ーーーー僕は人間が嫌いだ。
人間はタイトを騙す。
裏切るから。
奪うから。
悲しませるから。
ーーーー僕はデジモンが嫌いだ。
敵だったら、タイトの身の危険に繋がるから。
人間の道具みたいに、人間の言う事をなんでも聞くから。
タイトを失望させたから。
ーーーー僕は神が嫌いだ。
何も悪くないのに、タイトを殺そうとしたから。
僕の真の力を使わせないから。
タイトを救ってくれなかったから。
…………そして、
僕は僕が嫌いだ。
タイトの全てを守れなかったから。
タイトの唯一の
タイトの幸せな未来を保証できないから。
ーーーーだから、僕は僕が嫌いだ。
────ン
体が痛くて起きれない……でも、何かの音が聞こえる。
────ィン
僕は何故寝ているのだろう? ……それでも、体を動かさなきゃいけない気がする。
────キィン
体の痛みは酷いままだ……でも、大きな音が少しずつ耳に届いていく。
────バギィン
何かを殴る音かな?
少しずつ頭が冴えていく……ああ、僕は負けたのか。ダークナイトモンの目に見えない攻撃を喰らって僕は気絶した。
────はは、なんだ僕はこんなにも弱かったのか…………タイトは────タイトはどうなった!?
僕の命よりも、世界よりも大事なタイトはどうなったんだ!?
僕は寝ている場合じゃない。
タイトを見つけないと。
目を開け────
────バギィン!!!
…………え?
目を開いた時、タイトはダークナイトモンに馬乗りになって殴っていた。
────バギィン!!!
殴る度にダークナイトモンの悲鳴が上がる。
────バギィン!!!
殴る度にダークナイトモンがポロポロと崩れ落ちていく。
────バギィン!!!
殴る度にダークナイトは死に近づいていた。
……ああ、そうか。
タイトは僕よりも強いのか。
────なら、僕はいらない子なのかな?
タイトひとりでも解決できるなら……
タイトひとりでも敵を倒せるなら……
タイトひとりでもみんなを守れるなら……
僕という
僕はタイトの幸せな未来を作る為に存在している。
それは、タイトの願いである『自分が産まれた世界を守る』という目的を遂行する為に存在している。
────バギィン!!!
タイトが殴る音が聞こえてくる。
痛々しくて、苦しそうで、なんとかしてあげたい。僕という
体も動かず、ただ見ている事しかできない僕は……壊れた道具だ。
「……わかってんだよ、そんなこと!!!」
……ああ、そんな声を出さないでほしい。
辛そうで、泣きそうで……
「うるっさいんだよ……そんなこと俺が一番わかってんだよっ!!!」
何かに向かって……いや、きっとタイトには何かが見えているのだろう。その言葉に、僕はどうしようもなく悲しくなった。
「いつも判断が遅いってわかってんだよ」
タイトは充分頑張ってる。
それは何よりも、僕が一番わかってるんだ……ただ、それを伝えられない事が更に心を苦しませる。
「あいつじゃないくせに、頭の中で……あいつの声で喋るなぁっ!!!」
タイトの悲痛な叫び声が聞こえてくる。
……あいつ? ────ああ、タイトが見ているのはゴールドヌメモンなのか……ごめん、僕が守れなくてごめんね。
「……ああ、わかってる」
その言葉は先程の叫び声とは違う。
暗く澱み、僕の心を……いや、タイト自身を苦しませる覚悟をさせてしまった。
タイトが拳を握りしめる。
────タイト駄目だ。
タイトが拳を振り上げる。
────それ以上はタイトが壊れちゃうよ。
タイトが拳に力を込めた。
────いや、タイト……駄目だっ!!!
「────ウォオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
────やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!
「────止まれっ!!!」
────バギィン!!!
突如言われたその言葉で、タイトの拳がダークナイトモンではなく、地面を殴りつけた。
……よかった。
動けぬ体、声すらまともに出せない今の状態……それでも、タイトが壊れるのはどうしても止めたかっ────
「……
────っ!?
ここにはいないはずの声が聞こえてくる。
動かない体を少しでも敵の方を見えるように動かす……と、そこにはピョコモンが人質に取られている。
(……なん、で?)
掠れた声がようやく口から出てくる……だが、タイトの状況が変わらないのはわかっている。
「……もう間一髪だったよ……もう少し早くならなかったの?」
「すみません、ユウ様……事前の情報と異なり、マナト殿を慕うデジモンが多く、選ぶのに時間がかかりました」
「もう良いよっ……それよりもその子を連れてきてくれてありがとう」
「ははっ、もったいなきお言葉」
……奴等の会話が聞こえてくる。でも、そんなのはどうでもよかった。
ピョコモンがタイトの足枷になっているのに比べれば……いや、それは今の僕も同じか…………
「……マナト殿、逃げて」
ピョコモンの苦しそうな声が聞こえてくる。
「……それで、要求はなんだ?」
タイトの暗い声は変わらず、金髪のガキに向かって憎しみの籠もった声でそう言った
「とりあえず、まずは────そこをどいてくれるかな?」
金髪のガキはその姿を見て優越感に浸った顔で、タイトを見ている。
「マナト殿、きいちゃ、駄目だ」
ピョコモンがタイトを止める……でも、
「…………」
タイトは立ち上がって、ダークナイトモンの体から離れた。
「────よしっ、これで……ダークナイトモン戻って」
タイトが離れたことにより、ダークナイトモンが黒いクロスローダーの中へと入っていく。
……あっ、タイトの体が強く────
「……それじゃ────」
(────あっ!?)
────光ったと思ったら、敵の目の前に瞬時に移動した。
「────ユウっ!?」
敵のデジモンがガキを守っていなければ、タイトは射線上にいたガキ事、敵のクロスローダーを破壊していたはずだった。だけど、敵のデジモンが庇った事により、何とかクロスローダーが守られる。
そして、敵のデジモンが、ガキを守ろうとタイトに立ちはだかった時に、ピョコモンを人質に取ったデジモンの腕がもぎ取られる。
「……えっ?」
その事実を受け入れられないのか、投げ飛ばされたガキが硬直する。
「────グガアアアッ!!!」
敵のデジモンの悲鳴がこの荒地に響き渡った。タイトが敵の腕事、ピョコモンを助けたのだ。
「────別にさ、立ってさえいればお前らから助ける事はできるんだよ」
……タイト?
タイトの表情は先程よりも暗くない……むしろ、明るい表情だった。
「……マナト殿?」
ピョコモンに向けて優しそうな笑みを浮かべる……ダークナイトモンを殴っていた時より、タイトの心が軽くなったのが感じられる。
「もう大丈夫だ……心配はいらない」
ピョコモンを救った時の憑き物の落ちた顔を見て思ってしまった。
────ああ、そっか……タイトは一歩進めたんだ……と、
少しずつ、自分の中の自信が落ちていく。
……僕は何の為に……どうして、という気持ちが……タイトに置いて行かれた様な気持ちが溢れ出してくる。
『ミレニアモン』
『なに?』
『俺は歌いたいんだ、聞いてくれるか?』
『うん、いいよ』
────僕はあの時から一歩も進めていないのに……
「────さあ、お前を────」
タイトがピョコモンを地面に下ろした時、膝をついたガキのクロスローダーが光ったのが見える。
(────タイトッ!?)
そこからタイトの背後にダークナイトモンが現れたのが見えた。
「────マナト殿危ないッ!!!」
「────っ!?」
ピョコモンが気づいた時にはもう遅い、タイトの腹に10センチ程の小さな槍が刺さり────ザクリと音が鳴った。
(────タイトッ!?)
必死で体を動かそうとするが、動けない。
……すぐにタイトの元に行って助けてあげたいのに、体にうまく力が入らなくて、どうしようもなかった。
「……そうです、貴方は最後に忘れました」
ボロボロのダークナイトモンがほくそ笑みながら、タイトを見た。
「────ダークナイトモンッ!?」
タイトはようやく気がついた様で、後ろの槍を掴み、動かせないように力を込める。
「……やはり、この体では動かせませんね」
────バキリ
タイトが槍の先をへし折って、ピョコモンを連れて後方へと飛ぶ。
(タイト、それじゃあ駄目だ)
刺される前よりも力が入っていない……タイトの体のデジソウルの光も少しずつ弱くなってるのが見える。
「────ぐ、あ……」
タイトはダークナイトモンの槍を抜いた。
「────形勢逆転ですね」
ダークナイトモンがタイトへと少しずつ近づいていく。
「……はあ、はあ、死に損ないが……っ!!!」
怒りと悲しみに震えるタイトの体が痛々しい。
しかし、少しずつ明滅していくタイトのデジソウル……それに伴って、タイトを覆っていた強い気配が消えていった。
(……えっ?)
……そして、それに伴って体が縮んでいくのを感じる。
タイトのデジソウルが完全に消えてなくなった時、自身の小さな黒い腕が見えた。
────クロアグモンへと退化したのだ。
「────これで、貴方達の戦力は激減しました……降参してみては?」
ダークナイトモンがタイトを見下してそう言った。
「貴方達はよく頑張りました」
タイトに向かって、ダークナイトモンは甘い言葉を囁く。
「別世界のデジモンの為に必死になって戦い、傷を負った……もういいじゃありませんか?」
タイトは黙ってそれを聞いている。
「マナト殿だ────」
ピョコモンが聞かないように説得するも、途中でタイトの手がピョコモンの口を塞いだ。
……その様子を見て、ダークナイトモンが微笑んだ。
「────我々の軍門に降れば、貴方の傷も治し、兄上を説得し、貴方達の仲間も我が軍へと入れるよう支援しましょう」
「だから降伏しませんか?」
ダークナイトモンはタイトへと手を伸ばした。
(……何だよ、これ)
タイトはもう戦えず、俺達は動けない、ピョコモンは戦力外で、キリハ達は寝かしてきたから、現状動いてくれるはずがない。
────つまり、この状況は奴等に命を握られているのと同じ状態だ。
(────くそっ!!!)
掠れた小声しか出せないこの状況で、タイトがダークナイトモンの手を握るのを待つしかない。
(
タイトがダークナイトモンへと弱々しく手を伸ばす。
「────フッ」
ダークナイトモンがニヤリと笑ったその時、
────パァン、と音が鳴った。
「────はっ?」
(……えっ?)
タイトがダークナイトモンの手を弾いたのだ。
「────いったい、何を……?」
敵に命を握られていて、それでもタイトが拒否したのが理解できないのか動けずにいるダークナイトモン。
「────ハハッ」
……そして、それを見て笑ったタイト。
「バカじゃないのか? 俺はこの世界が……この世界を愛してるデジモン達が好きだからこの
笑ってるタイトだったけど……本当は怒ってる。
「
お腹の穴から血が出続けている今でも、自分の意思を曲げようとしないタイト。
「────
(────ああ、僕は勘違いをしていたらしい)
僕はタイトがまた苦しむと思っていた。
今回の戦いはたくさんのもの背負い過ぎている……実際にタイトは味方がいる状況では戦場に立てなかった。
たくさんの仲間が死んだ時、もっと絶望すると思っていた。
それでもタイトは諦めなかった。
タイトは僕とレオモンを使ってたくさんのデジモンの命を守ってみせた。
────だからこそ、僕も────
「────ほう、ではこのまま元の世界に帰れなくなっても良いと?」
「────っ!?」
(────っ!?)
ダークナイトモンがニヤけながらそう言う。
タイトには家族のいる世界を守るという目的がある……その為には絶対に元の世界に帰らなきゃいけない。
……それを知らないくせに、ダークナイトモンはそう言ったのだ。
「私の部下になれば、元の世界に帰してやろう」
意地クソ悪い笑みを浮かべながら、ダークナイトモンはそう言った。
「…………」
マナトは無言でダークナイトモンの手を見つめる。
「────さあ、私の手を取れ……君の世界が待っているぞ」
「…………」
ダークナイトモンの邪悪で甘い声が荒地に響き渡る。
「────マナト殿?」
ピョコモンがタイトを見て、心配そうに見上げる。
……でも、その心配は杞憂なようだ。
「……知らねえよ」
タイトは本当に晴れやかな表情で、ダークナイトモンを見ていたからだ。
「……は?」
驚きの余り戸惑うダークナイトモン。
(……たぶん、数分前の僕なら理解できなかっただろう)
タイトはもう一歩進んだのだ。
何かに縛られるのではなく、何かに流されるのではなく、自分の『意思』を持ってこの世界を守るって決めたんだ。
「────ほう、自分の世界に帰れなくて良いと」
「ああ、そんなのどうでもいい」
本当はどうでもよくないのを、僕は一番知っている。
(……ははは)
……だけど、それ以上にタイトはこの世界を愛してしまったんだ。
(今の僕とは大違いだ)
あの日から進んだ、タイト。
あの日から止まっている僕。
それがわかってしまって、苦しくなってしまう……本当に置いて行かれたんだ。
「────ふむ、ならば、こうして言う事を聞かせよう」
(……まさかっ……やめろっ!!!)
────ザクリ
「────うっぐぁっ!!!」
「────マナト殿っ!?」
タイトの左手に槍が刺さる。
(────あいつっ!!!)
早くタイトの元へと向かいたかった。
「早く言う事を聞いた方が身の為ですよ……出ないと、死んじゃいますから」
(……くそっ!!!)
でも、体が思うように動かない。
「────嫌だ」
タイトはダークナイトモンを睨みそう言った。
「……そうですか────ならっ!!!」
────ザクリ
今度は右手に穴が開く。
「────マナト殿っ!?」
(────タイトッ!!!)
「……うっ、ぐっ……大丈夫だ」
明らかに血が流れる量が増えているのに、それでも無理をして平気そうにそう言ったタイト。
「もう、もういいんです……マナト殿は早く……っ」
ピョコモンもタイトを心配して、説得を始める……だけど、
「────ぜんっ、ぜん大丈夫……」
────ザクリ
「────うぎおっ!?」
「────マナト殿っ!?」
今度は右肩を貫かれる。
(────あいつっ!!!)
ミレニアモンにミレニアモンにさえ進化できれば、あんな奴なんか一瞬で倒せるのに……何で、何で、進化できないんだっ!!!
「────マナト殿がこのままでは死んでしまいますっ!!!」
「そうですよ、このままだと彼の言う通り体が持ちませんよ」
ピョコモンは必死に、ダークナイトモンは笑いながらそう言った。
……でも、タイトは────
「────
そう笑ってみせた。
「……強情ですね」
────ザクリ
「────マナト殿っ!?」
ピョコモンがタイトの陰から前に出ようとするけど、タイトがそれを守る。
(────タイトッ!!!)
ミレニアモンにミレニアモンに進化できれば……僕はっ、僕はっ!!!
「
────その言葉を聞いた時、時が止まった。
ゴールドヌメモンが死んだ────タイトはその時の事をずっと後悔していた事に気がついた。
────ザクリ
「────マナト殿っ!!!」
タイトは必死でピョコモンを守っている。
「────
その姿を見て僕は…………僕は何をやってるんだ。
(
どうすればタイトを守れる?
どうしたら、この現状を打破できる?
……探せ、探すんだっ!!!
────ザクリ
タイトが刺される音が聞こえる。
気を散らすな……6年間何を学んできた?
────今の様な状況を変える為だろう!!!
(…………あった)
────ザクリ
ピョコモンとタイトの悲鳴が聞こえる。
……それでも、その希望に向かって地面を這ってでも近づく。
────そこには、
(────チューモンッ!!!)
這ってでも近づく。
(チューモンっ!!!)
(…………)
息はある……そして、反応がない。
(チューモンっ……チューモン……っ!!!)
反応がない。
────くそっ!!!
(────
……
「…………ん」
このピンク色のネズミを僕と同等だとは認めたくなかった……でも、タイトを救う為に、力が必要なんだ。
(────シンッ、シンッ!!!)
掠れた声で、うまく出せない力で体を揺らす。
…………僕の中の譲れないプライドが揺らいでいく。でも、そんなモノタイトの命に比べたらどうでもいいんだっ!!!
「────シンッ!!!」
今できる全力で奴の前で叫んだ。
「……ははは」
シンが突然笑い出した。
「…………シン?」
目には涙が出ている。
「……
「…………」
────こいつは……いや、違うっ!!!
「……早く起きろっ、タイトが危ないんだっ!!!」
タイトは僕が這っている間もダークナイトモンに刺されている。それを早く何とかしないと……
「────知ってるっすよ、ここから動けなくて見てたっすから」
シンは喜び半分、悔しさ半分の気持ちで僕に向かって言った。
「────
……僕は覚悟を決めて言った。
「────っ!?」
「これはもう決定事項だ。
ある程度なら時間を稼ぐことができる……キリハ達のところに行けば、デジモン用の回復アイテムがある。タイトに効くかどうかわからないけど、タイトが生き残る可能性があるなら全力を尽くしたい」
「────あんたはどうするんですか?」
「死ぬならタイトの為に死にたいって、何度も思っていた……今が、僕の命を使う時だ。それ以上でもそれ以下でもない」
本当は死にたくない。
タイトともっと一緒にいたい。
タイトが笑って暮らせるまで、
タイトがもう泣かない世界になるまで、
タイトが幸せな場所へ行くまで、
……ううん、本当はずっとそばにいたい。
────でもしょうがないじゃないか。
タイトの生きる道がそれしかないんだから。
俺は今の思いを全て蓋して、シンに頼む。
「…………」
そうしたら、シンは少し俯いて……
「────バカじゃないんですか?」
そう言った。
「あんたが死んだらタイトっちは苦しむっすよ」
「────わかってる」
そんなことはわかってるんだ。
「それでもやるんすか?」
「タイトの為なら本望だ」
それで、タイトの未来に繋がるなら構わない……そこに僕がいなく────
────ペチ
僕の頰に弱々しいパンチが当たる。
「────本当にバカっすね」
シンが殴ったのだ。
「あんたがいない未来なんてタイトっちは幸せになれない」
「────だってそこにタイトっちの幸せな未来はないんすから」
「────…………っ」
……そんな、ことぐらい────
「────よっと」
そこから、シンが立ち上がった。
……そして、
「────さあ行くっすよ」
僕に向かって手を伸ばす。
「────タイトっちを助けて、ダークナイトモン倒して、みんなで笑う……それが今やる事っす」
「
────がしっと僕はシンの手を掴んだ。
「……それで、返答は?」
ボロボロの体、全身のあちこちから血が出てる穴が空いてない場所なんて頭と首と胸以外ない。
────それは俺の会話を維持する為、
……でも、俺は────
「────嫌だ」
死んでもごめんだった。
「……ははは」
ダークナイトモンが笑った。
「────では、死ねっ!!!」
……ああ、死んだなって思った。
ゆっくりと時の流れが進む。
これが走馬灯なのかと実感してしまう。
でも俺は満足だった。
仲間の為に死ねて、満足だった。
────ああ、でも母さん達には悪い事をしたな。
まあ、グルスガンマモンが何とかするだろ。
そうして俺の顔に槍が突き刺さる時、
「────『トロピカルビーク』ッ!!!」
顔に向かっていた槍が、デジモンの嘴によって位置がズレた。
「────貴様は」
背後にあった筈の熱が消えてなくなる……ああ、そうか。
「────マナト殿はやらせない」
俺の目の前には赤い鳥デジモンがそこにいた。
「……ムーチョモン*1」
「────マナト殿は黙っててください」
……そうか、進化したのか……お前。
ムーチョモンは腕の代わりに存在する、小さな赤い翼で俺とダークナイトモンの間に立つ。
「────貴様、邪魔をするのか」
ダークナイトモンはムーチョモンに向かって槍を向ける。
「────マナト殿はお前なんかにやらせはしないっ!!!」
ムーチョモンは震えながらも、必死になって俺を守る……やめろよ、絶対に勝てないんだから、逃げろよ。
「────そうか、なら貴様から葬ってやろうっ!!!」
「────『ベビーフレイム』ッ!!!」
「────『チーズ
今度は火球と爆弾がダークナイトモンの槍を防ぐ。
「タイト、ごめん待たせた」
「────タイトっち、ボロボロっすね」
目の前に、懐かしいデジモンの後ろ姿が見える。
「……テト……シン……っ」
テトとシンが退化して、クロアグモンとチューモンの姿で俺を守ってくれたのだ。
「────貴様等っ!!!」
ダークナイトモンがこちらを睨む。
「随分と好き勝手やってくれたな……貴様等全員串刺しにしてっ!!!」
ははは、相当お熱な様だ……でも、状況は変わってない。
「────貴様等の死体を持ち帰り、研究材料にさせて貰おうっ!!!」
今の状態じゃテト達も巻き込んで死んでしまう……どうすれば…………
「────『ツインスピア』ッ!!!」
ダークナイトモンの必殺の突きが襲いかかってくる。
「『ベビーフレイム』ッ!!!」
「『チーズ
今のテトとシンでは攻撃の威力を遅くできても、突きを押し返す事はできない。
「『トロピカルビーク』ッ!!!」
先程よりも強い突きだ……ムーチョモンの技で槍先をズラすこともできない。
────今度こそ、
────バリィンッ!!!
「────なんだっ……なんだこれはっ!?」
……でも、これは、デジソウルじゃない。
そして今、俺達の目の前にあるのは……の
「……
デジヴァイスから優しげな光が俺達を包み込み、ダークナイトモンはその光によって苦しむ。
「────タイト、力が漲ってくる」
[クロアグモン進化]
「────『ダークドラモン』」
「────タイトっち、オイラも今なら……」
[チューモン進化]
「────『バンチョーレオモン』」
テトとシンがこの光を浴びて姿を……
「……テト殿とシン殿が……進化した?」
ピョコモンが驚きの声が出ている……だけど、
「……これは、いったい?」
「なんでオイラ達は進化してるんすか!?」
────俺はこの光を知っている。
「……
アニメ『デジモンアドベンチャー』シリーズに出てくる聖なるデヴァイス……通称『デジヴァイス』によって生み出される進化の光だ。
「────なんで?」
なんで俺のデジヴァイスicから……いや、あのデジヴァイスが姿を変えていく。
「────
全体が至極色で、ボタンや線が濃浅葱色、それでいてマイクの部分はシルバーカラーのクロスローダー。
……俺のデジヴァイスicの新しい姿がそこにあった。
「────マナト殿っ!?」
クロスローダーが俺の目の前に現れる────まるで手に取る様に言われたみたいだ。
「……大丈夫だよ、ムーチョモン」
俺に、早く手にしろと言わんばかりに輝き出すクロスローダー。
「────ムーチョモン、それを取ってくれ」
俺の肩には穴が空いていて、動かない……だから、ムーチョモンに頼む。
「……マナト殿わかりました」
訝しげにムーチョモンはクロスローダーを手に取って、俺の方へと持ってくる。
「────ありがとう、ムーチョモン」
そこからクロスローダーの中をムーチョモンに動かして貰い、使い方を確認する。
「……よしっ、テトッ、シンっ!!!」
「だから、僕のほうが強いんだから、僕が戦いに出るって────タイト?」
「強い戦力こそ、今のタイトっちを守らなきゃ行けないんすよ────って、なんすか、タイトっち」
俺はテトとシンに向かって声をかける……お前らこんな状況で言い争ってたのかよ……まあ、いつも通りでいいか。
「────反撃を開始する」
テトとシンに向かってそう言う。
「……それ、タイトっちのデジヴァイスっすよね」
シンは俺の言葉を無視して、そう言った。
「────ああ」
「なら、先輩を退化させた後にミレニアモンに進化させればいいんじゃないっすか? 今より強くなるっすよ」
「そうだな」
「…………」
俺はシンの言葉に同意し、テトは静かにしている……いつもなら、すぐに退化させてミレニアモンにしろって言うのに、何かあったのだろうか?
「────なら決まりっすね、先輩が行ってきてください」
先程言い争ってた割に、シンは簡単に引き下がった。
「────本当にいいの?」
「いいっすよ」
テトはシンに聞き、シンはテトに返す……今までとは違う考え方に戸惑う。
「……えっ、えっ、何が起こってるんですか?」
ムーチョモンはその様子に戸惑っている。
「────つまり、先輩に任せればいいってことっすよ」
シンが笑って、ムーチョモンに言った。
……だけど、俺は────
「……いやだから、退化させないぞ」
「────えっ?」
「────はあ?」
「…………」
────ズテン、とデジモン達が転ぶ。
「────イヤイヤ、なんすか急に……ミレニアモンに進化させたほうが確実っすよね」
「だから、それ以外の方法があるんだよ」
そう言ってクロスローダーを見せる。
「────まさか……?」
全員が固まっていたが、テトがすぐさま再起動する。
「────ああ、そのまさかだ」
僕とシンが光の外へと出る。
「────ほう、進化して出てきたか……私達が入らなかった光の中で何があったかわからないが、ここで終わらせて貰おう」
奴等はタイトの言う聖なる光の中には入ってこれなかったみたいで、外でずっと待っていた様だ。
「────ユウ!!!」
金髪のガキがダークネスローダーを構える。
「今度こそ倒させて貰うよ────『強制デジクロス』!!!」
ダークネスローダーの中にいた赤い光とダークナイトモンが合体し、
「────クロスアップ ダークナイトモンッ!!!」
再び赤いダークナイトモンが姿を現した。
「貴様等はこの姿に一度敗北している……ならば貴様等が勝てる通りなどないだろう」
「────終わらせて貰うっ!!!」
そう言って、ダークナイトモンはこちらへと突っ込んでくる。
「────やるよ、シン」
「わかってるっすよ、テト先輩」
僕達はタイトの案に乗った。
タイトは僕とシンの力を信じてると言った。
────ならば、それに応えるのがパートナーだろっ!!!
[ダークドラモン]
「────わかってるっ!!!」
[バンチョーレオモン]
「────大丈夫っすよっ!!!」
「────『
その時、光が僕達を包み込んだ。
(僕等はひとつになる)
体がひとつになるのを感じる。
(オイラ達は新たな力を手にする)
より大きな力を手にする事を感じたっす。
(僕等はタイトの為に戦う)
タイトへの強い思いを感じる。
(オイラ達は望んだ未来を手にする為に戦う)
タイトっちが望む未来を手にする為に戦うっす。
────だからこそ、僕は
────だからこそ、オイラは
((────だからこそ、我等は新たな進化を────))
[EVOLUTION]
そこにいるのは一体の奇跡だった。
決して混じる事ない進化。
────それを今ここで、混ざり合ったのだ。
「────貴様……は……?」
白く輝くその姿は、まさしく騎士の姿。
緑色の衣を纏い、宙に存在する。
右腕には獅子を、
左腕には竜を、
混じる事ない二つの力がそこに混ざり合った。
「────我が名は『カオスモン*2』」
「貴様を葬り、未来を創るものだ」
空を飛べない鳥型デジモン。トロピカルな南国育ちのデジモンで、いつも愉快に暮らしている。ほとばしるほどの情熱を持ち、サンバのリズムで踊り、ハデな極彩色の毛皮が大のお気に入りだ。必殺技は、カラフルなクチバシで突きまくる『トロピカルビーク』。
通常、ジョグレス時には、2体のデジモン同士のデジコアが完全に融合し、新たなデジモンに生まれ変わるが、カオスモンは、ジョグレス前のデジモンのデジコアをそれぞれ保持し、非常に不完全な状態でその姿を維持している。カオスモンとは、「存在し得ない」デジモンのコードネームであり、デジタルワールドの“セントラルドグマ”(中心原理)では絶対にありえない特異(バグ)である。極めて不安定な存在のため、寿命が非常に短く、デジタルワールドの管理システムが放つバグを排除するプログラムが走るために寿命が短くなってしまうと推測される。このカオスモンはバンチョーレオモンとダークドラモンがジョグレスして生まれたものと見られており、両腕にそれぞれのデジモンの面影を見ることができる。必殺技は、「バンチョーアーム」に装備された「BAN-TYOブレイド」から繰り出される無敵の一刀両断『覇王両断剣』と、「ダークドラアーム」に装備された「ギガスティックキャノン」から自身のデジタル細胞を打ち出す『ダークプロミネンス』。
ーーーーPattern A CLEAR
ーーーーPattern B、C、D DELETE
ーーーーPattern Rebuilding
Rebuilding
Rebu︎ ding
eb il in
ーーーーーーーー
ーーーーALL DELETE
今後の『あとがき』について(前回忘れていた為)
-
デジモンコーナーを続ける
-
第1章〜第3章までのに戻す
-
第四章が終わるまで様子見