初めて見た時は『可愛らしい女の子』だと思った。
老若男女、数多の人間を魅了できるほどの『圧倒的』美貌。男の子だと聞いたとき、少しだけ嫉妬してもうたぐらいだった。
入学当初は男子からの圧倒的支持と、嫉妬に塗れた女子からの対立、教師達は親が親なので腫れ物に触るような扱いをしていた。
噂を聞いたとき、『よくわからへん人』だと思った。
親の仕事の関係上あまり学校にはこれへんなか、学校内外問わず多くの人助けをして、善を尊び悪を許さず、傲慢な者を叱咤し、社会的弱者を救済する……普通の子供ではない、変な少年って噂だった。
それが、思春期の子供には気に入られなかったのか、それとも本人の傍若無人なら態度が悪かったのか、周りのクラスメイト……いや、子供のグループ全体も、少しずつ教師達と同じように腫れ物を扱うような存在として見るようになった。
それでも、『彼』は変わらへんかった。
友人は3人……『彼』自身とおんなじぐらい可愛らしい少女の『星野ルビー』と、思春期らしい……といえば聞こえはいいものの、ナンパや馬鹿騒ぎの常習犯の『平田龍我』と『妹尾茂』とつるんどった。
ルビーはわかる。
入学当時からの友人で、本当の『彼』の『姉』……今思えば、『彼』が気にするのも当然であった。
残り2人だ。
腫れ物に扱われるような相手となんでつるめるのかと、後に聞いてみた……そしたら、
『俺ら入学してすぐにやらかして、学校内じゃあいつと変わんねえからなぁ』
『そうですね、入学当初はなんで女子に嫌われるような犯罪紛いなことをやっていたんでしょう?』
『……そのせいで女子からは総スカンだけどな』
『構ってくれる星野さんと寿さん以外、女子から嫌われてますからね……僕ら』
『まあ、『あいつ』が関わってくれるおかげで、こんな美少女とつるめるんだから役得だよなっ!』
『そうですねぇっ!』
あははと笑う彼らに、少しだけ拍子抜けだ。そんな理由で『彼』とつるんどるとは思っとらんかったからだ……ただ、そんな理由と納得できないからこそ、『彼』と仲良くできるのだと後に知ることとなった。
『彼』が本格的に腫れ物と扱われる原因となった事件があった。
『
もともとは女子からの嫉妬やった。
第二次性徴が早かったウチは、両親の血の関係もあってか小学校を卒業してすぐとは思えない程の体型を手に入れた。グラビアの雑誌から出てきたような自身の身体と子供の精神のギャップと、生徒・教師問わず、周囲の視線の変化に少しずつストレスが蓄積しとった。
でも、本当の問題はそれではあらへんかった。
本当の問題は姉妹校である『秀知院学園』にいる『とある少年』に目をつけられたことだった。
最初は女子からのイジメだけだった。
悪口を言われたり、授業中にハブにされたり、物がなくなったり……そんな日々が続き、虐められていることに気がついた。
その次は、男子からのあからさまな目線の変化やった。身体的特徴が一気に成長しはじめた時やった。胸や臀部に向けられる気持ち悪い視線が、ものすごく気持ち悪かった。
体育の授業が一番嫌やった。
水泳の授業が一番嫌やった。
その次は女子からの暴行やった。
殴られたり、蹴られたり、悪口を面と向かって言われたり……特に、親譲りの方言を馬鹿にされることが辛かった。女子の筋力は男子よりも弱くて痣になりづらかったけど、それが女子達の暴力に拍車をかけていった。
どうしても嫌で家族や先生に言うたが、金や権力、ウチら一般家庭の弱みに物を言わせるような相手の態度に、誰も敵わへんかった……そもそも、先生は味方じゃあらへんかった。
そのときに初めて『秀知院』の学生が関わっとることを知った。
……そして、『事件』は起こった。
『秀知院の学生』が初めて学校にやって来たのだ。
相手が一般家庭の子供だったから、奴は躊躇もなくウチを襲いに来た。
男子は気持ち悪い視線を向けた。
女子は嘲笑うかのような優越感に浸る表情を向けた。
教師はウチの方へと視線を一切向けなかった。
そのとき、初めて『ああ、誰も助けてくれへんのやな』と思った。
「ーーーーざっけんなっ!!!」
「ーーーーてめえっ!!!」
ーーーーバギィン!!!
「ーーーーひぎゅっ!?」
「なにをするんだ!?」
「キモイんだよっ!!!」
「女の子に手を上げるの!?」
「知るかっ、俺はてめえみたいな『ゴキブリ』は大っ嫌いなんだよっ!!!」
「……私は、教師なんだぞっ!!!」
「教師ならなんで自分の生徒を守んねえんだよっ!!!」
「ーーーーおっ、俺は、『秀知院学園』の……それも、『 会社』の息子なんだぞっ! お前みたいな一般人がこんなことをやってみろっ! 絶対に地獄を見せてやるからなっ!!!」
「黙れ」
「お前みたいな『ウジ』……いや、虫にも劣る下賎な存在にいいことを教えてやるよ」
「俺はカミシロコンポレーション『EDEN』開発部門トップ、並びに独自研究『精神のデータ化理論』を構築・実証、民営化全てを成した男」
「『末堂アケミ』の息子だっ!!!」
彼はなんども、なんども殴り続けた。
彼を止める
でも、一番印象に残っとるのは、
『────もうやめてっ!!!』
ルビーが血濡れた『彼』の腕を止める。そのとき、『愉悦』と『殺意』と『憤怒』に塗れた『彼』の表情が、『後悔』へと変わった。
『────何の為に……俺はっ!!!』
『彼』は血濡れた教室で、なにかに向かって叫んだ。
『あの言葉は『うそ』だったのかよっ!!!』
なにが『うそ』だったのかわからへん。
『違う、違うっ……信じないと、助けないと……』
血を流して倒れ伏す
『俺はっ、……俺は……間違ってなんか……』
ウチはなんにも言えへんかったけど、『彼』が『なにか』を間違えているのだと言ってるのだけは理解できへんかった。
間違いだったら、ウチは『救われてへん』からだ。
『…………ごめん、ごめんなさい』
『なにか』に向けて謝る『彼』。
その泣き顔が、どうしても『今』のウチと重なって見えてしまい、とても印象に残ってしもうた。
『ーーーーあんたはただのついでで助けられただけなの!!!』
民事裁判の日。
あの場にいた女子から女子トイレでそう言われた。
『次のターゲットは『星野ルビー』だった。だから、ついでであんたは助けられただけだったのよっ!!!』
恨みと愉悦と憎悪に塗れ、『彼』によってボコボコに骨を折られたその顔は、酷く醜くて、見るに耐えない物へと変わって……いや、それが『彼女』の本質なのだとすぐに理解できた。
『どうっ、自分を『お姫様』だとでも思ってんのっ、この豚!!!』
聞くに耐えない雑音に、その時は『なにも』感じなかった。
『あんたは『ただの付属品』……星野ルビーを引き立てる為の付属品でしかないのっ!!!』
トイレを出る時に最後に耳に入って来たのは、その言葉だった。とても耳障りで……『悲しく』感じた。
彼女の言葉を理解したのは、半年ぐらい経った後だった。
ウチの事件は大々的なものとなった。
イジメの主犯と関係者含め裁判が終わり、子供は少年院、教師はほとんどが退職にまで追い込まれ、学校の経営者が代わり、『姉妹校』との縁は切れ、ウチにとって平穏な生活がようやっと手に入った。
だけど、学校ではウチも含めて、『彼』のグループは腫れ物のような扱いを受けた。正しいことをしてくれたのに、そうなっとることが許せず、学校がさらに嫌いになった。
『次はこのボランティアに行くぞ』
『彼』はよく市役所に行った。
ボランティアに積極的に参加し、人助けをそこらじゅうで行っていた。
『……ありがとねぇ』
『別にいいよ。俺は好きでやってるんだからさ』
老人ホームで『マジック』をしたり、
『うぉおおっ、すげえっ!!!』
『ーーーーふふん、どうだ!!!』
障害子供センターでヒーローショーの物真似をしたり、
『ここで、最後だな』
『うん、だいぶ綺麗になったね』
被災地の復興の手伝いなど、様々なことをこの一年で『彼』についていくことで学んでった。
『なあ、タイトくん』
…………でも、
『…………』
『妹尾くん、もっとこっちも掃除してっ!!!』
『……はい』
『平田くんも、その瓦礫を早く運んでっ!!!』
『……おう』
『せっかく美少女と一緒に小旅行にこれたってってのに、なんなんだこれは!?』
『こんなことになるんだったら、参加するんじゃありませんでしたっ!?』
『つべこべ言わずにさっさとやる!!!』
『『はいーーーーっ!?』』
あの子のほうを見てたんや。
『……あっ!?』
あの子の足元の瓦礫が崩れそうになる。
『ーーーーっ、大丈夫か!?』
『…………うっ、うん!』
『彼』は有無も言わず、すぐに助けに行き、ルビーを抱えた。
『なんであいつらばっか恋愛漫画みたいなことやってんだよっ!?』
『………でも、これはこれで『百合』っぽくて興奮します』
それを見ているだけで、少しだけモヤっときてしまう。この感情はなんだろうか? ……とこの頃は思っていた。
『喉乾いたぁ〜』
『ほら、コーラっ!』
『……っ、ありがとう!』
『機嫌が悪そうだけどどうした?』
『アイドルのオーディションに落ちちゃったのっ!!!』
『……なら、気分転換にどこか遊びに行くか?』
『…………行く』
『試験勉強難しいよ〜』
『……俺の家で勉強会でもやるか?』
『ーーーー、うん!』
『彼』のプライベートの中心は確かに、ルビーで回っていた。
『じゃあ、行くぞ!』
『ーーーーうん!』
ルビーが困った時は助けていて、日常は本当に『お姫様』の物語にいるみたいやった。
『あんたは『ただの付属品』……星野ルビーを引き立てる為の付属品でしかないのっ!!!』
だから、『あのとき』の言葉がようやっと理解できた。
はじめ、諦めた。
『彼』とルビーの関係を知らなかったから。
知った後は、ワンチャンあるのではないかと思った。だから、アプローチを少しだけ、勇気を振り絞ってやってみた。
……それが、あかんかった。
あかんかったから、こないなことになってもうたのに……
「ーーーー
「なんでって?」
「
そないなことを言われてしもうたら、もうどうしようもあらへん!!!
「……さて」
「……ぐっ、ギ、ギッ」
タイトくんはギルモンの指を掴んで、睨みつける。
「メギドラモンをどうするか、だが……」
「『出力』もあの頃より下がってるし、遊んでる暇はないな」
でも、どうしてあんな大きな腕を止められるんやろ?
「寿は下がってて」
夜空色に煌めく世界がウチのほうを向いとるタイトくんを浮世離れしたように魅せる……って!?
「ーーーーハイッ!!!」
タイトくんに言われたように、抱かれた腕から離れ少しだけ後方の壁まで下がる。
「
そう言って、『
「……マナト殿っ!?」
広間を夜空色に照らしている……ということは、『
(早くっ、早く止めないとっ!!!)
俺は急いでマナト殿のところへと……っ!?
「そんなにあの小僧が心配か?」
目の前にピエモンが現れる。
「────どけっ!!!」
────ガンッ!!!
「────ガハッ!?」
左足での回し蹴りを入れ、進もうとするが……
「どうやら、アンタのニンゲンは相当無茶をやってるみたいだねぇ」
────キシャア
────シルルルル
────シルッ
「……アルケニモン」
アルケニモンと10体のシードラモンが俺の邪魔をしてくる。
(…………っ)
イライラする…………『雑魚』が並んで邪魔をしてくるのはこんなにもイライラするのか……と、『初めて』テト殿の気持ちがわかった。
「あははっ、このまま邪魔して、あんたのニンゲンを……」
────ン
「……し、る る?」
シードラモンが1体、音もなく細切れになって消えていく。
「もう一度言う……死にたくなければそこをどけ。もう俺は手加減は一切しない」
もう、俺は手加減はしない。
「……こっちもやり合おうか」
ピエモンが動き出したのを見て、ガルルモンがこちらを睨みつけた。
「ガルルモン」
私には君に伝えなければいけないことがたくさんある。だから、君に声をかける。
「なんだ、アキハル?」
「どうしても戦わなければならないのか?」
昔のように……と言いたいが、私も完璧に思い出したわけではない。
姉さんと共にこの世界にやって来て、君達ガブモンとレナモンと出会った。
それだけしか思い出せていないけれど、それでも前のように君と笑い合いたいんだ。
「……ああっ、俺はお前が憎い。お前みたいに呑気に探してたやつが許せねぇ」
ガルルモンは私を……睨みつけそう言った。
(……どのように答えるべきだ?)
実際に私は謝ることしかできない。
記憶もなければ、死にたくもない……そのような相手から憎まれて、どう動くべきか考える。
「……だから戦うと?」
横にいるレナモンが、代わりに質問した。
「レナモン……てめえはいいよなぁ。そんな『人形』になっても、相棒と一緒にいられて」
人形……一日中ほぼ寝ている事しかできない。あの姿になった姉さんのことか……たしかに、言い得て妙な例えだ。
「ふんっ、貴様が自身の相棒を信じられないだけだろ?」
レナモンはガルルモンを嘲る。
「だが、そいつと同じように元に戻ったミユキが消えない保証はどこにある」
ガルルモンが私を睨んで、そう言った。
生憎と、私の中に君の前からいなくなったときの記憶が戻ってない。そして、彼の発言に断定はできないのが、さらに申し訳なさを引き立てた。
「生憎だが、私にはどんなときでもミユキを裏切らなかった実績がある……貴様と違ってなっ!!!」
「裏切ったのは奴だ!!!」
「でも、こうして戻って来たのだろう? だったら、謝罪を受け入れて、もう一度やり直せばいい!!!」
「やりなおすだとっ、俺があいつを憎み、待ち望んだ時間はどうなるっ!!!」
「そんなもの、再会した相棒に比べれば瑣末なことだっ!!!」
「瑣末なんかじゃないっ、俺のあいつを待っていた時間はっ……そんなものではなかったっ!!!」
「だったら、直接本人と話し合えばいいだろう!」
「話し合うだと? そんな時間はもうないっ!!!」
「話し合うことを……それをできないから、お前が裏切ったって言われてるんだっ!!!」
うーむ、舌戦が繰り広げられているが、親しい者達が争い合うのは心苦しい……どうすれば、もっとわかり────
「────黙れっ!!!」
────ドン!!!
ガルルモンが大きく地団駄を踏んだ。
「教授様は水無瀬ミユキ様を連れてこちらへ」
今まで黙っていたクダモンに近づくように指示される。
(…………)
あの様子のガルルモンになにを言ったところで話は通じない。
「……わかった」
クダモンの判断が、賢明だとわかってしまったから、後方へと下がって様子を────
「────逃げるなっ!!!」
ガルルモンが走って突っ込んできた。
────ドンっ!!!
それを体当たりで止めるレナモン。
「────どけっ!!!」
目の前に立つレナモンに退くように怒鳴るガルルモン。怒りに塗れ、私のことを睨みつけている。
(……)
その姿を見て、物悲しく思えてならない。
「退く気はないさ、貴様みたいな気に食わなければ暴力を振るう愚か者のためにはなっ!!!」
ガルルモンの要求を跳ね除け、レナモンは光に包まれていく。
[
人型だったその姿は完全に獣へと変わり、
一本だった尻尾は九つに分かれ、
大きな紅白のしめ縄を首に巻く。
「『
レナモンの進化した姿がそこに発生したのだった。
「……進化、しただと?」
自力で進化したことを驚くガルルモン。
「別に驚くことではあるまい。貴様だって進化しているじゃないか」
「……くっ!?」
当然かのようにしたり顔をするキュウビモン。
(……これは!?)
明らかにキュウビモンに形勢が傾いていた。
「『
────ビュルルルルっ!!!
キュウビモンの尻尾の先から出る青い炎の龍達が、ガルルモンに向かって放たれる。
「……くそっ!?」
ガルルモンは必死に逃げ惑うも、
────バァン!!!
「────ぐはっ!?」
ガルルモンの胴体に命中した。
「逃すつもりはない。ここでケリをつけさせてもらう」
キュウビモンの背中には赤色の火球が浮かび上がってくる。
「……あいつとの戦いの傷がなければ、負けないのに」
(……あいつ)
たぶん、昨日のクダモンとの戦いの傷だ。
ガルルモンを余波だけで吹き飛ばしたあの一撃には、ガルルモンにそれほどの深い傷を残しているみたいだった。
「悪いが、こちらも切羽詰まっているのでな。すぐに終わらさせてもらおう」
赤い火球がいくつも増えていく。キュウビモンはトドメを刺すつもりだ。
(……でもっ!?)
ガルルモンの顔に諦めの表情はない。なにか仕掛けてくる気だ。
「キュウビモン、気をつけろっ!?」
「────っ!?」
私はキュウビモンに警戒するように声をかけた……そのときだった。
「────
「『フォックスファイアー』ッ!!!」
ガルルモンの口から出た蒼炎は、私に目掛けて吹き出されるを
「────なにっ!?」
キュウビモンはガルルモンの咄嗟の行動に驚いてしまう。
(俺の目的はアキハルに復讐すること……それさえできりゃあ、問題ねえんだよ)
(……ガルルモンの目的は私だったのか!?)
ガルルモンの攻撃の放射線状にいるのは……私だ。
「────くっ、『
火球がガルルモンの口に当たり、『フォックスファイアー』の出所はなくなったが、
「────っ!?」
放たれた炎の勢いは止まらないを
「────げほっ、無駄だぜ、もう命中する!!!」
ガルルモンは高笑いを上げるように、嬉しさが滲み出す声を上げた。
(……そうか、もうだめ、か?)
迫り来る炎にもう諦めた、その時だった。
「『
「あいにくですが、ご主人様の命によりこのお方には傷一つつけさせません」
(……そういえば、クダモンが守っていてくれたな)
あまりにもこの状況に参加しないので、その存在を忘れてしまっていた。
「────てめえはっ!?」
「旧知の中にしか目がいっていなかったようですね……以前と同じように、滅してやりましょうか?」
「黙れっ、俺は負けてねぇ!!!」
「教授の『お情け』で生き残ったんですものね。引き分けにしといてあげますよ」
「────俺はっ、負けてねぇ!!!」
クダモンは昨日、ガルルモンに単独で勝利し、私の言うように見逃してくれた。
そのことがガルルモンのプライドを大きく傷つけたのだ。
「『フォックスファイアー』ァ!!!」
もう一度私を狙った一撃。
「────『
その青い炎は、同じく炎でできた龍によってかき消される。
「……そん、な!?」
ガルルモンはショックを受け、跪いた
(必殺の一撃を、真正面からキュウビモンに打ち破られたのだ。しょうがない)
「この場でっ!」
トドメを刺そうとするキュウビモン。
「待ってくれ」
それを止め、
「────っ!?」
私はガルルモンの前に立った。
「ガルルモン、君の負けだ」
倒れている彼の視線に合わせるように、しゃがんで見せる。
「……俺っ、は」
負けていない……とでも言いたげな様子だが、私はもう戦いたくないのだ。
「私は君ともう一度話し合いたい」
私は彼に本心を向ける。
「────っ!?」
昨日からずっと考えていた言葉を、口に出す決心をした。
「きっと忘れてしまったこともあっただろう。君が辛かった時には側に居られなかったのも私の責任だ……どうしても許せないというのであれば、なんどだって謝罪しよう」
今の私には謝罪することしかできない。
待たせた時間を返せるわけじゃないし、命だって渡すつもりはない……それでも、
「だけど、私はもう一度君とやり直したいと思っている。どんなに時間をかけたっていい。それだけは理解してくれ」
それでも、君と昔のように笑い合えたのならどんなにいいかと考えてはいるんだ。
「……俺、は?」
「ほう、あちらも楽しそうに戦っとるな」
目の前の巨大な首長竜はそう言った。
(……こいつ)
(こいつ)
雷のような角と金色の兜に派手な赤と白の鱗……それが、鎧となって攻撃を弾くのが想像できる。
(今まで戦って来た敵の中で一番強い)
(強い)
私とブイドラモンの意見が完全に一致する。
「……それで、いつまでお主らは動かぬつもりなのだ?」
だけど、
怖い進化を果たしたギルモンを止めるタイト。
弱い私の代わりに、たくさんのデジモンと戦ってくれてるユイ。
ミユキちゃんを守ってくれてるレナモンとクダモン。
(みんなが戦ってる以上、負けるわけにはいかない)
私は覚悟を決めた。
「────ねえ」
「なんだ、小娘?」
「今まで戦ってきた相手と話したことがなかったから、聞きたいんだけどいいかな?」
「……ルビー?」
時間を稼ぐ為に質問をする。そうすれば、敵を倒した誰か味方が助けに来てくれるかもしれないからだ。
「ほう、なかなか度胸のある娘だ……ふむ、そなたたちでは、我には勝てないであろう。冥土の土産とやらで聞いてもよかろう」
「……そう」
私は敵にずっと聞きたかったことがある。
「なら聞くんだけど、『なんであなた達は私達を贄として主に捧げるの』?」
私はあなた達にそれが聞きたい。
「…………知らぬのか?」
メガシードラモンは首を傾げる。いや、知らないわけないし。ちゃんとタイトから聞いてるし……でも、それでも、
「あなたからは聞いてないもん。それに死ぬ前くらい相手の気持ちってのを知りたいじゃん?」
相手を知ることでなにか得られる物もある……それが有意義出なくても、私はタイトからそれを学んだ。
「────ふむ、ならば話してやろう」
どうやら話すのが好きそうなデジモンだったみたいで、気をよくしたのか楽しそうにそう言った。
「このケモノの世界は『主』様が管理しとる」
「それは知ってる」
メガシードラモンは知ってることを自信満々に言ったので、バッサリと話を切ってやった。
「まあ、待て娘よ……少しぐらい話を聞け」
なんかちょっと焦ってる。
(きっと、主とか関係なければ友達になれたかもしれない)
そんなふうに思えるほど、好感が持ててしまった。
「我らの住む世界は少しずつ狭くなってきておる。外側から少しずつ削られるように少しずつ、少しずつ、な」
その話はタイトから聞いてなかった。
「…………」
ちょっと興味が持ててきたかもしれない。
「それを防ぐには『ニンゲン』のとてつもない感情が必要な訳じゃ。ニンゲンが持つ『感情』のエネルギーは、我らの世界にとってかなりの宝……あの小娘を見ておっただろう?」
そう言ってメガシードラモンは、ギルモンとタイト……そしてみなみを見る。
(……あの進化のことか)
ギルモンがみなみの『黒い』光によって影響されて、あんな巨大で怖そうな竜に進化したのだ。
(たしかにそれは、大きなエネルギーかもしれない)
私は少しだけ嫌な気持ちになった。
「……それで?」
だから、私はメガシードラモンに話を続けるよう促した。嫌な気持ちを忘れたかったからだ。
「そのエネルギーを使って主様は、この世界の維持をなさっとる」
人間を贄にしてるってのは、タイトの言っていたあの言葉は、そういうことかと思った。
『かつて、俺の行ったとある世界はこんなことになっていた』
『デジタルモンスターが進化できなくなっていた』
『その世界では、『昔』は進化ができていた。ただ、『俺』がいた現在ではそれができなくなってしまっていた……なんでだと思う?』
『ルビー達に渡した『初代デジヴァイス』のように、アイテムによって進化をする者達が現れた』
『デジモンは外的要因によって進化する』
『俺の知る世界では『人間の夢や希望』という外的要因がなくなったことにより、デジモン達は力を失い進化できなくなっていた。つまり、デジモンと人間との関わりを持つ力が失われたことによって、大きな弱体化を促した』
(『人間の夢や希望』)
それがなくなった世界は、進化すらできなくなっていた。そして、この世界の『主』が考えたのは、
(『人間を贄にすることで得た絶望で、世界を維持していた』んだ)
不愉快な気持ちになった。
「そして、より強大な力を得るには『ニンゲン』の感情が必要じゃ。それもこの世界を維持するのであれば、感情豊かな『ニンゲンの子供』が最も重要視される」
メガシードラモンはさらに不愉快なことを言った。
(人間の子供を……っ、『贄』にして絶望させて世界を維持するって!?)
不愉快が『許せない』に変わった。
「じゃから、我らはニンゲンを贄に捧げるのじゃ……他に質問はないか?」
メガシードラモンの話は終わった。
「────
もう、『こいつ』の話を聞きたくないって思った。
「もう十分わかった」
一度でもわかりあえるなんて考えたのが間違いだった。
「ならば、殺し合うか?」
そう冷たい目で睨むメガシードラモン。
「ブイドラモン」
私は心の奥底にある『怒り』を滲ませながら、『待つ』なんて自分の選択を否定しながら、パートナーの名前を呼ぶ。
「────ああ」
ブイドラモンの声音も怖いものへと変わっている。
「私、こんな奴らに『絶対に負けたくない』」
『仲間を待つ』なんて情けないことはしたくない。ここで全て終わらして、『勝利』するんだ。
「俺もだよ、ルビー」
ブイドラモンも私の隣に立ち、メガシードラモンを睨みつける。
(ああ、そうか)
(
それを思うだけで『勇気』が湧いてくる。絶対に勝てない相手に『勝ちたい』って強く思える……だからっ!!!
「
私の思いに呼応するように光輝くデジヴァイス。その光は、みなみなものと違い、暖かくて……そして、力強いものだった。
「────それが、そなた達が使う奇妙な力かっ!?」
メガシードラモンが光に目が眩むように目を細めながら、私達の『力』に驚く。
「みなみがどんな思いで、『力』を手に入れたのかわかんないっ!」
あのドス黒い光はどんな思いで生み出されたのかは、私には知ったこっちゃない。
「だけど、私は守る力がほしいっ!!!」
「ママも」
「アクアも」
「みなみも」
……そして、タイトも。
「みんなを守る力がほしい!!!」
大きな声で宣誓する。
それが叶うように、それを叶える力を強く欲するように、願い信じる。
「だから、答えてデジヴァイス。私はもっともっと強くなって、あいつを倒したい」
絶対に倒したい。
他の誰かが助けてくれるまで待つんじゃない。自分たちの力で、目の前の逆境を超えるために、力がほしいのだ。
「
もう逃げない。
もう諦めない。
もう絶対に後ろを向く必要のない力を……私は望んでいる。
「────だからっ、
「
光輝くブイドラモンの体。
「俺の中に眠る力が溢れ出してくる」
少しずつだけど、体の形の変化が見える。
「絶対に負けたくない相手が目の前にいる」
目の前の敵を倒す為に、目の前の逆境を乗り越える為の体に作り変わってる。
「だから、俺はっ……俺は────っ」
[
光が爆発する。
そして、光は収束し、一つの形に変わっていく。
強者と戦った証である歴戦の傷。
穴が空いているはずなのに、決して損なわれない……むしろ力強く羽ばたいている巨大な羽。
敵を打ち砕かんとするブイドラモンの姿が、さらに力強く変化したその姿は、
「『
天空の覇者となりて、この世界に顕現した。
「…………エアロ、ブイドラモンだと?」
突然の進化にメガシードラモンが固まっている。
「すごい、羽が生えた」
羽をバタつかせるエアロブイドラモン。
「────うわっ!?」
「ルビー、大丈夫か!?」
たった数回の羽ばたきで、砂煙が巻き起こるほどの大きな風を巻き起こした。
「……これなら、あの戦いについていける」
そう、私は思えてしまった。
「────ルビーっ!!!」
手を伸ばすエアロブイドラモン。
「────うんっ!!!」
私はその腕に乗って、肩まで駆け上がる。
「ニンゲンがデジモンの肩に乗るだとっ!?」
メガシードラモンにはわからないだろう。
「私はもう後ろで戦いを見ているわけじゃない。エアロブイドラモンと一緒に戦うんだ!!!」
私自身も理解できないけど、それでもそう『今』決意したんだ。
「────黙れっ、ニンゲンにそのようなことができるものか!!!」
戦いの場に人間が紛れ込んだことに怒りを覚えたのか、額の角に電気のようなものが集まっていく。
「『サンダージャベリン』」
額の角に集まった電気は『雷の槍』に変わり、
────ズガァン!!!
その雷は、『さっきまで』私達がいたところに落雷した。
「────なにっ!?」
そう、私達はもうそこにはいない。
「……遅い」
「エアロブイドラモンは既に、お前の後ろにまわっている」
羽が生えたことにより、ブイドラモンになかった高軌道を手に入れたエアロブイドラモン。そのおかげで、ファングモンですら及ばない『
「────っ!?」
背後にいることに動揺し、動きが乱れるメガシードラモン。
────ガシリ
その隙に尻尾を左腕で思いっきり掴んだのだ。
「これで動きを止めたな?」
もう逃げることはできない。仲間の────
「
瞬時に近距離での『サンダージャベリン』で攻撃したメガシードラモン。
「「
────『バシンっ』、ゴロゴロ、ゴロっ!!!
「────なんだとっ!?」
『サンダージャベリン』を右腕で地面へと弾き飛ばしたのだ。
「俺の『竜』の体は生半可な攻撃は効きはしない!!!」
エアロブイドラモンの体には『傷一つ』ついていないのだ。
「────ならこのまま締め上げてやる!!!」
長い尻尾で決め上げようとするが、
「締め上げる、どうやって?」
────バラバラ、バラ
「……っ、うぐあっ!?」
既に腕と翼についている『エッジ』で切り取り済みだ。そのせいで、先程の三分の二ほどしかなくなった体は、バランスを崩して地面に這いつくばるしかできなくなってしまった。
「────尻尾を、貴様っ!?」
メガシードラモンに睨まれるが、奴の攻撃手段はもうない。
「このまま終わらせてやる」
エアロブイドラモンの両手の中に、エネルギーが充填・形を変え、目の前にいる敵を屠る『竜』の姿へと変化する。
「────やめろっ!?」
メガシードラモンは、地面に這いつくばりながら逃げようとするが、私もエアロブイドラモンもこいつを逃すつもりはない。
「『ドラゴンインパルス』!!!」
竜の波動がメガシードラモンを呑み込み、弾き飛ばしていく。
「ちくしょぉおおおお────っ!!!」
そんなメガシードラモンの声を聞くが、最終的には波動によって飲み込まれて、チリ一つ残さず消えてなくなってしまった。
「……勝った」
勝てないと思えた相手に勝ってしまった。達成感と疲れで座り込みそうになるけど…………
「うん、でも…………」
わかってる。
「まだ、戦いは終わってない」
まだ、みんなは戦ってるのでどうしようかと考えた時…………
「────どうした、そこまでか?」
ひさしぶりに解禁した禁じ手『デジソウル』。以前よりも遥かに弱くなっている……が、
「────グルぅっ」
メギドラモンを片手間に倒すぐらいなら、余裕みたいだ。
倒れているメギドラモンを見て思う。
(周囲の『霧』は晴れないみたいだな)
核や心臓……みたいなものがない以上、『霧』への対抗手段は今の俺にはない。
(ユイを進化させなければ、聖なる光で弾き飛ばせるんだけどな)
近くにいる寿の初代デジヴァイスも、危険な光を放っていて信用できたモンじゃない。
(寿がなにを思って『暗黒進化』させたのかはわからない……が)
昨日の今日で、成熟期を究極体に参加させられるのは才能としか言いようがなかった。
(……コントロールさえ身につければどうとでもなるか?)
そんな考えをしていると、
「グキ、ギャアアアアアッ!!!」
『ヘル・ハウリング』
目の前で倒れているメギドラモンが、大きな叫び声を衝撃破に変えて攻撃してきた。
「────タイトくんっ!?」
────ゴギィイン!!!
「────ギャハッ!?」
「はいはい、黙ってようね」
思いっきり背中に向かって踵落としを喰らわせた。そのおかげで、メギドラモンは動けなくなっている……が、
(だめだな、威力がかなり低い)
以前なら一撃で退化まで追い込めた。
(これじゃあ、ダークナイトモンクラスには太刀打ちできない)
ダークナイトモンに傷一つつけられないぐらい、弱い出力でしかデジソウルが出せなくなっていた。
(……それに)
デジソウルを解禁して、もうそろそろ5分ぐらい経つ。そろそろ決着をつけないと、『時間切れ』になるな。
「もっと力を振るっていたいんだけどな」
全力で運動するのはひさしぶりだし、少しぐらい名残惜しけど、
「これで決める」
握り拳に力を集めて、倒れているメギドラモンに向かって全力で振りかぶる。
「頭」
角を折り、
「顎」
顎を砕き、
「肩」
肩を壊し、
「腹」
腹を割る。
「尻尾」
尻尾を掴んで
「────おぉおおおお、ラァっ!!!」
地面になんども叩きつける。
「────ギルモン!?」
寿の悲鳴が上がる。
「終わりだっ!!!」
────バギィン!!!
寿の近くの壁に思いっきり、メギドラモンをぶつけた。
「────グギ、ぁ……っ」
メギドラモンの体が縮んでいく。そして、見慣れたギルモンの姿へと姿を変えたのであった。
「────ギルモンっ!?」
寿がギルモンのところへと走っていく。
(よしっ、退化した!!!)
ある程度弱体化していたとはいえ、退化させられるぐらいにはダメージを与えられていることに嬉しく思う。
「タイトくん、ありがとう」
「別にいいよ!」
寿が倒れているギルモン恥ずかしそうに、ありがとうって言ってくれた。それだけで、少しは『禁じ手』を解禁した甲斐があった。
「────それよりっ!」
まだ、時間はある。
ユイのところへと行って、ピエモンをぶっ倒しに…………?
「……あっ?」
あれ、地面が近い?
ああ、そっか。
九本の尻尾をはやした巨大な狐の姿をした妖獣型デジモン。破滅と崩壊をもたらす妖獣と恐れられているが、古の時代では平和の世に現れる使者として崇められていた。レナモンの中でも特に能力が高く、多くの経験を積んだものがキュウビモンに進化できると言われている。攻撃力そのものは強くないが、強大な精神力を持っており“術系”の技を得意としている。青く燃え盛る四肢で天をも駆けると言われている。得意技は鬼火を出現させ意のままに操る『鬼火玉(おにびだま)』。必殺技は尻尾から燃え盛る青炎の龍を出現させ敵を焼き尽くす『狐炎龍(こえんりゅう)』。
ブイドラモンが更に進化し、空中での移動が行えるようになったのがエアロブイドラモンである。希少種であるブイドラモンの中でも、数々の戦いをくぐり抜いて来た歴戦の強者のみが進化できると言われ、その存在はもはや伝説となっている。翼を得た進化だけではなく体の各所がより格闘的に進化し、より高い攻撃力と防御力を身につけている。そこに空中からの攻撃を加えれば、もはやエアロブイドラモンにかなう敵はいないであろう。必殺技は鼻先のツノと翼のエッジ部分をつなぐようにV字状のエネルギー体が形成され、敵に向かって飛んでいく『Vウィングブレード』と、竜の形をした衝撃波を飛ばす『ドラゴンインパルス』。『Vウィングブレード』は翼の剣が敵を切り裂く技だが、飛行中でないと使用できないのが欠点。
「あっちも終わったみたいだな」
「ーーーーくっ!?」
ピエモンに剣を突きつける。
「俺もすぐにあっちに行く……つまり、お前にトドメを刺す」
「私はまだっ……!?」
「ーーーー終わりっ!?」
ーーーー
壁に大きなヒビが入ったのが見える。メギドラモンが攻撃したところが、崩落したのだ。
「隙を見せたな!!!」
ピエモンが逃走した!?
「ーーーー待てっ!?」
俺はピエモンを捕えようとするが、
ーーーードオンッ!!!
目の前に崩落した岩が落ちてきて、その隙ににげられてしまう。
「それじゃあ、私達も逃げさせてもらうわね」
アルケニモンが隙間から、
「……悪いな、アキハル」
ガルルモンが瓦礫を避けながら、下水道の出口の方へと消えていく。
(……くっ、アルケニモンとガルルモンを逃してしまった)
だけど、それ以上に大切なことを思い出した。
(マナト殿はっ!?)
上空から周囲を見渡すと、寿みなみの横で倒れているマナト殿とギルモンを発見する。
「ーーーーマナト殿っ!!!」
寿みなみの隣へと着地し、倒れているマナト殿の診察を行う。
「タイトくんがギルモンを倒した後、すぐにこんな状態になっちゃったの!?」
マナト殿の腕や足、腹からは、『オレンジ色』のデータが浮き出ており、死にかけているのがすぐにわかった。
(肉体の崩壊が始まってる。早く治療しないと!?)
マナト殿のクロスローダーに接ぞ……っ!?
「ユイ、……早く、追って……倒……っ!?」
マナト殿が敵を倒せと命令してくる。
(……そんな場合じゃないのにっ!?)
急いで接続しようと『イグドラシル権限』を起動しようとする。
「……っ!?」
マナト殿が大きく仰け反る。
「ーーーーマナト殿!?」
「タイトくんっ!?」
急いでバイタルの確認。
血圧、心拍数問題なし、呼吸もしている……だけど、体温が下がり始めてる!?
「…………」
マナト殿からの反応はない。気絶しているみたいだ……気絶?
(……てことはっ!?)
体が急速に縮むのを感じる。クロスローダーから送られてくるエネルギーが切れ、自身の体が退化し、ムーチョモンの姿に戻ったのだ。
ーーーーズドォオオンッ!!!
「ーーーーひえっ!?」
大きな岩が天井から落ちてきて、みなみの近くで大きな物音を立てて破裂した。
(またかっ!?)
ヒビが広がり、時期にこの部屋が崩れ落ちるような気がした。
(このままじゃ、マナト殿の命が危ないっ!?)
すぐに安全な場所に避難しないと!?
「ユイ、どうすればいいの?」
寿みなみが寝ているギルモンに肩をかすように担ぎながら、こっちに質問してきた。
(…………ここはっ!)
[ムーチョモン 進化]
「アカトリモン!!!」
アカトリモンに進化して、逃げ道を探す。
「すぐに避難する、俺の背中に乗って……」
まだ、全員と合流できていない。今のままだと、他のメンツを置いて行くことになる。
(……くっ!?)
現状確実に助けられるのは、寿みなみとギルモンだけだ。マナト殿ならどうする!?
(どうすれば、ここにいる全員をーーーー)
その時、青白の影が視界の端にやって来た。
「みなみ、大丈夫!?」
ルビーと……ブイドラモン? であった。
「ルビーっ!?」
「ブイモンも、その姿はっ!?」
ルビー殿は巨大な羽を持つブイドラモンの肩に乗っている。
「『エアロブイドラモン』……完全体に進化したんだ」
大きな羽を広げ、そう宣言する『エアロブイドラモン』。
(完全体に……っ、これならっ!?)
ーーーーズドォオオン!!!
さっきから崩落が激しい。すぐに逃げないとっ!?
「おーいっ!!!」
「教授!?」
教授が黄色いデジモンに乗って、俺達と合流した。
「レナ……キュウビモンっ!?」
「タイトくんを早く乗せてくれ。ここからすぐに脱出する」
「ーーーーわかった」
「ご主人様はっ、ご主人様はどうなったんですの!?」
「それも後で話す。すぐに出発するんだ!!!」
俺達は走った。
幸い崩落はあの部屋だけだったようで、なんとか逃げ延びることができた。
「…………」
マナ……タイト氏は未だ寝ている。『拙者』は治療を終え、なんとか肉体の崩壊だけは防げたものの、今回の戦いは間違いなく『敗北』であった。
「ーーーーご主人様」
心配そうにしているクダモンを見ながら、夕陽を眺めたのだった。