産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

54 / 130

「……よっ!」

驚愕の顔に変わってる2人……そして、

(ブイモンに……グラウモンっ!?)

2人の横にいるデジモンの姿に、驚いた。

「グギ、ぎ……キシャアッ!!!」

「……おっと!?」

足元が地震のように揺れ始めたことに驚く。

(そういえば、ドクグモンの上に立っていたんだった)

「……はあ」

ため息をついて、巨大なドクグモンの上……というより、ステージの上から倒れているルビー達のところへと飛び降りた。

「……タイトっ!」

怒髪天って様子で怒っているルビー……なんで怒ってるんだ?

「ひさしぶりってうわ、ルビーなにその体……ドクグモンの消化液でベタベタだよ?」

近づいて見ると、ルビーがなんか酷い様子だ。体のところどころには蜘蛛の糸がついてるし、全身べったりとドクグモンの消化液がついている

(……いったいなにがあったんだ?)

「……ねえ、ひさしぶりじゃないんだけどっ!?」

「いや、怒ってる理由がわからないし?」

……というか、なんで怒ってるんだ? 『俺』はなにかした記憶がないんだけど。

「こっちはねえ、いきなり命を狙われたり、生贄にされそうになったり、あの、デカい、クモに捕まったりで大変だったのっ!!!」

そう言って怒鳴られた……って、

「……ああ、だからドクグモンの糸とか消化液とかが体に巻き付いているのか……って、ルビー……おまえ捕まったのかよ」

「捕まったんです!!! 私は『アイドル』目指してるんだよっ!!! それが、こんなベタベタの気持ち悪い格好になってーーーー

「あー、ハイハイ……大変そうデスネー?」

なんかめんどくさそうな反応だ。

(期待していた結果とは違い、寿がだいぶ頑張ってくれたようだ。本当に、こいつはなにをやってたんだ)

流石にキリハやネネばりの活躍は期待していなかったけど、足手纏いになってるとは思わなかった。

「あんたバカに、して……?」

フラッと、ルビーの体がふらついた。急いで、ルビーの肩を抱いて、体を支える。

「ただでさえボロボロの体なんだから、無理しないほうがいいって……寿(ことぶき)もひさしぶり……って、朝にあったか」

「……あんた、ねえ」

体感的には本当にいろんなことがあってひさしぶりな気がする。ルビー達も俺と似たような経験をしたようだし、それはしょうがないんだけど。

「……ああ、えっと……そう、やな? ーーーーって、危ない!?」

「なにが?」

「後ろっ! ドクグモンが攻撃しようとしとる!?」


後ろを振り返ると、ドクグモンが口に力を溜めているのが見える。



「『スティンガー・ーーーー



…………けど、


()()()


ドクグモンの体に巻かれた『赤いロープ』が『ビームのように光り輝いた』。

       ポレーション』ッ!!!」




ーーーー()()()




ドクグモンの口から出たのは、気の抜けた空気の音だけだった。

「……へ?」

「……かす?」

「かすって……きひっ、きひひひひ」

ルビー、寿、俺の順で『今』のドクグモンの反応が口に出る。


「……キ……シャ、ア?」


ドクグモンも困惑した様子で、自身の『行動の結果』に疑問符を挙げた……そして、もう一度、


「『スティンガー・ポレーション』っ!!!」


自身の『必殺技』を放った。


「ーーーーカスッ!」


勢いよく、口から空気の音が鳴った。やはり、『必殺技』は口から出なかった。

「……やっぱり、かすって言った」

「うん、そうやな?」

ルビー達も困惑した様子だ……まあ、それもそうだな。それじゃあ種明かしでもするか。

「ひひひひひ……無駄だって、言ってるだろ」

あっ、まだ口から笑い声が込み上げてくる……流石に、場の空気が違うから、ドクグモンに向かって、ロープの先……俺の腕の中にある『赤いロープ』を見せる。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


手元にある『アルテマロープγ』を引っ張り、ドクグモンを縛り上げた。

「ーーーーキシャアっ!?」

ドクグモンの口から悲鳴のような、鳴き声が聞こえる。

「このように『完全に縛り上げる事』で効果を発揮し」

更にロープの先にある『部品』へ命令を下し、ロープを縛り上げ続ける。

「『戦闘能力の封殺』や『必殺技の無効化』」

「キシッ、アッ」

ドクグモンの悲鳴と逃げようと踠く様子を見て、逃げられないように『部品』を操作して、気絶するまで縛り上げる。

「更には、『デジモンの小型化』によって」

「……キ……シ、ッ……」

ドクグモンが少しずつ光り輝いていき、手のひらサイズの光へと姿を変え、

「人間の手による『デジモンを捕獲』を目的として、作られたのがこのロープだ」

光は『クロスローダー』へと吸い込まれていき、あの大きかったドクグモンがその場から姿を消したのだった。

「デジモン、捕獲完了っ!」

『ゲーム』と同じように捕獲できた事を嬉しく思った。

(……まあ、『完全体』までしか捕まえることができないんだけどな)

『『ーーーー』ロープ』は、ゲーム『デジモンチャンピオンシップ』にて登場する『デジモンを捕獲する』事を目的としたロープだ。幼年期や成長期、成熟期……果ては完全体まで捕獲する事が可能なロープ。その『完全体』を捕獲する為のロープが、この『アルテマロープ』だった。

(この『クロスローダー』の中のショップにあるって事を知ってれば、もっと被害は抑えられたのにな)

赤いロープを見ながら『あの頃』を思い返す……3体で過ごした、あの頃を。

(やめだやめだ……今はそんな気分じゃない)

頭の中に浮かんだクロアグモンとチューモン、そしてスカモンとの日々を思い出し首を振った。

「……」

ため息が出そうになるが、寿のほうを見て……って、え?

「なにその顔?」

ものすごく、ボケーっとした顔でこちらを見ている寿。

「……すごいなぁって、顔」

「……なんだよ、それ」

そんな呑気な答えにホッとしていると、


「おーい!!!」


体育館の入り口のほうから、教授と……


「ーーーーご主人様っ!!!」


「ーーーーうげっ!?」

「ーーーーほへ!?」

「…………あっ、ルビーッ!?」

ーーーードスンっ!?


レッパモンが突撃してきた。

(ボロボロのルビーを背負ってんのに、突撃してくんな!?)

「…………ご主人様?」

……あっ、そういえばこの場にテトも居たんだった。忘れてた。

「タイト、そいつにそう呼ばせてるの?」

不機嫌な感情を隠さず、聞いてくるテト。

「こいつが勝手にそう呼んでるだけだ」

不満なのはこっちだって同じだ。なんで今世まで、人間のメスみたいな奴の接待なんてやらなくちゃいけないんだよ。

(……本当に出会った時から、なんでそんなふうに呼んで来るんだ?)

俺の体へとすりすりとマーキングするように、頭を擦り付けてくるレッパモンに若干の恐怖を感じ取れる。

「ふーん」

不満は解消されてないようだ。

「『ふーん』じゃない……で、おまえは今すぐどけ」

レッパモンの頭を掴んで、押し続ける。

「嫌ですわ!?」

更に力を入れてきた!?

「嫌じゃない、今すぐどけ」

「そうだっ、ルビーから離れろっ!!!」

ブイモンも一緒になって、レッパモンを押す。それでもびくともしない。

(どんな馬鹿力だよ!?)

片手とはいえ、かなり力を入れてるんだけど、レッパモンはびくともしなかった。

「嫌ですわっ!!!」

(この後に及んで、まだ……こいつ……っ!!!)


「こっちにはボロボロのやつだっているんだぞっ、いいからどけっ!!!」


本当に『鬱陶しかった』ので、嫌悪感からかつい大声が出てしまった。

「ーーーーっ!?」

(…………あっ!?)

ようやくレッパモンが後方へと下がっていった。

(……ルビーはっ!?)

ただでさえボロボロのルビーは……

「はろほろひれはれ〜?」

ただ目を回してるだけだった。

(ドクグモンの糸も消化液も消えてなくなったみたいだし、なんともないようでよかった)

ケモノガミの世界のデジモン達とデジモンが与えた影響は、デジモンが死ぬ事によって『煙』となって消えていく。その結果が、現れているようで少し安堵した。

「……ご主人様に」

…………なにか、レッパモンの様子がおかしい。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?」


「…………は?」

突然ワンワンと泣き始めるレッパモン。

「嫌ですわ、嫌わないでくださいましっ!!!」

そう言って擦り寄ってくるレッパモン……めんどくさっ!?

「嫌ってない、嫌ってないから」

「嘘ですわっ……絶対にめんどくさいって、ご主人様は思いました。このままでは嫌われてしまいますわーーーーっ!!!」

(いや、確かに思ったけど)

テトやシン、ユイとは別のめんどくささが、レッパモンには存在していた。

「……マナトくん」

「タイト」

寿とテトに睨まれる。

「いや、いやいやおかしいだろっ!? 俺が悪いのかっ!?」

「えーん、えん……えーんっ!!!」

隣で泣き叫ぶレッパモン。
寿はレッパモンに同情するように、テトはレッパモンをめんどくさい生き物だと考え、原因を追求するように俺を見つめてくる。

「マナトくん」

教授が俺の肩を掴んだ。

「いいから、謝りなさい」

「……教授」

(いいかい、女性というのはめんどくさい生き物だ。嘘でもいいから謝っといたほうがいい)

……それはそうだけどさ。
薄れゆく『嫌悪』している前世の記憶の中から、めんどくさいというのはわかっていた……だからこそ。

(…………嫌なんだけどな)

『ただ』でさえそういうことはもうしたくないのに、無理矢理させられるのは嫌だった。

(…………しょうがないか)

「レッパモン」

俺は覚悟を決める。

「うわーん、うわーん……ご主人様?」

涙と鼻水で濡らした獣の顔が近くにあった……めんどくせぇ。

「今度からしないなら、もう怒らない」

謝りたくなかったから、最低限優しく声をかけ、その顔を開いている手で優しく撫でる。

「ーーーーご主人様っ!?」

「ーーーーマナトくんっ!?」

レッパモンと教授に驚かれる……教授の言った事を無視したから、教授に驚かれるのはわかる……だけど、レッパモンおまえはなぜ驚く。


「ご主人様に許されてしまいましたっ!? よかった、よかったですわーーーー!!!」


そう言って、もう一度泣き始める……おまえは何回泣くんだよ。

「…………マナトくん?」

訝しげに教授に見られるが、そんなのはどうでもいい。

「テト、こっちに来い」

「ーーーーうん」

再び泣き叫ぶレッパモンを無視して、本来の目的であるテトを近づける。

(『奴ら』の気配は?)

『ここに潜伏している存在』について聞いてみる。

(彼女達が戦ってる間はずっと、戦ってるのを見られてたよ)

(……それで、助けには?)

(来なかった)

……そうか、来なかったのか。原作でも助けには来なかったが、『命』ぐらいは助けてくれるとは思ってたんだけどな。

(方針を変えよう)

心の中でそう決めた。
手元にクロスローダーを取り出す。

「わかった、テト……クロスローダーに戻れ」

「うん」

テトがクロスローダーの中へと吸い込まれていく。

「……へっ!?」

「はっ?」

教授と寿が驚く……だから、なんで?

「いや、だって……ドクグモンと同じとこに?」

あっ、そういうことか。

「同じじゃないよ……奴とは別のところに入ってる」

テトはクロスローダーの『専用』の場所。ドクグモンは『デジモンチャンピオンシップ(かんれん)の施設』のところに入ってる。

「別って?」

「別は別だよ……って、そんなことより」

クロスローダーの時間を見る。時間は20:30だった。

「もう夜も遅いし、明日への準備をーーーーって、なんだ?」

さっきまで目を回していたルビーに、腕を引っ張られる。

「話して」

「……は?」


「今までの事全部話せって言ってんの!!!」

すごい剣幕でそう言われる。

「どこから?」

「全部……ママから……私達家族からなんで離れたのか、どこでなにをしてたのか、なんで戻ってきたのに家に帰ってこなかったのか、戻ってきてからなにしてたのか、あいつらは、この世界はなんなのか…………全部よ、全部!!!」

(……ああ、そっか。タイトバレしてたもんなぁ)

ここに来てから、ずっとテトに『タイト』呼びを許してたし、ルビーに『タイト』って呼ばれて反応しちゃったもんなぁ。

「私も、なぜ君が『私』のことを知っているのか、この世界のことも知りたい」

教授もルビーに続いて質問してくる。

「……教授、あんたもか」

教授にも絞られそうな雰囲気だ。

「……う、ウチも知りたい事がある!!!」

寿にもそう言われる。

「……タイト」

「マナトくん」

「マナトくん?」

ルビーと教授、寿に睨まれるような勢いで詰め寄られる。

(しょうがない、腹を括るか)

…………そう思った時、


ーーーー()()()()()()()()!!!


「ミナミ〜、お腹減ったよーーーーっ!!!」

いつのまにかギルモンに戻っていたギルモンに、そんなことを言われる。

「…………ギルモン」

残念な目で見られるギルモン……正直ありがたかった。

「ギルモン、流石に空気読んでくれへんか?」

「……ん? 空気は読むことはできないよ、ミナミ?」

寿の言葉はどうやらギルモンには伝わらなかったらしい。 

(あの様子のギルモンに、空気を読めって言うのは酷だと思うんだけどなぁ)

「……また、あとでね……そんなことよかーーーー

「わかった、話すよ」

寿の言葉を遮って、

「……えっ、ええんかっ!?」

こっちとしても、できる限り情報の共有はしておきたいからな。

「でも、その前にご飯だ。作ってる間に休んでてくれ」

「……え、あうん」

立ち上がって、ブイモンのところへと向かう。

「ブイモン、ルビーを頼んだ」

「……あっ、おう」

ブイモンにルビーを渡して、家庭科室を探し、俺は料理を始めた。



第七話 疑念と料理

 

 家庭科室の中心で、テーブルに座っとるウチら五人。その五人の耳にはコツコツ、カンカン、パラパラ、サッサ……様々な擬音が聞こえ取った。

 

 テーブルの横につけられとる調理場から聞こえてくる音……その正体は料理を作っとる音やった。そして、その調理場に立っとるのは────

 

「星に願いを 風にプライド乗せた時」

 

「今日が消せない明日が見えるよ」

 

「きっとね」

 

 声変わりのしとらん少年特有のボーイソプラノの声で歌いながら、料理を作っとる。

 

 側から見れば、微笑ましい光景だと思う。

 年端もいかない子供が、友人の為に料理を作る様子は、国語の教科書に載っとる物語にありそうな展開や。しかし、その様子は不気味やった……なぜなら。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「I wish」

 

 

 しかもそれを、歌いながらやっとる。

 

(なんや、あのバケモン?)

 

 ウチもおかんの料理を多少手伝った事があるから、あの速度の異常さがわかる……あれはプロレベルや。

 

「ふん、ふふん……クダモン、その黒胡椒を取ってくれ」

 

「ハイ、ご主人様っ!」

 

 料理をするマナトくんに、そのサポートをするクダモン。見とるだけでクラクラするような動きで『生産され、消えていく』大量の皿。皿から漂ってくる出来立てのいい匂いが、空きっ腹を刺激してくる。

 

「ミナミ、いい匂いだね〜〜」

 

 そんなギルモンの呑気な言葉に顔を引き攣らせる。

 

「……そうやなぁ」

 

 プロ顔負けの動きをしとるマナトくん……それを看取るだけで、女としてのプライドが────

 

「なあ?」

 

 ギルモンの座っとる場所の、反対側におったブイモンに声をかけられる。

 

「なんや?」

 

「なに、ブイモン?」

 

 ギルモンと言葉が重なった。

 

「…………、えっと」

 

 ブイモンが戸惑っとって、言葉に詰まっとる。

 

(……なんでや?)

 

 その様子に疑問を持ちつつも、ブイモンが話し出すのを待った。

 

(……ギルモン達は、あいつのことをどう思う?)

 

 ここにおる連中にしか聞こえない声で話し、ブイモンの後ろで料理を作っとるマナトくんを親指で指差すブイモン。

 

(……あいつのこととは?)

 

 ブイモンの横におる教授が、テーブルに手を置きながらブイモンの質問の意図を聞いた。

 

(……俺はあのタイト? マナト? って奴が、なんか怪しいって思ってる。ギルモン達はどうなのか俺は知りたいんだ)

 

 ブイモンが真剣な表情でそう言った……なぜが納得してしもうた自分がいた。

 

(……なんでそう思ったんや?)

 

 二年間はウチと学校に通った友人の事を、疑ってしまった自分がそこにいる。そして、自分に問いかけたその言葉が口に出てもうた。

 

(……ああ、それは)

 

 ブイモンではなく、自分に問いかけた言葉だった筈だった。でも、ブイモンが話し始めてしもうた。

 

(あのタイトって奴は、『この世界の事を知りすぎている』)

 

 ブイモンのその言葉に、ドクグモンとの戦いの前に、胸の中で振り切った疑念が蘇ってきたのを感じる。

 

(たまたま、この世界に来る前に、この『学校』があるのを知っていて)

 

 この世界に来る前に、マナトくんから手紙をもらった。その中にこの世界にも学校がある事が書かれとったから、ウチらはここに来る事ができた。

 

(たまたま、この世界の(ヌシ)にルビー達が捕まらなくて)

 

 茶色の腕……テトに掴まれて、この世界にやってきた。

 

(たまたま、この世界で『俺』と『ルビー』がうまく出会う事ができて)

 

 ウチとギルモンは、灰色のウサギのようなケモノガミ……ガジモンに会う前に、出会っていた。

 

(たまたま、ケモノガミに『対抗できる手段』を持っていて)

 

 マナトくんが持っとる赤く光輝くロープや、ウチのポケットの中にある水色の……なんか変なおもちゃ。

 

(たまたま、ケモノガミを『デジモン』と呼んでる)

 

 ルビーとマナトくんが、ギルモン達に向かって呼んだその『呼称』……それは……

 

 

()()()()()()()()()()()()()?)

 

 

(────っ!?)

 

 ウチの心に亀裂を入れた。

 

(……私も怪しいと思っていた)

 

 教授がウチに追い打ちをかける。

 

(あんな年端もいかない子供が、『なぜこの世界の事を知っている』のか。『なぜ先頭に立って戦っているのか』。それが私にはわからない)

 

(あちらの世界にあった『遺跡』の事も、私が話した人物は私の『家族』と学会の人間だけだった筈だ……それなのに『なぜ彼は知っているのだろうか?』)

 

(『彼はいったい何者なんだろうか?)

 

 教授の疑問が、ウチの心の亀裂を広げた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ウチの隣から驚愕の答えが聞こえてくる。

 

(だって、マナトはミナミを助けてくれた)

 

(初めて会ったギルモン達も助けてくれた)

 

 

()()()()()()

 

 

 ギルモンの確信めいたその言葉に、ウチの亀裂は『更に』広がった。

 

 ウチはなにを信じればいいのかわからんくなった。

 

 

 二年間共に学び、遊んできた『友達』のマナトくん。

 

 ルビーの言った、『ルビーの弟』のタイト。

 

 教授とブイモンの言った『マナトくんがした言動(かてい)』。

 

 ギルモンの言った『マナトくんの行動(けっか)』。

 

 

 それら全ての情報がこんがらがってくる。

 

(ミナミはどう思う?)

 

 ギルモンに聞かれたその言葉。ウチの答えは出ないまま、聞かれたその言葉が頭を更に悩ませてくる。

 

(……ウチは────

 

 

 

 

「────すぴー、むにゃむにゃ」

 

 

 

 

 隣からそんな声が聞こえてきた。

 

「…………ルビー?」

 

 漫画であれば鼻ちょうちんがでとるような、アホな寝言を呟きながら、ルビーが爆睡しとった。

 

「────ルビーっ!」

 

 能天気に寝とるその姿に、苛立ちを覚え無理やり起こした。

 

「……へっ、あっ……なに、なに!?」

 

 よだれを拭きながら顔を上げるルビー。

 

「……ルビー」

 

「ルビーくん」

 

「……ルビー」

 

「…………ん?」

 

 美少女の顔でそんなふうによだれを拭かんで欲しいんやけど。みんな呆れた目でルビーを見とるやん。

 

「えっ、なんでそんな目で!?」

 

「ミナミもなにかあったの?」

 

 残念な人? が2人に増えとるなぁ。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 

 クダモンが大きな声を出してタイトの方を向かせた……そこには、

 

「……えっ!?」

 

「おおっ!」

 

「────っ!?」

 

 テーブルに並べられていくのは、色とりどりの野菜が際立つ料理がマナトくんによって並べられていく。

 

「左から、『鮭のムニエル』、『タコや鯛、海藻のカルパッチョ』、『カボチャやにんじん、ほうれん草など緑黄色野菜を使ったポトフ』に、『梨とマスカット、スイカのデザート』なります」

 

 鮭のムニエルは油で輝いており、カルパッチョの魚はどれも新鮮で、ポトフの中の野菜は箸を入れるとスッと切れる。

 

「……これは!?」

 

「なんやこれ、めっちゃ美味しい」

 

「ブイモン、美味しいね!」

 

「……そうだな。俺もこんなうまいもの、生まれて初めて食べた」

 

「むう、タイトの癖に生意気」

 

 ウチらの剣呑とした雰囲気は、並べられた食事に手をつけ始め、みんなそれぞれ料理に舌鼓を打つと、いつのまにかなくなっていたのだった。

 

「うーん、久々に肉もチーズも揚げ物も使わない料理が作れたな」

 

「美味しいですわっ、ご主人様!!!」

 

 マナトくんが皿や鍋を洗いながら、クダモンが喜びながらマナトくんに『美味しい』って言うとる。

 

「それならよかった……あと」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「────ぎくっ!?」

 

「……むっ!?」

 

「…………っ!?」

 

「……むん!?」

 

「えっ、なになに!?」

 

 ウチ、教授、ブイモン、ギルモンの順に驚愕の声を上げた。

 

(全部聞かれとったんか……って)

 

「────むぐ、うぐぅっ!?」

 

「ギルモンっ!?」

 

 ギルモンがびっくりして喉を詰まらせおった!? 

 

「……はい、水」

 

 マナトくんがギルモンに水の入ったコップを渡してくれた。

 

「ごくっ、ごくっ、ごくごくっ!!!」

 

 勢いよく水を飲んで、喉に詰まった食べ物を胃の中へと洗い流していくギルモン。

 

「……ぶはぁ、ありがとうマナトっ!!!」

 

「こっちこそ、信じてくれてありがとな」

 

 笑顔でありがとうを言い合うギルモンとマナトくん。

 

(…………)

 

 ウチはギルモンみたいに信じられへんかったからな。

 

「……うん、なんのこと?」

 

 本当に意味がわからないというように、首を傾げるギルモン。

 

「わからないなら、別にいいよ」

 

 そう言って、再び洗い物に戻ったマナトくん。

 

「おまえ、最初から聞こえてたんなら、なんでっ!!!」

 

「質問は食事の後って、言っただろ」

 

 ブイモンのがテーブルを叩きながら立ち上がるが、さらっと受け流すマナトくん。

 

「……君は、私達の話を聞いていたのか」

 

「聞いてた、全部聞こえてた。なんなら、質問はあれでよかったのか?」

 

「……むう」

 

 教授の言葉に無関心な様子で、笑いながら答えるマナトくん。

 

「マナトくん、ウチ……」

 

 友達の事を疑ってしまい、悪いと思って声をかけようとした時、

 

「別に気にしてないから、そんなこと────

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 

 

 ルビーの怒鳴り声が家庭科室に響いた。

 

「おまえが寝ている間に、みんなで俺を疑ってたって話だよ」

 

「────えっ!?」

 

 ルビーが驚愕してウチを見た。まるで理解できないとでもいうように。

 

「ああ、ギルモンだけは俺のことを信じてくれたから……『ありがとう』って、さっき言ったんだ」

 

「……さっきのは、そういうこと、ね」

 

「……で、俺はコソコソ話してるのが聞こえてたから、『その疑問に答えるだけでいいのか?』って聞いたんだよ」

 

「…………タイト、悪趣味」

 

「悪いけど、話を進めたかったからな。ルビーも早く質問をしたかっただろ?」

 

「……それは、そうだけど」

 

 2人だけの会話、2人だけの時間。マナトくんとルビーの間に、ウチらでは入り込めないような、絶大な信頼がそこにあるのがわかってしもうた。

 

(…………)

 

 それだけで、なぜか少しだけ嫌な感情がせりあがってくるのを感じた。蚊帳の外にされても仕方ないような感情(もの)を抱いたというのに

 

 

「ならいいだろ……あっでも、『質問は1人一回まで』でお願いします」

 

 

 その時、マナトくんの口から、驚きの言葉が出てきおった!? 

 

「えっ!?」

 

「あっ!?」

 

「……ハアッ!? 私がどれだけ待ったと────

 

 

「時間見てみろよ」

 

 

 デジヴァイスを取り出して、指を指したマナトくん。時計は21:30という時間が画面に表示されとった。

 

「夜も遅いだろ? 明日もやる事がたくさんあるし、今日はできるだけ早く寝た方がいいだろ」

 

「……わかった」

 

 ルビーがしぶしぶ頷いたことで、タイトを除く全員が椅子に座った……そして、タイトは家庭科室の黒板の方へと歩いて行き、

 

 

「それでは、質疑応答を始めよう」

 

 

 そう教壇に立って、宣言した。

 





「タイトと」

「みなみの」

「「『デジモンコーナー』っ!!!」」

「……ということで、始まった今回のデジモン紹介コーナー」

「今回のデジモンはこれや」


「「『グラウモン』!!!」」


「前回登場した、寿のギルモンの進化した姿だったよな」

「うん、いきなり大きくなって、何体もおったドクグモンをあっさり倒しおったんや」

「それだけの資質のある『強い』デジモンってことは、図鑑を見てもわかるはずだ」

「そうやな……でも、『野性的で凶暴なデジモンへと進化をしている』って書かれとるけど、ウチのギルモンは進化しても、そないなことにはなっとらへんよ」

「『野生』ではってことかもしれないし、『テイマーの育て方次第では忠実に従う』と書かれてるから、デジモン次第なところもあるんじゃないか?」

「……そうかもしれんなあ?」

「正直に言うと、そこらへんは『公式』の判断で変わるし、『アニメのギルモン』は寿のギルモンみたいにおとなしいやつだったから、本当の事はわからない」

「……そっか」


(これから先はわからないけどな)


「……なんか言うたか?」

「なにも言ってないよ」

「……そっか、じゃあここで今回の『デジモン紹介コーナー』は終了とさせていただきます」

「また、次回もよろしくな〜〜!!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。