産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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ルビー達がファングモンに出会う5分前に遡る。



あれから5分。
俺とクダモンは教授に連れられ、『今いける範囲』で遺跡の最深部まで辿り着いた……そして、見えた光景は壁一面に広がる絵であった。

「……ご主人様?」

心配そうに俺の顔を見つめるクダモン。その視線の先にはルビーに殴られた跡があるが、俺はそのことには目がいかなかった。


『燃える村と中心にいるメラモン』


『雨を降らすシードラモン』


『巫女と人間が奉る黒い龍』


(……これ、は)

目の前にある『異質』な絵。しかし、俺にはその絵に見覚えがあった。

「…………」

俺はその絵に近づいて、遺跡の壁に触れる。

(……実際にメタ知識として持ってはいたけれど、『俺』が現物を見るのは初めてだ)

妙な感動と懐古の念が混ざり合ったような奇妙な気分だった。それでも、実際に絵に触れて、確かめてみる。

「…………」

『燃える村と中心にいるメラモン』と『雨を降らすシードラモン』。その絵に触れ、壁に描かれているのだと漸く実感が沸いた。

(かつての火災を引き起こしたのが、メラモン? それを止めたのが、シードラモン、か? どちらにせよ、重要なのはそこではない)

岩の壁に描かれた古い絵は、『飛鳥時代』に作られた物にしては『古すぎる』と感じる。

「…………」

そんなことを感じながら、次の絵に触れてみる。

『巫女と人間が奉る黒い龍』

四足歩行で羽のない龍……現代のアニメ好きであったユイのように言えば、『地龍(アースドラゴン)』と言った感じのデジモン。

「……でも、これは」

かつて出会った『ファンロンモン』に瓜二つな黒色の龍。メタ知識で『ファンロンモン』だとわかっていても、異様な感じが見て取れる。

(ローマの『遺跡』にあった『山羊人』やエジプトの『ウサ耳神官』。フランスの『髑髏マークのコウモリ』に中国の『孫悟空』の絵。インドの『三蔵法師』)

神城の社員が集めた資料の一端、『遺跡』や『文献』、様々なもので残されている『ケモノガミ』達の姿。

(資料を集めさせたのは、俺……なんだけど)

実際に目にすることはできなかった数々の絵や資料が目の前に現れ、触れることができた……そして、思うことは、

「画材が似ている?」

見て、触れて、感じて……それだけで意味のあることだと理解できた。

「……タイトくん」

考え事をしていると、教授に声をかけられた。

「なんでしょうか、教ーーーーっ!?」

振り返った時、絵に集中していて見えていなかった異様な『モノ』が目に入る。

「…………」

それが目に入り、魅せられ、頭が回らなくなる。

「……タイト、くん?」

教授が俺の右肩に手を置いたのを感じる。でも、回らない頭を必死に動かして、目の前の『問題』を言葉にする。


()()()()()()()()()()()()()?」


メタ知識(きおく)としてはある……けれど、絶対にこの『場』にはそぐわないものが目に入ってきていた。

「ご主人様っ!?」

「タイトくん、いったいどうした!?」

クダモンと教授のそんな心配する声を無視して『それ』に近づいた。


「……デジ、文字……?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()

「タイトくん、これがわかるのかね!?」

教授の声が聞こえてくるが、そんな声を無視して目の前のものに考えに集中する。

(確かに『メタ知識(きおく)』としては存在した。でも、本当になぜ存在する?)

時代的にあり得ないものだ。
『日本語』をベースとして産まれた『デジ文字』。それが、飛鳥時代に存在することは『あり得ない』ことだ。

「日本語の原型が生まれたのは『奈良時代』・『平安時代』だ。それなのに、『飛鳥時代』に既に存在した? なら、なぜ『漢字』で交流を計っていた? 歴史の齟齬が生じている」

日本の教科書にすら載っている『当たり前の常識』……その常識によって、さらに頭が混乱してくる。

「…………っ!?」 

「ご主人様の脳が壊れたっ!?」

俺はデジ文字を指差し、文字をなぞるように指を動かす。


「『災害を与え、人から恐れられるようになった』」


かつて、ノルンに教わった『デジ文字』それを羅列するように、『遺跡』中の文字を読み解く。


「『力を人は憧れ、崇拝の対象としていった』」


ファンロンモンと巫女の関連性、そこから伝わるデジモンとの関係を読み取る。

「……君は、この文字が読めるのか?」

「…………」

思考の外から声をかけられる。返事をするべきか考える……が、

(……だめだ、思考を回せ。そんな余裕のある状況じゃない)

俺は頭をさらに回す。

「これは『証明』だ。もともとか……いや、絶対に混じっている。じゃあ、この世界はなに? 最初からか、それとも途中から……飛鳥以降に滅んだ理由は? 飛鳥時代の始めに『なにがあった』」

メタ知識とノルンとの考察、産まれた世界に戻って来てから集めた資料を元に、客観的に冷静になって考える。

(いや、ケモノガミが衰退していったのは『もっと前』だ。飛鳥時代……というより、人類の発展によって滅びた……いや、『逃げ込んだ』と言った方が正しい。決定的だったのが『飛鳥時代』だっただけ)

ローマにエジプト、中国とインド、フランス……そして、日本。それらの国のケモノガミを示唆する資料が残っているのははるか昔のものだけだ。

ローマやエジプト、フランスにケモノガミが存在したのは、『紀元前』までであった。

中国は西暦100年頃、インドは西暦300年頃、日本は……まだ、確証はないが、だいたい西暦600年〜750年ぐらい、だと思う。

(……もしかして、今世も『アレ』に振り回されるのか?)

そんな考えが頭によぎるが、私情を捨てて考察を続ける。

「……滅んだ理由も『理解』できる。世界は影響を受けている。完全に混ざったものは『分離』しない。互いに影響は受け合う。そこから波及する問題は?」

俺の原作(メタ)知識を元に、今後の『なにもしなかった』時の被害を考える。

(『デジモンアドベンチャー01』のように、世界規模……というより、『水無瀬』の土地という小規模なところから、ケモノガミの世界の影響が出てくる。メラモンなら火災、シードラモンなら洪水、ユキダルモンなら吹雪……それらの影響は甚大なはずだ)

俺としては知識で存在すること。

だけど、この世界では実際に起こったこと。

ノルンとの考察が現実味を浴びていく。

「水無瀬とはなにか……いや、そんなことはどうでもいい。どうせ、『オマージュ』にすぎない……それでも『人間が悪いのは確かだ』。発展した知恵と闘争本能。それが深く関わっている。『感情』とは?」

水無瀬の家のことを考えようと思ったが、そんなものを考えている余裕がない……むしろ、人間とケモノガミとの関係性について、頭を悩ませる。

(人とデジモンの感情によって『進化』する。実際にこの世界では、『デジヴァイス』がなくとも、人間と共にいれば……人間の感情を受け取れば、『自力』で進化できる)

考えたこと、口に出したことを頭の中でまとめて……一つの確信が浮かび上がって来た。

「……『答え合わせ』だ」

苦虫を噛み潰したように、覚悟を決めて、『思い返す』。

『貴方の世界は歪です』

ノルンに言われた言葉が頭を巡る。

(俺の話した『知識』の確認)

『その『植え付けられた記憶』にどれほどの価値があるのかは、私には『証明』できません』

(んなもん、わかってんだよ)

メタ的な知識はいくら助けられても信用ができなかった。ゴールドヌメモンが死んでからは、特に信じることができなかったが、

『でも、貴方の手助けぐらいはできているつもりです』

(でも、下地はあってる)

目の前の遺跡から、『人の思惑』以外のある程度の『知識』はあっているのだと、理解できた。

『『主』の正体は『ファンロンモン』とその『パートナー』……でしたね』

(証拠が目の前にある)

その知識があっているのであれば、対策はできる。

『ケモノガミ、とは……』

(ノルンと俺の『考察』)

ノルンにあっているかわからない知識を聞いて『いただき』、そこから考えた『絵に描いた餅』。

『所詮、『夢』に『幻』のように外れる可能性があります』

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『妄想』出ない証明が生まれ、完成した。

『ただ、『歴史』を振り返るのは大事だと思います』

(テトとシンに任せたこと。それがこの世界に『深く』関わっている。むしろ、衰退させたのは…………)


(こいつだ)(あのデジモンですね)


俺とノルンの考察が『的中』した。

「ーーーーなら、これからどうする?」

策はできた。

だが、実行するには、『実際に』見ないとわからない。

力も、経験も足らない仲間達。

ならすぐにでもあいつらと合流すべきだ。

「君は、なにを知っている」

何度目かわからないぐらい、この世界に来てからなんどもなんどもされた質問。それに答えながら歩き出そうとした瞬間、


ーーーー()()()()()()()!!!


遺跡の外から大きな音が鳴った。

「敵襲か!?」

出口から聞こえてくる戦闘の音に、教授の焦った声が響いた。

「クダモン、はやくルビー達をっ!?」

「わかりましたっ!!!」

そうして、俺は調べ上げたことをよそに、ルビー達の方へと向かって走り出した。


第十話 進化ブイドラモン 逆境を超えて 

 

 目の前にはファングモン。

 

「くっくっくっ!」

 

「イヒッ!」

 

「あははっ!」

 

 周囲にはガジモン達が近づいてくる。

 

「……」

 

 背後に遺跡の出入り口がある。タイト達が戻ってくるまで、出入り口を守らないといけない。

 

(……くっ!?)

 

 周囲を見渡す。 

 

(ひぃ、ふぅ、みぃ……たくさんいる)

 

 ブイモンが言うには、成熟期のファングモン1体と成長期のガジモンが複数いる。

 

(それに引き換えこっちは)

 

「……ブイモンとギルモンだけ」

 

 どう見ても戦力はあっちが有利に見える。

 

(どうする、どうすればいいの!?)

 

 タイトとクダモンが戻ってこないことに、焦りを感じてしまう。

 

(……ルビー)

 

 そんなとき、みなみに嗜めるように名前を呼ばれた。

 

(ブイモンと一緒にタイトくんを呼びに行っとって)

 

(……っ、私達も一緒に戦う)

 

(ダメや……ウチらは成熟期に進化でいるけど、ルビー達は進化できへん。こないなままやと、ルビー達のことを守れへん)

 

 みなみはファングモンを警戒しながら、私のことをどう守れるか考えてる。

 

「……っ、でもっ!」

 

「でもやあらへん! タイトくん達が来ないと負けるって言うとるんやっ、早く連れてきぃ!!!」

 

「────っ!?」

 

「ルビーっ!」

 

「……で、話は終わったか」

 

「そう、やな」

 

「じゃあ、てめえからやってやるよっ!!!」

 

「ギルモンッ!!!」

 

「ミナミッ!!!」

 

 [ギルモン 進化]

 

 

「グラウモンッ!!!」

 

 

 ファングモンとグラウモンがぶつかり合う。両手でファングモンの体を掴み、押し留めるグラウモン……しかし、

 

「……うぐ、ぐっ!」

 

 ────ずり、ずりずりずり。

 

「グラウモンっ!?」

 

 土が柔らかくうまく踏ん張りが効かないのか、少しずつ、少しずつ遺跡の方へとグラウモンは押し出されていってしまう。

 

「……まだだ」

 

 ────ダンッ!!! 

 

 それでも、グラウモンはファングモンを押し出す為の一歩を踏み出した。

 

「へえ、なかなかやるじゃねえか」

 

 ニヤリと笑うファングモン。

 

 

「これならどうだ、『スナイプスティール』!!!」

 

 

「うぐあっ!?」

 

 ファングモンの尻尾が器用に動き、グラウモンの両腕をを弾き、

 

「そおれっ!!!」

 

 ファングモンは追い打ちをかけるように、グラウモンに向かって突進する。

 

 

 ────()()()()()()()!!! 

 

 

「ぐがぁああああッ!!!」

 

 遺跡の出入り口の左三メートル程先の壁に叩きつけられる。

 

「グラウモンっ!?」

 

「うっ、大丈夫……ミナミ、大丈夫」

 

「へえ、これでも立ち上がるのか」

 

「なら、もう少し手荒く戦っても問題ないな」

 

 

 

 たったったっ……と私の足音が鳴り響く。

 

 

 ────()()()()()()()!!! 

 

 

「────っ!?」

 

 心配になって振り返りそうになるけど、

 

(早くっ、早くタイトを連れて来ないとっ!!!)

 

 必死になってその思いを押し留めて走るスピードを上げる。

 

「ルビーっ、ルビーっ!」

 

 隣でブイモンが声をかけてくる。

 

「今の音で遺跡の中に戦闘の音が大きく響いたっ!」

 

「すぐにタイトも気づいてくれるはずだっ!」

 

「早くみなみ達の元に戻って、戦った方がいいっ!!!」

 

 そんな声が聞こえて来る。

 

 

「そんなことはわかってる!!!」

 

 

 立ち止まって、ブイモンの方をしっかりと向く。頭の中で冷静に考えてみれば、今の大きな音でタイトが気づくのも私にはわかる……だけど、

 

「それでも、足手纏いの私達じゃどうしようもないのっ!!!」

 

 私達の力が足りないってわかってるから、その言葉にはのれないの。

 

「ブイモン言ってたよね。『ガジモンと一緒に集団でケモノガミを襲ってるやばい奴だ』って」

 

「成熟期に進化できない私達じゃ、ファングモン達の相手にならない。それどころか、集団で襲い掛かられたら、私たちじゃどうしようもない」

 

 

「だから、タイトを呼んできて戦ってもらう……それが、一番大事なのっ!!!」

 

 

「……それでも」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ブイモンは私の方をまっすぐ見つめて、私に向かってそう言った。

 

「……っ、でもっ!」

 

 それでも、早くタイトを見つけないと……って思った時、

 

 

 パンッ、パンッ、パンッ! 

 

 

 手を叩く音が遺跡の奥から響き渡った。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

(その声はっ!?)

 

 暗がりの中から響くその声。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 私とみなみが望んだ持ち主が暗がりから足音を立ててやってくる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 だけど、その声には焦りというものが一切存在していなかった。

 

 

「それはどの世界でもおんなじなんだ」

 

 

 暗がりからようやく見えたその顔は、

 

 

「……なあ、ルビー?」

 

 

 私の事をじっと睨みつけていた。

 

 

「……ブイモン、外の様子は?」

 

「敵がやって来た。俺達はみなみに言われて、タイト達を呼びに来たんだ」

 

「敵は?」

 

「成熟期のファングモンが1体に、ガジモンが5体以上……それをグラウモンが守ってくれてる」

 

 タイトがブイモンに質問し、ブイモンがそれに答える。その姿は緊張感を感じられる。

 

「…………、そう、か」

 

 タイトはブイモンの話を聞いて、なにかを深く考え込むように立ち止まった。

 

 

「……ね、ねえ……早くみなみを助けに行こうよ」

 

 

 それでも私はタイトに向かって勇気を持ってそう言った。

 

「……ん?」

 

 タイトは首を傾げる。

 

(うまく伝えられなかったのかな?)

 

 そう思って、今度は大きな声でタイトに言う事にする。

 

「だから、早くみなみを────

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 …………だけど、タイトの目は冷たかった。

 

 

「────っ!?」

 

「……なに、言って」

 

「だから、お前らが助けに行けよ」

 

 驚く私に向かって、タイトは私の目を見てそう言った。

 

「ふざけんなっ、みなみやグラウモンが今必死になって戦ってる。それなのにお前はっ、どうしてそんなことを言うんだっ!?」

 

「お願い、タイト達の力がないと……成長期の力までしか出せない、私達だけじゃ、足手纏いになっちゃう。早くみなみを助けないと、グラウモンが負けちゃうのっ!!!」

 

 ブイモンと私の説得、みなみが今どれだけ危険なのか伝えないと、タイトは動いてくれない。

 

(それで、それでタイトが動いてくれれば)

 

 みなみは助かるって────

 

 

「……で?」

 

 

 タイトは相変わらず冷めている。

 

「……『で』って、お前……ふざけんなっ!!!」

 

 タイトに殴りかかるブイモン。しかし、その拳はガシリと受け止められる。

 

 

()()()()

 

 

 ────スパァン!!! 

 

 タイトはブイモンの頰をひっぱたいた。

 

「……ハア」

 

 タイトはため息をつき、そして私達を睨みつける。

 

「お前らの話をまとめると、お前らは俺に『戦力』を求めてるって訳だ」

 

「お前らで対処できる相手なら、俺を頼りに来ないだろう」

 

「寿で倒せない相手だからお前らは、わざわざ頰を叩いてまで腹が立った相手である『俺』を頼りに来たわけだ」

 

 

「『謝れば、焦れば私達を助けてくれる』ってな」

 

 ドキリ、と胸がなった。内心思っていたことを突きつけられた気がした。

 

「つまり、『どんなときでも助けてくれる強い存在』を求めてここに来たわけだな」

 

「…………」

 

「…………」

 

 図星だった。

 

 私もブイモンも、私達を睨みつけるタイトに対してなんにも言うことができなかった。

 

 

()()()()()()()

 

 

「────っ!?」

 

 タイトの口から希望の言葉が聞こえて来た。

 

「どうすれば助けられるの!?」

 

「なにを、なにすればいい!?」

 

 私達はタイトに聞く。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 タイトは当たり前のことを言うように、難しいことを私達に突きつけた。

 

「────なっ!?」

 

「……それはっ!?」

 

 驚愕で言葉が出せなくなる。

 

(……たしかに、その方法が確実だけど)

 

 そう思わざるえないけれど、難しいことだと思って足がすくんでしまう。

 

「ファングモン達に抗って戦って、進化してみせろよ」

 

 簡単そうに、そして『嘲笑う』かのように私達に『進化』を促していく。

 

「それが、無理だから言ってるっ!!!」

 

 ブイモンが怒鳴った。

 

「ブイモン」

 

 酷く冷たく、しかし優しげな瞳でブイモンを見つめるタイト。

 

「……戦うことを諦めて、目の前の敵から逃げて……それで、なにが手に入る。どんな時でも諦めずに戦った奴だけがパートナーを、ルビーを守れるんだろうが」

 

 諭すように、そして優しげな声でそう言った。

 

「あっ、ああ」

 

 ブイモンも先程までとは違う優しげな雰囲気のタイトに戸惑っている。

 

「次、ルビー」

 

「はっ、ハイ!!!」

 

 私の名前を呼び、優しく微笑んだ顔が真剣なものに変わった.

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「────えっ?」

 

 タイトの言葉に思考が停止する。

 

(ママが、死ぬ?)

 

 その唐突な言葉に頭が真っ白になってしまった。

 

「お前がブイモンを強く進化させられなかったら、俺達は負ける……負けたらどうなる?」

 

「…………」

 

 タイトの言葉をただ聞いている。真剣な顔で真剣に話すタイトは嘘なんて言っていないことがわかってしまったからだ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(ぬし……が?)

 

 この世界の主が私達の世界にやってくる……どういうことだかわからない。

 

 ただ、タイトは淡々と話を続ける。

 

「主はな、人間が住む世界を憎んでいる。そんな存在が、俺達が産まれた世界にやって来たらどうなると思う?」

 

 ゴツモンに襲われた。

 

 ガジモンに襲われた

 

 ドクグモンに捕まった。

 

 ファングモンは今、私達を襲いかかって来ている。

 

(……その目的は?)

 

 

 ────人間を『贄』にすること。

 

 

「────っ!?」

 

 

 頭の中で、一番嫌なことが思いついてしまった。

 

 

「そうだ、お前の考えている通り、『人間を殺し始める』はずだ」

 

 

 ドキン、と心臓が大きく鳴った。

 

「……で、でもタイトがいればっ!?」

 

 それでも、目の前にいるタイトがいればなんとかなると思えてしまう。対策を持っている事を知っている。なら、大丈夫だと────

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 タイトのその言葉は、酷く冷たく、そして『甘い』私の考えを貫いた。

 

 

「事故で死ぬかもしれないし、お前らを守って重傷を負うかもしれない。お前らを人質に取られて、主に従わざる得なくなるかもしれないし、人間を見限るかもしれない」

 

「そもそも、俺の言っていることが真実かなんて『お前』には絶対にわからない」

 

「……本当にそんな人間を信じられるのか?」

 

 

 タイトのたとえを話すその姿はやけに悲しそうな言っているのが、わかってしまった。

 

「…………」

 

 どうすればいいのか、頭の中で考える。

 

「…………」

 

 目の前にいる『彼』を、『弟』を信じたい。

 

「…………」

 

 それが、私の答えでしかないと悩ませてもわかってしまった。

 

「  でも」

 

 言葉にならない。

 

「……ん?」

 

 聞き取れないようだから、もう一度大きな声で、

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 ハッキリと告げる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ!!!」

 

 

「…………」

 

 

 ────どたどたどたっ!!! 

 

 そんな足音が聞こえてくる。

 

「……ようやく、追いついたって、ご主人様?」

 

「ハァ、ハァ……ちょっとタイトくん走るのが速すぎる……タイトくん?」

 

 クダモンと教授が汗をかき、息を切らせながら、タイトの後ろについた。そして、教授達の言葉に『初めて』気がついた。

 

(ああ、そっか)

 

 タイトも私達の事に気が付いて走ってくれていることに、そのとき、初めて気がついた。

 

(私達の態度が悪かったんだ)

 

 あのとき、戦い続けていればと……そう思ってしまった。

 

「…………そうか」

 

 静かに微笑んで……っ!? 

 

 

「わかった、できる限り力を貸すよ」

 

 

 微笑んだ顔が、ママとそっくりだった。

 

 

 

 

「────グハッ!?」

 

 

 シュンっ、と光が萎んでいく。

 ファングモンの攻撃によって、グラウモンがギルモンに退化してしまった。

 

「グラウ……ギルモン!?」

 

 みなみの悲鳴が聞こえてくる。

 

「さぁ、終わりだ」

 

 ファングモンの嘲笑うような、愉悦の混ざった声が耳に届く。

 

「────くっ」

 

 悔しそうなギルモンの声……でも、

 

「『ブラスト────

 

 

 

 

「『ブイモンヘッド』!!!」

 

 

 大丈夫だから、私達が戻って来たから。

 

「大丈夫、みなみ?」

 

「……ルビー?」

 

「ルビー、タイトくんは!?」

 

「ここにいる」

 

 遺跡の出入り口からタイトが出てくる。

 

「────っ!?」

 

 ファングモンは驚いた様子でタイトを見た。

 

(……なんで、驚いた?)

 

 ファングモンは少しだけ後退りをして、ブイモンから数メートル程離れた位置に下がっている。

 

「ブイモン?」

 

「助けにきたぜ、ギルモン」

 

「────うん!」

 

 ギルモンの前に立つブイモン。どうやら、私達の戦う番がやって来たようだ。

 

 

「てめえ、よくもやってくれたな!!!」

 

 

 

 ────びくっ!? 

 

 ファングモンの怒鳴り声に体が思わず震えてくる。

 

(……やっぱり、恐い)

 

 牙からヨダレが垂れている自分よりも大きな獣が、私達に敵意を向けてくる。

 

 それが、私には本当に恐かった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 そんなとき、タイトが後ろから大きな声でそんなことを言った。

 

「…………」

 

 さっき、タイトに言われたことを思い出す。

 

 

『戦う時は踏み出せ』

 

『ブイモンの進化には『勇気』と『友情』が鍵になる』

 

『どんなに怖くても踏み出して前に進め』

 

『そうすれば、『進化』の一歩目に繋がる』

 

『『勇気』を出すんだ』

 

 

「……大丈夫、わかってる」

 

 だんっ、と私はブイモンの横へと一歩踏み出した。

 

「ルビー、やれるか?」

 

 隣にいるブイモンが私に声をかける。

 

「────うん」

 

 私はポケットの中にある『聖なるデヴァイス』を手に取って、掲げる。

 

「行くぞ」

 

 その掛け声と共に、『聖なるデヴァイス』は光り輝く。

 

 

 [()()()() ()()()

 

 

 ブイモンの周りに光が集まる。

 

 

 青空の様な青と入道雲のような白で彩られたの巨体。

 

 青から白へと、耳から角へと変わった真っ白な二本の角。

 

 紅い瞳は爛々と敵を見据え、竜のように尖った口には大きな牙が生え揃っている。

 

 力強く引き締まった体は正しく、『ドラゴン』……そして、

 

 

 

「『()()()()()()*1!!!」

 

 

 ブイモン……いや、ブイドラモンに今ここに『進化』したのだった。

 

「ブイ、ドラモン?」

 

 大きな蒼色の巨体を見て、『ブイモン』が『ブイドラモン』に進化したことに呆気に取られ、つい確認してしまう。

 

「……ああ」

 

 ブイドラモンも『進化』に驚いたようで、両手を握りしめたり、広げたりしながら、確認するような動作を行う。

 

「進化したの?」

 

「そう、みたいだ。すごい、夢みたいだ……すごく力がみなぎってくる!?」

 

 互いに確認し、理解する。

 

 

 これが『進化』、なのだと。

 

 

「……なっ、てめえ、いったいどういうことだ!?」

 

 

 さっきとおんなじぐらいの大きな声で怒鳴ってくるファングモン。

 

「…………」

 

 

 ────ダッ!!! 

 

 ブイドラモンがその姿を見て走って近づき、

 

「ギルモンが世話になったな」

 

 ファングモンの目の前に瞬く間に現れ、

 

 ────ドゴォッ!!! 

 

 そして、大きな顎ににパンチを命中させた。

 

「ぐへっ……てめえっ!!!」

 

 ファングモンは殴られても、立ち上がってくる。

 

「……っ、まだだよっ!?」

 

 ブイドラモンに向かって、ファングが立ち上がっていることを指差した。

 

「わかってるっ……スゥ」

 

 大きく息を吸い、口から光が集まる。

 

(……これって!?)

 

 かつて見た、ストーカー相手にコロちゃんが放った火の玉を思い出した。

 

「────っ」

 

 ブイドラモンが大きく口を開けたとき、

 

「────ちっ!?」

 

 ファングモンが反応して、ブイドラモンの攻撃する方向から大きく離れるのが見えた。

 

 

「『ブイブレスアロー』!!!」

 

 

 ブイドラモンの必殺技である光線が、射線上の地面と森を削ったのが見えたけど、

 

「────避けられたっ!?」

 

「────くそっ!?」

 

 攻撃を当たる前に避けられているのも、私達はわかっていた。

 

 

「ブイドラモン。相手の方をよく見ていろ」

 

 

 不意に後ろからタイトの声が聞こえて来た。

 

「────っ!?」

 

 タイトの方を見れば、デジヴァイ……たしか、『クロスローダー』だったかな。それを弄りながら、指示を出していた。

 

(……あいつぅ!?)

 

 内心、もっとちゃんとした指示を出してくれればいいのに、と思わなくもないけど、ブイドラモンは、

 

「────わかった」

 

 

 ブイドラモンが頷いたのが見え────

 

 

 ────ダッ!!! 

 

 

 その瞬間、ファングモンの姿が消えた。

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

「……えっ?」

 

 ファングモンの声が後ろで聞こえた。

 

「ミナミ、危ない!?」

 

 ファングモンがみなみの後ろに立っている。

 

「『ブラストコフィン』」

 

 大きな牙でみなみを食いちぎろうとしている。

 

(────だめっ!!!)

 

 頭ではだめだと思いつつも、体が思うように動かない。

 

 ────がぱぁっ! 

 

 ファングモンの大きな口が開き、

 

「────い、やっ」

 

 みなみは驚きの余り、腰を抜かして床に座り込んでしまった。

 

(もう、助けられない)

 

 そう思った、その時────

 

 

「────『真空カマイタチ』」

 

 

 ────ガギィン!!! 

 

 

 

 レッパモンの尻尾が、ファングモンの横っ面を思いっきり叩いたのが目に入った。

 

「────なっ!?」

 

「────っ!?」

 

 私もブイドラモンも驚きの声を上げる。

 

 大きな金切の音を出しながら、レッパモンはファングモンの攻撃を防ぎ切る。

 

「……っ!?」

 

 その場にいる『2人』以外驚いた様子を隠さないでいる……そして、その二人は、

 

「よくやった、レッパモン」

 

「はい、ご主人様の言われた通りでした」

 

 にこやかに話し合っている。そして、タイトはみなみの方を向いて手を差し伸べる。

 

「……大丈夫か、寿?」

 

「えっ、あ、うん」

 

「なら、よかった」

 

 手を掴んで、スッと立ち上がらせるタイトの目には、一切ファングモンの姿が写っていない。

 

「……てめえ」

 

 攻撃を防がれた事で、さらにイライラしているファングモン。

 

「…………」

 

 だけど、タイトは私達の方を見るだけで、ファングモンの方へと視線を一切向けていなかった。

 

「ルビー、ブイドラモン……お前よりも相手の方が素早く、お前は目で捉えきれなかった。たまたま運良く、レッパモンが近くにいたからなんとかできたんだ。気をつけてくれ」

 

 タイトの忠告。

 

「さっきと、言っていた事が全っ然────っ!?」

 

 忠告している目が見えた。

 

(……怖い目だ)

 

 暗く、澱み切ったその目は、レナモンを殴っていた光景を思い出させた。

 

「……わかった」

 

「……うん」

 

 有無を言わさないその瞳に、私達は納得することしかできなかった。

 

「よし、それじゃあ俺が奴の足を止める。教授とレッパモンはこのまま寿達を守ってくれ」

 

 私達の同意によって、笑顔に変わったタイト。笑顔で指示を出し始める。

 

「わかりました!」

 

「わかった」

 

 教授とレッパモンに指示を出した。

 

「ブイドラモンとルビーは、このままファングモンの相手を頼む」

 

(……それって!?)

 

 目で捉えることすらできなかった相手であるファングモンの対応を任される私達。私は無茶だと思ってしまった。

 

「おう!」

 

 だけど、ブイドラモンは大きな声で、タイトの言葉に同意した。

 

(…………)

 

 その姿に、私は心の中で思ったことをうまく言葉にできなかった。

 

「……やれるな」

 

 今度は真剣な表情で、私に確認を取ってくるタイト。

 

(……ううん!)

 

 私はタイトを見て、首を振った。

 

『戦う時は踏み出せ』

 

 タイトの言っていたその言葉を再び心の中に刻み込んだ。

 

(今必要なのは『勇気』。タイトは私達なら、ファングモンに勝てると思ったから、頼んだんだ)

 

 そう思い、

 

「だいじょーぶ!」

 

 タイトに虚勢を張って、大丈夫だと伝える。

 

(本当なら恐いけど、『一歩踏み出さない』と)

 

 恐くてたまらないけど、敵の『勇気』を持って戦うことを決意する。

 

「そうか……じゃあ、行けっ!」

 

 ブイドラモンと私はファングモンに向かって走っていく。

 

「……舐めやがって────お前らっ!!!」

 

「「「────ハッ!」」」

 

「いつまで遊んでやがる。追い詰めろっ!!!」

 

「「「────はっ!」」」

 

 レッパモンに弾き飛ばされたファングモンが怒鳴り声をあげて、ガジモン達に命令する。それに従い、ガジモン達が私達に向かって走って来た。

 

 

「……残念だけど、そううまくいかないんだよ」

 

 

 ドンっ、ドンっ、ドンっ!!! 

 

 背後から、タイトの声と大きな爆発音が響き渡る。

 

「うぐっ!?」

 

「えげっ!?」

 

「おごっ!?」

 

 爆発音と同時に、ガジモン達が倒れていく。後ろにちらりと視線を向ければ、

 

「……あれって!?」

 

「拳銃?」

 

 タイトの両腕には『猟銃』が握りしめられている。

 

 ドッ、ドンっ、ドンっ……!!! 

 

 タイトが猟銃を使い大きな音が鳴らせば、ガジモン達が倒れていく。

 

(……すごい!?)

 

 次々と倒れていくガジモン達。私達がファングモンの目の前に立つ頃には、ガジモン達が地面でうずくまっていた。

 

「対デジモン捕獲用武器、『スタンライフル』*2……訓練しておいて正解だったよ。

 

 猟銃を降ろして、再びクロスローダーを弄るタイト。

 

「残念だけど、味方を動けなくさせてもらった。後はお前だけだ」

 

 ファングモンへと警告を促し始める。

 

 

「まだだっ、死ぬ気で動け無脳共……っ、でなければ『主』からの罰が降るぞ!!!」

 

 

 だけど、ファングモンは倒れているガジモン達に無理矢理戦わせようとした。

 

 

 ────うっうぐっ!? 

 

 ────罰、は嫌だ。

 

 ────『パラライ、ズ レ 

 

 

 ガジモン達はそれぞれが、恐怖と罰を恐れながらもがき始める。

 

「……ひっ!?」

 

「…………」

 

 その姿にみなみの怯えた声が聞こえて来た。

 

 

「恐怖を煽って、味方を無理矢理動かしてるな……無駄な事を」

 

 

 ────だめだ、うまく……

 

 ────動けない

 

 ────パラ イ    

 

 

 それでも動けないガジモン達。

 

 

「打った弾丸は完全体にも効く麻痺毒を塗ってある。成長期相手にそんなものを打ったんだ。そう簡単に動かれてたまるか」

 

「────くっ!?」

 

「お前はこいつとの一騎打ちをするしかないんだよ」

 

 タイトは本当にファングモンとの一騎打ちを準備してくれた。

 

「……くひっ!」

 

 ……だけど、ファングモンは笑っている。

 

「……なに、を嗤ってるの?」

 

「そいつはな、俺よりもトロい動きしかできねえ。そんな奴がこの俺に勝てると思ってるのかよ」

 

 笑いながら私の方へと嘲笑うファングモン。

 

「……うっ!?」

 

 正直言って手立てなんて全く思いついていない。図星をつかれて思わず動揺してしまった。

 

「……ルビー」

 

 呆れたように私を見るブイドラモン。

 

(ブイモ……ブイドラモンごめん。さっきの動き見たら、正直に言って、勝てるとは思えない)

 

 私はまだブイドラモンを『信じ』きれていない。それでも、戦わ────

 

 

 

「────()()()()

 

 

 背後から、突然そんな言葉を投げかけられる。

 

「────っ!?」

 

「……え?」

 

「……は?」

 

 タイトは誰よりも私とブイドラモンを信じていた。

 

「ルビー、デジモンを信じろ……そうすれば、どんな時だって敵に勝つことができる」

 

 その言葉で私の心に、再び『勇気』打ち震わせる。

 

「……そう、そうだね。諦めたらだめだよね!!!」

 

「そのいきだ」

 

 タイトの言葉を信じて、ファングモンを睨みつける。

 

「ハハハハハッ、バカじゃないのか? そいつでは俺の速さについてこれない。それをどうするって言うんだ……ニンゲン?」

 

 ファングモンは私達を嘲笑うが、

 

 

「そのために俺がいる」

 

 

 ────カチャリ。

 

 いつのまにかタイトが猟銃を構えた。

 

「────っ!?」

 

 

 ────ドンっ! 

 

 ────ドンっ! 

 

 ────ドンっ! 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

 

 だけど、ファングモンはタイトの銃撃を簡単に避けてしまう。

 

「うん、わかってた」

 

 当然と言うように銃口を降ろしたタイト……って!? 

 

 

「……って、それって当たらないの!?」

 

 

「うん、当たり前だけど、これは油断してるデジモンに向かって撃つ銃だからな。当たらなくて当然なんだよ」

 

 焦る私に対して、冷静に話すタイト。

 

「どこの当たり前っ!? ……てか、どうすんのよこれっ!?」

 

(冷静……というより、私達を過大評価してるだけなんじゃ!?)

 

 そんなことを思ったその時だった。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ────ズガンッ!? 

 

「────ぎゃっ!?」

 

 

 ファングモンがタイトの銃撃を避けた先で、『地面が爆発した』のだった。

 

「地面が……」

 

「……爆発した?」

 

 大きな煙をあげなが、焦げ付いているファングモン。その姿にあっけに取られてしまう。

 

「対デジモン捕獲用武器『ヒュージマイン』*3……まあ、簡単に言えば、地雷だ。長々と、会話してる間にここら一帯にまかせてもらった」

 

『地雷』

 

 地雷? 

 

(地雷って……っ!?)

 

『地雷』……地面に置かれた爆弾。設置された物を踏むことで起爆し、踏んだもの・その周辺物に甚大な被害を及ぼす。

 

 

「『まかせてもらった』って、私達も動けないじゃん!?」

 

 そんなことを思い出してしまい、タイトに怒鳴りつける……しかし、

 

「ブイドラモンは動かなくていいんだよ。奴が近づいてくるだけでダメージを負うんだからな」

 

 タイトはファングモンを睨みつけながら、ブイドラモンに動かないように指示を出した。

 

「……くそ、が」

 

 煙の中から、焦げついたファングモンが姿を現した。

 

「ファングモン……『ある一部のルート』除いて、この付近一帯に地雷……お前らがわかる言葉で言うなら、『爆弾』が仕掛けられている」

 

「……『ある一部のルート』?」

 

 私達は地面を見た。

 

「────っ!?」

 

「これは、鉄……か?」

 

 私達からファングモンまでの直線距離のみ、地面から浮き出た鉄のような何かが浮き出ていないこと気がついた。

 

「……これはっ!?」

 

 ファングモンも気が付いたようで、タイトを睨みつける。

 

「頭の良いお前ならわかると思うが、そこ以外を踏んだら地雷が爆発する……つまり、お前に怪我を負わせられるって訳だ」

 

 今度はタイトがファングモンを『嘲笑い』ながら、挑発する。

 

「…………くっ」

 

「さあ、どうする?」

 

「…………」

 

「…………」

 

 ニヤリ、とファングモンが嗤った。

 

(……えっ!?)

 

 ファングモンのニヤけヅラから、何か企んでいるのだと理解できた。

 

「……わかった。正面から戦ってやる」

 

 タイトがそれに合意してしまう。

 

「────えっ!?」

 

(ちょっと待って、あいつ絶対になにか考えてるじゃん。タイトもなんで気が付いてないの!?)

 

「よしっ、ルビー……あとは任せた」

 

「……っ、えっ!?」

 

 そんなことを言いながら、タイトは後ろに下がっていってしまった。

 

「ブイドラモン」

 

「……やろう、ルビー」

 

 ブイドラモンはファングモンの方から一切視線を動かさない。

 

(絶対に罠な気がする。どうすれば、どうしたらいい!?)

 

 タイトにこのことを聞こうにも、後ろに下がってしまってどうしようもない。

 

「じゃあ、行くぞ!!!」

 

「────おうっ!!!」

 

 そんなことを考えてる間に、ブイドラモンとファングモンは互いに向かって走り出してしまった。

 

「だから、ちょっと待っ────

 

 

 ────ニヤリ

 

 そう、ファングモンが嗤ったのが見えた。

 

 

()()()()()

 

 

 ブイドラモンに接近した後、ファングモンは私達に向かって嘲笑った。

 

「────っ!?」

 

 ブイドラモンが気が付いた時にはもう遅い。ファングモンはブイドラモンの横を通り過ぎ、私の方へと走って来てしまう。

 

「────じゃあ、なっ!!!」

 

 大きな爪が振り下ろされたのが見えた。

 

(タイトっ!?)

 

 心の中でタイトに助けを求める。もう近くにはいない弟に必死になって、祈ってしまった。

 

 

 

()()()()()

 

 ────ビイッン!!! 

 

 

 神の奇跡は……いや、弟によって奇跡は引き起こされた。

 

「────え?」

 

「……赤い、ロープ?」

 

 ドクグモンの体に巻き付いていたロープが、ファングモンの左後ろ足に縛られている。

 

「今だ、ブイドラモン!!!」

 

 タイトによって、ファングモンは一切身動きが取れなくなっている。そこに、ブイドラモンへと指示が入った。

 

「ああっ!」

 

 ────スゥ

 

 ブイドラモンは再び大きく息を吸い、口の中へと光を貯め始める。

 

「待て、止めろっ!?」

 

 ファングモンがそんな声を発するが、もう遅かった。

 

 

「『ブイブレスアロー』!!!」

 

 

 ブイモンの口から放たれた巨大な光線がファングモンを飲み込んで、

 

 

「────ぐっ、ぐぎゃあああああっ!!!」

 

 

 ファングモンに絶大なダメージを与えていた。

 

 ────ズドォオオン!!! 

 

 光に飲み込まれ、ファングモンは爆発する。

 

「……やった、の?」

 

 大きな煙の中、私の口からふとそんな言葉が出ていた。

 

「…………」

 

 煙が少しずつ晴れていく、と……

 

「……あが、がっ」

 

 完全に意識を失っているファングモンが、そこに倒れていた。

 

「……勝った」

 

「勝ったよ、ルビー」

 

「うん……うんっ!!!」

 

 

「「勝った────っ!!!」」

 

 

 私達はその日、初めて2人で勝利したのだった。

 

*1
レベル:成熟期タイプ:幻竜型 属性:ワクチン種 必殺技:『ブイブレスアロー』

 広大なデジタルワールドでも、フォルダ大陸にしか存在しないと言われている、幻の古代種デジモン。その存在は非常に貴重であり、フォルダ大陸でも滅多に出会うことは無い。また、ブイドラモンを手なずける事ができたデジモンテイマーも1人しかいないと言われている。胸にある「V」型の模様からブイドラモンと呼ばれるようになったこと以外その生態系はナゾであるが、何故か犬に間違えられる。成熟期の中でも並外れた攻撃力の持ち主であるが、窮地に立たされると完全体をも凌ぐパワーを発揮する。必殺技は口から吐き出す高熱の熱線『ブイブレスアロー』。

*2
ゲーム『デジモンチャンピオンシップ』にて登場するアイテム。その名の通り、麻痺毒を注射してデジモンを一定時間動けなくするという代物

*3
ゲーム『デジモンチャンピオンシップ』に登場するアイテム。地面に設置し、近づいたデジモンにダメージを与えるという代物





「タイトと」

「ルビーの!」


「「『デジモン紹介コーナー』」」


「今回のデジモンはこれ」

「『ブイドラモン』……ふふんっ!」

「……やけにテンションが高いな」

「だって、ブイドラモンってかっこいいじゃん!!!」

「……そうだな」

(自分のデジモンが進化できたことがそんなに嬉しいのか)

「……本編や図鑑以外でもブイドラモンの活躍って存在するの?」

「……漫画の初代主人公のパートナーデジモンがブイドラモンだったな」

「ーーーーっ!?」


「それって、すごいじゃん!!!」


(……ジャンプするほど喜んでる)

「それで、それで!!!」

「……戦略家の主人公とそれに従うパートナーの関係性が俺は好きだったな」

「うんうん!」

「お前もそうなれるよう、頑張れよ」

「うん!!!」

(……浮かれてやがる)


ーーーー10分後、

「……で、今回の議題をやるぞ」

「……議題?」

「前回言った通り、アンケートの結果を発表するんだ」

「ああ、確かそうだったね」

「……じゃあ行くぞ」


「『デジモンコーナーを続ける 11票』」


「『第1章〜第3章までのに戻す 0票』」


「『第四章が終わるまで様子見 5票』」


「……よって、『デジモンコーナーを続ける』ことに決まりました!!!」


ぱちぱちぱちぱち。


「……もう少し、喜べよ」

「うーん、つまり今までと変わらないってことだね」

「そういうこと」

「それじゃあ、ブイドラモンについてもう少し話しを聞きたいっ!!!」

「…………お前なぁ」

「コーナーは続けるんだから、別にいいでしょ?」

「…………」

「…………ハァ、わかった」

「それじゃあ、話の続きをっ!」


「その前にコーナーを閉めるぞ」


「…………はーい」

「今回の『デジモン紹介コーナー』はここまで」

「じゃあねぇ〜〜」
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