「ガルルモンっ、こっちだよっ!!!」
「……俺は、別に借りを返しただけで、仲間になるとは言ってないんだけど」
「いいからっ、こっち来てっ!!!」
「ーーーーうっ」
「諦めろ、ガルルモン。ミユキはこういう性格だ」
「…………」
「私は一緒にここに戻ってこられてよかったと思っている」
「……、アキハルの癖に」
私達の前を歩く『歳の離れてしまった』姉弟とそのパートナー達。それを見て羨ましく思う。
先生……アクアとはあんな感じになっちゃったし、タイトはもうそんな目で見ることはできなくなったから、
「ひさしぶりに走れるっ!!!」
「ーーーーおいっ、危ないぞ!!!」
「姉さん!?」
「ーーーーっ、あっ……レナモンありがとう」
「階段で走るのはやめろ。ミユキがまた『ああ』なったらと思うと気が気じゃない」
「……そうだね、気をつけるよ」
はしゃぐ姉と驚く弟、注意するガルルモンに助けるレナモン。それだけで彼らの関係は完成されているように思えてしまった。
それに比べて、私は……、
『愚カナ……アノ子供ハ今『死ノ淵』ニイルトイウノニ……ソノヨウナ者ニ助ケヲ求メルトハ……』
「……っ、う」
さっきの『主』の言葉を思い出し、少しだけ手に力がこもりすぎてしまった。
「ルビー、どうしたんや?」
みなみが心配そうにこちらを見る。
「『主』の言葉が気になっちゃって」
顔は笑えてるつもりだ。絶対にタイトなら大丈夫って、信じている……だけど、心のどこかでタイトが倒れているのではないかと、そう思ってしまう自分がいた。
「ご主人様なら大丈夫です……大丈夫なんです、絶対」
クダモンは自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
「ユイがいたんやもん。そう簡単にやられるタイトくんやないよ」
みなみも私を安心させるというよりかは、自身を安心させるようにタイトが大丈夫だと言ってくれる。
「……うん、そうだね」
でも、その二人の言葉に少しだけ救われる自分がいた。
「…………」
階段を上りきり、家庭科室の目の前にやって来たんだけど、
「…………」
扉を開ける勇気が出ない。
理由はわかっていた。
『愚カナ……アノ子供ハ今『死ノ淵』ニイルトイウノニ……ソノヨウナ者ニ助ケヲ求メルトハ……』
『主』の言葉が、私の内に響いているからだ。
「ーーーールビー?」
みなみが心配そうにこちらを見てくる。勇気を出さなくちゃいけない。
「ーーーーううん、わかってる」
手のひらをドアノブにかける。
「それじゃあ扉を開けるよ」
勇気を持って扉を開けると、そこには。
「ーーーーっ!?」
「────なんでっ、なんであなたがいながらこんなことになったのですか!!!」
クダモンはユイの胸ぐらを掴み、甲高い声で怒声を浴びせる。
「……これでも、タイト氏はもったほうだった」
ユイの口から話されたのはピエモンとの戦いと、その後のことだった。
ピエモンとの戦いの中、無理をして戦うタイトとユイ……結果として、ピエモンに勝利することができた。しかし、ピエモンを倒したタイトは相打ちになったように倒れ、全身の古傷から『砂』のようなものが流れ始めた。
タイトの治療の為、手元に残った最後の『アンプル』を使用しことなきをえたが、意識は戻らず、肉体の『変容』も見られない。古傷から『砂』のようなものは出なくなったが、かつてのように『肉体』の表面からは消える様子がない。
急いでこの拠点に戻り治療を再開するが、『肉体』は至って健康そのもので、意識が戻らないことが異常なぐらいだった。
「ノルン様……イグドラシル様ならわかると思うのでありますが、今は神の身元まで行く手段がありませぬ」
ユイの言葉から、今のタイトの体調が悪かった事に気がついてしまう。
「────っ、そんなっ!?」
クダモンは衝撃のあまり卒倒してしまう。
「……タイトはっ、タイトの意識は戻るの?」
ユイは首を振った。
「拙者にはわかるはずもありません」
「……ただ」
ユイは徐に羽毛の中から、一つの手紙を取り出した。
「今はこれを読んでいただきたい」
『『主』と戦っているみんなへ
この手紙を読んでいるということは、きっと俺は再起不能になっていると思う。
この戦いが始まる前……メギドラモンとの戦いから、肉体の不調を感じている。正体はわからないが、消えていた『古傷』が現れ、肉体と『霊』が少しずつ削れていくのがわかった。
もし、『主』も『ピエモン』も倒せているのであれば、三つだけ指示を出す。そのなかから、相談して選んでくれ。
一つ目、前に俺が言った通りテトが来るまで『籠城』すること。
二つ目、『主』と戦うのを決意し、『四聖獣』を探すこと。
三つ目、『主』から逃げ、水無瀬ミユキの能力を使い、元の世界に帰ること。
安全性の高い順に説明させてもらった。
一つ目は、俺の最高戦力が『準備』が整ったら俺を迎えに来る。多く見積もっても、この世界の基準で二週間……そのときまで、『主』の猛攻を耐え続ければ勝利することができる。
二つ目は、正直に言って難しい。
『四聖獣』の居場所はわかっている。だが、『四聖獣』が倒せなかった『主』の本体と正面切って戦えるぐらい強くならないといけない。ユイの本領が発揮できない今、最低でも『究極体』が揃わなければ勝ち目は薄いだろう。
三つ目は、不可能に近い。
この世界は『主』の体内といっても過言じゃない。そんな世界で、無理に脱出しようとすれば、水無瀬ミユキの身体が奪われる可能性が高い。そうなれば今までの戦いは水の泡だ。
この三点の指示と理由を元に考えて欲しい』
「……なに、これ?」
私の手から溢れた手紙。その内容に、私は動けずにいた。
タイトからの手紙……きっと、昨日、ユイに怒鳴られた時に書かれた物だ。そのタイミングしか書く時間なんてなかったはずだ。
『どういうことでありますか、いったいっ!!!』
『あなたそれを本気で言っているのですか!!!』
『もう少し自分に気を遣ってくだされ!!!』
『俺が……拙者がどれだけ心配したと思っているのでありますか!!!』
『こんな作戦認められないっ!!!』
『あなたの体調をよく考えて行動してください!!!』
『ちゃんとっ、目を見て話してくれよ!!!』
『なんでっ、なんでそんなに無茶をするんだよ!!!』
『……なに、これ?』
『こんなの渡されたって納得いかないんだよっ!!!』
『答えろよっ、答えてくれよ!!!』
『どうしてだって聞いてんだよ、マナト殿!!!』
ユイが激怒していた理由がわかった。ユイの質問の片手間にこの手紙を書いていたんだ。
「なんだよ、タイトは最初からわかってたって言うのかよっ!!!」
────ガンッ!!!
ブイモンが地面を叩いた。
悔しくて叩いたんだと思う……私も悔しくてたまらない。
「……これが、私を救おうとしてくれた人の残したもの」
水無瀬ミユキが手紙を持って読み始めた.
「……ウチのせいか?」
ボソリとみなみの、みなみの口からそう聞こえる。
「ミナミ?」
みなみの顔は真っ青になっていた。
「ウチがあないなことを考えなければ、タイトくんはっ、ああならんかったんかっ!!!」
みなみの声が響き渡る。
(……ああ)
そうだよと口に出そうになった。
「…………っ」
口に出そうになった言葉を必死になって止めて、みなみを
「────
水無瀬ミユキが動いたのが見えた。
「違う、それは違います」
タイトの手紙を持った水無瀬ミユキがみなみの肩を抱いた。
「……で、でもっ!?」
「あなたのせいじゃない。彼がこれを残した意味を考えてください」
手紙をみなみに渡して、見せる。
「…………」
『究極体が揃わなければ』という言葉を指を指す。
「『籠城』するのもも『戦う』ことも、あなたの力が必要じゃなきゃ、こんなふうに書かないはずです」
手紙を見せつけ、水無瀬ミユキは言う。
「あなた達なら、この状況を打破できると考えて残したのではありませんか? ……そうでなければ、このような手紙は残しません」
「…………」
「だから、今は前を────
「「「────っ!?」」」
大きな音が鳴り響く。
『────
タイトの『ブレスレット』とクロスローダー? から、男性に寄った機械音が響き渡る。
『downloadしたdataをinstallしますか?』
『Yes Yes YES!!!』
クロスローダー? からの質問に『ブレスレット』はなんども肯定する。
「……なに、これ?」
そのすぐ後に、『タイト』の周りが『真っ白』に光り始める。
『install active』
『install completion』
光はタイトの体に少しずつ、少しずつ吸い込まれていき、まるでタイトの中に『データ』を入れているように見えた。
「なんのデータをインストールしてるんや?」
みなみの言葉に首を振る。
ただ、その場の異様な光景に目が離せない。
『installしたdataを起動しますか?』
『Yes Yes YES!!!』
データ、を起動?
「……なにを、起動した?」
ユイが警戒心マックスでタイトの体を包む光を睨みつける。
「
その言葉と共に、
────バリィン!!!
鏡の割れるような音と共に、光が砕け散った。
「
その光の中心で声が発せられる。
「「「────っ!?」」」
私はそれに向かい、デジヴァイスを掲げた。
「デジモンが一人、二人、三人……見知った顔が『1人』いるね」
光の中心にいる『彼』。それは間違いなくタイト……だけど、雰囲気が違う。目つきが私とみなみを『虫』のように見つめる視線が気持ち悪くてしかたなかった。
「……なにものでありますかっ!?」
ユイも異常性に気がついてるのか、『彼』に話しかけた。
「…………タイト、とは言わないのかい?」
「タイト氏は絶対に『デジモンを『人』として数えない』っ!!!」
『彼』の疑問を即座に否定するユイ。
「……やられた……もともと『僕』には騙す気はなかったけど、もう少し穏和にしてくれてもいいじゃないか」
呆れたように、小馬鹿にしたようにタイトの体を操る『彼』……その姿に少しだけ苛立ちを感じてしまう。
「────ルビー殿」
「わかってる」
ユイに言われ、ポケットの中のデジヴァイスを握りしめたその時だった。
「
「
まるで『彼』が何者かしっているかの言動……そして、
「
『彼』はその言葉に微笑んだ。
「やあ、ひさしぶりだね……クダモン」
赤と黒の瞳だけがこちらを見ていた。
……ということで、第四章『上』 『Saving Survive Start』終了です。
気になる幕引きですが、8月1日までに最低限ここまで投稿する予定だったので、7月は少し急ぎ足になりましたがここで話を区切らせてもらいます。
第四章『下』からは主人公を変えて『ルビー』と『みなみ』を主軸に書いていくつもりです。タイトルも変えさせていただきます。
今後『タイト』はどうなるのか、ルビー達は新たな『試練』をどう乗り越えていくのか……ブイモンとギルモンの進化の『到達点』はどうなるのか。
次回より楽しみにしていてください。