産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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遅くなって、すみませんでした!!!
仕事の部署が変わったり、夜勤があったりして遅れました……ポケモンsvやってたとは言えない(小声)。


2.5章 電脳獣 下

 

 

 2011年 7月20日

 

 

「────ハイ、カット!」

 

 

 1週間の休暇が終了し、再び仕事の日々がやってきた。

 

「いやあ、よくやったね……アイちゃん、本番も頑張ってね!!!」

 

「────はい、ありがとうございます」

 

 今日は宮崎県で映画の撮影をやっている。

 

 ママが主人公役で、東京に出稼ぎにきている主人公が故郷へと帰り、ひとときの心の安寧を得るという大事な日常シーンの撮影だった。

 

 

「────ふぁああ、ねみぃな」

 

 そんな中、グルスガンマモン……ぐーちゃんが大きなあくびをした。

 

「ちょっと、ぐーちゃん! いくら人に見えないからって、静かにしないと、みんなに聞こえるでしょ!」

 

「────だから、そのぐーちゃんってのをやめろ!」

 

 あだ名で呼ばれたことを、恥ずかしそうにするぐーちゃん。いいじゃん、ママがつけたあだ名なんだから、大切にしなさいよ! 

 

「だって名前が長いんだもんっ! ────そんなことより! 私、ぐーちゃんに聞きたいことがあるの!」

 

「『長いんだもんっ!』って、お前……で話は?」

 

 呆れたような顔をするぐーちゃん……それでも、私が聞きたいことを教えてくれるから、私はぐーちゃんを優しいなって思った。

 

「私はタイトのことが聞きたい」

 

「タイトのこと? ────やめろやめろ、聞いたって辛いだけだぜ」

 

 ぐーちゃんはタイトのことを

 

「それでも私は聞きたいよ。タイトはなにも教えてくれなかったから……私はタイトのことを知りたいって思ったから」

 

 

「……本当に聞くのか?」

 

 

 嫌そうな顔をするぐーちゃん。

 タイトはそれほど、嫌な目にあったのかな? 私達の知らないところでたくさん苦しんでいたと思ったら、それを私達は知るべきだと思った。

 

 それでも私は首を縦に振った。

 

「……わかった」

 

 

「────タイトは、お前らと離れた後、半年程野宿を強制された」

 

 

「────っ!?」

 

 ……野宿? 

 

 それを半年も強制されていた? 

 

 ……誰に? そのときの私は何をやっていたんだろう? 部屋の中で、漫画やドラマを見て、ママのライブの応援して、そんなことをしているうちにタイトはそんなことになっていたの? 

 

「デジヴァイスに導かれた世界で、人間とデジモン達から村八分に遭う中で、それでも力をつける為に自身とクロアグモンを追い込んでいた」

 

 村八分……現代日本では滅多に聞かない言葉……本当にそんな世界にタイトは行っていたんだ。

 

 ────ねえ、センセ? 

 

 昔の記憶を思い出した……気がする。

 

「そんななか、二体のデジモン……『チューモン』と『スカモン』というデジモンを仲間にしたところから、生活は変わっていった」

 

 そんな中でも、ぐーちゃんは話を続けた。

 

「半年間で身につけた力で、クロアグモンを究極体まで進化させ、力に物を言わせて、多くの敵デジモンを倒していった」

 

「────タイトに仲間ができたの!?」

 

 驚きだった。

 子供を見捨てる世界に、まだタイトに仲間ができるなんて……今まで聞いた暗い話の流れとは違う感じになると思った。

 

「────ああ、そうだな……また聞きだが、そう言っていた……話を続けてもいいか?」

 

 若干、言葉に含みを持たせたぐーちゃん……えっ? 話の流れが変わるんじゃないの? 

 

「それによって、その世界のデジモンや人間に自身の力を見せつけた」

 

 ぐーちゃんの話が続く。

 

 この前、聞いたように究極体って強いんだ……タイトはなんで、クロアグモンをはやく進化させなかったんだろう? 

 

 そんなとき、ぐーちゃんの顔が少し暗くなった感じがした。

 

「そんなときに、数が数えられないぐらいの多くのデジモンと人間に襲われた」

 

 …………え? なんで? 

 

 

「そこで、仲間のうちの一体……()()()()()()()()

 

 

「────っ!?」

 

 

「タイトは激昂し、クロアグモンを究極体を超えた存在へと進化させ、多くの人間とデジモンを葬った」

 

 

 ひどい…………なんでタイトばっかり……!? 

 

 

「────そのときのことを思い出した奴は、『嬉しかった』と言っていた」

 

 

「……嬉しかった?」

 

 言われた言葉の意味がわからなかった。仲間が殺されてなんで嬉しいと感じられる精神がわからなかった。

 

「憎んで、呪って、壊して、奪って……その先にあったものは、歌を歌うことのほうが、はるかに有意義なものだったっとしても」

 

 

「────『これで、力を得られた』と思ったとな」

 

 

「……力?」

 

 

 

「そうだ、力だ……タイトはお前達を守る為に力を欲し続けていた」

 

「────そんな!? そんなに力が欲しいの!?」

 

 仲間が死んだのに、かけがえのないものがなくなったっていうのに、私にはタイトがわからない。

 

「『力なんて』────って言うなよ。お前達はまだ、タイトが敵として認識しているモノを知ることすらできていない」

 

 真剣な表情でぐーちゃんは言った。

 

「力を得られたなら、なんでタイト自身がここに来なかったと思う」

 

 私は首を振った。

 

 タイトがそんな力を手に入れたっていうのなら、自分で私達を守ると思ったから────タイトの行動がわからなかった。

 

「来れない事情があったからだ」

 

「────事情? 自分の仲間が死んでまで欲した『力』を手に入れたのにっ!?」

 

 ふざけてると思った。

 

 他者の命を犠牲にしてまで手に入れた癖に、自分のしたいことすらしないタイトのことを許せないって思った。

 

「自身の力が及ばない場所にお前達がいるということをタイトは深く認識していた」

 

 タイトの力が及ばない場所? 

 

 私達のそばにはいられないってこと? 

 

 ……それはどういうこと? 

 

 ますますタイトのことがわからなくなる。

 

「感謝しろよ────そんな風に、思ってるやつが認めたデジモンがお前達を守ってやってるってことをよ」

 

 ぐーちゃんが自慢げにそう言った……なんかむかつく。それにタイトのことに対して、さらに聞きたいことが増える。

 

「────ねえ、

 

 

「ルビーとぐーちゃんはなにを話してるのかな?」

 

 

 そんなときに、ママの声が後ろから聞こえる。

 

「────ママっ!?」

 

 ママに話を聞かれた? 

 ううん、そんなことはないはず……タイトが苦しんでたことをママに聞かせるわけにはいかない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ルビー達がなにを話してたのか、ママも聞きたいな?」

 

 笑顔でそう言われる……ママの笑顔が可愛い────って、そんなこと思ってる場合じゃない。

 

「ううん、なんでもないよ!」

 

 ぐーちゃんの態度も、タイトへの疑問も全て傍に置く。

 

 

「────タイトの話をしていた」

 

 

 ……なんで!? 

 

「────ずるいっ!? なんでママにそれを教えてくれなかったの!?」

 

 私の肩を揺らすママ……ぐーちゃんなんで教えちゃったの!? と睨みつけるが、ぐーちゃんは私のことを鼻で笑いやがった。

 

 ……なんだこいつ! 

 

「それで、ドラマの撮影はいいのか?」

 

「────うん! あとは、他の人のリハを待つだけだし……それより、ぐーちゃん! タイトの話を聞かせて!!!」

 

 ママの言葉を聞き、私はぐーちゃんをもう一回睨んだ。

 

「……わかった」

 

 ぐーちゃんはそれ以降、タイトの辛い話をしなかった。

 

「タイトはノルンに鎖に繋がれてな、クロアグモンにこう言ったんだ『助けてくれ! 俺はまだ、あの数式の暗記をしてないんだ』ってな……そうしたら」

 

「『タイト〜……いいかげん、諦めようよ』って言われてな、パートナーにも見捨てられてんだよ」

 

 タイトがノルンって人に、毎日修行をするなって言われて、謹慎を受ける話。

 

「『────タイト! あれに乗ろう!!!』」

 

「そう言われて、首根っこ引っ張られて連れて行かれて」

 

 それを破って、コロちゃんとチューモンとユウって人に『遊園地』に連れて行かれる話。

 

「『なんで、もっとはやくやってなかったんですか!!!』」

 

「『ツルギさん! あんたもう高校生でしょ!!!』」

 

「『……すみません』」

 

 夏休みの宿題を忘れたツルギって人の宿題の手伝いをした話。

 

「『剣の道……すなわち、お前達に伝授しようとしたきっかけは』」

 

「『(……お前のせいで、俺も捕まったんだろうがっ!!!)』」

 

「『(オイラは剣の心得が知りたいだけなのに)』」

 

 ぐーちゃんとチューモンが、ザンバモンというデジモンに『剣士の道』というものを付き合わされた話。

 

「『────そこっ! 塩と砂糖を間違えるなっ!!!』」

 

「『レシピ通りに作れば問題なく作れると言ったでしょう』」

 

 タイトとぐーちゃんがホーリーエンジェモンに、料理を教わる話。

 

 ぐーちゃんは、タイトとタイトが出会った人達との日常生活の話を、1時間くらい聞かせてくれた。

 

「ねえねえ、次の……────っ、すごい風だね!」

 

 話してる間に、とてつもない風がママの近くを通り過ぎていった。

 

「…………? ああ、そうだな」

 

 ぐーちゃんは風の方向を見て、驚いていた。

 

 

「────アイさん! 本番準備できました!!!」

 

 

 しばらくぐーちゃんがその方向を見ていると、背後から、そんな声が聞こえた。

 

「うーん、もう少し話が聞きたかったけど、ルビー! ぐーちゃん! 私、行ってくるね!!!」

 

 その後はタイトの話をしなかった。

 

 

 

 2011年 7月20日 夜9時頃

 

 

 今日の映画の撮影が終わって、明日の撮影に向けてホテルに泊まっているとき、ぐーちゃんに呼ばれた。

 

「────おい、アイちょっと話がある」

 

 アクアやルビー、他の人達がいないときに、そんなふうに声をかけられた。

 

「……なあに?」

 

「外に行くぞ」

 

 そう言われて、無言で山のほうへと睨みつけるぐーちゃん。

 

「……わかった」

 

 きっとなにかあると思って、ぐーちゃんについていった。

 

「────ここは?」

 

 昼間に撮影した森まで歩いて来た。ぐーちゃんは森のほうをしばらく睨みつけ、

 

 

「────来る」

 

 

 いつのまにか、ぐーちゃんが私の目の前に立っていた。

 

「────っ!?」

 

 すぐ後に大きな音が私の目の前で発生する。

 

「……水?」

 

 ……涙じゃない水滴が頬に流れる。そして、私の横に後ろの方から木が倒れてくる。

 

「────アイ、避けろぉ!!!」

 

 ぐーちゃんが私を抱えて、走り出す。

 

 

 ────ズオオンッ!!! 

 

「────うわぁ!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 それを避けながら、ぐーちゃんは水流のほうへと振り返った。

 

「……亀?」

 

 頭と両腕に大きな砲台がついている機械の亀が、ズシン、ズシンと足音を鳴らしながらこちらへと進んできた。

 

「……なんで」

 

 ぐーちゃんの体が震えているのがわかった。

 

 

「────なんで、究極体がここにいやがる!!!」

 

 

 ……究極体? 

 

『デジモンとして完全な存在となる完全体と完全という完成された存在を超越することで進化する『究極体』……根も葉もない噂だが、その先も存在するらしいぜ』

 

 ぐーちゃんが言っていたデジモンの最終形態……その究極体が目の前にいる。

 

 正直、言って怖い。ぐーちゃんが守ってくれなきゃ、木のようにへし折られてしまう気がした。

 

「────ジャンボガメモン*1っ……アイ、デジヴァイスを使って例のステージを出せるか?」

 

 ぐーちゃんが私に聞いてくる……なに? ステージ? 

 

「ステージ? ……ああっ! ぐーちゃんと初めて会ったときに出てきたホログラム!!! でも────っ!?」

 

 そんななかでも、ぐーちゃんの言うジャンボガメモン? は私を狙って水流を射撃してくる。

 

「────タイトは言っていた。ホログラムの世界に、現実世界からデジモンの関係者以外を分離させることができると……てめえはルビー達を巻き込みてえのか?」

 

 ……ルビー達────後ろのホテルにはルビー達がいることに気がついた。このままじゃ、ルビー達に砲撃が届くのも時間の問題になっちゃう!? 

 

 ルビー達を守るには、ここでこいつを倒すしかない!!! 

 

 そう思い、デジヴァイスを見るが、使い方がわからなかった。

 

「────えっと、どうやってやるの?」

 

 ぐーちゃんはジャンボガメモンの砲撃を避けながら、少し溜息をついた。

 

「上が選択、下が決定……タイトはそう言っていた。なら、はやく探せ!!!」

 

「────わかった!!!」

 

 そう言われて、デジヴァイスを弄る。

 

 1回目、ぐーちゃんのステータス画面……違う! 

 

 2回目、トレーニングの絵が載ってるやつ……違う! 

 

 3回目、ステージの模様がついてるやつ。

 

 決定ボタンを押すと、私を中心にアイドルステージが広がり始める……やった! 成功だ!!! 

 

 アイドルステージが広がると、私とぐーちゃん、ジャンボガメモン以外の気配が消えた気がする。虫の音や車の音が消えてなくなった。

 

「────よくやった、アイ!!!」

 

 そう言って、ぐーちゃんはジャンボガメモンに突撃する。

 

「────アイ、叫べぇ!!!」

 

 ────『ダークパレス』

 

「────えっと、なに!? 『ダークパレス』?」

 

 頭の中に突然、変な言葉が浮かんでくる。それを、読み上げると、ぐーちゃんの右手から黒い炎が燃え上がった。

 

「────オラァ!!!」

 

 燃え上がった右手で、ジャンボガメモンをなぐるぐーちゃん。炎が突撃して、ジャンボガメモンが爆発する。

 

「────やった!!!」

 

 攻撃が命中して、ジャンボガメモンが見えなくなる。

 

「────チッ!!!」

 

 しかし、ぐーちゃんは舌打ちをして、煙の中から私のそばへと飛んできた。

 

「────えっ、ぐーちゃん!?」

 

 もう一度、私を抱き抱えるぐーちゃん。

 

「いいから、避けるぞ!!!」

 

 そう言って、ぐーちゃんは私を抱えて空へ飛んだ。

 

 

「『ジャンボクレーター』」

 

 

 機械的なその声が響いたとき、煙を中心に、大きな水流が360度、無差別に撃ち放たれる。

 

「アイ、しっかり捕まってろ!!!」

 

 ぐーちゃんは私を狙う砲撃を空中で避け続ける。

 

「ひっ!?」

 

「────チッ!!!」

 

 砲撃が髪先に少し当たってしまう。

 

「ぐーちゃん、今当たった!? 本当に大丈夫なの!?」

 

「今が最大速度だ! それでも、少しずつ避けられなくなってるな────っ!!!」

 

「『メガトンハイドロレーザー』」

 

「────くはっ!!!」

 

 ぐーちゃんが急にジャンボガメモンから後ろを向いた瞬間、ものすごい衝撃が体を襲った。

 

「────うぐ、げほっ……クソがっ!!!」

 

 ぐーちゃんは私の体が地面に叩きつけられないように、私を守るように背中を地面に打ち付ける。

 

「────ぐーちゃんっ!?」

 

「────大丈夫だっ!!!」

 

 ぐーちゃんの体が水に濡れていた……たぶん、さっきの衝撃はジャンボガメモンの砲撃から私を守ってくれたんだ。

 

 よく見ると、体のあちこちに傷ができている。

 

「ぐーちゃん、本当に大丈夫?」

 

「大丈夫だ────と言いたいところだが、今のままじゃ勝てねえな」

 

 ぐーちゃんは悔しそうにそう言った。

 ぐーちゃんは今のままだと勝てない……と言った。それは、さっき言った『大丈夫』とは違うのではないかと思った。

 

「それって、大丈夫なの?」

 

 だから、もう一度聞いた。

 

「大丈夫じゃねえよ」

 

「俺がやられたら、てめえが殺されて、ルビーやアクアがやられる」

 

 ぐーちゃんの言葉に納得した。そして、ここでこいつを倒さなければルビー達が危険なことが、さらに私の心を苦しめた。

 

「────いやっ」

 

 ズシン、ズシンとこちらに近づいてくるジャンボガメモン。その足音が私に向けられたものであるとわかっていた。だから、声が震えてしまう。

 

 

「落ち着け、逆転の手はある」

 

 

 ぐーちゃんは私を落ち着かせるようにそう言った。

 

「────逆転の手?」

 

 この状況をなんとかできる手段があるって言うの? 

 

「そうだ、お前がその鍵だ」

 

 ……私が鍵? この化け物を倒すための手段が、私にはあるって言うの? 

 

「────私っ、なんにもできないよっ!!!」

 

 ぐーちゃんの言葉がわからなかった。だから怒りに身を任せて、ぐーちゃんに向かって叫んだ。

 

「そんなことはねえぜ、アイ……てめえが俺を『進化』させろ」

 

「……進化?」

 

 ……たしか、ボタちゃんがピンクの丸い生き物になったり、黒い恐竜になったりすること。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうすりゃあ、俺は進化できる」

 

 シンクロ……ぐーちゃんになんども言われた言葉。でも、どうやってやるのかわからなかった。

 

 そんななかでも、ジャンボガメモンは私達目掛けて近づいてくる。

 

「……でも、そんなのどうやればいいかわからないよ」

 

 そんなの私にできるかどうかわからなかった。

 

 

「────()()()()()()()()

 

 

「……タイトがやった?」

 

 ぐーちゃんのその言葉が胸に響いた。

 

「ああ、そうだ────自分のデジモンを自由に進化させ、俺に勝ちやがった」

 

 悔しそうに、それでもそのことを誇るように言うぐーちゃん。

 

「くっそ、悔しかったけどな……あいつは最後まで戦い抜いた。俺のことをぶっ倒せるまで、戦い抜いたんだ」

 

 タイトはぐーちゃんと戦っていた。

 あんな恐ろしい化け物相手に、戦えているぐーちゃんと戦って勝っていた。

 

()()()()()()()()()()()

 

 タイトは諦めなかった……その言葉が、私の中のなにかを湧き上がらせた。

 

 ……そうだ。こうしている間にも、タイトは私の知らない場所でこんな化け物と戦っているんだ。

 

「ルビーやアクアを守るんだろ……だったら、こいつを倒すしかねえよなあ!!!」

 

 

「……そうだね、戦わないと」

 

 

 ぐーちゃんのその言葉が、私の心に火をつけた。

 

「ぐーちゃん、私……立つよ」

 

 私はぐーちゃんの腕の中から離れ、ぐーちゃんの隣で立ち上がる。

 

「アイ、そりゃああぶねえぜ」

 

「……そうだね」

 

 ゆっくり歩いてくるジャンボガメモンを私は睨んだ。

 

「でも、タイトが頑張ってるときに、こんな奴に負けたくないから」

 

 ……正直に言ってまだ怖いよ。でも、今は立ち上がらなきゃ、いけないときなんだ。

 

 ジャンボガメモンの額の砲台が光はじめる……エネルギーを充電しはじめたようだ。

 

「────いいぜ、俺も最後まで戦ってやるよ」

 

 私が言った言葉に、ぐーちゃんは笑って見せた。

 

「『メガトンハイドロレーザー』」

 

 ジャンボガメモンの砲撃が、私達を狙って撃ち放った。 

 

「うん、でもこれが最後なんじゃないよ」

 

 そう私は決めた。

 

「────これが幕開けだよ」

 

 

 デジヴァイスが光った。

 

「『グルスガンマモン超進化』」

 

 デジヴァイスの光がぐーちゃんを包み込む。

 

 

「『レグルスモン*2』」

 

 

 ジャンボガメモンの砲撃を真正面から跳ね除けた黒竜……それは私の前で羽をはばたかせた。

 

「────やった、やったぜ! アイ!!!」

 

 こちらを向いて笑う黒竜……こんなことは前にもあったことを思い出した。ボタちゃんが初めて進化したときだった。

 

 ……もしかして、

 

「……ぐーちゃんなの?」

 

 黒竜は邪悪な笑みを浮かべた。

 

「────ああ、お前のおかげでようやく進化できた」

 

「レグルスモン……このみなぎる力……まさしく、進化だ!!!」

 

「『ジャンボジェッター』」

 

 そう言って喜ぶぐーちゃん……いや、レグルスモン。そんな時でも、あいつは私目掛けて凄い勢いで突撃してきた。

 

「────ぐーちゃん、危ないっ!!!」

 

 私の前に立っていたぐーちゃんに当たってしまう。

 

「────ああ、なんだ?」

 

「グギギ、ガガ?」

 

「この程度かよ」

 

 ものすごい勢いで突撃してきたジャンボガメモンの体を、片腕で押さえ込んだぐーちゃん。

 

「さっきは随分とやってくれたなぁ!!!」

 

 ジャンボガメモンの胴体を思いっきり殴って吹き飛ばす。ぐーちゃんのその姿が、さっきまでとは明らかに動きが違った。

 

「……これが進化」

 

「ありがとな、アイ……てめえのおかげだ」

 

 ぐーちゃんはジャンボガメモンに向かって、飛んでいく。

 

「……グギギ」

 

 ジャンボガメモンは私に向かって砲撃しようとこちらへと向いた。

 

 ────『デッドエンドスパイク』

 

 頭の中でもう一度言葉が響いた。先程、ぐーちゃんが叫べと言ったことを思い出す。

 

「『デッドエンドスパイク』」

 

「『デッドエンドスパイク』ゥ!!!」

 

 ジャンボガメモンがぐーちゃんの尻尾に空に弾き飛ばされる。

 

「……チッ、硬えな。貫くつもりが弾くだけになっちまった」

 

 私の中の言葉が、デジヴァイスが……ぐーちゃんに技を出していることに気がついた。

 

「────アイ、まだだ行くぞ!!!」

 

「────わかってる!!!」

 

 まだ空に弾き飛ばされているジャンボガメモン。それでも私に向かって砲撃しようと頭部の砲台に力を集めているのが見えた。

 

 ────『グラントレース』

 

 頭の中に再び声が響く。

 その意味は今なら簡単に理解できる。

 

「『メガトンハイドロレーザー』」

 

 ジャンボガメモンの砲撃が私目掛けて、放たれる。

 

「やるぜ、アイ」

 

「────大丈夫」

 

 強力な水の本流が私の目の前までやってくる……それでも、私は逃げない。

 

 

「「『グラントレース』」」

 

 

 ぐーちゃんの口の中から巨大な『黒炎』が弾になって放たれた。ぶつかり合うジャンボガメモンの砲撃とぐーちゃんの黒炎がぶつかり合う。

 

 

「「────いけえええ!!!」」

 

 

 それも一瞬のことで、ぐーちゃんの黒炎がジャンボガメモンに襲いかかった。

 

 

「────アイ、アイィイイイイイ!!!」

 

 

「……ニノ?」

 

 ジャンボガメモンから聞こえた懐かしい声……それが聞こえたときには、ジャンボガメモンが消えてなくなっていた。

 

 

 

*1
レベル:究極体 タイプ:サイボーグ型 属性:データ種 必殺技: 『メガトンハイドロレーザー』『ジャンボクレーター』『ジャンボジェッター』

 メタルボディーの甲羅の強度を犠牲にしてまでも、全身にビーム発射口を持たせた巨大なサイボーグ型デジモン。必殺技は、口部発射口からの全てを貫く超高速の水流『メガトンハイドロレーザー』と、全ビーム砲を一斉掃射する『ジャンボクレーター』。尚、この技は360°カバーする為、発射後は大地にクレーターが残る。まさに“攻撃は最大の防御”に相応しい必殺技である。また、足を収納・両腕のビームを後方に放ち、加速して敵に竜巻突進する『ジャンボジェッター』をもつ。

*2
レベル:完全体 タイプ:邪竜型 属性:ウィルス 必殺技: 『カリプバイト』 『ゲニアス』 『デッドエンドスパイク』 『グラントレース』

 怒りと恐怖による支配を目論む邪竜型デジモン。完全体にして、最凶と謳われる四大竜デジモンの一柱メギドラモンを彷彿とさせるパワーを誇り、レグルスモンの出現とは災害に他ならない。その身体は“GRB(Gulus Realm Brust)”と呼ばれる感染源であり、“GRB”因子が伝染したデジモンは性格が変質し狂暴化すると言われている。ただし、黒化の要因とされる分泌物“ブラックデジトロン”が混入したデジモンには伝染が確認されていない。

 必殺技は、左腕の盾が大きく開口して敵をかじりとる『カリプバイト』と、盾から放つ3門の貫通レーザー『ゲニアス』、二叉の尻尾が刺し貫く『デッドエンドスパイク』。そして最大の脅威『グラントレース』は口から暗黒の獄炎球を放ち、物質だけでなく光さえも飲み込み全てを跡形も無く消し去る。




『デジヴァイス2:デジヴァイスV』

アニメ『デジモンゴーストゲーム』に出てくるデジヴァイス。

腕時計型のデジヴァイスで、Dimカードというメモリーカードを差し込むことで、デジモンを立体化させたり、デジモンとリアルワールドでのデジモン関係者のみをホログラムの世界に閉じ込める機能が存在する。

また、シンクロと呼ばれる現象を起こし、心を通わせることで、デジヴァイスがデジモンの必殺技を脳内へと想起させ、某ゲームのように指示することができる。

本作においてアイに渡されたものは上記のデジヴァイスに非常に似通っており、上記の能力を使用できる。
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