産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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エピローグではなく、2.5章スタートです。なかなか上手く書けなかったので、文章量は少ないですが、よろしくお願いします。


2.5章 電脳獣 上

 

 2011年 7月11日 23時30分頃 壱護プロ

 

 仕事が終わり、車で走って30分……ようやく駐車場に着いた。

 

「ア゛────ッ、ようやく終わった────ァ!!!」

 

 車から出て、背伸びをする…………宣伝、ドラマ、ロケにCM……この半年間まともに休む暇がなかった。

 

「────ンっ、お疲れ斉藤さん! ようやく終わったね! これで明日からは休みだよっ!」

 

「……アイ、てめえのわがままを聞いてこんなことになってんだぞ!!!」

 

 ピーマン体操によって、アクア×有馬かな……通称アクかなが大ヒット……アクアがようやく稼ぎ時になったってのに、アイがわがままを言って明日からの1週間を休みにするためにぶっ通しで働かされ続けた。

 

「アクアがようやくうちの看板になったってのによお……」

 

「いいじゃん、いいじゃん! 明日からはゆっくり休めるよ!」

 

「……それはお前だけだろぉ」 

 

 のうてんきなアイの姿を見ると泣けてくる……こいつのせいで、俺の仕事は山のように増え続けている。今回の月9でアクアを使いたいって番組からの依頼やCM、アイの新曲の発表に某歌番組に出演、果てはEDEN公式のPV撮影だって依頼されてたはずだ……こいつのせいで休む暇がねえ!!! 

 

 疲れ果てた体で玄関へと向かう俺と、明日の休みのことで頭いっぱいなアイ……なんでこんな仕事を俺はやってるんだろ? 

 

「……だああああ────っ!!! もういい、今日はもう寝るっ! 明日のことは明日ァ────!!!」

 

 

 

「いいえダメよ」

 

 

「「…………えっ!?」」

 

 ヤケになって叫んだ言葉を、玄関前で腕を組んで待っているミヤコが否定した……えっ、俺なにか悪いことしたか? 

 

「アクアもルビーも待っているわ……はやく来なさい」

 

 そう言って、玄関の中へと入っていくミヤコ……アクアとルビーが起きているってどんな状況だ? 

 

 ミヤコの背を追って玄関に入っていく。

 

(ねえ、斉藤さん……いったいなにが起こってるの?)

 

 ミヤコに聞こえないようにアイが聞いてきた。

 

(俺にもわからねえ……アイは何か知ってるか?)

 

(ううん、わかんない)

 

 常日頃から夜更かしは美容と健康の天敵だからと口を酸っぱくして言っていたミヤコが、アクアとルビーを起こしていることに驚きを隠せなかった。

 

「アクア、ルビー……アイが帰ってきたわよ!」

 

「────えっ、ママが!!!」

 

「────ようやく帰ってきたの?」

 

 アクアとルビーがリビングで待っていた……ミヤコのやつほんとに起こしてやがったのか! 

 

 アクアとルビーが椅子に対面して座っている……珍しいな、最近はあまり一緒にいなかったのに、こうやってアイの家族3人が揃うのが久しぶりに感じる。

 

(……箱?)

 

 テーブルの上には1つの立方体の黒い箱と紙袋が置いてある。箱がだいたい時計が入っているぐらいの大きさで、袋はその箱が入るぐらい……手提げバッグぐらいの大きさ……それがなにか関係しているのだろうか? 

 

「ちょっと、飲み物を持ってくるから待ってて」

 

 ミヤコは俺達全員に長い話があるみたいで、飲み物を用意しに行った。

 

(────アクアっ、お前なにか知ってるか?)

 

 俺はアクアの横に座りながら、ミヤコに聞こえないように耳打ちする。

 

(……わからない、俺もルビーも、『アイが帰ってくるまで、起きて待っていて』としか言われてない。それにあの箱の中身はなんなのかも説明を受けていない)

 

(……ルビーは?)

 

 アイはルビーの隣に座ったみたいだ。ルビーにも、話を聞いてみるようだ。

 

(────ううん、わかんない。6時過ぎくらいに、なにも言わずに家から出てって、7時過ぎにミヤコさんが帰ってきた時、その箱を持って帰ってきたんだ)

 

 6時ってえと、俺達のロケが終わった時だったよな……確か、連絡は送ってたはずなんだけどな。

 

(────アイ、あの時俺はミヤコに連絡してたよな)

 

 ロケが終わった時に、アイが無事に終わったことをいつまでも連絡しないから、あのとき、俺がしぶしぶミヤコに連絡した。

 

(うん、してた……『無事に終わったって連絡ぐらいしろ』って怒られたもん)

 

 アイにも確認が取れる。

 

(じゃあ、その連絡の後に問題が発生したってことなんじゃないか?)

 

 アクアの言ってることは正しい……でも、

 

(でも、問題だったらすぐに壱護さんに連絡するよねっ!)

 

 ルビーが言ったように、仕事で問題があったらすぐに俺に連絡するように言ってある……それに緊急時の連絡用にスマホも渡してあるはずだった。

 

(スマホ……『ネットにつながっている物で壱護さんに連絡したらいけない問題』だったんじゃないのか?)

 

『ネットにつながっている物で壱護さんに連絡したらいけない問題』……そんなこと、うちの事務所にはもうないぞ!? 

 

 アイの隠し子の件はもう世間に公表されている……それ以外に後ろ暗いことなんてうちの事務所にはないっ!!! 

 

 ……でも、それならミヤコの行動にも納得できる。

 

 ・6時過ぎに突然、家から出て行ったこと

 

 ・7時過ぎに黒い箱と紙袋を持って帰ったこと

 

 ・アイが帰ってくるまで、アクアとルビーを起こしていたこと

 

 なにかなきゃおかしいって……と言いたくなる。

 

 ポット内の水が沸騰する音が聞こえた。もうすぐミヤコが戻ってくる。

 

(……本当になにがあったんだよ!?)

 

 

 

 

「はい、お茶、ぺちゃくちゃ喋ってないで、話をするわよ」

 

 お茶を持ってきたのはいいけど、私はなにを話せばいいの!? 素直にタイトから連絡があって、少ししか話せなくて、黒い箱を押し付けられたって言えばいいの!? 

 

 そんなのアイに怒られるじゃないっ!? 

 

 もう、どうしたらいいのよっ!? 

 

 みんなの顔がこっちに向く……ええいっ! 覚悟を決めろっ、ミヤコ!!! 

 

「それでは、話を始めます」

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()

 

 

「「「────っ!?」」」

 

 

「────っ、ねぇどこ! タイトはどこにいるのっ!!!」

 

 

 

 いきなり、立ち上がったアイに両肩を掴まれる。

 

「なんですぐに教えてくれなかったの!? タイトからなにを言われたのっ!? なんで私に話をさせてくれなかったの!? 」

 

 アイが私の肩を掴み、私の体を揺らしながらなんどもなんども質問する。その顔には少しずつ涙が浮かんでくる。

 

 

「────どうして、タイトは私に連絡してくれなかったのっ!!!」

 

 

 そう言って、アイは泣き崩れてしまう……そんなの、私だって言いたかったわ。

 

「……ママ」

 

 ルビーがアイに寄り添う……壱護もアクアも驚いた様子でこちらをみている。

 

「……なあ、本当にあいつから────タイトから連絡があったのか?」

 

「────ええ、あったわ」

 

「ミヤコさん……ほんとうにタイトでしたか?」

 

 壱護とアクアにそう言われるが、あの電話先の少年は間違いなくタイトだった。

 

「私とルビーとアクアしか知らないことを知っていたわ……なにより、これが証拠よ」

 

 そう言って、袋の中からアイに封筒を渡す。白い便箋に入った封筒……中身はまだみていない。

 

「……なに、これ?」

 

「タイトが置いていったものよ……それを置いた場所の説明だけして、電話が切れたの。本当なら、もっと話がしたかったけど、本人曰く『時間がない』って言っていたわ……タイトはこれを渡すので精一杯だったんでしょうね」

 

 アイは私の言葉を聞いてすぐに便箋を開ける。

 

 その中には手紙が一枚入っていた……5人でその手紙の中身を見る。

 

『親愛なる家族へ

 

 この手紙が送られているということは、時間がなくてあなたがたに出会うことができなかったのでしょう。

 

 話したいことは山ほどありますが、まずは下記の通りに行動してください

 

 1.黒い箱を開ける

 

 2.中に入っている『デジヴァイス』を、母さんの左腕につける。

 

 3.付属のDIMカードを『デジヴァイス』に挿入

 

 以上のことをお願いします

 

 星野ターフェアイトより』

 

 

 ……文章内容はたったこれだけだった。

 

「……これだけ?」

 

 8年近く会っていない家族へと送る手紙の内容としてはあまりにも、言葉が足りていなかった。

 

「なんだこりゃ……あいつはなに考えてやがる。こいつは────って、アイ!?」

 

 アイが急いで黒い箱の中身を開け始める。

 

「────ママっ、なにやってるの!?」

 

 中に入っていたのは、スマーフォ・ウォッチのような、時計型のデジヴァイス……アイはそれを左腕につけ始める。

 

「タイトが私に贈ってくれたもの……それになにかきっと意味があるはずだよ!!!」

 

 そう言って、手紙に書かれた手順通りに左腕につけたデジヴァイスにDIMカードを差し込んだ────瞬間、

 

 

 

「「「「────っ!?」」」」

 

 

 周囲がアイドルのステージのような観客席のホログラムが現れる。壁には星空を模したホログラムが光っており、天井には大きな天の川が流れている。

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────!?」

 

「────えっ!? 誰っ!!!」

 

 部屋の隅から突然、透明な黒い影が現れる。

 

「……あ゛? 誰とは失礼だな……おい、そこのお前っ!」

 

「────は、はい!?」

 

 170cmぐらいの全身真っ黒な人型がアイに向かって、声をかける。

 

「デジヴァイスの2つ目のボタン……下のボタンを押せ」

 

 黒い影はアイに向かってそう言った……なんなのよ、こいつ!? 

 

「────わかった」

 

「────アイっ!?」

 

 なんの躊躇いもなく、アイは黒い影の言うままにボタンを押す…………そうすると、透明だった姿は少しずつ肉体へと変わっていく。

 

「……シンクロ完了────俺の名前はグルスガンマモン」

 

 黒い影は完全な人型のトリケラトプスのような、黒い着ぐるみのようなそんな化け物が姿を現した。

 

「────タイトのメッセンジャーだ」

 

 

 




『全てに終焉を齎す者』

アニメ『デジモンゴーストゲーム』及び今作品にて『2000年後』にこのデジタルワールドと地球へと現れるとされる地球外生命体。その姿及び、経歴は一切明かされず、ただ、グルスガンマモンの故郷の星に終焉を齎したとされている。

アニメでは設定すら明かされなかったため、今作品での登場は未定。
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