産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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「『駆駆裂空斬(くるくるれっくうざん)』っ!!!』」


「ーーーーうおらばっ!?」

ーーーードシン、パラパラ……スゥッ

レッパモンの必殺技が命中して、最後の1体が塵へと変わる。

「…………これで終了っと」

無事に塵が消えていくのを見届け、一息つく。

「…………にしても」

『クロスローダー』の機能で『超進化』したレッパモンを見つめる。

「ご主人様?」

本来であれば、『超進化』の影響により『完全体』、もしくは『究極体』に進化するはずのクダモンが、『成熟期』であるレッパモンに進化した……いったいどういう事だ?

「ご主人様、先程から見つめられておりますが……このレッパモンめに何か御用でもあるのでしょうか?」

「…………」

首を傾げるレッパモン……いや、俺が聞きたいんだけど。まあ、いい……ていよく聞けるいい機会だ。

「なんでお前は『完全体』に進化しないんだ?」


「ーーーーっ!?」


レッパモンが急いで俺から離れていく。

「……おほほ、いったいなんのことでしょうか?」

「いや、だから『なんで『完全体』に進化ーーーー


「ーーーーアーッ、アーッ……私の耳には聞こえません!!!」

…………めっちゃ、怪しい。

「ふん、ふふん、ふーん……それでは、ご主人様他に何か御用でも……」

耳をピコピコ動かしながら、鼻歌を歌って誤魔化している。だけど、尻尾に生えた剣の目はギョロギョロとしどろもどろになって、周囲を見回している……なんだこの狐。

「ーーーーいや、だから」

「アーッ、そこにご主人様のお連れの方が気絶されております。すぐに介抱しなければっ!!!」

わざとらしく『教授』を見つけて、近寄っていく。誤魔化したいのが、目に見えるんだけど……あいつ、本当は原因をわかってるんじゃないのか?

「…………」

「はやく起きてくださいましっーーーーほらっ、は・や・くっ!!!」

ぺしっ、ぺしっと音を鳴らしながら、教授の体を尻尾で叩いているレッパモン。

「……うっ、うーん」

少しずつ意識を取り戻していく教授……まあ、あの様子なら大丈夫か……俺は俺の方でこの世界で戦う『準備』を…………


「ご主人様がこちらを見ているでしょうっ、はやく起きてくださいましっ!!!」


ーーーー()()()!!!


「……あっ!?」

レッパモンの勢い余った尾の一撃が、気絶している教授にぶち当たる。

「……うっ!?」

結構いい当たりしてたな、今の一撃。

「お連れの方ーーーーっ!?」


…………その5分後、教授の腹と肩に青痣ができている事を疑問に持ちながら、意識を取り戻した。



「なんで、こんなに体が痛いのか知ってるかい?」

「…………なんででしょうね」

「……あは、あははははは」

「たしか、意識を失う前に何か……」

あっ、やべ……手加減したとは言え、俺が腹を蹴ったことを思い出される!?

「ほらっ、教授……そんなことよりはやくルビー達のところへ行きますよ」

できる限り内心を悟られないように、気さくに声をかける。

「……むっ、それもそうだな。はやくルビーちゃん達のところへ……って、そう言えばなぜ君が私の事を『教授』だと知っているんだ?」

「それについては後で話します……レッパモンいけるか?」

レッパモンの背に2人で跨りながら、声をかける。

「いつでも行けますっ!!!」

レッパモンの返答に頷き、すぐに戦闘に参加できるように手持ちの荷物を確認する。

クロスローダーよし、バッグ内の荷物よし、ゴーグルよし……そして、休憩中にクロスローダーの『ショップ』機能で購入した『ーーー』よしっ……全部あるな。

「マナトくん……本当に『それ』を持っていくのかい?」

教授の声が聞こえてくる……『ーーー』についてかな?

「当たり前じゃないですか。これは『今』の俺の『メイン武器』ですよ」

()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。安全性よし、対デジモン性能よし、鎮圧性能よしの最高の『切り札』である。

「それじゃあ、行くぞっ!!!」

あっちも戦ってるだろうし、はやく向かわないとな。

「ハイッ、ご主人様!!!」

そう言って、校舎まで走っていく。


「…………本当にこれでいいのだろうか?」


そんな教授の声が俺の耳に入ってきた。



第六話 ドクグモンとの戦い 赤き竜、グラウモン進化!!!

 

 黒みがかった青に染まる体育館。

 

 ────ガシャ、ガシャ。

 

 そんな音ともに、黄色とオレンジと黒色の蜘蛛の化け物*1が数匹、ウチらの目の前に這い出して来た。

 

「作戦開始だっ!!!」

 

 テトの声が響き渡る。

 

「行くでっ、ギルモン!!!」 

 

「────わかったっ!!!」

 

 ギルモンと共に走り出す。先程のテトとの会話を思い出した。

 

 

『作戦の要はみなみとギルモン……君達だ』

 

『……えっ、ウチらなんかっ!?』

 

『パートナーがいないブイモンよりも、ギルモンと一緒に戦える君がいる事の方が大事だ』

 

『……パートナー?』

 

『パートナーというのは、デジモンと共にある人間のことだ。そのパートナーがいるデジモンは、人間を守る為に何倍も何十倍も強くなれる。ギルモンのその様子……実感があるんじゃない?』

 

『……それは』

 

『うん、ギルモン、ミナミの為なら何度だって立ち向かうよっ!!!』

 

『なら、戦え……ルビーを助ける為には、君達が前に立って戦う必要がある』

 

『…………』

 

『大丈夫、みなみはギルモンが守る!!!』

 

『だから、大丈夫』

 

『…………わかった』

 

 

 ドクグモンがガシャ、ガシャと近づいて来とる。

 

「走るで」

 

「────うんっ!!!」

 

 暗闇の中、確認できるのは三体のドクグモン。それらが体育館の入り口まで走って来とる。

 

 

『作戦はこうだ……まずは、君達の今できる最強の攻撃で『ドクグモンの蜘蛛の巣』が破壊できるかどうか調べる』

 

『ブイモンヘッド』!!!』

 

『『ロックブレイカー』ッ!!!』

 

 暗闇の体育館の目の前で、ギルモン達の攻撃では傷一つつかない事がわかっとる。

 

 

「ルビーを頼んだっ────『ブイモンヘッド』ッ!!!」

 

「────キシャアッ!?」

 

 

 ブイモンが1体のドクグモンに向かって、攻撃を当てる。

 

 

『破壊できないなら、次の作戦だ』

 

『ブイモンが囮になって、ドクグモンの意識を限界まで反らせ』

 

『わかった』

 

『その間にギルモンとみなみは僕の護衛だ。僕が空間に『穴』を開けて、奴らに追いつかれる前にルビーを助ける。その間、そしてルビーが起きるまでの間、逃げ道を模索するのが僕の役目だ』

 

 

 テトとギルモン、そしてウチはルビーを探しながら走る。

 

「ミナミっ、あそこに蜘蛛の巣が集まってる」

 

 確かに、ウチ達の入って来た入口とは真反対の方にギルモンが言うように蜘蛛の巣が密集しとった。

 

「……あの大きさは」

 

 よく見ると、人1人が入るぐらいの大きさの蜘蛛の巣の塊が、ステージの階段の辺りにかたまっとる。

 

「────『あれ』はっ!?」

 

 蜘蛛の巣の塊の中に小さく光る何かが目の中に入って来た。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 ウチは確信を持って、ギルモン達に言う。

 

「なんでそんなことがわかった?」

 

「『星型の髪留め』が蜘蛛の巣に絡まっとる」

 

 そう、ルビーが身につけていた髪留めが、蜘蛛の巣に絡まっとるのが見えた。

 

「……チッ、なんでまだあんなの使ってる。走れっ、ブイモンが囮になってるうちにルビーを助けるんだっ!!!」

 

「────わかったっ!!!」

 

 数十メートル先がこんなにも遠いと感じるのは初めてだ……だけど、

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 内心で強くそう思う事で、疲れた体に喝を入れる。

 

 

 ────ドシンッ!!! 

 

 

「────()()()()()!!!」

 

 

 大きな音共に目の前に落ちて来たドクグモン。

 

「────っ、ギルモンッ!!!」

 

「『ファイアーボール』ッ!!!」

 

 咄嗟にギルモンに攻撃を頼み、それに応えるギルモン。口に溜めた炎の球をドクグモンの目に直撃させる。

 

 

「────ギシリャ!?」

 

 

「効いた!?」

 

 ドクグモンが8本ある脚の前脚を2本使って、顔を燃やしている炎を消そうともがき始める。

 

(もしかして、このまま戦っても)

 

 勝てるのでは……と思ったところで、

 

 

「いいから、走れっ!!!」

 

 

 ────パシンッ!!! 

 

 背中を勢いよく叩かれる。

 

「────っ、ハイッ!!!!」

 

「本当の目的は『ルビー』だ……目的を見失うな!!!」

 

「……ぐっ、はいっ!!!」

 

 テトに叱責され、再び走り出した。

 

「ミナミ、もうすぐだ」

 

「────うんっ!」

 

 走り続けて、ようやくルビーの目の前に辿り着いた。

 

「…………これが」

 

 繭のように巻かれた蜘蛛の糸の中に、ルビーの寝ている姿が見える。人1人が入っとる繭は、不思議と神秘的に見えてしもうた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

「えっ、あっ……はい!?」

 

 テトが空間に穴を開けて、ルビーを取り出す。

 

「────うわっ、なにこれ!?」

 

「ベトベトするっ!?」

 

 ルビーの体をギルモンと持った瞬間、巻き付いとる糸と何かようわからん粘液が腕についてしまう。

 

「ドクグモンの糸と『消化液』だ。時間はかかるけど、少しずつ濡れた相手を溶かしていく……こいつらを倒すか、三時間以内に水で洗い流さないと表面の皮が完全に溶け切るよ」

 

「────ひぇっ!?」

 

 ルビーが捕まってから、30分くらい経っとる……ってことは、はやく洗わんといかん!? 

 

「驚いてないで、はやく逃げるっ!!!」

 

「────っ!?」

 

「……うへえ、ベタベタだぁ」

 

 ギルモンがルビーをおんぶして走り出す。ウチもそれに続いて、ブイモンのところへと走り出した。

 

 

「────キシャアッ!!!」

 

 

 先程、目潰しをしたドクグモンが帰り道を塞いできた。

 

「────キシャアッ!!!」

 

「……うわっ、やっぱり『ただの』成長期の攻撃じゃすぐに動き出すよ、なっ!!!」

 

 ドクグモンの腹から出た糸でできた弾丸の雨を、テトは今よりも高く飛んで、避ける。

 

「ミナミ下がってっ!!!」

 

 ギルモンの言うたとおり、走る速度を遅くしてギルモンの後ろにつく。

 

 

「『ファイアーボール』ッ!!!」

 

 

 ────ズガンッ!!! 

 

 糸の弾丸と火の玉がぶつかり合い、煙が立つ。

 

 

 ────()()()()ッ!!! 

 

 

 大きな音が鳴り、空間に穴が開く。

 

「────っ!?」

 

 ウチには見覚えがあった。テトが空間に穴を開けたのだ……そして、その中には、

 

 

『────キシャアッ!!!』

 

『────はあっ!』

 

『キシャ、シャッ!』

 

『シャアッ!』

 

『……はあ、はあ……ほっ、へっ……っとっ……っ!?』

 

『キシャアッ!!!』

 

『……はあっ!? ちょっと待て、────っ、……避けれた』

 

『キシ、キシャアッ!』

 

『…………っ、まだ来んのかよ。────あいつらはっ、ルビーはまだかっ!?』

 

 

 ブイモンが必死になって、三匹のドクグモンを相手に攻撃を避けている。その姿には既に余裕があらへん。はやく助けに……

 

 

()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 そんな声が上から聞こえてくる。

 

「うん、わかったっ!!!」

 

「行くよ、ギルモンっ!!!」

 

 テトの声に言われるまま、空間の穴を通り抜ける。

 

 

 ────にゅるん。

 

 

 そんな音が鳴ったと思ったら、突然目の前が先程見た穴の先へと立っていた。

 

「…………」

 

 後ろを振り返る。煙が立ち上る光景が目に入ってくる。

 

「────おい」

 

「────っ!?」

 

 いつのまにか横にテトが飛んどった。

 

「ドクグモンが来る、はやく走るぞ」

 

「ミナミ、行こう」

 

「……あっ、うん」

 

 2人に促されるまま、走り出す。ブイモンとの距離まで、あと15メートル程。

 

「戦闘準備をしろっ!!!」

 

「ミナミ、頼んだっ!!!」

 

 テトの声と共に、ギルモンから渡されるルビー。ウチはルビーの肩を貸すように、支えながら歩き出す。

 

「……行く────っ

 

 

 

 ────『スティンガー・ポレーション』

 

 

 

 そんな声が背後から聞こえたと思ったら、背後から緑色の煙のようなモノが押し寄せてくる。

 

「────がはっ!?」

 

 緑色の煙がブイモンが戦っとる辺りに大きく広がり、ブイモンが突如倒れてしもうた!? 

 

「────ブイモンっ!?」

 

「吸うなっ、これはドクグモンの必殺技『スティンガー・ポレーション』だ。少しでも吸ったら、体が動かなくなるぞっ!!!」

 

「────なんやってっ!?」

 

 テトのその言葉を聞き、口にハンカチを当てる。緑色の煙……『スティンガー・ポレーション』があたりを充満し始める。

 

「……ミナ、ミッ!」

 

「ギルモンッ!?」

 

「……くそっ、空間に穴を開け……っ、穴が開かないっ!?」

 

 テトの驚きの声と共に、状況が悪くなったのを察した。

 

「────どうゆうことやっ!?」

 

「今までのは見逃されてただけ……奴等、僕達が集まるのを待ってやがった。なんでこんな密室で戦ってるかをもう少し考えるべきだった。

 

「────なっ!?」

 

 冷静に解説をされるが、嫌な状況が更に嫌な感じになっただけやねん。

 

「ここは僕だけでも逃げて……」

 

 テトが空を飛んで逃げていく……ウチらを置いて行く。

 

「……えっ、うそや────待ってって!?」

 

 少しずつ体を蝕んでいく痺れと、テトの急な逃走に体が動かずにいる。

 

「待ってて、すぐにタイトを呼んでくる」

 

 そんな声が聞こえてくるが、ウチはもう体が痺れて動けへんようなっとった。

 

 

 ぎしり、ぎしりと音が鳴る。ドクグモン達の足音だ。

 

「────キシャ、ァ」

 

 奴等の吐息が聞こえとった。

 

「…………」

 

 ルビーがウチのそばで倒れとるのが見えた。

 

 

(ようやく、ようやく助けられたって言うのにっ!!!)

 

 

 悔しさで胸がいっぱいになった。

 

 

 ぎしり、ぎしりという足音が大きくなる。ウチの顔の近くに大きな蜘蛛の足が見えとった。

 

「シャァッ、シャッシャッシャッ!!!」

 

 奴等の嗤い声が聞こえてくる。

 ウチらを嘲笑うような、そんな声が聞こえとった。

 

「……ル、ビー……」

 

 ブイモンが毒で痺れた体で、ルビーに手を伸ばそうとしとるのが見えた。

 

(……ふざけるな)

 

 ウチらを嗤う蜘蛛の化け物どもに怒りが頂点に達した。

 

 ウチらをこんな世界に巻き込んだマナトくんの頭を引っ叩きたくなった。

 

 ウチらを置いて逃げたテトに、置いて行かれたことへの怒りもあった。

 

 

 ……そして、なにより

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 シュルシュルと音が鳴っているのを感じる。ドクグモンがウチの体へと糸を巻く音だった。

 

 

「キシッ、キシッ!!!」

 

 

 ギルモンも、

 

 

「キシッ、キシッ!!!」

 

 

 ルビーも、

 

 

「キシッ、キシッ!!!」

 

 

 ブイモンも、みんな糸の中に入っていく。

 

 そんななか、テトのこんな言葉を思い出した。

 

『ドクグモンの糸と『消化液』だ。時間はかかるけど、少しずつ濡れた相手を溶かしていく……こいつらを倒すか、三時間以内に水で洗い流さないと表面の皮が完全に溶け切るよ』

 

 なんでもないようにそう言われた言葉が、自身の立場になってようやっと理解できた。

 

 体が少しずつ溶けていく。

 そんな痛くて辛くて仕方ないことが、ウチの末路になるのではないかと、恐怖で頭がいっぱいになった。

 

 

「────()()()()()()()()()()()

 

 

 死にたくない……ただ純粋にそう思った。死んでたまるかと、こんな奴らに負けてたまるかとそう思った。

 

 

「……ミナ、ミ」

 

 

 糸で巻かれとるギルモンがウチに向かって、声をかけた。

 

 

「────っ!?」

 

 

 その声を聞いて、ギルモンはまだ諦めとらんことにようやっと気がついた。

 

「負け、たくない」

 

 悔しかったから、こんな奴等に負けるなんて許せへんかったから。

 

「うん」

 

 

「死にたくない」

 

 

 死にたくなかった。ウチにはもっといっぱいやりたいことがある。

 

 林間学校だって終わっとらんし、ギルモンだってあったばっかりや。みんなでもっと遊びたいし、夏休みの宿題だって終わっとらんし

 

 

(……こんなことを考えるだけで、恥ずかしくて死にとうなるけど恋だって、したい)

 

 

 ふと思い出すのは『今』だけは憎たらしく思う、1人の男の子。そんな淡い思いを思い出し、奮起する力へと変える。

 

「う、ん」

 

 ────そして、何よりも、

 

 

 

()()()()!!!」

 

 

 

 その『思い』が、ウチの体を巡っていた。絶対に、こいつらに勝つと言う『思い』がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……えっ?」

 

 光の根源は、更に輝き、『ピンク色』の光が空間を照らし続ける。

 

 

「キシッ!?」

 

「シャ、シャァ……?」

 

「シャァアッ!?」

 

 

「……ドクグモン、が……?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()?」

 

「……ギルモン?」

 

 ギルモンに言われるまま立ち上がる。

 

「……嘘?」

 

 ドクグモンの毒が体を痺れさせていたはずなのに、そんな痺れは一切感じなかった。

 

「…………『あの時』と同じだ」

 

「……あの時?」

 

 そう言われて思い出したのは、昼間にギルモンへと進化した時のことだった。あの時も、光でガジモンが後ずさっていたのを思い出した。

 

「ミナミ、今ならなんでもできそうな気がする」

 

「……ギルモン?」

 

()るよ、ミナミ」

 

「…………うん、わかった」

 

 ギルモンの体に光が集まっていく。これも、あの時と同じだ。

 

「────ギルモンッ!!!」

 

「ミナミっ!!!」

 

 

 

 

 [ギルモン進化]

 

 

 

「『グラウモン*2』!!!」

 

 

 

 高さ四メートルを超える巨大な竜。

 

 耳は大きな2本の角へと変わり、白い髪が代わりに生えている。

 

 真紅の体をキャンパスに黒色の模様は、ギルモンの時より大きく、力強く描かれとった。

 

「────ミナミ」

 

「行ってくる」

 

 

「「「────キシャアッ!!!」」」

 

「「「『スティンガー・ポレーション』」」」

 

「……フンッ!」

 

 尻尾を大きく振って、ドクグモンの『スティンガー・ポレーション』を吹き飛ばした。

 

「今度はこっちだっ!!!」

 

「『エキゾーストフレイム』」

 

「────シャァアアアアアッ!?」

 

 ギルモンの口から出た大きな炎は、一匹のドクグモンの体を燃やし尽くした。

 

「────シャァ、シャアッ!?」

 

「シャァアッ!」

 

「『プラズマブレイド』」

 

 腕にある2本の突起が、大きな雷の剣に変わって2匹目のドクグモンを切り裂き、

 

「シャァ、ぁ」

 

 3匹目を貫いた。

 

「……すごい」

 

「これが、ギルモン……なのか?」

 

 ギルモン……いや、グラウモンの戦う姿にウチらは驚いとった。傷一つつけることすら叶わなかったあのドクグモンを、一撃で倒していくグラウモン。

 

「本当に、すごい強なったなぁ」

 

 その圧倒的な強さに、ウチらは安心していた。

 

 

「キシッ、キシャアッ!!!」

 

 

 そんなことを考えとったら、背後からドクグモンの鳴き声が聞こえてくる。

 

「……なっ、なんで後ろにドクグモンがいるんや!?」

 

 ウチとギルモン、そしてテトの道を阻んだドクグモン……それが背後に立っとった。

 

「最後の一匹が俺達を狙ってやって来たんだ」

 

「……グラウモンっ!?」

 

 大きな声でグラウモンに向かって叫ぶ。

 

「────ミナミッ!?」

 

 グラウモンがこっちに気づいた。時期にこちらに来てくれる……だけど、

 

「『スティンガー・ポレーション』」

 

 ドクグモンが再び毒の煙で攻撃してきおった。

 

「くそっ、あともう少しだって言うのに……みなみっ、ルビーを頼ん────っ」

 

 

「『エキゾーストフレイム』ッ!!!」

 

 

 ────ズドンッ!!! 

 

 

 ウチらの目の前を大きな火球が飛んできた。

 

 

「ギシャァアッ!? ……ァ、ああ……ァ」

 

 

 ────ドガンッ!!! 

 

 その火球はドクグモンに命中して、粉々に爆発した。

 

「……へ?」

 

「…………終わっ、た?」

 

 目の前でドクグモンが爆発し、腰を抜かしたウチとブイモン。ドクグモンは粉々になり……そして煙となって消えていく。

 

 ウチらの横にドシンドシンと走ってくる巨大な竜。

 

「……だいじょーぶ、ミナミ?」

 

 その元凶は惚けた様子でウチを見つめる。

 

「あはは、ほんまに強なったなぁ」

 

「……ん?」

 

 当の本人は首を傾げとるけど、本当にそう思った。

 

 

「……あっ、そうだ! ルビーっ、ルビー!!!」

 

 

 思い出したようにルビーの体を揺らすブイモン。

 

「……ん、んぅ」

 

 ルビーも少しずつ声を上げている……そして、

 

「……ブイモン……ここは、どこ?」

 

「────ルビーっ!?」

 

 ルビーがようやっと目覚めたのだった。

 

「ブイモン、ってくっさっ!? ……ってなにこれ、なんでこんなにネバネバしてるのぉ!?」

 

「それはな、今までルビーを助けるために……えっ?」

 

 ドクグモンは消えた。

 

 糸を出している元凶はが消えた。ウチらの体の糸はすでになくなった…………しかし、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────えっ?」

 

 

 

 ────()()()ッ!!! 

 

 

 ステージの方からとてつもなく大きなモノが落ちてくる音が聞こえてくる。

 

「……えっ?」

 

「…………うそ?」

 

「倒したはずなのにっ!?」

 

「グルルルルッ!!!」

 

 ウチが混乱し、ルビーが目を疑い、ブイモンが悲痛な声を上げ、グラウモンが牙を剥いた。

 

 …………そこには、

 

 

「────()()()()()()!!!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あんな巨大なのがまだ残ってたのか!?」

 

「嘘やろ、もう一度戦わなきゃあかんの?」

 

「……えっ、あんなのと戦ってたのみなみ!?」

 

「もう一度行くよ、ミナミッ!!!」

 

 

 あんな敵ともう一度戦わなきゃあかんのかと、絶望したその時だった。

 

「────キシュ、グェ!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────ミナミ、何かいる」

 

「……えっ!?」

 

 何か素早く走っている人型の存在が、ドクグモンの周りを走りまわる。

 

「ルビー、警戒を」

 

「なに、なにが起こってるの!?」

 

 ものすごい速さで、ドクグモンの喉、角、脚、胸、腹の順にぐるぐるとロープで巻いていく。

 

 

「……()()()()()()()()()()

 

 

 その人型が、ロープでぐるぐる巻きにされたドクグモンの腹の上に乗った時、『懐かしい』声が聞こえてくる。

 

「……うそや?」

 

「まさか?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……()()()()()()()()()

 

 

 そう言った人型の影は、月光が差し込む窓によってその姿を現した。

 

 

「────マナトくん!?」

 

「────タイト!?」

 

 

「────よっ!」

 

 

 ステージ………… ドクグモンの上で笑ってこちらを見たのだった。

 

*1
レベル:成熟期 タイプ:昆虫型 属性ウィルス 必殺技:『スティンガー・ポレーション』

 全身にコンピュータウィルスを寄生された、蜘蛛の姿をした呪われしデジモン。もともとは蜘蛛型とは言え、昆虫系の普通で大人しいデジモンにすぎなかったが、ある時、強力な電磁波の嵐に巻き込まれ、ネットワークを飛び交っていたコンピュータウィルスに感染してしまった。それ以来、触れるだけで全てを腐食させる、コンピュータウィルスと言う毒の塊となってしまった。また、八本の足を使ったその移動力は特筆すべきものがある。誰がどんなに全力で逃げようとしても、ドクグモンは必ず背後にへばりつき、相手が疲れ果て足を止めるまで追跡を止めることは無い。そして相手が安らかな寝息を立てる時、凶悪な牙から発せられる恐るべき毒の攻撃『スティンガー・ポレーション』で敵をしとめる。

*2
レベル:成熟期 タイプ:魔竜型 属性:ウィルス種 必殺技:『プラズマブレイド』『エキゾーストフレイム』

「深紅の魔竜」と呼ばれている魔竜型デジモン。ギルモンの頃にあった幼さは消え、より野性的で凶暴なデジモンへと進化をしている。また、ウィルス種のデジモンではあるが、テイマーの育て方次第では忠実に従うので、正義のために戦うこともある。グラウモンの咆哮は大地を揺るがすほどの威力を持っており、戦いの前には攻撃的な唸り声をあげ敵を威嚇する。得意技は両肘のブレイドにプラズマを発生させ敵を攻撃する『プラズマブレイド』。必殺技は爆音と共に強力な火炎を吐き出す『エキゾーストフレイム』。





「タイトと」

「ルビーのっ!!!」


「「『デジモン紹介コーナー』(っ!!!)」」


「今回もやってきてしまっ……やってきたデジモン紹介コーナー。解説のタイトと」

「司会のルビーで……って、私に対する心配はっ!?」

「必要ないだろ……別に、あれくらいよくあることだ」

「よくあることってっ、おかしいよねっ……命が終わりかけたんだけどっ!?」


「よくあること、よくあること……

人間とデジモンの混成軍に討伐されかけたり、

その世界最強の英雄2人に倒される&牢屋に放り込まれたり、

ラスボスがデジタマになって空から降ってきたり、

ラスダンの中ボスがいきなり第一ステージに現れた上、決闘を申し込まれるのもよくあること」


「……いや、それって」


「そう、よくあることなんだ。本当によくあること……ふひっ、ふひひひひ…………」

「いや、キモいって、その笑い方」

「……悪い、嫌なことを思い出した。……と、時間が押してるな。巻きで行こうか。今回紹介するのはこれ、『ドクグモン』」

「切り替えはやっ!? ……って、キモッ!?」

「全長3メートルから4メートル、黄色い頭に2本の角、首周りのオレンジの体毛に、緑色の6つの目玉……そして何より虫でいうところの、腹の背にあたる部分の大きな白い髑髏マーク。某漫画の海賊旗を思わせるような黒い腹には想像もつかないような派手な見た目だからな……確かに気持ち悪いな」

「みなみやブイモンはこんなのと戦ってたの!?」

「戦ってるな……ちなみにそいつは毒があるぞ」

「毒って……あんたはここにドクグモンが出る事がわかってたんでしょ。なら、なんですぐに来れなかったの?」

「対のいいチュートリアルと思ってたな。いつのまにか足手纏いが増えて、難易度が高くなってたけど」

「……チュートリアルって、ねえ、あんた私達の事をなんだとーーーーっ


「話が逸れてきたので、次回にしよう。そうしよう……それじゃあ、またっ!!!」


「あっ、おい待て……くそっ、いつものことながら逃げ足が速い。それでは今回の『デジモン紹介コーナー』の方を終わらせていただきます。またねーーーー……おい、待て逃げるなっ!!!」

※緊急アンケート 前書きに作品を書くことについてアンケートを取りたいと思っています。理由は、読み上げ機能を使っている読者様から、『前書きに作品を書くと作品をを読み上げてくれない』という連絡を受けました。次回以降に関連することなので、次回までにアンケートお願いします

  • 今後も前書きに作品を書いてほしい
  • 前書きに書かないでほしい
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