産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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「……まーた、タイトとクダモンでイチャイチャしてる」

「タイトくんの事が大好きなんやろなぁ」

前列のクダモンに勢いよく質問され、タイトが困っているのを横目に、私はまだ体調がよくなってないみなみの心配をしながら、会話をしていた。

「にしても、あいつのどこがいいんだろうね」

「…………そうやな」

「秘密が多い。大事なことを話さない。人の話を聞かない。人の気持ちを考えない。力や金で解決すればいいと思ってる。自己完結が多い。相談しない。相手のことを考えない……悪いところをあげればきりがないし、ほんっとうにめんどくさい男」

指折りで数えながら、タイトに対しての不満を言い続けていく。

「…………」

ただ、みなみはタイトの方を見つめて、ぼーっと何かを考えていた。

(……ちょっとだけ、話してみようかな)

その姿を見て、そんなことをふと思った。

「…………私はあいつのことを知らない」

うちに秘めたどうしようもない思い。口に出してみると少しだけ、気持ちが軽くなると思って、みなみに言ってみる。

「……ウチもや」

クダモンとタイトの問答が見える。

「あれを見てどう思う?」

タイトは嫌そうに、それでもクダモンとは楽しそうに会話をしている。その姿を見て、羨ましく思った。

「ちょっと、嫉妬してまうな」

その言葉と表情から、みなみもおんなじことを思っていたのだと知った。

「弟なのに」

「友達なんやけどな」

二年も一緒にいて、私達はタイトのことをなんにも知らなかった。それが堪らなく、嫌な気分になった。

タイトに取ってみれば、『話す必要のない相手』でしかなかったのだろう。

「なあ、さっきの話はどう思うた?」

みなみにそう聞かれる。

(ファングモンのことか、タイトの過去の話のことかな?)

さっきの話……と言われれば、その話しかない。

「ウチは弱いな」

みなみはそう言った。

(…………)

みなみの考えがわからなかった。

「ルビーは吐かなかったけど、ウチは吐いてもうた」

みなみは私を見て、そう言った。

「……私だって、みなみが取り乱さなかったら、相当まいってたと思うよ」

みなみの言葉を否定する。
私はみなみが私以上に取り乱したから、取り乱さなかっただけだ。それだけしかない。

みなみは私の言葉に首を振った。

「でも、ウチは取り乱して、ルビーは取り乱さんかった。そこに違いはあると思うんよ」

「…………」

「だから、ルビー」

「タイトくんーーーー


「話の途中みたいだが、すまない」


背後の椅子から教授に声をかけられる。

「なんですか?」

「教授、どうしたんですか?」

私達は後ろに並んでる教授に向かって振り向く。

「あれを見てくれ」

教授はタイトの方へと指を差した。

「…………ん?」

「…………」

クダモンがタイトの首に巻きつき、タイトに迫っているのが見える。

(……あっ、タイトが諦めた!)

タイトは肩を落としながら、クダモンの質問に答えていく。

「もう少しで話が終わる」

「あの様子だと、そうなるかな」

「そして、我々の質問の番が来る」

「……そうやな」


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「……っ」

大声は出せない。
教授はタイト達に意識を割いて欲しくないから、わざわざ私達にコソコソと話しかけに来たのだ。

「……なんでや?」

みなみが教授に聞いた。それがわかってしまったからこそ、小さな声でみなみは聞いてくれたのだ。

「昼間、タイトくんと『遺跡』に向かった」

「そのとき、タイトくんは『とある事柄』に対して、激しく動揺していた」

「私にはなんでもないような……いや、彼程特別視するような事でもなかったが、彼に取っては激しく理解のできない事が起こったらしい」

「……タイトがっ!?」

こくりと、教授が頷いた。

「私はそのことについて聞いてみたいと思っている」

教授はそう言った。

「…………」

「…………」

私達はなにも言えずに……。


「ウチは『デジモン』についてもっと知りたい」


それでもみなみは教授に向かってそう言った。

「ーーーーっ!?」

「ウチはまだタイトくんのことも、ギルモンのこともなんにも知らん」

「それでもタイトくんは『必要な情報』を選んでほしいと考えてると思うんよ」

必要な情報?

「だって、そうじゃなきゃ『今日の成果を話したいところだけど……込み入った事情だ。それぞれの質問を優先する』なんて言わへん」

(…………あっ!?)

たしかに、クダモンが質問する前にそう言っていたのを思い出した。

「それは教授が聞いてくれるんやろ?」

「ああ、私が知りたいのは『デジモンとこの世界の関係』についてだ。この世界との関連を聞けばタイトくんの考えもわかると思ったからだ」


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「ウチらには『デジモン』についての情報は全く知らへん」

「そこをウチ達は知るべきや」

「たった1人しか情報を持っているのは危ない」

「もし……もしもやけど、タイトくんと逸れてしまったり、タイトくんと一緒におられへんようになってもうたとき、ウチらだけでは対応できへんくなる」

「だから、ここで聞かなきゃあかんのは『デジモンについて』もっと情報を得なきゃあかんのや」

「……私は」

私だってタイトに聞きたいことはたくさんある。


『タイトが出て行ってから、どんなことをしてきたのか?』とか、

『コロちゃんはどうなったのか?』とか、

『やっぱり納得できないから、ママにあってほしい』とか、


でも、それは、

「…………やはり、みなみくんもそう思うか」

「ええ、教授も今回は譲ってくれません?」

この二人の質問に比べたら、今聞くことでもない気がした。

(……)

言葉に出せない歯痒さに、私はもどかしさを感じた。

「……だったら」

いろいろと思うところがあったけど、全て飲み込んで、

「私の時間をあげるから、二人の質問を一緒にしたらどうかな?」

二人に対して私の意見を言ってみる。

「えっ?」

「…………?」

「そうだぞ、ルビーの言う通りだ」

「『デジモンって? この世界ってなに?』って聞けば答えてくれると思う」

ブイモンもギルモンも私の意見に賛同してくれる。

「…………そうやな」

「そうか!」

二人も顔を見合わせて、微笑んだ。

「その意見でいこう」

「そうすることにする」

二人も同意してくれた。

「じゃあ、」

そう言って、タイト達のほうを見る。クダモンが首から離れ、喜び始めた。

「ーーーーハイッ!」

私は大きく手を挙げて、タイトに向かって質問した。



第十二話 デジモンとは?

 

 

「『デジモンって、この世界ってなに?』」

 

 

「…………」

 

 俺はルビーの質問に、少しだけ時間をかける。

 

(『待って』とか、『やっぱり違うのがいい』とか、言ってくるかもしれない)

 

 クダモン以外の全員で決めた内容だけに、少しだけ慎重に、そして相手に考える時間を与える事で、本気の質問なのか考えさせるつもりだった。

 

「…………」

 

 それでも意見を変える者はいなかった。

 

「その質問でいいのか?」 

 

 ルビーの目を見て確認する。

 

「……うん」

 

 少し言葉が詰まるようだが、この質問でいいらしい。

 

(……ちょうどよかった)

 

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「────わかった」

 

 俺は再び教壇に立ち、準備を始める。

 

「クダモン!」

 

「ふんふーん……はっ、ハイ!」

 

「こっちに来て手伝ってくれ」

 

「わかりました!」

 

「クダモンは俺のバッグから紙の束を取って来てくれ」

 

「ハイッ!」

 

「……それじゃあ、みんなは少し待っててくれ」

 

「……わかった」

 

 黒板に『デジモンについて』と書いていく。

 

「さて、昨日はどこまで話したっけ?」

 

 チョークで黒板に字を書きながら、背を向けている奴らに向かってそんな質問をする。ルビーの質問の後は、レナモンの騒動や夜間の警備、遺跡で発見した証拠に、ファングモン戦……いろいろあり過ぎて思い出すことが面倒だったので、質問したのだ。

 

「……えっとぉ」

 

「デジモンという名前の由来と並行世界について話しただけですわ」

 

 ルビーの思い出そうとする声に被せるように、クダモンが横からそう言った。

 

「……ありがとう」

 

(……そうか、それだけだったか)

 

 昨日のことを思い出し、黒板に書く内容を決める。

 

(じゃあ、最初から話した方がいいか)

 

 黒板にレベル、タイプ、属性を書き、横にはデジモンの絵を……レナモン、ギルモン、ブイモン……データ種はルビー達が出会っているのが碌な奴がいない……ゴツモンでいいか。

 

「よし、こんなところでいいか」

 

 俺はチョークでデジモン達を黒板に描き、準備が完了したのを確認する。

 

「ご主人様」

 

 横には既にクダモンがいて、俺に対して『4束』の資料を渡してくる。

 

「ありがとう」

 

「いっ、いえ、そんなっ……私は別に!?」

 

 クダモンからの資料を受け取り、黒板を眺める。

 

(レベル……については、まあいいか)

 

 幼年期、成長期、成熟期、完全体、究極体……たぶん、ブイモン達から話は聞いてるだろう。

 

(優先順位は……)

 

 黒板を眺め、レベルから次の項目へと視線を向けた。

 

(……タイプからでいいか)

 

 話す内容を決め、俺はルビー達のいる方向へと振り返った。

 

「うん、それじゃあ始める」

 

 全員がこくりと頷いた。

 

「それじゃあ、まずはこれを見てほしい」

 

 黒板に書かれたブイモンの絵を見せる。

 

「……俺の、絵?」

 

「そう、ブイモンだ」

 

 ブイモンの絵をポインターで指した後、

 

「まずはデジモンという種族について話していく」

 

 次にタイプの欄をポインターで指す。

 

「……タイプ?」

 

 ギルモンが首を傾げるのが見えた。

 

「デジモンにはタイプ……つまり、どのような生き物のデジモンか種族がわけられている」

 

「例えばこのブイモン。タイプは『小竜型』……つまり、ドラゴンだ」

 

(……見えないけどな)

 

 肌の質感を見れば確かに爬虫類っぽいが、顔つきがまず爬虫類系統ではなく、コウモリのような翼もない。顔に謎にV字がついている。

 

(どう見たってドラゴンには見えない)

 

 そんなことを思っていると、

 

 

「……えっ、ブイモンってドラゴンだったの!?」

 

 

 ルビーからの驚愕の声が上がる。

 

(気持ちはわかる)

 

 気持ちはわかるが……、隣をみろ。

 

「ドラゴンだよっ! ルビーは、俺をなんだと思ってたの!?」

 

 その言葉に怒ったブイモンが、ルビーに問い詰め始めた。

 

(うん、それは……すみません)

 

 実物を見たけど納得はできなかったから、ルビーに向かって怒るブイモンに心の中で謝った。

 

「いや、ドラゴンにしては顔が竜っぽくないし、ケモノにしては、犬とか猫とかそれっぽくないし……いったいなんなんだろうなぁって……」

 

 ルビーの言い分は理解できるんだけど……

 

「ひっ、ひどい!? 進化したら完全な竜になるのに!?」

 

(……そりゃそうなる)

 

「……ごめん」

 

 ルビーとブイモンがそのような問答を始めてしまい、時間が押してしまう。

 

 

「…………ごっほん!」

 

 

 大きく咳払いをする。

 

 

 ────ビクッ!? 

 

 

 ルビー達は大きく肩を揺らした。

 

「話を進める」

 

 このままだと思い通りに話が進まなくなってしまうからな。

 

「ギルモンなら爬虫類型、レナモンは獣人型に分けられる」

 

 ポインターでギルモン、レナモンの順に解説をし、

 

 

「……ギルモンは蛇さんと一緒やね」

 

「……ギルモン、蛇ってのがわかんないや?」

 

 

「…………」

 

「……たしかに、獣人だ」

 

 

 それぞれは、隣にいる自身、または他のパートナーのデジモンを見比べ、その姿に反応した。

 

「これらのタイプはあることで関係してくるが……話が長くなるのでそこは割愛する」

 

(属性以外の戦闘に関する相性なんて話が長くなるだけ、そこまで戦闘には関わってこないからな)

 

 そんなことを思いながら、属性の話に移るべきだと考える。

 

「……それって割愛していいことなの?」

 

「割愛したって多少は変わらん。次の話に移るぞ」

 

 ルビーから不安に質問されるが質問を一蹴して、属性にポインターの先を当てる。

 

「次はデジモンの属性についてだ」

 

 そう言った後、ポインターから手を離して、チョークに持ち替える。

 

「属性? ゲームとかに出てくる炎とか、草とか、水みたいなもの?」

 

 寿の言葉を聴きながら、ブイモンやレナモンの下にフリー種やワクチン種などの属性を書いていく。

 

「そうだな、ゲームみたいな感覚でいいと思う……が」

 

(詳しい説明はいらないよな)

 

 なにがどうして、強いのか弱いのかを理解してもらう必要はない。今必要なのは、こいつに対して自分のデジモンは強いか弱いか判断できる手段が必要だ。

 

「じゃ、これを見てくれ」

 

 先程黒板に書いた絵に注目させる。

 

「……フリー種?」

 

「ウィルス?」

 

「ワクチン種……とは?」

 

 ルビー、寿、教授の順に反応がある。その中でも、俺はレナモンの絵をチョークで叩き、注目ポイントだと理解させる。

 

「デジモンには主に、四つの属性にわけられる」

 

 ヴァリアブル種みたいな特殊なデジモンは省く。

 

「ワクチン、データ、ウィルス、フリーの四つの属性だ」

 

 それぞれの絵をチョークで差してから、チョークからポインターに持ち替えた。

 

「タイトくん、種なのになぜ属性として扱われるのだろうか?」

 

 教授が手を挙げて、質問をして来た。

 

「ああ、それは…………」

 

 教授に質問され答えようとするが、

 

(あれっ、これを説明するのはめんどくさいよな?)

 

『そのデジモンの持つ性質』……というのが公式見解なのだが、それはあくまでも区分に過ぎない。

 動物における種というのは『交配して、子供ができる集団』のことであり、デジモンには関係がない。

 

(たぶん、アニメやゲームではそこら辺を上手く考えずに設定したというか)

 

 原作(メタ)知識を考えればそう考える事ができるのだけど、デジタルワールドの中の学者デジモン達によってかなり議論されている話でもあったのだ。

 

(これについてはかなり議論の余地があり研究されていることなんだけど……って口に出すのは簡単なんだよな)

 

 話が長くなり、本題に入る時間が絶対になくなるのだ。

 

「うーん」

 

 そう声に出してしまうほど、悩ましい問題なのである。

 

「ねえ、かなり悩んでない?」

 

「そんな難しい問題なのだろうか?」

 

 そんな話し声が聞こえてきてしまうほど、頭を悩ませてしまうが、

 

「よしっ、決めた!」

 

「話が長くなるし、本題からかなり脱線するので今回は話さないことにします」

 

 そう言って、無理矢理話を終わらせることにした。

 

「……ふむ、わかった。すまない、話の腰を追ってしまって」

 

「教授、すみません」

 

 質問をして来た教授に謝り、再び話を戻した。

 

「では、もう一度ここを見てくれ」

 

 そう言って、ポインターを使って再びレナモンを指す。

 

「レナモンはワクチン種、ゴツモンはデータ種、ギルモンはウィルス種……教授に質問されたように、種の話をするのはだいぶややこしい話になります」

 

 そう各デジモンの絵を差しながら、事前に前置きをする。

 

 

「ただ、俺が覚えていてほしいのは『たった一つの事柄』だけだ」

 

 

 ゴツモンとレナモンを交互に差し、

 

「データ種はワクチン種に強く」

 

 今度はギルモンとゴツモンを、

 

「ウィルス種はデータ種に強く」

 

 最後にレナモンとギルモンを交互に指す。

 

「ワクチン種はウィルス種に強く戦えます」

 

 あえて、ブイモンの説明は後回しにする。

 

 

「つまり、デジモン達にはそれぞれ強く出れる相手がいるということです」

 

 

「────っ!?」

 

「…………」

 

「…………?」

 

 ルビーは驚愕、寿は沈黙、教授は……たぶんゲームとかやったことがないみたいで、理解できていない様子だ。

 

「つまり、どういうことかな?」

 

 まず教授が聞いてくる。

 

(まるで理解できてなかったような感じだったからな……あれならわかるか?)

 

「カエルと蛇とナメクジの三すくみみたいなものです」

 

 棒漫画で知った三すくみで説明する。

 

「……そういうことか!?」

 

 うん、昔の話なら理解できたのか。納得している様子だ。

 

「俺はどうなんだ?」

 

 次はブイモンだった。ブイモンの説明はわざと後回しにしたから、これは質問されて当然だ。

 

「ブイモンは『フリー種』。どの相手にも一定の強さで攻撃できるし、反対に攻撃されれば一定以上の傷をおわない事が特徴だ」

 

「…………そうか」

 

 ブイモンは納得できたようだが、

 

「…………つまり?」

 

 ルビーが理解できていない。

 

「相性の悪い相手がいないってことだ」

 

「……!?」

 

 ルビーも理解できたようだ。

 

「────はいっ!」

 

 今度は寿が手を挙げた。

 

「ブイモン達のはわかったけど、敵のはどうやってそれを判断すればええんか? タイトくんに毎回聞けばええんか?」

 

 …………それは、まだ説明してなかったな。

 

「…………あっ!?」

 

「そうだね、それは私達にもわからないな」

 

 それについては気が付いていなかったのか、教授もルビーも驚いていた。

 

「……ルビー、これを借りる」

 

「あっ!?」

 

 ルビーの初代デジヴァイスを借りて、一部を弄る。

 

「あった、これを見てほしい」

 

 初代デジヴァイスから、『USBコード』の穴が現れる。俺は自身の携帯電話型デジヴァイスを取り出して、

 

「これを自分の持つ『デジヴァイス』とコードで繋げると」

 

 手元にあるコードで繋げると、デジヴァイスに図鑑が表示される。指定先はクダモンだ。

 

「このように図鑑が表示される」

 

『クダモン』の図鑑内容がホログラムとして空中に現れ、みんなに見えるように動き出す。

 

「これって、クダモンの?」

 

「タイプはワクチン種なのか」

 

「属性は……データ種じゃないんか」

 

 それぞれがデジヴァイスから出るホログラムに感想を言い合う。

 

「とまぁ、こんな感じに図鑑機能が現れる」

 

 と言って、俺はルビーに初代デジヴァイスを返し、教壇に戻った。

 

「レベルのほうは……まあ、簡単なものでいいだろ。デジモン達が強くなる過程で、大きく姿を変化させることがある。それを『進化』と言い、変化した存在はレベルでわけられる。『幼年期』、『成長期』、『成熟期』、『完全体』、『究極体』の順にな……これでいいか?」

 

「……うん」

 

 寿が頷き、他の全員も、進化に対しては実際に見ているようで、納得はできている感じだった。

 

 全員の肯定を確認し、黒板消しで黒板に書いてある内容を全て消し去った。

 

「では、後者の質問に答えていく」

 

 

「『この世界』とは」

 

 

「……の話に行く前に、渡す物がある」

 

 

 ────ずでん!? 

 

 ルビーとブイモンが机に頭を打ちつけた。

 

(……お前らな)

 

 その様子に呆れながらも、手元にある資料をクダモンに渡す。

 

「クダモン、配ってくれ」

 

「はい、わかりました」

 

 クダモンが配っている間に、黒板に書いていく。

 

(デジモン……とは、進化……も関連するし、もう少し話せばよかったか? そこから『デジモンの世界について』話すとしても、この話をするには必須だろう……悩ましい)

 

 頭を悩ませながら、黒板に書いていく。

 

「ご主人様、配り終えました」

 

「ありがとう」

 

 ちょうど書き終えた頃に、クダモンが声をかけてくれた。なら、始められるか。

 

「資料を見てくれ」

 

 みんなにそう指示を出し、それぞれがパートナーと一緒に資料を見始め、驚くような表情を見せた。

 

「……?」

 

「なんだこれ?」

 

 ただギルモンとブイモンは首を傾げてるようだけど、

 

「……これは、パルテノン神殿……だが、しかしっ!?」

 

 真っ先に反応したのは、やはり教授だった。いくら日本史の専門家であったとしても、パルテノン神殿の内装にすぐに気づくとは。

 

「そうです、教授……みんなも、見たことがあるような絵が資料には写っている」

 

 

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「────っ!?」

 

「は?」

 

「なんだって!?」

 

 驚き、立ち上がり、固まり、それぞれが信じられないというように

 

「ここからは、俺と……俺の仕える『神』の立てた仮説を説明していく」

 

「────ハァッ!?」

 

「────ビクッ!? 

 

 ルビーが机に手を叩いて、さらに驚いた。

 

「……神? タイトが仕えてる神、様?」

 

 信じられないという顔で俺を見てくる。

 

(……いや、なんで?)

 

 そう思いながらも、俺はルビーに向かって、

 

「そうだ」

 

 仕える神を肯定する。

 

「神?」

 

「ああ」

 

「夢よね」

 

「夢じゃない」

 

「…………うそ」

 

「うそ、ウソ、嘘っ!? あんた『星座占いすら嫌い』って言って、ママの出たニュース番組すら見たことなかったじゃない。そんな奴が神に使えてるって、絶対に嘘っ!?」

 

 ……あっ、そういえばそんなこともあったな。だいぶ昔のことなので、思い出せていなかった。

 

「嘘じゃない。俺の使えてる神様……『美樹原ノルン』様は存在する」

 

「嘘だって、あんたみたいな暴虐武人のかたま……美樹原?」

 

 俺は真摯に答えたつもりだが、ルビーはどうやら信じてくれないようだ…………って、あれ? 

 

『美樹原』の名に反応した? 

 

「そう、『美樹原ノルン』様……いや、ここは仮初めの名ではなく、デジタルワールドのホストコンピュータであり、統治する神『イグドラシル』と呼ばせていただこう」

 

 俺は正式な名でノルンについて説明する。

 

「イグドラ……って、美樹原はたしかあんたの」

 

 ルビーはやはり美樹原の名に反応したようだ。

 

(……そう言えば、前に説明回をした時に、『美樹原 愛人』の名前を出した記憶がある)

 

 ルビーはその名を覚えていて、反応してくれたのだ。

 

「そうだ、俺の身元を保証してくれた存在だ」

 

 俺の身元を保証してくれた存在であると説明する。

 

(これで納得してくれればいいんだけど)

 

「……そんな存在が、なんであんたの」

 

 ルビーは納得せず、再び俺に聞こうとしてくる。

 

「言っとくが、イグドラシルについての説明はしない。なぜなら、話が脱線するからだ」

 

 脱線を理由に俺は話を区切った。

 

「────っ、わかっわよ……で、その仮説って?」

 

 

「この世界、そして俺達の産まれた世界がデジタルワールドと『早すぎる出会い』をし、そして『交わってしまった』……その結果、『デジモン/ケモノガミ達は衰退』し、『ケモノガミ達を迫害した人間』から『逃げた者達が作った世界』だというものだ」

 





とある場所にて、

暗き祭壇。

灯りとして焔が燃えているが、電球もランタンも、蝋燭さえ存在せず、ただ宙空を彷徨い照らしている。

人ひとりをを寝かせるであろう石櫃の前に、フードの司祭が立つ。

「ケモノ達よ」

焔が強くひかり、周囲を照らす。

赤き蜘蛛。

黄色の熊。

角の蛇。

それぞれが司祭……いや、司祭の後ろにある祭壇に首を垂れている。

「我らが主から、お言葉を賜った」

「『贄が来た。しかし、異端な贄が立ち、我に歯向かい、牙を剥いた』」


「ーーーーおおっ!?」

「なんだと、主様に牙を向くなど!?」

「恐ろしい、悍ましいぞ人間」

各々が司祭の言葉を聞き、主の言葉に感動する者、ニンゲンに怒りを持つもの、ニンゲンの悍ましさに震える者。
様々な反応が見て取れる。


「静まれっ、まだお言葉が残っている」

その様子に司祭は叱咤し、主の言葉の続きを話し出した。


「『奴を下し、我が『巫女』を取り戻した暁には恒久なる平和を約束しよう』……と、主は申された」


「貴様等、わかっておるな」

「偉大なる主様に歯向かった愚か者共を殺せっ、異端者を焚べろっ、我等の恒久なる平和の為にっ!!!」


「「「偉大なる主様の為にっ!!!」」」

「偉大なる主様の為にっ!!!」

「「「偉大なる主様の為にっ!!!」」」


その司祭達を見ている影が一つ。

「……くだらねえ。主もこの世界もくだらない。主が俺達ケモノの言うことなぞ聞くわけないだろうに」

ケモノはその姿に呆れ、見下している。

「ただ、まあこの『機会』をくれたことにだけは感謝してるぜ」

そうケモノは笑って見せる。

「この身を焦がす程の『恨み』であいつを焼き尽くす機会をくれた主様にはよぉ」

ただ、その瞳には憎悪に染まり、憎むべき相手がこの世界にやって来たことに対する喜びがそこにあった。
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