「ーーーーもうすぐだ」
時刻は昼過ぎ、ガルルモンが先行して階段を登っていく。階段の先には広い空間が見えていて、少しだけ異様な雰囲気が漂ってるのに気がついた。
「……もうすぐ、なんやね」
みなみの緊張した声が聞こえてくる。
「大丈夫、ミナミはギルモンが守る」
ギルモンがみなみの不安を取り除くようにそう言った。
「ガルルモン、レナモン、もしもの時は頼んだ」
「わかってる」
「ーーーーフンっ!」
そして、各々が覚悟を決めた時だった。
「
『聞き覚えのある』少女の叫び声が聞こえてきた。
「ーーーーミユキっ!?」
「姉さんっ!?」
後ろにいた二人が突然走り出した。
「あっ、おい待てっ!!!」
ガルルモンがそれに続くように走り出す。
「教授達だけじゃ危ないって!」
「ミナミ、早く行くっ!!!」
みなみとギルモンもガルルモンを追いかけていく。
「…………」
だけど、私は動かなかった。
ーーーーぞくりっ!!!
背筋を凍らせる程の寒気と、深い『霧』が階段の先に広がってるのが見えた。
(……たぶん)
この先には『主』がいる。
「ブイモン」
私は怖気付く心に『勇気』を出してブイモンに聞いた。
「行こう」
ブイモンは私の手を引っ張ってそう言ってくれる。
「…………」
一呼吸だけ悩んだあと、覚悟が決まった。
「ーーーー、うんっ!」
ブイモンの言葉に大きく頷いて走り出した。
階段を登りきった私達は目の前の光景に驚いていた。
「ーーーーなっ、なぜ!?」
そこには紫色の『蛙』の手に貫かれたアルケニモンと、
「
「……なん、で?」
私には理解できなかった。
言葉数も少なく、表情も乏しかった少女が、目を爛々と輝かせ、嘲笑っていることも。
アルケニモンを、『主』の
私には理解できなかった。
「……『なんで』トハ? 奴モ『
(……『ワレ』の贄……っ!?)
水無瀬ミユキの言葉が変なことに気がついた。まるで、自分自身が『主』であるような物言いに、警戒態勢に思考が切り替わる。
「幸せって……死ぬことが幸せやって言うんか!?」
みなみの怒号。
「幸せダロウ? 『この世界ノ維持』ノ為命ヲ使ッタノダカラ」
『この世界の維持』?
デジモンを殺すことが?
怒りで頭がどうにかなりそうになるが、それでも冷静でいられたのはどこかで聞いた気がするからだ。
(……いったいどこで聞いたんだろう?)
どこかで聞いたことがある。
「……『この世界の維持』だと?」
そのことについて考えてるとレナモンが推定『主』に話しかけた。
「ソノ小娘カラ聞イテイナイノカ?」
主は私を指さした。
「────っ!?」
やっぱり、どこかで聞いてたんだ!?
「……ルビーくん?」
教授からの視線が痛い。
「ドウヤラソノ小娘ニハ、メガシードラモンノ言葉ガ耳ニ入ッテイナカッタラシイナ」
メガシードラモン?
「…………」
メガシードラモン……!?
『このケモノの世界は『主』様が管理しとる』
『我らの住む世界は少しずつ狭くなってきておる。外側から少しずつ削られるように少しずつ、少しずつ、な』
『それを防ぐには『ニンゲン』のとてつもない感情が必要な訳じゃ。ニンゲンが持つ『感情』のエネルギーは、我らの世界にとってかなりの宝……あの小娘を見ておっただろう?』
『そのエネルギーを使って主様は、この世界の維持をなさっとる』
『そして、より強大な力を得るには『ニンゲン』の感情が必要じゃ。それもこの世界を維持するのであれば、感情豊かな『ニンゲンの子供』が最も重要視される』
『じゃから、我らはニンゲンを贄に捧げるのじゃ』
「────あっ、あれ妄言じゃなかったんだ」
人やデジモンを贄にする為の妄言だと思っていた。だから、私は怒りそしてメガシードラモンを倒したのだ。
「『妄想』? 勘違イモ甚ダシイ。封印ニヨリ『
『主』となった水無瀬ミユキは私の言葉を否定し、事実を告げた。
「……崩壊、だと!?」
「…………たしか、タイトくんもそんなことを言っていた気ぃする」
「でも、逆に言えばあんたを倒さなくても世界は崩壊することには変わりない」
「……そうだな。『神』とやらの使いとタイトは言っていた。その神に頼めば、なんとかしてくれるかもしれない」
「だったら、お前を倒したほうがこの世界の為だっ!!!」
たしかに驚く事実かもしれない。
だけど、その程度で揺らぐ程、今の私達は弱くない。
「愚カナ……アノ子供ハ今『死ノ淵』ニイルトイウノニ……ソノヨウナ者ニ助ケヲ求メルトハ……」
私達を冷笑する『主』。その言葉はあまりにも現実味がなかった。
「嘘をつくなっ、タイトくんとユイがピエモンなんかに負けとるはずがない!!!」
「あのタイトが負けるはずないっ、嘘も大概にしてっ……ピエモンなんかすぐに倒して、タイトは私達の応援に来てくれる!!!」
「…………」
私とみなみは哀れなものを見るような視線で『主』に見られる。
(なんなのよ、あいつ!?)
一挙一動にいらだちを感じる。こうも腹が立つのは、ほんとのことを話してくれなかったタイト以来だ。
「マア、コノ娘ノ身体ヲ手ニ入レルコトガデキタノダカラ、全テ些事トイウ他ハナイ。我ハ『
『主』の周りから『霧』が発生する。
「……そんなことはさせないっ!!!」
「ウチもギルモンもあんたなんかには絶対負けへん!!!」
私もみなみも『初代デジヴァイス』を掲げる。
「────ルビーっ!」
[ブイモン 超進化]
「────『エアロブイドラモン』!!!」
「────んっ!」
[ギルモン 超進化]
「────『ブラックメガログラウモン』!!!」
私達の想いに呼応するように、ブイモンとギルモンが超進化した。
「……ソウカ、ナラバ抗ッテミセロ」
手を振り上げる『主』。
紫色の『霧』が纏まり、いくつかの塊に変わる。
「ケモノニデキルノナラナ」
蛙、蛇、蛞蝓、頭部のない鬼など、様々な形へと変貌していく。
「────さあ、『
「なんなんだ、こいつらっ!?」
『ドラゴンインパルス』
────ドゴォンッ!!!
「────こいつらっ、硬いっ!?」
『ダブルエッジ』
────ガギィン!!!
エアロブイドラモンとブラックメガログラウモンの必殺の一撃が敵に命中するが、蛙や蛇にはそこまで損害を与えられている様子はない。
(…………)
それを見て私はとある覚悟が決まった。
「レナモン」
私の横にいるレナモンに声をかける。
「…………」
レナモンは自身の主人が『主』に乗っ取られているのを見て、放心しているようだ。
「私はなんとかして奴の気を引く、レナモンは奴の隙を狙ってくれ」
私は靴紐を結び直しながら、聞こえているかどうかわからないレナモンに覚悟を告げる。
「待ってください」
私の前にクダモンが立ち塞がった。
「クダモン」
「ご主人様からあなたを守るように言明されています。勝手に動かれると困りますっ!!!」
タイトくんとの約束で私を守ってくれてるのだろう……だけど、
「至近距離で攻撃してみて!!!」
「────『ドラゴンインパルス』!!!」
ルビーくんとブイモン。
「手数で攻めるんや!!!」
「わかった、『ダブルエッジ』!!!」
みなみくんとギルモンが頑張って戦ってくれているのに、大人が頑張らないわけにはいかないだろう!!!
「……悪いけど、ここは私が動かなければいけないんだっ!!!」
クダモンの隙を見て、横を通り過ぎる。
「あっ、ちょっとお待ちをっ!?」
────ドロッ!!!
背後から大きな軟体のようなものが動いた音がした。
「……って、邪魔です、どきなさいっ!!!」
クダモンのその声が聞こえたが、私は目の前の『主』に向かって走り出した。
「……ハル?」
「────おいっ、私はこっちだ!!!」
レナモンに隙を与える為、『主』に向かってそう叫ぶ。
「────っ!?」
「────、教授っ!?」
ルビーくん達の声が聞こえてくるが、私には一人しか見えていない。
「……自ラカラ、『贄』ト成リニ来タカ」
────ドォンっ!!!
私の目の前に『鬼』が現れる。
「────っ!?」
一瞬、戸惑ってしまうが、
「────っ、まだだっ!!!」
再び『主』の元へと走り出した。
「────ガチガチ、ガチっ!」
『鬼』が腕を振り上げるのが見えた。
「────っ!?」
咄嗟に背後へと思いっきり跳んで、
────ドゴォっ!!!
私の目の前に拳が振り下ろされる。
「────ガハッ!?」
衝撃で後ろへと吹き飛ばされてしまう。
「……はぁ、はぁ」
『鬼』の拳が当たった場所には、2メートル程のクレーターができていた。
(……咄嗟に後ろに下がっていなかったら、危なかった)
自身の咄嗟の判断に救われて、少しだけ安堵する。
「愚カダナ、アキハルヨ。己ノケモノニモ裏切ラレ、仲間ニハ手ガ伸ビズ、見捨テタ『姉』ハ『
『主』にそう言われ、立ち上がる力が強まるのを感じる。
「まだだっ、まだ……姉さんは助けられるっ!!!」
そうだ、助けるんだ。
忘れてしまった自身を怒り、見捨ててしまった自身を叱咤し、老いた両足に力を込めて立ち上がる。
「……マダ、そのヨウナ戯言ヲ紡グカッ! 貴様ラナド路傍ノ石ニモ劣ル存在ダトナゼ気ヅカナイッ!?」
『主』の怒りとともに『鬼が』私に向かって走り始める。
「……くっ!?」
咄嗟に右に避けた。
────ドゴンっ!!!
『鬼』が壁にぶつかった音が、真横で鳴り響いた。
「私は姉さんを見捨ててない。あのとき、結果として私は姉さんを、ガブモンをっ……みんなを見捨ててしまったことには変わらないからだ」
そう言いながら、再び走り出した。そして、この世界に来てようやく思い出した幼き日の記憶で、自身を奮い立たせ、『主』に向かって走る。
『わぁっ! もうこっちまで来たよ!?』
必死になって戦ってくれたガブモンとレナモン。そしてそれを指示する姉さんを尻目に、私は怯え、竦みなに一つできなかった。
『こいつっ!?』
『グウゥッ……!?』
だけど、敵は強くてガブモン達では敵うことすらできなかった。
『────だめっ、これ以上この子達を傷つけされるわけにはいかないっ!!!』
敵に立ちはだかる、姉さん。
『あそこにさえ、たどり着くことができれば……』
そう言いながら悔しそうに眉間に皺を寄せる姉。だが、敵は姉を見据え、笑っている。
『……ハル』
背後を見て笑う姉。
『お姉ちゃん?』
その視線は私より後ろにある『なにか』を見つめていた。
『────きゃあっ!?』
────ドン!
敵の攻撃が姉さんを襲う。
『────だめだ、もう抑えられない』
レナモン達が必死になって守ってくれていた……その時だった。
『……えっ、えっ!?』
体が宙空に浮き、背後にあるなにかに吸い込まれるように私の体は引っ張られていく。
『────ハルっ!?』
ガブモンの悲鳴が響く。それでも、私の体は動くことができなかった。
『あなたはどうか、無事に帰って』
そんな優しげな声と共に、私は光へと吸い込まれた。
結果的に私は姉さんに救われたのだろう。
「…………」
だが、結果として姉さんは『主』に魂の半分を奪われ、歳を重なることもなく五十年もの歳月をこの世界で暮らすことを余儀なくされた。
ガルルモンにはそのことを恨まれ、『逃げ出した』と勘違いされてしまった。
そして、私自身も逃げたと感じている。
「
私は全力で『主』に向かって走る。
────ドゴォッ!!!
「私自身、力がなくても」
────ドゴンッ!!!
「ガブモンが力を貸してくれなくても」
────ベゴン!!!
「私自身が立ち向かわなければならないんだ!!!」
背後から大きな音が鳴り続ける。大きな衝撃を感じることもあるが、それでも構わずに走り続ける。
「はぁ、はぁ」
大きく息を切らしながら、ようやく『主』の目の前まで走り抜けることができた。
「私は姉さんを助けるんだ!!!」
そして、ポケットの中からデジヴァイスを取り出し、接近しようとした時だった。
「……クッ、ナラバ死ネッ!!!」
「ギガ、ギゴ!!!」
目の前に『鬼』が現れる。
「…………っ!?」
『鬼』は大きな腕を私の命を絶命させるべく振り下ろした。
何メートルものクレーターができるほどの威力を持った拳を、わたしが安全に対処できる手段はない。
────ズドォオオン!!!
大きな音が『目の前』の空間から響き渡った。
「…………」
目を閉じて、痛みが来るのを待つ。私は殴られたはずだ。でなければ、あのような大きな音が鳴り響くことはない。
「…………」
意識が残っているのであれば、殴られた場所にとてつもない痛みが入るのだろうと思い、身を固くさせる。だが、いつまてたっても痛みがこない。
「…………」
このまま死ぬのだろうと半ば思っていると、
────ぶらん、ぶらん
体がなにかにぶら下がってるのを感じる。
「……?」
私はふと目を開ける……と、
────ドシン!
と腰……いや臀部の痛みとともに、ぶら下がった感覚がなくなったのに気がついた。
「────
私はその声に急いで振り返る。
「……ガルルモン?」
私を『ガルルモン』が助けてくれたのだ。
「────ガルルモン、ナゼ其奴ノコトヲ助ケルッ!?」
「……ふんっ!」
『主』の激昂をガルルモンが鼻で笑った。
「貴様ッ、『
「生憎だが、『
そう言いながら、ガルルモンが私のほうを見る。
「俺は、……俺はこいつを許せなかっただけだ」
そうだ、私はこの子を……ガブモンを見捨てた。
「今も許したいとは思えないし、許す気もない」
許されるとも思ってないし、許されたいとも考えていない。
「でも『二回』も命を助けられたのは事実だ」
…………っ!?
「なら、その『2回分』ぐらいは助けてやらねえと、借りは返せねぇだろうがっ!!!」
「立てよ『相棒』……今だけ昔に戻ってやる」
「────っ、わかった」
ガルルモンに促され、私はガルルモンの後ろに立つ。
「昔のように隣に並べ、『俺』が全部守ってやるからな」
「それは少し情けないだろう……それに、私よりも前に立っている子供達がいる。少しは『大人』らしくかっこつけさせてくれ」
ガルルモンとの軽口の言い合い……いつからだろう。こんなふうに言い合える相手がいなくなったのは。
だけど、今は違う。
「────へっ、言いやがるぜ。なら応えてやるよ」
「────やるぞっ!!!」
私はデジヴァイスを掲げ、ガルルモンの声に応える。
[
ガルルモンの体は光に包まれる。
ガルルモンの身体は光に圧縮され、一回り、二回りと少しずつ小さくなっていく。
圧縮された身体は人型へと変化し、額から右頬にかけて大きな傷が痛々しく広がっていく。
前足から変化した両手にはバックルが、後ろ足から変化した両足には髑髏マークの描かれたワッペンがついたジーンズが現れる。
成熟期よりも小さい姿にはなったが、それ以上に力強く感じさせる瞳は目の前の敵に向かい光を灯し見据える。
音を置き去りにする程の拳を振るい、吠える人獣の姿は、
「『
長年の『想い』に応えるように響き渡った。
「……ガルルモンが、進化した?」
人と獣が一体となった姿に、私は驚き……戸惑う。そして人を嫌った彼が人に近しい姿へと進化したことに、少しだけ嬉しく思ってしまった。
「ワー、ガルルモンダト?」
『主』の驚いた声が聞こえてくる。怒りが滲んだその声は、明らかにワーガルルモンを睨みつけている。
「────今更、進化シタダト……ふざケルナッ!!!」
「ヤレッ、お前達ッ!!!」
『主』の怒号と命令に従うように、一斉にこちらへと歩き出すケモノ達。
「エアロブイドラモンっ!!!」
「倒せなくても、足止めぐらいならっ!!!」
「────キシアッ!?」
「行かせへんっ、ブラックメガログラウモンっ!!!」
「お前ら、止めるっ!」
「キキシッ!?」
だけど、ルビーくん達の足止めによって来ることはできなくなっていた。
(……ルビーくん、みなみくんありがとう)
感謝の念を抱き、『主』を見据える。
「……どうした、仲間は呼ばないのか?」
ワーガルルモンが『主』を睨んだ。
「────ッ、ドイツモコイツモッ!!!」
苛立ちと怒りで暴走する『主』。
「────ヤレッ!!!」
「────キシャアっ!!!」
目の前の『鬼』に命令し、ワーガルルモンを倒すつもりだ。
「ワーガルルモン!!!」
「わかった!!!」
私に向かって、特攻してくる『鬼』。それに立ち向かうワーガルルモン。
「ギリァ!!!」
『鬼』が拳を振り上げる。
────ガシッ!!!
ワーガルルモンが左手で、『鬼』の拳を止めた。
「どうした? その程度かよっ!!!」
「キシア!!!」
『鬼』が掴まれた拳とは反対の拳を振り上げる
「────遅いっ!!!」
……だが、もう遅い。
ワーガルルモンの右手の鉤爪が紅く煌めき、敵の体へと向かっていく。
「『カイザー、ネイル』っ!!!」
ワーガルルモンの必殺技が決まった。
「────キシャァアアアアっ!!!」
悲鳴を上げながら倒れる『鬼』。
「やったか!?」
倒せたと思いその声を上げた途端、
「────
『主』の声と共に立ち上がるケモノ。
「────っ、倒した瞬間に復活したっ!?」
よく見れば、ルビーくん達の近くのケモノも『霧』を纏いながら立ち上がってるのが見える。
「これじゃ、いくら倒してもキリがない!?」
悲鳴のような叫び声が聞こえてくる。
(このままでは負ける!?)
「ワーガルルモン!!!」
「わかってる、『カイザーネイル』ッ!!!」
もう一度必殺技を当てようと力を込めるワーガルルモン。
「無駄ダッ!!!」
────ガギィン!!!
立ち上がり始めた『鬼』に傷一つつかなかった。
「ソヤツラノ強度ヲ増シタ。今マデノヨウニウマクイカセルツモリハナイッ!!!」
「
『主』の背後にレナモンがいる。
「「レナモン、貴様ッ……いつノマニッ!?」
背後から『主』に組みつき、『主』を拘束する。
「ずっと、ずっとこのタイミングを待っていた」
「────ソレハっ!?」
爛々と光る『初代デジヴァイス』。
「この『光』の力は知ってるだろう?」
その光は『霧』を消し去っていく。
「────「ヤメロッ、離セッ!!!」
『主』がレナモンから離れようと踠くが、レナモンは『初代デジヴァイス』を押し付け続ける。
「ケモノ風情ガ調子ニノリオッテ……『
「それはミユキの体だっ、間違えるなっ!!!」
「水無瀬ミユキハ死ンダッ! コノ体ハ『
「たとえ死んでいてもっ、貴様みたいな存在にミユキを好き勝手にはさせないっ!!!」
踠く『主』と抗うレナモン。
光は『霧』を散らし、少しずつ姉さんの周りを照らしていく。
「────『
(────っ!?)
「……ミユキっ!?」
一瞬だけ、瞳に光が戻っていくのがみえた。
「
今度は確実に姉さんの声が聞こえる。
「ミユキっ、今助けるっ!!!」
『主』は光から離れようと必死に踠くが、光は姉さんを完全に包み込んだ。
「────レナモンっ!!!」
「────ミユキィッ!!!」
その二人の声が聞こえた時、
「オノレ、オノレっ、オノレェッ!!!」
光から離れるように『霧』の塊が、天井へと消えていった。
「────動きが止まった!?」
「急に柔らかくなったよ、ミナミっ!?」
急に動きを止めるケモノ達。
「エアロブイドラモンっ!!!」
「了解っ!!!」
「やって、ブラックメガログラウモンっ!!!」
「────わかった!!!」
ルビーくんとみなみくんの掛け声と共に、デジモン達はケモノに必殺の一撃を入れる。
「『Vウィングブレード』っ!!!」
「『ダブルエッジ』っ!!!」
────スパァン!!!
ケモノ達は『霧』となって散って消えた。
ガルルモンが進化して二足歩行が出来るようになった獣人型デジモン。二足歩行になることでスピードは失ってしまったが、より強い攻撃力と防御力、さらに戦術性を身につけたコマンドータイプのデジモンでもある。ガルルモン譲りの脚力から繰り出されるキック技は強烈で、ジャンプ力もデジモンの中では1・2を争うほど。また、信義にあつく、主人の命令ならば任務を忠実に遂行する頼もしい性格。必殺技は両腕の鋭い鉤爪で相手を切り裂く『カイザーネイル』。
「……勝った?」
黒い霧は消え、カエルのような化け物は全て『霧』となって消えた。
「勝ったのか、俺達は?」
ここにいる誰もが動けずにいる中、
「ーーーー姉さんっ!!!」
教授はレナモンが抱く水無瀬ミユキに向かって走っていく。
「レナモン」
レナモンの名を呼ぶ少女の瞳は、さっきまでとは違って、虚でも闇のように暗く染まっているわけでもない。
「ーーーーミユキっ!?」
「今まで守ってくれて、ありがとね。言えなかったけど、全部覚えてるよ」
「……、ーーーーっ、ミユキぃっ!!!」
「……姉さん?」
「……ハル?」
「ーーーーっ!?」
「大きくなったね」
「……、ーーーーっ!!!」
工場跡地に響く男性の声。何十年ぶりかの姉弟の再会。
「そんなに泣かないの、男の子でしょ」
「ーーーーっ、姉さんっ」
暖かな姉弟の絆……その様子を見て、私はいつまで経ってもタイトがやって来ないことを不審に思う。
「……、タイトは?」
周囲を見渡しても、タイトはやって来ない。
(ユイがいる。だから、大丈夫)
主の言った言葉が不安を過らせる。
『愚カナ……アノ子供ハ今『死ノ淵』ニイルトイウノニ……ソノヨウナ者ニ助ケヲ求メルトハ……』
主が言った嘘だとはわかってる。だけど、不安で仕方がない。
「……っ!?」
くいっと袖が引っ張られる。
(タイトっ!?)
タイトが私のところまで来てくれたのだと思い、振り返る。
「……ルビー」
「……ブイモン?」
しかし、袖を引っ張っていたのはブイモンだった。
「早く戻ろう」
ブイモンに工場跡地の出入り口の方へと引っ張られる。
「ーーーーうん」
私はあの教室に向かって歩き出したのだった。