面白かったです……まだ、初日なのであまり言えませんが、02らしくストーリーが進んであっという間に映画が終わってしまいました。
見ていない方はぜひ劇場まで見に行ってください。
…………たったった────月の出た夜に、1人になって走る。
自分のパートナーに対しての怒り、悲しみ、後悔……そして、心の中の多くを占める自己嫌悪を抱いて、テトは闇の中を走っていた。
「……くそっ!!!」
ただ、1人になりたかった。
タイトが悪いわけなかった……これは僕のわがままだって気づいていた。
タイトにとって、僕は有象無象のデジモンの一体でしかなかった……そんな考えが頭の中をぐるぐる回ってきた。
「────それは違うっ!!!」
違うことはわかっている……でも、納得はできなかった。
裏切ったやつと同じ扱いを受けた3年間。
裏切ったやつにまで与えられた僕の
裏切ったやつに任された、タイトの大事なものに対する仕事。
……全部、全部気に食わなかった。
「────ふざけるなっ!!!」
そう言って、近くの木にいらだちをぶつけるように殴りつけた。
「……くそっ!!!」
……殴っても、虚しさしか感じられない。
僕はただ、タイトともっと一緒にいたかっただけなのに……
僕はもっと、タイトに褒めてもらいたかっただけなのに……
一瞬、あいつの顔が思い浮かぶ。
「────弱いくせにっ!!!」
僕は地団駄を踏んで、地面に向けていらだちをぶつけた。
「弱いくせに、弱いくせに、弱いくせに」
僕はあのときからずっと強くなった……他のやつに負けないように、強くなったんだ……なのにっ、
「────僕よりも弱いくせにっ!!!」
僕よりも弱い奴が、僕とタイトとの時間を奪っていく。
「────気に入らない」
それがなにより気に食わなかった。
「僕が……僕こそがタイトを守れるっていうのに」
自分が……ズィートミレニアモンにさえ進化できれば、どんな相手だって勝つことができるっていうのに、
「……なんで、どうして」
タイトがあの女の言うことを聞いていることを、
タイトが不意打ちして勝った気でいるあの、2人と2体と仲良くしていることを、
タイトがあいつを褒めたことを、思い出して苦い感情が心の奥底から湧き上がってくる。
「どうして、タイトはわかってくれないんだろう」
僕だけが、僕だけがタイトの大事なパートナーなのに、
レオモンを思い出した。
弱くて、情けなくて、負けてばかりいるあのデジモンを思い出した。
僕だけがタイトの大切なものを守れるっていうのに、
ゴールドヌメモンが死んだ日を思い出した。
憤怒と憎悪に駆られ、多くのデジモンを消し飛ばしたあの日を思い出した。
他の誰でもない、僕だけがタイトの安心を与えられるっていうのに、
タイトの母親を思い出した。
弱っちくて、タイトを守るって言ったのに、タイトのことを守れないあの女を思い出した。
「……なのに」
いらだちを目の前の崖にぶつける。拳を握りしめて崖を殴りつける。
「……なのにっ」
思いっきり拳を握って、なんどもなんども殴りつける。自分の拳よりも柔らかい土の壁がなおさらいらだちを加速させる。
「────なのにっ!!!」
────ズドンっ!!!
最後にめいいっぱい力を込めて殴りつけた時、崖が真っ二つに割れてしまった。
「────こんなに、強いのに」
目の前の真っ二つになった崖を見て思う……これでも、タイトだけの力になれないのか……と、
「────おいおい、すげえじゃねえか」
そんななか、いつのまにか背後にデジモンが立っていた。
「……なに?」
……たしか、シャウトモンって呼ばれてたデジモンだった気がする。
「……あれ? なんで泣いてんだ? ……そんなに強えのに?」
……1人になりたいのに、赤い奴に無神経なことを言われる……ほっといてよ。
「おーい、シャウトモンっ! 修行の途中だったんじゃないのかっ……君はっ!?」
……今度は人間のほうもやってきた。
「……テトで、よかったかな? ……って、泣いてる? どうしたんだ?」
「────別に」
人間の姿をした奴なんて信じられない……特に、表面上はいいことを言っておいて、なんにもやってくれないようなやつらなんか信じられない。
「まあ、話してみろって……他のやつに話す、ただそれだけで、気持ちが軽くなることだってあるんだぜ」
シャウトモンがそんなことを言って、肩を叩いてくる。僕に気を遣ってくれているのもわかった。
……だけど、
「いい加減にしろっ────僕は1人になりたいんだっ!!! 」
僕は1人になりたかった。
「勝手に、やって来てなんなんだよっ! 僕をほっといてよ!!!」
赤い手を振り払い、思いっきり足で地面を踏みつけた。
「────うおっ、シャウトモン!?」
「────タイキっ!?」
踏みつけた地面が揺れて、人間とシャウトモンが倒れた。
僕はもうほっといてほしかった。
誰にも僕の気持ちなんてわかってたまるかという気持ちで胸がいっぱいだった。
……僕はただ、タイトと一緒にいたかっただけなのに。
悔しくて涙が出る。
見ず知らずの他人に勝手に心配されて、話をしろと言われる……今日会ったばかりの他人に────本当に惨めな気分になる。
「────ほっとけるわけないだろ」
「……は?」
シャウトモンよりも先に立ち上がった人間……なんでデジモンよりも先に立ち上がることができてるの?
「……理由はわからないけど、君は泣いていた」
……なんで?
「俺はそれがたとえおせっかいだと言われようと」
────なんで、そんなにまっすぐ、
「そんな顔をしているやつをほっとけない!!!」
僕の顔を見ているんだ。
「……なんで?」
わからない……この人間の原動力がわからない。
僕の知っているタイト以外の人間という生き物は、わがままで傲慢な生き物だ。
自分の願いの為に平気で嘘をつき、
自分の欲望の為に平気で他者を痛めつけ、
自分の見栄の為に平気で他者を殺す生き物だ。
……そんな生き物がなんで?
「ぷっ、アハハハハハハハハっ!!!」
シャウトモンが笑った。
「────っ、なんだよシャウトモン……笑うなんて酷いじゃないか」
ムッとした様子の人間。
「わりいわりい、だっておかしなことを言われたもんだからさ」
「────おかしなこと?」
「そりゃそうさ、こいつのことを知らなきゃ当たり前のことだってのによ。ついさっきまで俺はそんなことを忘れてたんだよ」
「────お前言ったよな『なんで』って? そんなのはこいつには関係ねえよ」
シャウトモンは笑いながら、それでも誇らしげに人間を見つめる。
「こいつはこういうバカなやつなのさ」
「…………────っ!?」
その姿がなぜか懐かしくて、
「────わかった…………話すよ」
なぜか話をしてみたくなった。
「────はあ、はあ」
森を越え、川を渡る。
いらだちをぶつけるあてもなく、ただひたすらに走り続ける。
「────オイラはっ、悪くない」
自分は正しいことをしたのだと、思っている。
「オイラは絶対に悪くない」
結果としてみんな生き残ったのに、なんで責められなきゃいけない。
……なんで、なんでオイラばかり、嫌な思いをしなきゃいけない。
「……オイラはっ!!!」
ただ、1人になりたかった。
周りの音がうるさく感じた。
迷惑をかけているつもりはなかった。
……ただ、あいつに認められたかっただけで────
「……止まれっ!!!」
オイラの目の前に、オレンジ色の何かが目の前を横切った。
「────っ!?」
オイラは前を向くと、
「────ようやく追いついた……まっすぐ進んでいることに気が付かなければ、一生追いつけなかったかもしれない」
月を背に黄色の角を持つ狼が目の前に立っていた。
「……お前は? なんのようっす」
目の前を立ち塞がれて、今まで逆立っていた感情の棘がさらに鋭利になっていくのを感じる。
「────『裏切り者』……だったか?」
「────っ!?」
あいつの言葉を目の前の獣の口から出て来たのを感じた。
「────うぐっ!?」
怒りに身を任せ、やつの首を締め上げる。
「────お前には関係ない」
無神経にオイラの心をいらだたせる。
「────関係、ある……俺も、昔、仲間を裏切った」
さらに首を絞めようとした時、そんな言葉が耳に入ってくる……少しだけ、首を締め上げる手を緩めてしまった。
「……お前にオイラのなにがわかる」
「わからないさ────でも、お前は間違っている」
「オイラは間違ってなんかいないっ!!!」
緩めた力をもう一度、締め上げた。
「タイトっちの為にやったんだ!!! 裏切ってなんかいない……結果的に、みんなの命を守れたんだっ────なのに、なのに、あいつはっ!!!」
今度はそのふざけた声が聞こえてこなくなるように……殺す意志を持って首を締め上げる。
「間違っ、────てない……んなわけ、ないだろ」
やつは自分の体に残った空気を振り絞るようにそう言う。
「たとえ、仲間の為に……やったことだ、としても」
「お前は、仲間を……裏切っ────たんだ」
「────なの、に、仲間の……そばにいて────いいは、ずがない」
こいつはオイラの気も知らずにそう言った。
「────オイラは間違って……てなんか」
「────い、いな…………」
────いないって言わなきゃいけなかった。
今までの自分の行動が頭の中によぎっていった。
オイラはちゃんとそのことを……先輩に話したのだろうか?
タイトっちは話さなくても許してくれた。
……でも、先輩にちゃんと話してみたほうがよかったんじゃないか……そんな言葉が頭の中をぐるぐるとまわっていた。
「────ぷはっ!? ……はあ、はあ、はあ、はあ」
そうして、知らず知らずのうちに手から力が抜けていた。
「……オイラは、オイラはそれでもみんなの命を守ったんす」
それだけがオイラの気持ちを支えていた。
結果がよかったにも関わらず、先輩の力ばかり借りているタイトっちが気に食わなかった。
「────はあ、はあ……お前の行動は、なんとなくだが、わかった気がする……ふう、だけどな」
「────仲間として一緒にいるのであれば、もっと仲間と話すべきだった」
「……話す?」
「ちゃんと、話して、仲間全員で納得しあえば、こんなふうにトラブルが起きなかったんじゃないのか?」
……オイラは、オイラ達はまともに話し合ったことがあったのだろうか?
タイトっちはノルンに一日中指導を受けていて、
先輩はオイラのことを嫌っていて、
オイラは自分が間違っていないと思っていて、
そんななかで、まともに話すことはあったのだろうか?
「誰かが話そうとしないと、誰も理解できないぞ……かつて、俺がバグラ軍を裏切ったように……」
「────っ!?」
バグラ軍……昼間に先輩が戦った、デジモンの軍隊……こいつはそいつらの一員だったのか。
「……あんたは、後悔してるっすか?」
「俺は後悔なんかしちゃいない……仲間の為に裏切って、結果として、たくさんの仲間の命を救ったんだ。ましてや、バグラ軍は屑どもばかりだった────その決断に後悔なんかない」
「……でも、お前は違う」
「お前は仲間と一緒にいるだろ……だったら、自分のことをもっと知ってもらわなきゃいけない」
「────そうしないと、また同じことになるぞ」
「ただ生き残ればいいんじゃない」
「ただ一緒にいるんじゃない」
「一緒に前を向いて生きていくんだろ」
「だったら、ちゃんと話さないとわからないだろ」
そう笑顔で言ったその姿に、オイラのこれまでを話してみたいって思ったっす。
「────で、んなことがあったわけか」
今までの経緯を聞いて考える。
まず、マナトの名前が偽名だったこと。
マナトとの出会いや、マナトの世界を救うという意志、そして、家族との別れ。
俺が幼稚園に通っていた時期から、休む間もなく日々戦いに明け暮れ、他人を信じられず、味方もマナト……いや、タイト以外いなかったこと。
多くの人とデジモンによって仲間を失い、さらに他人が信じられなくなったこと。
そして、別世界で神に捕まり、レオモン……シンの
そんなシンを信じられなくなったこと。
テトはシンよりも強かった。
本気を出せば、どんな相手でも負ける気はしなかった。
それに比べ、シンは弱かった。
少し戦えば負けそうになり、こんなんじゃタイトを守れないって思っている。
それでも、タイトはシンを優遇した。
成果を出したテトと負けてばかりのシンに同じものを与え、同じように扱った。
テトはそれがどうしても気に食わなかった。
……そこから、俺は、
「……うーん?」
少し、頭を悩ませていた。
「────なんだよ、タイキ……なにかわかんねえことでもあんのか?」
「聞きたいことがあるなら、聞いてほしい……僕自身じゃ思いつかないこともある」
グレイモンも手伝ってくれるみたいだけど、グレイモンから聞いた話だけじゃ、ちょっとわからないことが多すぎる。
マナトはなんで偽名を使ったのか?
グレイモンから聞いたタイトという名前は、隠す必要はない気がする。それでも隠さなきゃいけないことはなんだ?
マナトの世界を救うという目的は、どこから来たのか?
世界を救うなんてどこからそんな考えが浮かんだ? ……デジモンとの出会いについては確信していたということなのか?
マナトはテトとシンを差別していた?
……ううん、これは違う気がする。
俺が見た限り両方とも同じように相手をしていた……気がする。まだ出会って数時間しか経っていないから、断言はできないけど……俺は結果や評価に限らず、平等に扱っていたふうに見えた。
マナトの世界はなんで二度滅ぶ?
これを聞いていたときに、マナトはデジモンのことをテトに出会う前から知っていたと思った……でも、それが世界が滅ぶ原因だとは思えない。
マナトは何を知っている?
……その言葉が脳内に響き渡るのを感じる。
だけど……今、グレイモンのことを救う為に必要なことじゃない気がする。
「…………」
それでも、グレイモンに真剣な目で見られると、聞きたくなってしまうなあ……できれば、本人から聞きたい
「そうだなぁ、まだ確証を得られていないことばかりだからなんとも言えないけど……あの2人にちょっと聞いてこようかな?」
────よっと、という掛け声と共に立ち上がる。
まずは、シンのところへと行こうかな……
「……って、おいおい、タイキは俺の特訓を手伝ってくれるんじゃなかったのかよ」
そんなとき、そんな声が聞こえた。
呆れた様子のシャウトモンがそこにいた。
「……あっ、そういえばそんなこともあったな────うーん、でも」
グレイモンのほうを見る……やっぱり、
「────ほっとけない……だろ。いいぜ、行ってきやがれ……俺はタイキ、お前のそういうところも含めて、ジェネラルとして気に入っちまったんだよ」
「1人でなんとかやってみるさ」
「────シャウトモン」
そう笑って見せたシャウトモン……俺は、
……ううん、そうじゃない。
「────ありがとう、シャウトモン。俺、ちょっと行ってくるよ」
そう言って、走り出す。
……きっと、シャウトモンなら大丈夫だ。
「僕も悩みを聞いてもらっているから……特訓、だっけ? 手伝うよ」
「……おっ、ありがてえな。じゃあお願いしようかな」
「────『メガフレイム』」
「────うぎゃあっ!?」
「────『メガフレイム』」
「……うおえっ、あぶねえだろっ!!!」
「これぐらい避けられないと話にならないよ────『メガフレイム』」
「────うばおっ!? それにしたって」
「もう一度、いくよ 『メガ」
「えっ、おっ、ちょっ……うぎゃあああああ!?」
……本当に大丈夫だったのだろうか?
「────帰ってくるのが、遅いわね」
「……ああ」
日が頭を過ぎた……タイキさんもシャウトモンも、テトもシンも帰ってきてはいない。
「────マナト、大丈夫か?」
「バリスタモンもありがとう」
バリスタモンはテトを途中で見失い、こちらへと戻ってきていた。ドルルモンはまだ帰ってきていない。
「オレはなにもやってない」
「……それでも、だよ」
追いつけなかっただけで、追いかけてくれたことはありがたかった。
……正直にいえば、追いかけなかった俺のほうが問題があったのだと、のちのちそう思ってしまった。
「……誰か帰ってきた」
夕陽が沈み始めたとき、西の方から複数の影が見えてきた。
「────タイキくんっ!?」
「────シンっ!?」
タイキさんとシンの影が見えた。
タイキさんにはネネさんが、シンには俺が近づく。
「……タイキ、大丈夫?」
「あはは、心配かけたね……ネネ」
「────シン、悪かった」
「────マナトっち」
……タイキさんとネネさんに比べ、気まずい雰囲気が漂う。
「……オイラはっ」
「────また、テトが来てからな」
そう言って話を切った。
……テトはその日帰ってこなかった。
『ジェネラル』
この世界におけるデジモンをあやつる人間の総称。
他のシリーズでは、デジモンは基本的に1人につき一体だが、この世界では、基本的にデジクロスを使い戦う為、デジモンを2体以上連れているので、パートナーではなく、