕のほうへと笑って見せた。
「……ん、今の『必要』……『不要』? ……うん、しっくりくる。今の俺に『必要』なのはこれか?」
彼は自身の言った言葉に驚き…………先程とは違う自然な、しかし自嘲するような嗤い方をした。
「
『主人公』……まるで、物語の中へいるかのように狂気を帯びたその言葉に、先程とは違う怖気を感じる。そして、
「君はいったい何を……っ!?」
彼は僕の言葉にこちらを向いた。
「ハハハ、なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう?」
目が血走り、口元は嗤う。
「
何かに取り憑かれたように叫ぶ。
「
叫んだのは名前だった……そのなかにはマサルの名前もあった。
「勇気だろうが、奇跡だろうが、創造だろうが、魂だろうが、想いだろうが、合体だろうが、狩猟だろうが、主人公だろうが、建国だろうが…………絶対に絶対に他の奴らに負けてたまるかっ!!! 」
暗い波動が彼の周囲を歪ませる……歪む原因はただ一つ、昂った感情が闇のデジソウルを暴走させ、空間が捻じ曲げている。
「俺は『演じ』きって、『主人公』になって、クロアグモン達と生き残ってやるっ!!!」
空に向かって、何かに向かってそう彼は叫んだ。
彼は握りしめていた手からヘアゴムを取り出して頭頂部から少し髪括った……
「……『男の喧嘩は常に命懸け、死ぬこと恐れた時点でそいつは既に負けてんだよ』っ!!!」
見たことのある髪型、見たことのある言動、声色や目つきまでマサルそっくりに似せた小さな子供の手のひらが地面に叩きつけられる。ただそれだけで、暴力的な闇の色が、澄んだ夜空色に変わっていく。
「……君は?」
「…………本当にその通りだ」
悔しそうに握りしめたその手は、夜空色に染まっているが……澄んだ色の中に黒い斑点が混ざり合っていた。
2008年 3月9日
「じゃあ、始めなさい」
淑乃さんの言うとおり、心を『演じる』。
『テメエには守りたいモンがあるんだろっ!!!』
思い出すのはチューモンと対峙するその姿。それを意識して、髪を括る。
『デジソウルの使い方かい? そうだなぁ、意識するのは具体的に『何を守りたいか』、それを『どう守りたいか』……
トーマさんに聞いたイメージ……守りたいのは、
待っててほしい夜空色
俺の隣にいる黒色
カラフルになった世界
…………今まで通りの『壊れてもいい』という想いじゃなくて、『全てをかけて守りたい』って思うことを意識する。
『そんなもの気合いよ、気合い……それとその後、できる限り笑える場所にできるように『幸せな未来をつくるって考えながら』やることが大事!!!』
淑乃さんに言われたように、幸せを考える。
朝起きたら母さんが料理をつくっていて、アクアとルビーと学校に行って、学校が終わったら事務所でおじさんやミヤコさんと仕事して、うちに帰ればクロアグモンやチューモンと遊んで、寝る……そんな毎日を考える。
『そんな未来が来るわけがない』
……わかっている。それでもそうだったらいいなと……そうしたいと思うことにする。
『そんな時間があるわけがない』
自分が考えるとそう思ってしまうから、自分ではなく『
『そんなことを考えてる時点で負け犬だ……俺は負け犬にはぜったいにならねえ、俺は全て守ってみせる』
口調を変え、意識を演じる……
チューモンとの修行のおかげで観察する時間が増えたのもある……だけど、殴らないとデジソウルが出ないのは問題だ。
『守りたいものはどんな手段を使ってでも守る。それが、間違いにならないように必死になって考える』
……だから、
トーマさんから話を聞く機会はたくさんあったから、どんな思いで戦っていたかを聞くことができた。
そのおかげで、具体的にどんな人間だったのかもわかった。
大門大
私立鳳学園の高校二年生、生まれは神奈川、育ちは母子家庭。父親が幼少期に失踪し、父親との『家族を守る』という約束を胸に育ってきた。中学生で日本一の喧嘩番長を名乗るぐらい喧嘩っ早い。喧嘩に明け暮れ、警察の厄介になるほどの問題児であった。
アグモンと出会い『DATS』に所属、さまざまなデジモンと出会い、戦い、成長してきた……最終的にはデジタルワールドの神であるイグドラシルを倒した。
イグドラシルを倒した後も、デジモンの事件が継続……問題である七大魔王を追ってこの世界にやってきた。
トーマ・H・ノルシュタイン
大門大と同じく私立鳳学園の高校2年生。生まれは日本、アメリカで14歳という若さでストックホルム私立大学を卒業後すぐに、『DATS』に所属する。
オーストリアの貴族である父親と日本人の母親のハーフとして生まれ、祖母から人間として認められず、父親からも守られずに育った過去をもつ。母親が死去し、病弱な異母妹がいる。そういった生い立ちから、プライドが高かったが、大門大達とデジモンの事件を解決していくことで、徐々に軟化していった。
……だいたい本人から聞いた話から生い立ちをイメージ、そして、前世で見たアニメで客観的な情報を補強、あとは割合を考えて。
大門大とトーマ・H・ノルシュタインの行動を真似て、『指を鳴らす』……そうすることで、腕が夜空色に染まっていく。
「……ふう、おいクロアグモン『進化』するぞ」
口調や雰囲気は大門大……デジソウルのコントロールイメージはトーマ、それぞれに意識を変えて、夜空色を維持する。
「わかったよ、タイト」
クロアグモンは静かに俺に向かって頷いてくれ
た。俺はデジヴァイスicを持って、デジソウルを挿入する。
『デジソウル・チャージ』
夜空色がクロアグモンを囲っていく。闇夜色ではない……夜空の透き通るような紫色がクロアグモンを包み込んだ。
[クロアグモン進化]
黒い三本の角、青い肌、黒い傷の様な模様……次々と、見た目が変わっていく。
「グレイモン*3」
今までの進化先とは違う……アグモン系の正統進化。
「タイト……やったね」
その言葉に少し、頰が緩みそうになる……しかし、まだやることがある。
「今度はオイラの番っす……頼みますよタイトっち」
「……ああ、わかった」
同じ様に、チューモンへとデジヴァイスicを向ける。
『本当にやるのかよ』
聞こえない、俺は指を鳴らす。
『ワイも強くなりたかった』
俺は演じてるから聞こえない……そう思うことで、闇夜に染まりそうな手のひらを夜空色で覆い尽くす。
『デジソウル・チャージ』
闇夜色が混ざっているが、ほとんどが夜空色をしたデジソウルがチューモンを覆った。
[チューモン進化]
金色の立髪、茶色の肌、戦士の様な筋肉に、獅子のような顔……チューモンも進化する。
「レオモン*4」
なんとか進化できた……レオモンってのは不吉だけど、ただ進化できたことが嬉しかった。
「オイラも……ヌメモン以外に進化できたんだ」
「よかったね、レオモン」
感動しているレオモンに、グレイモンが笑いかけた……なんとなくだけど、さらに嬉しくなった。
「ハイっ、そこまで……よく頑張ったわね、タイト……今までの健闘を讃えたいとこだけど…………」
淑乃さんの体が薄くなっていく……トーマさん達が七大魔王と決着をつけたことがわかった。
「私も帰らなきゃいけないみたい」
グレイモンとレオモンが、クロアグモンとチューモンに戻る。
「「「今まで本当にありがとうございました!!!」」」
1人と2体で、彼女に、そしてこの場にいない2人に、頭を下げた。彼女達のおかげで、俺は善のデジソウルを使えるようになった。
「いいわよ、このくらい……それより、これからも修行頑張るのよっ! 手を抜いて忘れたりしたら承知しないんだからねっ!!!」
「「「ハイっ!!!」」」
そう言って、彼女はこの世界から消えて行った。
「君達はどうするのかな? このままこの世界に……」
彼女が消えた後、クラヴィスエンジェモンが後ろにやってきた。
「いえ、俺は故郷を目指します」
そう言って、俺はデジヴァイスicにデジソウルを込める。
[クロアグモン暗黒進化]
「ミレニアモン」
「お、おい!?」
クラヴィスエンジェモンは暗黒進化したことに驚いたようだけど……
「この姿なら、次元だって渡ることができます……やれるな、ミレニアモン」
ミレニアモンは手を振っただけで次元の裂け目を作り出した。
「うん、これならいける」
ミレニアモンは次元の狭間で生きるデジモン……その力があれば、次元だって渡ることができる。
「……そうか、それなら大丈夫そうだな」
安心した様子でクラヴィスエンジェモンは笑ってくれた。
「ありがとうございました」
いろいろと思うことはあったけど、『必要』なことは教えてもらえた。
「……いや、私は君を不幸にしただけだ」
クラヴィスエンジェモンは申し訳なさそうにこちらを向いた。
「それも『必要』なことだったんです」
「……タイトが言うんだったら、そうなんだね」
「オイラも辛いことはあったけど、タイトっちと出会えたからよかったっす』
三者三様思うことはあれど、この世界に居た経験はこれから『必要』になってくると思う。それだけでも、いいことだった。
「チューモン」
チューモンにデジヴァイスicを向ける。
「わかったっす」
「『デジモンキャプチャー』」
キャプチャー機能を使って、チューモンをデジヴァイスic中に入れた。
「それじゃ、さよなら」
そう言って、この世界を去った。
レベル:成長期 タイプ:恐竜型 属性:ワクチン 必殺技:『ベビーフレイム』『ベビーバーナー』
腕に赤い革ベルトを巻いた特殊なアグモンで、その成長は従来の進化とは異なるのではないかと推測されている。まだ成長途中で力は弱いが、両手足には硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。必殺技は、口から火炎の息を吐き、敵を攻撃する『ベビーフレイム』。また、『ベビーフレイム』を口内で溜めてから一気に吐き出す『ベビーバーナー』も威力抜群である。
悪質なコンピュータウィルスに体を侵食された恐竜型デジモン。もともとはおとなしいはずのティラノモン種のデジモンだったが、悪質のコンピュータウィルスに感染し、肉体を構成するデータがバグをおこし狂暴なデジモンへと変貌してしまった。体は黒く変色し、腕もティラノモンよりも強靭に発達し攻撃力も増している。目に映るものは全て敵とみなし攻撃を仕掛け、完全に狂暴化してしまった。必殺技の『ファイアーブラスト』は超強力な火炎放射で、辺り一面を炎の海に変えてしまう。
レベル:成熟期 タイプ:恐竜型 属性:ウィルス種 必殺技:『メガフレイム』
頭部の皮膚が硬化して甲虫のような殻に覆われた恐竜型デジモン。鋭い爪、巨大な角を持った全身凶器のような体で、非常に攻撃的なデジモンである。しかし、知性が高く手なづけることが出来れば恐らくこれほど強いモンスターはいない。通常のグレイモンと違い、凶暴性が高いが、決して一匹オオカミではなく、仲間とチームプレイできるほど賢い。必殺技は、口からはき出す超高熱火炎「メガフレイム」。
百獣の王、気高き勇者とも呼ばれる獣人型デジモン。狂暴なデジモン達が多い中、強い意思と正義の心を持っており、数多くの凶悪なデジモンを倒してきた。また、破壊の限りを尽くす“デジモンハンター”のオーガモンとはライバルである。日々の鍛錬で鍛え上げられた強靭な肉体はあらゆる攻撃に耐え、必殺技の究極奥義『獣王拳』で敵の息の根を止めてしまう。「獅子王丸」という意思を持った妖刀を腰に携えている。
[タイト]5歳時点
見た目 夜空色の髪と目 髪型はセミロング 身長は他の五歳児より小さい 痩せ気味 見た目は幼女に見える 小さな頃のアイとそっくり 善のデジソウル発動時は目に白星/ゴールドヌメモン死亡時、暗黒のデジソウル使用時には黒星
性格 秘密主義 楽観的(ゲーム脳) クロアグモン曰く、臆病者
好きなもの 今世の家族 チューモン ヌメモン デジモン
嫌いなもの 前世の母親 野宿 親しい者に無理強いされること 守れないこと
得意なこと 暗黒のデジソウルのコントロール、我慢
苦手なこと 善のデジソウルの発動/コントロール
星野家を出て半年間、デジタルワールドで野宿をしながら暮らしていた。デジタルワールドに来てから、食事はデジヴァイスicから出たデジモンの餌を食べており、人間用のご飯を食べていない為、発育と栄養状態が悪い。また、夜間もクロアグモン達と見張りを交代しており、体に無茶をしいている。体に無理強いする為に、体調の悪い時は無理をしていることがわからないように
デジタルワールドにきてから2度目のデジソウルの発動ができず、約半年間デジソウルの発動ができなかった。
ゴールドヌメモンが殺されたことにより、自身の悪意が大きくなったことをすぐに理解し、ムゲンドラモンをより強大な存在にする為、意識的に悪意を暗黒のデジソウルへと変換することを可能にした。
その後、暗黒のデジソウルのコントロールは可能となったが、善のデジソウルの発動の仕方がわからず、
また、自身の前世の知識・技能が摩耗していくことを自覚し、修行の合間にトーマ・H・ノルシュタインから勉強を見てもらっていた。
3人が元の世界に帰る時に、クロアグモンとチューモンを連れて、今世の家族のいる世界を目指して世界の狭間へと旅立った。
[クロアグモン] レベル75 調査型 素質/才能147
成熟期/グレイモン(青)(善のデジソウル)/ダークティラノモン(闇のデジソウル)
完全体/メタルティラノモン(闇のデジソウル)
究極体/ムゲンドラモン(闇のデジソウル)→ミレニアモン(闇のデジソウル)→ズィートミレニアモン(闇のデジソウル)
好きなもの タイト タイトの
嫌いなもの タイトの怖がってるもの タイトの敵 力を失うこと ヤサイモドキ
タイトのパートナーデジモン。
タイトの知識と半年間の修行にによって、究極体にまで強くなることができた。ムゲンドラモン時の素質/才能は80だったが、他者を
性格は変わらず温厚で子供っぽい。しかし、
闇のデジソウルによって、完全体、究極体への進化が可能となった為、クロアグモンへの退化を受け入れた。ヨシノとともにタイトの善のデジソウルについての修行を手伝う。
チューモン レベル25 開発型 素質/才能68
成熟期/レオモン(善のデジソウル)/ゴールドヌメモン
究極体/プラチナヌメモン
好きなもの 友達 番長 力 男気
嫌いなもの 弱い自分 守れない力
元々他テイマーのデジモンだったが、強くなる為にヌメモンとともにタイトの仲間になる。プラチナヌメモンとゴールドヌメモンの進化を行き来する。耐久力は上がったが、決して強くなったわけではない。
仲間のゴールドヌメモンがやられた際、タイトによってすぐにデジヴァイスicのなかに入れられる……そして、そのことをいつまでも悔やんでいる。
仲間を失った時に、力への渇望が強くなり、七代魔王を追っていた
タイトのデジヴァイスic (至極色/濃浅葱)
他のテイマーが持っているデジヴァイスicと違い、デジモンの進化/強化能力に加え、デジモンの飼育・コンバート技能、デジモンの怪我や病気に対してのプログラム等、ゲームじみた力を現実やデジタルワールドで行使することが可能。また、『デジモンロード』のような後に解放される機能の発現条件も不明。
そもそも、タイトの転生に関わっているのか、なぜタイトに渡されたのか……等、謎が存在する。