「貴方が好きです、付き合ってください」
私の一世一代の告白……その返答は、
────ごめん。
大好きな人から断られた。金髪の彼は、申し訳なさそうにそう言った。
私にとって忘れられないその言葉。
前世から始まった恋にトドメを刺したその言葉。
────私の心を傷つけた。
場面が変わる。
桜舞う、春の暖かさが感じられる学校。
────入学式だ。
鮨詰めのように同じ服を着た子供達が椅子に座り、眠くなりそうな校長や教頭の話を聞く。
背後には、ママ……は仕事で来れなかったけど、私のもう一人の母と呼んでもいい人が私の保護者として来てくれた。カメラも持参してくれて、一緒に写真も撮った。
……後で、ママにも見せてあげよう。
そんなこんなしているうちに、入学式が終わり、クラスの振り分けの用紙が体育館の外に張り出される。
私は振り分けられた教室に入り、席につく。少しずつ私と同じようにクラスメイト達が教室にやってきて、クラス内の椅子が埋まっていく。
十数分後、全員が座り終えたところでチャイムが鳴った。
先生が教室に入り、一言。
「今日から担任になる『────』だ」
そこからは明日からの授業の話や中学生としての心構え、この三年間で培う、社会に旅立つ為のマナーや行動力について説明を受け、今日の学校は終了した。
校門を目指し、歩き出す。
「────ルビー、写真撮るわよ」
もう一人の母、ミヤコさんは校門の前に来た時にそう言った。
「ええーっ、朝も撮ったじゃん」
偉い人の話が長くて眠たかった入学式と変に真面目ぶった新しい担任45分の長話に付き合わされた後だ。私は早く家に帰って今日のママの生放送を見るのだ。
「ダメよ、ルビー。私はアイやアクアに写真を撮って来て欲しいと頼まれているもの」
「────うっ、そこでママを出されると断りづらい」
正直に言えば、早く帰りたいのだが……ママのお願いな以上、頑張らないといけない。
「────はあ」
溜め息をついて、渋々校門までの道を歩いていく。ちょうど細身の男性が茶髪の少────? 学生服を着ているから息子らしき少年の写真を撮っているところだ。
「────いいですよ、いいですよ……その姿、かっこいいですよぉ!!!」
茶髪の少年は私よりも小さな背で、父親の言う事を聞くように写真を撮らられていた。
(────むう、早く変わってくれないかな)
あの子の父親がずっと写真を撮っているせいで、いつまで経っても写真が撮れない。
「────父さん、いい加減にしないと仕事に遅れるよ」
声変わりする前の子供の声で、少年はうんざりするように父親に向かってそう言った。
「まあまあ、いいじゃありませんか、せっかくの親子水入らずの場です……リエさんもきっと許してくれるでしょう」
(────うわあ)
息子がうんざりしているのにも関わらず、父親はカメラで写真を撮り続ける……息子を見ている父親の笑顔が薄気味悪くて、思わず引いてしまった。
(────こらっ、そんな顔をしない)
ミヤコさんが小声で私の事を叱ってくる。
(いやっ、だって……)
その言葉を否定しようとした時、少年が父親の方まで近づいていくのが見えた。
「────っ!?」
「いやいや、あの人はそんな優しい人じゃないですから……それを一番理解してるのは父さんでしょうが」
「いやいや、マナトくん。せっかく、君が初めて学校に通う事ができた素晴らしい記念日なのです────貴方の写真を記録しなければ……」
「────いやいや、だからって……」
少年と父親の問答が聞こえてくるけど、そんなのは関係なかった……
「……ルビー?」
ミヤコさんの心配するような声が聞こえてくる……だけど、それよりもあの子の顔が気になった。
「────ミヤコさん……あれ……」
明るい茶髪に首元のホックが外れた学生服、ゴーグルを首にかけた少年。その横顔に指を差す。
「…………────っ!?」
私の指差す方向に向いた時に、ミヤコさんが驚いた…………うん、気持ちはわかる……だってあれは────
「……
「────だから、今日の仕事は外せないって言ってたじゃ……ん、────っ!?」
茶髪の少年が私達の方を向く。
「えっと、俺と一緒に入学式に出ていた人ですよね……ああっ、すみません、入学式が終わったのなら、校門で写真を撮りたいですよね……ほら、父さんも謝って!!!」
少年はこちらへと走って来て、順番を待っていた私達に謝り、父親にも謝罪を促した……その姿はママとは似ても似つかないが、顔だけは瓜二つと言っていい程、ママそっくりの顔をしていた。
「────おやおや、そうでしたか……次の方が来てしまいましたか……申し訳ありません。私も彼の写真を撮るのに夢中になっていました」
老け顔の男はミヤコさんへと、胡散臭そうな笑みで近づいて謝る。
父親の顔を見れば、40代ぐらいの白髪の混じった老け顔の男性と、ママそっくりの少年の顔は似ても似つかなくて、更に疑念が深まる。
「……えっと、いえ……こちらこそ気を遣わせてしまったみたいで、申し訳ありません」
それに返答するように、ミヤコさんが少し焦った様子で答える。
「ささっ、こちらへとどうぞ」
そう言って、男は校門前まで歩いていく。
(ねえ、ミヤコさん)
私はミヤコさんの服の袖を掴む。
もしかしたら……と思ってしまった。
幼少期に離れ離れになってしまった弟と、ママに瓜二つなこの少年は同一人物なのでは……と思ってしまった。
(……ええ、ルビー)
ミヤコさんへと小声で声をかけると、ミヤコさんも同じ事を思っていたのか、私に……
「……どうかしましたか?」
彼の父親のギョロッとした目がこちらへと向いた。
「────っ、いえ……なんでもありません」
男から発せられる異様な雰囲気に、ちょっと引いてしまった。
「……父さん、行くよ」
少年は父親の腕を引っ張って連れて行こうとする。
(……えっ!?)
「────おや、もうそんな時間でしたか?」
父親が彼の方を向いて、驚いたような顔をする。
「……というより、写真を撮り始めた時には、ここを出発予定の時間を10分ほど過ぎてたんだよ」
呆れるように彼は男を連れて行こうとする。
「────それは……まあ、しょうがないでしょう。大丈夫です。表面上は彼女は起こりませんから」
このままだと、彼が……タイトかもしれない人がどこかに行っちゃう!?
「いや、だから、しょうがないで済むんだったらリエさんに怒られる前にはやく────」
「────
咄嗟に大きな声で呼び止めてしまう。
「……?」
「────っ、……っ!?」
男は振り返り、少年は驚いたようにこちらを見る。
…………、────っ!?
その言葉を自覚した時、顔が赤くなるのを感じた。
思わず大きな声で彼等が帰るのを止めてしまった。何も考えていないのに、私は二人を呼び止めてしまったのだ。
「……あの、その……えっと……」
本当に何も考えていなかったので、とりあえず今思いついた事を言う。
「一緒に写真を撮りませんか?」
「────二人とも並んでください」
男は笑ってそう言った。
その手にはいかにも高そうなカメラが握られており、ミヤコさんと並んで私達の正面に立っている。
「────はっ、はい!!!」
促されるまま、タイトに似た少年の横に並んだ。
……恥ずかしい事をしてしまった。ただ似ているというだけで、この子を呼び止めてしまい、二人で並んで写真を撮ることが決まった。
「────っ!?」
顔が真っ赤に染まる。
正直言って、早く終わってほしかった。入学早々に、こんな恥ずかしい思いはするつもりはなかったというのに対し…………
「────
不意に、そんな事を隣の少年に言われる。
「……えっと、なんでそんな事を聞くの?」
恥ずかしい理由なので、できれば話したくない。真っ赤な顔が更に赤く染まりそうだから。
「……いや、単純に『初対面』の人に急に呼び止められれば気になるから……できれば、話してほしい」
そう真剣な声でそう言われる……うう、やっぱり話さなきゃいけないか。
「……生き別れた弟にそっくりだったから」
「…………そっか」
私が恥ずかしくて言えなかった事を無理に聞き出した彼の反応は、あまりにもそっけないものだった……でも、私に対してそっけないところも、幼少期の弟にそっくりだった。
「私は『星野ルビー』」
私の名前を彼に聞こえるように言ってみる。
「…………」
彼はその言葉に反応はしない……それでも、
「────ねえ、貴方の名前は?」
それでも私は彼の名前が知りたかった。
これから学生生活を共にする仲間としても、弟かもしれない人物としても……ただ、貴方のことが知りたかった。
かつて、何も知らないまま消えた弟とは違う関係にしたかったから。
「……俺の名前は『────』」
ボーイソプラノな声でそう言われた時────
────ジリリリリッ!!!
────かちゃん
ベットの上に置いてある時計のアラームを消す。
「……嫌な夢」
去年の春の入学式の日の事を夢に見た。
……あれから、彼……『
……それだけしか進展様なかった……といった方が正しい。
弟らしき人物を探す為に、私は『
「────本当に嫌な夢……えっ!?」
時計を見れば、朝の9時……みんなとの集合時間に間に合わないっ!?
「────やばい、急がなきゃ!!!」
ママは昨日の夜から仕事。
ミヤコさん、斉藤さんはママのサポートで1週間程、事務所で寝泊まりをしている。
……アクアは……ここにはいない。
……つまり、今日の朝は私一人しかこの家にいないのである。
「────しまったっ!!!」
急いで顔を洗って、歯を磨く。出発準備は既に昨日のうちにできる限り整えていたので、急いで顔のメイクをする。
身支度が済んだ時には、朝の9時半……集合時間は9時45分なので、確実に間に合わない。
「────みんなに遅れるって、『デジライン』を送って……よし、連絡できたっ!!!」
そう言って、荷物を持って走り出す。うちの鍵を閉めて、エレベーターに乗り、一階へと降りる。
「────おはようございますっ!!!」
「おおっ、おはよう、ルビーちゃ────ああ、行っちゃった」
警備員さんに声をかけて、最寄りの駅までダッシュ……集合場所は東京駅。今からなら、1時間ぐらいで着けるはず……
────タ も ほ だ
「……ん?」
今、何か聞こえた気がする。
────…………
耳をすませてみても何も聞こえない……気のせいかな。
────って!?
「こんな事をしてる場合じゃないっ……早く行かないとっ!!!」
…………はあ、バレるところだった。変なところで勘がいいのは昔から、だった……気をつけないと。
「────到着っ!!!」
時間は10時35分……まあ、予想通り。だけど、ここから合流しないといけない。
電車を出て、周囲を見渡す。
「────たしか、あそこで掃除をしてるって……────っ!?」
「────
遠目に見えるのは細身の少年が、ヤンキーにくってかかる姿を見てだった。
────やばい、知り合いだっ!?
「……何って、ゴミを捨てただけだが」
ヤンキーは素知らぬ顔でそんな声を出す……しかし、その場にゴミ箱はなく、男の周辺にポツンと落ちているペットボトルが落ちているのが見える。
「僕達がボランティアで掃除してんのに、いい大人がなんでポイ捨てなんてしてるんですかっ!?」
坊主頭の少年が細身の少年と共にゴミに向かって指を差す。やばい、こんなところで道草食ってる場合じゃない!?
「いいだろう、別に……てめえらが掃除してんだからよっ……それとも何か? てめえらにゴミでも渡せっていうのか?」
私はくってかかった二人を止める為に走り出した。
「────あ゛あ゛っ!?」
「お前、ふざけん────」
「────お前らいい加減にしろ」
一人の少……いや、服装的に少年が細身の少年と坊主頭の少年の肩を掴んで止める。
「────すみません、こちらの二人が迷惑をかけて」
少年はヤンキーへと向かい頭を下げて謝った……しかし、
「あ゛っ……クソガキにこんなに舐められて黙っていられるわけ……」
ヤンキーは大声を出して威嚇するが、少年の顔と後ろの少女を見て下衆な顔をする。
「────ひっ!?」
「お前とそこの女が俺と一緒にくりゃあ、話は無しにしてやる────ほげっ!?」
────バギィィンと音が鳴った。
ヤンキーの顔面が少年によって殴られたのだ。
「────おい、今なんて言った?」
少年は握り拳を作って、ヤンキーの胸ぐらを掴む。
「……てめえ、何……を────ふべっ!?」
「俺の質問に答えろよ」
「────俺に何……す────えぐしっ!?」
「────なあ、おい、なあっ!!!」
「俺の後ろには、関東や────ふぐしっ!?」
────何度も何度も、大きな音が鳴り響く。顔、腹、胸の順で少年は殴り続ける。
「もう、やめてな……本当に私は大丈夫やで……」
「────俺も、俺ももう止めるから……なあ」
「僕らもちょっと言いすぎたというか……」
そうやってその場にいた三人に少年は止められる。
「…………わかった」
「はへ、はへ……はへ」
少年はヤンキーを殴るのを辞めたが、ヤンキーは既にボロボロになっていた。
「────おい、そこのお前らっ!!!」
そこへ警察官が走ってくる。
「────あっ、やべ……逃げるぞっ!!!」
「えっ、ちょっと」
少年は少女の腕を掴んでその場から走り出した。
「────ああ、いつもこうだよなっ!!!」
「本当にいつも飽きませんねっ!!!」
それに細身の少年と坊主頭の少年が後ろについていく。
「────あっ、いた、何やってっ!?」
「ルビー……ようやく来たのかっ!!! 逃げるぞっ!!!」
そう言って、茶髪の少年はもう片方の空いている腕で私の腕を掴んで警察官から逃げる。
────そう、『
この幕間の話では、以前から言っていたアンケートを取りたいと思っています。この話から3話それぞれに幕間の話のアンケートをつけるので、気になった話をポチッと押してほしいです。
今後の『あとがき』について(前回忘れていた為)
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デジモンコーナーを続ける
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第1章〜第3章までのに戻す
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第四章が終わるまで様子見