産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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俺にとって、主人公(ヒーロー)とはどんな存在だったか?


幼年期(小さい頃)は『オメガモン』だった。
オレンジの竜の剣と水色の獣の大砲、白く輝く体に、圧倒的に強かったバグラ軍と戦ったと伝えられている物語、最強の『白い騎士』のデジモン。

そんなデジモンに憧れて、一人と二体の門戸を叩いた。

人間のパートナー(ジェネラル)を得れば、更なる力を得ることができると知っていたからだ。

その力を手にすることができれば、『世界』を救えると心の底から信じていた。

結果力を手にすることができた。


今の『拙者』の主人公(ヒーロー)は1人と2体。


タイト氏とテト殿とシン殿だ。
足を引っ張ってしまった俺の代わりに、『白い騎士』になってくれた。

世界を救ってくれた。

世界は救われた。

世界を救う為に戦ってくれている。

……それだけで、『拙者』はもう満足だった。

物語を読むのが好きだった。

主人公みたいに戦うのが好きだった。

主人公のようになるのが夢だった。





でも、『拙者』はムーチョモン(脇役)で満足した。




()()()()()()()()()

だって、目の前に主人公(ヒーロー)がいるし、人を助けるし、『拙者』も救ってくれるし……なにより、『拙者』自身が『脇役』で満足したのであります。

だから、死ぬのも怖くないし、奪われるのも全然許すことができらのであります。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


テト殿が助けてくれる。

タイト氏を助けてくれる。
それだけは確信しておりますがゆえ、安心して死ぬ(いく)ことができるのであります。

それなので、ここでもう終わるのは満足なのであります。


(……ああ、でも)


タイト氏とテト殿とシン殿(拙者の主人公達)の物語を最後まで見たかったのでありますなぁ。



ーーーーザクっ。


痛みが来ない。

いや、それ以上に目の前の光景に驚き、そして動けないでいる。


「ーーーーマナト殿ぉオオオオオオオっ!!!」


目の前には『伊由太加の剣(いらたかのけん)』で貫かれたマナト殿がそこにいた。



第二十三話 ユイvsピエモン かつての想い、今成就して

 

 

「────マナト殿ぉオオオオオオオっ!!!」

 

 

『なぜこうなったのだろう』

 

『なんでもっと早く行動しなかったんだろう』

 

『なんでもっと準備しなかったんだろう』

 

 

 そうやって後悔するのは、今に始まったことではない。なんどもなんども後悔したし、なんどもなんどもやり直した。

 

 それでも、今ある程度納得できているのだから、きっとなんどでもやり直したとしても、選んだ決断に後悔はなかったのだと今なら思える。

 

 

 ……ことは、今から10分程前に遡る。

 

 

 

 ダムを渡った先の森の上空に位置する場所にて……

 

「タイト氏、敵は?」

 

『拙者』は左脇に抱えたタイト氏に頼る。

 

「今はまだいない……と思う。悪いけど、気配がうまく感じ取れないんだ」

 

 タイト氏は首を振ってそう答えた。

 

「……怪我が原因、でありますか?」

 

「いや、『アンプル』が馴染んでないのが原因だと思う」

 

『アンプル』……茶色だった髪に紅色が混ざっている。影響はこんなところまで出ているのかと悔しく思う。

 

「……そうでありますか」

 

 それ以上に、修行不足による自身の『探知能力』の低さと、こんな体のタイト氏に頼らなければならない現状にさらに苛ついてしまう。

 

「水無瀬ミユキ……あんたは体調はどうなんだ?」

 

「……大丈夫」

 

「…………そっか」

 

 そんなことを思っていると、森から街へと視界の様子が変わっていくのが見えた。

 

「もうすぐ街の上空へと辿り着きますぞ!!!」

 

 そう声をかけ、警戒するように暗に促す。二人は肯定するように頷いたのが見えた。

 

 

「……敵が来ないな」

 

「そうでありますね」

 

 街の上空を飛んで3分、敵からの襲撃の様子は一切ない。それどころか不気味なくらい街の静けさを感じる。

 

「…………」

 

 タイト氏がじっくりと街を見る。

 

「…………」

 

『拙者』も街を見渡すが、気配は一切感じられ

 

 

「…………っ、ユ────っ!?」

 

 

 突如、タイト氏が大きな声を上げた途端、

 

 

 ────ザクッ!!! 

 

 

 大きな音が鳴り響いた。

 

「────っ!?」

 

 背中付近からの大きな痛みと、体が大きく左側にバランスを崩したのを感じる。

 

(敵襲だ!?)

 

 

「緊急着陸をするのであります。拙者の体にしがみついてくだされ!!!」

 

 

「────悪いっ!!!」

 

 タイト氏と水無瀬ミユキ殿が体をしっかり掴んでくれたのがわかる。

 

「そのようなことを言っている場合ではありませぬぞっ、御二方、早く歯を食いしばってくだされ!!!」

 

 話を終わらせて、また地上へと着陸するための準備に入る。

 

「────っ!」

 

「…………っ」

 

 二人を抱えながら、足を前に出して着陸の姿勢に投入。

 

 

「着陸するのですぞ!!!」

 

 

 ────ズドンっ!!! 

 

 地面が削られた大きな音と、『拙者』達の周りにある大きなクレーターの中心に着陸することができた。

 

「……御二方、大丈夫でありますか?」

 

 あたりは森、遮蔽物が多く敵の居場所が見当たらない。

 

「こっちは大丈夫……水無瀬ミユキは?」

 

「私も、大丈夫です」

 

 どうやら二人の……っ!? 

 

 

「……ほう、水無瀬の巫女も一緒とは珍しい」

 

 

 目の前にピエモンとアルケニモンがいた。

 

(……この剣はそう言えば)

 

 背中を……いや、羽をよく見ると見覚えのある剣が刺さっている。昨日ピエモンと戦った時に使っていた物だ。

 

「司祭様、早く巫女を捕まえましょう!!!」

 

 アルケニモンは狂気の混じった笑みで、ピエモンにそう言うが・

 

「……まあ待てアルケニモン、奴がいる」

 

 ピエモンはこちらを見て、アルケニモンを止めた。

 

(……奴?)

 

 そう思ったとき、

 

「…………っ!?」

 

 アルケニモンもこちら……というより、タイト氏を見て動きを止めた。

 

(……もしかしてっ!?)

 

 タイト氏がデジソウルを使えるのではないのかと警戒してる? 

 

(だったら……)

 

 それを軸に打開の策を────

 

「……ピエモンとアルケニモン」

 

 水無瀬ミユキがそう言った時、

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 ────ガシャン

 

 ────ガシャン

 

 ────ガシャン

 

 

 ガシャン、ガシャンと音を立てながら、森にそぐわぬ茶色のロボット達が森の中から現れた。

 

「これはっ!?」

 

「ガードロモン*1だとっ!?」

 

 十の数を越えるほどのガードロモンがタイト氏に向かって銃口を向ける。

 

「…………」

 

 必死になって考える。

 ピエモンとアルケニモンだけならよかった。でも、目の前にいるタイト氏を狙うガードロモンの猛攻を避けながら、ピエモンと戦うのは羽が使えなくなった『拙者』には無理だ.

 

「…………」

 

 打開の策は……ない。

 

「…………っ」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!!! 

 

 

「────ピエモンっ!!!」

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

「……、────っ、なんのつもりだっ!?」

 

 ピエモンは危なげなく水無瀬ミユキを抱き止めるが、動きが鈍くなった。

 

「水無瀬の巫女が欲しかったんだろ? 連れていけ」

 

「だからなんのつもりだと聞いている!?」

 

「……あいにくと本調子ではなくてね、足手纏いを守りながら戦うにはいささか厄介なんだよ」

 

「…………っ!?」

 

 計画通り会話をしながら、背後へと下がっていく。少しでも間を開けて、敵の攻撃の射線上から離れる。

 

「…………」

 

 悩むピエモン。

 そうであります……不測の事態に困惑するのは当然であります。そして、目の前の負傷した敵と、自身の主の第一目標であった『水無瀬の巫女』の確保……忠臣と考えている部下ならどちらを選ぶかは必然であります。

 

「…………」

 

 ピエモンは悩みながら、一つの答えを出した。

 

「アルケニモン、巫女を連れていけ」

 

「────司祭様っ!?」

 

 驚くアルケニモン。

 

「生憎だが、こちらも『巫女』が手に入ったのなら優先事項が変わる。『主』様の復活の為、早急に祭壇へと連れていくのだ!!!」

 

 目の前の敵よりも、主への忠誠が勝った証拠だ。

 

「ですが私にもこいつらと戦う理由がございます。戦わせて────」

 

「────くどいっ、さっさと行け、殺されたいのかっ!!!」

 

「…………はっ!」

 

 アルケニモンは食い下がるが、ピエモンに剣を向けられ、しぶしぶ水無瀬ミユキを抱き抱えて下がっていく。

 

「……戦力が減った?」

 

 少しだけ安心してしまう。

 

「減る? たかが、1匹虫が減ったごときで、なんの関係があるというのか?」

 

 ピエモンは『拙者』達を睨みつけそう言った。

 

「……その通りでありますな」

 

 だが、ピエモンの言い分にも納得ができた。

 アルケニモンとガードロモンだけなら『拙者』ならなんとかできた。でも、予想通りピエモンが来た。

 

 タイト氏が目がドラモンを倒したからだ……そして、

 

 主の最大の障害が『タイト氏』であるように、『拙者』達の目下の最大の障害が……

 

「さあ、剣を構えろ」

 

『ピエモン』である。

 

「────では」

 

 ピエモンが剣を構える。

 

「尋常に」

 

『拙者』も剣を持ち替えた。

 

 

「「────勝負っ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

「……()()()()()

 

 剣を手放したピエモン。

 

 ────ピッピ、ピー、ピピーッ!!! 

 

 激しいサイレンが鳴り響く。

 

 ────ズドン!!! 

 

「────っ!?」

 

 声にならない叫び声が響き渡る。

 

「────っ、タイト氏っ!?」

 

 視線を後ろに向けると、タイト氏に向けて腕を構えるガードロモンと煙をあげながら倒れるタイト氏がそこにいた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ────ザクリ

 

「────っ!?」

 

 もう片方の羽にピエモンの剣が突き刺さった。『拙者』はこれでもう跳べなくなった。

 

「……それも、そうでありますな」

 

 苦々しく、軽率であった自身に後悔が口の中に広がる。それでも自身を叱咤して、再びタイト氏の元まで下がっていく。

 

「────、『拙者』も本気でやらさせていただく!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 とは、言ったものの、

 

 

「────どうした、これでもう終わりか?」

 

 

 モノの5分でやられてんじゃねえよ。

 

「……冗談っ……言うな、ですぞっ!!!」

 

 ユイは立ち上がりながらピエモンを睨みつける。

 

(でも、状況は悪いままなんだよな)

 

 目の前のガードロモン達に剣を奪われ、ピエモンに飛ぶこと(逃げる手段)を奪われて、背後の俺を守ってる……なんて状況最悪すぎるだろ。

 

「まだ、『拙者』は負けておりませぬ!!!」

 

 負けん気はいいんだけどさ……勝つ見込みあんのかよ? 

 

「……立ち上がって来るか」

 

 ピエモンも驚いてるじゃん。最後まで付き合う気は俺にもあるからさ……どうすんだよ? 

 

「あの二人がいない以上、このお方を死なせるわけにはいかないのですぞっ!!!」

 

「……あの二人が誰かは知らないが……笑止っ、貴様如きに主に力を与えられた『我ら』に敵うわけなかろう!!!」

 

 

 

 

「さあやれ、僕シモベ達よ。奴らを『主』様へ捧げるのだ!!!」

 

 

「タイト氏、逃げろっ!!!」

 

「────ユイっ!?」

 

 あーあ、特攻しかけんのか……

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

 

 ユイの目の前に……いや、ユイとガードロモンの間に飛び込んでやった。

 

 

 ザクっ! 

 

 

「────なっ!?」

 

「「────っ!?」」

 

 

 

「────マナト殿ぉオオオオオオオっ!!!」

 

 

 

 目ぇ覚めたかよ? 

 

 …………それと、

 

 

 

()()()()()()

 

 

 俺の腹に刺さった伊由太加の剣(いらたかのけん)を握り締め、驚いたガードロモンの腕から引っ剥がす。

 

「────っ!?」

 

 驚いたガードロモンが腕を構える。

 

「『デストラクション────

 

 咄嗟に攻撃したのだろう。だけど、

 

「遅えよ、ばーか」

 

 もう遅い。

 

「────待てっ!?」

 

 ピエモンが気付いたようで、ガードロモンにやめるよう指示を出すけど、

 

 ────バキン! 

 

「────っ、グレネード』っ!?」

 

「────ぴっ!?」

 

 もう、『向き』変えてやったよ。

 

 

 ────ズガンっ!? 

 

 

『ディストラクショングレネード』は大きなサイレンを流すまもなく、ガードロモンの顔面に命中した。

 

(……って、あれ?)

 

 至近距離での爆発だから、吹っ飛ばされると思ってたんだけどな。いつのまにか腹に刺さった剣ごと、五メートル程後方へと下がっている。

 

 

「────なにやってんだ、あんたはっ!?」

 

 

 瀕死のユイに抱えられて、後方に跳んだのだと気がついた。

 

「…………!」

 

 いいことを思いついた。腹に刺さった剣の(つか)を握りしめる。

 

「……なに、してるんですか……マナト、殿?」

 

()()()()()()()()()()

 

 ────ズブっ、ズブズブズブ。 

 

「マナト殿!?」

 

「……ってぇ、はい、これ」

 

「『はい、これ』、じゃないのでありますっ!?」

 

 俺を抱えてる側とは違う方の腕…… 伊由太加の剣(いらたかのけん)に左腕に握らせてやる。

 

 ────ドバァっ!!! 

 

「腹、いってぇ」

 

「『腹、いってぇ』じゃないのでありますっ!? 剣引っこ抜いたら血が出てくるのは当たり前でしょう!? 知識持ってんのになんで抜いたんだよ、あんたはっ!!!」

 

「武器を返してやろうと思って?」

 

『バカじゃねえのか、あんたはよっ!!!』……って、思いっきり叫ばれた。笑える。

 

「早く応急処置を……!?」

 

「『ディストラクショングレネード』!!!」

 

「────っ、邪魔だっ!!!」

 

 ユイは飛んできた警笛を鳴らしながら突撃してくるミサイルを、左手で完全に防ぎ切ってみせる。

 

「背後が好きだらけだぞ……『トランプソード』」

 

「見えているに決まってるだろ!」

 

 ────ガギィン!!! 

 

 ユイの伊由太加の剣(いらたかのけん)とピエモンの『トランプソード』がぶつかり合う。

 

 

「────くらえっ!!!」

 

「────くっ!?」

 

 

 ────ガギィン!!! 

 

 ユイの力に負け、ピエモンはガードロモンのいる場所まで下がっていく。

 

「……その子供がそんなに大事か?」

 

 ピエモンにそう言われる。酷い言われようだ。

 

「大事に決まってるでしょう。命よりも大事な御仁だ」

 

 命よりも大事って……まるで、テトみたいなことを言うんだな。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。隠してたつもりだったのに。

 

「────っ!?」

 

 ユイは咄嗟に俺の左腕の袖を捲り上げる。

 

 

「────マナト殿っ!?」

 

 

 俺の腕……いや、手のひらから肩にまでかけての四箇所の傷跡から、砂のようななにかが宙空へと消えていく。

 

「……バレたか」

 

「バレたかじゃありませんっ!? こんな傷を負っているのであれば、突撃作戦などせずとも……今は、応急処置をしなければ……っ」

 

「そんな隙など与えん!!!」

 

 ────ガギィン!!! 

 

 ユイの説教の途中で、ピエモンに攻撃されてしまう。

 

「────くっ、今はマナト殿の怪我をなんとかしなければならないというのにっ!!!」

 

 

 ────ピピーっ、ズガンっ!!! 

 

 ────ガギィン!!! 

 

 ────ピー、ズガンっ!!! 

 

 ────ガギィン!!! 

 

 ────ピッピっ、ズガンっ!!! 

 

 

 剣戟がなんども、なんどもぶつかり合い、爆風が髪を撫でる。ユイは俺を抱えながら戦ってるのに、さっきよりも動きの精細さが上がり続けている。

 

 そんなことを考えていると、

 

 

『────『トロピカルビーク』ッ!!!』

 

 

「……きひっ!」

 

 とても、懐かしい気持ちになった。

 

「なにを笑ってるのでありますか!?」

 

 笑ったことに怒られた。

 

「いや、懐かしいなって思ってさ」

 

「……?」

 

 剣戟を受けつつも、俺の方を見て笑っている

 

「あのときと一緒だろ?」

 

 そう、『あのとき』と同じだ。

 

 

「────あのとき? 懐かしんでる暇は……っ!?」

 

 

「死にかけのダークナイトモンからお前は庇ってくれてさ」

 

 俺は過去を語る。

 

「なにをっ!?」

 

「追い詰められて、動けなくて……それでもお前は庇ってくれてさ」

 

 ユイの言葉を聞き入れず、語る。

 

「話すのはやめるのですぞ!!!」

 

「────ゴホッ……それでも、諦めずに立ち上がってくれたからこそ、テトもシンも間に合ったんだ」

 

 あっ、血が出た。でも話す。

 

「……くっ、だからなにをっ!?」

 

「……ユイ」

 

 

()()()()()()()()?」

 

 

 

 

「────っ!?」

 

 タイト氏の言葉が頭に響く。

 

「テトもシンもやったぜ……お前はどうなんだよ?」

 

 テト殿とシン殿? 

 

 なにを? 

 

 いや、わかってる。

 

「『拙者』と御二方を一緒にしないでくだされっ! あの方々と『拙者とは天と地程の差があるのですぞ!!!」

 

 俺とあのデジモン達を一緒にしないでくれ。

 

 世界を救える御二方と、人質(あしでまとい)になった『拙者()』とじゃ、運命が違うんだよ。

 

「また、『拙者』口調になってる……いい加減戻せよ」

 

 タイト氏の怒りの滲んだ声……ひさびさに聞いた。

 

 ────ガギィン!!! 

 

「────っ!?」

 

 くそっ、まだ攻撃がやまない!? 

 

 タイト氏の話に付き合ってる場合では────

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『俺を弟子にしてください!!!』

 

 

 タイト氏の言葉に過去がフラッシュバックする。必死になって悩んで、考えて……それで、叩いた扉の先にいた2体のデジモンとその真ん中に座る少年を思い出す。

 

(────違うっ!)

 

『拙者』は首を振る。

 

「…………っ、『拙者』にはかの方々と比べれば役不足もいいところでっ」

 

 テト殿とシン殿と『ユイ(ムーチョモン)』は違うのだ。

 

「俺のパートナーに役不足なんてねぇよ」

 

(────っ!?)

 

 その言葉に嬉しく思ってしまう自分を律する。『拙者』は『脇役』で満足しているのだ。

 

「ですがっ……あの御二人みたいな『主人公』然とした存在ではなく、こっぱの『脇役』程度の力しかない『拙者』には……」

 

 力が足りない、運命が足りない……それでも、貴方達の隣で満足しているそれだけで充分なんだ。

 

「俺のパートナーに『脇役』なんていねえよ……それと、オタク口調禁止!」

 

(……禁止って!?)

 

『拙者』が築いてきたアイデンティティを禁止されたっ!? 

 

「……っ、とにかく俺には貴方達は不釣り合いです!!!」

 

 とりあえず言われた通り、素の口調で話していく。

 

「不釣り合い? バカにしてんのかよ……お前は俺が選んだんだ。どんなことしたって、隣に……『主人公(ヒーロー)』になってもらうからな」

 

 そんな無茶なっ!? 

 

 ────ズドンっ!!! 

 

 こうやって、敵の攻撃を掻い潜りながら話す程度しかできない俺にそんなこと言われても……くっそ、

 

「────ですがっ!!!」

 

 

 

「ですがもなにもねえんだよっ!!!」

 

 

 

「────っ!?」

 

 タイト氏の覇気に押されてしまう。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 タイト氏に卑怯な質問をされてしまう。

 

「────っ、見えません」

 

 あっ、反射でつい言ってしまった。

 

「本宮大輔の隣に立ってるブイモンは? 松田タカトの隣に立ってるギルモンは? 大門大のアグモンは? シャウトモンは? ガムドラモンは? ガッチモンは? ガンマモンは?」

 

 ……それは、卑怯な質問ではありませんか!? 

 オタクに……それも推している作品の主人公とそのパートナーに対して、質問するのは卑怯でしょう!!! 

 

「────ません」

 

 不満だったので、小声で返答してしまう。

 

 

「見えたのかって聞いてんだよ!!!」

 

 

「見えません!!!」

 

 

 怒鳴られたので、怒鳴り返した。

 

(……あーっ、恥ずかしい!!!)

 

 タイト氏が自分の実力を相当買ってくれてるのがわかって……嬉しくなってしまった。

 

 そんな感情を持つことですら、烏滸がましいって言うのに。

 

「だったら、てめえも同じだろうが……さっさと認めろ」

 

 それでもタイト氏は買ってくれてる。

 

「……でもっ」

 

 でも、俺のオタク心がそれを認められないって叫んでしまう。だって、『最推し』の隣に立てって、『最推し』に言われてるんですもの!!! 

 

「でも、じゃねぇ!!!」

 

 

「俺がお前を認めたんだ。テトでもシンでも……他の誰でもないユイ(おまえ)をだ」

 

 

「────っ!?」

 

 タイト氏……それは、卑怯ですぞ……『最推し』にそのように言われては、オタクたるもの……ん? 

 

「……でも、認められたからって、この状況をなんとかできるとは……」

 

 こうやって戦っていても、逆転の目はない。タイト氏ももうそろそろ限界みたいで、口から血がダラダラ出ている。

 

 そんな状況で逆転なんて……

 

「なに言ってんだよ?」

 

 タイト氏は当然のことのように、こちらを向いて笑って見せる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 そのセリフと同時に、

 

 

 ────バリィンッ!!! 

 

 

「……へ?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

()()()()()()()()

 

 

 トランプソードが抜け、肉体の傷が癒える。

『あのとき』のテト殿やシン殿と同じように傷がなかったように……時間が巻き戻るように、傷がなくなって、力を取り戻していく。

 

「これ、は?」

 

「マジかよ」

 

 それと同時に異変が起きる。

 

 

 

 [()()()()()()()()()()?]

 

 

 [YES]      [NO]

 

 

「────()()()()()()()()()()()?」

 

 クロスローダーがアプリドライブ……いや、強化版の『アプリドライブDUO*2』に変化した。

 

「────はっ、粋なことをしてくれる」

 

 よく見るとタイト氏の左腕には、時計型のデジヴァイスのようなものがついている。

 

「……『アプモンバンド*3』まで」

 

 夜空色と翡翠色に染まったアプリドライブはタイト氏の腕に収まっている……これで、『拙者』は……

 

 

「……で、どうする?」

 

 

 タイト氏にニヤケ顔でそう言われる。

 

「どうするって言われましても、タイト氏が決めるものではないのですか?」

 

「バカが、お前が決めろ……俺はどっちでもいい」

 

 どっちでもいいって……この先の未来がかかってるのですぞ!? 

 

「────『拙者』がっ!?」

 

「戻ってんぞ」

 

 余計なお世話ですぞ……です。

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

「────わかりました」

 

 ユイの覚悟がようやく決まったみたいだ。

 

「『(拙者)』は」

 

 ユイの黒色の手のひらが選択肢に迫る。

 

 

 [YES]   [NO]

 

 

 選ばれなかった選択肢が消え、アプリドライブが光り輝く。

 

(拙者)の体が!?」

 

 ユイはアプモンバンドに吸い込まれ、小さなチップへと姿を変えた。

 

 ────ニィッ! 

 

 思い通りにいったことについ笑いが込み上げてくる。

 

(そうだよな、お前も俺と同じなんだよ)

 

 ユイの選んだ選択肢。どんな結果であろうと、ユイがどんなものを選ぶのかは、決まっていた。

 

「それじゃあやるぞっ!!!」

 

「────アプモン……いや、『デジモンチップ』……レディ(READY)っ!!!」

 

 その掛け声と共に、デジモンチップがアプリドライブに挿入される。

 

「────っ」

 

 正直言って恥ずかしいが、親指を掲げ、アプリドライブの下にあるポッチに親指を押し当てる。

 

「俺達、注入!!!」

 

 そして、掛け声をあげる。

 

 [────いただきました]

 

 すると、男性の声が光の中に響き渡って、

 

 [アプリアライズ!!! ]

 

 掛け声と共に、アプリドライブの画面から絶大な光が放たれる。

 

「……っ、眩しい」

 

 放出された光が集まり、一つの『デジモン』へと姿を変える。

 

 

 虹に輝く羽。

 

 太陽を背負ってるように放出される光。

 

 俺よりも遥かに大きな巨大な体。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()*4』!!!」

 

 

 

 虹の神話がここに蘇った。

 

「……予想通り、か」

 

 あくまでも、予想の範囲だった。

 

 ダークドラモン、バンチョーレオモンに続いて、鳥デジモンが仲間になったことから、なんとなく察せてはいた。

 

 だが『今』は、ユイが進化したこと以上に喜ぶ事はない。

 

 

「────我が同志よ、挿入歌を鳴らせ」

 

「……我が同志……挿入歌っ!?」

 

 

 進化したら突然変なことを言い出した。頭がやられたのか? 

 

「主人公足るもの進化バンク後……いや、逆転の際には挿入歌が必須だと習わなかったのか!?」

 

「……それ、創作物だけだろ」

 

 自信満々にそう言われるが、創作物だけのものを現実に持ってこないで欲しい。

 

「我は『脇役』でもよかった。しかし、同志が我を『主人公(ヒーロー)』にしたのだろう? それぐらいの我儘許されてもしかるべきでは?」

 

(……それを言われると)

 

 無茶に突き合わせたみたいで正直心が痛くなる。

 

「…………わかった」

 

 俺は携帯型デジヴァイスの中から、デジモンの挿入歌ファイルを開き適当に選び始める。

 

(……これでいいか)

 

 そんなことを思いながら、充電を気にせず最大音量で流す。

 

 

 Search and matching だ ガッチェン! 

 

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 合致&リンクした衝動! 

 

 

 軽快な音楽と共にアプモン第二期のOPであり、最終話の挿入歌にもなった『ガッチェン』が始まった。

 

「そこは、『brave heart』ではないのですか!?」

 

「いや、『アプリドライブ』からの進化だし」

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「それに、合ってるだろ?」

 

 今の俺とユイに一番あってる歌詞だった。

 

「…………そうでありますな」

 

 

「────では、さっさと終わらせよう」

 

 夜空の光は消えつつある。

 

「────なんだ、この光はっ!?」

 

 しかし、巨鳥の極光は森の中をたいようよりも照らし始める。

 

「『パージシャイン』」

 

 ユイの羽から放たれる強烈な光の雨は、森の中にいる『邪悪』を消し去り始める。

 

「────なにっ!?」

 

 ピエモンは光に跳ね飛ばされ、俺達からだいぶ離れた場所まで飛ばされる。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「────ギ、ガガ」

 

「ゴギッ、────ガ」

 

「グァン」

 

 

 次々と再起不能になるガードロモン達。

 

「ガードロモン達はこれで消滅した」

 

 そして、ガードロモン達は次々と煙となって消えていった。

 

「────うぐっ!? まだだっ!!!」

 

 だけど、ピエモンは諦めない。

 

「『トランプソード』!!!」

 

 カラテンモン(ユイ)の羽さえ貫いた必殺の一撃。

 

 

 ────ガキインッ!!! 

 

 

「────なっ!?」

 

 しかし、『パージシャイン』による光は、ピエモンの『トランプソード』を一切通さず、粉々に砕け散る。

 

「……あとは、貴様だっ!!!」

 

 オタク口調が消え、目の前にいる『邪悪』に嫌悪の視線を向けるユイ。

 

(これでトドメだな)

 

 ────ガギィ、ガギンッ!!! 

 

 ────バキン!!! 

 

 ────ゴキンっ!!! 

 

 ピエモンの『トランプソード』がなんども、なんどもユイを狙って投擲されるが、ユイには一切当たらない。

 

 むしろ、虹の光が太陽よりも輝き始める。

 

「……終わりだ」

 

 虹の光が収束、ピエモンに向けて大きく開き始める。

 

 

「『オーロラアンジュレーション』!!!」

 

 

『パージシャイン』の何十倍も濃くした光がピエモンに降り注ぎ、

 

「────ぐっグオオオオオオオっ!?」

 

 ピエモンの肌を焼いていく。

 

「主様っ、ヌシ、サマぁああああああっ!!!」

 

 ピエモンは悲鳴をあげ、主へと助けを求めるが、

 

「……主、様」

 

 完全に散りへと消えてなくなった。

 

 

 

「……終わった、か」

 

 ピエモンが倒れ、当面の敵が『完全体』クラスしかいないことを思い出し、ふとした息をついてしまう。

 

「タイト氏、早くルビー殿を……っ!?」

 

 ルビーのところへと助けに行くことを提案するが……

 

 

 

「────()()()!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そう言えば、そうでありましたなっ!?」

 

 以前も、あの光の中では元気だったはずなのに、ノルン様の世界に帰った途端、大幅な怪我であることが発覚した。

 

「────タイト氏っ!!!」

 

 そして、『今』ノルン様はいない。

 

 

「『イグドラシル権限』起動!!!」

 

 

 なら、俺がやるしかないんだ。

 必死になってノルン様からいただいた、『イグドラシル』の使い、なんとか『新海ハル』のアンプルを取り出した。

 

 

「死なせない、死なせてなるものかっ!!!」

 

 

 なにもない、なんにもないこの場所でも、治療しなければいけないことを誓いながら腕を進める。

 

 

「今度こそ、今度こそはっ!!!」

 

 

 拙者は腕を動かし始めた。*5

*1
レベル:成熟期 タイプ:マシーン型 属性:データ種 必殺技:『ディストラクショングレネード』

 コンピュータネットワークの防御壁を守る、マシーン型のデジモン。もともとは「ネットキーパー」のギロモンと共にネットワークの防御壁を不法に進入してくるものを撃退していたデジモンだった。しかし、その鉄壁の防御能力に目を付けた悪質なハッカーが、ガードロモン自体にコンピュータウィルスを感染させて、ワクチン属性の正義の集団「ウィルスバスターズ」達から身を守るために利用している。基本的にガードロモンには「防御」のプログラム命令しかないため、立場が変わっても侵入者を防げれば大きな問題ではない。必殺技は不法侵入者を、世界の果てまで追い詰めて破壊してしまう『ディストラクショングレネード』。不法侵入しない限りガードロモンから攻撃をしかけることはない。

*2
アニメ『デジモンユニバース『アプリモンスターズ』』に出てくるデジヴァイスのようなもの。

*3
正式名称『アプモンセブンコードバンド』。アプモンをアプリドライブを使って進化させる際に、チップ化させる道具。その他使い道はある。

*4
レベル:究極体 タイプ:聖鳥型 属性:ワクチン種 必殺技:『パージシャイン』 『オーロラアンジュレーション』

 上空40,000mの成層圏に生息する幻の聖鳥型デジモン。巨大な6枚の翼を持ち、一番大きな翼を広げた時の翼開張は30mにも達する。天空の守護者として伝承されており、デジタルワールド創世のころから存在していた古代種デジモンであると伝えられている。ヴァロドゥルモンの羽毛は聖なる光『パージシャイン』を常時発しており、邪悪な思念を持つ攻撃を100%無効化してしまうバリアとして身にまとっている。必殺技は、『パージシャイン』の浄化の光を最大に増幅させて放つ『オーロラアンジュレーション』。この技は星をも砕く威力を持つといわれており、光速で放たれるために回避はほぼ不可能である。

*5





「ついたぞ」

ガルルモンに連れられ、工場……跡地って言えばいいのかな? だいぶ寂れた場所に連れてこられる。

「ここが、入口なのかい? 見たところただの工場のようにしか見えないが……」

「ここの奥に祭壇をもしたテーブルがある……いつもなら、もっとケモノがいるはずなんだがな」

教授と

「…………」

ーーーーぶちん! パサッ

「ーーーーっ!?」

髪が急に解ける。

「シュシュがちぎれちゃった」

タイトからもらったシュシュが千切れて、落ちてしまう。

(そんなに傷んでたかな?)

傷つけた覚えはないし、結構気に入っていた奴……それも、好きな相手からもらったものだから、ショックは大きい。

「見た感じ、そんな傷んでる様子は……」

風が吹吹いて、壊れたシュシュが飛んでいく……だけど、私には他に感じることがあった。


「……タイト?」


タイトの気配を感じた気がした。

「行くよ、ルビー」

「うっ、うん」

いつのまにか入り口に入ろうとしているブイモンに声をかけられる。私はそれに促されるまま、声の方へと進んでいく。

(……嫌な予感がする)

そんなことを思いながら、ポッケの中に入ってたヘアゴムで髪を縛り、仲間を追いかけていった。
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