産まれた推しの子の電脳物語   作:阿後回

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「……だ」

「ーーーーって、言ってる」


(……なんだ?)

場面は森の中へと移り変わり、子供()は必死になって走っていた。

「右から来るぞ!!!」

「大丈夫!」

ーーーーを狙う敵を察知し、指示をする子供()。それに息を合わせ、指示に従う『ーーーー』。

「ふっ……はあっ!」

ーーーージュッ……パン!!!

背後からのの『酸性の泡』攻撃を避け、ーーーーは大きく息を吸う。

「ーーーーぷっ……ぷぷぷ、ぷーーーーっ!!!」

ーーーーパン、パンっ、パパパパンっ!!!

敵の『泡』よりも大きく、そして大きな音を立てながら、ーーーーの『泡』は敵を薙ぎ倒していく。


「……ふう、こんなもんかな?」

「依頼、達成だね!」

多くのデジモンを倒して、彼らは喜びを分かち合う。その姿を見て、俺は安心した。

(なんだ、幸せな夢も見れるんだ)

地獄のような夕焼けの浜、守ったはずの他者が自身を庇って死ぬ夢。どちらも『夢』でありながら、やけに『現実味』をおびていた。それらの『夢』を見させられ続けるのではないかという不安感が募っていたのだ。

(これなら少しだけ安心できるな)

「ーーー、早く行こっ!」

「そうだな、ーーーーっ!」

ピンクの体を弾ませて、自身の三倍くらい大きな袋を引っ張るーーーー。その後ろで、自身と同じぐらいの大きさの袋を持つ子供()。どちらも期待に胸を膨らませながら扉をくぐり、中学生ぐらいの受付の少女へとその荷を渡す。


「今回の査定はこちらになります」


ーーーーチャリン!

『……えっ!?』

幼き子供()の手のひらに乗せられる『2枚のコイン』。

(たった、……たったそれだけ?)

ゲームだったら、どんな雑魚でもたくさん倒せば、数に応じた分の金ぐらいはもらえていた。だけど、受付の少女からもらえた金額はあまりにも少ない。


「……にしても、これだけ倒してたった『200bit』か」

「あんなに頑張ったのにね」


(ーーーーっ!?)

今、なんて言った?

「倒した敵が落としたアイテムを売って、これぐらいなのはどうしても納得できないんだけど……しょうがないか」

子供()はなにを言ってるんだ?)

まだ、親に守られて当然なはずの小さな子供が、金を稼ぐ為に戦い、必死になってアイテムを集め、依頼を達成している時点で異常な行為だ。そのうえで稼いだ金額がたった200bit……おかしいとは思わないのか?

「……ーーー、やっぱり進化したほうがいいんじゃない?」

「……やるべきことがあるからね。自分のことを優先することはできないよ」

そう言って扉を潜る子供()とーーーー。

(…………?)

俺の体は『なぜだか』そこに止まっていた。


「ーーーー()()()()()()?」

背後から植物の体のデジモンの甲高い声が聞こえてくる。

(ーーーーっ!?)

その声を聞いただけで、体が思いっきり固まってしまう。嫌悪感といらだちが体を駆け巡り、殺意が溢れてくる

…………が、『振り向くことができない』。


()()()()()()()()()()


先程の受付の少女との会話が聞こえてくる。


「今日はこれだけ稼いでたのに、騙されるんだもの」

「しょうがないじゃない。三ヶ月も経つのに、デジモンもまともに進化させられないガキなんだから」

「まっ、私達の懐があったまるから別にいいんだけどね」

「今日はこのお小遣いでなに食べようか、『パルモン』?」

「そうね……ちょうど、新しくカフェができたみたいだから、そこでケーキでも食べない?」

「いいわねっ! これだけあれば、期間限定メニューでも食べられるわよ!!!」



少女達は嗤う。

小さな子供に向けて嗤う。

働く者に対して嗤う。

異常な者に対して嗤う。

(……なん……いや)

(ああ、そうだった)

(俺は、知っていたはずだ)

(……に……い)

口から溢れた言葉を呑み込む。

思えば失望『した』はここからだった気がする。

(ーーーーおえっ)

呑み込んだ声に吐き気を催しながら、前に進む。

そうして、『僕』は『翡翠』色の光に呑み込まれていった。



第三話 夢と魂

 

「繋がる空眺め、ホッと一息ついた。タイムカプセルには、思い出詰め込んだよ」

 

 一人の幼児(おとこのこ)が歌を歌っている。

 

「パパとママには秘密して出かけよう。僕にはみんなのチカラがついてる」

 

 窓から日が差し込む部屋、男の子が抱きしめるピンク色のデジモンが、体を揺らしながら楽しそうに笑ってる。

 

「行こう、未来の冒険者。探そう、つつむ光たちを」

 

 男の子はアカペラで歌う。

 

 聞いたことのある歌だ。しかし、どこで聞いたかは思い出せない。きっと、ずっと、ずーっと昔だ。それでもその歌は私の心に響き渡っている。

 

「毎日すぐにほら、過ぎ去って行くのさ。昨日までの出来事ぜんぶ忘れず持ってる」

 

 がたん、と音が鳴った。部屋の戸が開いた音だ。

 そして、男の子の歌が止まる。

 

 ────ぱちぱち、ぱち……と、男の子とデジモンではない誰かの拍手が聞こえてくる。

 

 

()()()()()

 

 

 私はその声に急いで振り返った。

 つい先日まで毎日見ていた顔があった。

 つい先日まで聞いていた声の主がそこにいた。

 でも、それ以上に懐かしくて、それ以上に『嬉しい光景』がそこにあった。

 

「……母さん?」

 

「タイトの歌ってた歌は、聞いたことのない歌だけど、ママ聞き惚れちゃった」

 

 首を傾げた男の子を撫でる少女。その姿に戸惑ってるのか、ソワソワとピンク色のデジモンに視線を向ける。

 

「……コロモン」

 

「────うん! 僕もタイトの歌が好きだよ!!!」

 

 笑顔で答えるデジモン。

 

「……だから、続きを歌ってほしいな」

 

「えっ、続きがあるの!? ママも聞きたい!!!」

 

 二人が目を輝かせながら、男の子へと笑いかける。

 

「────っ、……うっ、うん。内緒にしてた事は、君への贈り物さ。新しい世界旅立つ準備しよう」

 

 男の子は最初は少しだけ戸惑っていた。それでも頷いて、続きを歌い始めた。

 

「夢の中での出来事は本当さ。勇気を持って前へ進んで行こう」

 

 歌はたどたどしく、拙いものだったけど、なにかを思い出すように、幸せそうに歌う男の子。歌詞も男の子の心象を表すかのように、サビに向かってアカペラの少しずつ声が高くなっていく。

 

「行こう、未来の冒険者。探そう、つつむ光たちを」

 

 サビが始まり、同じ歌詞が繰り返される。

 

「明日にはいくつもの夢が待っているのさ」

 

 昨日から明日へと歌詞が変わる。過去から未来へと歌の意味が変わる。

 

「今よりも強くなれるよね、僕らはきっと」

 

 そして、最後にそう締めくくり、男の子の歌は終わってしまった。

 

「……どうかな?」

 

「うん、よかったよ!」

 

 少女へと恥ずかしそうに聞く男の子。少女は満面の笑みで少年を褒めた。

 

(…………)

 

 その光景を見て、やはり自分は正しかったのだと確信した。少女と男の子……いや、ママとタイトがいる生活がそこにあった。

 

(……たぶんこれは夢だ)

 

 じゃないと、わからないことがたくさんあった。

 タイトが小さな頃の姿をしてることやママがつい先日あった姿よりも若々しいことの説明がつかない。

 

(……でも)

 

 少女(ママ)がいて、男の子(タイト)がいて、先生(お兄ちゃん)がいて……大好きなみんながいる場所に私がいる。

 

(それが、『今』の私が望んでること)

 

 

「タイト、他の歌を歌ってよ!」

 

「他にもあるの!? 私も聞きたい!!!」

 

 

 二人に促されるまま、歌を歌い出すタイト。その光景に背を向ける。

 

(私には叶えなくちゃ、いけないことがあるから)

 

 そう思って、私は走り出した。

 

 

 

 

 

「────やっと、起きた!?」

 

 目が覚めると、ブイモンの顔が目の前にあった。

 

「……あれ?」

 

 なんで私は寝てるんだと、頭が混乱する。

 

「さあ、早く行くのですぞ!」

 

「ギルモンとみなみちゃんは、練習を続けてるよ」

 

 そんななか、ユイとイグドラシルによって、引っ張られ立ち上がらせられる。

 

(…………あっ、そっか)

 

 今朝のことを思い出した。

 イグドラシルに『忠義の決意』を渡された後、

 

『それじゃあ、それに慣れるために体を動かそうか』

 

 ……と言われ、限界まで走らされたのを思い出した。その後、みなみよりも先に気絶してしまったことを思い出した。

 

「ギルモンっ!!!」

 

「わかった!!!」

 

 みなみとギルモンは運動場の中心で、『進化せず』にガルルモンと戦ってる。

 

(…………)

 

 さっきまで見ていた夢のことを思い出した。

 

(今のままじゃいけない)

 

 みなみ達を見て、体を奮起させる。

 

「……ブイモン、行こう!!!」

 

「────おうっ!!!」

 

 私達はガルルモンに向かって、走り出したのだった。

 

 

「……うん、青春だね!」

 

 ルビー殿が走り出した姿を見て、イグドラシルがそう言ったのを冷ややかな目で拙者は見つめる。

 

「……ん?」

 

 本来なら安静にすべきタイト氏の体を使って、イグドラシルはこちらを首を傾げながら見つめてくる。その厚かましさにいらだちを覚えつつも、なんとかアンガーマネンジメントをして、頭を冷やす。

 

「……で、貴殿はなにをやってるのでありますか?」

 

 いらだちを抑え、できうる限り冷静に努めて、拙者は質問した。

 

「……なにが?」

 

 ……のだが、意図が伝わっていないようだ。

 

(…………こいつっ!!!)

 

 

「昨夜、タイト氏の回復に務めると言ったではありませぬかっ! 貴殿は寝ていなければできないと言った。それなのになぜ起きているのかと聞いているのであります!!!」

 

 怒りの余り声を荒げてしまう。

 

(……いかん、いかん)

 

 そう思いながら、頭を振って怒りを発散する。

 

「────ああ、そういうことか」

 

 ……と、そのような声が聞こえてくる。腑に落ちたようなその声に耳を済ませたとき、

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 イグドラシルの聞き捨てならぬ一言が耳の中に入って来た。

 

「……それは、本当でありますか?」

 

 疑念を抱きつつも、はやる気持ちを抑え、イグドラシルに質問する。

 

「あくまでも、『思ったより』だけどね。彼の心の休息も必要だし、時間はかかるけどね」

 

 軽く言ったその一言に、少しだけ安堵を感じる。

 

(……思ったより、でありますか)

 

 彼の休息……という言葉に引っかかりつつも、次の質問を頭の中で整理した。

 

「だいたい、どれぐらいが目安なので?」

 

 正直言って、拙者の私見によれば、ルビー殿やみなみ殿ではこの世界を救う見込みはゼロに等しい。昨日のイグドラシルの言葉を聞いたらなおさらであろう。

 

 タイト氏の復活が早いのであれば、それに賭けた方が希望が見えるというものだ。

 

「元々の見込みは二週間ってところだけど……今は一週間いくか、いかないかってところだね」

 

「────っ!?」

 

(一週間も短くっ!? ……さすが、タイト氏。耐久力がテト殿並みですなっ!!!)

 

 驚愕と安堵が押し寄せてくる。

 希望が見えてきたおかげで、戦う意欲も湧いて来た。

 

 

「もちろん、『彼』が今後耐えられるかどうかが鍵になるとは思うけど」

 

 

 そして、イグドラシルの口から不穏なセリフが聞こえてきた。

 

「……耐えられるかどうか?」

 

 なにに……とは、聞いておりませんでしたな。

 

「今朝は……そう言えば、君はいなかったね」

 

 今朝? 

 

「定時の巡回の時間でありましたからな」

 

 タイト氏が毎日行っていた拠点の点検と巡回。いくらタイト氏が倒れたからと言われましても、敵はいつ襲ってくるかわからない為、拙者はそれに出かけていた。

 

 ルビー殿達が食事をとっている間に、なにかあったのでござろうか? 

 

「じゃ、少しだけ話そうか」

 

 

「……と、言うわけさ」

 

 今朝のことについてイグドラシルから説明を受ける。

 

「────そのようなことが」

 

 ルビー殿とみなみ殿の喧嘩に作戦の穴、それを打破できるアイテム……胸熱展開で実際に目で見ておきたかったのであります。

 

 ……が、

 

「…………」

 

 頭の中で、イグドラシルの昨日の言葉が妙な引っ掛かりを覚えてしまった。

 

「どうかしたのかい?」

 

 ……この際、本人に聞いたほうが得ですな。

 

「ふと思ったのですが、『魂』と『記憶』とはいったいなんなのでありますか?」

 

 拙者が気になったのはその言葉でありました。

 いや、他にも『主人公補正』やら『ヒロイン補正』やら気になるセリフがあったのは事実でありますが、こちらのほうが気になって仕方がないのであります。

 

「…………っ、そういえば説明していなかったね」

 

 一瞬だけ、固まったイグドラシル。

 

「…………?」

 

 周囲を見まわし一言、

 

「……、あれならいいか」

 

 

「────そこやっ!」

 

「────やあっ!!!」

 

 

 戦っている『みなみ殿』へと視線を向けて、冷や汗をかいているように見えるのはなぜだろうか。

 

「なにか、不都合なことでも?」

 

「……いやなに、聞かれたくない人物がいたからね。話せなかっただけさ」

 

「…………」

 

 聞かれたくないこと……みなみ殿に? どうして? 彼女にはなんの才能もないとイグドラシル本人が言ったはずでは────

 

 

「『魂や記憶ってなに?』……という質問だったね」

 

 

 拙者の思考を区切るように、イグドラシルは言葉を発した。

 

(……) 

 

 怪しい。

 イグドラシルはなにかを隠している。

 

「質問に質問を返すようで悪いけど、『魂や記憶ってなんだと思う?』」

 

 だが、イグドラシルは拙者の思考を回すのを質問によって封じてきた。

 

「魂や記憶……でありますか」

 

「うん」

 

 ここはイグドラシルの質問に答える以外ないのだと判断して、思考の重点を質問に回し始める。

 

「『記憶』は脳が保存している記録。『魂』はその記録から生み出されるコミュニティを維持する為に出力されたもの……だと思うのであります?」

 

 末堂殿の論文にそのようなことが書かれていた気がする。この質問を受けるのであれば、もっと真剣に読んでいればよかったのであります!!! 

 

「……まあ、そんなとこだよね」

 

 イグドラシルはがっかりしているみたいだ。

 なにを? 質問に答えたことであるのだろうか? その意図は掴めない。

 

「じゃあ、さらに質問だ。『デジモンにとって魂とは?』、『デジソウルってなに?』」

 

 さらに質問を……うーん。

 

「デジモンにとって……脳の代わりにデジコアに刻まれた記録から発せられる……いや、そもそもデジモンが死んだ後、デジコアを元にデジタマは形成される。しかし、デジタマ化した後のデジモンには記憶はない……そもそも、デジソウルっていったいどのようなエネルギーでありますか? 感情自体を物質化させ、エネルギーに変えるというのはどれだけの…………っ、わからないのであります!!!」

 

 言葉によって思考をまとめようとするが、うまくまとまらない。これはいったい────

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 イグドラシルは得心が言ったと言うように、笑って見せる。

 

(ん、んん、んっ!?)

 

「必死に考えたものだよ。十八年前に『サトル』と一緒に考えたっけ? 人格をアバター化させるにはどうするか。自意識と他意識の認識の違いはどうすればいいのか。老化はどう反映するのか。精神のデータ化の論文だけじゃ、どうにもならないってね」

 

 サトル? 

 

 たしか、そのような名前に心当たりが、末堂殿の論文の協力者の欄に……サトル・カミシロって名前が……、

 

 

 ────『神城悟留』っ!? 

 

 

「……あんた、神城に関わってたのでありますか!?」

 

「……ん、気づいてなかったのかい? 四宮や四条みたいな国家を支配している財閥の目を盗んで『国家』に関わるなんて、『人間』には難しいだろ?」

 

 当時の日本は四宮全盛期……その目を掻い潜り、できるのはデジモンか神ぐらいしか存在しない、と思考が結論づけるのでありますが、……それは、そう、でありますが────

 

 

(どれだけ前から、あの世界に関わっていたのでありますかっ!?)

 

 目の前の存在があの世界にどれだけ前から関わっていたのか、驚愕に染まった。

 

 

 それに、『彼』を死刑まで持っていけたのも僕のおかげだからね。

 

 

 そして、彼の口から異様な一言がこぼれ落ちたのを、拙者の耳は取りこぼさなかった。

 

「……で、話は戻すけど、『魂』や『記憶』、『デジソウル』についてだったね」

 

 冷静に流そうとするイグドラシル。

 

「今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのでありますが、そうでありますな」

 

 拙者も気になる言葉を脇に置き、今はこの答えに集中することに決めた。

 

 

「結論から言おう。『記憶』は君の言ったとおり、『記録』だ」

 

 

(……つまり、もう一つが間違いだと言うこと)

 

 イグドラシルの言葉を待つ。

 

 

「……『魂』はその『記録の保管庫』といったところだね」

 

 

 違和感のあるその言葉に、得心がいかない。

 

「……保管庫?」

 

 言葉を繰り返し、イグドラシルへと聞き直す。

 

「魂はどこにあると思う?」

 

 イグドラシルの質問。

 

「脳ではないのでありますか?」

 

 その答えは、脳ではないのかという回答。ただ、それだけでは足りないのはわかってしまっていた。

 

「心臓移植などでも、人格が変わることが多々あるだろう?」

 

「……そういえば、そのようなこともありましたな」

 

「魂は『比率は違えど』全細胞に埋め込まれている。ただ、『脳』が主要な機関をになっているというだけでしかない」

 

 主要な、機関でありますか。

 

 その言葉に頭を悩ませる。

 

「…………」

 

 だが、未だに得心がいかない。

 

「おや、不満そうな顔だね。でも、これには証明がある」

 

 でも、イグドラシルには確信があるようだ。

 

「デジモンの記憶はどこに保管されてるかな?」

 

「……それは」

 

 その質問は『わからない』。

 拙者の答えは『わからない』でしかない。

 

 

「さっきも君が言ったとおり、『どこに保管されているかわからない』……それが、正解だ。デジコア以外に保管場所がないにも関わらず、死亡時には、人格や記憶は『ほとんど』のデジモンには引き継がれない。もちろん『例外』もいるけどね」

 

 

 当たっていた答えと、それとは違う『例外』。

 

 一乗寺賢の『ワームモン』。

 

 大門大の『アグモン』。

 

 デジタマ化しても記憶を維持し続けた例外中の例外。

 この二つの事例が、頭の中で思い出せる。

 

 他には、調停者となった2体のデジモン。

 彼らも例外として記憶の維持を可能としている。

 

「運か天命か……あるいは、『人間』に起因するのか。わからない……けど、これだけは言える」

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()

 

 

 

 

「────っ!?」

 

 イグドラシルの驚愕の一言に体が固まった。

 

 

「疑問に思わなかったのかな? 『タイトの肉体になぜ、『別の世界の人間の遺伝子』が適合するのか』って」

 

 

「他人の臓器を移植するだけでも肉体に負担がかかる。それなのに、別の世界の人間の遺伝子なんて、『構造自体が違う存在』が拒絶反応を起こさなかったのか?」

 

 

「ましてや、『魂』なんて不合理なものを『全く別の世界の人間』に移植するなんて、おかしいって思わなかったのかな?」

 

 

 ずっとどこかで引っかかっていた現象だ。だが、『タイト氏』だからなんとかなったのだ……と、どこかで思い込んでいた。

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 しかし、『元凶』は別にいた。

 

「星野アクアマリンの肉体をコピーした時に、『遺伝子』が適合するように肉体を改造した」

 

「時間軸を弄った時に、時空間移動に耐えられるように、肉体と魂に仕掛けを施した」

 

肉体(うつわ)に魂が適合するように、主人公達の『魂のデータ』で適合するように身体(かた)を整えた」

 

「移植した『(タイト)』が耐えられるように、『過去の記憶(わるいデータ)』を隔離した」

 

 

 

()()()()()()()()()、『()()()()()()()()()()()

 

 

「────っ!?」

 

 つまり、こいつが全ての元凶。

 

 タイト氏が旅に出なければならなかったのも、

 

 タイト氏が苦しまなければならなかったのも、

 

 タイト氏が家族と離れ離れにならなければならなかったのも、

 

 タイト氏が世界を救わなければいけないのも、

 

 タイト氏が幸せにならないのも、

 

 こいつがっ、こいつが…………っ!? 

 

(────っ)

 

 怒りに我を忘れそうになった時、

 

 

『たのもーっ!!!』

 

 

 大きな声で、戸を開いた時のことを思い出した。

 

「────っ、…………」

 

 そして、思いっきりくちばしを噛み締める。

 

 

「……どうしたんだい? 言いたいことがあるのだろう?」

 

 

 質問も罵声も受け止める……といった表情のイグドラシル。

 

「……たしかに、聞きたいことはたくさんあるのであります」

 

 聞きたいことも、

 

「一発どころか思いっきり、たくさん殴りたい気持ちもあるのであります」

 

 殴りたいこともたくさんある。ただ、

 

 

 

「でも、拙者が聞くことではありませぬ」

 

 

『俺』には聞く権利がない。

 こいつがいなければ、『俺』はマナト殿に出会うことすらできなかったのだから。

 

 

「────ブイモンっ!!!」

 

「────ギルモンっ!!!」

 

 

 校庭に二人の女子の声が響き渡る。

 

 

「『ブイモンヘッド』!!!」

 

「『ロックブレイカー』っ!!!」

 

 

 その声に答え、2体のデジモンはガルルモンに痛恨の一撃を喰らわした。

 

「────ぐぁああああっ!?」

 

 大きな悲鳴をあげ倒れていくガルルモン。

 

「ガルル……ガブモンっ!?」

 

 その姿は退化してしまい、ガブモンへと姿を変えるのであった。

 

「────よしっ!」

 

「やった!」

 

 二人はそれぞれのデジモンと検討を讃えあう。

 

「……どうやら、あちらも終わったみたいだね」

 

 そう言いながら、彼女達のほうへと向かうイグドラシル。

 

「行くのでありますか?」

 

「次の修行の指示は出さないといけないからね」

 

 

 

「やったな、ギルモン」

 

「うん……ミナミは大丈夫?」

 

「もーまんたい、もーまんたい……まだ、いけるで」

 

 辛そうな表情をしながらも、『陰ることない』光を纏いながら立ち上がる『少女』。

 

(……うん、やっぱりこの子は)

 

 僕はその背中を引き止めて一言、

 

「少しだけ休憩にしようか」

 

 と告げる。

 もちろん、ブーイングがあったものの、彼女達はそれぞれ別の方向で休み始める。

 

 そして、ピンク髪を靡かせた彼女を見て、疑念は確信へと変わっていた。

 

(…………かな)

 

 そう感じとった自身は、少しずつ体力の回復へと近づいていくのであった。





「ルビーと」

「みなみの!」


「「デジモン紹介コーナー』!!!」」


「本番ではギスギスしてる二人。番外編で仲良くしてるのを見て違和感を感じている解説のイグドラシルです」

「別に仲が悪うわけではありません!」

「ちょっと喧嘩してるだけだよ!!!」

「じゃ、今回のデジモンはこちら」


「「「『カラテンモン』っ!!!」」」


「ユイが完全体に進化した姿だよね?」

「義経公の伝説にでとる鴉天狗が元ネタなんやろうか?」

「有名なのはそこらへんだね。神通力だったり、剣術だったり、義経の伝説に出てくる鴉天狗に近い印象を受けるかな」

「でも、中身が『アレ』なんだよね」

「そうやなぁ、チキン両手に登場は控えてもろて、もうちょいシャキっとしてほしいわな」

「……それには、僕も同意だね」

3人が大きくため息をついた。

「それじゃあ、今回の解説コーナーはこれまでということで」

「また、次の話でっ!」

「じゃあねぇ〜〜」
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