ーーーー少し時間を遡る。
「…………っと、ここがケモノガミの世界、か?」
へし折れた鳥居、ひび割れた参道、寂れた神社……変わらぬ景色に少し戸惑う。
『うん、そうだよタイト』
俺の周囲を飛ぶ茶色の化け物の腕……
「ここまで変わらないと少し戸惑うな」
『……タイトにはわからないと思うけど、ここは危ないから早く逃げてね』
テトの真剣な声に少し驚いた。
「…………そんなに危ないのか?」
『今の姿なら『干渉』できなくわないけど……何が起こるかわからない……ぐらいかな』
「…………」
テトがここまで評価する相手……か。
少し、厄介だな。
「……くっそ、こんなことならもっと準備してくればよかった」
……誰だよ、『聖なるデヴァイスtype PLOT』を渡すだけでいいって言った……俺が言ったな。
「正直言って、舐めてたかもしれない」
対悪限定光線兵器『聖なるデヴァイス』……通称、初代アニメのデジヴァイス。
悪に染まったデジモンを退け、洗脳状態を解除し、味方の傷を癒やし、聖なる力で巨悪を封じる……それが、うまく機能してくれればいいんだけどな。
「…………」
ルビーはともかく、寿が心配になってきた。
『……そんなに心配するんだったら、流石に『あれ』はないんじゃない?』
…………?
「『あれ』……てなんの話だ?」
『手紙だよ、手紙』
「……ああ、手紙の内容の話か」
たしか、『校舎へ向かえ』って書いた気がする。
『『校舎へ向かえ』……としか書かれてない手紙なんて、送られても困っちゃうよ』
…………、そうか?
「ルビーがいるから大丈夫だろ」
ルビーは『あの』グルスガンマモンと何年も一緒に暮らしてきたんだ。それぐらいの無茶振りは耐えられるだろ。
『…………ハァ』
テトに大きくため息をつかれる。
『残念だけど、女2人は近くに『送る』事ができたけど、教授は別の場所に送らざる得なかったから、早く助けに行ってね』
「ーーーーっ、、…………それほど難しかったのか?」
文句を言いたかったが、難しいという事を事前に伝えられていた為、なんとか冷静になれた。
『邪魔が入ったんだよ』
…………やっぱり、邪魔が入るよな。
『この世界の主導権は向こうにあるから、サポートも難しい』
悔しそうにテトはそういうけど、安全にこの世界にこれただけでもだいぶありがたいんだけどな……それに、
「お前には他の仕事を頼んである……『あいつ』もいるから、こっちのことはあまり気にするなくていいよ」
テト……程は言わないけど、強い仲間はいるから、序盤ぐらいは無双できると思うし、別にいいよ。
…………後、お前は何するかわからないし。
『僕がやりたいの!!!』
……怒鳴られてしまった。
『…………それに、『あいつ』じゃ心配だよ。このレベルの相手に、タイトの身を守れるとは到底思えない』
…………たしかに、そうだけど。
「それは、今後の成長次第だ」
それでも俺は『あいつ』を信じてる。
『ーーーーそれでもっ!!!』
「お前達にはやる事がある……そっちを頼んだはずだ」
食い下がるのは別にいいけど、お前らには別に頼んだ事があるからな。
「言っとくけど、そっちの方が本命だ……忘れるなよ」
そこだけは厳しく言っておく。
『…………わかった』
しぶしぶ……と言った様子で茶色の腕が項垂れる。
「本当に困ったら『逃走』を助けてくれ……それだけでいい」
『…………。』
無言は肯定……でいいいよな。
「ーーーーそれじゃあ、教授の場所まで案内してくれ」
意識を切り替えて、教授を助けに行く。
『……ここから、西に2キロぐらい。ルビー達とは離れるけど、タイトの身体能力なら、大丈夫だよね』
「ーーーー問題ない、5分で充分だ」
『ーーーーそれじゃあ』
「ーーーー行こうか」
ーーーーごそ、ごそ
タイトの消えた数分後、白い影が草むらから現れる。
狐のような頭に、白い体。
前足はあるが、後ろ足は無く、尻尾には薬莢が煌めいている。
耳には赤のイヤリング。
金に染まった首輪と背中の金色の模様が燦々と輝いている。
「……こちらに、
『彼女』は少し不安そうにキョロキョロと辺りを見渡す。
「もう、いません、ね」
タイトのいた場所を睨み、ここを既に去ったことに気がついた。
「まったく、世話の焼けるご主人様ですこと」
呆れたようにそう言っているが、口元がニヤけている狐。周囲に敵の気配がない事に気がついてホッとしているのだ。
ーーーークンクン
「ーーーー行く先はこちらですね」
彼女はタイトの向かった先を見て、走り出した。
「なっ、なんなのよこれ────っ!!!」
ルビーが叫ぶ……いや、まあウチもわからんわけやないけど。目の前で怒り狂う人がおると、冷静になれるんやなって本当に思う。
「『校舎へ向かえ』ってなによ、これ!?」
マナトくんは流石に、言葉が足りないと思うんよ。
「状況を、説明、しろぉ────っ!!!」
「…………さりな、そんなに大きな声で叫ぶとまた敵が来るよ」
「────そこっ、私はさりなじゃなく、てる・び・ぃ……だよっ!!!」
「……うん? さりなじゃないの?」
チビモン……いや、ブイモンに名前を間違えられて怒るルビー……いや、ルビーもマナトくんを別の人の名前で呼んどるけどな。
「────る・び・ぃっ、復唱!!!」
「る・び・ぃっ!!!」
「────る・び・ぃっ!!!」
「る・び・ぃっ!!!」
「……ねぇ、ミナミ……あれはなにをやってるの?」
「なんやろね」
ルビーは本当になにをやってるのやろう?
先程から状況は変わっておらず、唯一の手がかりは、この子達だけやと言うのに……
「────る・び・ぃっ!!!」
「る・び・ぃっ!!!」
「……、はあ」
思わずため息が出てしまう。
「ミナミ、大丈夫?」
「……大丈夫やよ」
能天気にこんなことをしていてもいいんやろか……と、考えた時、
「……ねぇ、本当にこんな事をしていてもいいのか、さりな?」
ブイモンがルビーの名前を呼ぶのをやめて、真剣な表情でそう言った。
「る・……だから、私の名前は────
「もう太陽が少し西に傾いている。日が暮れる前に行動した方がいいんじゃないか?」
ブイモンの言葉にを聞いて空を見る。太陽が少し傾いとるような気がした。でも、なんで夜までに行動せないかんのやろ?
「でも、私の名前を────
「さり……ルビーは仲間を探してるんだろ、早く見つけないと日が暮れるぞ」
食い下がるルビーに、ブイモンは本当に深刻な顔でマナトくん達を探すよう言い含める。
「日が暮れる前に仲間と安全な場所に身を隠さないと、『霧』がやってくる……最悪、俺達までやられることになる」
……そうやった、ギルモンが『霧』の事を言っとったな。本当のことかわからんけど、ブイモンの真剣な表情と……
『へえ、ならてめえらもすぐに供物に捧げてやるよっ!!!』
『奴らは倒せないが、せめて『ヌシ』様の供物だけでも…………』
『貴様なんかに、貴様等供物共に負けてたまるかぁ!!!』
ガジモンが言った言葉が、事実なのを実感してしもうた。
「……わかった……みなみ、こっちに来てっ!!!」
ルビーはまだ納得せえへん様子やったけど、言葉を飲み込んでウチへと声をかける。
「────うんっ!!!」
言葉に頷いて、ルビーへと近づく。
「ミナミ、待ってギルモンも行くっ!!!」
後ろをドシドシとついてくるギルモン。
そうして、その場に4人が集まった。
「ねえねえ、ルビーは手掛かりを持ってないの?」
「……ちょっと待ってね」
ルビーはマナトくんからもらった袋の中身を探してみるけど、先程手にしたもの以外入っとらんかった。
「……意味がわかるのはこの手紙だけかな?」
そう言って、ルビーはみんなに見えるようにさっきの手紙を見せる……やっぱり、『校舎へ向かえ』って書いとるだけやった。
「……『校舎』ってなんだ?」
ブイモンが首を傾げる……そっか、ブイモン達は建物について知らんのか。
「校舎って言うのは、窓がいっぱいあってな。木でできたおっきな建物やねん」
校舎の見た目を言ってみる。
「建物……神社みたいなものか、ルビー?」
「神社じゃないよ。私達みたいな子供が勉強する場所……というか、本当に校舎なんてあるのかな?」
ルビーがブイモンの疑問に答える……が、心配そうにそんな事を言った。
「…………」
言葉に詰まる。
マナトくんの手紙にはそう書かれとったけれど、本当にあるかどうかはウチにはわからんかった。
「…………」
「…………」
ルビーが暗い顔になっとる……たぶん、ウチの顔もおんなじぐらい暗いと思った。
「…………、ああ、もうっ!!!」
「ある前提で行こうぜっ! 探してる道中で、仲間が見つかるかもしれないしなっ!!!」
ブイモンが大きな声でそう言った。
「…………うん」
ルビーも返事をしてくれた。そのおかげで、少し話しやすい雰囲気へと変わる。
「……ねえねえミナミ、他になにかこれだってわかるようなのないの?」
「広い校庭……白い線が引かれたり、サッカーゴール……全てが真っ白のこの木の高さぐらいある大きな網が二つあったりする場所があるかな」
この山に来る前に見た校庭の様子を話す。学校には普通にあったけど、こんな山の中には、普通じゃないもんやったから特徴にはなると思うけど、
…………って、ギルモンが目を輝かせとる。
「
ギルモンの口から意外な言葉が聞こえてきた。
「────本当っ!?」
「うんっ! 少し前に、『あっち』のほうに少し行ったら、おっきな建物に広い庭がある場所を見つけたんだ」
ガジモンか逃げてきた方向とは反対の向きに指? ……を差した。その言葉に希望が見えてくる。
「じゃあ、そこに行けばっ!?」
「マナトくんと会えるっ!!!」
ルビー顔を合わせて喜び合う。
「ギルモン、案内できるん?」
「うん、場所はわかってる」
「よし、行こうっ!!!」
トントン拍子に話が進み、ウチ達は歩き始める。
「…………」
ただ、ブイモンだけは、少し言葉を詰まらせていた。
山の中を歩く。
ゴツゴツとした道、整備してない雑草が生えた道……かつて、人がいたけれど、何十年も放置されたような道を私達は歩いとった。
「────なあ、さり
「……ん?」
ブイモンがルビーに向かって声をかけた……だけど、『さりな』って呼びかけてルビーに睨まれとる。
「……ルビーが言ってる『タイト』って奴は誰だ?」
『ルビー』って言い直して、ブイモンは聞く……はっ!?
「ウチも気になっとったんよっ、なんで『マナト』くんの事を『タイト』って呼ぶの!?」
ブイモンに先に聞かれて、今までルビーに聞けへんかった事を、聞いてみる。
「…………」
「…………」
「…………はあ」
ルビーはその言葉に躊躇いがちに口を閉ざした後、大きく溜息をついた。
「ちょっと、昔の話をするから聞いててね」
昔、私には弟がいた。
弟の名前は『星野ターフェアイト』……ふふ、変な名前でしょ。ママがつけた名前なの。
私は『ルビー』、兄は『アクアマリン』、弟は『ターフェアイト』……全部宝石の名前をつけたんだって……まっ、弟の名前の宝石を選んだのは『おじさん』だったけどね。
ある日私達の……ううん、赤ちゃんだった弟の目の前に『コロちゃん』……ブイモンみたいな『デジモン』が現れたんだ。
チビモンみたいに小さくて、可愛かったのを覚えてる。
そんなコロちゃんと私達の生活は、ママの稼ぎが良くなるにつれて少しずつ豊かになっていった。お兄ちゃん……ううん、『アクア』もママの仕事を手伝うようになってからは、一気に幸せになっていった…………タイトを除いて、ね。
あの日、タイトはコロちゃんと一緒に消えちゃったんだ。
死んだんじゃない、消えたの……光と共に消えてなくなった。ママも、お兄ちゃんも、私も、なにもできずに見てることしかできなかった。
何年も探したけど、見つからなかった。
残ったのは、タイトが残した手紙と資料だけ……そこに書かれてることに『水無瀬中学』の林間学校の話が書かれていた。
最初は戸惑った。だけど、手掛かりとして、タイトが現れるのを何年も待っていた。
そんなある日、タイトからの電話がやってきた。
『時間がないから、渡すものを指定の場所に取りに来い』ってね。
あったのは小さな箱と、さっきの手紙みたいな『一言しか書かれてない手紙』。
手紙には、『箱の中身を使用方法』しか書かれてなかった。
そして、箱の中身を開けて、使用すると、
『デジモン』が現れた。
ぐーちゃん……そのデジモンはママに『世界を救う手伝いをしろ』と言った。
その数日後に、ガジモンみたいなデジモンに襲われるママ。生きて帰ってきたけど、ママは本当に『命』を狙われていたんだ。
ぐーちゃんは助けてくれた。
ママを守ってくれた。
タイトはママを……私達を守る為にぐーちゃんをこの世界に送った。
……そして数年後、私達の学校の入学式の日にママに瓜二つの少年、『末堂愛人』が現れた。
『私と同じ年齢』の『私のママと瓜二つ』で、『『弟』が警戒していた学校』に入学してきた少年。
「そんな偶然があるわけないから、私は『末堂愛人』の事を『弟』なんじゃないかと思ってるんだ」
「…………」
「…………むう」
「…………んにゅう?」
ルビーが歩きながら話した内容が衝撃的だった。
「…………そんな過去があったんやね」
驚いた……と言うより、
「みなみ、黙っててごめんね」
「別にええよ」
マナトくんと異常に親しかったのは、そうゆうことやったのかって理解できたから、納得もできた。
「なぁ、さり……ルビー?」
「なに、ブイモン」
「ずっと気になってたんだけど……うーん?」
変に出し渋った口調で話すブイモン……なにか悩んどるみたいやけど、何かあったんやろうか?
「
「────っ!?」
「えっ、そうなの!?」
ブイモンの悩んだ一言が、ウチの心に衝撃を与えた。
「俺達は『ケモノガミ』だ」
ブイモンは自分のことを親指で指す。
「だけど、ルビーは『デジモン』って俺達の事を呼んだ」
ルビーを指さして、ブイモンは言う。
「────おかしいよな?」
ウチも少し気にしとった事を、ブイモンは言った……そしてルビーは、
「えっ、あっ、うーん……私にもわかんない」
しどろもどろになって、そんな事を言ったルビー。
「…………ルビー?」
「だって、タイトやぐーちゃん本人が『デジモン』って言うんだもんっ! 正式名称だと思うじゃんっ!!!」
……と、大きな声で叫んだ。
(これって、もしかして)
(本当に知らない?)
「……お前、俺が『さりな』ってずっと呼んでること、否定しちゃいけないんじゃないか?」
ブイモンが呆れたようにそう言うけど、
「それはない」
「ないやろ」
「うーん、ギルモンはミナミに賛成する」
私達三人は、ブイモンの意見を否定した。
「えっ、なんで!?」
「私が嫌がってるのに、そのまま使ってるじゃん」
「だって、名前を知ってるのに、わざとしてるやろ?」
「ギルモン、そう言うの良くないと思う」
ブイモンに対して、私達は三人の意見は同じだ。
「…………だって、そっちの名前の方がしっくりくるんだよ」
「……は?」
「すみません」
そんなやりとりをしていると、視界が少しずつ開けていく。
「…………ついたよ」
木造の校舎と広い校庭。
「……嘘っ!?」
「……なんでこんなことにっ!?」
「…………ここが、そうなのか?」
私達が来た時よりも、遥かに劣化はしているけれど、そこには朝に出発した林間学校で使っている校舎が立っていた。
「…………なんで、こんなに────
────ガサッ、ガサガサガサッ!!!
「……えっ?」
────ドンッ!!!
背後から大きな何かが通り、ルビーが消えた。
「────ルビーっ!?」
ブイモンのそんな声が聞こえてくるが、頭が状況に追いつかない。
「…………なんや、これ?」
「くそっ!!!」
ルビーが突然いなくなり、ウチは現状に頭が回らず、ブイモンは悔しそうに地面を叩いた。
「ルビーが連れ去られた?」
そんなギルモンの言葉が、オレンジに染まる夕陽と一緒に沈み始めていた。
「……タイトと?」
「ーーーーみなみのっ!」
「「デジモン紹介コーナー(!!!)」」
「…………なんでここにいるんだよ」
「えー、いちゃあかんの?」
「本編だと、本名さえ明かしてない関係だぞ」
「ええやん、ええやん……雑にメタ視点で始めとるんやし、本編後の設定とか、別時空からの視点とかでええやん」
「…………」
「ウチは別にどうでもええんやけどな、ルビーがいなくなったからおらんのよ」
(それは本編に合わせるのか)
「それじゃあ始めるでぇ……今回は『ブイモン』っ!!!」
「前回、チビモンが成長期に進化した姿だな」
「チビモンじゃなくてええんか?」
「別にいいだろ……こいつは有名だし」
「へえ、有名人みたいなものなんか?」
「『古代種』と呼ばれる程、昔から存在して」
「ふんふん」
「勇気と友情を受け継ぐ者であり」
「ほぉ〜」
「『黄金』にも、『竜騎士』にも、『聖騎士』にだってなれる」
「へえー」
「……条件さえ揃えば、その先だって…………?」
「話半分に聞いてないか?」
「いやあ、話の内容がようわからんから……あはは」
「…………まあ、すごいデジモンだって事だ」
「…………。」
「…………どうかしたのか?」
「前回、ルビーちゃんが『いいなぁ』って言っとったけど、ルビーちゃんのデジモンもすごいやなぁって思ったんやけど」
「どちらもすごいデジモンだよ、まったく」
「はよう、タイトくんのデジモンも現れるといいねぇ」
「…………今回のデジモン紹介はこれで終わりっ!!!」
「ーーーーえっ!?」
「それじゃあ、またねっ!!!」
「またね〜〜」
※緊急アンケート 前書きに作品を書くことについてアンケートを取りたいと思っています。理由は、読み上げ機能を使っている読者様から、『前書きに作品を書くと作品をを読み上げてくれない』という連絡を受けました。次回以降に関連することなので、次回までにアンケートお願いします
-
今後も前書きに作品を書いてほしい
-
前書きに書かないでほしい