2008年 4月1日
「デジソウルはそうやって使うのではありません! もっと生き残りたいと、前に進みたいと願うことで真の力を発揮します!!!」
「だから、デジソウルで体を強化しない! 自分を強化するよりパートナーを意識しなさい。そうすることで、パートナー自身の力を強化することができます」
「他人の真似をしない! 自身の意思を意識しなさい!!!」
「ズィートミレニアモンは隠し札……いわば禁じ手です。いい加減初手から強い力を使うのをやめなさい」
「デジソウルの純度が低いです。あとのことを考えるとこれが効率がいい? いいですか、それは間違いです! 後先のこと考えてる暇があったら全力を尽くしなさい!!!」
「まだ悪意が乗ってますよ! 悪意を乗せるのは減点です。不安定な暗黒のデジソウルを使う習慣をやめなさい……将来的に、貴方の為になりませんからね」
「健全な精神は健全な肉体から生まれます。よく食べて、よく動き、よく寝ること、それが一番大切なことです」
「補給部隊リーダーのシールズドラモンから話を聞きましたよ! また無茶したんですね! ダメって言ったじゃないですか!!!」
「貴方の身長と体重は、同い年の他の子供よりかなり少ないんですよ。もっと食べなさい!!!」
「勉強をするのはいいですが、もう夜の9時です。5歳児なんですからはやく寝ることが大事です。明日の修行に響きます」
「いいですか、タイト……今日は休みの日です。決して、修行や勉強なんてやらずにゆ・っ・く・り過ごしてくださいね」
……はあ、とため息が出そうになる。朝五時の修行時間に鍛錬場までやってきたら、鍛錬場で待っていたノルン様にそう言い含められてしまった。6時30分まで部屋でゴロゴロしていたけど、暇すぎて起きてしまった。
肩を落としながら歩くこと5分、食堂まで着いてしまう。朝はビュッフェ形式なので、適当にオムレツとウィンナーを選んでいく。
食事が終わったら、どうすればいいんだろう?
「おいタイト、大丈夫か?」
「表情が暗いですね、どうかしたんですか?」
そんなことを考えてると、後ろから声をかけられる。ゴーグルをつけた学生服を着崩している少年と制服姿の少年がいた。
「…………ツルギさんとユウさん、ハハハ大丈夫ですよ」
そう元気に笑ってみせるが、2人は俺を捕まえて食事席まで連れてきた。
「大丈夫だと言う人はそんな顔はしません! 悩みがあるんだったら、食事の席でゆっくり話しましょう」
「そうだぞ……タイト、お前何か悩んでることがあるんじゃないのか? せっかくここで暮らしてるんだから、同じ釜を食べるよしみで話してくれよ」
うん、2人に心配そうにそう言われる……実際に話してみれば解決するかもしれない。
「……実は、────」
「……休みの日に何をすればいいのかわからない、か」
「贅沢な悩みですね、でも小さい頃からの話を聞かされればなんとなくだけどわかる気がします……こんなふうに暮らしてたら、趣味なんて探してる暇なんかないですよね」
転生したら、デジモンが急に現れて世界の危機がやってくると思う。
↓
調べてるうちに、直近では来ないことがわかるが母親のストーカー事件が発覚、対処に追われる
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ストーカーを倒したら、デジタルワールドへ
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半年間ほど、野宿+金欠+出費に悩まされる
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悩みがなくなった途端、襲撃を受けて仲間が1体殺される。
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敵のグループを完全壊滅まで追い込むが、警備組織のもとで修行・勉強期間に入る
↓
実家に帰ろうと旅立った数日後、別世界のデジタルワールドにて捕まる
こうして箇条書きしていくと、だいぶひどい幼少期だと思う。いくら転生したからって、かなりハードなことをやらせないでほしい。
「で、ここにきて1ヶ月……ノルンにデジヴァイスを取られて、この世界製のデジヴァイスicを持たされ、修行と勉強の日々に追われてた時に、こんなこと言われたってことか……そりゃ、休みなんてしてる場合じゃないよなぁ」
…………そう、俺達はここに1ヶ月ほど滞在している。
ノルン様は俺の故郷の『
家族と暮らしてた頃は常に時間に追われてたし、クロアグモンは幼年期だったからいつデジモンやストーカーが襲ってくるのかわからなくて、安心できる日々じゃなかった。
デジタルワールドにいったらいったで、未来の敵への対策や出費に追われて毎日必死に働くしかなかった。
「今までやることが多かったから、急に休みって言われても何をすればいいのかわからないんですよ」
休み、休み? 、休み!? ……というのが初めて聞いた時の俺の中の感想だった。休みなんて
「別に好きなことすりゃあいいんじゃないか?」
趣味、趣味? ……前世では何が好きだったっけ?
「……趣味、ツルギさんやユウさんにサインでももらったりすればいいんですか?」
「────ハァッ!? なんでそうなる!?」
「────ッ!?」
ツルギさんびっくりしちゃってるよ。ユウさんも絶句してるし……でもなあ、俺にとっては憧れのキャラクターだからなあ。
「なんでって言われても……たとえば、ツルギさんの目の前に八神太一が現れたらどうするんですか?」
この世界にもデジモンアドベンチャーのアニメがあった……というよりポケ◯ンがない為、アグモンが某電気ネズミのポジションを獲得していた。そのせいか、八神太一はこの世界で伝説的な人気キャラクターとなっている。
「────ッ、ああそういうことか……悪いな、俺にとっては普通でも、転生者のお前にとっては2次元の住民ってことかよ」
「納得はしますけど、知られてる本人の目の前で言うんですか?」
2人ともちょっと引き気味で話してるな。まあ、知り合いからずっと昔からファンでしたって言われるようなもんか……そう思うと、オタクって気持ち悪いな……って、そういえばこの2人に聞きたいことがあったんだった。
「前世の記憶がなけりゃこんなことしませんよ。それより話は変わりますが、デジソウルってどうやって出してるんですか?」
2人はいきなり顔を見合わせる。
「……なんでそんなことを聞くんだ?」
「いや、どうやったら完全体に進化できるのかなって思ったんですよね」
俺はまだクロアグモンとチューモンを完全体に進化させられていない。1ヶ月間、ノルン様のもとでデジソウルの修行をしていたが、まるで進展がない為、困っている。
「そんなこと言われても気の持ちようとしかいえないですし」
「気合いだ気合い」
気合いでなんとかなるんだったら、トーマさんに聞いた時になんとかなったんだけどなぁ。ツルギさん達にこれ以上聞いてもどうしようもない気がする。
「俺達はお前みたいに特異な例じゃないからな、暗黒進化をうまく扱える方が普通じゃないとしか思えないんだけど……お前の暗黒進化に何かあんじゃないか!!!」
……暗黒進化? そう言えば考えたことが無かった。アニメでも漫画でも、暗黒進化の力を使ってうまくいった話はなかった気がする。
「ありがとうツルギさん! これで、
「だめですよ」
1人の少女の声が食堂に響き渡った。
「……ノルン様?」
「タイト、私は言いました。修行も勉強も行ってはいけないと……貴方は何をしているのですか?」
背中に般若が宿っている彼女。顔は笑顔だからなおさら怖いと感じてしまった。
「でも、ノルン……こいつなりに前に進もうとしてるんだったらいいんじゃないのか?」
「前に進もうとするのはかまいません。でも、その前にやることがあると私は思ってますよ」
────うッ。
「やること? ────ああ、あれですか。まだやってなかったんですか?」
────うぐッ!?
「お前まだやってなかったのか? いい加減やったほうがいいんじゃないのか?」
────がはッ!!!
3人から次々と図星をつかれてしまった。確かにやってたほうが今後のためになるのは確実なんだが……うだうだしててもしょうがないから、行きますか。
そう思い、最後のウィンナーを口の中に入れてから、食堂の出口へと向かった。
「あんな顔をすると思ってから、はやく行けと言ったんですけどね」
「でも、しょうがないですよ」
「
2008年 3月13日 イグドラシル城 庭
「ねえ、タイトなんであんなこと言ったの?」
ノルン様との対話を終えて、俺達が暮らす部屋に案内された後、クロアグモンは静かにそう聞いてきた。
「…………あんなこと?」
あんなことと聞かれても、どんな事を言ったのか思い出せない。ノルン様との会話は、俺にとって価値観を揺るがされるものが多かった為、自分の言ったことについて印象が薄くなっていた。
「『全て俺がやったことです』ってやつっすよ」
チューモンが、不機嫌そうにそう言った。
「その言葉がどうかしたのか?」
自分と仲間の命が助かった……それだけで俺は満足だったんだけど、こいつらは不満があるっぽい。俺の発言のどこが悪かったんだろうか?
「そう言ったとき、タイトはどう思ってたの?」
クロアグモンの言葉を聞き、あの時のことを思い出す。
仲間がやられて進化もできない。自分を含めた仲間の命がかかっていた。気に食わなくとも、慈悲深い神だとわかっている相手だったから、我慢してでも頭を下げた。
「
俺はあの時そう思った。
「────ッ!?」
クロアグモンの声にならない悲鳴が聞こえた……なんで、そんな辛そうな顔をするんだ?
「……なんで、そう思ったの?」
震えた声でクロアグモンは言った……なんでって、そりゃあ
「一度、死んでるからな……俺個人が死んだってどうでもいいだろ」
どうでもよかった……いや、死にたかったかもしれない。
デジタルワールドに来て、ゲームみたいだなって思った。そうやってるうちにゲーム感覚で進んでしまった。ゴールドヌメモンが死んだあのとき、初めて現実だって実感した。
本当に自分が嫌になった…………そして、こんなことを思った。
「
クロアグモンはルビーと仲良くしていた。俺が家族を大事にしていたことも知っている。俺の2度目の生を受けた世界に帰れば、クロアグモンはきっとあの5人を守ってくれると信じてる……そう思ったからかな────ッ!?」
顔面に思いっきり衝撃が走った。
「────ッつう!?」
次に背中を思いっきり打ちつけた。痛みを感じた瞬間何かに殴られたことに気がついた。
「────ってえ、な?」
そのとき、初めてクロアグモンに
「────ねえ」
クロアグモンは涙をこぼしながら、俺をまっすぐ睨みつける。
「僕は嫌だよ……タイトのいない世界なんて、考えたくもないよ」
クロアグモンは泣きながら、俺にそう言った。
「…………クロ、アグモン?」
理解ができなかった。自分のことを大切に思っていたことは知ってる。だけど、
「他の誰でもないタイトの為だから、僕は頑張るんだ。アイだって、アクアだって、ルビーだって、イチゴだって、ミヤコだって関係ない……君の為に僕は戦うんだ」
俺の為に頑張る? それはわかる。でも、他にも大切なものはたくさんあるだろ? なんで俺だけの為にそんなに頑張ろうとするんだ?
「タイトが死んだら、僕は死ぬよ」
……その言葉に背筋が凍った。クロアグモンが俺の家族を殺す? そんなバカなことがあるか!? 俺の大事な存在ってことを知ってるんだぞ!!!
「タイトがまたそんなことを思っておんなじことをやったら……もし、それでタイトが死んだら、僕は世界を壊してやる」
狂気を帯びた瞳の中には、怒りとも悲しみとも取れる複雑な感情が見える。なんとなく本気だと……わかってしまった。
「アイやルビー、タイトの家族なんて関係ない……僕がこの手でぶっ壊してやる」
それは俺自身への怒り…………俺が命を捨てたことに対して怒ってくれたのだろう。そんなことに俺は気づくことができなかった。
「だから、タイトは頑張って生き残ってよ。タイトが生きている限り、僕はそんなことはしないからさ」
「……クロアグモン、俺は────」
俺自身の未来を考えた言葉だったのかもしれない。
「……だから、先輩、いやクロアグモンはダメなんすよ」
クロアグモンの言葉を聞いたチューモンが、クロアグモンの願いを否定した。
「……チューモン?」
自分の言葉を否定したチューモンを、クロアグモンは睨みつける。
「……何、裏切った奴が言う資格なんてあるの?」
「それは、タイトっち次第だとオイラは思っているっすけどね」
ヘラヘラと笑いながら、それでも俺やクロアグモンに対しての怒りを目に込めて俺を睨みつけている。
「だいたい、クロアグモンがそんな事を言うからタイトっちは甘えるんすよ」
「『そんなこと』ってなんだよ!?」
クロアグモンはその言葉に明らかに苛立ちを見せている……このままだと、ノルン様の前で戦った時と同じことが繰り返される!?
「『裏切り者』、『タイトが死んだら僕も死ぬ』、『僕がこの手でぶっ壊してやる』…………あんたの言葉全部っすよ!!!」
そんな中でもチューモンは声を荒げながら、クロアグモンの質問に答えた。
「────なっ!?」
「あんたはこうやってほしいって言ってるっすけど、タイトっち自身が気づかないと理解できないってわかってないっすか!」
「タイトっちが自分のことで精一杯なのはオイラもわかってる……それでも、あんたはタイトっちに、タイトっちはあんたに甘すぎるっす!」
「タイトっちが変わらなければ、オイラ達も成長できないし……何より、タイトっちの守りたいものも守ることができない。だけど、あんたはタイトっちを甘やかすばかりで、厳しいことを決して言わなかった。それは間違いだって言ってるんすよ」
「今のオイラはあんたやタイトっちの隣に立つことが目標っす……だけど、尊敬してるあんた達がこんなんじゃ、いつまで経っても強くなることができない……気に食わないにも程があるっす!!!」
チューモンが怒りを爆発させて話した言葉……違う、とは言い切れなかった。
「────俺は間違ってた?」
俺はなんでも言う事を聞いてくれるクロアグモンに甘えていたんだ。
『僕だってちゃんと進化するし、なんなら君やアイ、みんなみーんな僕が守ってみせるよ』
俺が困った時も、
『わかった、タイト!!!』
俺1人じゃ何もできなかった時も、
『……そうだね、僕がもっと強くなれればよかったんだけどね』
俺がわがままを言った時も、
『うん、いいよ』
俺が苦しかった時も、クロアグモンは助けてくれた。でもどうだ? 俺はクロアグモンに何をしてやれた
『進化できないのは辛いよ』
『でも、それが1番の近道だから』
俺はクロアグモンの気持ちに応えてやれたのだろうか?
いや、違う。俺はクロアグモンに甘えていたんだ。
「
今、クロアグモンが言ったその言葉が俺自身が間違っていた事を感じさせた…………だからこそ、
「タイトの為に僕は頑張ったんだ! タイトは家族を、世界を守らなきゃいけないんだ! お前みたいな裏切り者なんかに────」
「クロアグモン、もういいんだ」
俺は言わなきゃいけないんだ。
「…………タイト?」
俺が言ったその言葉に、クロアグモンは驚いた顔をする。
「ごめん、チューモン……俺が間違ってた。俺はお前達に甘えてたんだな」
俺はそう言って頭を下げる。
俺は甘えていただけで、決してデジモン達を信じてはいなかった。それがわかってしまったんだ。
「……タイトは間違ってないよ? タイトにはたくさんやらなきゃいけないことがあって、顧みる余裕がなかっただけだよ」
クロアグモンは頭を下げる俺にゆっくり近づき、そう言って慰めてくれた。けど、これは俺自身が認めなきゃいけない事だ。
「……ようやく、わかったんすか」
少し呆れたような、それでも先程よりも明るい声でそう言ったチューモン。
「いいっすよ、仲間っすから…………
「────うるさいっ! お前なんかにタイトのことがわかるもんか!!!」
そう言って、走り出してしまったクロアグモン。
「…………たっく、先輩なんすからもうちょっとしっかりしてほしいっすね」
そう呆れたように言ったチューモン、その夜はその場で別れてしまった。
────それから、あの夜以降、全く会うことはなくなってしまった。結局、あの後から俺とクロアグモンはお互いに気まずくなってしまって、お互いに時間が合わないように暮らしている
今の俺はノルン様に修行を見てもらっている。
チューモンから話を聞くと、クロアグモンはホーリーエンジェモンの部隊に、チューモンは剣を学ぶ為にザンバモンの部隊に所属して修行を行っているみたいだ。
ノルン様達に言われた通り、クロアグモンのところに行こうと思っていたが……
「いい加減にしろよ、お前!!!」
「そっちこそ、ふざけんなっす!!!」
演習場の中心で、大声で怒鳴りあっている、喧嘩している2体を見つける……どうやら今日は合同演習の日だったらしい。ザンバモン達から合同演習の度に喧嘩しているのは聞いていたが、コマンドラモンが複数集まって止めている時点で相当仲が悪くなってしまったらしい。
「……これも、俺のせいかな?」
俺がしっかりしてれば、こんなふうに喧嘩することもなかったかもしれない。
「────おーい!!!」
ザンバモンに聞こえるように大きな声をかける。そうすると、さっきまで喧嘩していた2体がこっちを向いた。
「────タイトっ!?」
「────タイトっち!?」
なんかびっくりした顔をしてるが、俺が来たことがそんなに驚くことだったのだろうか?
「タイト────危ないっ!!!」
「……へっ、ぐぼえ!?」
クロアグモンがそう言った時、背中に何か大きな物が当たった気がした。それによって、頭を思いっきり地面に打ってしまった。
「…………デジ、たま?」
降ってきたものを確認した途端、頭が真っ白になってくる。
「────イート!?」
「──ートーち!?」
仲間の声が聞こえたが、ぶつりと目の前が真っ暗になってしまった。
・デジソウルを使ってデジモンを進化させる機能
・今まで使っていたデジモンの餌を作り出す機能
・デジモンの力をデジモンパワーとして計測する機能
・デジソウルを出し続けることでデジモン自体を強化し続ける機能
・ウンチを謎空間に水で流す便所機能
これら五つの機能がついている
『デジタマ』
デジモンたちの「タマゴ」。生まれるデジモンの種類やその地域によって、模様が違う。一定の力を持ったデジモンが死亡するときに、デジタマを残す。
また、この小説内の設定として、デジモンがその場で、デジタマになるのに一定の条件を採用している。
1:完全体以上のレベルになっているデジモン
2:自己一体のみの戦闘経験10回以上(同格以上の相手のみ)
3:デジタマ・生まれるデジモンに対して過剰に悪影響を及ぼす場合除く
1・2はどちらかが満たされていればよい。
3は必須、満たされていなければ、どこかの場所でデジタマへと変化している。また、その場合にはデジタマになる前の記憶・経験はなくなっている。
上記の1・2の条件は、DSソフト『デジモンチャンピオンシップ』を参考にしている。