産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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長らくお待たせして、申し訳ありませんでした。私事都合+難産で結構時間がかかりました!!!


4ー0.5章 裏 認めたくない現実 あの日託された夢

 

 2015年 4月2日 夜7時 東京某所にて

 

 

 そのフロアに集まった人間は、煌びやかな服に豪華な食事、天井にはシャンデリアが太陽の如く照らされている。

 

 

「…………はあ」

 

 

 そのような場でも、俺の気持ちは鬱屈としている。

 

 左を見れば政治家、右を見れば有名な財閥の跡取りや重役……果ては、総理の隣に並んでいるであろう人までいるとなると、溜め息もつきたくなる。

 

 まあ、俺は壁際で1人その様子を見ているだけなのだが……それでも俺はここには居たくなかった。

 

 

「ほら、あそこにいる……」

 

「……ああ、あれが……あの容姿で男というのは納得いきませんね」

 

「────そうですな、あの胡散臭い男とは似てもなつきませんな」

 

 

 

「────くだらねえ」 

 

 こちらを見て、鬱陶しい表情をする金持ち連中に苛立ち、そんな言葉が俺の口から溢れる。

 

 誰に聞かれようとも構わないが、小声でそう呟き────ゴクッと、一口手元に持っていたペットボトルの水(おれがのめるモノ)を飲む。

 

 今回参加したのは政治家の賄賂で行われているパーティー……国民の血税を無駄に多く使い、私腹を肥やした豚共(にんげん)が集まっているのが視界いっぱいに広がっている。

 

「────チッ」

 

 思わず舌打ちが出てしまった……まあ、別に聞かれようが問題はないのだけど────視界の端から、白と黒の洋服を着た少女がやって来る。

 

 

「────また、こんなところで油を売っているんですか?」

 

 

 長い黒髪に俺と同じぐらいの背丈、この場には似合わない白黒の長袖、長ズボンを着ている少女……

 

「……なんだ、お嬢か」

 

 神代悠子がやって来た。

 

「────お嬢って言わないでください」

 

「────いいだろ、別に」

 

「良くないです。貴方と私は同じ人に身元を保証されているのですから、そんな呼び方は間違ってると私は思います」

 

 そういかにも怒ってますよ……という顔をされても、どんな顔をすればいいかわからないんだけど。

 

「じゃあ、どんな呼び方をすれば良いんですか?」

 

 

 

「────()()()()()()()!!!」

 

 

 

「────ぶっ!?」

 

 ちょっと、この人は突然何を言い出すんだ!? 思わず、吹き出してしまったじゃないか。

 

「……お姉ちゃんです」

 

「いや、二度も言わなくて良いから」  

 

 確認するように二度言う彼女……めんどくさい。

 

「お姉ちゃんは心配ですよ。また、好き勝手やってもうっ!!!」

 

 ぷんぷん……という擬音が聞こえてきそうな程、柔らかく怒るお嬢……いや、俺心の中で呟いただけなんだけど、なんでそんな悲しそうな顔をするんだ? 

 

「だから、お姉ちゃんじゃない」

 

 ……たっく、どこから情報が……いや、この人は基本的にハッカーやってる時以外はフリーだから、その手の情報は手に入れやすいのか。

 

「ユイが言っていましたよ……『マナト氏が好き勝手やるせいで、拙者の休憩時間がなくなってしまうんですぞ────っ!!!』って」

 

 いや、原作に比べてデジモンと仲が良くなりすぎだろ。

 あんた初めてユイと出会った時は、『何ですか、このうるさいペンギン』って言ってたじゃないか。

 

「シンは『あの人はオイラ達が事後処理をやってるのを知ってて、表で好き勝手やってるんすよ。そのせいでユイの修行時間が少なくなってるっす……まあ、ユイの修行時間を減らすつもりはないっすけど』って……部下に不満が出るようなことばかりしてはいけませんよ」

 

 ……本当に仲良くなり過ぎだろ。

 

「そんなシンとユイの相談を聞いている私を見て、テトはお菓子を買ってくれるんですよ……しかも、たくさんのお菓子をっ!!! 

 普段手を出さないような、世間一般でいうところの駄菓子……でしたっけ、それをたくさん買ってくれたんです!!!」

 

 微笑みながら、そう言う悠子さん……ああ、だめだ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「貴方が頑張ってる事ぐらい、私はよく知っています。ですが、たまに────」

 

 ────コツコツと、見覚えのある黒と金が近づいて来る。

 

「────っ」

 

「────ちょっとマナト!?」

 

 すぐさま、姉を名乗る不審者の前に立つ。

 

「お久しぶりですね」

 

 目の前の黒色(ムシケラ)()いた。後ろでは金色が頭を下げる。

 

「────何のようだ?」

 

 警戒度を上げ、姉がいつでも逃げられるように逃亡経路を確認する。

 

「まあ、何のようとは失礼ですね……許嫁に対する態度ではないんじゃないですか?」

 

「うちの大事なお姫様をジジイに売り渡そうとした奴の家族に対しての態度なら適当だと思うがな」

 

「────マナトくん、それは良いと言ったじゃないですか!?」

 

「────良いから、あんたは黙っててくれ」

 

「随分と嫌われてしまいましたね」

 

「逆に嫌われる事しかしてないと思うが?」

 

「私はそんな事をしたのですか? 気に入らないのであれば、教えてください」

 

 

「────その態度がムカつくって……ッ、────あんたはっ!?」

 

 

 ……今度は禿頭が黒色の後ろからやって来る。

 

「────兄様?」

 

「────黄光(おうこう)様っ!?」

 

 黒色が禿頭の方を向き、金色が禿頭に頭を下げる……本当に来なきゃよかったと心の底から思ってしまう。

 

 

 

『────私は……ッ────っ』

 

 たった2人しかいないこの部屋で、

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 ……と、目の前で金色の髪の女が泣いた。

 

 苛立ちと、怒りと、嫌悪感と……少しだけ、無力感が混じった感情(こころ)が夢ではないかと、この『現実(リアル)』を見失った。

 

 

 ────『……私の────っ!!!』

 

 

 奥底に眠った記憶(ぜんせ)に、吐き気を催す程の母親(おんな)に対する性欲(けんおかん)が蘇って来る。

 

 ────それも、すぐに消えてなくなった。

 

『────この体質(からだ)に感謝する日が本当に……本当に来るとは思わなかったよ』

 

 未だ……いや、絶対に『第二次性徴』が来ないこの体が、あの時の嫌悪感を薄れさせた。

 

『……ごめんな、俺に君を抱く事はできない』

 

 泣き叫ぶ彼女(たすけをもとめたこえ)に俺は何もできなかった。

 

 

 

 ────そして、その元凶が目の前にいる。

 

 

「────おう、久しぶり……と言いたいが、少し騒ぎすぎじゃないか? せっかくの祝いの場ではしゃぎ過ぎじゃないのか?」

 

「……お兄様こそ、許嫁同士の会話に入って来るのは野暮ではなくて?」

 

「それにしたって、ちと激し過ぎだと思うが……どう思う? 末堂のところのガキ」

 

「……どう…………とは?」

 

 怒りを抑え、憎悪を隠し、嫌悪感が滲む心に蓋をしながら、四宮黄光(ハゲネズミ)が問いかけた言葉を聞き返す。

 

「だから、我々『四宮財閥』と貴方方『カミシロエンタープライズ』との融和による────」

 

 ……あっ、だめだ。

 

 あの四宮黄光(ハゲネズミ)が話すたびに、黒色(ムシケラ)の後ろにいる金色が怯えて震えているのが見える。

 

 そして、目の前の薄寒い笑みを浮かべるハゲネズミを見た瞬間、

 

 

「────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 我慢ができなくなった。

 

「……今、なんて言った?」

 

 ハゲネズミの顔色が変わったのを見た瞬間、少し胸が軽くなる……これが愉悦……というものか。

 

 ────胸糞悪い。

 

「だから、俺達は落ち目のあんたらなんか興味ねえっつったんだよ」

 

 俺は俺の『心』に従い、本音でハゲネズミに向かって言う。

 

「この一年で俺達がいったい、何社あんたらの派閥の会社(したっば)を潰してきたと思う? ……あんたはそれをよくわかってると思うがな?」

 

 俺達がこの一年で、どれだけてめえらの派閥潰したと思ってる。

 

 四宮や四条等財閥関係の会社に、政財界にちょっかいかけてくるご意見版面の老害共、芸能界に送り込まれた財閥関係者……果ては、重要機密すら扱っていない中小企業まで、多くの人間の人生を潰してきた。

 

 カミシロ・エンタープライズを……『EDEN(みせかけのらくえん)』の立場をより強固にする為に。

 

 岸辺リエの信用を勝ち取る為に。

 

 ────その前座に過ぎない四宮(ムシケラ)に思うことなんてないだろ。

 

「だいたいそこの女との許嫁だってそうだ……俺達カミシロが、あんたら四宮・四条どころか、財閥、政財界……果ては海外の勢力を軒並み潰して回ったからこそ、生贄として差し出してきただけじゃないか」

 

 今回のパーティーは今まで敵対していた俺達に降る為の……『四宮かぐや』を俺の許嫁にして、四宮の存続為に生贄にする事が目的だ。

 

「それを、わざわざ古臭い『許嫁』なんて真似までして媚び売ってきやがって……笑わせんな。てめえらは今までこの世界で好き勝手やってきた癖に、自分の立場になったら媚びるのかよ……おいっ!!!」

 

 怒りに身を任せ、目の前の男を糾弾する。

 

 反吐が出る。

 

 力を失う前は、金と権力に物を合わせてお嬢……だけじゃない、『EDEN症候群』によって寝たきりの勇吾さんを、四宮と四条の派閥争いに巻き込もうとした。

 

 その上で、力を失ったら家の存続の為に俺に媚びてくる。

 

 ────こんな事をされてムカつかないわけがないだろっ!!! 

 

 

「────貴様っ、言わせておけば……っ!!!」

 

「……言わせておけば……なんだよ?」

 

「……マナトくん、だめです」

 

 悠子さんが俺の袖を掴み、止めようとするのを感じる……少しだけ、頭が…………

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ……()()()()()()()()()()()()()()()()()────

 

 

 

「────それ以上口に出してみろ、殺すぞ」

 

 

 ────殺してやる。

 

 ────殺してやるよ、今すぐに。

 

 

「────ひっ!?」

 

 

 後ろから悲鳴が聞こえた事で、心の中にある唯一の理性が戻り、デジソウルが漏れるのを抑える。

 

 ────このムシケラを蹴散らしてやる。

 

 心の中で思いが渦巻く。

 

 ────奪え、憎め、憎悪しろ。

 

 そう俺の心が騒めくのに気がついている。

 

「……殺す、随分でかい口を叩いたもんだ……ここで俺達を殺してみろ。この場には、多くのお偉いさんが集まっている。警察がすぐに集まって来るぞ」

 

 無神経な男だ。

 

 俺の殺意に気がついていない。傲慢でどうしようもなく俺を侮蔑する視線を向けてくる。

 

 ここまで、俺が我慢してやってるから生き残れていると言うのに……そんな顔をされたら……

 

 

 もうどうでも良くなるだろ

 

 ────もうどうでもいいよな

 

 

「だったら、この街ごと消せば……いや、大事な物以外世界ごと滅ぼしてやるよ」

 

 世界なんて関係ない。

 

 ────もうこんな世界俺がこの手で滅ぼしてやる。

 

「────そんな事無理に決まっ……て……」

 

 

 ────ズドンッ

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────なんだっ!?」

 

「あそこっ!? あの床に穴がっ!!!」

 

「────黄光様っ!?」

 

「かぐや様も……っ、はやく……助け……っ!?」

 

 俺達の異変に気がついたホテルの従業員達が、こちらへとやってこようとするが、俺は視線の圧でそいつらを止める。

 

「…………」

 

 ……そして、顔を真っ青に染めた四宮黄光を見据える。

 

 

「────俺にはそれができる」

 

 

 もう一度、圧をかけてそう言った。

 

「……そっ、そんな事……できるわけが────っ」

 

「兄様っ、それは────」

 

「────黄光様っ、それ以上はっ!?」

 

 それでも理解しようとしない、四宮黄光(ニンゲン)……なら────

 

 

「ならもう一度言ってやるよ……この世界を────」

 

 

 ────カツン、カツン、

 

 そう、ヒールの足音が鳴った。

 

 俺に向かって、『女』が近寄ってくる。

 

 俺はその姿に俺の体が硬直する。

 

 

 

「────()()()()()()()()()()・っ☆」

 

 

 

 突然の登場に驚いた俺の口を、女は人差し指で抑えて止めた。

 

「……リエさん」

 

「だめよ、マナトちゃん……貴方にはそれができる金も権力も力もあるけど……それはやっちゃいけないわ。せっかくのパーティー……なんだもの。マナトちゃんも、楽しまなきゃだ・め・だ・め・ぞ♡」

 

 リエさんが俺の言葉を止めにここまでやってきたのか。その言葉に頭の熱が下がっていくのを感じる。

 

 ────トン

 

「……えっ?」

 

 リエさんに体を押されて、床に座り込んでしまった。

 

「────マナトくんっ!?」

 

「……う、ああ……大丈夫」

 

 悠子さんが俺の体を引っ張って立ち上がらせてくれる……ちょっとボーッとしすぎだ。まだ、警戒しないといけない奴は目の前にいる。

 

 

「────岸辺……リエ……っ!?」

 

 

 周囲の雰囲気に呑まれていた四宮黄光が、リエさんに敵意を向ける。こいつ、あんなに殺意を向けられて、まだ足りないのか。

 

「あーら、黄光ちゃん……元気し・て・た? さっきから見てたわよ……マナトちゃんを本気で怒らせるなんて、おばかさんにも程があるわ────この子すーぐ本気にしちゃうから、やめといたほうがいいわよ」

 

 最初は優しく、途中から真剣にそう言ったリエさん……あっ、これはマジでキレてる奴だ。途中からロードナイトモンに声が変わっているから本当に怒ってる。

 

「────私はっ!!!」

 

 

「────ダメよ」

 

 追い縋ろうとする四宮黄光……だが、リエさんが厳しく睨みつける。

 

「……いい、貴方は触ってはいけない『龍の逆鱗』を踏み抜いたの……わかる? 龍の逆鱗……触れてはいけない物に触れるどころか、それを叩き壊す勢いで殴ったのがあ・な・た♡」

 

 そう言葉を続けながら四宮黄光へと近づいていく……うわっ、優しい顔してるのに怖いって感じる。

 

「黄光ちゃんはこれ以上マナトちゃんを追い詰めちゃダ・メ・よ……」

 

 優しい声に騙されるが、

 

 

 

「────殺されちゃうぞ♡」

 

 

 

 

 ────その日のパーティーは、そこでお開きとなった。

 

 今日のパーティーの唯一良かったことと言えば、

 

『……マナト様、先日はありがとうございました』

 

『……何が?』

 

『私を守る為にいろいろとしてくれた事です……この許嫁発表のパーティーだって────

 

『それ以上言わない事だ。お前には関係ないし、俺も興味ない』

 

『────ですがっ!?』

 

 

『……四宮の娘にも言っとけ、ジジイと一緒に隠居でもしとけってな』

 

『……マナト様』

 

 

 あの金色の娘の扱いが、案外悪くなかった事だな。

 

 

 ────そして、俺は…………

 

 

 

「────おう゛ぇえええええっ!!!」

 

 

「────タイトっち、無茶しすぎっすっ!!!」

 

 自宅のトイレで吐いていた。

 

「……悪い……うっぷっ!?」

 

 便器に顔を向けて胃の中の吐瀉物(データのくず)を吐き出していく。

 

()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……って、ああもうっ!?」

 

 体内に残ったデータの一片残らず吐き出していく……やっぱり、感情的になるのはやめといたほうがいい……か。

 

 

「────タイト、持ってきたよ水」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────()()()()()()()()()────…………っ!?」

 

 目の前に映ったのは黒。

 

 ……違う、俺の目の前にいるのはアグモンじゃないっ!!! 

 

 俺の目の前にいるのは……

 

「…………」

 

 …………テトだ。

 

 

「────っ、あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?」

 

 

 悲しそうに伏せる目を見た時、俺はまたやってしまったのだと気がついた。

 

「────ごめん、ごめんテトっ!!!」

 

 俺がつけた名前なのに、君が望んだ名前なのに……

 

「────俺はっ!? 俺はっ!!!」

 

「……別にタイトのせいじゃないよ」

 

 俺がこうなったのは、太一さんの遺伝子を入れた後からだ。その影響だってわかってるけど────

 

「────わかってる、そんな事はわかってるけど…………っ、だけど────」

 

 ────パンっと、俺の両頬にテトの黒色の手が当てられる。

 

 

「……だけどじゃない、確実に頻度は減ってきてるんだ……だから、今度は言わないようにすればいい」

 

 

 そうテトに微笑みかけられながら言われる。

 

「…………」

 

 そんな顔をされたら、俺はなんにも言えなくなるだろうが…………

 

「────タイトっち」

 

 

「……なに?」

 

 

「……もう、やめないっすか?」

 

 

「……なにを?」

 

 

「────もう、こんな思いするぐらいなら逃げたほうがいいっすよ」

 

 

「…………」

 

 

「タイトっちはこの一年頑張ってきたっす。目の前で見てきたオイラや先輩や……ユイだって、逃げたって文句は言わないはずっす」

 

 

「…………」

 

 

「幸い、タイトっちの家族の居場所はわかってるっす……あの人達だって話を聞けば納得してくれるはずっす────だから

 

 

「────嫌だ」

 

 俺は首元にあるゴーグルを掴む。

 

「────タイトっち!!!」

 

「嫌だって言ってるっ!!!」

 

 俺はシンに掴まれた手を振り払う。

 

「俺が望んだ世界を掴む為にっ、俺が望んだ未来を手にする為にっ、俺はここまでやってきたんだっ!!!」

 

「俺は見定めるんだ……本当に救うべきじゃなくても、俺は見定めなきゃいけない」

 

 俺はレッグポーチの中から掴みとる。

 

 

「────だって、ノルンにこれを託されたから」

 

 

『デジモンツイン』

 

 神に託された『対神器』であり、デジモンを『調停者』へと進化させる特殊なデジヴァイス。

 

「俺はこれに誓ったんだ」

 

 今までのような自分を縛り付けるような言葉じゃなくて、

 

「『自由な心』でこの世界を正しく見定め、『大事な理由』を……『この世界を心から守りたい』と思えるように、前を向かなきゃいけない」

 

 今はまだわからないけど……いや、目を逸らしているだけかもしれないけど、

 

 他者を踏み躙り、衝動に振り回され、欲に呑まれ、悲しみと怒りを振り撒く。

 

 ストーカーに母親を殺されかけた。

 

 人を憎むデジモンが存在している。

 

 父親を失った少女が、売り渡されそうになっていた。

 

 目の前で押し倒された少女が居た。

 

 目の前で押し倒した少女が居た。

 

 寝たきりの意識のない少年が、人質になりかけていた。

 

 

 ……それが、この世界だ。今の俺にはこの世界が理解できない────理解したいとも思わないけど、

 

 

「────それが、間違っていたとしても、だ」

 

 

 俺が見て、考えて、結論を出して……話はそれからだ。

 

「……タイト」

 

「……タイトっち」

 

 テトとシン……どちらも

 

 怒りや憎しみで判断してはいけない。そう考え、誓ったはずなのに、俺はどうして感情に振り回されるんだろうな。

 

「────本当に

 

 嫌になる……と 口にしようとした時、

 

 

「タイト氏〜〜っ、ご飯はまだですか────っ!!!」

 

 

 そう言って、ケン◯ッキーのバーレルを持ったユイがトイレへと突入してきた。

 

「────もおー、お腹ぺこぺこで……背中とお腹がくっついてしまうのですぞっ、タイト氏はトイレで……

 

「────ちょっ、お前っ!!!」

 

「────バカじゃないっすか!?」

 

 ────ぼかっ!!! 

 

 ────バキっ!!! 

 

「────あべしっ!?」

 

 呑気にそんなことを言いながらトイレの中を見るユイに、テトとシンが思いっきり殴った。

 

「お前本当にいい加減にしろよっ!!!」

 

「本当に、空気を、読んで、出てきて欲しいっす!!!」

 

 バキボコブチベキ……そんな擬音が聞こえてくる程、テトとシンがユイに蹴りを入れている。

 

「先輩方、ひどいのですぞ〜〜っ!!!」

 

 そんな状況でもユイは泣きべそをかきながら、手に持ったフライドチキンを頬張り続ける。

 

「こいつまだ食ってるっす」

 

「訓練で死ぬ程痛めつけてやる」

 

「……えっ、先輩方……それだけは、それだけはご勘弁を〜〜!!!」

 

「でも、訓練をしないとばーぷモンになるよ」

 

「ばーぷモンは嫌ですぞっ!?」

 

「なら食うのをやめるっす」

 

「それも嫌ですぞっ!!!」

 

 

「……こいつ」

 

「吐くまで痛めつけて(かわいがって)やるっす」

 

 

「タイト氏、先輩方が酷いのであります!!! なにとぞ、ご慈悲をお願い────

 

 

「────きひっ、……あははっ…………ハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

「……タイト?」

 

「……タイトっち?」

 

「……タイト氏?」

 

 

「ダメだ、笑えるっ、なんでこんなに笑えるんだろっ!!!」

 

 ああ、ダメだ……テト達のやりとりを見てたら、本当に笑えてきた。

 

「ちょっと、タイト氏────酷いのであります!!!」

 

「いやだって……こっちでシリアスやってる時に、そんなバーレル持って歩いてきて『腹減った』って言ってるペンギンを見たら笑えるだろ!!!」

 

「それは酷いのでありますぞっ、ねえ先輩方……」

 

 テトとシンに助けを求めるユイだが……

 

「いや、それは」

 

「タイトのほうが正しい」

 

 テトとシンに否定される。

 

 

「酷いのであります!!!」

 

 

 そんなふうに叫ぶケンタ◯キーのバーレルを持った派手な色合いのペンギン……絵面だけで本当に笑えるんだけど。

 

 ……ああ、なんかどうでも良くなってきた。本当になんでこんな事で悩んでいたんだろう。

 

「みんなみんな、酷いのであります。今度は悠子殿に……」

 

「……ユイ」

 

 俺はユイの隣に立って、頭を撫でる。

 

「……なんですか、タイト氏」

 

 心地良さそうに、それでも『不満ですぞ』……と言いたげな表情のユイ。ああ、本当にここは────

 

「今日は何食べたい?」

 

 俺はユイに今日の夜ご飯のリクエストを聞く。

 

「…………からあげがいいのですぞ」

 

 不貞腐れながらも、ユイはそう言った。

 

「わかった……腕によりをかけて作らせてもらうよ」

 

「あっ、ずるいっすよ……また、ユイの意見が通ったっす!!!」

 

 …………シン、お前が文句を言うのか。

 

「お前は口を開けばチーズ、チーズで飽きるんだよ……テトもそれでいいな」

 

「────なっ、チーズはうまいっすよ!!! 

 

「……うん、まあ肉ならなんでもいいよ……ほらシンも不貞腐れないで」

 

「……今度はオイラの意見を通させてもらうっすからねっ!!!」

 

「はいはい」

 

 肉があって野菜がなければなんでもいいテトと、チーズ味の物しかリクエストしない2体より、ユイのほうがいろんな料理をリクエストしてくれるから助かるんだよな。

 

 

「じゃあ、まずは────

 

 

 こうして、長かった4月2日は終わりを迎える。

 

 

 

 次に物語が進むのは、同じ年の8月1日。

 

 

 

 1人の少年が導き、2人の少女が迷い込んだ裏の世界。

 

 

 

 ────その冒険の扉が今開かれる。

 

 

 




[末堂愛人(星野ターフェアイト)]13歳
 
見た目 明るい茶色の髪と目 髪型はセミロングを雑に後ろで縛っている 身長は145cm前後 顔つきはアイと瓜二つ……だが、男だ。
 
服装 学校に通ってる時は学生服、私服はTシャツに肘まで袖を捲ったパーカー、ちょっとダボダボの長ズボン……という、小学生スタイルで統一されている。

長ズボンの中には、両足にレッグポーチが付いており、片方はクロスローダー、もう片方にはデジモンツインが入っている。
 
服装のイメージは『デジモンNEXT』のツルギ
 
また、学生服、私服共にツルギから貰ったゴーグルを首にかけている。
 
性格 秘密主義 テト曰く、臆病者
 
好きなもの テト シン ユイ クロスウォーズの世界 今世の家族
 
嫌いなもの 前世の母親 踏み出せない自分 反吐が出る世界 財閥関係者 岸辺の手下

趣味 料理(クロスローダーの中から出した食材で作った物)
 
得意なこと 暗黒のデジソウルのコントロール、我慢
 
苦手な事 前を向く事
 
元の世界に戻ったタイト。
末堂アケミの息子となった事で、週に二、三回はパーティーやら会合に出席しており、ストレスが溜まる事一年、岸辺リエ(ロードナイトモン)からのお願い(命令)で、多くの人間の人生を蹴散らしてきた。
政財界に口を出す人間をひたすら追い詰め、カミシロの人間だけが関われるような環境になるまで(デジモンサイバースルゥースの世界観に近づくように)、行動し続けた。

その結果、『EDEN』はこの一年で急速に発展し続け、世界中のどこでも繋がるような環境を作り出した。

学校では、ストレスをぶつけるように好き勝手行動しており、法に触れる事や人道に反する相手を肉体的にも、精神的にも、徹底的に痛めつける手段をとっており、学園内の殆ど人間から嫌われている。

学園外では、自ら進んでボランティアに参加したり、公共の場所で掃除を行う事で、近隣の住民(中学生の子供を持たない)から絶大な支持を得ている。

友人2人とバカやってる時が、『末堂愛人』としての最大の癒し。

……どうやらタイトの体に何か異常があるらしい?
 
[テト(クロアグモン)] レベル99 調査型 素質/才能200
 
成熟期/グレイモン(青)(善のデジソウル)/ダークティラノモン(闇のデジソウル)
完全体/メタルグレイモン(青)(善のデジソウル)/メタルティラノモン(闇のデジソウル)
モードチェンジ/メタルグレイモンアルタウラスモード(善/悪のデジソウル)
究極体/ダークドラモン(善のデジソウル)/ムゲンドラモン(闇のデジソウル)→ミレニアモン(闇のデジソウル)→ズィートミレニアモン(闇のデジソウル)
 
究極体(合体)/カオスモン[テト×シン]
 
好きなもの タイト 肉 タイトのご飯(野菜抜き)
 
嫌いなもの タイトの怖がってるもの タイトの敵 ヤサイモドキ 美樹原ノルン 人間 デジモン 神 岸辺リエ 調査
 
タイトのパートナーデジモン。

タイトと共に、タイトの故郷へと戻ってくるが、彼の日常は変わらない。究極に到達し、強さの限界を超えたことにより、より強力な力を得る為に新たな修行に励んでいる。

岸辺リエの事は気に食わないけど、タイトに言われるがまま多くの事を調べ、解き明かし……そして、多くの人間を不幸にした……のだが、本人はなんとも思っておらず、調査がめんどくさいぐらいにしか感じていない。

最近、後輩に無茶振りをする事を覚えた。

[シン(チューモン)] レベル99 開発型 素質/才能200
 
成熟期/レオモン(善のデジソウル)/ゴールドヌメモン
完全体/パンジャモン(善のデジソウル)
究極体/バンチョーレオモン(善のデジソウル)/プラチナヌメモン
 
究極体(合体)/カオスモン[テト×シン]
 
好きなもの 男気 先輩 タイトっち チーズ
 
嫌いなもの 意固地な奴 好き嫌いをする奴 掃除しない奴 タイトっちに嫌なことばっかする奴 岸辺リエ
 
タイトと共に、タイトの故郷へとやって来た。
調査があまり得意ではないが、テトと共に多くの会社を潰して来た。正直言って嫌な仕事だが、タイトの目的を手伝う為に手段を選ぶ事はなかった。

タイトの体の異常に不安を抱いており、いつでもこの世界から逃げられる準備はできている。

最近の趣味は、タイトにチーズ系の料理、デザートのレシピを見せて作らせる事。
 
[ユイ(ムーチョモン)] レベル55 開発型 素質/才能 125
 
幼年期/ピョコモン
成熟期/?
完全体/?
 
好きなもの サブカルチャー(特にデジモン) 主人公 テト シン タイト 油で揚げた食べ物 甘い炭酸ジュース 濃いおかず 神代悠子
 
嫌いなもの 自分 タイトの敵 マズイご飯

得意な事 『ーーーー』

タイト達と共に、タイトの故郷へとやって来た……が、あいも変わらずテトとシンに扱かれる毎日。ストレスで暴食を繰り返すが、その日のうちにカロリー分のエネルギーを消費する程、2体に可愛がられる。

テトやシンと共に、タイトの日常生活のサポートをしているが……タイトの度重なる人助けor問題行動で発生する尻拭いによって、休憩時間がなくなることもしばしば……しかし、修行時間の短縮はない。

神代悠子に変な色のペンギン言われた事をずっと根に持っているが、それはそれとして愚痴を言い合う関係である。

[タイトのデジヴァイス ]
 
クロスローダー(至極色/濃浅葱/銀)
 
タイトがテトと出会って、すぐに手に入れたデジヴァイスが、ダークナイトモン戦で変化した物。ノルンが詳細をを知っており、ノルンとは違うイグドラシルが関わっているのだが……
 
八神太一の遺伝子等、デジモンの主人公達や登場人物の遺伝子のデータやアニメ・漫画での媒体で『デジモンの物語』がデータ内に保存されている。
 
……後、この3年間で更に分かったことがあるらしい。


デジモンツイン(黒/白)

ノルンから渡された『対神器』(対神用のデジヴァイス)。

タイトが使用しても今は変化がなく、今後何かしらの起こるのだろうか…………?



今後の『あとがき』について(前回忘れていた為)

  • デジモンコーナーを続ける
  • 第1章〜第3章までのに戻す
  • 第四章が終わるまで様子見
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