産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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2.5章 電脳獣 中

 

 

 

「「「────メッセンジャ────ーァ!?」」」

 

 

 

 目の前にいる黒い獣……グルスガンマモンはそう言った。

 

「言っとくが、タイトはてめえらについてある程度説明を受けている」

 

 グルスガンマモンは三本ある指を斉藤さんに向けて、

 

「てめえが『斉藤壱護』……タイトの言っていた『おじさん』で、壱護プロの社長」

 

「────えっと?」

 

 次にミヤコさんへと指を差した。

 

「次にあんたが『斉藤ミヤコ』。タイトのベビーシッター」

 

「────ベビーシッターって!?」

 

 ベビーシッターと言われたことにミヤコさんが怒る。

 

「てめえらが、アクアとルビー……タイトの兄姉で……これはまあ、言わなくていいか」

 

 アクアとルビーをそれぞれに指を差した後、言葉を濁す……アクアとルビーになにかあるのかな? 

 

「────そして」

 

 最後に私に向けて指を差した。

 

 

「てめえがアイ……タイトからあんたたちを守れって、言われてんだ……力を貸せ」

 

 

 ────今、なんて言ったのかわからなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして、グルスガンマモンの言葉を10数秒程頭の中で繰り返して、初めて理解できた。

 

「────えっ、私っ!?」

 

「……そうだ」

 

 グルスガンマモンは頷く……タイトはグルスガンマモンに守れって言ったんだ……そう、そっか。

 

 8年程会えなかった子供が、私のことを忘れていなかったことがとてつもなく嬉しくなった。

 

「……ちょっと待ってくれ、タイトはなんでお前に『俺達を守れ』って頼んだんだ? なにか危険なことでもあるのか? あの資料となにか関係があるのか?」

 

 グルスガンマモンの言葉にアクアはなにが危険なのか聞いた……そっか、タイトが危険だって言ってるけど、8年間はなにもなかったんだし、そもそもなにが危険なのかわかってないんだった……タイトはなんでこの子を送ってきたんだろ? 

 

「────は? そりゃあ、タイトがこの世界が2度も滅ぶ危機にあるって言ってたぞ!?」

 

 ……世界の危機? 

 

 世界の危機!? 

 

「────はあ!? おい、なんだよそれ! この世界が滅ぶってどういうことだよ!?」

 

「────えっ、ほんとに言ってんの!? 贄とか書いてあったけど、それってタイトの妄想とかじゃないの!?」

 

「……ははは、まさかカミシロが関わってるっていうわけないでしょうね!?」

 

 斉藤さん、ルビー、ミヤコさんの順に叫び出す……本当に『贄』だとか起こるってタイトが思ってるってことなのかな? 

 

「……はあ────アイ、タイトはそんなことも教えてねえのか?」

 

「うん、タイトが残した資料に書いてあること以外知らない……アクアあれ持ってきて」

 

 アクアに頼んで、管理していた『タイトの調べ物に書かれた資料』を渡す。

 

 ペラ、ペラとグルスガンマモンが資料を読み、ひとつため息を吐いた。

 

 

「…………つまり、タイトは俺達のことをなんにも教えてなかったってことだな」

 

 

 眉間に皺を寄せ、ものすごく怒ってるって雰囲気でいるグルスガンマモン……なんか、うちの子がごめんなさい。

 

「……まあ、いい────おい、そこのおっさんヤクザ!」

 

 グルスガンマモンが斉藤さんに声をかけた……って、おっさんヤクザ!? ひどい言われようだけど、見た目通りだ。なんかおもしろい。

 

「だから、そんなことよりカミシロのことを報道してだな────って、誰がおっさんヤクザだっ!!!」

 

 斉藤さんが怒ったことで、ルビー達が驚いたようにこっちへ向いた……驚いてるってことはルビー達だけでさっきの話を続けてたってことかな? ルビー達、まだ慌ててたんだ。

 

「んなことどうでもいいじゃねえか……それより、あんた達は俺達のことをどれくらい知ってんだ?」

 

「……お前達? そもそもお前達ってなんなんだ? コロモンとなにか関係があるのか?」

 

 ……ボタちゃん、黒い毛玉の不思議な生き物を思い出す。途中で、ピンク色に姿が変わったんだけど、それが世界の危機となにか関係があるのかな? 

 

「……コロモン?」

 

 グルスガンマモンはコロモンと聞いて、首を傾げる……ボタちゃんのことがわからないのかな? 

 

「タイトの近くにいた黒い恐竜のことだ。俺達はそれが、インターネットを自由にできることと、現実で人を骨折させられるほどの泡を出したり、炎を吐いたりすることしか知らない」

 

「黒い恐竜……ああっ、クロアグモンのことか!!! なんだあんな化け物にも弱かった頃があったのかよ」

 

 クククと笑うグルスガンマモン……それより、クロアグモン? ボタちゃんが最後に姿が変わったときの、あの黒い恐竜の姿のことなのかな? 

 

「それだ、それで合ってる……ってか、タイトは俺達『デジモン』のことについてなにも話してないってわけか」

 

 ……デジモン? 

 それが、ボタちゃんやグルスガンマモンの種類の話なのかな? 

 

「────なあ」

 

「デジモン……ってえのは」

 

 アクアが話だそうとした時に、グルスガンマモンがデジモンについての話を始める。

 

「電脳世界……『デジタルワールド』に住む生命体のことだ」

 

「────ちょっと待て! まずは、デジタルワールドってのは、電脳空間『EDEN』となにが違うんだ!?」

 

「全っ然違うなっ! そもそも、『EDEN』は人間がつくった世界だろうが……デジタルワールドってのは、人間がつくった世界じゃなく、デジモン達が住む完全な異世界のことだ」

 

 異世界……なんか話が壮大になってきた。

 

「それはおかしくないか? ならなんでデジモンが人間が考えたような、テンプレートな恐竜の姿だったりするんだ?」

 

 グルスガンマモンの話に、アクアが質問する……むむ、確かに。

 異世界だっていうなら、なんでボタちゃんは恐竜の姿になったんだろう? 

 

「……それについてはわからねえが、少なくともデジタルワールドはお前達が生まれるより遥か前には存在していたって、タイトは言っていた」

 

『タイトが言ってた』……グルスガンマモンはそう言った。

 

 タイトはなにを知ってるんだろ? 

 私の産んですぐの頃から、ボタちゃんのことを理解していた。ならいつボタちゃん達のことを、知ることができたんだろ? 

 

「────他に聞きたいことは?」

 

 グルスガンマモンがアクアの質問を無理矢理切って、次の質問にうつろうとする。

 

「待て、俺の質問に────」

 

「────はい、はーい!」

 

 アクアがさらに聞こうとするけど、その途中でルビーが手をあげた。

 

「アクア、俺にだってわからねえことはあるぞ────タイトが戻ってから聞いとけ……ルビー、なんだ?」

 

 タイトにぶん投げやがったって、聞こえそうな顔で口をぱくぱくさせるアクア……ちょっと今の顔は可愛かったな。びっくりするアクアなんて、滅多に見られないし。

 

「そもそも、デジモンってなに!?」

 

 ルビーがもう一度デジモンについて聞いた。

 

 アクアが話を変えたせいでわからなくなってたから、私もその話が聞きたくなった。

 

「デジモン……正式名称は『デジタルモンスター』。デジタルワールドに住み、戦うことで欲を満たし、現状を越えることで『進化』する存在だ」

 

「「────進化?」」

 

 進化ってなんだろう? 

 

「ボタモンがコロモンの姿に変わったことを言ってるのか?」

 

 アクアがそういった時に、ボタちゃんがピンクの姿に変わったときのことを思い出した……あの時は、まだタイトが近くにいたんだよね。

 

「アクア、それで合ってるぜ。進化っていうのはデジモンの成長によって姿を変えることをいう……さっき、アクアが言ったようにデジモンは成長するごとに姿を変える」

 

 グルスガンマモンがアクアの答えに同意した……アクアの言った通り、やっぱり、あれが進化なんだ。

 

「────うわっ!?」

 

 グルスガンマモンの影がいきなり形を変えて、ボタちゃんの姿になった。

 

「ボタモンみてえなデジタマから生まれたばかりの『幼年期I』から、コロモンのように、少し時間が経つことで、デジモンとしての存在が少し安定する『幼年期Ⅱ』」

 

 ボタちゃんの姿が、進化したピンクのスライム型のボタちゃんに変わった。今見ている影に色はついていないから、黒色なんだけど、本当にボタちゃんそっくりの陰になってる。

 

「コロモンから進化し、クロアグモンになることで、デジモンとしての存在が完全に安定した『成長期』」

 

「────あっ!?」

 

 ボタちゃんが今度は恐竜の姿になった。あれは確かリョースケくんと戦ったときになった姿だ。

 

 ……あの後、タイトはいなくなっちゃったんだよね。

 

 

 三つの影が映る。

 

 ひとつ目は三本の角が生えた黒い恐竜。

 

 ふたつ目は、立髪を持つライオンの獣人。

 

 みっつ目は、今目の前にいるグルスガンマモン。

 

 

「クロアグモンから成長することで、俺のような肉体的、精神的にも成熟した存在になる『成熟期』」

 

「────これらの過程を得て、俺達デジモンは究極の姿を目指している」

 

 ……究極……? 

 

 それはなにが究極なんだろう? 

 

「はい!」

 

 わからないことができたから、手を挙げる。

 

「成熟期よりも強いデジモンっているの?」

 

 成熟期までしか、話を受けてなかったので、その先があるかもしれないと思って、グルスガンマモンに聞いた。

 

「デジモンとして完全な存在となる完全体と完全という完成された存在を超越することで進化する『究極体』……根も葉もない噂だが、その先も存在するらしいぜ」

 

 

「────まっ、究極体を目指すにはアイの力が必要だがな」

 

 

「……えっ!?」

 

 私の力が必要ってどういうこと? 

 

「そのデジヴァイスによって、人間との『シンクロ』を高めることにより、更なる進化……新たなる力を得る可能性があるとタイトは言っていた」

 

 手を挙げる前にグルスガンマモンが話を進める。

 

「────俺は力を求めている。その力の原動力を」

 

「2度の破滅を超えた先にある『三度目の破滅』を乗り越えるための力が俺には必要だ」

 

 ……三度目の破滅? 

 

 この世界にやってくる破滅とはなにが違うんだろ? 

 

「タイトは言ってたぜ……『俺が世界を救う為に戦い続ける限り、俺の家族を狙ってくる敵が必ず現れる』と」

 

「それを狙う敵は必ず強力な刺客を送ってくるとも」

 

「そいつらから守る手段として、俺をてめえらのところに送ったんだとよ」

 

 グルスガンマモンのは話の内容を聞いてる限り、やっぱり、タイトは世界を救う為に戦うことを決めたんだと思ってしまった。

 

 ……それと同時に、あのときタイトがなんで焦っていたのかわかってしまった。

 

「俺はてめえらを狙う強敵と戦い、勝利する……そのうえで、そのデジヴァイス『デジヴァイスバイタルブレスBE type PROTO』を使い更なる進化を呼び起こす」

 

 私はグルスガンマモンが言っていたデジヴァイスを見る……これをタイトが渡してきたんだ。

 

 

「────それが俺の目的だ」

 

 

「……それはアイを利用するってことか?」

 

 アクアがグルスガンマモンを睨む。

 

「はっ、いいだろうが……てめえらは俺を武器(ボディーガード)として利用し、俺は力を高める…………両者共に利益はあるじゃねえか」

 

「────っ!?」

 

 アクアがグルスガンマモンの言葉に、言葉を詰まらせてしまう。

 

「なあ、いいのか? もし、タイトの言った通りになったら……お前ら死ぬぜ」

 

 ……タイトの言った通りに、

 

「アイ、てめえはいいのかよ。このままだと、タイトに会えなくなっちまうぜ」

 

 

 …………私は────

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なんで、なんでこうなったの!?」

 

 とあるマンションで1人の女性が叫んでいる。その視線の先には、2人の子供に囲まれて、笑顔の女性……女優のアイがテレビに映っている。

 

「私は1番近くでアイのことを応援してたのに」

 

 女性の頭の中にはアイがまだ、アイドルだったときの情景が浮かんでいた……そして、それを思い出す彼女の顔はまるで、アイドルであった頃のアイを崇拝しているようだった。

 

 

「────なのに、アイは私達を裏切った!!!」

 

 

 そこから、女性の怒りの矛先は先程視線を向けていた写真へと向かってしまう。

 

「アイは完璧じゃなきゃいけないの」

 

 子供を抱えているアイの写真を破った。

 

「完璧じゃなくなったアイなんて、アイなんかじゃない!!!」

 

 記者会見をするアイの動画が入った、DVDを割った。

 

 

「────この子達が悪いのね」

 

 

 そんなときに、先ほど破った写真の中にある2人の子供……アクアとルビーへと視線が向かう。

 

「あの子供達は産まれるべきじゃなかった」

 

 その写真を踏み潰す。怒りをぶつけるようになんどもなんども……ああ、なんて救えないんだろう。この生き物は……

 

「でも、私はどうすればいいの?」

 

「現実的に考えて、ストーカーに一度狙われたアイとアイの子供のことを殺すことはできない」

 

 少ない理性で、発狂する心を押し留める女……なかなか面白そうだね。

 

「────でも、私は許せない!!!」

 

「アイは私を裏切ったの!」

 

「私を……私達を踏み台にしてのし上がったくせに、自分だけ幸せになってっ!!!」

 

「許せるはずが……許せるはずがない!」

 

 怒りのままに、彼女達3人へと殺意を向ける女……まったく、ばかばかしいよ。でも、それができたらどんなに()()()()()()()()()? 

 

「でもどうやったらこの3人を殺せる?」

 

「────力が力が欲しい!!!」

 

 へえ、力が欲しいんだ。

 

「この3人を殺す力がっ!!!」

 

 

 

「────ねぇ」

 

 

「……なによ、あんた? どこから入ってきたの?」

 

 女の目の前に、姿を見せてやった。

 

「お姉さんはこの3人を殺せる力がほしいの?」

 

 息を飲み込む彼女……へえ、驚くだけの脳みそが存在したんだ。

 

「────力をあげようか?」

 

 あたしは、金色の玉を宙空から取り出した。

 

「────なにを言って!?」

 

 女はその光景にびっくりしたようだったが、すぐに金色の玉へと視線を向けてしまった。

 

 女に向けて金色の玉を見せる。

 

「ねぇ、この玉を取りなよ」

 

 金色の玉に魅せられたのか、女はその玉をじっくり見ていた。

 

「この玉に力が込められているよ」

 

 女がその言葉を聞いて、少しずつ手を伸ばす。

 

 でも、ゆっくりだね……少し急かそうか。

 

「────さあ、はやく」

 

 そう言ったときに、()()()()()()()()()()()()

 

「うん、よかったね」

 

「これで、力が手に入ったよ」

 

 

 

「────ア゛イ゛ィ────アイィ────」

 

 

 

「────さあ、行ってケモノガミ。あたしの人形(おもちゃ)を壊してきたね」

 

 

 

 




『シンクロ』

デジモンゴーストゲームの作中に現れる用語。

デジモンと人間とのつながりが強くなることで、新たな進化の可能性を生むことができるという意味。
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