「────ねえ、タイト。こいつがタイトを倒そうとしたの?」
グルスガンマモンを睨みつけるクロアグモン。俺はその言葉に静かに頷いた。
「じゃあ、はやく倒すよ……タイト、ズィートミレニアモンに進化だ!」
「あっ、それはできない」
────ズゴっ、あっクロアグモンがこけた。
「えっ、なんで!?」
「今の俺の持っているデジヴァイスicが借り物だからな。進化できるのはグレイモンまでだ」
そう言って、浅葱色の線が入ったデジヴァイスを見せる。
「えっと、タイト……あれがないとズィートミレニアモンに進化できないんだけど?」
暗黒進化ができないのには理由がある。
俺のデジヴァイスは特別で、なぜか暗黒進化にも対応することができた。しかし、他のデジヴァイスを使うと、暗黒のデジソウルに耐えきれなくて自壊してしまう……俺のデジヴァイスは特別製っぽくて貴重な物であるのだが、今の俺の手元にはない。
「そもそも、俺のデジヴァイスはノルン様が預かっている。俺達が元の世界に帰る為に、ノルン様が解析をしてくれているからだ。だから、今の俺の手元には無い」
「なら、しょうがないね。タイト頼んだ」
少し呆れた様子でそう言ったクロアグモン……悪いな、本気で戦えなくて。
「……ってことは、てめえら本気で戦えねぇってことかよ! デジタマの頃に感じた、あの嫌な気配は出ないってことだな」
俺達の話を聞いていたグルスガンマモン……やはり、ズィートミレニアモンのことに勘づいていたみたいだ。
「よかった、よかった……それなら俺に万に一つも負ける要素がないからなぁ! とっととてめえらを倒して、この世界を『GRB』で満たしてやるよぉ!!!」
……『デジタマの時に感じた』? ってことは、デジタマの頃からクロアグモンがいなくなるタイミングを狙ってたってことか!? ヤバイ、グレイモンでもほんとに勝てるのかわからなくなってきた。
「……あのさあ、さっきから聞いてたけど」
『デジソウル・チャージ』
クロアグモンの周りへ俺のデジソウルが渦巻いていく。
[クロアグモン進化]
『グレイモン』
「お前程度、この姿で十分だ」
青の恐竜がその姿を現した。
「あ゛ぁ、なんだてめえ……舐めてんじゃねえ!!!」
グレイモンの言葉にグルスガンマモンが激昂し、突撃してくる。
「『ダークパレス』ゥ!!!」
レオモンの左腕を焼き焦がした一撃がグレイモンを襲う。グレイモンの角を掴んで、黒炎を爆発させた。
「────グレイモンっ!?」
ヤバイ、レオモンみたいにやられる!? 急いでグレイモンの近くに寄ろうとするが……体を掴まれた。
「大丈夫っすよ、タイトっち」
そのとき、退化したチューモンが俺の体を右腕で掴んでいた。
「えっ、でも!?」
ズィートミレニアモンどころか完全体でもないグレイモンが、アニメでラスボスだったグルスガンマモンの一撃をうまく避けれたのか心配だった。それでも、チューモンは俺の腕を離さなかった。
「先輩は大丈夫っす」
チューモンのその言葉と同時に、煙が晴れていく。
「────なっ!?」
煙の中から出てきたグレイモンの体は、
「だって、俺の尊敬する先輩は、こんなにも強いんだから」
擦り傷一つ負っていなかった。
「────タイト、大丈夫か? 怪我は?」
グレイモンは思いっきり上半身を回して、角を掴んでいたグルスガンマモンを投げ飛ばした。俺はグレイモンの言葉に首を横に振る。
「それはよかった」
ニコリとこちらを向いて笑うグレイモン。その間、グルスガンマモンのほうには一切顔を向けていない。
「……てめえ、こっちをみやがれ! ────ごがっ!?」
そう言って再び攻撃をしようと突撃してくる。しかし、グレイモンの背後へ接近したところ、グレイモンの尻尾で叩き飛ばされた。
「あのさあ、こっちはタイトとのピクニックを邪魔されて怒ってるんだよね────そんな僕がお前のことを警戒してないと思うか?」
グレイモンは一切グルスガンマモンのほうを向いていない。そんな中でも、グルスガンマモンはグレイモンに怪我どころか傷すらつけることができていない。
────グレイモンってこんなに強かったっけ?
「────喰らえっ」
飛びかかるグルスガンマモンを、角で弾き飛ばすグレイモン。
今までの戦いを思い出す。
初戦闘はストーカー戦だった。コロモンのときは、人間相手に骨折を喰らわせる程のダメージしか与えられなかった。
「『デスデモーナ』ァ!!!」
「────フンっ!!!」
グルスガンマモンが投げる黒炎を、グレイモンは尻尾でかき消した。
『デジモンストーリー』でのデジタルワールドの半年間は、最初は幼年期を狩って、少しずつ成長期や完全体を相手にできるようになっていたが、それでも、格下の相手しかしてこなかった。
『デスデモーナ』を掻き消すことでたちあがった煙の中から飛び出してくるグルスガンマモン。
「『ダークパレス』」
黒炎を纏った拳を、首を捻ることで避けるグレイモン。
「『ダークパレス』」
殴りかかったグルスガンマモンの左手を、右手で掴み取るグレイモン。
「『ダークパレス』ゥ!!!」
腕を掴まれたグルスガンマモンは右腕を使い、渾身の『ダークパレス』でグレイモンへと殴りかかった。
「────ぐごえっ!?」
そんなグルスガンマモンを、もう一度尻尾で叩き飛ばすグレイモン。
メタルティラノモン、ムゲンドラモンの頃は対人相手だったけど、相手は格下しかいなかった。
「これならならどうだ!」
グルスガンマモンはレオモンを圧倒したスピードでグレイモンのまわりを飛び回る。それでも、グレイモンはグルスガンマモンを目で追うことができている。
「『デッドエンドスキュアー』ァ!」
背後の首を狙いを定め、急接近したグルスガンマモン。
「────っ、何をしたっ!?」
それを半歩分横に動くことで避けたグレイモン……そして、
「これでもう逃げることはできないよねっ!!!」
ぐるぐるとハンマー投げの容量で、グルスガンマモンを空中に投げ飛ばした。
ミレニアモンに進化できるようになってからは、まともに戦ったのはビクトリーグレイモン・ズィートガルルモン戦ぐらいだ。参考にはならなかった。
「『メガフレイム』」
グルスガンマモンを狙った巨大な火球が、青色の青空で命中したのだった。
今までの経験から、俺はグレイモンのまともな戦いを見たことがなかったのだ。
「……どうだった、タイト」
目をキラキラと光らせて聞いてくるグレイモン。
「かっこよかったよ、グレイモン」
「……そっか、それならよかった」
「……ということが、ありました」
「……はぁ、前にも言いましたが本当によく巻き込まれますね」
この件をすぐにノルン様へと報告する……そして、
「やめろっ! 動くな!!!」
「離せって、言ってんだろっ!!!」
気絶したガンマモン*1 (グルスガンマモンが退化した姿)を縛りつけ、玉座の間まで連れてきた結果、こうやってコマンドラモン達に取り押さえられている。
「俺ぁ、負けたんだから何もしねぇって言ってんだろ!!!」
そう言って、さっきから暴れ続けているが、コマンドラモン達が手を緩める様子はない。
「お前には『GRB』という因子でデジモンを暴走させる力を持っていると聞いている……そんな相手を放っておくわけないだろ」
「だから、しねえったってんだろっ!
俺達のいたところじゃ『喰うか喰われるか』の2択しかなかった……俺はそいつらに負けたうえで、生かされた! 今更そんなかっこわりぃことできっか!!!」
ガンマモンは必死になってそう言った。そういえば、アニメでそんなことを言っていた気がする……って、アニメみたいなことが起きているのか!?
「コマンドラモン、ガンマモンを離しなさい」
「────しかし、イグドラシル様っ!?」
「タイトが何か気がついたようです。ガンマモンに関することで何かあったのでしょう……その者に話を聞くべきだと私は判断しました」
ノルン様がこっちに気がついていたようで、目で俺に説明しろと促してくる。なんかめっちゃ圧を感じる……まあ、話すけどさ。
「俺の予想ですが、別の世界でこいつは自分の星を襲った脅威への対策の為、GRB……いわゆるグルスの因子を拡散・感染させることで、たくさんのデジモンに反映し、より多くのデジモンを凶暴化・統制することで、いずれこの世界にやってくる脅威を返り討ちにするつもりであると────」
「……なんで知ってるっ!?」
……あってたんだ。じゃあ、だいたいアニメと同じことが起こったと考えられるな。2000年先の対策としてこの世界にやって来たのか……ということは、俺の上に落ちてきてよかった。俺達が知らない場所で動かれたら、対応できなかったかもしれない。
「タイト、脅威が来るのは予想ではどれくらいですか?」
ノルン様が俺の前世の記憶を予想と言ったのをあわせてくれる。ガンマモンに前世の記憶を持っているとか言いたくなかっただけなんだけど、あわせてくれるのはありがたいな。
「人間の時間でだいたい、2000年後ぐらいだと思います」
「…………」
「────なっ、そこまでわかってんのか……じゃあ!」
ガンマモンが俺の言葉に喜んだ。目の前にいる人物が、自分を倒した奴の上司だとわかっているのだろう。きっと、協力を申し上げるつもりなのだろうが…………ノルン様は首を振った。
「…………だめですね」
「────っ!? なぜだ! この世界にたった2000年後に俺の暮らしていた星を滅ぼした脅威、『全てを喰らう者』がやってくるんだぞ! 俺のようなデジモンが多く暮らしている星だった。それでも滅びたんだ! その意味がわかっていってるのか!?」
やっぱり、スケールが大きいよな。『たった』2000年後って……俺達人間からすれば、だいぶ先って感じるんだよな、実際には。
ただ、ノルン様がどう考えてるのかはわからないけど、人間的な意識からなのか、他に理由があるからなのか……どうなんだろう?
「それでも、だめですね……私には先約がいます」
そう言って、俺を見た…………ああ、そっか。約束を守ってくれるんだ。あのとき言ってくれた言葉は嘘じゃなかったのか。
「彼の暮らしている世界では、この数年以内に世界滅亡の危機がなんどもやってきます……2000年後の危機はその後考えればいい」
この世界の明確な滅びよりも、俺の言った曖昧な
「────じゃあ、俺はどうすりゃいいんだっ!!!」
ガンマモンの叫びが聞こえる。
「俺を発信した故郷の星はもうなくなったはずだ。俺の知る脅威よりも先に来る滅びが近い場所があると言われた! 俺個人の力は弱くなっちまった! いったい俺はどうすりゃあいいんだ!!!」
……そうか、こいつも俺と同じだ。
自分の世界がなくなって、強くなりたくてここにきて、何もできずに苦しんで……それでも、俺と同じでこれからの脅威へと立ち向かう為の力が欲しいんだ。
「────だったら、彼と一緒に行動してみてはどうでしょう?」
ノルン様はガンマモンへと、俺へ視線を向くように促した……えっと、なんで!?
「……は? なんでこいつらと」
「おい、イグドラシル……タイトはこいつに命を狙われたんだぞ! そんなこと許すわけ────」
杖をカンと鳴らした瞬間、クロアグモンが倒れた……近くによって確認すると、クロアグモンは気絶してる。やっぱり、ノルン様も神だったんだな。一瞬で成長期を気絶させることができたってことか。
「────コホン、では仕切り直しといきましょう」
恥ずかしそうにしてるノルン様……いや、何も言わないほうがいいだろう。こちらにまで、当てつけをくらいたくない。
「彼の世界は数年以内に、世界が滅ぶ危機が何度もやってきます。そして、その世界を救う為に彼は今ここで修行を行っているのです……彼の近くにいれば、世界滅亡レベルの危機や強敵達と戦うことができるということです」
「────っ!?」
ガンマモンはその言葉にハッとして、こちらを見た。うん、ハッとしないでほしいかな。俺の世界は危険だってことを再認識したくはないからね。
「それにあなたはまだ成長期……究極体になるまでまだ先です。まだまだ強くなれますよ」
「────それなら」
「ええ、そうです。強くなったあなたなら、『全てを喰らう者』を相手にできるかもしれませんね」
そう言って、イグドラシル様が去った後、グルスガンマモンは俺達と一緒に行動するようになった。
2011年 7月10日
「タイト、あなたのデジヴァイスicの解析が完全に終了しました」
「これにより、あなたが世界に帰る方法が見つかりました」
「ここであなたにクエストを依頼します」
「本当にあなたの世界に『危機』が訪れるのか調べてきてください」
「本当に危機が訪れるのであれば、私達は全力を尽くしてあなたを手伝いましょう」
「……そして、『これ』と『────』を」
「それでは、あなたのこれからの道行に幸がありますように」
新たに発見された非常に珍しい白く幼い角竜型デジモン。ガンマモンへの進化は“銀河系外の宇宙から飛んできたデジタル信号”と関係があると言われている。額から生えた硬質の二本ツノは攻防に役立つ武器だ。背中の小さな羽で体を浮かせ、少しだけ飛ぶこともできる。感情を出すことは少ないが、心を通わせると少しずつ懐いてくれるようだ。
必殺技は、二本ツノで突進する『ホーンアタック』。さらに力を溜めた左手のツメで放つ『ブレイクロー』も強力な攻撃技だ。
『デジモンゴーストゲーム』
2021年10月3日から2023年の3月26日まで放送していた、デジモンの最新作アニメ。主人公の天ノ川
他のデジモンのアニメ作品とは違い、殆どの話の舞台は人間の世界での物語であり、デジタルワールドへと行くのは最終章の数話だけである。また、他作品とは違いホラーチックに話が進んでいき、主人公のじかんが奪われる、ヒロインキャラがヤモリになる、サブ主人公が三途の川に連れていかれかける……など、子供向けとは思えないストーリーになっている。