コロナで病状が悪く投稿が遅れました。
みなさん、コロナには気をつけましょう。
「俺達の在留、そして宿泊施設を貸していただきありがとうございます」
「────こちらこそ、あなた様がこのゾーンにおられることが利益につながっております故……」
「……利益っすか?」
「ブラストモンを撃退できる実力者がいてくれるだけで、ありがたいのですじゃ」
「つまり、シノビゾーンが困ったら、助けて欲しいというわけですか?」
「そうですじゃ」
「……わかりました。俺達も間借りしている身なので、できる限り手伝わせてもらいます」
「いやあ、優しいデジモンでよかったな……これでしばらくは寝る場所には困らない」
タイキさん達が旅立った後、俺達はモニタモンの長老へ滞在許可と宿泊施設を貸してもらえるように交渉を行なった。
理由は、拠点確保と自身がこのゾーンに対して敵対しているという意思がないことを、このゾーンに住むデジモン達に理解してもらわなければならなかったからだ。
「……何かが起きた時の為に、侵入者対策に警報が鳴るように準備して」
それをやらなかったせいで、最初に辿り着いたデジタルワールドで、差別を受けることになった……かもしれないとこの数年間で思うようになった。
「自分達で管理していた物資は、とりあえず身につけられる簡単な装備や携帯食料以外は拠点に置いておいて……」
流石にあまり立地の詳しくない場所で野宿や、最悪の場合には戦闘するなんて状況は嫌だったからだ。
「……これで拠点は確保できたし、あとはデジヴァイスから夜の食事の分を準備して」
「────ねえタイト」
俺が拠点の整備を進めているときに、不意に服の裾を掴まれた。
「……ん?」
「本当によかったの?」
テトが聞いた言葉に、少し疑問が湧いた。
「……なにが?」
「……、────うん」
テトは俺の様子に少し迷い、悩んで…………覚悟を決めた。
「……
……、────っ!?
「────はあっ!? なに言ってんすか、急に。タイトっちが戦いが嫌いなわけ…………」
シンがテトに向かって、怒鳴り声を上げる。でも、テトはこっちを真剣な目で見ている。
「────
俺はテトに観念した。
ずっと前から、テトは俺を守ることを過度に執着していたからなあ……たぶんバレてるんじゃないかって思っていた。
「バレてるもなにも、最初から戦うことなんて好きじゃないことぐらい僕は知ってたよ」
そう笑顔で言うテト……そうか、そうか。いちおう、バレないようにいろいろと演じてはいたつもりだったんだけど……やっぱり、俺に役者の才能はないな。
「……だって、デジタルワールドに来て初めて、僕とデジモンと戦ってときに震える人間が、戦うことが好きなわけないからね」
テトの言葉に、本当に最初からバレていたことに気がついた。
「懐かしい……そんなこともあったっけ」
記憶を掘り起こしても、ほとんど記憶に残ってないぐらいどうでもよかったことを、テトはしっかりと覚えていた。しかも、そこから戦うことが嫌いなことに気がつくなんて……やっぱりテトはすごいなあ。
「あったよ……僕はタイトのことをずっと見てきたんだから」
「そうだな……家族よりも、お前と一緒にいるんだよな」
「「あっ、ははははははははははははっ!!!」
なんだ、テトはわかってくれてたんだ……はやく、もっとはやく言えばよかった。
「────あんたら、さっきからなにを言ってっ!?」
……あっ!?
「……もしかして、お前」
「────話についてこれなかったのか?」
テトと一緒にシンのほうを向いた。
そこには、今までの会話に一切着いて来れていないシンがいた。
「いったい、なんなんすか!? タイトっちは戦いたくないって言うし、先輩はそれを知ってたみたいだし……あの時言っていた覚悟はなんなんすか!? あんたら2人は納得しているみたいっすけど……オイラはぜんっぜん納得できてねえっすよっ!!!」
「……はあ、────」
深いため息が出る。
なんか、テトが俺のことを詳しく知りすぎのような気がしてきた。演技がバレていたのも、テトだったから……という理由のような気がしてきた。
「ちょっと、来てくれ」
「……なに、タイト」
「……なんすか?」
和室まで行き、ちゃぶ台を準備する。にしても、グレイモンのサイズが普通に歩けるぐらい広い家って、相当でかいな。
「ええと、たしか座布団はっ……ここだっけ?」
「ちょっと、お茶を準備してくる」
「お菓子取ってくるっす」
俺の行動にテトとシンがそれぞれ動き、全員が集まる頃にはちゃぶ台の上に和菓子や緑茶が準備されており、全員が座布団に座っていた。
「……それで、なんで急にこんなことを言ったんすか?」
…………ああ、テトに比べてシンは気づいていなかったから……急なことだと思ったのかな?
「……大事な話があるからかな」
ポッケの中から、タイキさんから貰った紙を取り出す。
「それはタイキから貰ったやつっすよね……たしか、オイラ達に足りないものがあるっていう……」
「……まあ、こいつは後で話すとして────まずは俺の体調のことから」
俺はタイキさんからの手紙を脇に置いた。これからが本題だ。
「俺の体はデジモンに近い存在へと変化している」
あの日、ノルン様から言われたことを言った。まずはこれを言わなきゃいけないって思っていた。
「────ハァッ、どういうことっすか、それっ!?」
「────ッ!? それってどういうことッ!?」
テトとシンが驚く……まあ、驚くのもしょうがないか。
「俺は長い間デジヴァイスから生産されたデジモンの餌を食べていたからな……それが原因で大人に……デジモンでいうところの成熟期や完全体、究極体にすらなれるか怪しいらしい」
俺はテトやシンにもわかるように、デジモンの生態にのっとって説明する。
「……えっと、それって本当に大丈夫なの?」
テトの心配する声に、自分でも自分のことを考えないようにしていたことを噛み締めながら、説明する。
「人間の体としてはなにが起きるかわからないって、ノルンに言われた────テトも実際に見ただろ……リアルワールドでコーラを一口飲んだだけでぶっ倒れたのを……あれは、そういうことだ」
「……ぶっ倒れたっ!? あんた、あのときイグドラシルに呼び出されていたのはそういうことっすか!?」
……ああ、そう言えばシンはあの場にいなかったから、知らなかったのか。
「……まあ、そうだな」
「────ねえ」
テトが俺になにかを聞こうとしてくる……でも、ダメだ。
「……テト、まだ話が終わってない」
テトの真剣そうな表情で言おうとした言葉を一度区切る。
それを聞かれたら、次の話が言えなくなる。
「…………」
テトはかなり不満げな表情で見ている……だけど、話を続ける。
「俺の過去のことは話したな」
「……えっと、転生者ってことっすよね」
シンが思い出すようにそう言った……そんなにどうでもいいことじゃないんだけどな。
「……そう、俺には前世の記憶がある」
嫌な記憶……思い出したくもない記憶。白い部屋……眼鏡の男性に……医者に言われたことを、それを思い出しながら言う。
「……それが、どうしたの?」
テトが心配そうにしている……首を振るが、言葉を続ける。
「俺は今、精神的に病気のような状態になっている」
前世の医者の言った言葉を思い出して、それに近い状況が起きてることを伝えた。
「……それも、本当なんすか?」
「ああ、本当だ」
シンの確認の言葉……できれば自覚したくなかったけど、それを……精神病にかかってることを無理矢理自分で納得させた。
「俺の前世は悲惨なものでな……デジモンに言ってもわからないだろうが、前世の俺はトラウマを抱えて『強迫性障害』と『PTSD』という精神的な病気にかかっていた」
医者に言われた言葉を思い出す。
……全てが終わった後に、言われたその言葉がとても苦しかったのを思い出した。
「……強迫性障害」
「PTSD……それって、どういう病気なんすか?」
テトとシンがそれぞれ別の病気の言葉を言った。
「『強迫性障害』っていうのは……脳の病気で強い恐怖や不安に襲われる病気だ。『PTSD』っていうのは、過去のトラウマによって日々悩まされる病気だ。今世で産まれたときには、病気自体の影響も薄くなっていた」
テトや母さん……みんなとの生活で少しずつ病状はなくなっていた。
「……それで、タイトはあんなに怯えていたんだね」
テトに出会った時は最悪の状態だった。
自分の前世を自覚して、すぐのことだったから、ものすごく嫌悪感が残っていた。
「……ああ、俺は幼少期のころに怯えていたのは『転生したことによる自身の環境の変化』や『前世でのトラウマ』によって、常に緊張した状態だった。だけど、テトが来てくれたことや現世の家族との生活おかげで、少しずつ解消していったんだけど……」
「
「────っ!?」
「……うん」
シンが驚愕……テトは納得か。
なんとなく話から理解していたんだろうな。
「昔と違って、今度は『人間とデジモンによって起こされた、ゴールドヌメモンの死による絶望と自身の行動への失望』と『世界を救わなければならない、主人公であらねばならない』というものになった」
……そう、それが俺の心をずっと支配している。
「そこから、神の力を持つノルン様……いや、デジタルワールドの神、イグドラシルへの依存や今までの自身が行なってきた修行を否定するような言動」
俺が今までしていたことそれを否定するような考え、
「自身の命を顧みない自己犠牲」
命を無駄にするような生き方、テトに怒られたこと、
「────それら全てが今の俺達の足枷になっている」
全部俺の心が弱いせいだ。
「────っ!?」
「前世の関係者とゴールドヌメモンの夢を見る」
「…………」
「前世の関係者の夢は特に問題ない」
「……
「やつ……いや、俺は俺が作り出した妄想のゴールドヌメモンによって、俺は精神が侵されている」
「……
不意に口に出た嫌悪感……ああ、やっぱり今の俺は嫌いなんだな。
「……っ、タイトっち……ッ?」
シンの悲しそうな声が聞こえる……ああ、違う……そうじゃないんだ。
「間違えたのなら謝る。この言葉はゴールドヌメモンに対してじゃないさ……俺自身に、だ」
「俺の心の弱さが、妄想となって今の俺達の足枷になり、命の危機にまで関わってきている」
「……俺はそれが今後の旅の邪魔になることが本当に嫌だ」
「テトやシンが俺の心の病気のせいで苦しむのも、悲しむのも嫌なんだ」
「……だから、俺は────」
「────ねえ、タイト」
「……ん?」
俺の言葉をテトが遮る。
テトのほうを向いても表情がわからない。
「────
少し悲しそうに、でもテトは笑ってそう言った。
「────っ!?」
隣にいるシンはその言葉に絶句している。
「ミレニアモンなら十数人ぐらい引き連れて別世界へと逃げることぐらいできるよ。タイトが嫌な戦いなんてすることない。アイだって、ルビーだって、生き残れる……うん、それがいいよ」
「……それは」
なんども考えたことがある。
テトや家族を連れて別世界へと逃げる……ミレニアモンに進化できるようになってからは、なんども考えた。
……でも、それは────
「……先輩、それは間違ってるっす」
「……は?」
俺の言おうとした言葉が、シンの口から出る。
「……なにが間違ってるって言うんだ、レオモン」
苛立ち、怒り……気に食わない相手からの否定の言葉……あの時と同じだ。
────でも、
「そうだね、間違いだよ」
あの時と今は違う。
俺もちゃんと意思を伝えなきゃいけない。考えは話さないとわからないってことを、わかったから。
「……なんでっ、そんなこと────っ」
俺は首を振る。その行為がテトの言葉を止めた。
「……シン、話してくれないか」
「……ハイっす」
「オイラは逃げるのは間違いじゃないと思うっす」
「それならっ!!!」
「でも、1番最初に取る手段じゃないっす」
…………へえ、わかってるね。テトよりも、俺のことを考えてくれてる。
「────っ!?」
テトのように俺の考えを理解してなかったから、テトよりも俺のことをわかってないのかなって思ったけど、案外わかってくれてるのかもしれない。
「オイラ達はタイトっちの目的のために、力をつけてきたっす。なら、その全てを使ってからでも、逃げるのは遅くはないと思うっす」
「……だって、気に入らなくても、あの場所で何年も暮らしてきたんすから」
シンは落ち着いた声でそう言った。
そう言えば、あの夜もそうだった。
俺の未来のことを考えて、間違ってるってシンが1番最初に言ってくれたんだ。
それなら、今の状況も理解できる。
「……というのが、オイラの考えっすが、どうっすか?」
「…………」
二体は俺のほうを向いている。
テトもシンも、どちらも俺のほうを心配そうに見ている。
「……うん、そうだね────シン、当たってるよ」
シンが俺の言いたいことを全部言ってくれた。
「……よかったっす」
俺のことを理解してるのがテトで、俺が今後どういうふうに動くべきかをよく考えているのがテト……そんな感じがする。
「…………納得できないっ!!!」
テトが大きな声をあげて立ち上がった。
「なんでっ、……なんで、タイトがこんな目に遭わなきゃいけない!!!」
テトの絶叫が響き渡る。
「タイトはツルギ達みたいに宿題やって、友達と遊ぶことなんてできない」
「タイトはツルギ達みたいに家族に会うことができない」
「……タイトの世界はまだ、世界の終わりが来てないって言ってた……それがなおさら気に入らないっ!!!」
「タイトが家族と一緒に暮らせなくて、タイトが病気になって……タイトが、痛い思いばっかしてっ!!!」
「そんな中でも、必死になって戦って強くなろうとしてるのにっ!!!」
「タイトが寒い夜を過ごしてるのに、暖かい部屋でのんびり暮らしてる」
「タイトが家族と……アイやルビー達と会えないのにっ、家族と幸せに毎日過ごせてる」
「タイトが学校に行けなくて毎日必死になって勉強してるのに、呑気に友達と遊ぶのが普通な」
「それが当たり前になって暮らしてる人間達を助けなきゃいけないんだ!!!」
ひとこと、ひとこと、テトの長年の思いが部屋の中に響き渡った。
……そうか、そうか。その言葉に納得してしまった。
少なくとも、テトだってツルギさん達と交流はしていたんだ。それなら、ツルギさん達の話は聞いていたんだ。
ツルギさんやユウさんは定期的に元の世界に帰っていた。
友人と遊んだという話も聞いたことがある。
家族との鬱陶しげな……それでいて、少し羨ましいと思ってしまった話だってしたことがあった。
テトはそれを聞いていたんだ。
「……そんな、やつらを────…………っ!?」
「テト、もういいんだ」
俺はテトの腕を掴んだ。
本当は頰に手を当てたかったんだけど、流石にグレイモンの顔に手を当てられるほど、背は高くないんだ。
「……そんな……ことは────」
「もう、いいんだ」
どんなことをしたって、ただの人間数人の為に時間は巻き戻らない。
「俺は、お前やシンといられて満足だから」
でも、こうやって俺達はここにいる。
こうやって旅をしていなきゃ、会えなかったみんながいる。
「……それでも────っ」
「俺は幸せだから」
家族に会えなくて寂しくても、苦しいことがあって病気が再発しても、それでもお前といられた時間が幸せだったんだ。
「また、みんなで母さんのライブに行こう。今度は一緒に行こう」
結局、あの一回しか行けなくて、ずっとテトを両手に抱えて、ルビー達とテレビで見てるだけだった母さんのライブ……今度はテトとシンを連れて行けたら……。
「……うん、わかった」
テトは静かにそう言った。
「話はまとまったようっすね……やれやれ、しょうがない先輩なんす────」
ドンドンドンドンと、玄関の扉を叩く音がする。
「「「────っ!?」」」
瞬時に警戒レベルを上げる。
庭や家の周囲に設置した警鐘が鳴らないので、そこまでの相手ではないと思うけど…………
「……何者っすかね」
全員でゆっくりと近づいて行く……そんなとき、
「────たのもー、たのもーっ!!!」
……扉の、かなり小さな、背の高さが30センチぐらいの大きさの影がそんな声をあげながら、ドンドンとドアを叩いていた。
「────何者だっ!?」
────コテンっ、
そう言ってテトが扉を開けたとき、そんな音が聞こえた。
「……いてて……ん、あっ!?」
音が鳴った先────そこには小さな花の頭が見える。
「……やった、ここでやっぱり合ってた」
青色の花からピンクの顔が少し見えたとき、やや幼なげな子供の声で花そんなことを言った。
「俺を弟子にしてください!!!」
青い花────幼年期デジモン、『ピョコモン*1』はそう言った
頭に大きな花を咲かせた球根型デジモン。根のような触手を器用に動かすことで移動することができ、短い距離だがフワフワと空に浮かび上がることができる。好奇心旺盛で、ちょこまかと動く姿は非常に可愛らしい。群れをなして生活する習性があり、群れによっては数匹から数百匹にもなるという。
『デジモン世界の屋敷』
アニメでは基本的に住んでいるデジモンのサイズや環境によって異なる。たとえば、荒れた土地であれば泥で作られた家や、湿地帯であれば草や木で作られた家などさまざまなものがある。
例:デジモンテイマーズのツチダルモンの家は泥で作られており、机や椅子は土を固めたものであった。
ゲームでは、ゲームシステムのせいかデジモンのサイズ間に統一が無く、どんなデジモンでも入って来れるような家になってしまっている。
例:デジモンワールド『ジジモンの家』 完全体や究極体のでかいデジモンでも簡単に入れてしまうような家になってしまっている。サイズを考慮されていない。
シノビゾーンの家は、アニメ『デジモンクロスウォーズ』では比較的大きな家として取り上げられており、多くのデジモンが寝ている描写が存在する。
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