2011年 7月10日 朝5時30分
「……というわけで帰ってきたぞ。リアルワールド!!!」
ミレニアモンに乗ってはや数日、ノルン様の解析の結果からルートを逆算、そしてようやくたどり着いた俺の故郷……リアルワールド。
「こんな短時間で戻って来れるとは思ってもみなかった」
「うん、そうだね。こんなにはやく着くなんて思ってなかったよ」
太陽が登り始めた朝早い時間。それでも俺は懐かしさのあまり泣きそうになった……デジモンのいない世界って、こんなにものどかなんだ。
イグドラシル城の城内じゃないのに、外を出歩いていても警戒する必要がない。刀や剣、果ては恐竜といった危険生物が目に入らない……なんて平和なんだ!!!
「ここが、タイトっちの故郷。話に聞いてたより、なんか閑散としてるっすね。ライトシティに比べれば発展してないけど、それでも発展してるって思ってたっす」
チューモンの一言で、固まる俺とクロアグモン……そう、ここは俺の住んでいた都会ではない。見渡す限り、山、山、山……山梨県にあるど田舎と言っても過言ではない田舎の村、『水瀬村』山中に俺達はやってきているのだ。
「……チッ、ここはタイトの暮らしてた家がある街じゃないよ」
「────ハァっ!? じゃあ、なんすか? また、タイトっちに騙されたんすか?」
チューモンの言葉に苛立って返すクロアグモンに、喧嘩を売られたと思って怒鳴り返すチューモン……こんなところまで来て喧嘩すんなよ。
俺はクロアグモンとチューモンが殴り合わないように、間に入ってクロアグモンを見つめる。
「クロアグモン」
「────わかったよ、タイト」
────ふぅ、喧嘩しないでほしいって、意図が伝わってよかったよ。今度はチューモンだな。
「チューモン、俺達がノルン様に頼まれたことはなんだったか覚えているか?」
「『この世界の滅亡の危機を探してほしい』ってことっすよね……それが、この田舎となんの関係があるんすか?」
関係がなければこんなとこに来ていない……と言いたくなるな。まあ、知らなきゃ、こんなとこにデジモンが現れるなんてわかるはずもないか。
「それを見つける為に俺達はここに来ている。しかも、日没までの制限つきだ」
ノルン様からこちらの世界の日没までに、証拠を集めるよう言われている。俺達の世界とノルン様の暮らすデジタルワールド、この二つの世界の時間がまったく同じであるとは言い切れない為、日没までという制限をかけたのだ。
「……少なくとも、俺達のやることは3つ」
クロアグモンとチューモンに見えるように3番の指を立てる。
「1つ目は、『ここの空間の異常の探索』」
人差し指に意識が向くように、右手の人差し指だけ立てる。
「これはこの場所にケモノガミ……というか、『デジモンの暮らしている世界が隣接している』可能性を探す為だ。これは世界の危機に直結しているから、絶対にやらなきゃいけない」
デジモンサヴァイブという作品に出ていた『水無瀬神社』……俺はこの場所を探す為に、ノルン様へ頼んでこの街を座標に指定してもらったのだ。
「2つ目は、『電脳空間EDENの存在の是非及び、
2体に見えるように右手の中指を立てる。
「これも必須事項……デジモンが見つかれば、この世界にデジタルワールドがつながっているかどうかがわかるからな。
『
「そして、3つ目……これは俺の目的だけど『俺の家族の居場所を突き止める』」
3本目の指、薬指を立てる。
「俺の家族は……たぶん、あの後に引っ越している。事件のあったマンションの近くにいつまでも暮らしてるはずがないからな。それを出来れば調べたい」
ストーカー被害にあった場所なんて、すぐに引っ越しているだろう……斉藤のおじさんと母さんにデジモンの力を見せたことがある。それを理解していれば、俺がここに戻ってきた時に、自力で探す能力があると判断しているはずだ。
「……で、このことから、俺のやりたいことがわかったか?」
2体を見ていると、2体とも頭を悩ませている……クロアグモンは何かに気がついたようだった。
「……タイトはこのことを5年前には予想していた。今は、本当に嫌だけど、証拠さえ見つければ、あの女が後ろ盾としてタイトを助けてくれるっていってた。だから、確認にこの世界へと戻ってきたんだね、タイト!」
「クロアグモン、それで合ってるよ」
クロアグモンは俺の考えがわかって、喜んでいる……あっ!?
「────へっ!」
「────ギリっ!!!」
クロアグモンがチューモンを笑い、チューモンがクロアグモンに苛立った。止めないと、やばいな。また喧嘩が始まる。
「はいはい、そこまで……ということで、俺達は二手にわかれる」
もう一度クロアグモンとチューモンの間に入り、話を進める。
「俺とクロアグモンは1つ目をやる。チューモンには2つ目と3つ目を頼みたい」
「やった────!」
「────ハァ? なんでオイラがタイトっちと一緒じゃないんすか!?」
クロアグモンがその場で立ち上がって喜び、チューモンが俺に抗議する。
「そんなの、決まってるよ! タイトが僕をパートナーに選んで、お前を────」
「はいはい、クロアグモン……話が拗れる! そこまでにしとけ!!!」
はーい、とクロアグモンが不貞腐れたように言う……たっく、チューモンとクロアグモンの仲はここ3年で本当に酷くなっている。昔はクロアグモンがチューモンに一方的に絡んでただけなのに、最近ではクロアグモンは煽ったり、喧嘩売ったり本当に酷い。
「それで、なんでオイラが別行動なんすか?」
クロアグモンを無視して、話を進めてくれる…… チューモンはあまり気にしてないのが、結構ありがたかい。
「ミレニアモンに進化できるクロアグモンは、空間を自在にコントロールできる。だから、1つ目の仕事はクロアグモンの力が必要なんだ」
「2つ目と3つ目はネット内に入って、情報を集めなきゃいけない。チューモンと二手にわかれることで、時間の短縮を狙いたい」
「時間の短縮?」
チューモンが時間短縮について聞いてくる……ああ、ちょっと恥ずかしいんだけどな。
「……つまり、お前が頑張って2つ目と3つ目を早く調べ終われば、俺が家族に会う時間が増えるんだよ。俺にとっては……正直、家族に会えるほうが嬉しい」
「にひひ、なら頑張って調べてくるっすね」
その言葉ににへっと笑ったチューモン……やっぱり、恥ずかしいな。気を紛らわすように、俺は持ってきたリュックの中から携帯電話を取り出した。
「ツルギさんに言って買ってきてもらった携帯電話だ。ノルン様がネットへのアクセス権を強制的にハッキングして、EDENの空間へと道をつくってくれる。道に沿って行けば、そこからは電脳空間内での情報が集まっているところに行けばデジモン関連の存在には出会えるはずだ」
「にひっ、わかったっす」
俺が恥ずかしがってるのに気がついたのか、少し笑ってから携帯電話の中へと入っていった。
「じゃあ、行ってくるっす!!!」
「頼んだぞ!」
そう言って、携帯電話のネット内へと消えていったチューモン。
「……さて、クロアグモン」
「むぅ、なんだよぉ、タイトぉ?」
……あれ、なんだか不貞腐れてる。地面に寝っ転がって、ものすごく不機嫌そうだ。怒鳴ったのがそんなに悪かったかな?
「そんなに怒られたのが嫌だったのか?」
「別に、怒ってないからね!」
そんな大きな声で言われても、説得力がないんだけど……まあ、いいや。
「怒ってないならいい……それで、クロアグモン山の中を歩いてみてどうだった?」
明らかに怒っているのに、怒ってないって言ったんだ……こっちの話を進めさせてもらおう。
「別に、気にするほどじゃないんだけど……やっぱり、違和感は感じるかな? だいたい、山の中に違和感があるっていうより、僕達が下ってきたこの道路を登った先のほうが気持ち悪い感じがする」
クロアグモンは顔を歪めてそう言った……やっぱり、この空間に違和感は感じたのか。それよりも気持ち悪い感じってなんだろう?
「気持ち悪いってのはどんな感じなんだ?」
クロアグモンは俺の質問に悩んでいるようで、腕を組んで考えている。
「うーん、なんて言えばいいんだろ……なんか、こう……山の上のほうだけ、2つの空間が混ざってるというか……もともと空間に穴が開いているところに、周りの風景を貼っているというか……なんて言えばわからないけど、いろんな気持ち悪いものが上のほうにある」
クロアグモンの言ったことを考えてみる。
混ざってる……これは、ケモノガミの世界と
貼っている……こっちは
実際に見てみないとわからないかな。ただクロアグモンのこの様子だと、ケモノガミの世界は本当に存在してそうだ。
携帯電話を見ると朝の7時過ぎくらいになっていた……日没まであと11時間くらいある。まだ時間がだいぶあるな。
「もう一度この山道を登ってみる」
「────タイトっ!? 本気で言ってるの!? 空間に穴が空いてて、危険なんだっ! 今すぐに別の場所で証拠を集めればいい」
クロアグモンがここまで言うってことは、本当に危険な行為なんだろう。それでも、クロアグモンの違和感の正体を、写真だけでも撮っておかないと意味がない。
「本気だ、実際に証拠を手に入れないと話にならない。それに俺にはお前がいるからな……今でも甘えているが、もう少し頼っていいか?」
俺に頼られたいクロアグモンの気持ちを利用するようで悪いが、少しでも証拠が欲しかった。
「……わかった、少しだけだからね」
しぶしぶといった様子で、頷いたクロアグモン……こいつにはいつも甘えてばっかだな。
「……登るか」
山道を登り始める……とはいっても、車がほとんど通らない道路をひたすら山の上へと向かって登っていくだけだ。
5分ほど山を登り始めると、クロアグモンの言っていた違和感に気づき始める。
「……セミの鳴き声が聞こえない?」
こんな山奥の中で、セミの鳴き声が聞こえないのはおかしい……というより、虫の鳴き声や羽音が無く、気配を感じられない。
「……タイトも気づいた? ここより先の空間から、生き物の気配がまったく感じられないよ」
「────ッ!?」
クロアグモンの言葉に静かに驚いた。クロアグモンは俺の隣で明らかに警戒をしていた。
「……この先に何か……っ!?」
「────何、あれ?」
そこには、トンネルがあった……たしか、ゲームの序盤に出てきた……
「────タイトっ!!!」
突然、クロアグモンの声が聞こえたかと思ったら、トンネルから数十メートル程クロアグモンに連れられ、離れていた。
「────っ!? なにっ!? いったいどうした!?」
クロアグモンのほうを確認した時、クロアグモンが冷や汗をかいている。
「……タイト、ここだめだ」
「ここ、かなり空間が歪んでる……たぶん、
「…………は? いや、なに言ってんだよ。あのズィートミレニアモンでも戻れないって、そんなことあり得るのか?」
クロアグモンが言った言葉に、一瞬時間が止まったように感じる。
「ここの空間、二つの世界が捻じ曲がってたり、反発してたり……とにかく、おかしいっ! 悪いけど、そんなところにタイトを行かせるわけにはいかない」
行かせるわけにはいかない、か……なら、どうすれば証拠になるんだ? とりあえず思いついたことをやってみるか。
「クロアグモン……この空間のおかしさを写真に撮ることはできるか?」
ただの思いつきをクロアグモンに頼んでみる。
「わかった、試してみる……『ベビーフレイム』!」
クロアグモンは、トンネルの辺りに『ベビーフレイム』で攻撃する……と、
「────やった!」
クロアグモンの火球が、トンネルの前になにかしらの壁にぶつかって消えてなくなった……あの場所になにかある!?
「タイト、もう一回行くよ!」
「ああ、わかった!」
クロアグモンの言葉に、俺は携帯を構えて録画機能のスイッチを押す。
「『ベビーフレイム』!!!」
「────っ!?」
空間が歪み、道路の上から塗りつぶすように森の道が現れる。しかし、数秒の間に元の風景へと戻ってしまう。
「タイト、どうだった?」
携帯の動画の確認を急いで行う。携帯の録画場面を再生すると、先程の空間が歪む場面が映像として流れ出した……これなら、証拠として十分だ。
「……大丈夫、うまくいった」
「────やっ、────!?」
────タッタッタッタ。
俺達が声を上げようとした時、トンネルのほうから足音が聞こえる。すぐにクロアグモンへ『キャプチャー』機能を使ってクロアグモンをデジヴァイス内に収納する。
(クロアグモン、悪いけど人間に見つかると困るから、デジヴァイスの中に入っててくれ)
(わかってる……だけど)
(人間じゃなかったら、どうすればいい?)
クロアグモンは状況を理解してくれた……でも、人間じゃなかったら、か────急いで考えをまとめ、クロアグモンに伝える。
(人間だったらこのまま出てくるな……ただ人間じゃない可能性もあるから、戦闘準備を────)
トンネルから駆け足でやってくるその音に、俺とクロアグモンの緊張が走る。
(────タイト……!)
(……頼む、人間であってくれ)
────トンネルから出てきたのは、
(────っ!?)
1人の中年の男性だった。
「────っ!? 少年、こちらに火の玉、もしくは森みたいな幻覚が見えた気がして走ってきたんだが……」
(────っ、この人は!?)
少し白髪の混じった黒髪、白いサファリハット、口元を覆った髭……デジモンサヴァイブで出てきた『教授』だと思う。見た目から判断すると、原作より数年ほど若く、50代前半ぐらいに感じる。
「────おおっと、すまない。いきなりこんなことを言われても怪しいと思うが、私は近くの大学で教鞭を振るっている水無瀬アキハルというものだ」
そう言った教授……やはり、デジモンサヴァイブの登場人物であっっていた。
(……大丈夫、この人は人間?)
クロアグモンがデジヴァイス越しに、こっそりと様子を聞きにきた。
(今のところは大丈夫……だけど、俺以外の人がいる場所で、絶対に出てくるなよ)
クロアグモンに、大丈夫だと伝えていると……
「────すまないっ!? 本当に怪しい人物ではないんだっ! そうだ! ここに連絡を入れてくれれば、身元を証明して────」
……あれ、教授なにか焦ってない?
教授はゴソゴソと胸ポケットを漁ると、一枚の名刺を出してきた。
[水無瀬アキハル][────大学教授]
そう書かれた名刺を渡される……いやいやいや、この人、俺が教授のことを不審者だと思ってるって勘違いしてる!?
「────ああ、すみません……ただ、トンネルのほうからいきなり走ってきたのでびっくりしただけです! 別に怪しいって思っていませんよ」
急いで誤解を解く……今日の俺は運がいい。この人にはどうしても確認したいことがあるから。
「む、ならいいのだが……では、改めまして」
「私は『────大学』で教授をやっている水無瀬アキハルだ。私は主にこの土地の伝承について調べている」
仕切り直すように、改めて自己紹介をする水無瀬教授……俺も、話さないといけないが……なんて言えばいいんだろう?
「…………」
ここら辺は昔は子供が行方不明になることが頻繁にあった土地だ。きっと、地元の子供なら近寄ることはないだろう。そんな場所に立っていた子供が、ただの子供がいる場所じゃない。
「…………」
「……えっと?」
そもそも、俺は本名を言っていいのか? 母さんが積極的に俺を探していたら、行方不明の子供が見つかったということで捕まりかねない……よし、偽名を使おう。
「大丈夫かい?」
「────っ!? あっ、はい大丈夫です」
「……なにか悩んでいるようだったからね……自分の事を話したくなければ言わなくていいんだよ
俺が考え事をしている間、教授は俺が話すのをずっと待っていてくれたのだろう。急いで話さないと……俺は人に見つかったときのための、経歴を思い出しながら言う。
「────いえ、本当は悪いことをしてたんで、言いづらかったんです」
悪いことを見られて、少し言いづらそうに、申し訳なさそうに言うことで、子供っぽく演じる。
「悪いこと?」
俺の言葉にちょっと訝しむ教授。それでも話は聞いてくれそうだ。
「俺の名前は『
本当の言葉の中に嘘を混ぜる。
保護者は美樹原という苗字だし、年齢はそのまま、中学生になるつもりではいる為嘘をついてはいない。
「実を言うと、親に内緒で俺は県外から来てて……バレると困るんです」
そう言って、子供らしく頭をかく動作をする。県外……というより、この世界の外から来たのは事実。そして、親に存在をバレると困るのも本当。嘘はほんの少しだけ混ぜる。これで騙せるはずだ。
「────ハハハッ! なんだそんなことか……私の子供の頃にもそんな子供はそこらじゅうにいた。そんなことは気にしなくてもいい」
快活に笑うその姿にホッとする。ノルン様にはすぐに演技だとバレてしまったから、正直に言って心配だった。
「それで、なぜこんな村に来たんだい? この村は見た通りなにもないよ」
「俺は来年からとある中学校に通おうと思っています。その中学校の歴史研究の課外キャンプの場所がこの『水無瀬村』って聞いて、自由研究がてら調べ物をしにきたんですよ、……そしたら、この付近で『約40年前に行方不明事件』があったことと、飛鳥時代あたりに作られた不思議な遺跡があるって聞いて、関連があったらおもしろそうだなって思って、見にきたんですよね」
昔調べた資料の中に、デジモンサヴァイブの原作で出てきた主人公が通っている中学校があったはずだ。それを理由にすれば、納得してもらえるはずだ。
「……ふむ、40年前の事件……か」
なにか考え込む様子の教授……確か原作の中盤まで実の姉が50年前の行方不明事件で失踪していたことを忘れてるんだっけ? ……これは余計な地雷を引いたかな?
「なにか知ってることでもあるんですか!?」
教授が考えている様子を見て、子供らしく聞いてみることにする。そっちのほうが子供の無神経さを演じられるはずだ。
そう話を聞いてみると、教授は首を振る。
「いや、少なくとも事件のことはなにも
────ビクッ!?
一瞬ポケットの中に入ったデジヴァイスが振動した。クロアグモンが大きく反応している。そうだよな、ここに入ったら最後、あの森の中に入ってしまう気がする。
「いえ、少し中に入ったときに鳥居が見えたので、神聖な場所だと思って、入るのをやめたんですよ」
「別にそんな場所でもない気がするが……そういえば、トンネルの先に寂れた神社が建っていた気がする」
そう言って、深く考え込む教授。そういえば、原作ではこうやってなんども考え込む様子が描かれてたっけ……そう思うと、ちょっと懐かしい気持ちになる。
「────おおっと、すまない……また、やってしまった」
それからだいたい1分ほど考え込む教授だったが、教授を見続ける俺にようやく気がついたのかこちらへと向いて謝った。
「本当にすまない。昔からの癖でな……こうやって気になることがあるとすぐに考え込んでしまうのだ」
「いえ、大丈夫ですよ……それより、なにか気になったことでも?」
約40年前の記憶が戻ったのかもしれないと思って聞いてみた。
「懐かしい気持ちになってね。思い出そうとしてみたんだ」
「だが、思い出せなかった……きっと、なにかあるんだろう」
最初は笑っていたけど少しずつ寂しげな表情に変わっていく……やっぱり、行方不明になった家族のことを思い出せないのか。
「また、調べてみることにするよ……そうしたら、思い出せるかもしれない」
「そうですね、思い出せるといいですね」
希望を持ってくれるのは嬉しかった。ケモノガミの世界にいる彼女も、きっとはやく見つけてほしいと思っているはずだ。
「そんなことより、少し時間はあるかい?」
「……ん、どうかしたんですか? まだ朝なんで時間はありますが?」
なにかあるんだろうか?
「いろいろと驚かせてしまったみたいだからね。自由研究に使えるかもしれないと思って、私が今調べてきた遺跡の写真を、渡してあげようと思ったのだよ」
そう言って、教授がスマホのアルバムを見せた。
「────うわぁ!!!」
中に入っていたのは、アグモンの絵が描かれた壁画の写真……これ、めっちゃいい! ノルン様へデジモンの証拠として、これ以上のものはない!!!
「喜んでもらえてよかった……うちに来たら、もっと写真があるのだが────」
「いきます! これみたいな写真がもっとほしいんです!!!」
やった、これ以上ない証拠……これなら、ノルン様も絶対に動いてくれる。きっと、他にもいろいろな写真があるはずだ。絶対に俺の手助けをしてもらう。絶対に絶対に────
「……にへへへへ」
スマホから俺の携帯電話へと写メが送られてくる。それを見て、嬉しさで頬が緩む。これで一つ目の目的は達成だ。
「……まあ、喜んでくれるならよかったよ」
……なんか、教授の声が引いている気がする。それよりも、壁画の写真だ。さあ行こう、すぐ行こう!
「……ちょっと待ってくれ」
俺が下山しようと道路の方を向くと、教授が止めてくる……なんだろうか?
「今から、教授の家に向かうところなんですけど、なにかあったんですか?」
教授は背中に背負ったリュックをゴソゴソと漁り始める。
「いやなに、日がだいぶ登ってきたみたいだからね────こんなものを渡そうと思ったわけさ」
そう言って手に持っていたのは缶のコーラだった。
「────えっ!? 本当にもらっていいんですか!?」
「いいんだ、こんなおじさんの話を真面目に聞いてくれる人はいなくなってしまった。そんななか君は目を輝かせて聞いてくれるんだ。それだけで嬉しいかったんだ……そのお礼だよ」
そう言われて、教授が学会から異端扱いされていたのを思い出した……そうか、ケモノガミの事件が起きるまで、この人は1人で頑張ってたんだよな。
「ありがとうございます」
そう言って、コーラを受け取って蓋を開ける……現実世界の食べ物なんて何年ぶりだろう? ひさしぶりにコーラを飲めるだけでも嬉しかった。
……そうして、口につけたとき、
「────くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
水?
H2O?
カラメル?
レモン?
カフェイン?
カシア?
『デジモンサヴァイブ』
主人公『
そこには『ケモノガミ(デジモン)』と呼ばれる者達が住む異世界で、タクマをずっと待っていたというアグモンと出会うことから、話が始まる。
延期につぐ延期で、ながらく発売されず、2022年にようやくゲームが販売されたデジモンの最新作です。話の内容は暗く、喧嘩したり、すれ違ったり……仲間がどんどん死んでいきます。気に入らないやつから、好きになったキャラまで、死んでしまいます。そんな暗いストーリーですが、『真実』のエンディングを迎えることで、私は最終的におもしろいと思いました。
気になったのであれば、ぜひ買ってみてください!!!