(……ああ、また始まった)
今度は、人が溢れる街だった。
太陽が照らす真昼の街には、今まで見てきた世界とはまるで違っていた。デジモン達の姿はなく、街は人が闊歩し、人が賑わう、人の為の世界がそこに『当たり前』の光景として残されている。
「おーい、『ーー』。これから行くところってどんなとこだったっけ?」
「ーーくん、忘れてしまったのですか? これからボランティアに行くところは、『XXX老人ホーム』ですよ」
目の前に歩く『
(……これは、うん
そして、自身もその年齢になっているのを理解できて……正直言って、変な気分になった。
駅まで歩き、電車を乗り継ぎ、山道を歩き、ようやくたどり着いた施設。
「……で、ここがそう……みたいだな」
「そうみたいですねぇ」
二人が目の前の大きな施設を見上げる。
「……たっく、ここまで来るのにどんだけ時間がかかるんだよ」
「ーー……悪い、『ウチ』と関わり合いのない施設を選んだら、一番近くがここだったんだよ」
「いいぜ、別によぉ……俺達も『暇』だからこんなことやってんだし」
(『ウチ』? 『暇』?)
気になる言葉が飛び交う。
冬の街でボロボロになっていた
「二人とも、そんなこと言ってないで早く中に入りますよ」
一人の
「ここまで、時間がかかりましたからね。がんばりますよっ!!!」
「「おおーーーーっ!!!」」
仲良く始まったボランティア。
老人ホームだからといって、介護士や看護師の手伝いをするわけではない。
「このエプロンをたたんでくれるかな?」
「わかりましたっ!!!」
「これからオムツ交換忙しくなるから、◯◯さんの話し相手になってあげて!!!」
「了解です!」
「『ーーー』ちゃ……くんはマジックができるんだったよね。今日のレクリエーションを任せてもいいかな?」
「……はいっ、利用者さん達にも楽しんでいただけるようがんばります!!!」
このように、直接的な仕事をすることは少ない……ただ、
「ご苦労様っ!」
「ありがとねぇ」
「ごめんね、ちょっと頼みたいことがあるんだけど、お願いできないかしら?」
「嬢ちゃん、わりぃなっ!!!」
次々と言われ、頼まれ、感謝される。
(……おかしい)
その様子を見て、えもいわれぬ程の怖気が走る。
(今まで見てきた光景と違う)
今までのものは全て悲しいものだった。
全て苦しいものだった。
だけど、今回は……今回は違っていて、
「よーやく、終わったな」
「いやぁ大変でした」
「……そうか? 案外楽だっただろ?」
「「それはない(ありません)っ!!!」」
「ーーーーにしても、あの爺さん怒りっぽかったですねぇ」
「そうだな、ナースさんにも怒ってたし……ボランティアの俺らにそんな人を任せないでほしいよな」
「……でも、ちゃんと説明すれば納得してくれただろ?」
「……それは、そうですけど」
「俺はナースさん『ここにいていいのかねぇ』ってずっと聞いてた婆さんが気になったな」
「ああっ、家族のおじさんが面会に来てた人ですね」
「別に珍しい話じゃないだろ? ウチの病院でもああいう認知症の婆さんは何人か見たことがある」
「家族らしいおっさんが介護士さんと折り合いが悪そうだったのが気になったんだよ」
「……たしかに、明らかに職員を邪険に扱ってましたね」
「それを見て婆さんが悲しそうにしてたのが印象深くてさ……なんでわざわざあんなことをするんだろうなぁ?」
「そうですねぇ」
「……俺は食事ができない、トイレも行けない、起き上がることもできない、体を動かすこともできないのに『生かされている』人達が気になったな」
「経管栄養の方達ですか?」
「そうそう……そんな名称の管を付けられた人達だよ」
「なにか気になった事でもあるのか?」
「いや……なに、ただ『かわいそう』だなって思ってさ」
「……それは」
「そうだな」
「なんで生かされてるんだろうな?」
「…………わかんねえ」
「わからないですね」
「……」
「……って、暗い話はやめだっ! おい、『ーー』。こいつがここでも女に間違われた話って知ってるか?」
「おい、その話はっ!?」
「えっ、ここでも間違われたんですかっ!?」
「その話はやめろっ!?」
「女子の……それも小学生になっ!」
「それで、それで?」
「しかも、爺さんにケツ触られたんだよっ!!!」
「マジですか!?」
「だから、いい加減にしろっ!!!」
場面が次々に変わっていく。
学校へと行く三人。
ボランティアに参加する三人。
遊びに行く三人。
そうやって、毎日が過ぎ去っていくなかで……再び同じ老人ホームへとボランティアに行く三人だった。
「……あれから、ちょうど1ヶ月か」
老人ホームを見上げる三人。
「早いものですね」
「また、あの人達に会えるといいよな」
「俺、『ーーー』みたいに芸を覚えて来たんだぜっ!!!」
「ギターですかっ、いつのまにそんなものをっ!?」
「夜に密かに練習してたんだよ。あの爺さんがやってたって言ってたからなぁ」
「……独学の1ヶ月の実力でなんとかなるものなのか?」
「……さあ? うまくできなきゃ爺さんにでも聞くさ?」
「……お前なぁ」
「『ーーー』くんは、馬鹿ですねぇ」
「ーーーーなんだとぉっ!?」
「そう言う芸ってのは、こういうのをいうんですよっ!!!」
「ーーーーっ!?」
「ーーーー、手編みのマフラーだとっ!?」
「これはあのおばあさんにプレゼントする為に、必死になって覚えた編み物ですっ!!!」
「……おい、今夏だぞ?」
「頭が悪いとは思ってたが、とうとう季節感までなくなったのか」
「『ーーーー』くんならともかく、『ーーー』くんそれ、酷くないですか!?」
「……いや?」
「別に?」
「…………っ!? 僕はねっ、あのおばあさんが『最近冷えて困ってるのよ』って話を覚えてて、このマフラーを作ったんです。
だから、決して、『季節感がなくなった』訳ではありません!!!」
「ふーん」
「そーなのかぁ」
「あっ、信じてませんねっ! いいでしょう。着いたら説明してあげます!!!」
「ひさしぶりね。以前と同じように私達の手伝いをしてほしいわっ!!!」
元気に挨拶を行うボランティア先の看護主任さん。
「……『○○』さん?」
「
出て来たのは衝撃の言葉だった。
「『○○』さんわねぇ……、本来ならターミナル……いわゆる『看取り』って奴をここで行うぐらい体調が悪かったんだけどねぇ……『○○』さんの息子さんが、
『長生きさせるのが、お前らの仕事だろっ!? 長生きさせられないなら自宅で面倒見るっ!!!』
って、言って連れて帰っちゃったのよ」
なんだ、それは?
「あの息子さん……たしか仕事をしてなくて『生活保護』を受けてるらしくて、たぶん、『○○さんの年金目当て』で長生きしてほしいんじゃないかしら?」
ふざけているのか?
「生命線だから死んでほしくないみたい……こういうのは上が止めてほしいんだけど……結局は私達も『仕事』だから、家族の意向には逆らえないのよ」
あんたはなんでそんなに軽く言える?
「……『□□』さん? 精神病院に行ったわよ」
別の人を聞いても?
「あの人は暴力行為が酷くてねぇ。職員はしょっちゅう殴られてたし、新入りの子なんていびられてやめちゃったねぇ。仕舞いには、他の利用者さんに怪我をおわせちゃったから、しょうがないわよねぇ」
話せばわかる人だった。
「面倒な人がいなくなって助かったわ」
『面倒』って……っ!?
「……『☆☆』さんはセクハラしまくってたから、強制的に退所してもらったわ」
それは……そうだけどっ!
「職員・利用者問わずセクハラし放題で、困った爺さんだったわよ。最終的には問題行動を、他の利用者様の家族に見られて、裁判沙汰になったわね……そのおかげで、あのエロジジイを退所に追い込めたんだからよかったわよ」
なにを喜んでいる?
「……んで、話は終わり? だったら、仕事してもらうわよっ! 早くこっちに来なさいっ!!!」
……どうして?
どうして、そんな『くだらない』ことのように話ができるんだ?
ーーーーたん。
小さな音が耳に聞こえてくる。
その方向を見て、頭が真っ白になった。
「……なんでですかね」
「なんでだろうな?」
話を聞いた二人の少年は意気消沈していた。
「あんなふうになるなら、もっと早くボランティアにくればよかったですね」
「俺も、もっと早く聞きにこればよかった」
そう、看護師の話を聞き、落ち込んでいる二人。
ただ、それよりも、『不機嫌』な顔をしている『
理由は、『同じ』だ。
『元気』な方であった三人を除き、
ぽたん、ぽたん、ぽたん、ぽたん。
水滴が部屋から聞こえてくる。
寝たきりの利用者の『鼻』、もしくは『腹』には『管が』繋がっており、『管』の先には栄養剤の名前が書かれた袋がぶら下がっている。
『鼻や体内に『管』を通して……その『管』から『栄養』を入れなければ、きっとこの人は死ぬのだろうな』と初めて見た時に、……『
いろいろ考えて、さわりを調べた結果『なんてーいーーな』という思いが強まった。
さらに調べて、そこに発生する利益を貪る『
現実ではないと思い込みたくて、もっと調べて、『
そして、今日『現実』を
「(ああ、なんて『
(なんで、こんなに『
「(確実にすり減っていく『
(きっと、この世界の人間は、
「(たしかに、『命』は大事だ)」
フラッシュバックする黒く塗りつぶされた『誰か』。
抱いている腕の中で消えていく『ーーか』。
最後に言い残して、消えてしまった『ーーーーーーーー《だれか》』。
|こんな無駄な◼️の為に◼️◼️◼️は死んだのか《に◼️て◼️まえ◼️よかった》?
「(だけど、
「(蔑んで、恨んで、……そのうえで『
(資源だって、時間だって、お金だって……無駄にはできないのにっ!!!)
一生懸命に、
「(なんて『
「『ああ、俺/僕はなんで『ニンゲン/こんなもの』を救わなきゃいけない/救いたいと思ったのだろうか?』」
「なんで?」
(なんで?)
ーーーー
(……がない)
夢を見る。タイトの夢だ。
体が夢の中に深く沈み込んでいく。そうしているうちに、いつもとは違う違和感に気がついた。
『痛いのは嫌だ』
声が聞こえる。
『苦しいのは嫌だ』
小さな子供の声……たぶん、男の子の声だ。
『でも、もっと嫌なのは『女』と関わることだ』
苦しそうな、とても辛そうなその言葉に、どうしようもなく胸が苦しめられた。
(────えっ!?)
場面が変わる。
青い海、白い砂浜。空に向かって大きく伸びるヤシの木、太陽はサンサンと煌めき、海がその光を反射している。
(……きれい)
さっき聞こえてきた俯いた子供の暗い声とは違って、美しい光景に目が奪われてしまった。
────カンッ、カンッ、カンッ!!!
(……ん?)
砂浜になにかを叩くような大きな音が鳴り響いている。
「メタルティラノモン……木を切ってっ!!!」
「────わかった!!!」
「ゴールドヌメモン、こっちにつんでっ!!!」
「了解っすっ!!!」
「プラチナスカモン、荒い部分を削ってっ!!!」
「わかりました!!!」
ヤシの木……それも、その周辺にあるヤシよりもずっと、ずーっと大きなヤシの木の下で、小さな……昔の小さかった頃のタイトがデジモン達と一緒になにかを作ってる。
近くにいって様子を見ることにした。
「うまいっす!!!」
銀色の……巨大なウンチが大きな声をあげた。
(……うげっ、こいつはっ!? ……って、ん?)
そういえば、ウンチを投げてきたデジモンが……と思ったけど、なんか見た目が違う。
(金色と……銀色?)
やけにキラキラしてる二人のデジモン。その横で、楽しそうにフルーツの山を食べている小さなタイトとメタルティラノモン。
みるみるうちにフルーツの山がなくなって、ここにいる四人のお腹に詰め込まれていく。
「ふぅっ、食った食った」
「このまま眠りたい気分っすね」
「プラチナスカモンもゴールドヌメモンもまだやることが残ってる。作業に戻るぞ」
「タイトの言うとおり、ちゃっちゃと始めるよ」
「「はーいっ!」」
ヨロヨロと立ち上がりながら、なにかを始める四人。そのなにかは、少しずつ、少しずつだけれど、ひとつの形に変わっていく。
朝も、昼も、夜も……みんなで声を掛け合いながら、できることを頑張りながら、一生懸命力を合わせて作り上げていく。
…………そして、
「────これっでっ!!!」
「最後っす!!!」
そう言って、最後の釘を打ちつけた時、そこには一軒の家が完成したのだった。
「「「「完成だ────っ!!!」」」」
全員が喜び、肩を寄せ合い、完成した木造の一軒の家の中に入っていく。お世辞にも綺麗な家とは言えない。だけど、
(……すごい)
私はその家を見て、タイト達を見て、ただ『すごい』と……そう思った。
途中、デジモンと戦ったこともあった。
雨や風が強い日や大きな津波が押し寄せる日もあった。
タイト達を邪魔しようと襲ってくる人やデジモンもたくさんいて、とても……とっても嫌な気分になった。
それでも、一軒の家を完成させたタイト達を見て……本当にすごいと思ったのだ。
「やったな、みんなっ!!!」
「全部、タイトのおかげだよ〜〜っ!!!」
「タイトっちだけじゃないっすよ!!!」
「先輩も……すごいです!!!」
タイト達は家具もベッドもキッチンもない家で喜び合う。ただの……ううん、前世の記憶があることを知って余計に思うことがある。
(……なんで、『そんなこと』で喜んでるの?)
私の……ルビーやタイトが小さかった頃でも、『家』はあった。
(ううん、家だけじゃない。私の前世の『さりな』の頃だって、コンビニや病院、アイドル……いろんなものがあったはずなのに)
どうして、そこまで喜びあえるのか理解できなかった。
(……そういえば)
タイトが『
朝も昼も夜だって、海のそばで寝泊まりしてたみたいだけど……普通に寝る場所はあったはず……だ。だから、余計に嫌な予感がする。
(……このあと、どうなっ────っ!?)
『どうすればいい』
夕焼けに染まる海。
『なんでこんな思いをしなきゃいけない』
ビーチを埋め尽くす程蠢く、デジモン達の影。
『……どうすれば安全な場所へ行くことができる!!!』
へし折れた大きなヤシの木。
『嫌だ、死にたくない』
嘲笑う子供達と立てられた不気味な旗。
『せめてムゲンドラモン達だけでも安全な場所に……』
降り注ぐ炎、雷、光、弾丸、爆撃。
『怖い、逃げたい、助けて!』
そんな状況で、必死に逃げる『タイト』達。
『…………どうすればっ』
そのとき、タイトの背中に黒い腕が迫って来た。
(…………えっ?)
倒壊した木造の家の影、
夕陽が照らす海の砂浜で、
私が見たのはそこまでだった。
「本当によかったのかい?」
「…………」
私は山を下り、歩き進める。
「みなみくん達と共に戦ったほうが、勝率は高いだろう?」
「…………」
背後から聞こえる教授の声を無視して、歩みを進める。
「一旦冷静になったほうがいい。時間がないのは理解している。だが、正面から行っても、解決するとは限らない」
「…………」
手元にある『タイトが残してくれた地図』は、もうすぐたどり着く『目的地』を指し示している。
「おい、聞こえてんのかよっ!!!」
「…………」
私のガブモンが後ろで怒鳴る。
「……ルビー?」
ブイモンは心配そうに私の手を握る。
「…………」
それでも、私は…………、────っ!?
目の前に、『人工物』が見える。
「────ルビーっ!?」
私は勢いよく走り出し、山を下っていく。
「はっ、はっ、はっ……はっ」
息を切らせ、風を切り、走り抜けていく。
……ついに、人工物は目の前に現れる。
「……ついた」
タイトが言っていた『四聖獣』ってデジモンがいる場所のひとつ。
「遊園地」
(ここが……ここが、タイトの言ってた場所っ!!!)
「……はあっ、はあっ……はあっ、はあっ」
息を整えながら遊園地の入り口を見上げる。
(ここに、『四聖獣』がいるっ!!!)
そう思うと、手に力がこもってしまった。
「────ルビーっ!?」
たったった……と、背後から私を呼ぶブイモンの声と走る音が聞こえてくる。
「はあっ、はあっ……ルビー、早くつきたいのはわかる。だけど周りを……、────っ!?」
「そこにいるのは誰だっ!!!」
「ほっ、ほっ、ほっ!」
「
全身モジャモジャの原始人のようなデジモンはそう言った。
「────でなぁ、いきなり『主』の手下共がいなくなりおったから、なにか異常事態が起きているのではないかと思案しておっての。
そんなところで来たのがお主たちであったというわけじゃ」
「はあ、そういうことでしたか」
前から会話が聞こえてくる。
「ハル……このジジイはかなりのやり手だ。ここにいる
呆れるガブモンに、
「誰が、ザコだ────っ!!!」
「誰がお荷物だ────っ!!!」
「うるせえっ!!!」
「────ぴえんっ!?」
「逃げろぉ────っ!!!」
絡む小さなケモノ……違う、デジモン達。
「これこれ、子供達をそう邪険にするでない」
「────ふんっ!」
俺はただ、歩きながらその光景を見ているだけだ。
「ジジモンは『四聖獣』……ここに強いデジモンがいる事を知っておられましたか?」
「……いんや、そのような話、聞いたことがない」
「……そうでしたか」
「ふんっ、あいつらの話が出鱈目だって────
「ですが、ここには地下があります」
「それは本当ですかっ!?」
「地下だとっ!?」
「もしかしたら、そこになにかしらの『謎』があるのかもしれませぬな」
「ぜひっ、案内してくれっ!!!」
そうやって、纏まっていく話を聴きながら彼らについていく……いや、それも、なあなあとただ流されての行動ってだけなのは理解していた。
地下を歩く途中、彼らの後ろを歩く。
迷子にならないように、彼らの後ろを歩く。
手を離さないように、彼らの後ろを歩いている。
「……なあ」
ただ、少しだけ我慢ができなかった。
「なあ」
手を繋いでる相手に声をかける。なんどもなんども声をかけ続ける。
「…………っ」
それでも、反応がないから……つい、
「おいっ、ルビーっ!!!」
そんな大きな声で呼んでしまった。
「……っ!?」
ガブモン達がこちらを見る。
(……しまったっ!?)
そのとき、自分の声が大きかったことに気がついた。ガブモン達に向かって首を横に振る。
「…………」
なにかを話してるみたいだけど、すぐに前に向かって歩き出した。
「……なに、ブイモン?」
ルビーが声をかけてくれた。
(────っ!?)
ようやく気がついてくれたことに喜び、そして俺は先を歩いてる奴らから目を離さずに、ルビーに話しかける。
「ルビー、大丈夫か?」
ルビーの様子が変なことを聞いた。
「────っ、……なにが?」
ルビーが大きく肩を揺らしながら、俺に聞いてくる。
「朝から……ううん、俺が起きてからなにか様子が変だぞ?」
昨日戦った時はこんなじゃなかった。
もっとハキハキしていて、…………いや、俺が負けた後から朝までずっと気絶してたから、きっとそのあとになにか言われたんだろう。
「…………」
ルビーは黙ったままだ。
「なにか、『あいつ』に言われたのか?」
『あいつ』は限定しない。
今の『みなみ』はおかしいし、その相棒だって信用できない。
ガブモンや教授はなぜ仲がいいのか理解できない。
レナモンはわかるけど……その相棒のあのニンゲン……ミユキのほうはよくわかんない。
『イグドラシル』は怪しげな奴だ。
タイトだって倒れたままで、ユイはその看病をしてるし、クダモンはどっか行ったままだ。
だから、『あのあと』のことを俺は知らない。
「……うん」
ただ、俺の質問にルビーは静かに頷いた。
「『君たちにとってデジモンってなに?』って、聞かれた」
ルビーはそう言った。
「……それが、どうかしたのか?」
『誰に』……とは聞かない。ルビーが頭を悩ませてることは、それが問題じゃない。だから、聞くべきじゃない。
だから、俺はルビーに聞くだけだ。
「…………」
「…………」
「…………」
こつん、こつんと足音が鳴る。
ルビーの声は震えていて、俺にはそれがわからない。
だけど、ルビーは、
「ブイモンはさ」
しばらくたった後、ぽつりと、
「私って、ブイモンにとって『星野ルビー』ってどんな存在?」
そんなことを聞いてきた。
「…………」
…………?
「…………ん?」
ルビーがなにを言ってるのかわかんない。
なんで、いまさらそんなことを聞くんだろう?
俺は大きく首を傾げた。
「俺は最初から言ってたぞ」
そう、最初からだ。
「『お前を待ってた』って」
タマゴから生まれたときからずっと、
「俺にとっては『かけがえのない存在』だ」
「────っ!?」
あの森で待ってたんだ。
「……どうしてそう思えるの?」
ルビーが聞く。
「……わかんない」
それについては俺にもわからん。
「────っ、わかんないのに、そう答えれるんだ」
少し言葉に詰まったあと、怒ったようにそんなことを聞かれる。
(……なにか、怒らせたのか?)
でも、わかんないから自信満々に、
「だって、『待ってた』からな」
俺はそう答える。
「
そう待ってたんだ。
「
晴れの日も、雨の日も、曇りの日も、雪の日も、
春も、夏も、秋も、冬も、
何日、何ヶ月、何年……ずっと、
「
彼女が死んだって、
彼女が産まれ変わったって、
「
俺は信じて待ってたんだ。
「…………」
俺の思いは……そんなところだ……だけど、
「ルビー、お前はどうなんだ?」
お前は俺のことをどう思ってるんだ?
「お前にとって『|ブイモン《俺』ってどんな存在なんだ?」
ただ、俺は知りたいんだ。
恨んでてもいい、怒っててもいい。
ただ、俺は……お前のことを……
「…………」
「…………」
「…………」
「…………わかんないよ」
しばらく待ったルビー言葉は、そんな言葉でしかなかった。
「……ここが?」
「この先から変な気配がする」
そう言って、必殺技で壁をこじ開ける。すると、一本の道が現れるのだった。そうして、先を進んだ場所には……
「…………」
いくつもの瞳を閉じた大きな巨体。
「…………」
白と紫が混じる紫電のような体毛。
「…………」
私達を飲み込むような大きな口と、それだけで踏み潰せる程大きな牙が2本生えるケモノ。
ーーーーカッ!
その巨体が瞳を開き立ち上がる。
「
「『主』に抗うケモノ達よ、その力見せてもらおう」
ケモノの……神との戦いが始まったのだった。
デジタルワールドを守護する四聖獣の1匹であり、西方を守護し鋼の属性を持つ。神話の時代より君臨し続け、他の四聖獣デジモンと同じく伝説の存在であり、その強さは神にも匹敵すると言われている。また、四聖獣デジモンの中でも一番若い存在であるが、パワーは4匹の中でも最高である。その不死と絶大なパワーは、12個の電脳核(デジコア)から生みだされていると言われている。バイフーモンは中立的存在ではあるがチンロンモン同様、基本的には味方になるような存在ではない。必殺技は口から敵を金属化させてしまう波動を放つ「金剛(こんごう)」。この技を受けたものは動けないまま、体が錆び、朽ち果てるまで死ぬことはできない。