産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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前回のアンケートの結果。

『今後も前書きに作品を書いてほしい』 二票
『前書きに書かないでほしい』 三票

緊急の案件であり、急務でお願いした結果そこまで票数がありませんでしたが、投票してくれた方ありがとうございました。

この話の投稿から三時間後、アンケートの投票を終了させたいと思っております。票数も少なく、非常に僅差であるので、できる限り『結果』がわかりやすいように投票よろしくお願いいたします。

三時間後、この話のあとがきに『結果』を記入したいと思いますので、よろしくお願いいたします。




第十三話 仮説

 

「……私達の産まれた世界?」

 

「デジタルワールドとの早過ぎた出会い?」

 

「交わってしまった……それは、いったい?」

 

「ケモノガミ達の衰退?」

 

「迫害って、なに?」 

 

「逃げた者達が作った世界……だと?」

 

 

 私達はタイトの言葉を聞き、首を傾げた。

 

 私は首を捻り、ブイモンは訝しげにタイトを見て、教授は疑問を呈し、みなみは復唱し、ギルモンはわからない言葉をミナミに聞いて、レナモンは驚愕した。

 

「……うん、その様子だと理解できないみたいだな……じゃあ、まずは資料の1ページ目をもう一度見てほしい」

 

 タイトは私達の様子に頷いた後、そう指示を出した。

 

(資料の1ページ目?)

 

 そんなことを思いながらページをめくると、私達の世界の歴史が書かれている。その中心にあるのは、パルテノン神殿とその壁にある山羊のような、人のような生物の絵が描かれている写真であった。

 

「パルテノン神殿の写真にある山羊? 人? の絵……なにか関係があるの?」

 

 私はタイトに聞く。その絵の意味がわからないから。

 

「…………うーん」

 

 どう説明したらいいかと悩むように、タイトは唸っている。

 

(そんなに難しい話なのかな?)

 

 私の質問したことに対して、悩むような仕草を少しした後、本当に授業みたいになってきた。テンションが下がる。

 

「…………」

 

 そんなふうに思ってると、タイトは私の方をじっと見つめてくる。

 

(えっとなんなの? そんなに……)

 

「……少し、ルビーにも興味の持てる話をしよう」

 

 そんな私に呆れるように言い、黒板に字を書き始める。

 

「寿に質問だけど、『星座占い』ってなにをモチーフにしてるかわかるか?」

 

 私達に視線を向けることなく、タイトはそう言った。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……えっと」

 

「……そんなことが関係あるんか?」

 

 この瞬間、みなみの言葉に私……いや、タイトとクダモンを除く周囲にいる全員がその言葉に頷いた。

 

「ある」

 

「あるのっ!?」

 

 驚きの余り、そんな言葉が出てしまう。

 

「驚くのはいいから、質問に答えてくれ」

 

 再び呆れるような声で私を静止し、みなみに再び聞く。

 

「……『ローマ神話』やけど?」

 

 タンタンタン、と音を鳴らしていたチョークが止まる。

 

「……そう、か」

 

 タイトはみなみの言葉に戸惑ったように、手が止まってしまった。

 

(…………?)

 

 なにに戸惑ったかはわからない。だけど、タイトの手が再び動き出し、チョークの音が教室に響き始める。

 

「次はルビー」

 

「はっ、はい!?」

 

 いきなり指名され、困惑してしまう。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「…………」

 

 ローマ神話、の前の神話? 

 

「…………」

 

 あったかな、そんなの? 

 

「…………」

 

 思い出せない。

 そもそも、ローマ神話が『一番』有名なんじゃないの? 

 

「ごめん、わからない」

 

 

「…………そう、か」

 

 タイトの口からそう静かに聞こえてきた。

 

 諦観だろうか? 

 

 失望だろうか? 

 

 その言葉に込められた意味すらわからない。だけど、その言葉と共に、チョークの音が完全に止まり……そして、タイトが振り返る。

 

「だいたい、『仮説』通りだ」

 

 タイトの背に隠れた黒板には、よくわからない文字と五十音表が書かれていた。

 

「さて、先程の質問の意図に戻ろう」

 

「この世界には『あるもの』がない」

 

「……あるもの?」

 

「それは、『俺』が知っていて、『君』が知らないものだ」

 

 

「『ギリシア神話』、と呼ばれるものだ」

 

 

「ギリシア?」

 

「神話?」

 

 そんな神話。

 

「タイトくん、そんな神話聞いたことがない」

 

 その言葉の続きは教授が言ってくれた。

 

「分野が違うが、私も歴史を学んできたものだ。そんな神話が実在するのであれば、耳に入ってくるはずだ」

 

「それは、まあ……理解されなくてもいいです」

 

「耳に入ってなくても、存在しなかろうと……そんなのは『どうでもいい』んです」

 

「ただ、これが『前提』に関わってくるのを理解してください」

 

(また、だ)

 

 私達に向ける無機質な目。

 理解されても、理解されなくてもどうでもいいと思っているあの目だ。

 

「それでは、前提の話は終わった。最初にこの話の結論を言う」

 

 

「この世界は『紀元前からデジタルワールドと大きく繋がってしまった世界』だ」

 

 

「…………」

 

(それは、まあ……なんとなくわかるけど)

 

「つまり、君が見た他の世界の歴史の中に、占いや『ギリシア神話』なるものが深く関わっている……ということかね」

 

「教授、その答えでは100点満点中70点ってところですかね」

 

(七割は当たっているって……こと?)

 

「……残り30点はの説明は?」

 

「俺とルビー、かな?」

 

 私とタイトを交互に指を差した。

 

「……私と、タイト?」

 

「……そう、俺とお前だ」

 

 私の中にある疑問がさらに大きくなる。

 

(私とタイトの共通点?)

 

 考えられる限り一つしかない。でも、それをみんなのいる場所で話すのだろうか? 

 

 前世の記憶があるということを。

 

 

「話の続きをしよう」

 

 

 ただ、それでもタイトの言葉は続いていく。

 

「証拠とこの仮説に至った理由はそれぞれ3つある」

 

 …………嫌な予感がする。

 

 

「正直に話すべきか悩むところではあるが……ルビー」

 

 

 ────ビクゥッ!? 

 

 いきなり声をかけられてびっくりしてしまった。ただ、真剣にこちらを見るタイトに、さらに不安感は募っていく。

 

 

「『()()()()()()()()()()()?」

 

 

『『全て』を話しても、いいか?』

 

 その言葉を頭の中で繰り返す。

 私とタイトに関係すること、その全てを話すべきかタイトは悩んでいる……もしかして、私達の出生に関わることを話し出すのではないだろうか? 

 

 それは、……それが関わってくるのだったら……私は……

 

「……全て?」

 

 そんなことを思いながら、タイトの言葉を繰り返す。違っていてほしい。気づかないでいてほしいと思いながら、繰り返しタイトへと聞き直す。

 

 

()()()

 

 

 タイトは真剣にそう言った。

 

「…………」

 

 理解したくない。

 タイトのその言葉の意味を理解しているから。

 

(……そんなの、嫌だ)

 

 嫌で嫌でしょうがなかった。話したくもなかった。理解してほしくもなかった。

 

「ルビー、頼む。これから先に行く時に必要なことなんだ。お願いだ……話させてくれ」

 

 タイトは頭を下げた。

 その姿を見て、私はゴツモンに追いかけられた時のことを思い出した。

 

『ルビー、これ持って逃げろっ!!!』

 

 タイトはそう言って、私に聖なるデヴァイスを渡した。

 

「…………」

 

 わかりたくない。

 タイトの意図にどのようなものがあるのか、考えたくなかったから。

 

(……だけど)

 

 頭を下げ続けるタイトを見て、私はドクグモンに捕まった時のことをを思い出した。

 

『……間に合ってよかった』

 

 そう冷や汗をかきながらそう言ったタイトは、ドクグモンから私達を助けてくれた。

 

「…………」

 

 知られたくない。

 私達の産まれが特別であり、前世の記憶があることをまわり(みんな)に言いふらされるかもしれないから。

 

(……いや、でもっ!?)

 

 それでも、話してほしくない……と思ってしまったけど、私はファングモンに襲われた時のことを思い出した。

 

『わかった、できる限り力を貸すよ』

 

 戦うことを決意した私に、タイトはそう言って一緒に戦ってくれた。

 

「…………」

 

 私の返事を待ち、タイトは未だ頭を下げ続けている……その姿を見て私は、

 

 

「……()()()()

 

 

 深く、深く考えて、その答えが口に出た。

 

「…………っ、ありがとう」

 

 タイトは私の言葉に驚いたみたいだったけど、それでも感謝してくれた。

 

「……なあ、ルビー達の出生ってそんなに重要なことなんか?」

 

 みなみがおずおずと聞いてくる。

 

「だいぶ……いや、かなり重要だ。それがなければ、俺達はこの答えに辿り着けなかった」

 

「……う、うん」

 

 私達の出生がそんなに関わってくる? 

 どういうことかわからない。

 

「それじゃあ、話を戻す。三つの証拠と三つの理由について」

 

 タイトはそこで少しだけ躊躇い、口を閉ざす。そして、大きく深呼吸して私達を見た。

 

 

「一つ目、『俺』の歴史と『ルビー達』の歴史の違いだ」

 

 

「……タイトくんの知る歴史?」

 

「3ページ目を開いてくれ……そして、これは世界史日本史の授業になるが、少し聞いてほしい」

 

 タイトに言われるまま資料の3ページ目を開いた。そこにあったのは年表出会った。

 

(……えっ、なんで?)

 

 紀元前から、西暦1052年の日本で歴史は終了している。タイトの言葉から察するに現代まで続いていると思っていた歴史が、途中で止まっていた。

 

 ピロンっとなったデジヴァイス。タイトからのデジラインだ。

 

「写真を見てくれ」

 

 デジヴァイスを開き、写真を見る。そこには、なにか洞窟のような壁に書かれた絵と『タイトが黒板に書いた不思議な文字』が描かれている。

 

「……タイトくん、これは『遺跡』の?」

 

「はい、そうです」

 

 教授は『遺跡』と言い、タイトはそれに頷く。それが、なぜか不安になってしまった。

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 タイトは確信を持ってそう言う。

 

「…………これ、が?」

 

「そうだ」

 

「教授、日本史の質問です。『日本語は……『ひらがな』はいつ生まれましたか?』」

 

「……それは、私の専門だな。

 これは中学、高校でも習うことだが、ひらがな、カタカナが生まれたのは、だいたい九世紀……平安時代中期に生まれたものだ」

 

(……そうだったっけ?)

 

 習ったような、習ってないような教授の言葉にに頭を悩ませる。

 

「そうですね。『普通の歴史』ならそうだと思います」

 

 タイトの言葉に違和感を感じる。

 

(……普通の歴史?)

 

 まるで、私の産まれた世界が普通ではないというような言葉に聞こえる。

 

「だが、それがこれと関わっているのか? この壁画は少なくとも、平安時代よりも前に描かれた作品だと思われるのだが?」

 

 教授は自身のデジヴァイスの中にある写真を指差して、タイトへと聞いた。

 

(……そんな前のことなのかな? ちょっとよくわからないけど)

 

 黒い龍の横にある文字を見て、疑問に思う。私自身勉強が苦手だからわからないだけなのかなと思ってしまう。

 

「はい、その通りです……だから、おかしいんです」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 がたんっ、と大きな音がなった。

 

「君は、やはりこの文字が読めるのか!?」

 

 教授は驚いたようにタイトに聞く。タイトはその言葉に静かに頷いた。

 

「……というか、これのどこがひらがななんだ? 変な外国の文字じゃないのか?」

 

 私のデジヴァイスの写真を指差して、ブイモンがタイトに聞く。

 

 ……ブイモンが聞く。

 

(……えっ、ブイモンって日本語読めたの!?)

 

 まったく別世界の存在が日本語を知っていたので、ものすっごく驚いてしまう。

 

「黒板に五十音と対応して記入してある。気になるなら今写真を撮ってくれ」

 

 パシャリ、と教授が写真を撮った。

 

「……では、話を続ける」

 

 教授が椅子に座り直したのを見て、再び話を戻した。

 

「だから、おかしいんだ。平安時代中期から末期にかけて造られた文字である『ひらがな』・『カタカナ』が平安時代よりも前に作られた『飛鳥時代の遺跡』にあるのは」

 

 タイトの言うように、確かにおかしい。

 はるか昔に作られた『遺跡』にひらがなとカタカナが飛鳥時代に書かれている事が。 

 

 

「そして、この『遺跡』の他にも同様に『デジモン』の絵が描かれている遺跡がある」

 

 

 その言葉に資料のページを前にめくり、いくつもある遺跡の写真の中から一つの写真に注目がいく。

 

「────っ、……パルテノン神殿?」

 

「……そう」

 

 驚愕によって私の口から出たその言葉をタイトは肯定し、

 

「そして、資料の5ページ目に、他の証拠も記されている」

 

 資料をめくるように促した。その言葉を聞いて、私は急いでページをめくる。

 

 

 パルテノン神殿にあった『山羊人』。

 

 エジプトのピラミッドの壁の側面に描かれた『ウサ耳の男の神官』。

 

 フランスと下記されている写真には、古い石でできた家に置かれた『髑髏マークのコウモリ』の石像。

 

 中国らしき雰囲気の木造の建築の寺院に立てかけられた『孫悟空』の絵。

 

 インド人と一緒に写真を撮ってもらったであろう人物の横に、『三蔵法師』の仏像が置かれている。

 

 

 どれもこれも、多少物の差があれど『モンスター』のような印象が感じられる。

 

「……これって?」

 

 震える手で写真を指差しながら、タイトを見る。タイトは頷いて、話し始める。

 

「このことから、紀元前には既にこの世界とデジタルワールドが繋がっていると『俺』は結論付けた」

 

 タイトは確信を持ってそう言った。

 

「紀元前……とは言っても、はるかはるか昔、俺にだってわからないくらい昔にこの世界とデジタルワールドは繋がってしまった。偶然か必然かそれは俺にはわからない……ただ、『繋がりが深くなってしまったのが問題だ』」

 

「……ん、繋がる事がなにか問題なの?」

 

「問題だよ、ギルモン。繋がって、深く繋がってしまって……人間もデジモンも別世界の存在なのに、『おんなじ世界の生物』になってしまったことが問題なんだ」

 

 ギルモンの質問から、タイトの言葉から不安な言葉が聞こえてくる。

 

「……ん?」

 

「『おんなじ世界の生物』?」

 

 タイトに繰り返すようにみなみは聞いた。

 

「『二つの世界は結合し、一つの世界となり、同じ世界の生き物』になってしまったんだ」

 

 結合……つまり、タイトがなんども言うように、私達の元の世界とデジモンの世界が合体してしまったということ? 

 

 それのなにが問題なんだろうか? 

 

「……それが、いったいなにが問題なんや? ウチ達みたいに仲ようせいやええやん」

 

「…………」

 

 みなみがそうタイトに聞いた時、タイトは深刻そうな顔に変わってしまった。

 

「かつて、俺の行ったとある世界はこんなことになっていた」

 

 神妙に、そして重く発言するタイト。

 

(……こんなこと?)

 

 タイトが一呼吸置くぐらい躊躇われるその発言には、デジモン達の世界での異常なことが起こったのだと理解できる。

 

(……いったい、なにが?)

 

 そう思ったとき、タイトの口が開いた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 何度あったかわからないぐらいの緊張が走る。

 

「…………嘘、だよね?」

 

 この世界に来てからなんどだって見ているデジモン達が『進化』する姿。ブイモンもギルモンもクダモンも、みんな進化できていた。それが、できない世界なんて信じられなかった。

 

「嘘じゃない」

 

 私の発言は否定される。

 

「その世界では、『昔』は進化ができていた。ただ、『俺』がいた現在ではそれができなくなってしまっていた……なんでだと思う?」

 

(……なんでって?)

 

 タイトに聞かれた質問を必死になって考える。そして、一つポケットの中にある答えにたどり着いた。

 

 すると、みなみのほうもポケットから、あれを取り出しているのが見えた。

 

「……ウチらがギルモン達を進化させられたのは、これのおかげ……としか言えへん……よな?」

 

「そう、だね」

 

 二人でタイトに見せながら、みなみとそうやって頷きあう。

 

『聖なるデヴァイスtype proto』

 

 タイトに渡されたそれは、私達をなんども救ってきた。それをタイトに見せたのだ。

 

「……正解……と、言いたいところだが、実は違う」

 

(……違う、んだ)

 

「デジモンという存在が産まれた頃、『デジモンは進化できなかった』」

 

(……進化、できない?)

 

 タイトの口から出る矛盾点に頭を悩ませる。進化ができないことが異常なのに、進化できない存在であることが明かされたのだ。

 

「ただ、デジモンの本能は当時でも存在した」

 

(……本能?)

 

 本能、とはいったい。

 

「デジモンは人間とは違い『生殖器官』や『性欲』がなく、代わりに戦って、勝利して、より強く、より強大な存在へと辿り着くための『戦闘欲』というものがある」

 

「……戦闘、欲?」

 

 わからない言葉が続く。

 自身の知っている言葉なのに、頭がモヤモヤしてくるのはなぜだろうか。タイトはわざと難しく話してるのではないかと勘繰ってしまう。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(アイテムによっての進化…………っ!?)

 

 そんなことを思っていたら、ようやくわかる言葉が出てきた。

 

「それって、これだよねっ!?」

 

 タイトに『聖なるデヴァイスtype proto』を見せつける。

 

「……まあ、正解でいいか」

 

 なにか微妙な反応だけど、タイトが頷いた。それで、嬉しくなる。

 

「ルビー達に渡した『初代デジヴァイス』のように、アイテムによって進化をする者達が現れた」

 

 あってることがこんなに嬉しい。

 珍しく授業をやってて嬉しい気分になっていた。

 

「そして、次第に『自力での進化』を果たす者達が現れ始めた……時に、教授?」

 

(……教授?)

 

「……ああ」

 

「『このこと』の意味することはなんだと思いますか?」

 

(ああ、教授に質問をしたのか)

 

 タイトは教授に質問した。

 

(……ん、でも『このこと』って?)

 

 話の流れ的に『デジモンの進化』について……だと思うけど、ほとんど情報がないのに、その意味について質問されても困ると思う。

 

 

 

「…………」

 

 5分程、考え込む教授。だけど、一向に言葉に出せていない。

 

「流石に、情報が足りませんか。なら追加です」

 

 

「『デジモンは『住んでいる環境』によって姿を変える』」

 

 

「…………ん?」

 

『住んでいる環境によって姿を変える』。

 

(そんなヒントじゃわかんない────

 

 

()()()()()!!!」

 

 

 ────って、……へ?」

 

 タイトに文句を言おうとした時、教授が立ち上がって……わかった? 

 

『わかった』と言った。

 教授はさっきのヒントでわかったのだ。

 

「では、答えをどうぞ」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(……外的、要因?)

 

 教授の発言を頭の中で繰り返し、どういうものか考える。

 

『外的要因』……外からなんらかの接触によって姿や存在が変化すること。

 

(つまり、他の物に影響を受けてデジモン達は進化するってこと!?)

 

 教授の発言から、その発言が合ってるかどうかなんて────

 

「……正解です」

 

 タイトは教授の答えに笑顔で応えた。

 

(当たってたの!?)

 

「さらに付け加えるなら、その進化したデジモンを見て『学習』したデジモン達は、自力での進化を会得する……でしょうか?」

 

「俺の知る世界では『人間の夢や希望』という外的要因がなくなったことにより、デジモン達は力を失い進化できなくなっていた。つまり、デジモンと人間との関わりを持つ力が失われたことによって、大きな弱体化を促した」

 

 人間の夢や希望。

 それが、ブイモンにとって大きな力になる。

 

(私に取っては)

 

 ママみたいなアイドルになること。

 

 タイトをママに合わせること。

 

 どちらも、大事なことだった。

 

「だけど、それの話が……なんの関係があるんや?」

 

(ああ、そう……それは私も疑問に思っていた)

 

 私達の産まれた世界になんの関係があるのかわからなかった。それをみなみがタイトに聞いてくれた。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「…………っ、ほんまに?」

 

「本当だ……資料を見てくれ」

 

 タイトに言われて資料を見る。そこに載っているのは、やはり遺跡の写真だけ。

 

「これのなにが関わってるの?」

 

 よくわからないからタイトに質問する。

 

「写真の下、『何年』にできた?」

 

 タイトに言われるまま写真の下を見る。

 

(……何年って、ここに書かれてるのは全部紀元……前っ!?)

 

 このページの写真の注釈欄を見ると、全ての遺跡・歴史的建造物は『紀元前』のものであると記入されている。

 

「…………これってっ!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 紀元前……つまり、二千年以上前にデジモンと人間は関わってたの!? 

 

「そして、3ページ目をもう一回見てくれ」

 

 タイトに言われて、急いでページをめくる。

 

(……たしか年表だったはず)

 

 タイトに言われて年表を見る……そこには、

 

(……嘘っ!?)

 

 

西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()っ!?」

 

 

 世界史の欄は西暦の丁度はじまりから、一切デジモンの情報が載っていなかったのだ。

 

「その通り……さて、西暦の初めはなにがあったかな、みなみ?」

 

 なにが…………って、

 

「『イエス・キリストの誕生』」

 

「正解」

 

 世界で最も大きな宗教の創設者の産まれた年。世界で最も大きな宗教の生まれた原因。

 

(それが、関わってるの?)

 

 思いもよらないほど壮大な話になってきた。

 

「正確には『キリスト教が生まれ、『一神教』ができたことにより、『デジモン/ケモノガミ』が『悪魔』として扱われ、排他されたことが原因だと『俺とノルン様』は仮説を立てた」

 

「中国やインドでも同様だ。

 中国では儒教であったり、皇帝を唯一の『神』であるという文化があった。インドでは『仏教』をはじめ、『ヒンドゥー教』や『ゾロアスター教』など、多数の宗教の乱立があった」

 

「デジモンの力の根源は『人間とデジモンの関わりで発生する強い感情』だ。その力が過剰に弱まった、もしくは分散してしまったことにより、力は弱体化していたのではないかとも考えている」

 

 タイトの怒涛の説明にあっけに取られてしまう。

 

「さらに、先程の写真を見てほしい」

 

 それでもタイトは説明を辞めない。

 

「写真!?」

 

 隣からみなみの声が聞こえてきたので、意識が復帰してきた。タイトが写真を見てほしいと言ったところだった。

 

(……っと、写真)

 

 呆気に取られてる場合ではないと、急いでさっき送られてきた写真を見る。『遺跡』の写真にはタイトの言うように、文字が書かれている。

 

(……これが、五十音なの?)

 

 変な文字を見て、タイトの発言を疑ってしまう。

 

「それじゃあ続きを始める」

 

 だけど、全員がデジヴァイスを開いた時、タイトの説明が再び説明が入る。

 

 

「『災害を与え、人から恐れられるようになった』」

 

「『力を人は憧れ、崇拝の対象としていった』……と、壁に書かれている」

 

 

(本当に読めるんだ!?)

 

「……災害、ふむ」

 

 

「このことから、この世界では日本の『神道』とデジモンが深く考えている」

 

 また難しい話になって来たので頭が混乱してくる。

 

(神道? あんまり考えたことがないけど、たしか神社関係だったよね?)

 

 日常的に馴染みがないから、本当に頭が痛くなってきた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(……同様、いったいなんの……って)

 

「────ええっ!?」

 

 タイトの話を思い出し、驚いてしまう。

 

「だって、世界では宗教で……どういう……ええっ!?」

 

 本当に頭が混乱し、なにを言ってるのかがわからなくなってくる。 

 

「ルビー、落ち着け」

 

「だって、ブイモン」

 

 ブイモンに腕を引っ張られるが、まだ私の頭はこんがらがったままで、どうしたらいいのかわからない。

 

「まだ、話の途中だぞ。後でタイトからわかるように聞けばいい」

 

「……そうだね」

 

 ブイモンに諭され、少し頭が冷えた。話を聞く余裕が少しなくなっていた。

 

「タイトくん」

 

 ようやく頭が落ち着いた……と思ったとき、後ろから声が聞こえてくる。

 

「それは、『仏教の伝来からおかしくなった』んじゃないのか?」

 

 教授がタイトに質問したのだ。

 

(……仏教?)

 

 神道に比べ仏教は私にも馴染み深い。葬式のCMはあっちでは毎日流れるし、前世では病院でなんども葬儀屋の人達を見かけたからだ。

 

(……でも、なんで仏教?)

 

 それも歴史に関わってるのだろうか? 

 

「なぜ、そう思ったんですか?」

 

 タイトの目が変わった。教授のほうにかなり注目がいっている。

 

「弥生時代の中期、仏教は日本に伝来した。その後、飛鳥時代がやってくると共に、日本の宗教は神道と仏教で対立、最終的に仏教が勝利し、天皇家や公家の……一般の人々に至るまで、仏教の思想の伝播は激しく、神道の文化はあれど、飛鳥時代から日本は仏教に完全に染められたと言ってもいい状況であった」

 

「他にも、年表の中に『949年』と『1052年』というものがある」

 

「これは、平安時代における『仏教の末法』……ルビーくん達にわかるように言えば、『終末論』や『世界の終わり』という思想がが流行った時代であり、949年は釈迦如来が入滅……つまり、亡くなられた日であり、1052年は『末法元年』……世界の終わりが始まった年とされている」

 

(……ひえっ!?)

 

 教授もタイトと同じように怒涛の説明が聞こえてくる。頭の悪い自分には正直言ってついていけてない。

 

(日本の歴史に仏教が深く関わってることぐらいしかよくわかんない)

 

 勉強に関して言えば、タイトやアクアにおんぶに抱っこの状態でようやく赤点回避ぐらいの頭なので、どうすればいいのかわかんない。

 

 

「だから、私は仏教が関わってるのではないかと考えている」

 

 

(……いつのまにか説明が終わってる!?)

 

 教授の締めくくりを聞き、説明がよくわからないまま話が終わってしまったことに気がついた。

 

「……だいたいあってますね」

 

(あってるんだ!?)

 

 

「むしろ、話したかったことをだいたい話してくれたので、説明がはぶけてよかったです」

 

(えっ、説明してくれないの!?)

 

 話についていけてなかった為、このまま話がよくわからないまま進みそうだった。タイトにはちょっと待ってほしい。

 

「私、ついていけてないんだけどっ!?」

 

 わからないことはすぐに聞いたほうがいい。私の人生論である。

 

「ルビーにはあとで補足してやる」

 

 タイトは呆れたように、時間を作ってくれると約束した。

 

「……ウチも、ええかな?」

 

 おずおずとみなみが手を挙げる。

 

「……俺も」

 

 ブイモンも同様に手を挙げる。

 

「ギルモンも!!!」

 

 ギルモンの様子は……よくわからないけど、みなみが手を挙げたから元気に手を挙げていたという雰囲気だった。

 

「……教授にわかるように説明した後で時間をとってやる。わからないことはメモしておいてくれ」

 

 その様子を見て諦めたようにタイトはそう言った。

 

「じゃあ、教授の説明に補足を」

 

「いつ頃からかはわからないが、日本にもデジモンとの世界に繋がりがあった」

 

 うんうん、なんとなくここはわかる。

 

 

「デジモンの力を高めるには『デジモンを信じる力』が必要だ。だから、昔のデジモン達はケモノ『(ガミ)』だと言い信仰を集めていた」

 

 ふむふむ、それならすぐに信じる心……信仰が集められる。

 

「弥生時代になり、仏教が伝来……このタイミングで『1体のデジモン/ケモノガミがやって来た』と俺は考えている」

 

(……1体?)

 

()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

「飛鳥時代、戦争に負けた人間達がこの世界をつくり、排他されたデジモン達をこの世界へと逃した。その末裔が水無瀬の家だった」

 

「……ん、私っ!?」

 

「人間の思想を踏み躙り、仏教の影から好き勝手やっていた1体のデジモンとその仲間は平安時代になり、さらに力を持とうと考えた……結果が『釈迦如来入滅』であり、仏教の『末法』による思想の集約でそれを起こした」

 

「…………」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 タイトの口から予想以上の『妄言』が垂れ流された。

 

「いやいやいや、それはおかしいって!?」

 

 あまりにも壮大すぎるそれは、なかなか頭の中で整理がつかずどうしようもなくなっていた。

 

「……なにが『おかしい』って?」

 

 平然と聞くタイト。

 

(……いや、なんで平然!?)

 

 その様子に驚きながらも、みんな口があんぐりと開きっぱなしになってるし、どうしようもない。

 

 でも、言葉にしづらいし。

 

「おかしいよ、いやそうだけど。言葉にうまくしずらいけど……証拠はっ、証拠はどこにあるのっ!?」

 

 私は名案を思いついた。

 

(それなら、その妄言が正しいかどうかなんて……へっ?)

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……私?」

 

 なんで、なんで私? 

 タイトの指を見て、私は後ろを向いても私の顔を指差す方向にはなにもないことに気がついた。

 

()()()()()()()()()()

 

 本当に、私? 

 

「ちょっと待ってっ!? ……なんでルビーと……アクア? って人が証拠になるん!?」

 

 みなみがそのことについて聞いてくれる。訳がわからないのは私も同じだ。なんでタイトはそんなことを指摘するのだろうか? 

 

 私が証拠ってどういうこと!? 

 

「理由はお前にもわかっているだろう?」

 

 タイトは静かにそう言った。だけど、私の頭がこんがらがっていた。

 

(わかってるって……それは!?)

 

 そんなのわかるわけなかった。

 

 理解したくもなかった。

 

 頭の片隅になにか思いついた事があったけど、思い出したくもなかった。

 

「…………」

 

 タイトは大きくため息を吐いた。

 

「許可はもらってるからな……言うぞ」

 

 許可ってどういう……こと? 

 私はそんなことを言っ……

 

 

「アクアとルビー……そして、俺は一人の女の腹から産まれてきた。姓を『星野』、名を『アイ』という」

 

 

 タイトはどうしてママの名前を言ったの? 

 

「……星野?」

 

「アイ?」

 

「……星野アイって!?」

 

 みなみや教授は私達の母を完全に理解したらしい。ものすごく驚いてる。

 

「『星野アイ』って、昔ものすっごい流行ったアイドルで、ストーカーに命を狙われたことや子供ができたことで引退、でもファンからの要望や世間からの評価から女優として復帰し、現役バリバリで働いとるあの、星野アイ!?」

 

「……うん、そうだよ」

 

 みなみが目を輝かせながら話してくるけど、私の言葉に力はなかった。気づきたくない、気づかせたくない。そんな思いが頭の中をぐるぐると回っている。

 

「でも、それがなんの証明になるんだい? ただの人間の子供だろう」

 

 教授のその言葉にドキンと胸が鳴った。タイトは……ああ、あの目は

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ただ単に、ハッキリと教授に向かってタイトはそう告げた。

 

「ただの、子供じゃない? ……それはいったいどういうこと、なんだ?」

 

 教授も驚愕したようにそう言った。

 だめ、言わないでと頭の中で警鐘を繰り返す。だけど、タイトの目はまっすぐで、なに一つ言わせないとハッキリと私を見据えている。

 

「俺も含め星野アイの子供には共通の『問題』がある」

 

「……問題、それはいったい?」

 

 タイトは約束したよなと、はっきりと目で訴えかけている。

 

(ああ、やめて……その先を話さないで!?)

 

 心の中で叫んでも、どうしようもない。タイトは話す方あわしてしまっていた。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

(……あっ、言っちゃった)

 

「前世の!?」

 

「記憶!?」

 

 みなみも教授も、ブイモンもレナモンもものすっごく驚いてる。

 

「別に本当に珍しいことだけど『前例』がないこともない。教授だって日本史を学んでれば出てくるだろ? 前世を持ったやつとか」

 

「……えっ、前例があるの?」

 

「そうだな、タイトくんのいうとおり、たしかにいくつか前例があるらしい……が神話や与太話のほうが多い。まさか実際に目にすることになるとは思っていなかっただけだ」

 

 チラチラとこちらを見ながら教授は話す。物珍しいものを見るよう(そんなふう)に見ないでほしい。自分の祖父ぐらいの年齢の人にそう見られると、気持ち悪く感じる。

 

「……」

 

 みなみがぼーっとこちらを見ている。

 

(なにを考えているんだろう?)

 

 薄気味悪いものを見るような目でも、異常な存在を忌避する目でもない。

 

(なにを考えてるのかわからない)

 

 本来なら気になることだけど、タイトの言葉のほうが気になってしまう。今のタイトはなにを言うかわからないから、注意しなければならない。

 

「ほんまに前例とかあるんや……てか、前世の記憶があるなら、なんでそない勉強ができへんのや!?」

 

 そんななか、みなみに痛いところを突かれた。

 

「……うっ!?」

 

 それだけは言わないでほしい。

 

「ルビーの前世は『さりな』って言う少女だ。若くして病気を患ってしまい、二十歳にも満たない年齢で亡くなったらしい」

 

(こいつ、あっさり私の過去をしゃべりやがった……てか)

 

「誰に聞いた!?」

 

 私、怒り心頭である。

 

「アクアに聞いた」

 

 タイトはしれっとそう言った。

 

(アクア、そんなことをこいつに教えないでよ!?)

 

 この場にいない(せんせい)に怒りを覚える。

 

「……ん、『さりな』? たしかブイモンは最初にそう呼んどったよなぁ」

 

(あっ、みなみが余計なことを言った)

 

 私の横にいるブイモンはタイトの発言から、なにもしゃべってない。私は『私の前世』を知ったブイモンを見るのが嫌で、視界に入れないようにしていたのだが、恐る恐るブイモンのほうを見ることにした。

 

「ああ、そうだけど……本当に『さりな』で、『さりな』よかったんだ」

 

 あっ、ブイモンが泣いた。

 

「さりなって呼ぶなって言われて、不安だったんだよ。本当に俺の相棒なのかどうか……でも、よかったぁ」

 

 ブイモン号泣である。

 

「……ブイモン」

 

 せめて、号泣はやめてほしいかな。なんか居た堪れなくなってくる。

 

「悪いけど、話を進めるぞ。たしかに、前世を持つ人間は歴史上『何人も存在する』。だけど、三つ子全員に『前世』の記憶があるのはおかしい」

 

 泣いているブイモンを無視して、タイトは話を進める。いいぞ、そのまま話を進めて! 私のことを聞かれる隙を……って、そういえば。

 

(……たしかに、おかしい)

 

 今まで考えてこなかったけど、偶然(きせき)だと思っていた。ただ、それって本当に────

 

「さて、偶然だろうか?」

 

(偶然なのかな?)

 

 私の考えと共に、タイトの発言が被った。

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 そして、その発言はすぐに否定される。

 

「アクアとルビーは、『今』もあちらの世界で暗躍している『釈迦』によって命を弄ばれた存在だ」

 

「それは本当なの?」

 

「実際に、俺達の母親はなんどかあちらの世界でデジモンに襲われている。それはルビーも知っているな」

 

「えっ、あ……うん────って、あんたはなんで知ってるの!?」

 

 2つともタイトのいない間に起こった事件だ。それを知っているはずがない。

 

「調べた」

 

 やけにあっさりとそう言われた。

 

「調べたって、何年も前のことだよ!?」

 

 タイトは首を捻った。

『えっ、できないの?』……とでも言うような顔だ。

 

 

()()()()()()()使()()()()()()()?」

 

 

 デジモン、の力? 

 

 ハッキングとか調べ物とか、現代のことを知らないブイモンにそれができるとは……1体、思い出した。

 

「…………」

 

 グルスガンマモンだ。

 黒いアイツがなにかしら動いてるのは知ってたけど、私の記憶にはそんな怪しい動きなんて……。

 

「グルスガンマモンは教えてなかったんだな」

 

「…………」

 

 教えて、なかった? 

 私はそれだけの存在だったのだろうか。そんな疎外感に襲われていく。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ……と、そんな時間はなかった。

 

「理由がわかるん!?」

 

 みなみの声でハッとする。

 

「用済みなったおもちゃの処理だろ? 興味がなくなったい相手をこうやって処理する奴らは、なんども見たことがある」

 

『処理』……まるで、おもちゃみたいに捨てられる私の人形が、思い至ってしまう。少し気分が悪い。

 

「そして、襲われたこと。それに関することは、結果ルビー達が必然的にデジモンとこの世界に深く関わってることの『証拠』になる」

 

「これが二つ目の証拠だ」

 

 二つ目……少しずつタイトの『証拠』を信じざる得なくなってきた。容量の得ない『仮説』に骨組みができるような気持ちだ。

 

(これが、二つ目の……私と、アクアが、証拠……?)

 

 ただ、ママの子供の中で1人、口に出されていない存在がいる。

 

「……タイトはっ、タイトはどうなの!?」

 

 目の前のタイトにそのことを聞く。

 私とアクアが『釈迦』によって、『必然(さくい)的』に産まれた存在なら、タイトはいったいどういう存在なのか聞かなきゃいけない。

 

「…………『俺』、か」

 

『俺』……という言葉に、含みがあった。

 

 

 

「……三つ目の証拠……それが、『俺』だ」

 

 

 

 三つ目、が……タイト? 

 

 二つ目じゃなくて、三つ目なの? 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「別の、存在?」

 

 私やアクアとは違う存在に転生させられたの? 

 

「俺の魂はこの世界とは別の場所から、持ってこられた存在だ」

 

 わからない、信じたくない……そう思うのは今日はなんどめだろうか。それでも、タイトは『私』に向かってはっきりと言ってくれる。

 

(……別の場所?)

 

 理解したくない(わかりたくない)と心のどこかで叫んでいる。ママの腹の中から産まれた存在が、『私』と同じ奇妙な生き物であってほしくなかったからだ。

 

「それって証拠はあるの?」

 

 そんな無駄な質問、意味のない問いかけを……今までのタイトの答えから、それはわかっていた。わかっていたけど……質問せざる得なかった。

 

 

「ルビー、最初に寿に聞いた質問、覚えているか?」

 

 

 不意にされた質問。

 

「最初の、質問?」

 

 その意図がわからず、もう一度繰り返した時、ある言葉が頭の中で巡っていく。

 

 

『寿に質問だけど、『星座占い』ってなにをモチーフにしてるかわかるか?』

 

『……『ローマ神話』やけど?』

 

『次はルビー』

 

『ローマ神話の前の神話って知ってるか?』

 

『ごめん、わからない』

 

『この世界には『あるもの』がない』

 

『……あるもの?』

 

『それは、『俺』が知っていて、『君』が知らないものだ』

 

『『()()()()()()』、()()()()()()()()

 

 

 

「『ギリシア、神話』?」

 

 こくりとタイトが頷いた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────っ!?」

 

 後ろから聞こえてくる声にならない叫び。ただ、私の心はもっと穏やかではなかった。

 

「ルビーには他にも、思い当たる節はあるだろ?」

 

「……なに、が?」

 

 あるのと聞こうとした時、タイトの『クロスローダー』が目に入ってくる。

 

 タイトから渡された『聖なるデヴァイスtype proto』を思い出し、タイトが小さい頃に持っていた『オモチャのようなもの』を思い出した。

 

(たしか、あれって……、────っ!?)

 

 

「もしかして、あれ……『コロちゃん』?」

 

 

 私はタイトがコロちゃんと出会った時のことを見たことがある。ママのスマホから突然現れて、あの子はタイトにずっとくっついていた。それを今更思い出したのだ。

 

「コロちゃん?」

 

「コロちゃんって、なんや?」

 

 ブイモンとみなみが私に聞く。

 ただ、その声に私が答えることがない。私の目には目の前の少年しか写っていないのだから。

 

 少年は渋い顔をした。

 

 

「そうだ……『テト』だ。テトの存在こそが俺が三つ目の証拠である証明だ」

 

 

 …………テト? 

 

 テトって、あの腕が? 

 

 コロちゃん? 

 

「テト? コロちゃん? いったいどっちやねんっ!?」

 

「……あいつが、コロちゃん?」

 

 ドクグモンから救われた時に一瞬だけ出会ったあの腕が……『テト』と呼ばれたあの存在が、ピンクでまんまるだった『コロちゃん』? 

 

 再び頭が混乱してきた。

 

「テトは幼少期の俺の前に姿を現した。そして、俺は3歳と少しという年齢で、この世界を旅立った」

 

 旅立った? 

 

 タイトは私の……ううん、ママの目の前から少しずつ消えていった。光の粒がひとつひとつ消え去るように、体が透明になってどこかへ消えた。

 

 そのどこかへと消えたことが『旅立った』? 

 

 じゃあ、あのとき、あの場所で、タイトは本当にあの世界から『消えて』しまったことに『初めて』気がついた。

 

 

()()()()()()()()()()?」

 

 

 おかしなこと、いったいなんの話だろう? 

 私自身、タイトの話を聞いても別段深く疑問に思う点はない。

 

「おかしい」

 

 みなみが言った。

 

(えっ、わかるの!?)

 

 みなみが気がついたことに、私が気づけていないのが突如恥ずかしく思えてしまう。

 

「そうだよな……普通はありえない」

 

 タイトも同意する。

 

()()()()3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 至極真っ当な言葉に耳が痛い。

 

(たしかに!?)

 

 3歳児なんて親が近くにいないといけない年齢じゃん。転生者が周りにいすぎて、そのことが私の頭に入ってなかった。

 

「みなみのいう通り、それは正しい」

 

 タイトはその言葉に頷き、

 

()()()()()()()()()()()()

 

 その言葉を否定した。

 

 

「3歳でそれができるように俺は産まれたからだ(つくられた)

 

 

「それができるように、つくられ、た?」

 

 タイトの言葉がまた、理解ができなかった。

 

(タイトはなにかしらによって、作られた存在? 

 でも、たしかにママのお腹から生まれて来た。その写真も家に残っている。でも……)

 

 あれはなにかしらの確信のある目だ。

 

「俺は『赤子』の肉体に『転生させた存在』によって、魂に『とある人間の記憶』と『別世界のデジタルワールドの記憶』を植え付けられた」

 

『植え付けられた』……物騒な言葉だ。でも、私とアクアにも言えるかもしれない。

 

「植え付けられた?」

 

 教授がその言葉に聞き返す。

 

「俺には赤子の頃から人並外れた知識を植え付けられ、世界を……いや」

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「……なに、それ」

 

 言葉が出ない。

 

 タイトが、人類を守る為に生まれて来た? 

 ただの人……それもたった一人の人間が、世界を救う為に生まれ変わらされて来た? 

 

 タイトはいったいどれほどの重荷を背負って来たのだろう? 

 

「理由は2つ」

 

 タイトが指を2本見せつけるように立たせる。理由を聞かせる時の仕草だ。

 

 

「ルビーとアクアと『同じ腹』から産まれたこと」

 

「もう一つは、俺の産まれた世界に『人間を憎むデジモン/ケモノガミ』がいることだ」

 

 

 二つの指を見せびらかすように動かし、理由について印象付けさせられる。たった二人で立てた仮説を、『本当の事』のように話すタイトの仕草に、私自身魅入られていく。

 

 

「後者の『対抗手段(カウンター)』として俺とテトはこの世界に送られた。人の世になった今でも、『人』を恨み、『呪い』のように『世界を滅ぼす計画を立てる『(ヌシ)』への対策として、俺を転生させたと俺とノルン様は考えている」

 

 

 タイト自身はあっけらかんと言うその姿に、この世界の禁忌に触れるような話を聞かされ、私自身背筋に感じてしまう。

 

 

「そして、なぜ前者の下に産まれたのかと言えば、通称『釈迦』……いや、『悪意ある者』と最も『因縁深き存在』の近くに産まれることで、『悪意ある者』といつでも戦えるようにそこに置かれたというのが正しいだろう」

 

 

 タイトの産まれた理由に先程明かされた『釈迦』の存在、『私』と『アクア』の立ち位置……そしてなによりも、ママの命が狙われた理由。その全てがひとつの『仮説』の下、成り立ってしまった。

 

 

「まっ、俺を生まれ変わらせた存在は、『それでも力が足りない』と思って別の世界へと飛ばしたみたいだがな」

 

 最後に、『所詮仮説だがな』……という一言を加えて、話は終了した。

 

 

「……『別世界』」

 

「『釈迦』に『転生させられた者』」

 

「『主』と『ケモノガ……『デジモン』」

 

「『世界を滅ぼす計画』」

 

「『私』と『姉さん』の産まれ」

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 みんな頭を抱えてしまう。

 タイトから聞いた話は、日本……いや、世界の起源を揺るがすもので、今の私達には壮大で想像もつかない話だった。

 

「……っと、時間だな」

 

 タイトのその言葉を聞いて、黒板の上に立てかけてある大きな置き時計を見る。時間は夜の10時過ぎ。いつのまにかそんな時間になってしまっていた。

 

「それじゃあ、質問会を終了する。あとはゆっくり寝てくれ」

 

 タイトはそう言って片付けを始める。

 

「ねえ、最後に質問いい?」

 

 私はその中で唯一『疑問』に思ったことを聞いてみる。

 

「なんだ?」

 

 

 

「『世界の滅びっていつやってくるの?』」

 

 

 

 

 

 




『アンケート結果』

今後も前書きに作品を書いてほしい 3票
前書きに書かないでほしい 3票

上の欄を見てわかるように、ちょうど半々に別れました…………私が煽ったから悪いのでしょか?

これでは決められないので、1日程結果を待つことにします。私が次の票が入ったことを確認次第、アンケートを終了したいと思います。どうぞ、後一票よろしくお願いします。
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