「ーーーーなっ!?」
ルビーが倒れた時間と同時刻。
「ーーーーみなみさんっ!?」
みなみとメガログラウモン……いいや、退化したギルモンは事切れたように倒れていた。
ルビーさんの近くにいた私は急いで安否の確認をした。
(よかった、息はあるっ!?)
ただ、『寝ている』だけみたいだ。
(……でもっ!?)
蒼色の光が遠くで大きく光ったのが見える。
(ーーーーっ!?)
私は急いでルビーさんとギルモンを引きずって走り出した。
「『
大きな雷が目の前に落ちてくるのを感じ取った。
大きな音と光はさっきまでいた場所に大きな焼け跡をつけていた.
(……危なかった)
チンロンモンはこんな状況でも構わず攻撃してくる。
「サクヤモンっ*1!!!」/「ミユキっ!!!」
声が重なると同時に、倒れてる二人の前に立つサクヤモン。
「ーーーーハアッ!!!」
錫杖を両手で構え力を加える。
「『
幾何学模様の光が私達を覆う。
サクヤモンが作り出した結界は、私達を雷から守ってくれている。
「『
「くぅっっ!?」
サクヤモンの悲痛な叫びが聞こえてくる。
「サクヤモンっ!?」
「ーーーーっっ、はぁ……ミユキっ、大丈夫っっ!!!」
サクヤモンはなんとかチンロンモンの攻撃を防ぎ切った……だけど、
「ーーーーっっ!?」
(結界にヒビがっ!?)
サクヤモンの結界をたった一撃でヒビを入れるチンロンモン。
「まだよっ、『
「『
蒼色の雷とサクヤモンの結界がぶつかり合い、激しく火花を散らす。なんどもなんども、罅が入るたびにサクヤモンが結界を貼り直す。
(……みなみさんっ、ギルモンっ!!!)
突然気絶した二人が起きることを願い、私達は防御に徹するのであった。
神の意志を代行する巫女の役割を持ったデジモン。タオモン同様、陰陽道の技を駆使して戦い、神獣系のデジモンを使役する能力を持つ。腰のベルトには常に4本の筒を携え、中には4匹の管狐(くだぎつね)が潜んでいる。この管狐を使役し攻撃や情報の収集など、あらゆることに利用することができる。ホーリーエンジェモンの神官形態と同じように神事を司る巫女形態になることもできる。得意技は腰に携えた4匹の管狐で敵を攻撃する『飯綱(いづな)』。この4匹の管狐はそれぞれ「火」「水」「風」「雷」の属性を持っている。必殺技は「金剛錫杖(こんごうしゃくじょう)」を地に打ち付けて邪気を払う浄化結界を張る『金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)』。
沈む
沈んでいる
沈む
沈む
沈む
沈む
…………ここは、どこや?
濃い水のような、泥のような、底なし沼のような……なにかに沈んどるような気がしとった。
たしか、チンロンモンを相手しとった時に、────ブツンッと、えらい音がして、ブレーカーが切れるように意識が切れたような気がした。
そしたら、こないな場所に沈んでいきおった。
暗く、明かりがない世界やと思った。
自分以外照らされとらん、変な場所やと感じとった。
(……?)
前に、ただ前に進まないかんような気がする。
そう思って、前に、ただ前に歩き出した。
歩く、ただ歩く。
目的もなく、目標もなく、希望もなく……それでも歩く……すると、少しずつ灯りのある場所が見えて来た。
────タンッ!
急いで真横を向くとそこには……、
ギルモンッ!? /ミナミッ!?
なんでおるんや!? /ミナミ、無事でよかった!!!
…………、ミナミはこの場所知ってるの?
……今はわからへん……けど、たぶん。
わかっとる。
安全なの?
今のところは、精神面以外は問題なし……やと思う。
せーしんめん?
心にズキっと来るだけや。肉体には問題あらへん!!!
……それ、だいじょーぶ?
たぶん、ギルモンは大丈夫や。
だって……、
────ミナミっ!!!
ギルモンが突然大きな声で怒鳴る。
……病室? /人がいる!!!
真っ白な部屋に、スポットライトが当たるように光が差している。その中心には、ベッドに寝とる人とその傍らに座る少女がいた。
…………ッ!?
ウチは衝動的に走り出した。
────ミナミ、だめだっ!!!
ギルモンの制止を振り切って、その二人に近づく。
────っ!?
ギルモンもウチの隣を走る。
走って、走って、走って……そこにおったのは、
「早く、早く起きてください」
白ゴスの少女と寝たきりのタイトくんやった。
『
タイトくんの声が聞こえ、病室が消える。
────っ!? /────っ、ぃ!!!
暗い世界が明るくなって、
「はい、どーぞっ!」
「ありがとう」
ハンバーガーの帽子を被ったデジモンから、少年は三つの袋を渡される。
「やっぱ、余計なものを抜いた、チーズだくだくバーガーが一番っす!!!」
「いーや、レタス抜き、チーズ抜き、ピクルス・タマネギ抜き、ニクニクダブルバーガーが一番だねっ!!!」
「デフォルトで食えないのですか? デフォルトが一番うまいのですぞ? ……それより、ポテトのほうが好きであります」
黒い竜のデジモンとピンクのネズミのようなデジモンが張り合っている。その横で呆れる赤い鳥デジモン。
「テトもシンもユイも、張り合ってないで食べろよ。だいたい、バーガモンの作ったものなら全部美味いに決まってるだろ?」
その後ろで、コーラを飲んでいる少年。
────えっ、うそっ!?
……ん?
人から食べ物をもらっとるものを食べとるとこ、初めて見た。
そうなの?
うん、今まで一度も……ううん、食べてもすぐに倒れて、救急車に運ばれとった。
でも、ギルモンはミナミがタイトと一緒にご飯食べてるとこ、毎日見てるよ。
…………。
「やっぱり、美味い」
でも、ハンバーガーを頬張るなんて、できんかったはず……やのに……っ!?
「タイト様にそう言われると、嬉しいのであります!!!」
「こっちも美味しいものもらって嬉しいよ」
でも……笑いあっとるなんて、不思議や。
あれ、ミナミ……タイト達が歩き始めた。
「次はナノモンのところに行くんすよね」
「ええ────っ、あの偏屈ジジイのところに行くんでありますかっ!?」
「文句言うな、早く行くぞ……、行こう、タイト」
「そうだな、心配させたみたいだしな」
ついていかな、あかんみたいやな。
「おおっ、来られましたかっ!!!」
「ひさしぶり、ナノモン*1」
「ひさしぶりですな……そこの三馬鹿も、物を壊さぬように!!!」
「バカバカ言うなであります!!!」
「簡単に壊れる訓練場が悪い」
「先輩の言う通りっす。もっと頑丈なら全力で戦えたものの……、ザンバモンも『壊れるような作りが悪い』と言ってたっすよ」
「あの脳筋め、そのようなことを言っておったのか……胃が痛い」
あのデジモン、小さな体して、えろう苦労してるんやなぁ。
だいぶ怒ってる。
「ナノモンも心配してくれてありがとう」
「なに、感謝などいるか。そいつらに『安易に物を壊さぬように務めるよう』言ってくれるなら、そんなものはいらん」
「────ふんッ!」
「……あはは、それじゃあ、次の場所に行くよ」
あれ、でも顔を出すだけで、違う場所に行くみたいやな。
「刀でも習いに来たか?」
「料理を教えるのが途中でしたね。明日あたり練習に来なさい」
「グヒ、ガハハハハッ!!!」
「走るのです、走るのです!!!」
「いずれ、あなた達の隣に立つ為にッ!!! いつか、世界を救った英雄のようにっ────っ、あ、イテっ!?」
「実地訓練、開始っ!!!」
「────ってぇええっっ!!!」
「タイト、元気そうでよかった!!!」
「タイト達の話を聞かせてください!!!」
「なんだとっ、譲ってやった勝利ってだけだろ。ツルギっ、リベンジのチャンスをくれっ!!!」
「落ち着け、アグモン。アレは全力だっただろ?」
多くの人と出会った。
多くのデジモンと出会った。
みんな笑っとった。
みんな楽しそうだった。
……そして、
「
笑って、出迎える少女。
白いゴスロリを着た少女は、微笑みながらタイトくんを出迎える。
「……ただいま、ノルン」
優しげに笑ってる。
『帰る場所は変わっていた。帰りたい場所は既に変わっていたのだ』
────っ!?
『なんで気づかなかったんだろう?』
後悔、羨望……そして、失望。
『俺は、俺は……』
自重するように嗤った
『俺は』
────なっ!? /────ミナミぃっっ!?
床が泥のように沈み、呑み込まれて行った。
「────止めてくださいっ!!!」
いつの間にやら立っとった教室。
(────っ!?)
聞き覚えのある
「────マナトっ、どうしたんだよっ!?」
「マナトくんっ!?」
背後の友を振り切り全力で走る。
「はぁっ、……はぁっ」
全力で走って、息が切れてるわけじゃない。
見たくもない現実が目の前にあるから、許容できなくて、信じたくなくて、走り続けているのだ。
『ずっと、ずっとわかっていたんだ』
────ガンッ!!!
タイトくんが見覚えのある『教室』の扉を開ける。
「「「────っ!?」」」
三人の少年に三人の少女が『ピンク色の髪の少女』に群がってるのが見えた。
「────っ、…………」
目の前の光景が信じられなかった。
「おいおい、いきなりドアを開けるなんて非常識じゃねぇのか?」
バカっぽい声で群がっていた
「そうよ、そうよっ! 私達は今忙しいの。さっさと出てってちょうだ……あっ!? マナトくんっ!!!」
「えっ、マナトくんっ!?」
「ごめんねっ、こんなとこ見せちゃって……この女がねっ!!!」
次々と少女達が
「…………っ!?」
『ああ、なんて愚かだったのだろう』
場面が変わる。
夜の玉座。
白ゴスの少女と跪くタイトくん。
(ああ、これは……)
今朝の夢や。
跪いたタイトくんが少女と周囲にいるデジモン達に宣誓する場面やった。
(でも、これって……、────っ!?)
疑問が頭を過った時、
(ミナミッ!?)
(なんや、これっ!?)
砂の山が崩れるように倒れていく少女、少年……デジモン達。
『……
跪いたタイトくんが自重気味に嗤った。
場面が戻る。
「『
少女の『
「……うぇっ、へ?」
ゴシャリ、と大きな音が聞こえてくる。
少女1は蹲って、激痛に悶えている。
「『
少女2は茫然としている。
少女2を
少女2はこのままだと障害が残る。
「『
男子1を
男子1は悲鳴を上げた。
「『
男子2を
男子2は気絶した。
「『
男子3は逃げ出した。
男子3は血を吐き出した。
「『
少女3は怯えて、
「『
「『
「『
「────もう死ねよ、ムシケラ」
扉から光が差し込み、誰かが入ってきて
……知っとる
その先は……その先をウチは知っとる。
……ミナミ
ルビーがタイトくんを止めるんや
紅い瞳の少女が
ウチはただ呆然とそれを眺めとるだけで
サイレンの音が鳴り響く。
後から入ってきた平田くんと妹尾くんが救急車を呼んだのだと後で伝えられた。
「人間なんて救う価値がない」/聞こえとったよ
……えっ?
タイトくんの魂の叫びやったんや
それやのに、ウチは
ウチはそれを聞いとったのに────
場面が変わった。
『唯一、『彼女』を助けられたのだけは救いだった』
(……かの、じょ?)
黒髪の少女が微笑んでいる。
その微笑みだけで、世界から血の池も、針の山も、三途の川も……『
『
『嫌だ』
「◯◯さん、ご飯の時間ですよ」
栄養の流れる管。
「あっ、ボトルの中身がない……酸素入れて来てっ!!!」
酸素を供給するマスク、ボトル。
────ピーコン、ピーコン。
脈を読み取るモニター。
「お母さん、服持って来たからね」
「父さん、ひさしぶり」
「……よかった」
「まだ、生きてる」
自身の
『知りたくない』
「ママ、ママ」
「うっさいわねっ! どっかで遊んできなさい!!!」
自ら産んだはずなのに、道具にも劣る扱いをする母親。
「……ねぇ、どうしたの?」
「いやっ!!!」
「お母さんはどこにいるのかな?」
「イヤッ!!!」
まともに教育も受けられず、少しずつ、少しずつ他者よりも劣った存在へと
「ねえ、あの子のこと保護してもらわない?」
「いい加減にしろよ。産むって言ったのはお前だろっ!!!」
「……だって、友達はみんな産んでるし……かわいいって言ってたし……はぁ、あんな子供なら産まなきゃよかった」
子供を
「『────、────』」
「『やだッ、やめろっ!!!』」
「『なんで、どうしてこんなことができるんだよ!!!』」
「『────、────』」
「『うわぁああああああああああっっ!!!』」
『聞きたくない』
「ごめんなさい、ごめんなさい」
悲鳴と懺悔が混じった
「だって、黄光様に言われたの」
「『この写真の男を抱け。四宮を守る為に必要な行為だ』」
「だって雲鷹様に言われたの」
「『お前が行かなければ、お前の母親に頼む。できなきゃ、他の女に……失敗したら『四宮かぐや』の番だ』」
少女は金の髪を揺らして、俺の上に跨った。
「ママの為になるって」
「『お前が成功すれば、早坂は四宮での地位をもっと強くするだろう。お前の母親もきっと喜ぶぞ』」
「ママを守ってくれるって」
「『お前の母親……俺達の親父がいなくなったらどうなるんだろうな? 父親、たしか居なかっただろ。守ってくれるやつはいるのか?』」
性欲と悲哀の混ざるその視線に、
「だからっ、だからっ!!!」
彼女はなんどもなんども、ナンドモナンドモ体を弄ってくる。触られたくないし、目も開けたくなかった。
「私を抱いてください」
皮膚に着く『水』が不快で、不快で気持ち悪かった。
『見たくない』
「盗ンデナニガワルイ!!!」
「コノ、リンゴ。高クウレル。ミンナ、ヨロコブ」
「オレ、ワルクナイ!!!」
盗み、奪い、騙し、汚す。
穢れたものは、穢れた存在になる。
「捕まったのは『────人』の男性達10数名」
「他の果樹園でも窃盗の行為を繰り返し行なっており、学生によって現行犯で捕まった模様」
犯罪を止めた。
「捕まえる際、怪我を負った為、一時病院に運ばれるそうです」
盗人を叩きのめした。
「ありがとう」
「ここ最近、この周辺ではトン単位で果物が盗まれる事件が多発しておってな。犯人を捕まえてくれたこと、心より感謝している」
感謝された?
「マナト氏」
罪人はどうなった?
「犯行を行なった者達ですが」
罰は与えられるはずだ。
裁判の日取りを確認して……は?
「書類送検となったのであります」
「……っ、どういうことっすか?」
「政府関係者としては、書類送検で済ませるつもりであります」
外国人だから?
「外国人……も含まれるのでありますが、国家間、団体からの多額の支援が送られて……」
「……タイトを不快にしたな」
「どうとっちめてやるっすかね」
強制送還は?
「するみたいですが、パスポートは止めないみたいであります」
再入国は……可能ってこと?
「可能であります」
殺さないの?
「……愚かであります」
「ノルンだったら、殺してるぞ」
「ノルンは殺さないっすよ。ザンバモン達が裏でやってるはずっす」
「……どちらにしても」
殺すべきだろ……ざけんな。
『触れたくない』
「金がないんだ」
「兄貴は高校辞めて働く気でいる」
「産まれてきた弟の為に、俺も……働くつもりだ」
「仕事を……っ、仕事を紹介してくれないかっ!」
騙したのかっ、と少年が叫ぶ。
「お前っ、おまえぇ、よくも、よくもこんなことをさせやがったなっ!!!」
「……ざけんなっ、ふざけんなっ!!!」
皮肉な笑みを浮かべ、無理矢理口を嗤って見せる。
「ただ、『アレ』をザクソンに知られないようにするだけじゃなかったのかよっ!!!」
「あんなことになるなんて思ってなかった!!!」
「にいちゃんに、あいつに、なんで言えばいいんだよっ!!!」
泣き叫ぶ少年。
「……マナト?」
「……ごめん、ごめんな」
嗤う自分。
『汚れた』
手を汚してしまったんだ。
『汚れてしまった』
汚れた手であの人に触るのか?
『汚してしまった』
あの三人のいる陽だまりに帰れると言うのだろうか?
『
『なんのため?』
なんのために人助けをし始めた?
『人の為?』
違う、人を見定めるためだ。
『世界の為?』
違う、最前線に行けば人となりがわかると思ったからだ。
『家族の為?』
違う、今の俺に『家族』なんていない。
『自分の為?』
そう、全部自分の為だ。
……自分の為、なんだ。
『なんのためにっ……これから、どうしていけばっ!!!』
その言葉とともに、タイトくんが掻きむしった皮膚から溢れる『血』が、世界を塗りつぶしていく。
病室も、玉座も、陽だまりも、ぜんぶゼンブ全部……血の色で
叫んで、嘆いて、裏切って……それでも前に進まなければいけない。
ただ、それだけが『辛い』だけだった。
『帰りたい』
少女の御許へ。
『帰りたい』
少年二人と馬鹿騒ぎしていたあの陽だまりへ。
『帰りたい』
火を囲んで、友や仲間と笑い合ったあの戦場へ。
『帰りたい』
血に染まった部屋。
暗く沈む夕陽。
宵の時間。
ウチも、ギルモンも……そこに蹲る少年になに一つ言うことはできへんかった。
「……もう、いやだ」
「誰か、だれか、たすけてくれよ」
「……だれか」
大丈夫やよ
「……えっ?」
ウチは、ウチだけは味方やから。
「あんたが? 嘘だろ」
嘘やと思う?
「だって、女だろ?」
女だから信用できへんの?
「…………」
信用、できへんか。
「違う」
「ネネは違った」
……、知らん女の名前出すのは反則やろ。
「……そっか、人間の、この世界の誰かを信じていいんだ」
ええよ、ウチは、ウチだけは味方やから。
「そっか、ありがとう」
そう言って、目の前から消える少年。
ミナミ。
なに、ギルモン。
ここって、タイトの心の中なの?
そうみたい、やな。
人間って、悪いことばかりしてるの?
そういう人も……いる。
そうじゃない人もいるの?
……マナトくんは、……タイトくんは、違ったんや。
……そっか。
ウチ、もうわかんなくなってもうた。
人の為に戦うべきか……それとも。
人間を倒すべき?
…………。/…………。
「
背後から突然声をかけられる。
……。/────っ!?
「あれ、驚かないんだ」
タイトくんの心の中や。必然的にあんたもいると思っとった。
「まあ、いいや」
……いぐどらしる?
「そっちは気づいてなかったのか!? いやぁ、おもしろい主従だね」
白い光から笑うように明滅する。
イグドラシル。
「なんだい?」
ウチは、人間を助けるべきなんか?
「……どうしてそんなことを聞くのかな?」
ウチは人間の醜いとこをたくさん知った。
躊躇いもなくなにもしとらん人に暴力を振るうところ。
自分の産んだものに責任を取らんところ。
人に脅迫し、性行為を強要するところ。
人を騙して物を奪うところ。
……そして、
「人の恩を仇で返してしまうところ……とか、かな?」
……そうや。
「私にとってはどうでもいいことだ」
「手を汚そうが、騙そうが、蹴散らそうが……最終的に『ハッピーエンド』になればそれでいい」
……そっか。
「まあ、魂に関われる君にそんなことを言ってもしょうがないけどね」
…………。
「私は行くよ。タイトの魂を治さなきゃいけないからね」
…………。
…………。
…………。
白い空間、ミナミとふたりきりだ。
「……ギルモン」
「なに?」
ミナミの表情が暗い、どうしたんだろう?
「ウチ、わからへんくなってもうた」
「……なにが?」
「自分が?」
ギルモン、ミナミの言ってることがわかんない……でも、悲しそうなのはなんとなくわかった。
……だから、
「ミナミはどうしたいの?」
聞かなきゃいけない。
「…………」
「…………」
「…………」
「ウチ、な」
「
知ってる。
さっき、ミナミ言ってた。
「ゴツモンに襲われて、ガジモンに狙われて、ドクグモンにルビーを攫われて、ファングモンに負けて、アルケニモンに捕まって」
「
「────っ!?」
ミナミの口から出た……ギルモンのこと。
「ウチが、ウチが進化させたんや」
「……うん」
「最初は怖くて」
「うん」
「タイトくんに認められたから、なんとなく嬉しくて」
「うん」
「……でも、タイトくんが倒れて」
「うん」
「
ミナミ、やっぱりギルモンのことが……
「
嫌いに、なって……?
「……えっ?」
嫌いになったわけじゃない?
「強かったから認められた」
嫌われたわけじゃない?
「強く進化したから、認められたから……意固地になってもうた」
そっか。
「タイトくんの力になれると信じとった」
そうだったんだ。
「
「やから、タイトくんを早くウチらの世界に連れ戻す為に戦った。それが最善だと信じて戦ったんや」
「うん」
「……でも、それは違っとった」
「
「……うん」
それは、うん……ギルモンも、わかった。
「ウチは、ウチはなにを信じればいいんや?」
「タイトくんを傷つける世界に連れ戻すべきなんか?」
「それとも、タイトくんをあの世界に連れて行ってあげるべきなんか?」
「どうすればいいんや……答えてよ、ギルモン」
「…………」
ミナミが苦しんでる。
「…………」
ミナミが泣いている。
「…………」
ギルモン、どうすればいい。
「…………」
どうすれば……、うん、そんなの……
「そんなの、わかんないよ」
ギルモン、そんな頭良くないもん。
「……わかんない?」
「うん、わかんない!!!」
……でも、
「でも、わかってることある」
ギルモンのわかること。
「わかってること?」
そう。
「『ミナミがタイトを助けたい』ってことと」
ミナミの絶対に変わらない気持ちと、
「『
「────っ!?」
ギルモンの絶対に変わらない気持ちだよ。
「ギルモン、タイトが幸せになれるよう考える……だから」
ギルモン、ミナミの力になるから、
「ミナミも一緒に考えよ?」
ミナミにも一緒に考えてほしい。
「…………、そう、やな」
ギルモンに言われた言葉。
「そうやったな」
ギルモンはずっとウチを助けてくれとったもんな。
「ギルモンはウチの力になるんやもんな」
ギルモンはウチと一緒に戦ってくれた。
「ギルモンはウチの味方やもんな」
ギルモンはウチの味方でいてくれた………… やったら、
「ギルモン、ありがとう」
これは絶対に言わなきゃあかんよな。
「────うんっ!!!」
ギルモンは笑顔で頷いた。
暗い世界。
最初のように暗い世界は宵色に、変わりつつある。
長く、長くギルモンと話し合って、
長く、長く、ギルモンと向き合った。
「……とりあえず、ウチらの目標は」
「『タイトの味方になること』、だね!!!」
なんにも思いつかんかったけど、……でも、立ち上がることができた。
「────行こう!!!」
「わかった!!!」
世界は宵に煌めいていた。
「『
────バリィインッ!!!
ガラスが割れるような大きな音が鳴り響く。
(『
透明で黄色い結界の破片が飛び散り、結界に穴が空いてしまった。
「────終わりだ」
チンロンモンの体が帯電し、空気が振動している。チンロンモンの攻撃がやってくる……そう、ただ、そう感じた。
「『
鋭い蒼色の雷が穴目掛けて直進する。
「────みなみさんっ!?」/「────ギルモンっ!?」
チンロンモンの蒼の雷がサクヤモンの防御を突き抜け、二人めがけて落ちていく。
目の前が少しずつ音を置き去りにしていく。
体がどんどん鈍重になる。
(ああ、もうだめだ)
どんなに急いでも、彼女達のところへは届かない。
彼女達を守ることができない。
『
────
────
「────え?」
「────なにっ!?」
(大きな竜の尾……あれは、まるで……)
「
メギドラモンの尾だった。
赤く、紅く、
「よいしょっ、と」
「……んっ、と」
そして、その尾の中心で立ち上がる二人の影。
「────あっ、ああっ!?」
「……ふふっ、遅いぞ」
私とサクヤモンが待ち望んでいた仲間が立ち上がったのだった。
超小型の治療用マシーンデジモン。もともとはクラッシュしたコンピュータを修復するためのワクチン的なデジモンだったが、強力なウィルス型デジモンに攻撃を受けたときに思考回路が破壊され暴走してしまった。正常に作動しているコンピュータでも勝手にデータを再構築し(もちろんメチャメチャに)、狂わしてしまう。あらゆるデータの破壊を得意とし、どんなに強いデジモンでもナノモンの前では体を構成するデータをいとも簡単に破壊されてしまうだろう。必殺技は指先から発射される『プラグボム』。
「……ミナミ?」
「……だいぶ、迷惑かけたみたいやな」
場の空気、そして……傷だらけのミユキちゃんを見て、意識を変える。
「……なあ、ギルモン」
「なに?」
「ウチは、これから『どうすべき』やろなぁ?」
「……ミナミが好きなことをすればいい。ギルモンはミナミのこと手伝う」
「……なら、」/「わかってる」
「あのでかい
デジヴァイスが光る。
「でも、どうやって?」
今ならわかる。アレと闘う力は今のウチ達にはない。
天井は稲妻が走り、地面には焼け焦げた跡が散乱しとる。宙空を飛ぶ巨大な龍を相手にウチらの力はどう考えても足りていない。
「どうやって、戦えばいい?」
だから、ギルモンに聞くしかない。
「ギルモン、わかんないけど……でも、ミナミが『闘う』って気持ちがあればきっとなんとかなるよっ!!!」
ギルモンの答えは、
「投げやりやなぁ……でも、」
(今までも、ギルモンとそうやって闘ってきたからなぁ……納得しかできへんのよ)
なんとなく戦って、なんとなく進化できて、なんとなく勝ってこれた。でも、今はそれだけじゃ足りへん。
(怖いのを振り払う為に戦うだけじゃ、タイトくんの為に戦うだけじゃ……足りへんのやっ!!!)
「ーーーーギルモン、ウチ、決めたできたっ!!!」
デジヴァイスの輝きが更に強まる。
「ウチはもう、逃げたりせえへんっ!!!」
『宵』色の光が明滅し、
「ウチはギルモンの横で『闘っていく』んやっ!!!」
デジヴァイスの輝きが星のように瞬いた。
(これが、これが本当の)
(ホントの究極進化)
真夜中の光がギルモンに集約する。
最初は小さな竜だった。
竜は成長し、魔を納め、雷を操る。
魔竜は雷に呑まれ、機械の体を手に入れた。
そして、内なら魔の力は竜を暴力装置となり、紅き竜を呼び覚ます。
ただ、紅き竜の身体をを子竜は制御する。
竜の体は集約し、忌まわしき『黒き』の鎧へ。
紅は鈍色に覆い尽くされ、鉤爪はしなやかな籠手を見に纏う。
右手には槍、左手には盾を持ち、どちらも危険な光を放ち煌めく。
翼は闇のようなマントへと代わり、顎と牙は兜に変化する。
そして、兜の中心に
「ーーーー『
ウィルス種としての本能に目覚めた、デュークモンのもう一つの姿。その精神・思考は完全にダークサイドであり、デジタルワールドに災いをもたらす“デジタルハザード”以外の何者でもない。デュークモン同様に高純度の“クロンデジゾイト”を精製した黒い魔鎧を纏い、右手は魔槍「バルムンク」に、左手は魔盾「ゴーゴン」になっている。まさに、デュークモンとは対極をなす存在である。必殺技は魔槍の強力な連打攻撃『デモンズディザスター』と、左腕の魔盾から全てを腐食させる暗黒波動を放つ『ジュデッカプリズン』。