産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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第二話 不満爆発 深夜の慟哭

 

「……才能や素質、ねえ……なんか、胡散臭えな」

 

「……俺としても、世代(レベル)が存在しないデジモンなんて聞いたことがない」

 

 タイキさん達が帰ってくるまでの間、クロスハートの人間組と俺達は今までの旅のことを話し合った。もちろん、本当の名前やミレニアモンなどの暗黒進化したことは伏せていた。

 

 ゼンジロウさんやアカリさん、ネネさんから聞いた話はどれも信用できる情報ではなかった。

 

 一つ、シャウトモン達新しいデジモンは世代(レベル)が存在しない。

 

 一つ、デジクロスをすれば、どんなデジモンの進化よりパワーアップできる。

 

 一つ、バグラ軍と旧デジモン達によって世界は崩壊し、ゾーンと呼ばれるいくつもの世界の一部がバラバラにわかれてしまった。

 

 一つ、ゾーンを手に入れるためには、コードクラウンと呼ばれるチップを手に入れなければならない。

 

 一つ、108個のコードクラウンを全て集めれば、どんな願いだって叶うことができる。

 

 以上のことから、チーム『クロスハート』はバグラ軍に勝利した暁には、ゾーンをすべて統合し、以前のような平和なデジタルワールドを取り戻すのが目的だという。

 

 ……物語の主人公らしい願いだと思う。

 ただ、それを善性からくるものだとしたら、デジモンの主人公らしくないと思ってしまった。

 

「……ねえ、あなたたちも素質や才能をあげることで強くなることができたの?」

 

 ふと、ネネさんのそんな言葉が聞こえた。

 

「うん、マナトの言うとおり頑張ったおかげで強くなることができたよ」

 

「────まあ、オイラは実感はわかないっすけどね……」

 

 相手はテトとシンらしい。

 テトは実感があるが、シンには実感がないらしい……なぜだ? 

 

「シンはなんで実感がないの?」

 

「……マナトの修行をやってる日数の差だよ。僕は半年間やってたけど、こいつはマナトを信じなかった……2ヶ月ぐらいしかやってないから、弱いんだ」

 

「テトっ、オイラはマナトっちを信じなかったわけじゃ────」

 

「うるさいな、レオモン」

 

 テトの言葉に2体が睨み合う……またか。相変わらずテトはシンの名前を呼ばないし、話している最中にも喧嘩腰になっている。

 

「はいはい、そこまで」

 

 喧嘩になる前に止める。

 仲が悪いのはわかるけど、別の世界に来てまで争わないでくれよ。

 

「……マナト」

 

「……マナトっち」

 

「……いい加減にしろ、お前ら。前にいたデジタルワールドを喧嘩で焼け野原にしたのを覚えてないのか? 喧嘩でこの屋敷を壊す気か?」

 

 俺は2体を睨みながら言った。

 

「────いいか、お前らはもう成長期じゃないんだ。戦闘能力は以前に比べてはるかに強くなってる……前にも言ったよな?」

 

 6日前、削除部隊(コマンドメンツ)の隊長のタンクドラモンとワスプモン含め、30体を戦闘不能にした。

 

 4日前、完全体に進化したうえで、演習に来ていた砂漠地帯のオアシスをぶち壊し、沼地へと変えた。

 

 2日前、2体の喧嘩でピッコロモンの里の近くの山が焼け野原になったことを説教した。ノルン様もこれにはかなり怒っていた為、忘れてないと思ってたんだけどなあ。

 

 この1週間……特に世代(レベル)が成熟期になってからは、テトとシンの喧嘩の被害が酷くなった。自分の体が進化したことを認識してほしい。

 

「……マナトっち、悪かったっす」

 

 シンはすぐに謝った……はあ、とため息がでてしまう。シンのほうから喧嘩を売ってはいないとはいえ、2日に1回の回数で喧嘩されると流石に疲れてくる。

 

 ……問題は、

 

 

「────フン」

 

 

 テトのほうだ。

 俺やノルン様に説教されても、聞く気がない様子で困っている。

 

「────マナトもさあ、いい加減にしたら?」

 

 テトは笑いながらそう言った……だけど、顔は怒ってるように見える。

 

「……なにを?」

 

 テトの言葉がの意味はわかっていた……だけど、それを認めることはできなかった。

 

「────チッ」

 

 ものすごい表情でテトはシンを睨んだ。

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────えっ!?」

 

「……はあっ!?」

 

「……なにを言ってるの?」

 

 チームクロスハートの3人は、三者三様の驚き方をする……俺にしてみれば、いつものことだ。

 

「……やっぱりか」

 

 いつもいつもおんなじことを言いやがって……正直言って、ちょっと呆れ始めてる。

 

「……やっぱり? やっぱりって言ったね、マナト!」

 

 案の定俺の発言により、怒り心頭と言った様子のテト。その様子にさらに俺はいらだってしまう。

 

「……このやりとりをなんどやった? 裏切ったとはいえ、シンが俺の為にノルン様へと説明したことを、俺はもう許した」

 

 俺はあの夜に命を救われた時点で、シンのことを許していた。テトが不満を持っていたとしても、俺自身は許していたんだ。

 

「僕はまだ許してない!!!」

 

 ……瞳を涙で濡らしていたのが見えた。テトのその姿に俺は同情するよりも、なぜかいらだってしまった。

 

「────もう3年も経ってるんだぞ。いい加減許してやれよ」

 

 テトのそういう、めんどくさいところに俺は本当にうんざりしている……マジで、いい加減にしてほしい。

 

 

「いい加減許してやれよ? ────マナトこそ、ふざけてるのかな? 僕は常にマナトのために頑張ってきた」

 

 

 さきほどよりも強くそうテトは言ってきた。

 

「マナトが嬉しいときも、悲しかったときも、辛かったときも、苦しかったときも────全部、僕は頑張ってきたよ?」

 

 テトはたしかに俺の為に頑張ってくれた……でも、シンには関係ないじゃないか。

 

「でも、こいつは裏切ったんだ……1番マナトのために行動しなきゃいけない時に、裏切ったんだよ」

 

 テトはシンを見てそう言った……でも、それは俺達の命を守る為にやったことで、

 

 

「────それでもマナトは僕のことより、こんな裏切り者を優しくするの?」

 

 

 ……優しく? 

 違う、俺はただお前達を平等に扱おうとしていただけで……

 

「僕がこんなにも、こんなにもマナトのために頑張ってるって言うのに」

 

 俺を見ているテト……違う、俺はっ。

 

「僕が苦しくて、辛くて……なによりも僕の願いが叶わなかったことが多かったのに……」

 

 たしかに、お前をたくさん苦しめてきたと思う。でも、それは力が必要だったから……そう言おうと思っても声が出なかった。

 

 

 

「────こいつは、裏切ったんだよ?」

 

 

 テトは言葉に乗せた悲しみをすべて怒りに変えて、シンを睨んだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ……シンに名前を与えた。

 

『────だから、僕だけの『名前』がほしい!!!』

 

 でも、それは差別しない為に……

 

「僕はずっと頑張ってきたんだよ」

 

 ……それは……俺もよく知っている。

 

「マナトのために結果も残してきたんだよ」

 

 ……それも、わかっているつもりだ。

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「なんでこいつと……裏切ったやつと一緒なんだっ!!!」

 

 

 とうとう流れ出た涙が、濁流に変わった。

 

「……僕は、僕がマナトを今まで守ってきたんだ!!!」

 

 テトの感情がさらに言葉にのっている……初めてだったかもしれない。こんなにも俺に対して感情を見せるテトを見たのは。

 

「────他のやつに負けて、ボロボロになって、足止めしかできない雑魚より僕のほうが強いんだっ!!!」

 

 シンを指さして自分の方が強いと言った。

 

「こいつが諦めたことだって、僕は強くなるために頑張ってやったんだっ!!!」

 

 ……俺の言ったことを半年以上も続けて、実践してくれた。

 

「マナトがバカにされて、マナトが苦しんでても、目の前でなんにもできなくったって……僕はマナトのために我慢したんだっ!!!」

 

 ……俺があの半年間苦しんでいたのを……お前はわかっていたのか。

 

「なら僕がもっともっと、もっと……も────っと、マナトと一緒にいれるはずだ。マナトに大切にされるはずだ……マナトから嬉しいことだってやってもらえるはずなのに────っ!!!」

 

「……おい、やめ────っ」

 

 次に出てくる言葉がわかった。それを止めようと思い、声に出そうとした。

 

 

 

「────こいつが、こいつがいるせいでっ!!!」

 

 

 ……が、間に合わなかった。

 

「…………」

 

 場に緊迫感のある空気が感じられる……テトはいつものお遊びじゃなく、シンを本気で殺すつもりだ。

 

「……ふう……ふう、ふう、ふう……」

 

 テトは興奮と怒りで、涙を濡らしながらも息を整え、殺気だった目でシンを見ている。

 

 

「────別にいいじゃないっすか」

 

 

 ……そんななか、シンの軽い声が聞こえてきた。

 

「────おい、待てやめっ!?」

 

 テトの本気の殺気が、殺意に変わった。

 

「────あ゛?」

 

 ……ここまでの怒りは、近年稀に見ることがない……マジで、ゴールドヌメモンを殺されたとき以来だった。

 

「マナトっちは、いっつもあんたを頼りにするっす」

 

 そんななかでも、シンは言葉を続ける……俺が、テトを頼りにしている? 

 シンの言葉が気になった。それでも、そんなのは当たり前だとしか思えなかった。

 

 

「────オイラじゃない、あんたをだ!!!」

 

 

 しかし、シンはテトへと向けて怒りの声をあげてしまった。

 

「オイラはずっと強くなりたかった」

 

 ……知ってる。

 それは俺とテトがずっと前から、会ったときから言われていた言葉だから……そんなことは知っている。

 

「でも、思うように強くならなくて……負けてばっかりっす」

 

 そう言って、今度はシンがテトを睨んだ……思えば、シンが勝っているのを実感していたのは、この前のマッハガルルモン戦ぐらいだった気がする。それより前は、テトのパワーレベリングの寄生先か、削除(コマンド)部隊の訓練ぐらいだった。

 

「あんたはいいすっよね……マナトっちに頼られて」

 

 シンは自身の嫉妬の心を隠さずに吐露をした。そして、もう一度、『テトが俺に頼られている』と言った。

 

 

「あいつが死んだあのときも」

 

 

 あいつ……ゴールドヌメモンが死んだときか? 

 でも、それは途中まではお前を出していた気がする。死んだ後は、もう一度失わない為に、たしかにデジヴァイスの中に入れたのはたしかだった。

 

「ビクトリーグレイモン達と戦ったときも」

 

 でも、それは究極体を複数相手どらなきゃいけなかったからで……

 

「ブラストモンが来たときもオイラは呼ばれなかったっす!!!」

 

 …………でも、それは、

 

 

 ただ、その先は俺にはいえなかった。…………シンのその言葉に俺は言葉を失った。

 

 たしかに、俺はシンではなくテトを使ったのだ。

 

 

 

「お前、お前ばっかり……マナトっちはオイラには……なにも…………なんにもっ!!!」

 

 

 その言葉に、シンもテトも互いに殺意を向け合ってしまう。

 

「────おい、やばいって、ドルルモンを呼んでくる!!!」

 

「ちょっと、タイキ……いや、今はいない……バリスタモンっ!!!」

 

「────スパロウモンっ!!!」

 

 2体の様子に、3人はそれぞれ動き始めてしまう。

 

 

「────『メガ────」

 

「────『獣────」

 

 

 2体が、いつものように……いや、これが最後というように本気で力を貯め始めた。

 

 ……そのとき、俺はなにか言わなきゃいけないって思った。

 

 

 

「────悪い」

 

 

 ただ、言葉にできたのはその言葉だけだったんだ。

 

 ……なにか言おうとして、

 

 ……なにも言えなくて、

 

 出た言葉がそれだけだった。

 

 

「…………あれ?」

 

 

 爆発音が聞こえなかった。

 下を向いていた俺は、顔をあげて2体のほうを向いた。

 

 

「────っ!?」

 

「……タ……マナトっち?」

 

 

 2体が俺のほうを驚いたような顔で見ていた。

 

 ふと気づくと、俺の足元に畳に黒いシミが付いていた。

 

「……もういい、頭を冷やしてくる」

 

「────テトっ!?」

 

 テトはそう言って、外へと駆け出した。

 

「────マナトっち、オイラは悪くないっす」

 

「────シン、も……か」

 

 シンもそう言って外へと出ていってしまった。

 

 ……まあ、そうだよな。

 俺みたいな、バカに今までついてきてくれた時点で気のいい奴らだったんだよな。

 

「────くひひ……ああ、変な笑いが出てくる」

 

 自分のことが急に嫌いになってきた。

 今まで仲間をバカにして、差別してきた俺はどれくらい酷いやつだったのかようやく理解できた。

 

「……マナトくん」

 

 ……そんななか、1人の少女が俺の目の前に立っていた。

 

「……なんですか、ネネさん?」

 

 ふひひ、と笑いが止まらない。

 それくらい自分のことがバカに思えてきた。

 

「あなたは彼等を追わないの?」

 

 彼女の無神経な言葉にイラッとしてしまう。

 

「……いまさら、俺がなにを言えばいいんですか?」

 

 半分自虐的に、半分いらだちをぶつけるように彼女へ睨みつける……もう、ほっといてくれよ。

 

「彼らに謝るとか、追うとか……あるでしょ────っ!?」

 

 その言葉に、頭のなかが黒く染まってしまう。

 

「────ネネっ!? ……おまえっ!!!」

 

 スパロウモンの言葉に、俺が彼女の胸ぐらを掴んでいるのを気がついた。

 

「……大丈夫、この人はただやり場のない怒りを持っているだけ……彼と……同じなだけ」

 

 ……彼? 

 そう言った彼女の言葉に、さらにいらだちがつのる。

 

 

「────同じ、だと? あんたに、俺のなにがわかるっ!!!」

 

 

 そう言って拳を女の……天野ネネの顔に振り下ろそうとしたとき、俺の顔にひんやりとしたなにかが触れたのを感じた。

 

「────大丈夫よ」

 

 すっと、俺の頬へと差し出されたその手のひらに、ひさしく感じていなかった……なにかを感じてしまった。

 

「私はあなたと出会って1日だけだからわからないことも多いと思う」

 

 透き通るような声が、ひさしく感じていなかった誰かの面影が重なる。

 

「────でも、彼らはあなたのことを思って怒っていたのでしょう?」

 

 俺は彼らの言葉を思い出した。

 

『それでもマナトは僕のことより、こんな裏切り者を優しくするの?』

 

『マナトっちは、いっつもあんたを頼りにするっす』

 

 どちらも俺が悪かったとはいえ、俺のことを多少なりとも思っていた言葉だったことを思い出した。

 

「あなたは彼らに謝らなければいけない」

 

 その言葉に俺は静かに頷いた。

 

「あなたは今までの行動を振り返って、あなたは彼らと話し合う必要があるわ」

 

「────ああ」

 

 ……まったく似ていないのに、幼少期に見た彼女の顔と重なるのはなぜだろう? 

 

「なら、きっと大丈夫よ……怒らないで、あなたはわかっているはずだから」

 

 その言葉に俺は……俺は……

 

 そう言って、彼女は手を離した……その後、廊下から複数人の走る音が聞こえてくる。

 

「ねえっ、あいつらは!?」

 

 アカネさんとゼンジロウさんが部屋の中へと入ってきた。その後ろには2体のデジモンの足が見える。

 

「────グレイモンはあっち、レオモンは向こう」

 

 頭が真っ白になっていた俺の代わりに、テトとシンの向かった先を指を指すネネさん。

 

「なにっ!? 向こうの方角は川がある! 俺が匂いで追いかけることはできないな」

 

 狼のような姿をしたドルルモンは困ったように言った。

 

「────なら向こうは川のほう……なら、オレがいく」

 

 そう言って、バリスタモンはテトのほうへと走って行く。

 

「森のほうへは俺が行こう……向こうは俺が説得したほうが良さそうだからな」

 

 ドルルモンはシンのほうへと向かってくれた。

 

「……あんたもっ、もっと周りを見たほうがいいわよっ!!!」

 

「────そうだ、そうだっ! せめて、仲間が喧嘩しないうちに話し合ったほうがいいぜ」

 

 そう言って、アカネさんは背中を叩き、ゼンジロウさんは肩を組んできた……この人たちなりに励まそうとしてくれたのだろう。

 

「……ありがとう、ございます」

 

 ただ、俺にはそれしかいうことができなかった。

 

 

 




『ゾーン』

デジモンクロスウォーズの一期における『デジタルワールド』の総称である。

自然に囲まれているところや砂漠地帯、多くのビル群が並ぶ近代都市など、さまざまなゾーンが存在するが……すべて、とある災害によってデジタルワールドが別れてしまったのが原因である。

ゾーンは108個存在し、全てのコードクラウンを手にすることで、願いをすべて叶えることができるという話があるが、アニメ本編で正しく効果が発揮されたということはなかったように私は思える。
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