産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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あれはこの世界に飛び立つ夜の話。

『……全てを知っている貴方に、私が渡したデジヴァイスicを使うにあたり、禁則事項を設けます』

かつて渡された白と緑……2つの色を基調としたデジヴァイスicを見て、ノルンは言った。


『一つ、デジソウルを使い、肉体を強化しない事』


『これは自身の力を過信しない為、人間である事を忘れない為』


『二つ、デジヴァイスicに限界までデジソウルをこめない事』


『そのデジヴァイスicは貴方とこの世界を繋ぐ命綱……貴方がどんな場所にいても私が見つけられる為に必要な物です。過剰な負荷は与えない様に』


『ーーーー三つ、『バーストチャージ』を使用しない事』


『これは言わずもがな……ですね。デジヴァイスを壊す事で進化へと導く方法ですし、命を燃やす事で発動する為、何が起きるかわからない事が問題の為です』


『…………わかりましたか?』


最後まで聞き、それら全てを『禁じ手』として俺は神にしない事を誓った。

……だけど、納得はしていない。
理由は納得のいくものだったが、それが嘘のように感じる。


ーーーーだって、




ノルンは悲しそうにそう言ったから。







第十話 バーストチャージ 闇と夜決して混ざらず、けれど輝く

 

 深夜2時、多くの者が眠る丑三つ時。

 

 未だ痛々しい戦闘の傷跡が残る荒地にて、3つの影を三日月が照らしている。

 

「……ここっすか」

 

 直径20メートル程の楕円に、3メートル程の大きな穴……ファンロンモンが掘った穴だ。

 

「────ああ」

 

 俺はシンの言葉に同意する。

 

「まだ、2日しか経ってないんだ」

 

 あの戦いから2日、思っていたよりも時が経つのが遅く感じる。しかし、そこにある大きな穴は、間違いなくファンロンモンが掘ったものであると認識させられた。

 

「────そうだね」

 

 テトの同意の言葉によって、本当の事だと理解させられる。

 

「……なんで、まだ、2日しか経ってないんだよ」

 

 まるで、昔の自分に戻ったみたいだ。

 他者の命を簡単に奪わなければ生きられない場所……そして、殺し、奪い、進歩する……それこそが戦争の本質なのだと、日々の戦いの中からどうしても理解させられる。

 

 ────反吐が出る。

 

「……マナト」

 

「……マナトっち」

 

 苛立ちの感情が顔に出ていたのか、テトとシンが気づいた様子で近づいてきた。

 

「大丈夫、大丈夫だよ」

 

 そう思って、ポッケの中に手を入れ、デジヴァイスを握りしめた……ピシリと音が鳴る。

 

「……マナト」

 

「…………」

 

 静かに俺を見守ってくれるテトとシン……────ッ、背後から気配を感じる。

 

 

 

「────おい、貴様等……我が領地で何をやっている」

 

 

 

 振り向くと、そこには赤色の竜人型デジモンがいる……呼び出したのはこいつか? 

 

「────お前は誰だ?」

 

 テトは竜人型デジモンへと質問する。いつでも、戦闘可能なように戦闘態勢をとっている。

 

「質問をしているのはこちらだ……貴様等、俺の領地で……いや、俺の領地にこんな穴を開けたのは貴様等かっ!!!」

 

 怒りの眼差しを向け、そのデジモンはこちらへと質問した。

 

「────そうだと言ったら?」

 

 実際に穴を開けたのはファンロンモンだ……だが、ここを荒地に変えたのはテトとファンロンモンの戦いだ。

 

 だから、俺は肯定した。

 

「『ドラゴンブレストニックファイア』っ!!!」

 

 そう言った時、竜人型デジモンは俺達へと攻撃した。胸の二つの穴から出る炎は途轍もない火力だ。

 

「『メガフレイム』っ!!!」

 

 テトはそれを反撃するが……

 

「────くそっ!!!」

 

「────ダメっすっ!!!」

 

 シンは俺を抱えて攻撃の射線上から離れる。

 

「俺が領地から離れている内に……だが、反逆者……貴様等もこれで────」

 

 奴は更に火力を上げて攻撃してくるつもりだ。

 

「────一回じゃダメなら、もう一回だ……『メガ、────フレイム』っ!!!」

 

 テトは先程よりも力を込めて、『メガフレイム』を放ち、応戦する。

 

 

「そのような攻撃で俺の怒りの炎が────何っ!?」

 

 

 テトの2回目のメガフレイムで、敵の炎はようやく相殺される。そのことに、竜人型デジモンが驚きの声があがる。

 

「威嚇程度の威力しか使ってないとは言え……貴様等、我が炎を相殺するとは……本当に何も────」

 

 俺と竜人型デジモンが睨み合う……その時、

 

 

 

「────ねえ、ダークナイトモン……ちょっと遅れちゃったけど、大丈夫かな?」

 

「大丈夫だよ、ユウ……彼等はちゃんと待っててくれるさ」

 

 

 そんな子供と優しげな男の声が聞こえてくる……そして、

 

「────ああ、本当に来てくれたんだっ!!!」

 

 金髪の少年と黒い騎士のデジモンがこちらへとやってきた。

 

「ねえねえ、見てよ……キリハさんとは違うグレイモンに、他のデジモンとは比べ物にならないぐらい強いレオモン……やっぱり、マナトさんだよ!!!」

 

 少年は満面の笑みを浮かべる……目元や口元を隠すような装飾品はなく、人型デジモンのイメージにも合わない。そして、デジモン特有のプレッシャーというものが感じられない……こいつ、もしかして人間か? 

 

「言っただろう……私が君の暇つぶしに連れてきたんだ。絶対に後悔させないさ」

 

 黒い騎士のデジモンが優しげに少年に向かって微笑んだ……薄寒い詐欺師の笑顔だ。

 

「────貴様はっ、ダークナイトモンっ!?」

 

 竜人型デジモンが金髪の少年ではなく、横にいる黒い騎士のデジモンへと驚きの声をあげる……ん、ダークナイトモン……たしか、ネネから要注意のデジモンって言われてた────あのっ!? 

 

「────ッ、テト、シン」

 

 俺はテトとシンに指で合図を送り、竜人型デジモンへと向けた警戒レベルを更にあげることを指示。

 

「────マナト」

 

「わかったっす」

 

 小声で了承を確認。

 

「ユウ、私の言った通り彼等はちゃんと来てくれただろう」

 

「うん、ダークナイトモンありがとう!!!」

 

 敵はまだこちらの様子に気づいていない……が、あのダークナイトモンという奴……テトが今出せる最大限の力を出さないと勝てない出さないと勝てないレベルだ。

 

 ポッケへと手を突っ込み、デジヴァイスを掴み取る────ピシリ、とヒビが更に広がるのを確認した。

 

 もう進化には使えないよな、これ。 

 

 ……やはり使うしかないか、『禁じ手(あれ)』を。

 

「ドルビックモン*1、こんな夜更けに呼んですまないな」

 

 ……ドルビックモンって、たしかこの前の会議で情報が出ていたこのドラゴンランドのボス……つまり、奴等は繋がっていたということか!? 

 

「すまないじゃない、貴様に任せたドラゴンランドが……こんなにも疲弊しているとはどういうことだっ!!!」

 

「……どういうこととは?」

 

「部下から聞いたぞ……戦況についてバグラモン様に直接説明を求められ、バグラ城へと向かったこの1週間、貴様は戦線を後退させ、我が軍の兵士達を無闇に殺し……我が腹心であるファンロンモンを使い捨てた」

 

 ドルビックモンの拳が震え……怒りの感情で周りが少しずつ燃えてきた。

 

「────あつっ!?」

 

 火の粉がこちらへと飛んできた。手で受け流すが、温度が高いみたいで少し驚いてしまった。

 

「────マナトっ!? 大丈夫?」

 

 テトが心配してこちらへと来てくれるが……俺は視線をダークナイトモンへと向ける。

 

「────つまり?」

 

 素面顔で聞くダークナイトモン……こいつ、ドルビックモンの怒りがわかっていながら受け流している。

 

 

「────そんな貴様が何のつもりで俺の目の前にやってきたと言っているのだ!!!」

 

 

 俺の時よりも遥かに強い怒りの感情が伝わってきた。この世界の中で初めて出会った、強いデジモンの気配だ……でも、

 

「……ふむ」

 

 プレッシャー的にはダークナイトモンのほうが嫌な気配がした。

 

「────ふはは、あーっはっはっはっ!!!」

 

「────何がおかしいっ!!!」

 

 ダークナイトモンが笑い、ドルビックモンが怒る。しかし、2体の気配は強まるばかりだ。

 

「────マナト」

 

「わかってる、少し待て」

 

 2体のプレッシャーを感じてテトが進化を促す……それに返事をするふりをして、デジヴァイスicをポッケから出した。

 

 

「……何がおかしいって、ファンロンモンを倒したジェネラルが目の前にいるのに、呑気に私に怒りを向けているのが笑えるからさ」

 

 

 ……────ッ!? 

 

 ダークナイトモンがドルビックモンの怒りの矛先をこちらへと向けてきた。

 

「────何?」

 

 ドルビックモンがこちらへと向く。ダークナイトモンは笑ってこちらを見ている……てめえッ!? 

 

「……お前が、我が腹心ファンロンモンを倒した、だと?」

 

 俺を睨みつけるドルビックモン……はあ、しょうがないか。

 

 覚悟も決意もまだ決まってない……でも、

 

「────俺が」

 

 

「そうですっ、マナトさんはそのグレイモンをメタルグレイモンに進化させて、更に新たなる姿まで到達させてファンロンモンを倒したんです!!!」

 

 

 俺がファンロンモンを倒した事を言おうとした時、ダークナイトモンが連れてきた少年が目を輝かせてそう言った。

 

「…………」

 

 背後で小さく何かを言ったのが聞こえた。俺の言葉を途中で遮った事に対して、たぶん苛立ったのだろう。

 

「いやあ、すごかったなあ……メタルグレイモンの新しい姿でファンロンモンをズバって切り裂いたところ……本当にすごかったなあ」

 

 金髪の少年はドルビックモンの怒りが増しているのにも気づかず、笑顔でそんな事を言い続けている。

 

 

「本当にすごかったなあ────ねえ、なんで進化しないんですか?」

 

 

 ────ゾクリ、と背筋が凍る。

 

 こちらを見た眼差しを……()()()()()()()

 

「進化すればドルビックモンやダークナイトモンと引けを取らないぐらい強いデジモンになれると言うのに……」

 

 ……こいつは、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 デジモンストーリー(あのせかい)で会った。

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 腐れ外道(にんげんとデジモン)共と同じ顔をしている。

 

「……ねっ、そうでしょう?」

 

 笑いながらそう問いかける笑顔は……腹の底から嫌悪しているあいつ等と一緒に見える。

 

「……マナト、ほんとう?」

 

 心配そうに聞くテト。

 

「……マナトっち?」

 

 俺の方を向くシン……はあ、ついにバレたか。

 

 

「ああ、『あの』進化はできないよ」

 

 

 手元で隠していたひび割れたになったデジヴァイスicを見せる……白と緑の装飾がポロポロと地面へと落ちていく。

 

「────っ!?」

 

「────っ!?」

 

 テトもシンも驚いてこちらへと向く……嫌だなあ、こういうのは。

 

 

「────あははっ、やったぁ……やっぱり、あってたよダークナイトモンっ!!!」

 

「流石、ユウ……私も驚いたよ。前回の戦いでしっかり彼を見ていたんだね」

 

 

 気持ち悪い、気持ち悪い……あの邪気があるくせに無邪気な笑顔も幼子をわざと褒めるような猫撫で声も……

 

 

『アーハッハッハ、ざまぁないわ、だって、あんなにイキってたクソガキをこんなふうに追い詰められるなんて』

 

 

 心の底から嫌悪するあの声を思い出す。

 

「────なら、こいつ等は無力な訳だな」

 

 怒りに満ちたドルビックモンが、力を溜めている。

 

「うん、ファンロンモンの装甲を破れなかったぐらいだから、ドルビックモンなら簡単に倒せるんじゃないかな」

 

 笑顔でそんな事を言ったくそガキ。

 

「────なるほど、ファンロン鉱すら進化しなければ破れなかった彼等ではドルビックモンは倒せない……という訳だね、ユウ」

 

 怪しい笑みを浮かべるダークナイトモン。

 

「────マナト?」

 

「────マナトっち?」

 

 テトとシンは心配そうにこちらへと聞く。

 

「じゃあ、俺が────」

 

「……あのさ、盛り上がってるところ悪いんだけどさ」

 

 ドルビックモンが動き出そうとした時に、わざと声をかけ、デジヴァイスicを地面へと落とす。

 

 

 

「俺は進化できないとは言ってないよ」

 

 

 

 そして、俺は────

 

 

 

()()()()()()i()c()()()()()()()

 

 

「────えっ?」

 

 

 全員が俺の言葉に戸惑い、何をしたかわからない状況。

 

 

「……何を?」

 

 

 反撃する糸口……それを粉々に砕いた俺に驚きの表情を向ける。

 

 

「────タイト、なんでッ!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

「────()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

()()()

 

 

()()()()()()i()c()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 夜空色の光が、眩く照らし、そして破片残らず燃やし尽くし、俺の体を包み込む。

 

 

「────『バーストチャージ』」

 

 

 [グレイモン進化]

 

 [レオモン進化]

 

 

「────ダークドラモン」

 

「────バンチョーレオモン」

 

 

 2体は究極体へと姿を変えた。

 

「────タイ……マナトはこれをわかってて」

 

 テトとシンの暗い雰囲気が消える。

 

「マナトっち、これなら────」

 

 

 

「…………()()()()()()()()

 

 

 

 これなら現状を打破できると思ったその時、クソガキが笑ってるのが見えた。

 

 

 

「────()()()()()()()

 

 

 その言葉と共にダークナイトモンとドルビックモンが消えたのが見える。

 

「────テメェっ!!!」

 

 ダークドラモンに進化したテトが突っ込んでいく。

 

 

 

 ────その時、嫌な予感がした。

 

 

 

「────待て、テトっ!?」

 

 

 

「────()()()!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────テトっ!?」

 

「先輩!? お前っ────っぐへっ!?」

 

「シン、おま、ちょっ、待っ────ふべっ!?」

 

 吹っ飛んだ方向を向いたシンは、敵に攻撃されたようで、吹っ飛ばされた方にいた俺を巻き込んでテトのところまで吹っ飛ばされる。

 

 

「…………いてて、て────っ、テトっ、シンっ!?」

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 咄嗟の防御もままならず、吹き飛ばされたが……テトとシンはすでに気絶している。

 

「……そこの少年」

 

 ダークナイトモンの声が聞こえてくる…………これって、絶対絶命……なんだろうな。

 

 

 

 

 

 [クロスアップ ダークナイトモン]

 

 

「……これは」

 

 

 自身の鎧が赤く染まり、背中には竜の羽が生えている。

 

 

「先程、の実感は……」

 

 

 眼前の敵を屠り、殴り、吹き飛ばした槍には赤き竜の顔と羽の装飾が刻まれている。

 

 

「ふっ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ────ッ!!!」

 

 

 意識が高揚する。

 

 

「────素晴らしい、素晴らしい強化だ」

 

 

 全身から力がみなぎり、今ならなんでも倒せそうな全能感に感情が支配される。

 

 

「まさに、強靭、無敵……ありとあらゆる意味で最強の力を手に入れたっ!!!」

 

 眼前にいた敵…………自身よりも強くなり、これは兄上でもと感じていた2体……だが、その2体をいとも簡単に倒す事ができた。

 

 

「────これなら、これなら兄上にもっ!!!」

 

 

 勝てる……そんな気がした……が、今は────

 

「……ユウ、ありがとう。こんな力を私にくれて」

 

 この力をくれたジェネラルのユウ(あやつりにんぎょう)にも感謝の言葉を言わないとな。

 

 

「────すごい、すごいよダークナイトモンっ!!!」

 

 

「あんなに強そうなデジモン達を一瞬で倒すなんで、ほんとうにすごい!!!」

 

 ユウはあの2体に勝った事を自分の事のように喜んでくれる。

 

「ああ、君のおかげだ」

 

 少し耳障りだったが、感謝の言葉を使わないといけないのが……鬱陶しい。

 

「────さて」

 

 私は彼の方を向く。

 地面に這い蹲り、気絶している自身の手下の2体に驚いている彼を見た。

 

「……良い」

 

 今の私には及ばないにしろ、かつての私を超える力を手にし……そして、立ち向かう確信を持った彼とその手下2体が途轍もなく欲しくなったのだ。

 

「……そこの少年」

 

 彼は冷や汗をかきながら、私の方を向いた……だが、戦意はまだ消えていないようだ。

 

 ────やはり、私の目に狂いはなかった。

 

「たしか、マナト……くんだったね」

 

 人間の名前など、まともに覚える気がなかったが……たしか名前がそうだったはずだ。

 

「……なんだ」

 

 私は慎重に言葉を選ぶ。

 

「────私の部下にならないか?」

 

 彼が私の(しもべ)となり、ダークネスローダーを手にすれば、この操り人形とも別れる事もできる。

 

 演技をする必要もなく、D5まで兄上を騙し続ける事が……いや、この少年が持つ力を利用(くし)すれば……気絶した2体の進化を維持する彼の体から放たれる夜空色の光……あれを手にする事ができれば…………兄上を超えうる力を手にする事ができるかもしれない。

 

「…………」

 

 少年からの返答はない……もしかして、聞こえていなかったのだろうか? 

 

「────もう一度、言おう。マナトくん……私の部下にならないか?」

 

 今度はハッキリと、そして彼にも聞こえるように大きな声で言ってみる……彼に反応があった。立ち上がり、こちらへと向いて、2体を守るように私の攻撃の射線上へと移動する。

 

「────何のつもりだ」

 

 彼は私を睨みつけながら、そう言った。

 

「いや、何……君のような才覚のある人間……しかも、この世界ではなく別世界の人間の力が欲しいだけさ」

 

「────っ!? ……なんで俺が別世界の人間だとわかった?」

 

 彼は私を見て驚いたが、すぐに質問を返してくる。思考を切り替えるのも早い……さらに、欲しくなった。

 

「────兄上が……バグラモンが言っていたのだよ。『別世界の人間がやって来た』……と」

 

 やはり、兄上が直々に来られなくてよかった。こんな出会いがあるのだ……私はとても運がいい。

 

「────へえ、この人って別世界の人間なんだ?」

 

 ……隣にいるユウが私に聞いてくる……存在自体気に食わないが、これが成功したら用済みだ……それまでの我慢だ。

 

「そうだよ、ユウ……兄上はこの者を倒すように言ってきたんだけど……私はそれがもったいなくてね────彼の力を使えば我々のゲームが更に面白くなってくれると思ったのだよ」

 

 ユウに向かって優しげに言う。

 

「────ふうん、ダークナイトモンの考えだし、楽しみにしてるよっ!!!」

 

 無邪気な笑みが私の感情を逆撫でする……だが、

 

「…………」

 

 彼の前では、そのような事はできない。

 

 あくまで、人間の子供にも優しい敵のデジモン……という設定を守らなければいけないからな。

 

 ……それも、彼が仲間になるまでだ。

 

「……くくく」

 

 彼は笑い出した……何か心境の変化でもあったのかな? 

 

 

「────くはっ、くはは、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ────

 

 

 ────バカだろ、お前」

 

 

 ……ドンッ、と彼を中心に暴風が暴れ出す。

 

「────いったい何が!?」

 

 暴風の中で、彼は平然と立ち続けている────彼はいったい!? 

 

 

「────俺は、あの場所が……この世界が好きなんだよ」

 

 

 暴風の中でも彼の声が耳に届く……この世界が好き? それがなんだというのだ!? 

 

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 

 彼を中心とした暴風が地を揺らし始める。その中心は夜空色の光だけでなく、『闇色の光』が存在する。

 

「────ひとつだけお前に感謝してやるよ」

 

 ────()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「『男の喧嘩は常に命懸け死ぬ事、恐れた時点でそいつが負けなんだよ』っ!!!」

 

 

 ────バギィッ!!! 

 

 

「────ダークナイトモンッ!?」

 

 そんな音が聞こえた気がした時、私の体が宙に舞っていた。

 

 

「────これはシンの……いや、俺達の偉大なる師匠の言葉だ」

 

 

「……、うぐ、あ……きさ、ま」

 

 なんとかして立ち上がる。だが、私の鎧の殴られた部分がへし曲がっていた。

 

 

 ……そして、彼は私が立ち上がるのを待つように立っている。

 

 

 

「────さあ、第二ラウンドを始めようか」

 

 

 

 そんな彼の言葉を聞いた時、三日月は夜空の上で輝いていた。

 

*1
レベル:ー タイプ:竜人型 属性:ウィルス 必殺技:『タイラントコルブラント』『バーニング・ザ・ドラゴン』『ドラゴンブレストニックファイア』

「ビッグデスターズ」火烈軍団将軍。数多のドラゴンデジモンを一糸乱れず統率し、どんな戦況下でも圧倒的な戦力で敵を討ち滅ぼしてきた。パワー・スピードはどれも長け、戦闘経験も豊富で直感力も優れており臨機応変に戦いをこなす。戦場に迸る破滅の炎を好む性格で、平穏な地域を見つけては戦闘を起こしていく。そしてデジモンが、世界が燃え死んでいく様を眺めて快楽を得ている。 戦闘において昂る怒りを炎の剣とした「タイラントコルブラント」はドルビックモンの激怒と同期し強大な威力を発揮する。地形に龍脈を突く「バーニング・ザ・ドラゴン」で地形変動させ敵団体にダメージを与え、超高熱の「ドラゴンブレストニックファイア」で触れた者を一瞬にして焼き払うなど一騎当千な戦いを繰り広げる。





「ーーーーこちらピョコモン、敵はいないよ、そっちは?」

暗く輝く月の光。

三日月が照らす夜空の中、俺はマナト殿から言われた通り、派閥の仲間達と夜間警備を行っている。

『こちらは見えないぞ!!!』

西側のエアドラモンから連絡が来る。

『こっちもいないよー』

バーガモンの声が聞こえた。東側は大丈夫の様だ。

『ーーーーこちらも敵影は見えない……本当にマナト様やテト様から言われたのか?』

ブラックテイルモンが言ったように、南側も安全な様だ……ん、何か聞かれた?

「……何が?」

『本当にマナト様やテト様からの指令なのかと聞いている』

ブラックテイルモンの鋭い声が聞こえる……ああ、こいつは『狂信者』だった……ちゃんと、みんなでお見送りをしたのにまだ言うか。

ーーーー派閥。

この拠点では、

最前線で敵と戦い、戦線を維持するキリハ殿を信頼するキリハ派閥。

スパイ行為や拷問を行い、敵から情報を得たり、手に入れた情報を駆使して作戦立案を行うネネ派閥。

武勲により見たこともないうまい食べ物や傷の回復ができるアイテムを支給したり、拠点のインフラを管理しているタイト殿……いや、マナト殿と圧倒的な力により、デジモンから支持を受けているテト殿とシン殿を支持するマナト派閥。

この三つの派閥に分かれている。

その中でも、圧倒的力によるカリスマ性を維持するテト殿を信頼する『狂信者』の一体に言葉で詰め寄られる。

「少なくとも俺達が、マナト殿が帰ってくるまで守らなきゃいけないよ……他の派閥の連中に薬を盛ったんだから」

マナト殿に薬を盛った宴を行い、派閥外のデジモン達を強制的に眠らせろと言われた。

キリハ殿もネネ殿も今は眠って頂いている……理由はーーーーッ!?


「ーーーーッ!?」

『ーーーーッ!?』

月の光を切り裂くほどの闇色と夜空色の光の柱が立ち昇った。

『……あれって』

『ーーーーマナト殿が行った方だ』

エアドラモンとバーガモンの声が聞こえる。

『…………』

『…………』

『…………』

『ーーーー何かあったのだろうか?』

長い沈黙を破ったのはエアドラモンだった。

『……もしかしたら、苦戦してるのかも』

バーガモンが心配の声をあげる。

『ーーーーすぐに助けに行くべきだッ!!!』

その声に反応したブラックテイルモンが大声をだして、助けに行くと言った……これはちょっとまずいな。

「俺達が行っても足手纏いだろ……ここは信じて待つべきだと俺は思う」

『ーーーーそんなこと言ってる場合じゃないだろっ!!!』

「少なくともマナト殿達の実力は俺が一番知ってる……お前が行ってもどうしようもないんだよっ!!!」

くそっ、仲間同士で争ってる場合じゃないのに……テト殿は何をやってるんだ。

『ーーーーそれでもっーーーーがぁ!?』

ブラックテイルモンの声が突然聞こえなくなった。

「ブラックテイルモンっーーーーいったいどうしたんだ!?」

ブラックテイルモンは応答しない。

『ーーーーブラックテイルモンっ!? いったいーーーーへけえ!?』

『バーガモンっ、お主いったいーーーーおぼえ!?』

次の瞬間、バーガモンとエアドラモンがやられた。

いったい、何が……まさか敵襲!?

監視台から降りて、キリハ殿達の元へと向かう。

「早く、キリハ殿達を起こさないとーーーーッ!?」

自分に出せる最大限の速さで、キリハ殿が眠っているテントまで…………っ!?

目の前に黄色い鎌が見えた。

……シン殿からの修行が無ければ、避けることすらできなかった。

「OH、気づかれました。これで彼らを気絶させたのですが……侮っていたようですね」

鎌の先を見ると、黄色の人型デジモンの姿が見える。

「ーーーー何者だ!?」

人型デジモンへと声をかける……かなりの大声を出した。巡回をしている派閥の連中がじきにここにやってくる。

……そうすればこいつも、

「威勢はよし、戦闘力も他のデジモン達に比べ高い」

そう言って、俺へと近づく人型デジモン。


「……ですが、これまでです」


そのデジモンの声が突然背後から聞こえた。

「お前、ーーーーぐはッ!?」

振り返ると、人型デジモンは黄色の鎌を振り下ろし、俺の頭へと叩きつけた。

「ーーーーデジ忍法」

「……マナ、ト殿ーーーー」

……その声が聞こえてくる中意識は途絶えた

今後の『あとがき』について(前回忘れていた為)

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